説明

送信側通信装置及び再送制御方法

【課題】従来の受信側通信装置の構成を変更することなく、初送時とは異なる変調・符号化方式(MCS)を再送時に使用できるようにする。
【解決手段】適応変調・符号化(AMC)とハイブリッド自動再送制御(HARQ)とをサポートする無線通信システムにおいてパケットを受信側通信装置に送信する送信側通信装置の再送制御方法は、第1のMCSを使用して初送パケットを受信側通信装置に送信するステップ(S110〜S125)と、第1のMCSとは異なる第2のMCSを再送時に使用する場合(ステップS150;NO)、受信側通信装置において初送パケットと合成される再送パケットの送信に代えて、第2のMCSを使用して、該再送パケットにより伝送すべき再送データを含んだ新たな初送パケットを受信側通信装置に送信するステップ(ステップS155)と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適応変調・符号化とハイブリッド自動再送制御とをサポートする無線通信システムの送信側通信装置及び再送制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線通信におけるスループットを向上させることが可能な技術の一つとして、適応変調・符号化(AMC;Adaptive Modulation and Coding)が知られている。AMCでは、送信側の無線通信装置(以下、「送信側通信装置」)は、受信側の無線通信装置(以下、「受信側通信装置」)との間の無線リンクの状態(以下、「無線状態」)に基づいて、変調方式及び符号化率の組み合わせにより定められる変調・符号化方式(MCS;Modulation and Coding Scheme)を適応的に選択する。
【0003】
また、無線通信システムでは、伝送誤りを効率よく回復してスループットを向上するために、ハイブリッド自動再送制御(HARQ; Hybrid Automatic Repeat Request)が用いられている。HARQの一方式であるチェイス合成(CC;Chase Combining)方式は、初回送信パケット(以下、「初送パケット」)と同一内容のパケットを再送パケットとして送信側通信装置から受信側通信装置に送信するものである。受信側通信装置は、受信した再送パケットと、受信バッファに保持されている初送パケットとを所定の方法で合成することによって、パケットの誤り率を低減させることができ、パケットの復号に成功する確率を高めることができる。
【0004】
CC方式のHARQをサポートする従来の無線通信システムでは、初送パケットの送信に使用されたMCSと、再送パケットの送信に使用されたMCSとが異なると、該初送パケットと該再送パケットとの合成処理ができなくなるという制限があるため、送信側通信装置は、初送時に選択したMCSを再送時にも使用して再送パケットを送信することが一般的である。
【0005】
これに対し、特許文献1には、HARQにおいて、初送時に選択したMCSとは異なるMCSを再送時に使用できる無線通信システムが開示されている。特許文献1に記載の無線通信システムでは、無線状態の変化に起因して再送時のMCSが初送時のMCSから変化した場合、送信側通信装置は、初送パケットの一部または全部を再送パケットとして送信し、受信側通信装置は、受信した再送パケットを初送パケットと部分的に合成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−198429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
CC方式のHARQをサポートする従来の無線通信システムでは、再送時の無線状態が初送時の無線状態と大きく異なる場合、再送時に不適切なMCSを使用してしまうことになる。特に、初送時よりも再送時の無線状態が劣化している場合には、初送時と同じMCSを使用して再送パケットを送信しても、該再送パケットの誤り率が高くなることから、合成処理による誤り率の改善効果が小さくなってしまう。
【0008】
また、受信側通信装置が送信側通信装置にフィードバックする受信状態情報に誤りが含まれていたなどの理由で、送信側通信装置がMCSの選択をミスすることがある。CC方式のHARQをサポートする従来の無線通信システムでは、初送時にMCSの選択ミスをしてしまった場合、再送時にも選択ミスのMCSを使用しなければならず、システムの性能を低下させる要因となる。
【0009】
これに対し、特許文献1に記載の無線通信システムは、初送時とは異なるMCSを再送時に使用できるため、CC方式のHARQをサポートする従来の無線通信システムの問題点を回避することが可能であるものの、部分合成処理のための特殊な機構を受信側通信装置に設ける必要がある。すなわち、従来の受信側通信装置の構成を変更する必要があるため、導入コストが大きくなるという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、従来の受信側通信装置の構成を変更することなく、初送時とは異なる変調・符号化方式(MCS)を再送時に使用できる送信側通信装置及び再送制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明は以下のような特徴を有している。
【0012】
まず、本発明に係る送信側通信装置の特徴は、適応変調・符号化とハイブリッド自動再送制御とをサポートする無線通信システム(無線通信システム1)においてパケットを受信側通信装置(受信側通信装置200)に送信する送信側通信装置(送信側通信装置100)であって、初送パケットと、前記受信側通信装置において前記初送パケットと合成される再送パケットとを前記受信側通信装置に送信するように構成された送信部(送信部110T)と、前記初送パケットの送信時に使用した変調・符号化方式とは異なる変調・符号化方式を再送時に使用する場合に、前記再送パケットの送信に代えて、該異なる変調・符号化方式を使用して、前記再送パケットにより伝送すべき再送データを含んだ新たな初送パケットを前記受信側通信装置に送信するように、前記送信部を制御する制御部(制御部120)と、を備えることを要旨とする。
【0013】
このような送信側通信装置によれば、初送パケットの送信時に使用した変調・符号化方式とは異なる変調・符号化方式を再送時に使用する場合に、再送パケットの送信に代えて、該異なる変調・符号化方式を使用して、該再送パケットにより伝送すべき再送データを含んだ新たな初送パケットを送信する。これにより、適切な変調・符号化方式で再送データを送信可能としながらも、受信側通信装置は、特許文献1に記載されているような部分合成処理を行う必要がない。従って、上記特徴に係る送信側通信装置は、従来の受信側通信装置の構成を変更することなく、初送時とは異なる変調・符号化方式(MCS)を再送時に使用できる。
【0014】
本発明に係る送信側通信装置の他の特徴は、上記特徴に係る送信側通信装置において、前記制御部は、前記送信側通信装置と前記受信側通信装置との間の無線状態の劣化により、前記異なる変調・符号化方式を再送時に使用する場合に、前記再送パケットの送信に代えて、前記異なる変調・符号化方式を使用して前記新たな初送パケットを前記受信側通信装置に送信するように前記送信部を制御する、ことを要旨とする。
【0015】
本発明に係る送信側通信装置の他の特徴は、上記特徴に係る送信側通信装置において、前記送信部は、前記再送パケットにより伝送すべき再送データを保持する第1の再送キュー部(CC再送キュー113)と、第2の再送キュー部(PDU再送キュー112)と、新たに伝送すべきデータを保持する送信キュー部(送信キュー111)と、を有し、前記制御部は、前記初送パケットの送信時に使用した変調・符号化方式と同じ変調・符号化方式を再送時に使用する場合に、前記第1の再送キュー部に保持されている再送データを前記再送パケットに含めて送信するように前記送信部を制御し、前記制御部は、前記異なる変調・符号化方式を再送時に使用する場合に、前記第1の再送キュー部に保持されている再送データを前記第2の再送キュー部に移動した後、前記第2の再送キュー部に保持されている再送データ及び前記送信キュー部に保持されているデータの優先度の順で前記新たな初送パケットに含めて送信するように前記送信部を制御する、ことを要旨とする。
【0016】
本発明に係る再送制御方法の特徴は、適応変調・符号化とハイブリッド自動再送制御とをサポートする無線通信システムにおいてパケットを受信側通信装置に送信する送信側通信装置の再送制御方法であって、第1の変調・符号化方式を使用して初送パケットを前記受信側通信装置に送信するステップと、前記第1の変調・符号化方式とは異なる第2の変調・符号化方式を再送時に使用する場合に、前記受信側通信装置において前記初送パケットと合成される再送パケットの送信に代えて、前記第2の変調・符号化方式を使用して、前記再送パケットにより伝送すべき再送データを含んだ新たな初送パケットを前記受信側通信装置に送信するステップと、を有することを要旨とする。
【0017】
本発明に係る再送制御方法の他の特徴は、上記特徴に係る再送制御方法において、前記新たな初送パケットを送信するステップでは、前記送信側通信装置と前記受信側通信装置との間の無線状態の劣化により前記第2の変調・符号化方式を再送時に使用する場合に、前記再送パケットの送信に代えて、前記第2の変調・符号化方式を使用して前記新たな初送パケットを前記受信側通信装置に送信する、ことを要旨とする。
【0018】
本発明に係る再送制御方法の他の特徴は、上記特徴に係る再送制御方法において、前記送信側通信装置は、前記再送パケットにより伝送すべき再送データを保持する第1の再送キュー部と、第2の再送キュー部と、新たに伝送すべきデータを保持する送信キュー部と、を有し、前記新たな初送パケットを送信するステップは、前記第1の再送キュー部に保持されている再送データを前記第2の再送キュー部に移動するステップと、前記第2の再送キュー部に保持されている再送データ及び前記送信キュー部に保持されているデータの優先度の順で前記新たな初送パケットに含めるステップと、を有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、従来の受信側通信装置の構成を変更することなく、初送時とは異なる変調・符号化方式(MCS)を再送時に使用できる送信側通信装置及び再送制御方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る無線通信システムの全体概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る送信側通信装置の詳細構成を示すブロック図である。
【図3】PHYバーストとMAC PDUとの関係を示した図である。
【図4】本発明の実施形態に係る受信側通信装置の詳細構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施形態に係る送信側通信装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態に係る受信側通信装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面を参照して、本発明の実施形態について、(1)無線通信システムの概要、(2)無線通信システムの詳細構成、(3)無線通信システムの動作、(4)実施形態の効果、(5)その他の実施形態の順に説明する。以下の実施形態における図面において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付す。
【0022】
(1)無線通信システムの概要
図1は、本実施形態に係る無線通信システム1の全体概略構成図である。無線通信システム1は、上述したAMCと、上述したCC方式のHARQとをサポートする。
【0023】
図1に示すように、無線通信システム1は、送信側通信装置100と受信側通信装置200とを有する。例えば、送信側通信装置100は基地局であり、受信側通信装置200は無線端末である。
【0024】
送信側通信装置100は、アンテナ101と、アンテナ101を介して無線信号を送受信する送受信部110と、送受信部110を制御する制御部120とを有する。送受信部110は、送信部110Tと受信部110Rとを含む。
【0025】
受信側通信装置200は、アンテナ201と、アンテナ201を介して無線信号を送受信する送受信部210と、送受信部210を制御する制御部220とを有する。送受信部210は、送信部210Tと受信部210Rとを含む。
【0026】
送信側通信装置100において、送信部110Tは、パケットを送信する。また、送信部110Tは、パケットを送信する際の付加情報として、該パケットが初送パケットであるか再送パケットであるかを受信側通信装置200に通知するためのHARQトグルを送信する。HARQトグルは1ビットのフラグであり、送信側通信装置100は、初送パケットの送信時にはHARQトグルの値を反転させ、再送パケットの送信時にはHARQトグルの値を維持する。
【0027】
受信側通信装置200において、受信部210Rは、送信側通信装置100によって送信されたパケットを受信し、受信したパケットを復号する。受信部210Rは、再送パケットを受信した場合、すなわち、HARQトグルの値が維持された状態のパケットを受信した場合には、該再送パケットと、受信部210R内の受信バッファに保持されている前回受信パケットとを所定の方法で合成した上で復号する。これに対し、受信部210Rは、初送パケットを受信した場合、すなわち、HARQトグルの値が反転された状態のパケットを受信した場合には、受信部210R内の受信バッファをリセットして該初送パケットを復号する。また、制御部220は、受信部210Rが復号に成功した場合には確認応答(ACK)を送信側通信装置100にフィードバックし、該復号に失敗した場合には否定確認応答(NACK)を送信側通信装置100にフィードバックするよう送信部210Tを制御する。
【0028】
また、受信側通信装置200において、受信部210Rは、送信側通信装置100から受信する無線信号の受信状態(SINR等)を測定する。制御部220は、該測定の結果を示す受信状態情報を、周期的に送信側通信装置100にフィードバックするよう送信部210Tを制御する。このような受信状態情報は、CQI(Channel Quality Indicator)と称されることがある。
【0029】
送信側通信装置100において、受信部110Rは、受信側通信装置200からのACK/NACK及び受信状態情報を受信する。制御部120は、HARQ手順に従い、受信部110Rが受信したACK/NACKに応じて再送処理を行うよう送信部110Tを制御する。また、制御部120は、AMC手順に従い、受信部110Rが受信した受信状態情報に応じて、変調方式及び符号化率の組み合わせにより定められるMCSを送信部110Tに設定する。
【0030】
このように構成された無線通信システム1の送信側通信装置100において、送信部110Tは、初送パケットと、受信側通信装置200において該初送パケットと合成される再送パケットとを受信側通信装置200に送信する。制御部120は、該初送パケットの送信時に使用したMCSとは異なるMCSを再送時に使用する場合に、該再送パケットの送信に代えて、該異なるMCSを使用して、該再送パケットにより伝送すべき再送データを含んだ新たな初送パケットを受信側通信装置200に送信するように、送信部110Tを制御する。
【0031】
このような再送制御を行うことによって、適切なMCSを使用して再送データを受信側通信装置200に伝送できる。また、再送データを初送パケットに含めることによって、受信側通信装置200は、受信した初送パケットをそれ以前に受信したパケットと合成することはないので、特殊な合成処理を行う必要がない。つまり、受信側通信装置200の構成を変更する必要がないため、導入コストを低く抑えることができる。
【0032】
(2)無線通信システムの詳細構成
次に、本実施形態に係る無線通信システム1の詳細構成について、(2.1)送信側通信装置の詳細構成、(2.2)受信側通信装置の詳細構成の順に説明する。
【0033】
(2.1)送信側通信装置の詳細構成
図2は、本実施形態に係る送信側通信装置100の詳細構成、具体的には、送信側通信装置100の送信部110Tの内部構成を示すブロック図である。なお、図2においては、アップコンバータやパワーアンプ等の高周波(RF)処理ブロックの図示を省略している。
【0034】
図2に示すように、送信側通信装置100の送信部110Tは、送信キュー111と、PDU(Protocol Data Unit)再送キュー112と、CC再送キュー113と、PHY(PHYsical Layer)バースト生成部114と、符号化部115と、インターリーバ116と、変調部117とを含む。
【0035】
送信キュー111は、上位層であるMAC層から送信部110Tに入力されるデータ単位であるMAC PDUを保持する。PDU再送キュー112及びCC再送キュー113のそれぞれは、送信済みのMAC PDUを再送用に保持する。PDU再送キュー112は、初送パケットに含める再送用MAC PDU(再送データ)を保持するものであり、CC再送キュー113は、再送パケットに含める再送用MAC PDU(再送データ)を保持するものである。言い換えると、PDU再送キュー112は、受信側通信装置200において合成処理の対象とならない再送用MAC PDUを保持するものであり、CC再送キュー113は、受信側通信装置200において合成処理の対象となる再送用MAC PDUを保持するものである。
【0036】
PHYバースト生成部114は、送信キュー111、PDU再送キュー112、及びCC再送キュー113から複数のMAC PDUを取り出し、図3に示すようなPHYバーストを作成する。図3は、PHYバーストとMAC PDUとの関係を示した図である。図3に示すように、PHYバーストには、MACヘッダとペイロードとからなる可変長のMAC PDUを複数含めることができ、その後ろに、ビット誤りチェック用のCRC(Cyclic Redundancy Check)符号と、PHYバーストの大きさを整えるためのパリティとが付随する。なお、PHYバーストは、符号化及び変調等の処理が施されて、受信側通信装置200に送信されるパケットになる。
【0037】
符号化部115は、PHYバースト生成部114からのPHYバーストが入力される。符号化部115は、入力されたPHYバーストに誤り訂正機能を持たせるため、例えばターボ符号などを用いて符号化を行う。なお、該符号化での符号化率は、制御部140によって選択されたMCSに応じて定められる。
【0038】
インターリーバ116は、符号化部115からの符号化ビット列が入力される。インターリーバ116は、入力されたビット列の順番を入れ替える(撹拌する)ことで、バーストエラーに対する耐性を持たせる。
【0039】
変調部117は、インターリーバ116からのビット列が入力される。変調部117は、入力されたビット列に対して、BPSK(Binary Phase Shift Keying)、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)、又はQAM(Quadrature Amplitude Modulation)といった変調方式で変調する。なお、該変調方式は、制御部140によって選択されたMCSに応じて定められる。
【0040】
変調部117が出力するビット列(パケット)は、図示を省略するRF処理ブロックによって無線信号に変換され、図1に示したアンテナ101から送出される。
【0041】
(2.2)受信側通信装置の詳細構成
図4は、本実施形態に係る受信側通信装置200の詳細構成、具体的には、受信側通信装置200の受信部210Rの内部構成を示すブロック図である。なお、図4においては、ローノイズアンプやダウンコンバータ等のRF処理ブロックの図示を省略している。
【0042】
図4に示すように、受信側通信装置200の受信部210Rは、復調部211と、チェイス合成部212と、デインターリーバ213と、復号部214と、CRC部215とを含む。
【0043】
図1に示したアンテナ201からの無線信号は図示を省略するRF処理ブロックによってベースバンド信号に変換され、該ベースバンド信号は復調部211に入力される。
【0044】
復調部211は、入力された信号の復調を行い、LLR(Log likelihood Ratio)値を出力する。LLR値とは、復調された各符号ビットに対して、軟判定(soft decision)を行った値のことである。
【0045】
チェイス合成部212は、復調部211からのLLR値が入力される。チェイス合成部212は、チェイス合成部212内のバッファに保持しておいた前回受信時のパケットのLLR値と、今回受信したパケットのLLR値とを合成することによって、パケット内の各ビットの信頼度を向上させる。
【0046】
デインターリーバ213は、チェイス合成部212からのビット列が入力される。デインターリーバ213は、ビット列の順番を元の順序に戻す処理(逆撹拌)を行う。
【0047】
復号部214は、デインターリーバ213からのビット列が入力される。復号部214は、ビット列の復号を行い、PHYバーストを出力する。
【0048】
CRC部215は、復号部214からのPHYバーストが入力される。CRC部215は、PHYバーストに含まれるCRC符号を用いた誤り検出を行い、誤り検出の結果を制御部220に通知する。
【0049】
制御部220は、誤りが検出されなかった旨を通知された場合にはACKを送信するよう制御し、誤りが検出された旨を通知された場合にはNACKを送信するよう制御する。
【0050】
(3)無線通信システムの動作
次に、本実施形態に係る無線通信システム1の動作について、(3.1)送信側通信装置の動作、(3.2)受信側通信装置の動作の順に説明する。
【0051】
(3.1)送信側通信装置の動作
図5は、本実施形態に係る送信側通信装置100の動作を示すフローチャートである。
【0052】
図5に示すように、ステップS110において、制御部120は、受信側通信装置200から受信部110Rが受信した受信状態情報(CQI)に基づいて、受信側通信装置200の受信状態を把握する。
【0053】
ステップS115において、制御部120は、受信側通信装置200の受信状態に応じて、複数のMCSの中から、送信部110Tに設定するMCSを決定する。
【0054】
ステップS120において、制御部120は、PHYバーストを生成するために、送信キュー111からPHYバーストに格納できる数のMAC PDUを取り出すようPHYバースト生成部114を制御する。
【0055】
ステップS125において、PHYバースト生成部114、符号化部115、インターリーバ116、及び変調部117は、PHYバーストに対して、符号化、インターリーブ、及び変調をそれぞれ行い、アンテナ101へ出力する。この際、制御部120は、初送パケットを送信したことを受信側通信装置200に知らせるために、HARQトグルの値を反転させてパケットと共に送信するよう制御する。
【0056】
ステップS130において、制御部120は、パケットを送信した後、受信側通信装置200からのACKを待つ。そして、制御部120は、ACKを受信した場合は、処理をステップS110に戻す。これに対し、タイムアウト時間内にACKを受信できなかった、もしくは、受信側通信装置200からNACKを受信した場合は、ステップS135以降の再送処理へ移行する。
【0057】
ステップS135において、制御部120は、再送処理の開始時に、再送すべきPHYバーストに含まれる各MAC PDUを、送信キュー111からCC再送キュー113に移動する。
【0058】
ステップS140において、制御部120は、受信側通信装置200から受信部110Rが新たに受信した受信状態情報(CQI)に基づいて、受信側通信装置200の現在の受信状態を把握する。
【0059】
ステップS145において、制御部120は、受信側通信装置200の受信状態に応じて、複数のMCSの中から、送信部110Tに設定するMCSを決定する。
【0060】
ステップS150において、制御部120は、ステップS145で決定したMCSが、ステップS115で決定した初送時のMCSと同じかどうかを判断する。そして、制御部120は、ステップS145で決定したMCSがステップS115で決定した初送時のMCSと同じである場合は、処理をステップS160に移す。これに対し、制御部120は、ステップS145で決定したMCSがステップS115で決定した初送時のMCSと異なる場合は、処理をステップS155に移す。
【0061】
ステップS155において、制御部120は、新しいPHYバーストを生成するために、CC再送キュー113内のMAC PDUを、PDU再送キュー112へ移動する。そして、制御部120は、PDU再送キュー112、送信キュー111の優先度の順でMAC PDUを取り出し、新しいPHYバーストを生成するように、PHYバースト生成部114を制御する。その後、PHYバースト生成部114、符号化部115、インターリーバ116、及び変調部117は、PHYバーストに対して、符号化、インターリーブ、及び変調をそれぞれ行い、アンテナ101へ出力する。この際、制御部120は、初送パケットを送信したことを受信側通信装置200に知らせるために、HARQトグルの値を反転させてパケットと共に送信するよう制御する。
【0062】
一方、ステップS160においては、制御部120は、通常のCC手順と同様に、初送時と全く同じPHYバーストを生成するために、CC再送キュー113から初送時と同じ数だけMAC PDUを取り出してPHYバーストを生成するようPHYバースト生成部114を制御する。その後、PHYバースト生成部114、符号化部115、インターリーバ116、及び変調部117は、PHYバーストに対して、符号化、インターリーブ、及び変調をそれぞれ行い、アンテナ101へ出力する。この際、制御部120は、再送パケットを送信したことを受信側通信装置200に知らせるために、HARQトグルの値を維持してパケットと共に送信するよう制御する。
【0063】
ステップS155、ステップS160の後は、制御部120は、ステップS130の処理、すなわち、受信側通信装置200からのACKを待つ状態に戻る。
【0064】
(3.2)受信側通信装置の動作
図6は、本実施形態に係る受信側通信装置200の動作を示すフローチャートである。
図6に示すように、ステップS210において、復調部211は、アンテナ201から入力された信号に対して復調を行い、各ビットのLLR値を取得する。
【0065】
ステップS215において、制御部220は、受信したデータ(パケット)に含まれるHARQトグルの値を確認し、値が前回と同じであるかどうかを判定する。そして、制御部220は、受信したデータに含まれるHARQトグルの値が前回と同じである場合は、処理をステップS220に移す。これに対し、制御部220は、受信したデータに含まれるHARQトグルの値が前回と異なる場合は、処理をステップS225に移す。
【0066】
ステップS220において、制御部220は、受信パケットが再送パケットであると認識し、前回保持しておいたパケット及び今回受信したパケットのそれぞれのLLR値の合成を行うようチェイス合成部212を制御する。そして、デインターリーバ213、復号部214、及びCRC部215は、デインターリーブ、復号、及びCRC符号による誤り検出をそれぞれ行う。
【0067】
ステップS225において、制御部220は、受信パケットが初送パケットであると認識し、前回のパケットをバッファに保持していた場合はそれを破棄するようチェイス合成部212を制御する。すなわち、該初送パケットは合成処理の対象とはならない。そして、デインターリーバ213、復号部214、及びCRC部215は、デインターリーブ、復号、及びCRC符号による誤り検出をそれぞれ行う。
【0068】
ステップS230において、制御部220は、誤りが検出されたか否かを確認する。そして、制御部220は、誤りが検出された場合は、処理をステップS240に移す。これに対し、制御部220は、誤りが検出されない場合は、処理をステップS235に移す。
【0069】
ステップS235において、制御部220は、ACKを送信側通信装置100に送信するよう送信部210Tを制御し、且つ復元された複数のMAC PDUを上位層へ出力する。
【0070】
ステップS240において、制御部220は、NACKを送信側通信装置100に送信するよう送信部210Tを制御し、且つ誤りのあるパケットのLLR値を受信バッファに保持するようチェイス合成部212を制御する。
【0071】
なお、MAC PDUは再送待ちなどが原因で、到着順序が前後することがあるめ、上位層のPDU到着順序制御にて、元通りの順番に並び替えられる。
【0072】
(4)実施形態の効果
以上説明したように、本実施形態に係る送信側通信装置100は、初送パケットの送信時に使用したMCSとは異なるMCSを再送時に使用する場合に、再送パケットの送信に代えて、該異なるMCSを使用して、該再送パケットにより伝送すべき再送データを含んだ初送パケットを受信側通信装置200に送信する。
【0073】
このような再送制御を行うことによって、適切なMCSを使用して再送データを受信側通信装置200に伝送できる。また、該再送データを初送パケットに含めることによって、受信側通信装置200は、受信した初送パケットをそれ以前に受信したパケットと合成することはないので、特殊な合成処理を行う必要がない。つまり、受信側通信装置200の構成を変更する必要がないため、導入コストを低く抑えることができる。特に、送信側通信装置100が基地局であり、受信側通信装置200が無線端末である場合には、基地局側の構成のみ変更すればよいため、導入コストを非常に低く抑えることができる。
【0074】
さらに、初送時よりも再送時のMCSが高い(高データレート)である場合には、PDU再送キュー内のMAC PDUよりも多くのMAC PDUをPHY burstに詰め込むことが可能になるため、伝送効率を高めることが期待できる。
【0075】
(5)その他の実施形態
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0076】
上述した実施形態では、初送時よりも再送時の無線状態が良化したことにより、初送時のMCSと再送時のMCSとが異なることになった場合にも、再送パケットに代えて初送パケットを送信していた。しかしながら、初送時よりも再送時の無線状態が良化するケースでは、再送時に初送時よりもビットレートの高いMCSが選択され、合成処理の効果が大きくなるため、かかるケースでは再送時にMCSを初送時と同じにし、通常の合成処理を行って迅速に誤りを回復させる方法としてもよい。
【0077】
これに対し、初送時よりも再送時の無線状態が劣化するケースでは、再送時に初送時よりもビットレートの低いMCSが選択され、合成処理の効果が小さくなるため、かかるケースでは再送時にMCSを初送時と異ならせて、再送パケットに代えて初送パケットを送信し、受信側通信装置200での合成処理を中止させる方法とすることが好ましい。
【0078】
上述した実施形態では、送信側通信装置100は基地局であり、受信側通信装置200は無線端末であると説明したが、送信側通信装置100を無線端末とし、受信側通信装置200を基地局としてもよい。あるいは、基地局に代えて中継局(リレーノード)を使用してもよい。
【0079】
上述した実施形態では、送信側通信装置100は、受信側通信装置200からのフィードバックにより受信側通信装置200の受信状態を把握していた。しかしながら、送信側通信装置100から受信側通信装置200への送信(例えば下りリンク)と受信側通信装置200から送信側通信装置100への送信(例えば上りリンク)とで同じ周波数を用いる方式(TDD方式)の場合には、送信側通信装置100は、上下リンクの可逆性を利用し、受信側通信装置200からの受信信号に対する測定を行うことにより受信側通信装置200の受信状態を把握してもよい。
【0080】
上述した実施形態では、CC方式のHARQについて説明したが、本発明はCC方式のHARQに限定されるものではなく、全体冗長度増加(FIR)方式や部分冗長度増加(PIR)方式等のHARQに対して本発明を応用してもよい。
【0081】
このように本発明は、ここでは記載していない様々な実施形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0082】
1…無線通信システム、100…送信側通信装置、101…アンテナ、110…送受信部、110R…受信部、110T…送信部、111…送信キュー、112…PDU再送キュー、113…CC再送キュー、114…PHYバースト生成部、115…符号化部、116…インターリーバ、117…変調部、120…制御部、140…制御部、200…受信側通信装置、201…アンテナ、210…送受信部、210R…受信部、210T…送信部、211…復調部、212…チェイス合成部、213…デインターリーバ、214…復号部、215…CRC部、220…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
適応変調・符号化とハイブリッド自動再送制御とをサポートする無線通信システムにおいてパケットを受信側通信装置に送信する送信側通信装置であって、
初送パケットと、前記受信側通信装置において前記初送パケットと合成される再送パケットとを前記受信側通信装置に送信するように構成された送信部と、
前記初送パケットの送信時に使用した変調・符号化方式とは異なる変調・符号化方式を再送時に使用する場合に、前記再送パケットの送信に代えて、該異なる変調・符号化方式を使用して、前記再送パケットにより伝送すべき再送データを含んだ新たな初送パケットを前記受信側通信装置に送信するように、前記送信部を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする送信側通信装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記送信側通信装置と前記受信側通信装置との間の無線状態の劣化により、前記異なる変調・符号化方式を再送時に使用する場合に、前記再送パケットの送信に代えて、前記異なる変調・符号化方式を使用して前記新たな初送パケットを前記受信側通信装置に送信するように前記送信部を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の送信側通信装置。
【請求項3】
前記送信部は、
前記再送パケットにより伝送すべき再送データを保持する第1の再送キュー部と、
第2の再送キュー部と、
新たに伝送すべきデータを保持する送信キュー部と、
を有し、
前記制御部は、前記初送パケットの送信時に使用した変調・符号化方式と同じ変調・符号化方式を再送時に使用する場合に、前記第1の再送キュー部に保持されている再送データを前記再送パケットに含めて送信するように前記送信部を制御し、
前記制御部は、前記異なる変調・符号化方式を再送時に使用する場合に、前記第1の再送キュー部に保持されている再送データを前記第2の再送キュー部に移動した後、前記第2の再送キュー部に保持されている再送データ及び前記送信キュー部に保持されているデータの優先度の順で前記新たな初送パケットに含めて送信するように前記送信部を制御する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の送信側通信装置。
【請求項4】
適応変調・符号化とハイブリッド自動再送制御とをサポートする無線通信システムにおいてパケットを受信側通信装置に送信する送信側通信装置の再送制御方法であって、
第1の変調・符号化方式を使用して初送パケットを前記受信側通信装置に送信するステップと、
前記第1の変調・符号化方式とは異なる第2の変調・符号化方式を再送時に使用する場合に、前記受信側通信装置において前記初送パケットと合成される再送パケットの送信に代えて、前記第2の変調・符号化方式を使用して、前記再送パケットにより伝送すべき再送データを含んだ新たな初送パケットを前記受信側通信装置に送信するステップと、
を有することを特徴とする再送制御方法。
【請求項5】
前記新たな初送パケットを送信するステップでは、前記送信側通信装置と前記受信側通信装置との間の無線状態の劣化により前記第2の変調・符号化方式を再送時に使用する場合に、前記再送パケットの送信に代えて、前記第2の変調・符号化方式を使用して前記新たな初送パケットを前記受信側通信装置に送信する、
ことを特徴とする請求項4に記載の再送制御方法。
【請求項6】
前記送信側通信装置は、
前記再送パケットにより伝送すべき再送データを保持する第1の再送キュー部と、
第2の再送キュー部と、
新たに伝送すべきデータを保持する送信キュー部と、
を有し、
前記新たな初送パケットを送信するステップは、
前記第1の再送キュー部に保持されている再送データを前記第2の再送キュー部に移動するステップと、
前記第2の再送キュー部に保持されている再送データ及び前記送信キュー部に保持されているデータの優先度の順で前記新たな初送パケットに含めるステップと、
を有することを特徴とする請求項4又は5に記載の再送制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−222703(P2012−222703A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88563(P2011−88563)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】