説明

追尾装置

【課題】正確な追尾結果を得ることができる追尾装置を得る。
【解決手段】航跡確立判定結果に基づきどの観測時刻の観測データを推定に用いるかを選択する観測データ管理部12と、選択された観測時刻を全て基準時刻として設定し、各基準時刻における航跡の候補を状態ベクトル候補として生成する選択時刻状態候補生成部13と、状態ベクトル候補の尤度比を計算して、各基準時刻における尤度比が最大の状態ベクトル候補を探索する状態空間概探索部14と、各基準時刻における尤度比が最大の状態ベクトル候補を初期値として、反復計算により各基準時刻における尤度比が最大の状態ベクトル推定値を探索する状態空間詳細探索部15と、各基準時刻における尤度比が最大の状態ベクトル推定値の対応関係から最新時刻の最も確からしい状態ベクトル推定値を決定する状態相関処理部16と、前記状態ベクトル推定値から航跡の確立を判定する航跡確立判定部22とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、センサからの観測データを入力として、移動目標を追尾する追尾装置に関するものであり、特に、移動目標の航跡を最尤推定することにより追尾する追尾装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
センサからの観測データを入力として、移動目標の最も確からしい航跡を推定する追尾装置としてML−PDA(Maximum Likelihood-Probabilistic Data Association)を用いたものが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
ML−PDAを用いた追尾装置は、移動目標の航跡を最尤推定法によって推定する。まず、移動目標の航跡をある時刻(以下、これを基準時刻と呼ぶ。)における目標の位置や速度といった状態ベクトルxとして表現する。次に、状態ベクトルを予め仮定した目標運動に従って前向きあるいは後ろ向きに外挿し、観測データ群Zに基づいた状態ベクトルの確からしさを尤度比関数φ(Z、x)として表現する。そして、得られた観測データから尤度比関数φ(Z、x)の大域的最大点xMLを求めることで目標航跡を推定する。
【0004】
以下、ML−PDAを用いた従来の追尾装置について図13及び図14を参照しながら説明する。図13は、ML−PDAを用いた従来の追尾装置の構成を示すブロック図である。また、図14は、ML−PDAを用いた従来の追尾装置の動作を示すフローチャートである。
【0005】
図13において、ML−PDAを用いた従来の追尾装置1Xは、観測データ蓄積部91と、観測データ管理部92と、状態候補生成部93と、状態空間概探索部94と、状態空間詳細探索部95と、航跡確立判定部96とが設けられている。
【0006】
まず、ステップ901において、観測データ蓄積部91は、センサから観測データを取得し、次のステップ902において、観測データ蓄積部91は、取得した観測データを観測時刻ごとに蓄積する。
【0007】
次に、ステップ903において、観測データ管理部92は、観測データ蓄積部91に蓄積された各時刻の観測データ群のうち、どの時刻の観測データ群を状態空間概探索部94及び状態空間詳細探索部95に入力するかを、航跡確立判定部96の航跡確立判定結果を基に選択する。以下、選択した観測時刻を時刻tからtまでとする。
【0008】
次に、ステップ904において、状態候補生成部93は、基準時刻を適当に設定したのち、基準時刻における状態ベクトルの候補を多数生成し、この状態ベクトル候補群を状態空間概探索部94に出力する。
【0009】
次に、ステップ905において、状態空間概探索部94は、状態候補生成部93から入力された状態ベクトル候補群を入力し、観測データ管理部92で選択した時刻tからtまでの観測データ群を用いて、状態ベクトル候補の中から尤度比関数φ(Z、x)が最大となるxを1個探索し、状態空間詳細探索部95に出力する。ここで、xはφ(Z、x)の大域的最大点xMLに十分近いと仮定する。
【0010】
次に、ステップ906において、状態空間詳細探索部95は、状態空間概探索部94から入力された状態ベクトル候補xを初期点として、観測データ管理部92で選択した時刻tからtまでの観測データ群を用いて、前記仮定の下でxMLに収束する反復処理法を適用し、収束点x**及びφ(Z、x**)を航跡確立判定部96に出力する。この反復処理法としては、最急降下法、準ニュートン法など、数多くの手法が提案されている。
【0011】
そして、ステップ907において、航跡確立判定部96は、予め定めた判定条件に従って航跡確立を判定し、判定結果を観測データ管理部92に出力する。また、航跡確立判定部96では、航跡確立の判定結果にかかわらず、入力された状態ベクトル推定値x**を出力する。
【0012】
ところで、状態候補生成部93では、状態ベクトル候補を、センサによって観測できる位置範囲や、想定される速度方向などを基に生成するが、一般に膨大な候補数となる。しかし、尤度比関数φ(Z、x)は状態ベクトルの位置が観測データに近いほど高くなる性質を利用すると、観測データを状態空間に写像したものを状態ベクトル候補の位置成分として用いることができる(例えば、非特許文献2参照)。
【0013】
図15は、状態ベクトル候補の位置成分として観測データを使用するML−PDAを用いた従来の別の追尾装置の構成を示すブロック図である。
【0014】
図15において、追尾装置1Yは、状態候補生成部93Aにおいて観測データ管理部92で選択した観測データ群が入力されることを除いては、図13におけるML−PDAを用いた従来の追尾装置1Xと同じである。
【0015】
追尾装置1Yは、状態候補生成部93Aにおいて、状態ベクトル候補の位置成分として観測データを使用する。ただし、定めた基準時刻と観測時刻が異なる場合は、速度成分の候補と組み合わせて観測時刻における状態ベクトルを定め、その状態ベクトルを予め仮定した目標運動に従って、基準時刻まで前向きあるいは後ろ向きに外挿したものを状態ベクトル候補として生成する。
【0016】
このように、追尾装置1Yでは、状態空間概探索部94で探索する範囲を絞り込むことにより、生成する状態ベクトルの候補の数を、追尾装置1Xの状態候補生成部93で生成する状態ベクトルの候補数よりも少なくすることができ、探索を高速化することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】T. Kirubarajan and Y. Bar-Shalom, Low observable target motion analysis using amplitude information, IEEE Transactions on Aerospace and Electronic Systems, vol.32, no.4, pp.1367-1384, 1996.
【非特許文献2】W. R. Blanding, P. K. Willett, Y. Bar-Shalom, and R. S. Lynch, Directed subspace search ML-PDA with application to active sonar tracking, IEEE Transactions on Aerospace and Electronic Systems, vol.44, no.1, pp.201-216, 2008.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上述したように、ML−PDAを用いた従来の追尾装置では、基準時刻を前もって設定する必要がある。この基準時刻は任意に定めることができ、例えば、最新時刻が設定される。
【0019】
ところで、センサから観測データを取得する際の観測環境、すなわち、目標が観測されているかどうかや、目標の観測誤差は時刻ごとに異なるため、基準時刻によって状態ベクトルの推定誤差は異なる。したがって、推定誤差が最小となる基準時刻を求める必要がある。
【0020】
しかし、ML−PDAを用いた従来の追尾装置では、基準時刻を固定的に設定するため、その基準時刻において推定誤差が最小とは限らず、基準時刻を設定する根拠が曖昧であるという問題点があった。
【0021】
さらに、センサの観測環境は未知であるため、推定誤差が最小となる基準時刻を求めることは困難であるという問題点があった。
【0022】
また、ML−PDAを用いた従来の追尾装置では、状態空間概探索部94において探索した状態ベクトルの候補xは尤度比関数φ(Z、x)の大域的最大点xMLに十分近いと仮定する。状態空間詳細探索部95における反復処理法は、前記仮定の下でのみ有効である。このため、前記仮定に反する状態ベクトル候補xが得られた場合は、反復処理法によって尤度比関数の局所的最大点に反復が収束してしまい、推定誤差が増大するという問題点があった。
【0023】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、基準時刻の設定根拠の曖昧さを解消し、なおかつ局所的最大点に収束した状態ベクトル推定値を排除することにより、正確な追尾結果を得ることができる追尾装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明に係る追尾装置は、センサから入力された観測データを観測時刻ごとに蓄積する観測データ蓄積部と、前記観測データ蓄積部に蓄積された観測時刻ごとの観測データのうち、航跡確立判定結果に基づいてどの観測時刻の観測データを推定に用いるかを選択する観測データ管理部と、前記観測データ管理部により選択された観測時刻をすべて基準時刻として設定し、各基準時刻における航跡の候補を状態ベクトル候補として生成する選択時刻状態候補生成部と、前記観測データ管理部により選択された観測データを用いて、前記状態ベクトル候補の尤度比を計算して、各基準時刻における尤度比が最大の状態ベクトル候補を探索する状態空間概探索部と、前記状態空間概探索部により探索された各基準時刻における尤度比が最大の状態ベクトル候補を初期値として、前記観測データ管理部により選択された観測データを用いて、反復計算により各基準時刻における尤度比が最大の状態ベクトル推定値を探索する状態空間詳細探索部と、前記各基準時刻における尤度比が最大の状態ベクトル推定値の対応関係から最新時刻の最も確からしい状態ベクトル推定値を決定する状態相関処理部と、前記最新時刻の最も確からしい状態ベクトル推定値から航跡の確立を判定して前記航跡確立判定結果を出力する航跡確立判定部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る追尾装置によれば、基準時刻の設定根拠の曖昧さを解消し、なおかつ局所的最大点に収束した状態ベクトル推定値を排除することにより、正確な追尾結果を得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の実施の形態1に係る追尾装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る追尾装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態1に係る追尾装置の基準時刻ごとの状態ベクトル推定値を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る追尾装置の予測処理及びゲート内外判定処理の結果を表す図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る追尾装置の状態ベクトル推定値のグルーピング処理結果を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1に係る追尾装置のグループごとの状態ベクトル推定値の平滑処理結果及び航跡決定結果を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係る追尾装置の構成を示すブロック図である。
【図8】この発明の実施の形態2に係る追尾装置の動作を示すフローチャートである。
【図9】この発明の実施の形態3に係る追尾装置の構成を示すブロック図である。
【図10】この発明の実施の形態3に係る追尾装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】この発明の実施の形態4に係る追尾装置の構成を示すブロック図である。
【図12】この発明の実施の形態4に係る追尾装置の動作を示すフローチャートである。
【図13】ML−PDAを用いた従来の追尾装置の構成を示すブロック図である。
【図14】ML−PDAを用いた従来の追尾装置の動作を示すフローチャートである。
【図15】状態ベクトル候補の位置成分として観測データを使用するML−PDAを用いた従来の別の追尾装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の追尾装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0028】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係る追尾装置について図1から図6までを参照しながら説明する。図1は、この発明の実施の形態1に係る追尾装置の構成を示すブロック図である。なお、以降では、各図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0029】
図1において、この発明の実施の形態1に係る追尾装置1は、観測データ蓄積部11と、観測データ管理部12と、選択時刻状態候補生成部13と、状態空間概探索部14と、状態空間詳細探索部15と、状態相関処理部16と、航跡確立判定部22とが設けられている。
【0030】
また、図1において、状態相関処理部16は、予測処理部17と、ゲート内外判定部18と、グルーピング処理部19と、平滑処理部20と、航跡決定部21とが設けられている。
【0031】
つぎに、この実施の形態1に係る追尾装置の動作について図面を参照しながら説明する。
【0032】
図2は、この発明の実施の形態1に係る追尾装置の動作を示すフローチャートである。
【0033】
まず、ステップ101において、観測データ蓄積部11は、センサから観測データを取得する。
【0034】
次に、ステップ102において、観測データ蓄積部11は、取得した観測データを観測時刻ごとに蓄積する。
【0035】
次に、ステップ103において、観測データ管理部12は、観測データ蓄積部11に蓄積された各時刻の観測データ群のうち、どの時刻の観測データ群を選択時刻状態候補生成部13、状態空間概探索部14、状態空間詳細探索部15、及び状態相関処理部16に出力するかを、航跡確立判定部22の航跡確立判定結果を基に選択する。
【0036】
次に、ステップ104において、選択時刻状態候補生成部13は、観測データ管理部12で選択した時刻列tからtまでのすべてを基準時刻として設定し、この基準時刻ごとに状態ベクトル候補群を生成し、状態空間概探索部14に出力する。ただし、計算負荷の低減のため、状態ベクトル候補の位置成分として観測データを状態空間に写像したものを使用する。
【0037】
次に、ステップ105において、状態空間概探索部14は、選択時刻状態候補生成部13から入力された基準時刻tからtまでの状態ベクトル候補群を入力し、基準時刻tからtまでの時刻ごとに、観測データ管理部12で選択した時刻tからtまでの観測データ群を用いて、状態ベクトル候補の中で尤度比関数φ(Z、x)が最大となるxからxまでを1個ずつ探索し、状態空間詳細探索部15に出力する。
【0038】
次に、ステップ106において、状態空間詳細探索部15は、状態空間概探索部14から入力された基準時刻tからtまでの状態ベクトル候補xからxまでをそれぞれ初期値として、基準時刻tからtまでの時刻ごとに、観測データ管理部12で選択した時刻tからtまでの観測データ群を用いて、反復処理法により尤度比関数φ(Z、x)を最大化する状態ベクトルx**からx**までを探索し、状態相関処理部16に状態ベクトル推定値x**からx**までを出力する。
【0039】
なお、以上の選択時刻状態候補生成部13、状態空間概探索部14、及び状態空間詳細探索部15の各機能は、従来の追尾装置における各機能について基準時刻を複数個設定した場合に相当し、設定した基準時刻の数だけ従来の追尾装置における各機能の動作を反復することで実現できる。
【0040】
つづいて、状態相関処理部16の機能の詳細について図3から図6までを参照しながら説明する。
【0041】
図3は、この発明の実施の形態1に係る追尾装置の基準時刻ごとの状態ベクトル推定値を示す図である。また、図4は、この発明の実施の形態1に係る追尾装置の予測処理及びゲート内外判定処理の結果を表す図である。また、図5は、この発明の実施の形態1に係る追尾装置の状態ベクトル推定値のグルーピング処理結果を示す図である。さらに、図6は、この発明の実施の形態1に係る追尾装置のグループごとの状態ベクトル推定値の平滑処理結果及び航跡決定結果を示す図である。
【0042】
まず、ステップ107において、予測処理部17は、図3に示すような、状態空間詳細探索部15から入力された基準時刻tからtまでの状態ベクトル推定値x**からx**までを順番に、図4に示すように、予め仮定した目標運動に従って最新時刻tまで前向きに外挿する。ここで、状態ベクトル推定値x**を時刻t(ただし1≦i<k≦Nとする)まで外挿したものを状態ベクトル予測値xi、k**と呼ぶ。
【0043】
次に、ステップ108において、ゲート内外判定部18は、図4に示すように、ある基準時刻tにおける状態ベクトル推定値x**と、予測処理部17で求めた状態ベクトル予測値xi、k**(ただし1≦i<k≦Nとする)との対応関係を、式(1)に示すような、予め定めた行列Cに基づく距離di、kにより評価する。距離di、kが、予め定めた閾値d以下であれば、状態ベクトル推定値x**と状態ベクトル予測値x**は対応が有り、さもなければ、つまり距離di、kが、予め定めた閾値dより大きい(長い)場合には、状態ベクトル推定値x**と状態ベクトル予測値x**は対応が無いと判定する。この判定を、基準時刻tからtまでのすべてについて行う。
【0044】
【数1】

【0045】
次に、ステップ109において、グルーピング処理部19は、図5に示すように、状態ベクトル推定値x**からx**までについて、ゲート内外判定部18において対応ありと判定されたものを1つのグループΓとしてまとめる。ここで、状態ベクトル推定値x**からx**はグループΓからΓまでに分割されたとする。
【0046】
次に、ステップ110において、平滑処理部20は、図6に示すように、グループΓからΓまでに属する状態ベクトル推定値をフィルタで処理することによって、各グループの最新時刻tにおける状態ベクトル平滑値x***からx***を求める。
【0047】
ただし、一般に、あるグループΓの属する状態ベクトルの時刻は、時刻tからtまでのうちいくつかを取り除いたものとなっている。取り除かれた時刻における状態ベクトルの推定値は、その直前の時刻における状態ベクトル推定値を予め仮定した目標運動に従って前向きに外挿することによって求める。
【0048】
そして、ステップ111において、航跡決定部21は、グループΓからΓまでの最新時刻tにおける状態ベクトル平滑値x***からx***までについて、観測データ管理部12で選択した時刻tからtまでの観測データ群を用いて、尤度比関数φ(Z、x)を計算し、尤度比関数値が最も大きいグループの状態ベクトル平滑値x***と尤度比関数φ(Z、x***)とを選択して航跡を決定し、状態ベクトル平滑値x***と尤度比関数φ(Z、x***)とを、航跡確立判定部22に出力する。
【0049】
ただし、尤度比関数値が最も大きいグループが複数個存在した場合は、グループに属する状態ベクトル平滑値の数が最も多いグループの状態ベクトル平滑値x***とφ(Z、x***)とを選択し、航跡確立判定部22に出力する。
【0050】
最後に、ステップ112において、航跡確立判定部22では、予め定めた判定条件に従って航跡確立を判定し、判定結果を観測データ管理部12に出力する。また、航跡確立判定部22では、航跡確立の判定結果にかかわらず、状態相関処理部16から入力された状態ベクトル平滑値x***を推定値として出力する。
【0051】
以上のように、本実施の形態1によれば、状態ベクトルの推定に使用する観測データの時刻すべてを基準時刻として設定して状態ベクトルを推定することで、基準時刻の設定根拠の曖昧さを解消することが可能となる。
【0052】
また、異なる複数の基準時刻における状態ベクトルを推定し、グルーピング処理によりそれらの対応関係を判別することで、ある基準時刻において局所的最大点に収束した状態ベクトル推定値を抽出し、そのような状態ベクトル推定値を排除することが可能となる。
【0053】
さらに、異なる複数の基準時刻における状態ベクトル推定値をフィルタで処理することによって、推定誤差の増大をさらに抑圧するという効果を奏する。
【0054】
なお、本実施の形態1では、ステップ108において、状態ベクトル推定値x**と状態ベクトル予測値xi、k**の距離di、kを式(1)で与えるものとして説明したが、状態ベクトル推定値の位置成分Hx**、Hxi、k**(Hは観測行列であり、状態空間から観測データ空間への写像を表す)と、予め定めた行列Dに基づく式(2)の距離di、k'で与えることもできる。この場合、計算する行列のサイズが式(1)よりも小さくなり、計算時間を短縮することが可能となる。
【0055】
【数2】

【0056】
また、本実施の形態1では、ステップ110において、各グループの最新時刻tにおける状態ベクトル平滑値の計算にフィルタを用いるものとして説明したが、各グループに含まれる最も新しい時刻の状態ベクトル推定値を基準として、予め仮定した目標運動に従って最新時刻tまで外挿することによって求めることもできる。この場合、複雑なフィルタ計算を省略することによって、計算時間を短縮することが可能となる。
【0057】
また、本実施の形態1では、状態空間概探索部14において、基準時刻ごとに尤度比関数が最大となる状態ベクトル候補を1個ずつ探索し、状態空間詳細探索部15においてそれらを初期値として反復処理法を適用して収束点を1個ずつ探索するものとして説明したが、最終的にK個の収束点を求め、得られたK×N個の状態ベクトル推定値の対応関係を判別する方法でも良く、収束点は1個に限られない。ただし、収束点を1個に限ることにより、対応関係の判別問題のサイズが小さくなり、計算時間を短縮することが可能となる。
【0058】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る追尾装置について図7及び図8を参照しながら説明する。図7は、この発明の実施の形態2に係る追尾装置の構成を示すブロック図である。
【0059】
図7において、この発明の実施の形態2に係る追尾装置1Aの構成は、上記の実施の形態1の構成と比較すると、基準時刻設定部23と、状態ベクトル推定値記憶部24とをさらに備えている点が異なっている。
【0060】
つぎに、この実施の形態2に係る追尾装置の動作について図面を参照しながら説明する。
【0061】
図8は、この発明の実施の形態2に係る追尾装置の動作を示すフローチャートである。この図8のステップ201−203、205−207、209−212、215及び216は、図2のステップ101−112にそれぞれに相当する。
【0062】
図8において、この発明の実施の形態2に係る追尾装置1Aの動作は、上記の実施の形態1の動作と比較すると、ステップ104−105の「基準時刻におけるループ」の代わりに、ステップ204(基準時刻設定)と、ステップ208(状態ベクトル推定値記憶)とを付加している点と、ステップ212とステップ215の間に条件分岐(ステップ213、214)を付加している点が異なっている。そこで、本実施の形態2に係る追尾装置1Aの動作について、これらの相違点を中心に、以下に説明する。
【0063】
まず、ステップ204において、基準時刻設定部23は、観測データ管理部12で選択した時刻列tからtまでについて、最初に時刻tを基準時刻に設定する。また、航跡決定部21において航跡が決定されない場合、t、t、...、と基準時刻を1つずつ進める。以下、基準時刻設定部23で設定する基準時刻を「現在の基準時刻」と呼び、現在の基準時刻より過去の基準時刻を「過去の基準時刻」と呼ぶ。
【0064】
次に、ステップ205からステップ207までにおいて、選択時刻状態候補生成部13、状態空間概探索部14、及び状態空間詳細探索部15は、現在の基準時刻に関する状態空間探索を行い、ゲート内外判定部18に出力する。
【0065】
また、ステップ208において、状態ベクトル推定値記憶部24は、現在の基準時刻における状態ベクトル推定値を記憶する。
【0066】
次に、ステップ209において、予測処理部17は、状態ベクトル推定値記憶部24に蓄積された過去の基準時刻における状態ベクトル推定値群を、予め仮定した目標運動に従って現在の基準時刻まで前向きに外挿し、状態ベクトル予測値群を計算する。
【0067】
次に、ステップ210、ステップ211、及びステップ212は、過去及び現在の基準時刻における状態ベクトル推定値に対する動作である点を除いては、上記の実施の形態1における動作と同様である。
【0068】
次に、ステップ213において、航跡決定部21は、グループに属する状態ベクトル平滑値の数が予め定めたM個以上となるグループが存在するならば、航跡決定可能と判定する。そして、ステップ215において、状態ベクトル平滑値の数がM個以上のグループの状態ベクトル平滑値を選択し、航跡を決定する。
【0069】
一方、ステップ214において、航跡決定可能と判定されない場合、現在の基準時刻が、観測データ管理部12で選択した最新時刻tと等しいならば、ステップ215において、グループに属する状態ベクトル平滑値の数が最も多いグループの状態ベクトル平滑値を選択し、航跡を決定する。
【0070】
さらに、航跡決定部21は、航跡を決定した場合、選択したグループの状態ベクトル平滑値を最新時刻tまで前向きに外挿する。
【0071】
以上のように、本実施の形態2では、観測データの時刻列から基準時刻を順番に設定し、基準時刻に関して逐次的に状態ベクトルを推定し、状態ベクトル推定値の対応がM個以上となった場合は以降の基準時刻において推定しない。これにより、上記の実施の形態1において、観測データの時刻列をすべて基準時刻に設定し、基準時刻に関して同時並行的に状態ベクトルを推定するよりも計算負荷を軽減させることが可能となる。
【0072】
なお、本実施の形態2では、ステップ210において、上記の実施の形態1と同様、状態ベクトル推定値x**と状態ベクトル予測値xi、k**の距離を式(1)で与えるものとして説明したが、式(2)で与えることもできることは言うまでもない。
【0073】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係る追尾装置について図9及び図10を参照しながら説明する。図9は、この発明の実施の形態3に係る追尾装置の構成を示すブロック図である。
【0074】
図9において、この発明の実施の形態3に係る追尾装置1Bの構成は、上記の実施の形態1の構成と比較すると、状態相関処理部16と航跡確立判定部22との間に、最新時刻状態ベクトル推定値記憶部25と、最新時刻状態相関処理部26とをさらに備えている点が異なっている。
【0075】
つぎに、この実施の形態3に係る追尾装置の動作について図面を参照しながら説明する。
【0076】
図10は、この発明の実施の形態3に係る追尾装置の動作を示すフローチャートである。この図10のステップ301−311及び318は、図2のステップ101−112にそれぞれに相当する。
【0077】
図10において、この発明の実施の形態3に係る追尾装置1Bの動作は、上記の実施の形態1の動作と比較すると、ステップ311とステップ318の間に、ステップ312(最新時刻状態ベクトル推定値記憶)からステップ317(航跡決定)までを付加している点が異なっている。しかし、ステップ312(最新時刻状態ベクトル推定値記憶)を除いて、ステップ313からステップ317までは、上記の実施の形態1のステップ107(予測処理)からステップ111(航跡決定)までと同様である。そこで、本実施の形態3に係る追尾装置1Bの動作について、これらの相違点を中心に、以下に説明する。
【0078】
まず、ステップ301からステップ311までの動作により、追尾装置1Bは、上記の実施の形態1の構成及び動作と同様、最新時刻の状態ベクトル推定値を出力する。
【0079】
次に、ステップ312において、最新時刻状態ベクトル推定値記憶部25は、最新時刻の状態ベクトル推定値を記憶する。また、航跡確立判定部22の航跡確立判定結果を基に、過去何時刻分の状態ベクトル推定値を記憶するかを決定し、その時刻分よりも過去の状態ベクトル推定値を最新時刻状態ベクトル推定値記憶部25から削除する。
【0080】
次に、ステップ313からステップ317までにおいて、最新時刻状態相関処理部26の動作は、上述したように、ステップ107からステップ111までの状態相関処理部16の動作と同様である。
【0081】
ただし、状態相関処理部16における入力値は、時刻tからtまでの観測データから求めた基準時刻tからtまでの状態ベクトル推定値であり、これらの状態ベクトル推定値は、用いた観測データの時刻はすべて同じである。一方、最新時刻状態相関処理部26における入力値は、状態相関処理部16から出力された過去及び最新時刻の状態ベクトル推定値であり、これらの状態ベクトル推定値は、用いた観測データの時刻列が異なっている。すなわち、最新時刻状態相関処理部26においては、異なる時刻列の観測データからの状態ベクトル推定値の対応関係を判別している。
【0082】
以上のように、本実施の形態3によれば、異なる複数の時刻列の観測データから状態ベクトルを推定し、グルーピング処理によりそれらの対応関係を判別することで、ある時刻列の観測データを用いた推定で局所的最大点への収束を排除できなかった場合についても、そのような状態ベクトル推定値を排除することが可能となる。
【0083】
なお、本実施の形態3では、ステップ308及びステップ314において、上記の実施の形態1と同様、状態ベクトル推定値x**と状態ベクトル予測値xi、k**の距離を式(1)で与えるものとして説明したが、式(2)で与えることもできることは言うまでもない。
【0084】
また、本実施の形態3では、ステップ301からステップ311までにおいて、上記の実施の形態1の構成と動作を用いるものとして説明したが、上記の実施の形態2の構成と図8の動作を用いても、同様の効果を得ることができる。
【0085】
実施の形態4.
この発明の実施の形態4に係る追尾装置について図11及び図12を参照しながら説明する。図11は、この発明の実施の形態4に係る追尾装置の構成を示すブロック図である。
【0086】
図11において、この発明の実施の形態4に係る追尾装置1Cの構成は、上記の実施の形態1の構成と比較すると、状態相関処理部16から航跡決定部21を取り除いた構成を状態相関処理部16Bとしている点と、予測処理部32と、検定処理部33とをさらに備えている点が異なっている。
【0087】
つぎに、この実施の形態4に係る追尾装置の動作について図面を参照しながら説明する。
【0088】
図12は、この発明の実施の形態4に係る追尾装置の動作を示すフローチャートである。この図12のステップ401−410及び414は、図2のステップ101−110及び112にそれぞれに相当する。
【0089】
図12において、この発明の実施の形態4に係る追尾装置1Cの動作は、上記の実施の形態1の動作と比較すると、ステップ111の代わりに、ステップ411(予測処理)からステップ413(検定処理)までを付加している点が異なっている。そこで、本実施の形態4に係る追尾装置1Cの動作について、これらの相違点を中心に、以下に説明する。
【0090】
まず、ステップ410までの動作により、状態相関処理部16Bは、グループΓからΓまでの状態ベクトル平滑値x***からx***までを出力する。この状態ベクトル平滑値x***からx***までは最新時刻tにおける状態ベクトルを推定するものである。
【0091】
次に、ステップ411において、予測処理部32は、入力された各グループの状態ベクトル平滑値x***からx***までを、予め仮定した目標運動に従って最新時刻より1サンプル未来時刻tN+1まで前向きに外挿し、各グループの状態ベクトル予測値x1、N+1***からxn、N+1***までを計算して出力する。
【0092】
次に、ステップ412において、観測データ管理部12は、最新時刻より1サンプル未来時刻tN+1の観測データzN+1、1からzN+1、mまでを観測データ蓄積部11から取得し、検定処理部33に出力する。
【0093】
次に、ステップ413において、検定処理部33は、グループΓの状態ベクトル予測値xj、N+1***と、時刻tN+1のある観測データzN+1、kとの対応関係を、式(3)に示すような、予め定めた行列EN+1に基づく距離dj、k''により評価する。そして、検定処理部33は、距離dj、k''が予め定めた閾値d'以下となるような観測データzN+1、kが存在するグループΓの状態ベクトル平滑値x***とφ(Z、x***)とを航跡確立判定部22に出力する。
【0094】
【数3】

【0095】
ただし、すべてのグループΓにおいて距離dj、k''が閾値d'以下となる観測データzN+1、kが存在しなかった場合や、距離dj、k''が閾値d'以下となる観測データzN+1、kが存在するグループが複数存在した場合は、グループに属する状態ベクトル推定値の数が最も多いグループの状態ベクトル平滑値x***とφ(Z、x***)とを選択し、航跡確立判定部22に出力する。
【0096】
以上のように、本実施の形態4によれば、時刻tからtまでの観測データから推定した状態ベクトルを、時刻tN+1における観測データを用いて検定することで、局所最大点に収束した状態ベクトル推定値を判別し、排除することが可能となる。
【0097】
なお、本実施の形態4では、ステップ408において、上記の実施の形態1と同様、状態ベクトル推定値x**と状態ベクトル予測値xi、k**の距離を式(1)で与えるものとして説明したが、式(2)で与えることもできることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0098】
1、1A、1B、1C 追尾装置、11 観測データ蓄積部、12 観測データ管理部、13 選択時刻状態候補生成部、14 状態空間概探索部、15 状態空間詳細探索部、16 状態相関処理部、16A 状態相関処理部、16B 状態相関処理部、17 予測処理部、18 ゲート内外判定部、19 グルーピング処理部、20 平滑処理部、21 航跡決定部、22 航跡確立判定部、23 基準時刻設定部、24 状態ベクトル推定値記憶部、25 最新時刻状態ベクトル推定値記憶部、26 最新時刻状態相関処理部、27 予測処理部、28 ゲート内外判定部、29 グルーピング処理部、30 平滑処理部、31 航跡決定部、32 予測処理部、33 検定処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサから入力された観測データを観測時刻ごとに蓄積する観測データ蓄積部と、
前記観測データ蓄積部に蓄積された観測時刻ごとの観測データのうち、航跡確立判定結果に基づいてどの観測時刻の観測データを推定に用いるかを選択する観測データ管理部と、
前記観測データ管理部により選択された観測時刻をすべて基準時刻として設定し、各基準時刻における航跡の候補を状態ベクトル候補として生成する選択時刻状態候補生成部と、
前記観測データ管理部により選択された観測データを用いて、前記状態ベクトル候補の尤度比を計算して、各基準時刻における尤度比が最大の状態ベクトル候補を探索する状態空間概探索部と、
前記状態空間概探索部により探索された各基準時刻における尤度比が最大の状態ベクトル候補を初期値として、前記観測データ管理部により選択された観測データを用いて、反復計算により各基準時刻における尤度比が最大の状態ベクトル推定値を探索する状態空間詳細探索部と、
前記各基準時刻における尤度比が最大の状態ベクトル推定値の対応関係から最新時刻の最も確からしい状態ベクトル推定値を決定する状態相関処理部と、
前記最新時刻の最も確からしい状態ベクトル推定値から航跡の確立を判定して前記航跡確立判定結果を出力する航跡確立判定部と
を備えたことを特徴とする追尾装置。
【請求項2】
前記状態相関処理部は、
前記各基準時刻における尤度比が最大の状態ベクトル推定値を、予め仮定した目標運動に従って最新時刻に至るまで前向きに外挿して状態ベクトル予測値を計算する予測処理部と、
前記各基準時刻における状態ベクトル推定値と前記予測処理部により計算された状態ベクトル予測値の対応関係の有無を判定するゲート内外判定部と、
前記各基準時刻における状態ベクトル推定値について、前記ゲート内外判定部により対応関係が有と判定された状態ベクトル推定値を1つのグループとしてまとめるグルーピング処理部と、
前記グルーピング処理部によりグループ化された状態ベクトル推定値を平滑処理することによって各グループの最新時刻における状態ベクトル平滑値を求める平滑処理部と、
前記各グループの最新時刻における状態ベクトル平滑値について、前記観測データ管理部により選択された観測データを用いて、尤度比を計算して尤度比が最大のグループの状態ベクトル平滑値を選択して航跡を決定する航跡決定部とを有する
ことを特徴とする請求項1記載の追尾装置。
【請求項3】
前記観測データ管理部により選択された観測時刻のうち、前記航跡決定部からの航跡決定結果に基づいて所定の観測時刻を現在の基準時刻として設定する基準時刻設定部をさらに備え、
前記選択時刻状態候補生成部は、前記現在の基準時刻における航跡の候補を状態ベクトル候補として生成し、
前記状態空間概探索部は、前記観測データ管理部により選択された観測データを用いて、前記状態ベクトル候補の尤度比を計算して、前記現在の基準時刻における尤度比が最大の状態ベクトル候補を探索し、
前記状態空間詳細探索部は、前記状態空間概探索部により探索された現在の基準時刻における尤度比が最大の状態ベクトル候補を初期値として、前記観測データ管理部により選択された観測データを用いて、反復計算により現在の基準時刻における尤度比が最大の状態ベクトル推定値を探索し、
前記状態相関処理部は、
前記状態空間詳細探索部により探索された現在の基準時刻における状態ベクトル推定値を蓄積する状態ベクトル推定値記憶部をさらに有し、
前記予測処理部は、前記状態ベクトル推定値記憶部に蓄積された過去の基準時刻における状態ベクトル推定値群を、予め仮定した目標運動に従って現在の基準時刻まで前向きに外挿して状態ベクトル予測値を計算し、
前記ゲート内外判定部は、過去及び現在の基準時刻における状態ベクトル推定値と前記予測処理部により計算された状態ベクトル予測値の対応関係の有無を判定し、
前記グルーピング処理部は、過去及び現在の基準時刻における状態ベクトル推定値について、前記ゲート内外判定部により対応関係が有と判定された状態ベクトル推定値を1つのグループとしてまとめる
ことを特徴とする請求項2記載の追尾装置。
【請求項4】
前記状態相関処理部により決定された最新時刻の最も確からしい状態ベクトル推定値を蓄積する最新時刻状態ベクトル推定値記憶部と、
前記最新時刻状態ベクトル推定値記憶部に蓄積された過去及び最新時刻の状態ベクトル推定値の対応関係から最新時刻の最も確からしい状態ベクトル推定値を決定する最新時刻状態相関処理部をさらに備え、
前記最新時刻状態相関処理部は、
前記過去及び最新時刻における尤度比が最大の状態ベクトル推定値を、予め仮定した目標運動に従って最新時刻まで前向きに外挿して状態ベクトル予測値を計算する予測処理部と、
前記過去及び最新時刻における状態ベクトル推定値と前記予測処理部により計算された状態ベクトル予測値の対応関係の有無を判定するゲート内外判定部と、
前記過去及び最新時刻における状態ベクトル推定値について、前記ゲート内外判定部により対応関係が有と判定された状態ベクトル推定値を1つのグループとしてまとめるグルーピング処理部と、
前記グルーピング処理部によりグループ化された状態ベクトル推定値を平滑処理することによって各グループの最新時刻における状態ベクトル平滑値を求める平滑処理部と、
前記各グループの最新時刻における状態ベクトル平滑値について、前記観測データ管理部により選択された観測データを用いて、尤度比を計算して尤度比が最大のグループの状態ベクトル平滑値を選択して航跡を決定する航跡決定部とを有する
ことを特徴とする請求項1記載の追尾装置。
【請求項5】
前記状態相関処理部は、
前記各基準時刻における尤度比が最大の状態ベクトル推定値を、予め仮定した目標運動に従って最新時刻に至るまで前向きに外挿して状態ベクトル予測値を計算する第1の予測処理部と、
前記各基準時刻における状態ベクトル推定値と前記第1の予測処理部により計算された状態ベクトル予測値の対応関係の有無を判定するゲート内外判定部と、
前記各基準時刻における状態ベクトル推定値について、前記ゲート内外判定部により対応関係が有と判定された状態ベクトル推定値を1つのグループとしてまとめるグルーピング処理部と、
前記グルーピング処理部によりグループ化された状態ベクトル推定値を平滑処理することによって各グループの最新時刻における状態ベクトル平滑値を求める平滑処理部とを有し、
前記平滑処理部により求めた各グループの最新時刻における状態ベクトル平滑値を、予め仮定した目標運動に従って最新時刻より1サンプル未来時刻まで前向きに外挿して、各グループの状態ベクトル予測値を計算する第2の予測処理部と、
前記観測データ蓄積部から最新時刻より1サンプル未来時刻の観測データを取得し、前記最新時刻より1サンプル未来時刻の観測データと前記各グループの状態ベクトル予測値との対応関係の有無に基づいて最も確からしい状態ベクトル推定値を決定する検定処理部とをさらに備えた
ことを特徴とする請求項1記載の追尾装置。
【請求項6】
前記ゲート内外判定部は、前記状態ベクトル推定値と前記状態ベクトル予測値との間の距離と予め定めた閾値の大小関係に基づいて、前記対応関係の有無を判定する
ことを特徴とする請求項2から請求項5までのいずれかに記載の追尾装置。
【請求項7】
前記状態空間概探索部及び前記状態空間詳細探索部は、前記各基準時刻における状態ベクトル推定値を尤度比の大きいものから複数個抽出し、
前記状態相関処理部は、各基準時刻における複数個の状態ベクトル推定値の対応関係から最も確からしい状態ベクトル推定値を決定する
ことを特徴とする請求項1記載の追尾装置。
【請求項8】
前記検定処理部は、前記観測データと前記状態ベクトル予測値との間の距離と予め定めた閾値の大小関係に基づいて最も確からしい状態ベクトル推定値を決定する
ことを特徴とする請求項5記載の追尾装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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