説明

送信フレーム生成装置、無線装置、基地局、及び送信フレーム生成方法

【課題】フレーム構造を切り換えることなく、同一の符号化手順にて、異なるフレーム構造の通信に対応することができる送信フレーム生成装置を提供する。
【解決手段】伝送する上位レイヤ情報を一定の符号化手順により符号化して送信データのビット列を生成する符号化処理部210と、送信データのビット列に同期ワードを付加して送信フレームを作成するフレーム生成部211と、符号化手順により符号化され生成される送信データのビット列21に、同期ワードと共に用いる同期確立用の同期ビット列を生じさせる同期用上位レイヤ情報を記憶する同期用上位レイヤ情報記憶部213と、上位レイヤ情報としてに同期用上位レイヤ情報を用いる上位レイヤデータ処理部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信するフレームを生成する送信フレーム生成装置、送信フレーム生成装置を搭載した無線装置、基地局、及び送信フレーム生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一対の端末局の通信を中継する基地局が、使用可能な通信チャネルを動的に割り当てるトランキング方式が知られている。
基地局は、少なくとも1つの専用の制御チャネルと複数の通信チャネルとを備える。
一方の端末局は、上り制御チャネルにて他方の端末局の呼を基地局に送信する。
呼を受信した基地局は、使用可能な通信チャネルを双方の移動局に下り制御チャネルにて知らせる。
特許文献1には、端末局に下り制御チャネルの同期をより速く確実に行わせ通信チャネルに移行させるため、通信フレームの先頭の同期フレームと合わせて同期を行うポストフレームを、フレームの最後に備える方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−101382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トランキング方式では、端末局の呼び出しや応答を行う専用の制御チャネルを必要とし、その分通信に使用できるチャネルが少なくなるという問題がある。
また、全てを通信チャネルとし、制御チャネルを動的に割り当てる方法もあるが、通信チャネルを制御チャネルとする場合には、ポストフレームの有無によりフレーム構造を切り換えるため、異なるフレーム生成方法が必要となる。
本発明はこのような問題点に鑑みなされたものであり、同一の符号化手順にて、異なるフレーム構造の通信に対応する送信フレーム生成装置、無線装置、基地局、及び送信フレーム生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述した従来の技術の課題を解決するため、
伝送する上位レイヤ情報を一定の符号化手順により符号化して送信データのビット列を生成する符号化処理部と、
前記送信データのビット列に同期ワードを付加して送信フレームを作成するフレーム生成部と、
前記符号化手順により符号化され生成される前記送信データのビット列に、前記同期ワードと共に用いる同期確立用の同期ビット列を生じさせる同期用上位レイヤ情報を記憶する同期用上位レイヤ情報記憶部と、
前記上位レイヤ情報として前記同期用上位レイヤ情報を用いる上位レイヤデータ処理部と、を備える送信フレーム生成装置を提供する。
【0006】
また本発明は、前記同期ワードは前記送信フレームの先頭に位置し、前記同期ビット列は前記送信フレームの末尾に位置してもよい。
【0007】
さらに本発明は、前記送信フレームを送信する送信部を備え、無線装置としてもよい。
【0008】
また本発明は、前記無線装置を備え、少なくとも2つの端末局間の無線通信の中継を行う基地局としてもよい。
【0009】
さらにまた本発明の基地局において所定の場合とは、一方の端末局が他方の端末局との通信を行うことを要求する通信リクエスト情報を基地局が受信したことに応答して夫々の端末局に対し使用可能な通信チャネルを割り当てる通信チャネル割当情報を送信する場合であってもよい。
【0010】
本発明の送信フレーム生成方法は、
伝送する上位レイヤ情報を一定の符号化手順により符号化して送信データのビット列を生成するステップと、
前記送信データのビット列に同期ワードを付加して送信フレームを作成するステップと、
前記上位レイヤ情報に、前記符号化手順により符号化され生成される前記送信データのビット列に前記同期ワードと共に用いる同期確立用の同期ビット列を生じさせる同期用上位レイヤ情報を用いるステップと、
を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フレーム構造を切り換えることなく、同一の符号化手順にて、異なるフレーム構造の通信に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る無線通信システムを示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る基地局のブロック図である。
【図3】基地局の中継器の一実施形態を示すブロック図である。
【図4】中継器の信号処理部の一実施形態示すブロック図である。
【図5】端末局の一実施形態を示すブロック図である。
【図6】図1のシステムにおいて送受される無線フレームの構成を示す図である。
【図7】図6(a)のフレーム構成をより具体的に示す図である。
【図8】図6(a)のフレームの第1制御用フィールドにより低速付随制御チャネルを構成する様子を示す図である。
【図9】図1の通信システムにおいて上位レイヤ情報を符号化して第2制御用フィールドのデータを生成する手順の一例を示す図である。
【図10】図9の符号化手順をより具体的に示す図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る無線通信システムの状態遷移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に本発明の一実施形態の基地局を使用した通信システムの概要を示す。
図1に記載の通信システムは、基地局2と、少なくとも2つの端末局1a、1bとからなる。以後不特定の端末局を端末局1と記載する。
【0014】
図2は、本発明の一実施形態の基地局を示すブロック図である。
基地局2は、複数の中継器201(201A〜201D)と、端末局との信号の送受信を行うアンテナ204と、アンテナ204を複数の中継器201が共用するためのアンテナ共用器203と、中継器201の制御を行う制御器202と、を備える。
アンテナ共用器203は、アンテナ204で受信した信号を複数ある中継器201に分配し、また複数ある中継器201からの送信信号を混合してアンテナ204に出力する。
【0015】
図3は、一実施形態の基地局2の中継器201を示すブロック図である。
中継器201は、受信部205と、送信部206と、信号処理部207と、を備える。
【0016】
受信部205は、アンテナ共用器203を介して受信した信号の妨害波を除去し、妨害波を除去した信号を増幅し、検波し、データ信号への復調を行って信号処理部207に復調したデータ信号を出力する。
送信部206は、信号処理部207にて生成されたデータ信号を、変調し、増幅し、不要輻射を制限して送信信号を生成する。
生成された送信信号は、アンテナ共用器203を介して、アンテナ204より信号を送信される。
図4に詳細な構成を示す信号処理部207は、受信部205にて復調したデータ信号に予め定められた処理を行い、また送信データを生成して送信部206に出力する。
【0017】
図4は、信号処理部207を示すブロック図である。
信号処理部207は、フレーム検出部208と、受信データ処理部209と、上位レイヤデータ処理部212と、符号化処理部210と、フレーム生成部211と、ポストフィールド情報記憶部213と、を備える。
【0018】
フレーム検出部208は、受信した信号のフレームを検出する。受信データ処理部209は、それぞれの受信フレーム内より受信データを抽出する。上位レイヤデータ処理部212は、受信データを解析し、以下に詳細を記載する送信上位レイヤデータを生成し、符号化処理部210に送信上位レイヤデータを出力する。
生成される送信上位レイヤデータの内容は、後術する通信フレームの内容により様々である。送信上位レイヤデータには、受信データを解析して得られたデータ、制御器からの指示により定められたデータ、ポストフィールド情報部記憶部213のデータが配置される。
【0019】
符号化処理部210は、入力された送信上位レイヤデータに誤り訂正処理を行い、送信フレームに配置されるビット列を生成する。
フレーム生成部211は、符号化処理部210によって生成されたビット列を、予め定められたフレームに配置し、これに同期ワードが配置されたFSW(Flame Sync Word)フィールドを付加して、送信部206に出力する。
ポストフィールド情報記憶部213は、後述するポストフィールド21を特定のフレーム内に出現させるための同期用上位レイヤ情報を記憶している。
上位レイヤデータ制御部212は、ポストフィールド21を特定のフレームに出現させる必要がある場合に、ポストフィールド情報記憶部213に記憶された同期用上位レイヤ情報を読み出し、上位レイヤデータとして設定し、符号化処理部210に出力する。
【0020】
図5は、本発明の一実施形態の基地局を介した通信を行う端末局1を示すブロック図である。
端末局1は、アンテナ101と、アンテナ切換器102と、送信部103と、受信部104と、制御部105と、マイク106と、スピーカ107と、PTT(Push to talk)スイッチと、を備える。
【0021】
制御部105は、PTTスイッチ108の操作により送信することを要求された場合には、送信部103に電源を投入し、送信チャネルを設定し、アンテナ切換器102を「T」側に切り換え、送信部103の送信出力をアンテナ101に出力する送信動作制御を行う。
また、制御部105は、PTTスイッチ108の操作が行われていない場合には、アンテナ切換器102を「R」側に切り換えアンテナ101からの受信信号を受信部104に入力し、受信部104に電源を投入し、受信チャネルを設定する受信動作制御を行う。
さらにまた、制御部105は、後述する上りリンク通信チャネルLuの送信後の下りリンク通信チャネルLdの受信を行う場合には、PTTスイッチ108が操作され送信することを要求された状態であっても、受信動作制御を行う。
【0022】
マイク106は、端末局1の使用者が発音した音声を音声信号に変換する。送信部103は、送信時にマイク106により変換された音声信号を変調し、増幅し、不要輻射を制限して、送信信号に変換する。受信部104は、アンテナ101より入力された受信信号の妨害波を除去し、妨害波を除去された受信信号を増幅し、復調して、スピーカ107に復調した復調信号を出力する。端末局1は、通常は予め設定されたデフォルトチャネルとなっているが、基地局2から送信される情報により動的にチャネルが設定される。
【0023】
図1を用いて本発明の一実施形態に係る通信時の動作を説明する。
図1に示すように、この通信システムは、相互間で通信を行う複数の端末局1(1a、1b、・・・)、及び各端末局1間に介在し、トランキング制御により各端末局1間の通信で使用する通信チャネルを動的に提供する基地局2を備える。基地局2は複数の通信チャネルT1、T2、・・・、Tnにより各端末局1間の通信を中継する機能を備える。
【0024】
各端末局1は通信チャネルT1〜Tnのうちの自身について固定的に設定されたデフォルトチャネルを記憶している。
通信を開始する場合、各端末局1は、デフォルトチャネルにより、通信の開始を要求する旨を示す通信リクエスト情報を、基地局2に送信する。通信リクエスト情報には通信相手の端末局1を特定するID情報が含まれる。この通信リクエスト情報を送信するときの通信チャネルが、図1(a)中のリンク時上り通信チャネルLuである。なお、「上り」とは各端末局1から基地局2への方向を意味する。逆に「下り」は基地局2から各端末局1への方向を意味する。
【0025】
基地局2はこの通信リクエスト情報を受信すると、通信を行う通信チャネルを割当てる旨を示すチャネル割当情報を、通信リクエスト情報を送信した端末局1に対して送信する。このチャネル割当情報を送信するときの通信チャネルが、図1(a)中のリンク時下り通信チャネルLdである。
通信相手側の端末局1は、このチャネル割当情報を受信すると、自身が呼び出されていることを認識し、受信を開始する。これにより、通信を行う端末局1間のリンクが確立されたことになり、通信リクエスト情報を送信した端末局1は、相手側端末局1との音声通信を開始することができる。
【0026】
このリンク動作を、図1(a)を用いて具体的に示す。
本実施形態では、端末局1a及び端末局1bのデフォルトチャネルが通信チャネルT1であり、通信チャネルT1が他の端末局により使用されていない状態にあるとする。
端末局1aは音声通信を開始しようとするとき、そのデフォルトチャネルである通信チャネルT1にて、端末局1bのID情報を含む通信リクエスト情報を、通信チャネルT1にてリンク時上り通信チャネルLuを介して基地局2に送信する。
基地局2はこれに応答して、チャネル割当て情報を、通信チャネルT1にてリンク時下り通信チャネルLdにより端末局1a及び端末局1bに送信する。これを受信した端末局1bは、呼び出されていることを認識する。
これにより、端末局1a及び1b間のリンクが確立されたことになり、図1(b)に示すように、端末局1aは、通信時上り通信チャネルTu及び通信時下り通信チャネルTdを介して、端末局1bとの音声通信を開始することができる。
【0027】
図6は図1の通信システムにおいて送受される無線フレームの構成を示す。
図6(a)は音声通信時における上り下り共通のフレーム構成、図6(b)はリンク時の上りフレームの構成、図6(c)はリンク時の下りフレームの構成である。図6(a)のフレームは先頭から「FSW」、「無線識別」、「第1制御用」、並びに「第2制御用」又は「音声」の各フィールドにより構成される。
FSWフィールドには、フレーム同期を確立するための同期ワードが格納される。本実施形態では、同期ワードは、20ビットの固定のビットパターンとする。
無線識別フィールドには、各フレームを識別するための情報が格納される。 第1制御用フィールド、第2制御用フィールド、及び音声フィールドにより機能チャネルが構成される。機能チャネルとは、物理チャネル内に設けられた論理的なチャネルを意味する。
【0028】
第1制御用フィールドは、連続する4フレームの第1制御用フィールドにより1つの上位レイヤ情報に対応する情報を構成する低速付随制御チャネルを構成する。
図6(a)のフレームにおける2つの第2制御用フィールド、及び4つの音声フィールドは切り換えて用いられる。図6(b)及び図6(c)のフレームは、音声フィールドが存在しないこと以外は図6(a)のフレームの構成と同様である。ただし、図6(c)のフレームにおける後半の第2制御用フィールドの末尾は、同期用ビット列が格納されるポストフィールド21として機能する。
同期用ビット列は、FSWフィールドの同期ワードと結合してフレーム同期を確立するために用いられる。本実施形態では、同期用ビット列は、18ビットの固定のビットパターンとする。
図6(a)〜(c)のフレームにおける各第2制御用フィールドの内容は、各対応する上位レイヤ情報から同一の符号化手順により生成される。
【0029】
図7は、図6(a)のフレーム構成をより具体的に示す図である。
音声通信時においては、図7(a)のフレームaの場合のように、4つの音声フィールドのすべてが音声データの送信に用いられるほか、図7(b)又は図7(c)のフレームb又はcの場合のように、一時的に4つの音声フィールドのうちの後半の2つ又は前半の2つが第2制御用フィールドとして用いられたり、図7(d)のフレームdの場合のように、全部が2つの第2制御用フィールドとして用いられたりする場合がある。これらのフレームa〜dの識別も、無線識別フィールドの内容によって行われる。また、上りフレームであるか又は下りフレームであるかの区別も、無線識別フィールドによって行われる。
【0030】
第2制御用フィールドには、上り方向の通信では、通信リクエスト情報、音声呼出情報、又は送信終了情報が格納される。
通信リクエスト情報は、図7(b)のフレームにおいて端末局1が基地局2に対して音声通信用の通信チャネルの割当てを要求するための情報である。基地局2は、通信リクエスト情報を受信すると、受信した通信リクエスト情報の内容に従い、通信チャネル割当てのための処理を行う。
音声呼出情報は、呼び出しを行う受信側の端末局1を識別するためのID情報である。
送信終了情報は、通信チャネルでの送信を終了させるときに使用する情報である。送信終了情報は送信する最後のフレームで使用される。基地局2は、送信終了情報により、受信側の端末局1への送信の終了であることを識別することができる。
【0031】
第2制御用フィールドには、下り方向の通信では、音声呼出情報、チャネル割当情報、又は送信終了情報が格納される。
チャネル割当情報は、端末局1からの通信リクエスト情報の受信に応答して通信チャネルを割り当てるときに、基地局2が端末局1に送信する情報である。端末局1は、この情報を受信すると割り当てられた通信チャネル上での音声通信を開始する。
音声呼出情報及び送信終了情報は、上述の上り方向の通信における音声呼出情報及び送信終了情報の内容と同様である。
【0032】
図8は第1制御用フィールドにより低速付随制御チャネルを構成する様子を示している。
図8(a)に示すように、連続する4つのフレームの第1制御用フィールド、第1制御用(1/4)〜第1制御用(4/4)に1つの上位レイヤ情報が分散している。
図8(b)及び(c)に示すように、図8(a)の第1制御用(1/4)〜第1制御用(4/4)のフレーム内のデータを結合する。
図8(d)に示すように復号することにより、1つの上位レイヤ情報を得ることができる。この第1制御用フィールドの上位レイヤ情報としては、たとえば後述する空きチャネル情報や音声呼出情報が該当する。
【0033】
端末局1は、端末局1のデフォルトチャネルが音声通信に使用されている場合であっても、空きチャネル情報や音声呼出情報を得ることができる。
空きチャネル情報は、基地局2が空きチャネルについての情報を端末局1に通知するために使用する情報である。 第1制御用フィールドに格納された音声呼出情報は、音声通信を行っている最中に使用される場合、端末局1を識別するためのID情報及び使用される通信チャネル情報が含まれる。
基地局2は、第1制御用フィールドを用いることにより、音声通信と同時に、これらの制御用情報を送信することができる。
【0034】
図6(c)のフレームにおける後半の第2制御用フィールド末尾のポストフィールド21には18ビットの同期用ビット列が格納される。ただし、この同期ビット列のビットパターンは、図1(a)や図1(b)のフレームにおける第2制御用フィールドを生成する際の符号化手順と同じ方法で上位レイヤ情報を符号化することにより生成される。すなわち、リンク時及び通信時を通じて符号化手順を同一とすることにより、処理が簡略化される。
【0035】
図9は、符号化処理部210が、上位レイヤ情報を符号化して第2制御用フィールドのデータを生成する手順の一例を示している。
符号化処理部210は、上位レイヤ情報を第2制御用フィールドのデータに符号化する場合、図9に示すように、まず、上位レイヤ情報51に対して検査コード52を付加する。その後に誤り訂正符号化を行ってデータ列53を生成し、さらにインタリーブ処理を施す。これにより、第2制御用フィールドのデータ列54が構成される。本実施形態においては、この符号化手順に従って符号化すれば、第2制御用フィールドデータの末尾に上述のポストフィールド21のビットパターンが出現するような同期用上位レイヤ情報(以下、「ポストフィールド情報」という。)に対して符号化手順を適用することにより、図6(c)の通信フレームにおける後半の第2制御用フィールドのデータが生成される。
【0036】
ポストフィールド情報は、第2制御用フィールドにおいて、末尾のポストフィールド21に上述の18ビットの同期用ビット列を出現させるものであればよく、ポストフィールド21以外の領域においては任意のビット列を生じさせるものであってもよい。このため、ポストフィールド21を同期用ビット列とし、残りを任意のビットとした第2制御用フィールドのデータについて、図5の符号化手順を逆に辿ることによって、ポストフィールド情報を特定することができる。
【0037】
図10は、符号化処理部210が行う図9の符号化手順をより具体的に示したものである。
図10(a)に示すように、上位レイヤデータ処理部212から符号化処理部210に出力される上位レイヤ情報51を構成するビット数は80とする。
符号化処理部210は、図10(b)に示すように、上位レイヤ情報51に対し、所定の生成多項式を用い、検査コード52としてCRC−12を付加する。
次に、符号化処理部210は、図10(c)に示すように、畳込みコードによるエラー訂正機構を使用できるようにするために、値が「0」である4ビットのテールビット61を付加する。
【0038】
次に、符号化処理部210は、図10(d)に示すように、畳込み符号化を行い、畳込み符号62を得る。符号化率は1/2、拘束長は5である。
次に、符号化処理部210は、図10(e)に示すように、畳込み符号62に対し、所定のパンクチャ処理を行い、パンクチャ符号63を得る。
次に、符号化処理部210は、図10(f)に示すように、パンクチャ符号63を、16ビット毎に分割し、図10(g)のように、16ビットのブロック毎に読み出して、各ブロックの先頭ビットから1ビットずつ書き込むことにより、深さ9のインタリーブを行う。
これにより、図10(h)に示すように、第2制御用フィールドのデータ64の生成が完了する。
この符号化手順において、上位レイヤデータ処理部212から出力される上位レイヤ情報51としてポストフィールド情報を用いることにより、同期用ビット列が格納されたポストフィールド21を有する第2制御用フィールドのデータ64を生成することができる。
【0039】
ポストフィールド情報は、次のようにして求めることができる。
以下に記載の処理は、通信システムにおいてリアルタイムに処理を行う必要はない。事前に計算しておいた同期用の上位レイヤデータとなるポストフィールド情報を用意し、ポストフィールド情報記憶部213内に記憶しておく。ポストフィールド21が必要な場合に上位レイヤ情報51のデータとして第2制御用フィールドに設定すればよい。
【0040】
まず、第2制御用フィールドのデータ64として、ポストフィールド21に上述18ビットの同期用ビット列を設定したものを用意する。
次に、このデータ64について、図10(e)〜(g)の演算を逆算して畳込み符号62を取得する。これにより、192ビットの畳込み符号62のうち、どのビットがポストフィールド21の各ビットに対応するかがわかる。
【0041】
次に、任意の上位レイヤ情報51について、図10(b)〜(d)の処理を行い、テールビット61をすべて「0」として、CRC−12のビット列(第81〜第92ビット)を変化させることにより、畳込み符号62のうちのポストフィールド21の各ビットに対応するビットが、ポストフィールド21のビット列の一部として満足するようなCRC−12の候補を求める。このとき、複数の候補が得られる。
【0042】
次に、求めたCRC−12の候補のうちの1つを用い、上位レイヤ情報51(第1〜第80ビット)を逆算して求める。算出した上位レイヤ情報51に対し、1つの候補のCRC−12のビット列と、テールビットの4ビットとを結合した96ビットについての畳込み符号化して得た畳込み符号の192ビットのビット列と、上述の第2制御用フィールドのデータ64から逆算して得た畳込み符号の192ビットのビット列とを、ビット列中のポストフィールド21に対応するビット位置の各ビットについて比較する。一致した場合には、逆算して得た上位レイヤ情報51を、ポストフィールド情報として用いることができる。一致しない場合には、次のCRC−12の候補について、同様の処理を行う。
【0043】
各制御用情報はいずれも上述の図10の同一の符号化手順により符号化したものである。トランキング制御の処理は所定のプログラムに従い、基地局2の制御器によって行われる。
【0044】
図11は基地局2によるトランキング制御の処理を示す実施例の状態遷移図である。
端末局1a及び端末局1bは、共にデフォルトチャネルをT1とする。
端末局1aは、端末局1bのID情報を含む通信リクエスト情報をリンク時上り通信チャネルLuにて送信する(ステップS71)。
基地局2は、通信リクエスト情報を受信し、端末局1bへの呼出であることを認識する(ステップS72)。
基地局2は、リンク時下り通信チャネルLdにて、チャネル割当て情報を送信する。この時後半の第2制御用フィールド末尾のポストフィールド21を配置する(ステップS73)。この第2制御用フィールドの上位レイヤのデータとしては、上述した事前に計算してポストフィールド情報記憶部213内に記憶していたポストフィールド情報を上位レイヤデータとして用いる。
端末局1a及び端末局1bは、リンク時下り通信チャネルLdに同期を確立して受信を行い、チャネル割当て情報を受信する(ステップS74及びステップS75)。
【0045】
端末局1aは、端末局1bに対して、基地局2を介した音声通信の送信を通話時上り通信チャネルTuで開始する(ステップS76)。
基地局2は、端末局1aからの音声通信を受信し、端末局1bに対して通話時下りチャネルTdにて中継送信を開始する(S78)。
端末局1bは、中継局2を介した端末局1aの音声通信を受信する(ステップS79)。
【0046】
端末局1aは、送信終了時、最後の第2制御用フィールドに、送信終了情報を配置して送信する(ステップS80)。
同様に、基地局2は、端末局1aからの送信終了情報を端末局1bに中継し(ステップS81)、通信チャネルT1での中継を終了する(ステップS83)。
端末局1bは、基地局2からの送信終了情報を受信すると、基地局2を介した端末局1aからの音声通信の受信を終了する(ステップS82)。
端末局1aは、送信を終了し、デフォルトチャネルT1にて待ち受け受信を開始する(ステップS84)。
端末局1bも、同様にデフォルトチャネルT1にて待ち受け受信を開始する(ステップS85)。
【0047】
ステップ73にて、基地局2は図6(c)のように、フレームにおける前半の第2制御用フィールドに、チャネル割当情報を格納し、後半の第2制御用フィールドには、ポストフィールド情報を図10の手順で符号化して格納する。つまり、後半の第2制御用フィールドにおけるポストフィールド21には同期用ビット列が格納される。
このフレームの送信は、端末局の受信でのフレーム同期が確実に行われるように、複数回連続して行われる。このため端末局1は、後半の第2制御用フィールド中のポストフィールド21の同期ビット列と、次のフレームの先頭の同期ワードとを、フレーム同期を確立するために使用することができる。
【0048】
たとえば、同期ワードの20ビットを1回の検出で同期確立としてしまうと誤同期してしまう可能性が高いので2回連続で検出した場合に同期確立とし、同期ビット列と同期ワードを合わせた36ビットの場合は誤同期する可能性は低いので1回の検出で同期確立とする。
よって、同期ビット列と同期ワードを合わせた同期検出は、より少ない検出回数で同期確立とする場合に有効な手段となる。
同期の検出回数が少なくて同期確立とできるということは、同期がより短時間での確立することに他ならない。
【0049】
本実施形態においては、基地局2は、端末局1aからの通信リクエスト情報の受信に応じてチャネル割当情報を端末局1a及び端末局1bに送信するに際し、ポストフィールド情報を符号化し、後半の第2制御用フィールドに格納して送信する。端末局1a及び端末局1bは双方ともポストフィールド21の同期ビット列を同期ワードと共に用いたチャネル割当情報に対して同期の確立を迅速に行うことができる。そのため音声通話を開始するまでの時間が短縮される。
その際、ポストフィールド情報を符号化する手順は、第2制御用フィールドにより転送される他の制御用情報を符号化する場合の手順と同一であるため、第2制御用フィールドの符号化手段を変更する必要がない。そのため、送信フレームの構造を切り換えることなく、ポストフィールド21を含めた送信フレームを生成することができる。
【0050】
一般的に符号化手順は高速な処理が要求されることからDSP(Digital Signal Processor)が用いられ、複数の符号化手順を実装することは、より多くの処理を実装することが可能なデバイスを必要とする。また複数の符号化手段を実装する場合には設計検証を行う上でも時間がかかる。
ポストフィールド情報を必要としない場合には、後半の第2制御用フィールドにはトランキング制御用の他の情報を格納して端末局1に提供することができる。その場合には、1つのフレームで2種類の制御用情報を送信することができるので、効率的な制御用情報の送信を行うことができる。
【0051】
なお、本発明は上述実施形態に限定されることなく、適宜変形して実施することができる。たとえば、上述においては言及しなかったが、図9や図10の符号化手順でフレームを作成する際に、符号化後のデータについてスクランブル処理を施すようにしてもよい。また、上述においては、図9や図10の符号化手順において、検査コードの付加や、誤り訂正のための処理や、インタリーブを施すようにしているが、これらの処理は行わなくてもよい。
【0052】
また、上述においては、お互いの端末局1のデフォルトチャネルを通信チャネルT1としたが、通信相手のデフォルトチャネルが異なっても、通信リクエスト情報に相手局のデフォルトチャネル情報を付加させることで、基地局2はそれぞれのデフォルトチャネルにて下りリンク通信チャネルによりチャネル割当て情報を送信し、呼出を行って通話を開始することができる。
【0053】
また、上述においては、トランキングシステムについて本発明を適用した場合について説明した。
これに限らず、送信フレーム内の特定のビット列に、同期ワードを補足する同期用のビット列を発生させる場合には、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1a,1b,:端末局、
2:基地局、
21:ポストフィールド、
51:上位レイヤ情報、52:検査コード、53:データ列、
54:データ列、61:テールビット、62:畳込み符号、
63:パンクチャ符号、64:第2制御用フィールドのデータ、
Lu:リンク時上り通信チャネル、Ld:リンク時下り通信チャネル、
Tu:上り通信チャネル、Td:下り通信チャネル、
T1,T2,Tn:通信チャネル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送する上位レイヤ情報を一定の符号化手順により符号化して送信データのビット列を生成する符号化処理部と、
前記送信データのビット列に同期ワードを付加して送信フレームを作成するフレーム生成部と、
前記符号化手順により符号化され生成される前記送信データのビット列に、前記同期ワードと共に用いる同期確立用の同期ビット列を生じさせる同期用上位レイヤ情報を記憶する同期用上位レイヤ情報記憶部と、
前記上位レイヤ情報として前記同期用上位レイヤ情報を用いる上位レイヤデータ処理部と、
を備える送信フレーム生成装置。
【請求項2】
前記同期ワードは前記送信フレームの先頭に位置し、前記同期ビット列は前記送信フレームの末尾に位置することを特徴とする請求項1に記載の送信フレーム生成装置。
【請求項3】
伝送する上位レイヤ情報を一定の符号化手順により符号化して送信データのビット列を生成する符号化処理部と、
前記送信データのビット列に同期ワードを付加して送信フレームを作成するフレーム生成部と、
前記符号化手順により符号化され生成される前記送信データのビット列に、前記同期ワードと共に用いる同期確立用の同期ビット列を生じさせる同期用上位レイヤ情報を記憶する同期用上位レイヤ情報記憶部と、
前記上位レイヤ情報に前記同期用上位レイヤ情報を用いる上位レイヤデータ処理部と、
前記送信フレームを送信する送信部と、
を備える無線装置。
【請求項4】
少なくとも2つの端末局間の無線通信の中継を行う基地局であって、
伝送する上位レイヤ情報を一定の符号化手順により符号化して送信データのビット列を生成する符号化処理部と、
前記送信データのビット列に同期ワードを付加して通信フレームを作成するフレーム生成部と、
前記符号化手順により符号化され生成される前記送信データのビット列に、前記同期ワードと共に用いられる同期確立用の同期ビット列を生じさせる同期用上位レイヤ情報を記憶する同期用上位レイヤ情報記憶部と、
前記上位レイヤ情報に前記同期用上位レイヤ情報を用いる上位レイヤデータ処理部と、
前記送信フレームを送信する送信部と、
を備える基地局。
【請求項5】
前記上位レイヤデータ処理部は、前記基地局が、一方の端末局が他方の端末局との通信を行うことを要求する通信リクエスト情報を基地局が受信したことに応答してそれぞれの端末局に対し使用可能な通信チャネルを割り当てる通信チャネル割当情報を送信する場合に、前記上位レイヤ情報に前記同期用上位レイヤ情報を用いること、を特徴とする請求項4に記載の基地局。
【請求項6】
伝送する上位レイヤ情報を一定の符号化手順により符号化して送信データのビット列を生成するステップと、
前記送信データのビット列に同期ワードを付加して送信フレームを作成するステップと、
前記上位レイヤ情報に、前記符号化手順により符号化され生成される前記送信データのビット列に前記同期ワードと共に用いる同期確立用の同期ビット列を生じさせる同期用上位レイヤ情報を用いるステップと、
を含む送信フレーム生成方法。
【請求項7】
前記同期ワードは前記送信フレームの先頭に位置し、前記同期ビット列は前記フレームの末尾に位置すること、を特徴とする請求項6に記載の送信フレーム生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−66879(P2011−66879A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181187(P2010−181187)
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】