説明

送りねじ駆動装置及びこれを用いる部品実装機

【課題】 送りねじの熱膨張による影響を回避すると共に、駆動装置の静音化を可能とする送りねじ駆動装置を提供する。
【解決手段】 本発明の送りねじ駆動装置は、送りねじと、送りねじの両端部にそれぞれ設けられた一対の歯車機構と、一対の歯車機構を介して送りねじをそれぞれ駆動する一対のモータと、送りねじの両端部をそれぞれ支持する一対の支持部と、を備え、一対の支持部の一方は、送りねじを軸線方向に移動不能に支持する固定支持部であり、一対の支持部の他方は、送りねじを軸線方向に移動可能に支持する可動支持部であり、固定支持部側に設けられた歯車機構は、送りねじの固定支持部側端部および固定支持部側モータの出力軸にそれぞれ固定されたはすば歯車を備え、可動支持部側に設けられた歯車機構は、送りねじの可動支持部側端部および可動支持部側モータの出力軸にそれぞれ固定された平歯車を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータによって駆動される送りねじ駆動装置及びこれを用いる部品実装機に関する。
【背景技術】
【0002】
モータによって駆動される送りねじ駆動装置の一例として、例えば、特許文献1に挙げられる発明が知られている。特許文献1に記載の発明は、ボールねじの両端部にそれぞれ連結された一対のモータを駆動することにより、被駆動部を直線方向に移動させることができる。特許文献1に記載の発明では、一対のモータによってボールねじを駆動することにより、1個のモータによってボールねじを駆動する場合と比べて、モータ1個当りの出力を小さくして、モータの小型化を図っている。また、特許文献1に記載の発明では、一対のモータによってボールねじを駆動することにより共振周波数を高くして、振動騒音の低減を狙っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−069782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、ボールねじの熱膨張について考慮されていない。ボールねじが熱膨張によって延伸すると、ボールねじの軸方向剛性及びねじり剛性が変化して、ボールねじ駆動機構の固有振動数が変化する。そのため、制御系の安定性や位置決め時の残留振動に影響を与える。また、ボールねじ駆動機構の固有振動数が変化するため、必ずしも振動騒音の低減が図られるとは限らない。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、送りねじの熱膨張による影響を回避すると共に、駆動装置の静音化を可能とする送りねじ駆動装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る送りねじ駆動装置は、送りねじと、送りねじの両端部にそれぞれ設けられた一対の歯車機構と、一対の歯車機構を介して送りねじをそれぞれ駆動する一対のモータと、送りねじの両端部をそれぞれ支持する一対の支持部と、を備える送りねじ駆動装置であって、一対の支持部の一方は、送りねじを軸線方向に移動不能に支持する固定支持部であり、一対の支持部の他方は、送りねじを軸線方向に移動可能に支持する可動支持部であり、固定支持部側に設けられた歯車機構は、送りねじの固定支持部側端部および一対のモータのうち固定支持部側に設けられた固定支持部側モータの出力軸にそれぞれ固定されたはすば歯車を備え、可動支持部側に設けられた歯車機構は、送りねじの可動支持部側端部および一対のモータのうち可動支持部側に設けられた可動支持部側モータの出力軸にそれぞれ固定された平歯車を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る送りねじ駆動装置は、請求項1において、固定支持部側モータと同期回転する回転検出装置で検出された回転位相情報に基づいて、固定支持部側モータおよび可動支持部側モータを同期制御するモータ制御部を備える。
【0008】
請求項3に係る部品実装機は、基板を搬送経路に沿って部品実装位置に搬入し位置決めして搬出する基板搬送装置と、複数の部品を収容する部品収容装置が複数個着脱可能に取り付けられる部品供給装置と、部品収容装置から部品を採取して位置決めされた基板に装着する部品移載装置と、を備える部品実装機であって、部品移載装置を部品供給装置と位置決めされた基板との間で移動させる移載装置駆動機構が、請求項1又は2に記載の送りねじ駆動装置で構成されている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る送りねじ駆動装置によれば、一対のモータによって送りねじを駆動することができるので、1個のモータによって送りねじを駆動する場合と比べて、モータ1個当りの出力を小さくして、固定支持部側モータ及び可動支持部側モータを小型化することができる。また、可動支持部側に設けられた歯車機構に平歯車を備えるので、送りねじが熱膨張によって軸線方向に延伸しても、送りねじの軸方向剛性及びねじり剛性の変化を小さくすることができ、送りねじ駆動装置の固有振動数の変化を小さくすることができる。そのため、熱膨張による送りねじの劣化を抑制することができ、制御系の安定性が向上し、位置決め時の残留振動に対する影響を少なくすることができる。さらに、固定支持部側に設けられた歯車機構にはすば歯車を備えるので、一対の歯車機構の両方に平歯車を備える場合と比べて、送りねじ駆動装置の静音性の向上を図ることができる。
【0010】
請求項2に係る送りねじ駆動装置によれば、はすば歯車に連結される固定支持部側モータの回転検出装置で検出された回転位相情報に基づいて、固定支持部側モータおよび可動支持部側モータを同期制御して送りねじを駆動することができる。はすば歯車は、平歯車と比べて歯車のかみ合い率を大きくすることができ、トルク変動を小さくすることができるので、平歯車に連結される可動支持部側モータの回転位相情報に基づいて送りねじを駆動する場合と比べて、固定支持部側モータおよび可動支持部側モータの制御性を向上させることができる。そのため、請求項2に係る送りねじ駆動装置は、送りねじ駆動装置の送り精度や位置決め精度を向上させることができる。
【0011】
請求項3に係る部品実装機によれば、部品移載装置を部品供給装置と位置決めされた基板との間で移動させる移載装置駆動機構が、請求項1又は2に記載の送りねじ駆動装置で構成されているので、送りねじの熱膨張対策が可能であり、移載装置駆動機構のコンパクト化及び静音性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】送りねじ駆動装置の構成を示す構成図である。
【図2】モータ制御部の構成の一例を示す構成図である。
【図3】モータ制御部の制御ブロックの一例を示すブロック図である。
【図4】部品実装機の一例を示す斜視図である。
【図5】移載装置駆動機構の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図は概念図であり、細部構造の寸法まで規定するものではない。
【0014】
(1)送りねじ駆動装置
図1は、送りねじ駆動装置の構成を示す構成図である。本実施形態に係る送りねじ駆動装置は、送りねじ1と、送りねじ1の両端部にそれぞれ設けられた一対の歯車機構2と、一対の歯車機構2を介して送りねじ1をそれぞれ駆動する一対のモータ3と、送りねじ1の両端部をそれぞれ支持する一対の支持部4と、一対のモータ3を同期制御するモータ制御部5と、を備えている。
【0015】
送りねじ1は、送りねじ軸11が軸受12、12を介して一対の支持部4によって軸支されている。送りねじ軸11及び軸受12は、ナット18で一対の支持部4に保持されており、送りねじ軸11の紙面左方向一端側は、さらに押え部19で保持されている。送りねじ軸11には、ボールナット13が螺合されており、ボールナット13には、被駆動部14が接続されている。被駆動部14は、同図に示す軸線方向Xに移動可能にガイド15、15に載架されている。送りねじ1は、例えば、公知の位置決め機構や送り機構で用いられるボールねじ駆動機構を用いることができる。送りねじ軸11が回転すると、送りねじ軸11とボールナット13間で図示しないボールが転動して、送りねじ軸11の回転運動が直線運動に変換される。これにより、被駆動部14を軸線方向Xに直動案内することができる。
【0016】
一対の支持部4の一方は、送りねじ1を軸線方向Xに移動不能に支持する固定支持部41であり、一対の支持部4の他方は、送りねじ1を軸線方向Xに移動可能に支持する可動支持部42である。固定支持部41及び可動支持部42は、基台と一体に形成されている。固定支持部41は、軸受12と嵌合可能な凹部411を有し、送りねじ1を軸支する一方の軸受12が凹部411に嵌合されている。これにより、固定支持部41は、送りねじ1を軸線方向Xに移動不能に支持している。可動支持部42は、軸線方向Xに延在する当接部421を有し、送りねじ1を軸支する他方の軸受12が当接部421に対して摺動可能に当接している。これにより、可動支持部42は、送りねじ1を軸線方向Xに移動可能に支持している。
【0017】
固定支持部41側に設けられた歯車機構2は、はすば歯車21を備えている。はすば歯車21は、第1はすば歯車211及び第2はすば歯車212が歯合されている。第1はすば歯車211は、送りねじ1の固定支持部側端部16に連結されており、第2はすば歯車212は、一対のモータ3のうち固定支持部41側に設けられた固定支持部側モータ31の出力軸311に図示しないカップリングを介して連結されている。第1はすば歯車211及び第2はすば歯車212は、歯すじが回転軸に対して傾斜しており、歯当りが分散されるので、静音性に優れトルク変動を少なくすることができる。第1はすば歯車211及び第2はすば歯車212は、歯車同士がスラスト荷重を打ち消しあうように、回転軸に対する歯すじの傾斜角が設定されており、スラスト荷重を受ける図示しない軸受で軸支されている。
【0018】
可動支持部42側に設けられた歯車機構2は、平歯車22を備えている。平歯車22は、第1平歯車221及び第2平歯車222が歯合されている。第1平歯車221は、送りねじ1の可動支持部側端部17に連結されており、第2平歯車222は、一対のモータ3のうち可動支持部42側に設けられた可動支持部側モータ32の出力軸321に図示しないカップリングを介して連結されている。第1平歯車221及び第2平歯車222は、歯すじが回転軸と平行であり、送りねじ1が熱膨張により軸線方向Xに延伸した場合においても歯合可能に歯幅が設定されている。
【0019】
本実施形態では、可動支持部42側に設けられた歯車機構2に平歯車22を備えるので、送りねじ1が熱膨張によって軸線方向Xに延伸しても、送りねじ1の軸方向剛性及びねじり剛性の変化を小さくすることができ、送りねじ駆動装置の固有振動数の変化を小さくすることができる。そのため、熱膨張による送りねじ1の劣化を抑制することができ、制御系の安定性が向上し、位置決め時の残留振動に対する影響を少なくすることができる。さらに、固定支持部41側に設けられた歯車機構2にはすば歯車21を備えるので、一対の歯車機構2の両方に平歯車22を備える場合と比べて、送りねじ駆動装置の静音性を向上させることができる。
【0020】
第1はすば歯車211及び第2はすば歯車212の歯数をZ11、Z12とし、回転数をW11、W12とすると、回転数W11は、下記数1で表すことができる。また、第1平歯車221及び第2平歯車222の歯数をZ21、Z22とし、回転数をW21、W22とすると、回転数W21は、下記数2で表すことができる。
(数1)
W11=Z12/Z11×W12
(数2)
W21=Z22/Z21×W22
【0021】
第1はすば歯車211及び第1平歯車221は、送りねじ1の両端部に連結されているので、回転数W11及び回転数W21は等しくなる。また、後述するように、可動支持部側モータ32のモータ電流は、固定支持部側モータ31のモータ電流と電流値が同じで電流方向が逆方向に制御されるので、回転数W12及び回転数W22は等しくなる。以上より、歯数Z11、Z12、Z21、Z22の関係は、下記数3で表すことができる。なお、これらの関係は、歯数とトルクの関係から同様に求めることもできる。また、一対の歯車機構2のはすば歯車21及び平歯車22は、それぞれ3つ以上の歯車を備えることもできる。
(数3)
Z12/Z11=Z22/Z21
【0022】
一対のモータ3は、固定支持部41側に固定支持部側モータ31が設けられ、可動支持部42側には可動支持部側モータ32が設けられている。本実施形態では、一対のモータ3によって送りねじ1を駆動することができるので、1個のモータによって送りねじ1を駆動する場合と比べて、モータ1個当りの出力を小さくして、固定支持部側モータ31及び可動支持部側モータ32を小型化することができる。
【0023】
固定支持部側モータ31には、固定支持部側モータ31の回転位相情報を検出する回転検出装置33が設けられている。回転検出装置33は、固定支持部側モータ31の回転に同期して固定支持部側モータ31の回転位相情報を出力することができる。固定支持部側モータ31、可動支持部側モータ32及び回転検出装置33は、数値制御機において採用される公知のサーボモータ及び位置検出器を用いることができる。例えば、ACサーボモータやエンコーダ等が挙げられる。インクリメンタルエンコーダを用いる場合は、回転位相情報は、固定支持部側モータ31の回転変位量に応じたパルス列をカウントした計数値である。アブソリュートエンコーダを用いる場合は、回転位相情報は、固定支持部側モータ31の回転変位量に応じた出力コードである。回転位相情報は、固定支持部側モータ31のエラー情報などの種々のデータを含めることができ、所定の周期毎に情報伝送路54を介してサーボアンプ51に送信される。
【0024】
(2)モータ制御部の構成
図2は、モータ制御部の構成の一例を示す構成図である。モータ制御部5は、一対のモータ3を駆動するサーボアンプ51、51と、2つのサーボアンプ51、51を同期制御するサーボコントローラ52と、サーボコントローラ52に制御対象の移動指令を付与する上位コントローラ53と、を備えている。
【0025】
サーボアンプ51は、CPU510、メモリ511、入出力インターフェース512及び通信インターフェース513を有しており、各種データ及び制御信号を送受信可能にバス515で接続されている。回転検出装置33から送信された回転位相情報は、入出力インターフェース512、バス515を介してメモリ511に送信される。CPU510は、バス515、通信インターフェース513を介して、固定支持部側モータ31の回転位相情報をサーボコントローラ52に送信することができる。
【0026】
サーボコントローラ52は、CPU520、メモリ521及び通信インターフェース522〜524を有しており、各種データ及び制御信号を送受信可能にバス525で接続されている。サーボアンプ51から送信された固定支持部側モータ31の回転位相情報は、通信インターフェース522、バス525を介してメモリ521に送信される。CPU520は、バス525、通信インターフェース524を介して、固定支持部側モータ31の回転位相情報を上位コントローラ53に送信することができる。
【0027】
上位コントローラ53は、CPU530、メモリ531及び通信インターフェース532を有しており、各種データ及び制御信号を送受信可能にバス533で接続されている。CPU530で演算された制御対象の移動指令は、バス533、通信インターフェース532、524、バス525を介してサーボコントローラ52のメモリ521に送信される。サーボコントローラ52及びサーボアンプ51、51では、CPU510、520及びメモリ511、521によって、後述するサーボ制御の各種演算を行うことができる。インバータ等の電力変換器514は、各種演算結果に基づくモータ電流を電力伝送路55を介して固定支持部側モータ31及び可動支持部側モータ32に供給することにより、固定支持部側モータ31及び可動支持部側モータ32を駆動することができる。
【0028】
通信インターフェース532、524の間、通信インターフェース522、513の間及び通信インターフェース523、513の間は、各種データ及び制御信号を送受信可能に情報伝送路54でそれぞれ接続されてネットワークが構成されている。各種データには、固定支持部側モータ31の回転位相情報及び上記の各種演算結果が含まれる。情報伝送路54における通信手段、プロトコル等は特に限定されない。ネットワークは、例えば、サーボネットワークを用いることができる。なお、ネットワークを構成しないで、例えば、公知のシリアル通信(RS−232C)等によって各種データ及び制御信号を個別に送受信することもできる。
【0029】
なお、固定支持部側モータ31の回転位相情報などの入出力データは、ダイレクト・メモリ・アクセス(DMA)によって送信することもできる。DMAは、CPU510、520、530を介さないで、入出力装置とメモリ511、521、531との間で種々のデータを送受信することができる。例えば、回転検出装置33とメモリ511、521、531との間で固定支持部側モータ31の回転位相情報を直接送信することができる。
【0030】
(3)モータ制御部による制御
図3は、モータ制御部の制御ブロックの一例を示すブロック図である。モータ制御部5は、サーボ制御の制御ブロックとして捉えると、固定支持部側モータ31及び可動支持部側モータ32を制御するサーボ制御部6を有している。サーボ制御部6は、固定支持部側モータ31及び可動支持部側モータ32の指令を生成するプロファイル生成部61と、固定支持部側モータ31及び可動支持部側モータ32の位置を制御する位置制御部62と、固定支持部側モータ31及び可動支持部側モータ32の速度を制御する速度制御部63と、固定支持部側モータ31のモータ電流を制御する電流制御部641と、可動支持部側モータ32のモータ電流を制御する電流制御部642と、を有している。なお、プロファイル生成部61、位置制御部62及び速度制御部63は、サーボコントローラ52に配されており、電流制御部641、642はサーボアンプ51、51に配されている。
【0031】
プロファイル生成部61は、上位コントローラ53からの移動指令に基づいて固定支持部側モータ31及び可動支持部側モータ32の位置指令を演算する。位置制御部62は、プロファイル生成部61からの位置指令と回転検出装置33からの回転位相情報との偏差から速度指令を生成する。速度制御部63は、位置制御部62からの速度指令と固定支持部側モータ31の速度情報との偏差から電流指令(トルク指令)を生成する。固定支持部側モータ31の速度情報は、回転位相情報の周波数から算出することができる。また、固定支持部側モータ31の速度情報は、固定支持部側モータ31の速度を検出する速度検出器の検出結果を用いることもできる。位置制御及び速度制御の方法は特に限定されない。例えば、PID制御などの公知のフィードバック制御を用いることができる。
【0032】
電流制御部641は、速度制御部63からの電流指令(トルク指令)と固定支持部側モータ31のモータ電流との偏差から固定支持部側モータ31を駆動させる電力変換器514の駆動信号を生成する。固定支持部側モータ31のモータ電流は、サーボアンプ51に内蔵される図示しない電流検出器の検出結果を用いることができる。回転検出装置33からの回転位相情報は、力率を調整するために用いることができる。電流制御部642は、固定支持部側モータ31を駆動させる電力変換器514の駆動信号を反転(モータ電流の正負を反転)して、可動支持部側モータ32を駆動させる電力変換器514の駆動信号を生成する。これにより、可動支持部側モータ32のモータ電流指令値は、固定支持部側モータ31のモータ電流指令値と電流値が同じで電流方向が逆方向になる。
【0033】
電力変換器514の駆動信号は、例えば、PWM制御におけるパルスのON幅とOFF幅の比であるデューティ比で表すことができる。PWM制御においては、スイッチング素子がONのときに対応する相にモータ電流が流れ、スイッチング素子がONしている時間(ON幅)に応じてモータ電流が変化する。つまり、ON幅が長くなるとモータ電流は大きくなり、ON幅が短くなるとモータ電流は小さくなる。電力変換器514は、電流制御部641、642が生成する駆動信号に基づくモータ電流を電力伝送路55を介して固定支持部側モータ31及び可動支持部側モータ32に供給することにより、固定支持部側モータ31及び可動支持部側モータ32を駆動することができる。
【0034】
モータ制御部5は、固定支持部側モータ31及び可動支持部側モータ32をそれぞれ逆方向に回転させて、一対の歯車機構2をそれぞれ回転させる。一対の歯車機構2の回転によって送りねじ1の送りねじ軸11が回転して、被駆動部14が軸線方向Xに直動案内される。本実施形態では、はすば歯車21に連結される固定支持部側モータ31の回転検出装置33で検出された回転位相情報に基づいて、固定支持部側モータ31および可動支持部側モータ32を同期制御して送りねじ1を駆動することができる。はすば歯車21は、平歯車22と比べて歯車のかみ合い率を大きくすることができ、トルク変動を小さくすることができるので、平歯車22に連結される可動支持部側モータ32の回転位相情報に基づいて送りねじ1を駆動する場合と比べて、固定支持部側モータ31および可動支持部側モータ32の制御性を向上させることができる。そのため、本実施形態に係る送りねじ駆動装置は、送りねじ駆動装置の送り精度や位置決め精度を向上させることができる。
【0035】
(4)部品実装機
本実施形態の送りねじ駆動装置を適用した一例として、部品実装機7について説明する。部品実装機7は、基板を搬送経路に沿って部品実装位置に搬入し位置決めして搬出する基板搬送装置71と、複数の部品を収容する部品収容装置721が複数個着脱可能に取り付けられる部品供給装置72と、部品収容装置721から部品を採取して位置決めされた基板に装着する部品移載装置73と、を備える。部品移載装置73を部品供給装置72と位置決めされた基板との間で移動させる移載装置駆動機構731が、(1)〜(3)で既述の送りねじ駆動装置で構成されている。
【0036】
図4は、部品実装機の一例を示す斜視図である。図5は、移載装置駆動機構の一例を示す斜視図である。図4に示すように、部品実装機7は、部品供給装置72、基板搬送装置71及び部品移載装置73を備えている。部品供給装置72は、基枠790上に複数のカセット式フィーダ771を並設して構成されている。部品収容装置721に相当するカセット式フィーダ771は、基枠790に着脱可能に取付けられる本体772と、本体772の後部に設けられる供給リール773と、本体772の先端部に設けられる部品取出部774と、を備えている。供給リール773には、電子部品が所定ピッチで封入された細長いテープが巻回保持されており、テープが図示しないスプロケットにより所定ピッチで引き出されて、電子部品の封入状態を解除して部品取出部774に順次送り出すことができる。
【0037】
部品供給装置72と基板搬送装置71の間には、電子部品の保持位置を検出する部品カメラ775が設けられている。部品カメラ775は、部品装着ヘッド710の図示しない吸着ノズルに吸着された電子部品の吸着ノズルに対する位置ずれ及び角度ずれを検出することができる。位置ずれ及び角度ずれの検出結果は、電子部品の装着位置を補正するときに使用することができる。
【0038】
基板搬送装置71は、プリント基板を図4に示すX軸方向に搬送するもので、第1搬送装置761及び第2搬送装置762を2列並設したいわゆるダブルコンベアタイプのものである。第1搬送装置761及び第2搬送装置762は、基台763上にそれぞれ一対のガイドレール764a、764b、765a、765bを互いに平行に対向させてそれぞれ水平に並設されている。第1搬送装置761及び第2搬送装置762は、ガイドレール764a、764b、765a、765bによりそれぞれ案内されるプリント基板を支持して搬送する一対の図示しないコンベアベルトを有し、一対のコンベアベルトは、互いに対向して並設されている。また、基板搬送装置71には所定位置まで搬送されたプリント基板を押し上げてクランプする図示しないクランプ装置が設けられており、クランプ装置によってプリント基板を装着位置で位置決め固定することができる。
【0039】
部品移載装置73はXYロボットタイプのものであり、基枠790上に装架されて基板搬送装置71及び部品供給装置72の上方に配設されている。部品移載装置73は、Y軸サーボモータ711によりY軸方向に移動されるY軸スライダ712を備えている。Y軸スライダ712には、図5に示すX軸スライダ713がY軸方向と直交するX軸方向に移動可能に案内されている。X軸スライダ713は、移載装置駆動機構731に相当する。
【0040】
X軸スライダ713は、Y軸スライダ712に固定されたX軸方向に延びる一対のガイドレール15、15と、X軸スライダ713に固定された一対の図示しないガイドブロックを介して、Y軸スライダ712に移動可能に保持されている。X軸スライダ713は、(1)〜(3)で既述の送りねじ駆動装置を備えている。なお、図5に示す部品装着ヘッド710は、図1に示す被駆動部14に相当する。モータ制御部5は、固定支持部側モータ31及び可動支持部側モータ32をそれぞれ逆方向に回転させて、一対の歯車機構2をそれぞれ回転させる。一対の歯車機構2の回転によって送りねじ1の送りねじ軸11が回転して、部品装着ヘッド710が軸線方向Xに直動案内される。なお、Y軸スライダ712は、X軸スライダ713と同様に、(1)〜(3)で既述の送りねじ駆動装置を備えることもできる。
【0041】
次に、電子部品をプリント基板に装着する動作について説明する。まず、図示しない制御装置からの指令に基づいて、基板搬送装置71のコンベアベルトが駆動され、プリント基板がガイドレール764a、764b(765a、765b)に案内されて所定の位置まで搬送される。そして、クランプ装置により、プリント基板が押し上げられてクランプされ、所定位置に位置決め固定される。続いて、Y軸サーボモータ711並びに固定支持部側モータ31及び可動支持部側モータ32が駆動されることにより、Y軸スライダ712及びX軸スライダ713が移動されて、部品装着ヘッド710が部品供給装置72の部品取出部774まで移動される。そして、部品装着ヘッド710の吸着ノズルに電子部品が吸着保持された後、Y軸サーボモータ711並びに固定支持部側モータ31及び可動支持部側モータ32が駆動されることにより、Y軸スライダ712及びX軸スライダ713が移動され、部品装着ヘッド710がプリント基板の装着位置上方まで移動される。そして、吸着ノズルに吸着保持された電子部品がプリント基板に装着される。
【0042】
本実施形態では、部品移載装置73を部品供給装置72と位置決めされた基板との間で移動させる移載装置駆動機構731が、(1)〜(3)で既述の送りねじ駆動装置で構成されているので、送りねじ1の熱膨張対策が可能であり、移載装置駆動機構731のコンパクト化及び静音性の向上を図ることができる。
【0043】
(5)その他
本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0044】
1:送りねじ 16:固定支持部側端部 17:可動支持部側端部
2:一対の歯車機構 21:はすば歯車 22:平歯車
3:一対のモータ
31:固定支持部側モータ 32:可動支持部側モータ 33:回転検出装置
4:一対の支持部 41:固定支持部 42:可動支持部
5:モータ制御部
7:部品実装機
71:基板搬送装置 72:部品供給装置 721:部品収容装置
73:部品移載装置 731:移載装置駆動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送りねじと、前記送りねじの両端部にそれぞれ設けられた一対の歯車機構と、前記一対の歯車機構を介して前記送りねじをそれぞれ駆動する一対のモータと、前記送りねじの前記両端部をそれぞれ支持する一対の支持部と、を備える送りねじ駆動装置であって、
前記一対の支持部の一方は、前記送りねじを軸線方向に移動不能に支持する固定支持部であり、前記一対の支持部の他方は、前記送りねじを前記軸線方向に移動可能に支持する可動支持部であり、
前記固定支持部側に設けられた前記歯車機構は、前記送りねじの固定支持部側端部および前記一対のモータのうち前記固定支持部側に設けられた固定支持部側モータの出力軸にそれぞれ固定されたはすば歯車を備え、
前記可動支持部側に設けられた前記歯車機構は、前記送りねじの可動支持部側端部および前記一対のモータのうち前記可動支持部側に設けられた可動支持部側モータの出力軸にそれぞれ固定された平歯車を備えることを特徴とする送りねじ駆動装置。
【請求項2】
前記固定支持部側モータと同期回転する回転検出装置で検出された回転位相情報に基づいて、前記固定支持部側モータおよび前記可動支持部側モータを同期制御するモータ制御部を備える請求項1に記載の送りねじ駆動装置。
【請求項3】
基板を搬送経路に沿って部品実装位置に搬入し位置決めして搬出する基板搬送装置と、複数の部品を収容する部品収容装置が複数個着脱可能に取り付けられる部品供給装置と、前記部品収容装置から前記部品を採取して前記位置決めされた前記基板に装着する部品移載装置と、を備える部品実装機であって、
前記部品移載装置を前記部品供給装置と前記位置決めされた前記基板との間で移動させる移載装置駆動機構が、請求項1又は2に記載の送りねじ駆動装置で構成されている部品実装機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−104470(P2013−104470A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247873(P2011−247873)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】