説明

送信装置およびプログラム

【課題】1の送信装置から複数の受信装置に対する無線通信による同時通信を安定的に行う。
【解決手段】画像送信装置は、各画像投影装置と通信を行い、各画像投影装置それぞれとの間の電波状態を取得する。画像送信装置は、各画像投影装置のうち最も電波状態が悪いと判定された画像投影装置を目標受信装置として決定し、画像データを送信する際の通信パラメータを、この目標受信装置との間の電波状態に応じて、目標受信装置との通信が安定的に行えるような値に決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の受信装置と同時に通信を行う送信装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、パーソナルコンピュータといった画像送信装置の画面の画像を、ケーブルを介して画像投影装置に送り、スクリーンなどに投影させることが行われている。例えば、会議室などにおけるプレゼンテーションでは、このような画像投影装置を用いることが一般的に行われれている。
【0003】
また、近年では、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11シリーズに代表される無線通信規格による無線通信が急速に普及しつつある。そこで、画像送信装置の画面の画像を、ケーブルを用いずに、無線LAN(Local Area Network)といった無線ネットワークを介して画像投影装置に送信して、当該画像をスクリーンに投影させる無線ネットワーク画像投影システムが広まりつつある。
【0004】
一方で、視覚効果の高いプレゼンテーションを行うため、複数台の画像投影装置を用いて、画像を複数のスクリーン上に同時に投影する、所謂マルチスクリーン投影システムが開発されている。
【0005】
従来、マルチスクリーン投影システムでは、1台の画像送信装置に対し1台の画像投影装置の組み合わせで、画像送信装置からの画像を対応する画像投影装置に対して無線伝送する、所謂ユニキャストで画像配信がなされるのが一般的であった。このようなユニキャストで画像配信を行うと、複数台の画像投影装置に対して同時に画像配信を行うことができない。そのため、複数台の画像投影装置に対して同一の画像を配信する場合には、各画像投影装置に対し順次画像配信を行うことになり、配信時間がかかってしまう。
【0006】
複数台の画像投影装置に対して同一の画像を配信する際の配信時間を短縮するため、画像送信装置がブロードキャストで複数台の画像投影装置に対して同時に画像配信を行うマルチスクリーン投影システムが提案されている。
【0007】
特許文献1には、送信機において、1台の送信機から複数の受信機に対して画像の同時配信を行うブロードキャストモードと、1台の送信機から1台の受信機に対して画像配信を行うユニキャストモードとが選択可能とされ、ブロードキャストモードが選択された場合には、画像信号としてHDMI(High-Definition Multimedia Interface)信号を選択できないようにされた画像表示システムが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来では、上述したような、ブロードキャストで複数の画像投影装置に対して同一画像を配信する場合に、画像送信装置側の無線通信パラメータを、画像送信装置と複数の画像投影装置との間の電波状態に応じて適切に設定することが困難であった。そのため、複数の画像投影装置のうち電波状態の悪い画像投影装置との間での通信状態が不安定になり、当該画像投影装置に対して正常な画像配信を行うことができなくなるおそれがあるという問題点があった。
【0009】
例えば、画像送信装置との位置関係や障害物の存在などにより、複数の画像投影装置の中に電波状態の悪い画像投影装置が生じてしまう可能性が有り得る。このとき、受信側の位置を移動させて電波状態を改善させることも考えられる。ところが、画像投影装置は、スクリーンなどとの位置関係により、設置場所から移動させることが困難な場合がある。
【0010】
また、上述した特許文献1では、ブロードキャストモードを選択した場合には複数の受信機に対して同一の画像を同時に配信することが可能とされている。しかしながら、この特許文献1においても、送信機の送信の際のパラメータを、送信機と複数の受信機との間の電波状態に応じて適切に設定することが困難である点については、解決できていない。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、1の送信装置から複数の受信装置に対する無線通信による同時通信を安定的に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、複数の受信装置と無線通信を行い、複数の受信装置それぞれとの間の電波状態を検出する検出手段と、検出手段で検出された電波状態のそれぞれに基づき、複数の受信装置のうち最も電波状態の悪い受信装置を目標受信装置として決定する決定手段と、検出手段で検出された、決定手段で決定された目標受信装置との間の電波状態に基づき通信パラメータ値を設定する設定手段と、設定手段で設定された通信パラメータ値に従い、複数の受信装置に対してデータを送信する送信手段とを有することを特徴とする。
【0013】
また、この発明は、複数の受信装置と無線通信を行い、複数の受信装置それぞれとの間の電波状態を検出する検出ステップと、検出ステップで検出された電波状態のそれぞれに基づき、複数の受信装置のうち最も電波状態の悪い受信装置を目標受信装置として決定する決定ステップと、検出ステップで検出された、決定ステップで決定された目標受信装置との間の電波状態に基づき通信パラメータ値を設定する設定ステップと、設定ステップで設定された通信パラメータ値に従い、複数の受信装置に対してデータを送信する送信ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、1の送信装置から複数の受信装置に対する無線通信による同時通信を安定的に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、各実施形態に適用可能な無線パケットの一例の構成を概略的に示す略線図である。
【図2】図2は、各実施形態に適用可能な通信手順の例を示す略線図である。
【図3】図3は、各実施形態に適用可能なマルチスクリーン投影システムの一例の構成を概略的に示す略線図である。
【図4】図4は、画像送信装置の一例の構成を示すブロック図である。
【図5】図5は、画像投影装置の一例の構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、無線通信部の一例の構成をより詳細に示すブロック図である。
【図7】図7は、第1の実施形態による通信処理について概略的に説明するための略線図である。
【図8】図8は、IEEE802.11aに規定される、各伝送レートに対する最低受信感度を示す略線図である。
【図9】図9は、第1の実施形態による通信処理を示す一例のフローチャートである。
【図10】図10は、第2の実施形態による通信処理について概略的に説明するための略線図である。
【図11】図11は、IEEE802.11aに規定される、各伝送レートに対する最低S/N比を示す略線図である。
【図12】図12は、第2の実施形態による通信処理を示す一例のフローチャートである。
【図13】図13は、第3の実施形態による通信処理について概略的に説明するための略線図である。
【図14】図14は、第3の実施形態による通信処理を示す一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照して、送信装置およびプログラム、ならびに、通信システムの実施形態を詳細に説明する。先ず、理解を容易とするために、各実施形態に適用可能な通信方式の例について、概略的に説明する。各実施形態では、無線通信によりパケット単位でデータを送信する。図1は、各実施形態に適用可能な無線パケット200の一例の構成を概略的に示す。無線パケット200は、例えば、先頭からプリアンブル201、SIG202、データ部203およびCRC部204を含む。
【0017】
プリアンブル201は、無線パケット200の先頭に付加される同期信号のビット列であり、2種類の長さが定義され、物理層で付加される。SIG部202は、シグナルフィールドであって、変調方式(伝送速度)、データ部203に含まれるデータのデータ長などの情報が含まれ、物理層で付加される。データ部203は、実際のデータが格納される。CRC部204は、データ部203に格納されるデータの伝送誤りを検出するための誤り検出符号が格納される。
【0018】
なお、図示は省略するが、データ部203の先頭には、宛先、送信元およびアクセスポイントのMAC(Medeia Access Control)アドレスを示す情報、データ部203に格納されるデータの順序や位置を示す情報、フレームの種類を示す情報などを含むヘッダが付加される。
【0019】
次に、各実施形態に適用可能な通信手順の例について、概略的に説明する。図2は、各実施形態に適用可能な、無線LANなどで一般的に用いられる通信手順の一つであるCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)における通信手順の例を示す。ここでは、例えばそれぞれパーソナルコンピュータである通信端末210と通信端末212との間でのデータ伝送を、アクセスポイント(AP)となる通信端末211を介して行う例について説明する。
【0020】
通信端末210は、ランダムな時間を待機して、データの伝送を開始する。より詳細には、図2に例示されるように、各通信端末210〜212は、最初、DIFS(Distributed Inter Frame Space)と呼ばれる時間に電波を検知しなければ、電波上で信号が流れていないと判断し、その後、ランダムな時間であるバックオフを待機する。この例では、通信端末210、211および212のうち最もバックオフ時間が短い通信端末210が送信権を獲得する(1)。通信端末210は、APである通信端末211に対してデータの送信を開始する(2)。
【0021】
一方、通信端末211および212では、通信端末210によるデータ送信中は、ビジー状態となる(2)。データの送信先の通信端末211は、データを受信し終わると、SIFS(Short Inter Frame Space)と呼ばれる時間を待機した後、Ackを返す(3)。その間、通信端末210および212はビジー状態となる。その後、通信端末210、211および212は、DIFSおよびバックオフ時間を経て、次のデータ送信を行う(4)。この例では、最もバックオフ時間が短い通信端末212がデータの送信を行うことになる。
【0022】
なお、上述において、ビジー状態とは、電波が使用中である状態をいう。電波が未使用である状態は、アイドル状態と呼ぶ。バックオフ時間は、フレームの衝突を回避するために、フレーム送信を待機するランダムに定められる時間である。DIFSは、ビジー状態のチャネルから信号が検出されなくなり、アイドル状態に移行したと判断されるまでの時間である。また、SIFSは、フレーム送信間隔における最短の待ち時間である。Ackフレームなどは、SIFSの時間を待ってから送信される。
【0023】
(各実施形態に適用可能なシステム)
図3は、各実施形態に適用可能なマルチスクリーン投影システムの一例の構成を概略的に示す。このマルチスクリーン投影システムは、図3に例示されるように、1台の画像送信装置1と、複数台の画像投影装置21、22、23、…、2nとを有する。
【0024】
画像送信装置1は、例えばパーソナルコンピュータであって、画像投影装置21、22、23、…、2nに対して、無線通信により画像データを送信することができる。画像投影装置21、22、23、…、2nは、画像送信装置1から送信された画像データを受信し、受信した画像データに基づく画像をそれぞれ対応するスクリーン31、32、33、…、3nに投影する。
【0025】
このような構成において、各実施形態では、画像送信装置1は、各画像投影装置21、22、23、…、2nと通信を行い、各画像投影装置21、22、23、…、2nそれぞれとの間の電波状態を取得する。そして、画像送信装置1は、各画像投影装置21、22、23、…、2nのうち最も電波状態が悪いと判定された画像投影装置を目標受信装置として決定し、画像データを送信する際の通信パラメータを、この目標受信装置との間の電波状態に応じて、当該目標受信装置との通信が安定的に行えるような値に決定する。これにより、画像送信装置1から各画像投影装置21、22、23、…、2nに対する画像データの送信を安定的に行うことが可能となる。
【0026】
なお、以下では、画像投影装置21、22、23、…、2nは、特に区別する必要のない場合、画像投影装置2として説明する。同様に、スクリーン31、32、33、…、3nについても、特に区別する必要が無い場合、スクリーン3として説明する。
【0027】
図4は、画像送信装置1の一例の構成を示す。画像送信装置1は、制御部10、無線通信部11、検出部12、決定部13、表示部14、操作部15およびアンテナ17を有する。制御部10は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を有し、CPUは、ROMに予め記憶されたプログラムに従い、RAMをワークメモリとして用いてこの画像送信装置1の全体の動作を制御する。これに限らず、制御部10は、HDD(ハードディスクドライブ)や不揮発性の半導体メモリをさらに有し、上述のプログラムがこれらHDDや不揮発性の半導体メモリに記憶されていてもよい。
【0028】
無線通信部11は、無線通信により、図2を用いて説明した通信手順に従い、アンテナ17を介してデータの送受信を行う。無線通信の際の例えば伝送レート、送信電力、フレーム長といった通信パラメータは、制御部10により設定される。また、送信するデータは、制御部10から供給され、受信したデータは所定に処理されて制御部10に供給される。
【0029】
無線通信部11により、データは、例えば図1を用いて上述した無線パケット200に従い、所定単位に分割されてデータ部203に詰め込まれると共に所定のヘッダ情報を付加され、さらにプリアンブル201およびSIG202を付加され、さらにデータ部203のデータに対してCRC符号が算出され、CRC部204に付加される。無線パケット200は、無線通信部11において所定に変調され、アンテナ17から電波として送信される。
【0030】
受信の際は、アンテナ17は、受信した電波を電気信号である受信信号に変換して無線通信部11に供給する。無線通信部11は、受信信号をベースバンド信号に変換して復調し、デジタルデータを得る。無線通信部11は、このデジタルデータに対し、プリアンブル201のビット列の検出を行って当該デジタルデータから無線パケット200を切り出し、SIG202、データ部203およびCRC部204各部のデータを抽出する。
【0031】
検出部12は、無線通信部11に受信された無線パケット200に格納される情報に基づき、当該無線パケット200による通信相手との通信に用いた電波の状態を検出する。決定部13は、検出部12で検出された電波状態に基づき、通信パラメータを設定する基準となる画像投影装置2を、目標受信装置として決定する。決定された目標受信装置を示す情報は、制御部10に供給される。
【0032】
表示部14は、制御部10によりプログラムに従い生成された表示制御信号に従い、ディスプレイに対して表示を行う。操作部15は、例えばマウスなどのポインティングデバイスやキーボードが接続され、画像送信装置1に対するユーザ操作を受け付ける。操作部15は、ユーザ操作に応じた制御信号を生成し、制御部10に供給する。
【0033】
なお、上述では、検出部12および決定部13が個別のハードウェアで構成されるように説明したが、これはこの例に限定されない。例えば、検出部12および決定部13を、制御部10におけるCPU上で動作するプログラムのモジュールとして構成することができる。
【0034】
図5は、画像投影装置2の一例の構成を示す。画像投影装置2は、制御部20、無線通信部21、画像生成部22、投影部23および操作部24を有する。制御部20は、例えばCPU、ROMおよびRAMを有し、CPUは、ROMに予め記憶されるプログラムに従い、RAMをワークメモリとしてこの画像投影装置2の全体を制御する。なお、制御部20は、HDDや不揮発性の半導体メモリをさらに有していてもよく、これらHDDや不揮発性の半導体メモリにプログラムを記憶していてもよい。
【0035】
無線通信部21は、アンテナ25を介して無線通信によるデータの送受信を行う。受信されたデータは、制御部20に供給され、送信するデータは、制御部10から供給される。また、詳細は後述するが、無線通信部21は、受信した無線パケット200に基づき、受信信号の強度やパケットエラーの情報など、電波状態に関する情報を検出する。検出された電波状態に関する情報は、制御部20に供給される。
【0036】
また、無線通信部21は、受信した無線パケット200のデータ部203に格納されるデータに対して復調処理など所定の受信処理を施し、デジタルデータとして制御部20に対して出力する。
【0037】
制御部20は、無線通信部21から供給された、データ部203のデジタルデータが、投影するための画像データである場合、当該画像データを画像生成部22に供給する。画像生成部22は、供給された画像データに対して所定の画像処理を施し、投影部23での投影に適した画像データを生成する。この画像データは、投影部23に供給される。
【0038】
投影部23は、例えば、光源と、RGB各色のカラーフィルタを組み込んだ液晶パネルと、RGB各色の液晶パネルから出射される光を合成するプリズムと、レンズなど光学部品とを組み合わせた光学系と、画像生成部22から供給された画像データに基づき液晶パネルを駆動する駆動回路とを備える。投影部23において、光源から出射される光がダイクロイックミラーなどによりRGB各色の光に分離され、各色のカラーフィルタを組み込んだ液晶パネルに入射される。RGB各色の光は、駆動回路により駆動される液晶パネルに制御され、プリズムによりRGB各色の光が合成されレンズなどを介して光学系から出射される。光学系から出射された光は、例えばスクリーン3といった表示媒体に投影される。
【0039】
操作部24は、操作に応じて所定の制御信号を出力する複数の操作子を有し、ユーザ操作を受け付ける。操作部24に対し、この画像投影装置2の状態を示す表示を行う表示部をさらに設けてもよい。操作部24から出力された制御信号は、制御部20に供給される。操作部24に対するユーザ操作に応じた制御信号に従い制御部20がこの画像投影装置2を制御することで、ユーザによるこの画像投影装置2の操作が可能となる。
【0040】
図6は、無線通信部21の一例の構成をより詳細に示す。なお、図6は、無線通信部21において受信に関する部分が示されていると共に、各実施形態に関連の浅い部分は、省略されている。無線通信部21は、RF部100、VGA(Variable Gain Amplifier)101、BB部102およびMAC部103を有する。RF(Radio Frequency)部100は、アンテナ25から供給された受信信号に対して所定の信号処理を施し、I信号とQ信号とに分離されたベースバンド(BB)信号であるBB−IQ信号を出力する。BB−IQ信号は、VGA101に供給される。
【0041】
また、RF部100は、RSSI(Received Signal Strength Indicator)生成部110を含む。RSSI生成部110は、アンテナ25から入力された受信信号に基づき、受信信号の強度を示す受信信号強度表示信号を生成する。受信信号強度表示信号は、BB部102に供給され、後述するパワー算出部120に入力される。
【0042】
VGA101は、入力されたBB−IQ信号を、後述するパワー算出部120から出力されたパワー情報出力に応じたゲインで以て増幅する。VGA101から出力されたBB−IQ信号は、BB部102に入力される。
【0043】
BB部102は、パワー算出部120、復調部121およびCRCチェック部122を含む。BB部102に入力されたBB−IQ信号は、パワー算出部120および復調部121に供給される。パワー算出部120は、RSSI生成部110から供給された受信信号強度表示信号と、BB部102に入力されたBB−IQ信号とに基づき、アンテナ25にて受信した受信電波の電界強度(電波強度)を算出する。算出された電波強度を示す値は、パワー情報出力としてVGA101に供給されると共に、制御部20に供給される。
【0044】
復調部121は、供給されたBB−IQ信号を復調してデジタルデータを生成する。このデジタルデータは、無線パケット200におけるデータ部203およびCRC部204のデータを含む。復調部121から出力されたデジタルデータは、CRCチェック部122に供給される。CRCチェック部122は、供給されたデジタルデータのうち、データ部203に格納されるデータに対してCRCの計算を行い、計算結果とCRC部204に格納されるデータとを比較して、当該CRC部204を含む無線パケット200がエラーパケットであるか否かを判定する。判定結果は、パケットエラー情報として出力され、制御部20に供給される。
【0045】
復調部121から出力されたBB−IQ信号は、MAC部103にも供給される。MAC部103は、データ部203に付加されるヘッダ情報に基づき、通信プロトコルに関する処理を行う。
【0046】
また、復調部121から出力されたBB−IQ信号は、図示されないデータ処理部で復号処理など所定の処理を施されて、元のデータが復元される。復元されたデータは、制御部20に供給される。
【0047】
(第1の実施形態)
次に、第1の実施形態について説明する。図7を用いて、本第1の実施形態による通信処理について、概略的に説明する。本第1の実施形態では、画像送信装置1は、各画像投影装置21、22および23それぞれと所定の伝送レートで通信を行った際の、各画像投影装置21、22および23に対する各電波1501、1502および1503の電波強度を、各電波1501、1502および1503の電波状態としてそれぞれ取得する。
【0048】
画像送信装置1は、各画像投影装置21、22および23それぞれのうち、電波強度が最も弱いと判定された画像投影装置2(画像投影装置23とする)を目標受信装置として決定し、目標受信装置に対する電波強度が安定的に通信を行うことが可能な電波強度になるように、通信パラメータとしての送信電力を設定する。
【0049】
一例として、図7に示されるように、画像送信装置1と各画像投影装置21、22および23との間で、伝送レートが54Mbpsで通信を行った場合について考える。この場合、図7の例では、各画像投影装置21、22および23に対する電波強度がそれぞれ−50dBm、−60dBmおよび−85dBmであり、電波強度が画像投影装置23、画像投影装置22、画像投影装置21の順に弱いものとする。したがって、画像投影装置23が目標受信装置として決定される。
【0050】
図8は、IEEE802.11aに規定される、各伝送レートに対する最低受信感度を示す。図8によれば、伝送レート54Mbpsに対して、最低受信感度が−65dBmと規定されている。一方、図7の例では、目標受信装置として決定された画像投影装置23の電波強度が−85dBmであって、規定された最低受信感度を満たしていない。この場合、画像送信装置1は、送信電力を例えば20dBmだけ増加させて各画像投影装置21、22および23との通信を行い、これらと各画像投影装置21、22および23に対して画像データを配信する。
【0051】
このようにすることで、目標受信装置に対する画像データの送信を安定的に行うことができる。勿論、目標受信装置よりも電波強度が大きいと検出された他の画像投影装置21および22に対しても、安定的に画像データを送信できる。
【0052】
図9は、本第1の実施形態による通信処理を示す一例のフローチャートである。このフローチャートの各処理は、画像送信装置1において、制御部10の命令に従い実行される。先ず、ステップS100で、画像送信装置1は、所定の伝送レートおよび送信電力で、各画像投影装置21、22および23との通信を行う。ここでは、所定の伝送レートを54Mbps、所定の送信電力を0dBmとする。次のステップS101で、画像送信装置1は、各画像投影装置21、22および23との通信による電波強度を検出する。
【0053】
ステップS101の処理について、より具体的に説明する。ステップS100で画像送信装置1が通信を開始し、無線パケット200を変調した電波を各画像投影装置21、22および23に対して送信する。各画像投影装置21、22および23は、画像送信装置1から送信された電波を、それぞれアンテナ25により受信し、受信信号を無線通信部21に入力する。
【0054】
例えば画像投影装置21において、無線通信部21に入力された受信信号は、RF部100に供給される。そして、RF部100において、RSSI生成部110により、受信信号に基づき受信信号強度表示信号が生成される。この受信信号強度表示信号は、パワー算出部120に供給される。パワー算出部120は、この受信信号強度表示信号と、RF部100からVGA101を介して供給されたBB−IQ信号とに基づき受信した電波の電波強度を算出する。算出された電波強度を示す値は、制御部20に供給される。制御部20は、例えばこの電波強度を示す値をデータ部203に格納した無線パケット200を生成し、この無線パケット200を変調してアンテナ25から電波として送信する。
【0055】
画像送信装置1において、無線通信部11は、画像投影装置21から送信されたこの電波をアンテナ17で受信して受信信号とし、この受信信号に対して復調処理など所定の処理を施してデジタルデータを得る。検出部12は、得られたデジタルデータから、データ部203に格納される電波強度を示す値を抽出し、電波強度の検出を行う。以上の処理が、各画像投影装置21、22および23について行われる。
【0056】
説明は図9のフローチャートに戻り、次のステップS102で、画像送信装置1において、決定部13は、ステップS101で各画像投影装置21、22および23について検出部12で検出された電波強度に基づき、各画像投影装置21、22および23のうち、何れが最も電波強度が弱いかを判定する。そして、最も電波強度が弱いと判定した画像投影装置2を、目標受信装置として決定する。図7の例では、画像投影装置23が目標受信装置として決定される。
【0057】
次のステップS103で、画像送信装置1は、目標受信装置について上述のステップS101で検出部12により検出された電波強度に基づき、通信パラメータとしての送信電力を設定する。すなわち、図8を参照し、伝送レートが54Mbpsの場合には、最低受信感度が−65dBmと規定されているのに対し、目標受信装置の電波強度が−85dBmであるので、送信電力を20dBmだけ上げるように、通信パラメータを設定する。この場合、ステップS100における送信電力が0dBmであるので、送信電力が20dBmに設定される。
【0058】
そして、次のステップS104で、画像送信装置1は、ステップS103で設定された通信パラメータに従い、各画像投影装置21、22および23と通信を行い、ブロードキャストで画像データを配信する。
【0059】
例えば、画像送信装置1において、制御部10は、画像データを所定サイズに分割したデータを無線パケット200のデータ部203に格納すると共に、データ部203のヘッダ情報として、当該データのシーケンス情報を格納する。制御部10は、このデータ部203のデータを元にCRC符号を生成し、CRC部204に格納する。無線通信部11は、これらデータ部203およびCRC部204に対してSIG202およびプリアンブル201を付加して無線パケット200を作成する。そして、作成した無線パケット200を所定に変調し、アンテナ17より電波として送信する。
【0060】
なお、上述では、ステップS100において、画像送信装置1が0dBmの送信電力で通信を行い、後に、ステップS103でこの0dBmの送信電力を上げる方向に変更して、各画像投影装置21、22および23に画像データを送信する際の送信電力を設定していた。これはこの例に限定されず、最初に大きな送信電力を設定しておいて、ステップS103において、この送信電力を下げる方向に変更して、各画像投影装置21、22および23に対して画像データを送信する際の送信電力を設定してもよい。
【0061】
一例として、ステップS100における画像送信装置1の送信電力が20dBmであって、この送信電力にて伝送レートが54Mbpsの条件で通信を行った場合の各画像投影装置21、22および23の電波強度がそれぞれ−30dBm、−40dBmおよび−50dBmであったものとする。この場合、目標受信装置として画像投影装置23が決定される。この目標受信装置における電波強度は、−50dBmであり、伝送レートが54Mbpsの最低受信感度の規定が−65dBmとなっている(図8参照)ので、画像送信装置1は、あと15dBmだけ、送信電力を下げる方向に変更することができる。この場合、ステップS100における送信電力が20dBmであるので、送信電力が5dBmに設定される。
【0062】
このように、本第1の実施形態によれば、複数の受信装置のうち、最も電波強度の弱い受信装置を目標受信装置として決定し、この目標受信装置の電波強度が伝送レートに対して規定された電波強度になるように、送信装置の通信パラメータを設定している。そのため、送信装置から複数の受信装置に対してデータをブロードキャストで配信する場合に、複数の受信装置それぞれが安定的にデータを受信することが可能となる。
【0063】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。図10を用いて、本第2の実施形態による通信処理について、概略的に説明する。本第2の実施形態では、画像送信装置1は、各画像投影装置21、22および23それぞれと所定の伝送レートで通信を行った際の、各画像投影装置21、22および23に対する各電波1501、1502および1503のS/N比を、各電波1501、1502および1503の電波状態としてそれぞれ取得する。
【0064】
画像送信装置1は、各画像投影装置21、22および23それぞれのうち、S/N比が最も低いと判定された画像投影装置2(画像投影装置23とする)を目標受信装置として決定し、通信パラメータとしての伝送レートを、目標受信装置に対する電波1501のS/N比の状態で安定的に通信を行うことが可能な伝送レートに設定する。
【0065】
一例として、図10に示されるように、画像送信装置1と各画像投影装置21、22および23との間で、伝送レートが54Mbpsで通信を行った場合について考える。この場合、図7の例では、各画像投影装置21、22および23に対する電波1501、1502および1503のS/N比がそれぞれ35dB、30dBおよび25dBであり、S/N比が画像投影装置23、画像投影装置22、画像投影装置21の順に低いものとする。したがって、画像投影装置23が目標受信装置として決定される。
【0066】
図11は、IEEE802.11aに規定される、各伝送レートに対する最低S/N比を示す。図11によれば、伝送レート54Mbpsに対して、最低S/N比が26dBと規定されている。一方、図10の例では、目標受信装置として決定された画像投影装置23に対する電波1503のS/N比が25dBであって、規定された最低S/N比を満たしていない。目標受信装置におけるS/N比が25dBであるので、伝送レートが48Mbpsで、規定された最低S/N比を満たしていることになる。
【0067】
そのため、画像送信装置1は、伝送レートを例えば1段階下げて48Mbpsとして各画像投影装置21、22および23との通信を行い、これらと各画像投影装置21、22および23に対して画像データを配信する。
【0068】
このようにすることで、目標受信装置に対する画像データの送信を安定的に行うことができる。勿論、目標受信装置よりもS/N比が高いと検出された他の画像投影装置21および22に対しても、安定的に画像データを送信できる。
【0069】
図12は、本第2の実施形態による通信処理を示す一例のフローチャートである。このフローチャートの各処理は、画像送信装置1において、制御部10の命令に従い実行される。先ず、ステップS110で、画像送信装置1は、所定の伝送レートで各画像投影装置21、22および23との通信を行う。ここでは、所定の伝送レートを54Mbpsとする。次のステップS111で、画像送信装置1は、各画像投影装置21、22および23との通信による、各電波1501、1502および1503のS/N比を検出する。
【0070】
ステップS111の処理について、より具体的に説明する。電波のS/N比とは、電波強度からノイズ強度を減じたものである。したがって、ノイズ強度を検出できれば、S/N比の算出が可能となる。
【0071】
画像送信装置1側でアンテナ17からの電波の放射を停止させた状態で、画像投射装置2において第1の実施形態で説明した電波強度の検出を行う。これにより、画像投射装置2において外来ノイズの検出が実行され、ノイズ強度を検出することができる。このとき、空間に他の通信端末からの電波放射が無い状態で、アンテナ25端におけるノイズレベルの検出を行う必要がある。
【0072】
ここで、図3を用いて説明した、CSMA/CAの通信手順を利用してノイズ検出を行う例について説明する。上述したように、CSMA/CAの通信手順においては、SIFSの状態は、アンテナからの電波の放射が停止されている状態であって、このSIFS状態においては、他の端末から電波が放射されない無電波状態であると判断できる。そのため、このSIFSの期間内にノイズ強度を検出することが可能となる。
【0073】
一例として、画像送信装置1から各画像投影装置21、22および23に対する通信において、画像送信装置1は、DIFSの時間が経過を待機し、さらにバックオフの時間を待機し、無線パケット200を各画像投影装置21、22および23に対して送信する。例えば1の無線パケット200の送信が終了すると、SIFS状態に移行する。
【0074】
各画像投影装置21、22および23では、このSIFS状態において、第1の実施形態で説明したようにして、アンテナ25から無線通信部21に入力された受信信号がRF部100に供給される。RF部100において、RSSI部110が供給された受信信号に基づき受信信号強度表示信号を生成する。この受信信号強度表示信号と、RF部100から出力されるBB−IQ信号とに基づきパワー算出部120において、電波強度が算出される。この算出された電波強度が、ノイズ強度となる。このノイズ強度を、例えばデータ受信中に同様にして算出された電波強度から減じて、S/N比を求める。S/N比を示す値は、制御部20に供給される。制御部20は、例えばこのS/N比を示す値をデータ部203に格納した無線パケット200を生成し、この無線パケット200を変調してアンテナ25から電波として送信する。
【0075】
画像送信装置1において、無線通信部11は、画像投影装置21から送信されたこの電波をアンテナ17で受信して受信信号とし、この受信信号に対して復調処理など所定の処理を施してデジタルデータを得る。検出部12は、このデジタルデータから、データ部203に格納されるS/N比を示す値を抽出し、S/N比を検出する。以上の処理が、各画像投影装置21、22および23について行われる。
【0076】
説明は図12のフローチャートに戻り、次のステップS112で、画像送信装置1において、決定部13は、ステップS111で各画像投影装置21、22および23について検出部12で検出されたS/N比に基づき、各画像投影装置21、22および23のうち、何れが最もS/N比が小さいかを判定する。そして、最もS/N比が小さいと判定した画像投影装置2を、目標受信装置として決定する。図10の例では、画像投影装置23が目標受信装置として決定される。
【0077】
次のステップS113で、画像送信装置1は、目標受信装置について上述のステップS111で検出部12により検出されたS/N比に基づき、通信パラメータとしての伝送レートを設定する。すなわち、図11を参照し、伝送レートが54Mbpsの場合には、最低S/N比が26dBと規定されているのに対し、目標受信装置のS/N比が25dBであるので、伝送レートを1段階だけ下げて48Mbpsとするように、通信パラメータを設定する。
【0078】
そして、次のステップS114で、画像送信装置1は、ステップS113で設定された通信パラメータに従い、各画像投影装置21、22および23と通信を行い、ブロードキャストで画像データを配信する。
【0079】
このように、本第2の実施形態によれば、複数の受信装置のうち、最もS/N比の小さい受信装置を目標受信装置として決定し、伝送レートが、この目標受信装置のS/N比よりも小さい最低S/N比が規定された伝送レートになるように、送信装置の通信パラメータを設定している。そのため、送信装置から複数の受信装置に対してデータをブロードキャストで配信する場合に、複数の受信装置それぞれが安定的にデータを受信することが可能となる。
【0080】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。図13を用いて、本第3の実施形態による通信処理について、概略的に説明する。本第3の実施形態では、画像送信装置1は、各画像投影装置21、22および23それぞれと所定の伝送レートで通信を行い、テスト画像の画像データを送信する。そして、各画像投影装置21、22および23におけるパケットエラーレートを、各電波1501、1502および1503の電波状態としてそれぞれ取得する。
【0081】
画像送信装置1は、各画像投影装置21、22および23それぞれのうち、パケットエラーレートが最も高いと判定された画像投影装置2(画像投影装置21とする)を目標受信装置として決定し、目標受信装置におけるパケットエラーレートが例えばスループットを考慮して定められた閾値以下となるように、通信パラメータとしての伝送レートを設定する。
【0082】
一例として、図13に示されるように、画像送信装置1と各画像投影装置21、22および23との間で、伝送レートが54Mbpsで通信を行い、テスト画像データを送信した場合について考える。この場合、図13の例では、各画像投影装置21、22および23におけるパケットエラーレートがそれぞれ6%、9%およにび12%であり、パケットエラーレートが画像投影装置23、画像投影装置22、画像投影装置21の順に高いものとする。したがって、画像投影装置23が目標受信装置として決定される。
【0083】
一方、パケットエラーレートは、通信規格により許容される最大値が規定されている。この規定されるパケットエラーレートの最大値を10%とする。この規定されるパケットエラーレートの最大値を、最大許容パケットエラーレートと呼ぶ。一般的に、伝送レートをより低くすることで、パケットエラーレートを小さくすることが可能である。なお、最大許容パケットエラーレートは、10%に限られず、伝送レートとスループットとの関係などから適当な値を選択することができる。
【0084】
本第3の実施形態では、目標受信装置におけるパケットエラーレートが最大許容パケットエラーレートを超えている場合に、画像送信装置1側で、目標受信装置におけるパケットエラーレートが最大許容パケットエラーレート以下となるように、通信を行う際の伝送レートをより低い伝送レートに変更する。このようにすることで、目標受信装置に対する画像データの送信を安定的行うことができる。勿論、目標受信装置よりもパケットエラーレートが小さいと判定された他の画像投影装置21および22に対しても、安定的に画像データを送信できる。
【0085】
図14は、本第3の実施形態による通信処理を示す一例のフローチャートである。このフローチャートの各処理は、画像送信装置1において、制御部10の命令に従い実行される。先ず、ステップS120で、画像送信装置1は、所定の伝送レートで、各画像投影装置21、22および23との通信を行い、パケットエラーレートを計測するためのテスト画像データを送信する。テスト画像データは、例えばデータサイズが既知の画像データである。ここでは、所定の伝送レートを、最大伝送レートである54Mbpsとする。
【0086】
より具体的には、画像送信装置1において、制御部10は、予め用意されたテスト画像データを所定サイズに分割する。一例として、100kバイトのデータサイズを有するテスト画像データを、1000バイト毎に分割し、100個の分割画像データを生成する。このテスト画像データの分割数は、各画像投影装置21、22および23に対して予め設定されているものとする。
【0087】
制御部10は、各分割画像データを、それぞれ無線パケット200のデータ部203に格納すると共に、データ部203に格納された分割画像データのCRC符号を生成し、CRC部204に格納する。分割画像データ毎に生成された各データ部203およびCRC部204は、無線通信部11に供給され、それぞれプリアンブル201およびSIG202を付加されて、無線パケット200が生成される。テスト画像データを分割して100個の分割画像データを生成する場合、100個の無線パケット200が生成されることになる。各無線パケット200は、それぞれ所定に変調され、アンテナ17から電波として送信される。
【0088】
次のステップS121で、画像送信装置1において、検出部12は、各画像投影装置21、22および23がテスト画像データを受信した際のパケットエラーレートを検出する。
【0089】
ステップS121の処理について、より具体的に説明する。ステップS120で画像送信装置1から送信された、分割画像データが格納される無線パケット200が変調された電波が、各画像投影装置21、22および23に受信される。例えば画像投影装置21において、当該電波がアンテナ25により受信され、受信信号が無線通信部21に入力される。
【0090】
無線通信部21に入力された受信信号は、RF部100に供給される。RF部100は、この受信信号に対して所定の信号処理を施してBB−IQ信号を生成する。BB−IQ信号は、VGA101を介してBB部102に入力され、復調部121に供給される。復調部121は、供給されたBB−IQ信号を復調してデジタルデータとし、このデジタルデータからデータ部203およびCRC部204を抽出してCRCチェック部122に供給する。CRCチェック部122は、データ部203に格納されるデータからCRCの算出を行い、算出結果と、CRC部204に格納されるCRC符号とを比較してエラーの有無を検出する。検出結果は、制御部20に供給される。
【0091】
制御部20は、供給された検出結果において、エラー有りの数をカウントする。そして、制御部20は、テスト画像データが分割された分割画像データの全てについてエラー検出が終了したら、テスト画像データにおける分割画像データの総数と、エラー有りの分割画像データのカウント数とから、パケットエラーレートを算出する。制御部20は、算出されたパケットエラーレートを示す値をデータ部203に格納した無線パケット200を生成し、この無線パケット200を変調して、アンテナ25から電波として送信する。
【0092】
画像送信装置1において、無線通信部11は、画像投影装置21から送信されたこの電波をアンテナ17で受信して受信信号とし、この受信信号に対して復調処理など所定の処理を施してデジタルデータを得る。検出部12は、このデジタルデータから、データ部203に格納されるパケットエラーレートを示す値を抽出し、パケットエラーレートを検出する。以上の処理が、各画像投影装置21、22および23について行われる。
【0093】
説明は図14のフローチャートに戻り、次のステップS122で、画像送信装置1において、決定部13は、ステップS121で各画像投影装置21、22および23について検出部12により検出されたパケットエラーレートに基づき、各画像投影装置21、22および23のうち、何れが最もパケットエラーレートが高いかを判定する。そして、最もパケットエラーレートが高いと判定した画像投影装置2を、目標受信装置として決定する。図13の例では、画像投影装置23が目標受信装置として決定される。
【0094】
次のステップS123で、画像送信装置1は、目標受信装置のパケットエラーレートが閾値より高いか否かを判定する。この閾値は、上述した、通信規格で規定されている、最大許容パケットエラーレートであり、例えば10%であるものとする。若し、目標受信装置のパケットエラーレートが閾値より高いと判定した場合、処理をステップS124に移行させる。図13の例では、目標受信装置におけるパケットエラーレートが12%であり、閾値の10%より高いと判定され、処理がステップS124に移行される。
【0095】
ステップS124では、画像送信装置1は、伝送レートを下げて目標受信装置と通信を行ってテスト画像データを目標受信装置に対して送信し、目標受信装置におけるパケットエラーレートを検出する。画像送信装置1は、例えば伝送レートが段階的な値で設定される場合、直前の伝送レートに対して1段階下げた伝送レートを設定する。パケットエラーレートの検出方法については、ステップS121で説明した方法と同一なので、ここでの説明を省略する。
【0096】
ステップS124でパケットエラーレートが検出されると、処理がステップS123に戻され、ステップS124で検出されたパケットエラーレートに対して閾値判定がなされる。
【0097】
図13の例では、画像送信装置1が伝送レートを例えば54Mbpsから48Mbpsに下げた状態で通信を行った結果、目標受信装置におけるパケットエラーレートが8%に下がり、閾値以下となっている。そのため、後述するように、処理がステップS125に移行されることになる。
【0098】
一方、ステップS123で、目標受信装置のパケットエラーレートが閾値以下であると判定された場合、処理がステップS125に移行される。ステップS125で、画像送信装置1は、現在設定されている伝送レートが最適な伝送レートであるとして決定する。図13の例では、48Mbpsが最適な伝送レートとして決定される。そして、次のステップS126で、決定した伝送レートで各画像投影装置21、22および23と通信を行い、画像データを送信する。
【0099】
なお、上述では、目標受信装置のパケットエラーレートが規定された値以下になるように、伝送レートの設定行うように説明したが、これはこの例に限定されない。例えば、無線パケット200のフレーム長(データ長)を短くすることも考えられる。より具体的には、データ部203のサイズを、より小さいサイズとする。無線パケット200のフレーム長を短くすることで、含まれるデータも少なくなり、エラーが発生する確率が低くなる。
【0100】
このように、本第3の実施形態によれば、複数の受信装置のうち、最もパケットエラーレートの高い受信装置を目標受信装置として決定し、この目標受信装置のパケットエラーレートが規定された値以下になるように、伝送レートを設定している。そのため、送信装置から複数の受信装置に対してデータをブロードキャストで配信する場合に、複数の受信装置それぞれが安定的にデータを受信することが可能となる。
【0101】
なお、上述では、第1の実施形態、第2の実施形態および第3の実施形態がそれぞれ別個に実施されるように説明したが、これはこの例に限定されず、第1〜第3の実施形態を適宜組み合わせて実施することも可能である。この場合、例えば最も伝送レートが低い、または、送信電力が大きい結果を採用することが考えられる。
【符号の説明】
【0102】
1 画像送信装置
1,22,23,2n 画像投影装置
10,20 制御部
11,21 無線通信部
12 検出部
13 決定部
17,25 アンテナ
100 RF部
101 VGA
102 BB部
110 RSSI生成部
120 パワー算出部
121 復調部
122 CRCチェック部
200 無線パケット
203 データ部
204 CRC部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0103】
【特許文献1】特開2010−72352号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の受信装置と無線通信を行い、該複数の受信装置それぞれとの間の電波状態を検出する検出手段と、
前記検出手段で検出された前記電波状態のそれぞれに基づき、前記複数の受信装置のうち最も電波状態の悪い受信装置を目標受信装置として決定する決定手段と、
前記検出手段で検出された、前記決定手段で決定された前記目標受信装置との間の電波状態に基づき通信パラメータ値を設定する設定手段と、
前記設定手段で設定された前記通信パラメータ値に従い、前記複数の受信装置に対してデータを送信する送信手段と
を有する
ことを特徴とする送信装置。
【請求項2】
前記検出手段は、
前記複数の受信装置それぞれとの間の前記無線通信によるパケットエラーレートを取得し、該パケットエラーレートを前記電波状態として検出し、
前記設定手段は、
前記目標受信装置との間の前記無線通信による前記パケットエラーレートが閾値以下になるように前記通信パラメータ値を設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
前記検出手段は、
前記複数の受信装置それぞれとの間の前記無線通信におけるS/N比を取得し、該S/N比を前記電波状態として検出し、
前記設定手段は、
前記目標受信装置との間の前記無線通信における前記S/N比に対して予め定められた前記通信パラメータ値を設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の送信装置。
【請求項4】
前記検出手段は、
前記複数の受信装置それぞれとの間の、前記無線通信による電波強度を取得し、該電波強度を前記電波状態として検出し、
前記設定手段は、
前記目標受信装置との間の前記無線通信による前記電波強度を予め定められた電波強度にするように前記通信パラメータ値を設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の送信装置。
【請求項5】
前記設定手段は、
前記通信パラメータ値として、前記無線通信における送信電力と、伝送レートと、フレーム長とのうち少なくとも1を設定する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の送信装置。
【請求項6】
複数の受信装置と無線通信を行い、該複数の受信装置それぞれとの間の電波状態を検出する検出ステップと、
前記検出ステップで検出された前記電波状態のそれぞれに基づき、前記複数の受信装置のうち最も電波状態の悪い受信装置を目標受信装置として決定する決定ステップと、
前記検出ステップで検出された、前記決定ステップで決定された前記目標受信装置との間の電波状態に基づき通信パラメータ値を設定する設定ステップと、
前記設定ステップで設定された前記通信パラメータ値に従い、前記複数の受信装置に対してデータを送信する送信ステップと
をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2013−62617(P2013−62617A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198747(P2011−198747)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】