説明

近距離通信装置及び近距離通信方法

【課題】通信の切断によって再度通信を確立して送受信やり直すという手間の発生を防ぐことが出来る近距離通信装置及び近距離通信方法を提供することを目的とする。
【解決手段】近距離通信装置が、近距離通信によって各種信号を送受信する近距離通信部と、前記近距離通信部が受信する受信信号に基づいて通信相手と前記近距離通信部とに位置ズレが発生したことを検出する検出手段と、前記検出手段が位置ズレを検出すると警告を発する警告手段とを具備するという手段を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近距離通信装置及び近距離通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯電話機には、赤外線を用いて近距離通信を行う赤外線通信機能を備えたものが多い。このような携帯電話機には赤外線を発光する赤外線ポートが設けられている。2つの携帯電話機を用いて赤外線通信を行う場合は、送信側の携帯電話機と受信側の携帯電話機の各赤外線ポートを対向させた状態で通信を行う。赤外線通信中に2つの赤外線ポートの位置にズレが生じると通信が切断されてしまう。通信が切断された場合は、再度通信を確立して送受信を実行する。例えば、下記特許文献1には、データを送信している際に通信の切断が発生すると、再度通信を確立して送信できていないデータを送信し、データを受信している際に通信の切断が発生すると、それまでに受信したデータを保持すると共に再度通信を確立して受信できていないデータを受信する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平11−275018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来技術では、赤外線通信機能を有する携帯電話機を用いて赤外線通信を行う場合は、送信側と受信側の赤外線ポートが互いにズレないように一定の位置に保持する必要があるが、実際には携帯電話機は動きやすいので、ズレが発生しやすい。そして、ユーザが赤外線ポートがズレたことに気が付かないでいると赤外線通信が切断されてしまい、この通信の切断によってユーザに再度通信の確立を実施し、データの送受信をやり直すという手間が発生してしまう。
【0004】
本発明は、上述した事情を鑑みたものであり、通信の切断によって再度通信を確立して送受信やり直すという手間の発生を防ぐことが出来る近距離通信装置及び近距離通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明では、近距離通信装置に係る第1の解決手段として、近距離通信によって各種信号を送受信する近距離通信部と、前記近距離通信部が受信する受信信号に基づいて通信相手と前記近距離通信部とに位置ズレが発生したことを検出する検出手段と、前記検出手段が位置ズレを検出すると警告を発する警告手段とを具備するという手段を採用する。
【0006】
本発明では、近距離通信装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記警告手段は、筐体を振動させる振動部を有し、前記振動部が振動動作することによって警告を発するという手段を採用する。
【0007】
本発明では、近距離通信装置に係る第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、前記警告手段は、表示部及び/又は発音部を有し、表示部が表示する画面及び/又は発音部が発する音声によって警告を発するという手段を採用する。
【0008】
本発明では、近距離通信装置に係る第4の解決手段として、上記第1〜第3いずれかの解決手段において、前記検出手段が、位置ズレの発生を検出してからさらに所定時間経過しても位置ズレを検出している場合には、前記警告手段は、警告状態を変化させるという手段を採用する。
【0009】
本発明では、近距離通信装置に係る第5の解決手段として、上記第1〜第4いずれかの解決手段において、前記検出手段による位置ズレの検出は、受信信号を連続的に受信できているか否かに基づいて行われるという手段を採用する。
【0010】
本発明では、近距離通信装置に係る第6の解決手段として、上記第1〜第4いずれかの解決手段において、前記検出手段による位置ズレの検出は、受信信号の受信強度又は受信信号に含まれるデータのエラー率に基づいて行われるという手段を採用する。
【0011】
本発明では、近距離通信装置に係る第7の解決手段として、上記第1〜第6いずれかの解決手段において、前記近距離通信は赤外線通信であるという手段を採用する。
【0012】
また、本発明では、近距離通信方法に係る第1の解決手段として、近距離通信によって各種信号を送受信する近距離通信ステップと、前記近距離通信ステップが受信する受信信号に基づいて通信相手と前記近距離通信ステップとに位置ズレが発生したことを検出する検出ステップと、前記検出ステップが位置ズレを検出したとき警告を発する警告ステップとを具備するという手段を採用する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、近距離通信装置において、前記近距離通信部が受信する受信信号に基づいて検出手段が通信相手と近距離通信部の位置ズレを検出すると、警告手段が警告を発することによって、ユーザは直ちに位置ズレを解消することでき、この位置ズレの解消によって近距離通信の切断を防ぐことができる。これにより、再度近距離通信を確立して受信やり直すという手間を発生させないようにすることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。本実施形態は、PHS(Personal Handy-phone System)端末及び当該PHS端末を有する赤外線通信システムに関する。
図1は、本実施形態に係るPHS端末Aによって構成される赤外線通信システムの概略構成を示す模式図である。なお、PHS端末Aは、本実施形態における近距離通信装置である。図1に示すように、この赤外線通信システムは、PHS端末A,Bによって構成される。
図1のように、PHS端末Aは、赤外線ポートをPHS端末Bと対向させた状態で赤外線通信を行う。PHS端末Aは、ユーザの操作によりPHS端末Bから赤外線通信によって所定のデータを受信し、PHS端末Bは、PHS端末Aに赤外線通信によって所定のデータを送信する。
【0015】
次に、PHS端末Aの機能構成を、図2を参照して説明する。図2は、本実施形態に係るPHS端末Aの機能構成を示す機能ブロック図である。PHS端末Aは、図2に示すように、基地局通信部1、操作部2、表示部3、赤外線モジュール4、モデム5、解析部6、振動部7、発音部8及び制御部9によって構成される。そして、赤外線モジュール4は、赤外線送信部4a及び赤外線受信部4bを有し、モデム5は、エンコーダ5a及びデコーダ5bを有する。なお、PHS端末Bも、PHS端末Aと同様の機能を有している。
【0016】
基地局通信部1は、制御部9による指示の下、基地局と音声信号、データ信号及び制御信号等の各種信号を送受信する。
操作部2は、テンキー、方向キー、及び各種機能キー等の各種操作キーから構成されており、これらの操作キーに対するユーザの操作指示を受け付けて制御部9に出力する。
表示部3は、例えば液晶ディスプレイまたは有機EL(Electronic Luminescent)ディスプレイ等であり、制御部9から入力される画面信号に基づいて画像や文字からなる各種画面を表示する。
【0017】
赤外線モジュール4は、IrDA(Infrared Data Association)通信プロトコルに準拠する赤外線通信用の電子回路モジュールである。赤外線送信部4aは、赤外線LED(Light Emitting Diode)を有し、エンコーダ5aより入力される赤外線通信用送信データに基づいて赤外線LEDに赤外線を出力させる。赤外線受信部4bは、フォトダイオードを有し、受光した赤外線を赤外線通信用受信データに変換し、デコーダ5bに出力する。なお、赤外線通信用送信データ及び赤外線通信用受信データは、IrDA通信プロトコルに準拠するデータである。なお、本実施形態では、赤外線送信部4a及び赤外線受信部4bによって赤外線ポート4cを構成するものとする。
【0018】
エンコーダ5aは、制御部9から入力される送信データを赤外線通信用送信データに変換し、赤外線送信部4aに出力する。デコーダ5bは、赤外線受信部4bから入力された赤外線通信用受信データを受信データに変換し、制御部9に出力する。
解析部6は、制御部9に入力された受信データに基づいて受信データが連続的に受信できているか否か解析し、その解析結果(受信状態解析結果)を制御部9に出力する。
振動部7は、制御部9の制御の下、PHS端末Aの筺体(図示なし)全体を強制振動させる。
発音部8は、スピーカから構成されており、制御部の制御の下、スピーカを介して音声を外部に出力する。
【0019】
制御部9は、基地局通信部1、操作部2、表示部3、エンコーダ5a、デコーダ5b、解析部6、振動部7、発音部8と接続し、図示しない内部のROM(Read Only Memory)に記憶された制御プログラム、基地局通信部1が受信する各種信号、操作部2が受け付ける操作指示、デコーダ5bが赤外線通信用受信データから変換した受信データ及び解析部6から入力される受信状態解析結果に基づいてPHS端末Aの全体動作を制御する。
【0020】
次に、上記構成の赤外線通信システムにおけるPHS端末Aの動作について、図3を参照して詳しく説明する。図3は、本実施形態に係るPHS端末Aの動作を示すフローチャートである。PHS端末Aは、対向するPHS端末Bと赤外線ポート4cにズレが発生したことを検出してユーザに警告を発するようにしたものである。警告を発する手段としては、表示部3の画面、振動部7の振動、発音部8の音声が用いられる。画面、振動、音声のうちのいくつかあるいは、すべてを予め選択して設定しておく。
図2において、制御部9は、デコーダ5bから受信データを入力されているかによって赤外線通信によるデータの受信を開始しているか否か判定し(ステップS1)、ステップS1において『NO』と判定した場合には、すなわち赤外線通信によるデータの受信が開始されてなければ処理を終了する。
【0021】
制御部9は、ステップS1において『YES』と判定した場合には、すなわち赤外線通信によってデータの受信が開始されている場合には、解析部6に受信データに基づいて受信状態解析結果を出力させ、受信状態解析結果に基づいて赤外線通信の中断が発生しているか否か判定する(ステップS2)。なお、制御部9は、ステップS2において、受信データが連続して受信できている場合には、赤外線通信は中断されていないと判定し、受信データが連続して受信できていない場合には、赤外線ポート4cの位置ズレによる赤外線通信の中断が発生しているものと判定する。
【0022】
制御部9は、ステップS2において『NO』と判定した場合には、すなわち赤外線通信の中断が発生していない場合には、処理を終了し、ステップS2において『YES』と判定した場合には、すなわち赤外線通信の中断が発生した場合は、警告手段として画面、振動及び音のうちのどれが設定されているか判定し(ステップS3)、警告手段として設定されている画面、振動、音のいずれかまたはすべてによってユーザに警告する(ステップS4)。即ち、振動による警告が設定されていた場合は、制御部9によって振動部7を駆動して、図4のようにPHS端末Aの全体を振動させる。画面による警告の場合は、制御部9は、表示部3の画面にその旨を示す文字、マークまたは図形等を表示させ、音による警告の場合は、制御部9は、発音部に所定の音を発生させる。図4においては、PHS端末A、Bの各赤外線ポート4cが互いにズレた状態となっている。
【0023】
制御部9は、赤外線通信の中断が所定時間(例えば4秒)以上継続しているか否か判定し(ステップS5)、ステップS5において『NO』と判定した場合には、すなわち赤外線通信の中断が4秒以上継続していない場合には、ステップS4に移行し、ステップS5において『YES』と判定した場合には、すなわち赤外線通信の中断が4秒以上継続している場合には、警告状態を変化させることによってユーザに強い警告を発する(ステップS6)。例えば、振動や音を大きくしたり、画面の文字、マーク、図形等の大きさ、色、明るさ等を変化させることで、強い警告を発する。なお、上記所定時間は、赤外線通信が切断されてしまう赤外線通信の中断時間(例えば8秒)以下にする。
【0024】
以上説明したように、PHS端末Aにおいて、制御部9が解析部6の受信状態解析結果に基づき受信データが連続して受信できていない場合には位置ズレによって通信が中断していると判定し、位置ズレによって通信が中断していることを表示部3、振動部7及び発音部によって警告を発することによって、ユーザは直ちに赤外線通信の中断の原因となる位置ズレを解消することでき、この位置ズレの解消によって近距離通信の切断を防ぐことができる。これにより、再度赤外線通信を確立してデータの受信をやり直す手間を発生させないようにすることが出来る。
【0025】
また、制御部9は、赤外線通信の中断が4秒以上継続しているか否か判定し、赤外線通信の中断が4秒以上継続している場合には、振動部7の振動または/及び発音部8の音声を大きくしたり、また表示部3が表示する画面を変化させることによって、ユーザに強い警告を発することが出来る為、ユーザは赤外線通信が切断される前に強い警告を認識して、位置ズレを解消することが出来る。
【0026】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、例えば以下のような変形が考えられる。
(1)上記実施形態では、PHS端末Aが、位置ズレによる通信の中断によって、警告を発するが本発明はこれに限定されない。
例えば、PHS端末Aが、位置ズレによって通信が中断していると判定した場合には、PHS端末Bに、赤外線通信によって位置ズレを通知し、PHS端末Bが振動、音及び画面によって警告を発するようにしてもよい。
【0027】
(2)上記実施形態では、赤外線通信の中断が4秒経過すると、強い警告を発するようにしたが、本発明はこれに限定されない。
例えば、警告の強さのレベルを2段階ではなく、3段階以上にしてもよい。具体的には、赤外線通信の中断が、2秒、4秒、6秒と経過する毎に振動、音を大きくしてまた画面を変化させるようにしてもよい。
【0028】
(4)上記実施形態では、制御部9が、受信データを連続して受信しているか否に基づい赤外線ポート4cの位置ズレによる赤外線通信の中断を判定したが、て本発明はこれに限定されない。
例えば、赤外線ポート4cが受信する信号の受信強度または、受信データのエラー率に基づいて、赤外線ポート4cの位置ズレを判定するようにしてもよい。具体的には、制御部9が、受信信号の受信強度が所定の電圧以下になった場合に、赤外線ポート4cの位置ズレが発生していると判定してもよいし、受信データのエラー率が所定のしきい値以上になった場合に、赤外線ポート4cの位置ずれが発生していると判定するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施形態に係るPHS端末Aによって構成される赤外線通信システムの概略構成を示す模式図である。
【図2】本実施形態に係るPHS端末Aの機能構成を示す機能ブロック図である。
【図3】本実施形態に係るPHS端末Aの動作を示すフローチャートである。
【図4】本実施形態に係るPHS端末Aの赤外線通信において、PHS端末Bと赤外線ポート4cに位置ズレが発生した状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0030】
A,B…PHS端末、1…基地局通信部、2…操作部、3…表示部、4…赤外線モジュール、4a…赤外線送信部、4b…赤外線受信部、4c…赤外線ポート、5…モデム、5a…エンコーダ、5b…デコーダ、6…解析部、7…振動部、8…発音部、9…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近距離通信によって各種信号を送受信する近距離通信部と、
前記近距離通信部が受信する受信信号に基づいて通信相手と前記近距離通信部とに位置ズレが発生したことを検出する検出手段と、
前記検出手段が位置ズレを検出すると警告を発する警告手段とを具備することを特徴とする近距離通信装置。
【請求項2】
前記警告手段は、筐体を振動させる振動部を有し、
前記振動部が振動動作することによって警告を発することを特徴とする請求項1記載の近距離通信装置。
【請求項3】
前記警告手段は、表示部及び/又は発音部を有し、
表示部が表示する画面及び/又は発音部が発する音声によって警告を発することを特徴とする請求項1または2記載の近距離通信装置。
【請求項4】
前記検出手段が、位置ズレの発生を検出してからさらに所定時間経過しても位置ズレを検出している場合には、前記警告手段は、警告状態を変化させることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載の近距離通信装置。
【請求項5】
前記検出手段による位置ズレの検出は、受信信号を連続的に受信できているか否かに基づいて行われることを特徴とする1〜4の何れか一項記載の近距離通信装置。
【請求項6】
前記検出手段による位置ズレの検出は、受信信号の受信強度又は受信信号に含まれるデータのエラー率に基づいて行われることを特徴とする1〜4の何れか一項記載の近距離通信装置。
【請求項7】
前記近距離通信は赤外線通信であることを特徴とする請求項1〜6の何れか記載の近距離通信装置。
【請求項8】
近距離通信によって各種信号を送受信する近距離通信ステップと、
前記近距離通信ステップが受信する受信信号に基づいて通信相手と前記近距離通信ステップとに位置ズレが発生したことを検出する検出ステップと、
前記検出ステップが位置ズレを検出したとき警告を発する警告ステップとを具備することを特徴とする近距離通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−206932(P2009−206932A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48125(P2008−48125)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】