説明

送信装置及び送信方法

【課題】 単一の周波数チャネルを用いた単純な構造により、外乱等による無線通信の妨害を防ぎ、確実に受信装置と通信を行うことができる送信装置を提供する。
【解決手段】 受信装置に対してFSK変調した無線信号を送信する送信装置1であって、送信装置1は、受信装置に送信する送信内容とFSK変調での最大周波数偏移の値を決定し、一の送信内容と、一の最大周波数偏移の値と、一のFSK変調の中心周波数の値とを含む出力情報を出力する制御部10と、その送信内容、最大周波数偏移の値、及び中心周波数の値に基づき、FSK変調信号を生成する生成部20と、そのFSK変調信号を無線信号として送信する送信アンテナ30と、を備え、制御部10は、同一の送信内容を受信装置に送信する際に、同一の送信内容と、同一の中心周波数の値と、2以上の異なる最大周波数偏移の値をそれぞれ含む複数の出力情報を出力する送信装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信装置及び送信方法に関し、特に、受信装置に対してFSK変調した無線通信を行う送信装置及び送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のキーレスエントリシステムに使用される携帯機(FOB)は、使用者がその解錠/施錠等の押しボタンスイッチを押した場合、FOBから車両側ECUに対して、解錠/施錠等の指令信号を送信する。車両側ECUは、その指令信号が予め登録されたFOBからの信号であると認証できた場合、実際に車両ドアの解錠/施錠等を実行する。
【0003】
FOBと車両ECUとの通信は、無線通信で行われるため、外乱(ノイズ)等で妨害されることがある。外乱等による通信妨害を防ぐため、信号の出力強度を上げることが考えられるが、キーレスエントリシステムにおけるFOBが使用する無線通信の出力強度の上限は法律で定められており、その上限を超える強度で信号を送信することはできない。そこで、外乱等による妨害を防ぐために、FOBから車両ECUへ送信する送信信号の周波数を変更し、外乱等による影響の少ない周波数で通信を行うことが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1では、キーレスエントリシステムにおいて、通信が確実に行われるようにする車両制御システムが開示されている。この車両制御システムにおいては、スマート携帯機(FOB)は、キーレスエントリシステム用のキーレス用無線信号を、2つの周波数チャンネルで送信する。一方、キーレス用無線信号を受信する統合チューナでは、2つの周波数チャンネルのうち、通信状態の良好な周波数チャンネルを判定し、その判定した周波数チャンネルのキーレス用無線信号を中間周波数信号に変換するための周波数に制御する。この結果、通信状態の良好な周波数チャンネルのキーレス用無線信号を受信して通信が確実に行われるようにする。
【0005】
そして特許文献1では、複数の周波数チャネルを使用する必要があり、送信装置側(FOB)だけでなく、受信装置側(車両側ECU)においても、複数の周波数を送受信するための回路が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−101344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、キーレスエントリシステムにおいて、受信装置に対して無線通信を行う送信装置であって、単一の周波数チャネルを用い、外乱等による無線通信の妨害を防ぎ、確実に受信装置と通信を行うことができる送信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、受信装置に対してFSK変調した無線信号を送信する送信装置であって、その送信装置は、その受信装置に送信する送信内容とFSK変調での最大周波数偏移の値を決定し、一の前記送信内容と、一の最大周波数偏移の値と、一のFSK変調の中心周波数の値とを含む出力情報を出力する制御部と、その制御部が出力した、その送信内容、その最大周波数偏移の値、及びその中心周波数の値に基づき、FSK変調信号を生成する生成部と、その生成部で生成されたそのFSK変調信号を無線信号として送信する送信アンテナと、を備え、その制御部は、同一の送信内容をその受信装置に送信する際に、同一の送信内容と、同一の中心周波数の値と、2以上の異なる最大周波数偏移の値をそれぞれ含む複数の出力情報を異なるタイミングで出力することを特徴とする送信装置が提供される。
これによれば、外乱等による無線通信の妨害を防ぎ、確実に受信装置と通信を行う送信装置を提供できる。
【0009】
さらに、その制御部は、同一の送信内容をその受信装置に送信する際に、交互に異なる最大周波数偏移の値を含む出力情報を出力することを特徴としてもよい。
これによれば、単純な論理により、外乱等による無線通信の妨害を防ぎ、確実に受信装置と通信を行う送信装置を提供できる。
【0010】
さらに、増幅器を備え、その制御部は、電源の供給電圧を検出する電圧検出部と、その電圧検出部が検出した供給電圧の値に基づいて、そのFSK変調信号の信号強度を決定する信号強度決定部と、を備え、その制御部は、その信号強度決定部が決定した信号強度の値をさらに含む前記出力情報を出力し、その生成部は、その信号強度の値をその増幅器に設定し、その送信アンテナは、その増幅器に設定された信号強度で、そのFSK変調信号を無線信号として送信することを特徴としてもよい。
これによれば、電源電圧の高低に拘わらず、一定した強度の信号出力を出す送信装置を提供できる。
【0011】
別の観点によれば、上記課題を解決するために、受信装置に対してFSK変調した無線信号として、一の送信内容を、2以上送信する送信方法であって、所定のFSK変調の中心周波数の値と一の最大周波数偏移の値とに基づいて、その一の送信内容をFSK変調し、送信するステップと、その所定のFSK変調の中心周波数の値と他の最大周波数偏移の値とに基づいて、その一の送信内容をFSK変調し、送信するステップと、を有する送信方法が提供される。
これによれば、外乱等による無線通信の妨害を防ぎ、確実に受信装置と通信を行う送信方法を提供できる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、受信装置に対して無線通信を行う送信装置であって、単一の周波数チャネルを用い、外乱等による無線通信の妨害を防ぎ、確実に受信装置と通信を行うことができる送信装置及び送信方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る送信装置の第一実施例のブロック図。
【図2】FSK変調方式の通信における一般的な送信方法の説明図。
【図3】本発明に係る送信装置の第一実施例における送信方法(B)と従来の送信方法(A)の説明図。
【図4】本発明に係る送信装置の第一実施例における送信方法のフローチャート。
【図5】本発明に係る送信装置の第一実施例の変形例1における送信方法のフローチャート。
【図6】本発明に係る送信装置の第一実施例の変形例2における送信方法のフローチャート。
【図7】本発明に係る送信装置の第一実施例の物理的な構成図。
【図8】本発明に係る送信装置の第二実施例のブロック図。
【図9】本発明に係る送信装置の第二実施例における送信方法の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、図面を参照しながら、本発明に係る各実施例について説明する。
(第一実施例)
図1は、本発明に係る第一実施例における送信装置1のブロック図を示す。送信装置1は、車両のキーレスエントリシステムにおいて、車両側受信装置(図示せず)に対して無線通信を行う送信装置であり、典型的には、携帯機(FOB)に備えられる。なお、本発明に係る送信装置1は、車両以外のキーレスエントリシステムに使用できることは言うまでもない。
【0015】
送信装置1は、制御部10、生成部20、及び送信アンテナ30を備える。制御部10は、車両側受信装置に送信する送信内容とFSK変調での最大周波数偏移の値を決定する。ここで送信内容とは、FOBの認証のために必要な情報や、施錠/解錠等のFOBから車両側受信装置への指令信号を含む。FOBの認証のために必要な情報は、FOB毎に予め設定されており、指令信号は使用者によりFOB使用時に決定される。また、FSK変調での最大周波数偏移とは、周波数偏移変調(Frequency Shift Keying)における2値を示す周波数の差をいう。この最大周波数偏移については後述する。
【0016】
また、制御部10は、上記で決定された送信内容と最大周波数偏移の値、及びFSK変調の中心周波数の値を含む出力情報を出力する。FSK変調の中心周波数の値とは、FSK変調における2値を示す周波数の平均(相加平均又は相乗平均)の値を言う。この中心周波数は、キーレスエントリシステムにおいて予め設定される。
【0017】
制御部10は、一つの送信内容を車両側受信装置に送信する際に、同一の送信内容と、同一の中心周波数の値と、異なる最大周波数偏移の値をそれぞれ含む複数の出力情報を出力する。即ち、制御部10は、例えばある時点において「ドアの施錠」という送信内容を送信する際には、その送信内容を、同じ中心周波数の値を伴い、最大周波数偏移の値を変化させて、複数回出力する。どのように最大周波数偏移の値を変化させるかについては、後述する。
【0018】
生成部20は、制御部10が出力した送信内容、最大周波数偏移の値、及び中心周波数の値に基づき、FSK変調信号を生成する。即ち、車両側受信装置が送信内容をデジタル信号に変換し処理できるように、制御部10が出力した中心周波数から最大周波数偏移の値の1/2プラスした周波数とマイナスした周波数を生成する。
【0019】
送信アンテナ30は、生成部20で生成されたFSK変調信号を無線信号として送信する。FOBの送信アンテナとしては、一般にコイルアンテナが用いられるが、特に限定されない。
【0020】
どのように最大周波数偏移の値を変化させるかについて、図2及び図3を参照し説明する。図2(A)及び図3(A)、(B)に示される中心周波数を中心にして2つの山からなる波形のグラフは、横軸が周波数、縦軸が出力強度を示すFSK変調のグラフである。中心周波数より高く出力強度の高い周波数(中心周波数より右側の山の頂上にあたる周波数)と、中心周波数より低く出力強度の高い周波数(中心周波数より左側の山の頂上にあたる周波数)との差(図2(A)におけるΔf1及び、図3におけるΔf1又はΔf2)、即ち、ピーク出力強度における周波数の差が、最大周波数偏移である。
【0021】
図2(A)は、中心周波数がf0で最大周波数偏移がΔf1のFSK変調方式での無線信号を示した図である。なお、図2(A)の無線信号は、図2(B)で示す周波数faがピークの信号と周波数fbがピークの信号とを合成した波形で表されている。
【0022】
FSK変調方式の通信では、一つの情報を送信側から送信する際に、図2(B)に示すように周波数faがピークの信号と周波数fbがピークの信号とを別々のタイミングで送信する。そして受信側では、周波数faの信号を受信するとデジタル信号の「0」と判定し、周波数fbの信号を受信するとデジタル信号の「1」と判定する。つまり、送信側は周波数faの信号と周波数fbの信号とを複数組み合わせた信号を無線のアナログ信号として送信する。そして、受信側は周波数faと周波数fbの各信号を「0」または「1」に変換してデジタル情報として処理する。これによって、送信側から受信側へ情報が伝えられる。
【0023】
図3の(A)は従来の送信方法であり、(B)は本実施例における送信方法である。従来の送信方法においても、同一の送信内容を複数回出力する点は同じである。本図では2回の出力を示す。従来の送信方法においては、1回目の送信の最大周波数偏移と2回目の送信の最大周波数偏移はΔf1と等しい。また、1回目の送信の中心周波数と2回目の送信の中心周波数も等しい。この場合、ノイズの周波数領域がいずれかのピーク出力強度の周波数と重なった場合、1回目の送信と2回目の送信ではピーク出力強度での周波数は同じなので、1回目及び2回目の送信の両方ともノイズにより通信ができない。
【0024】
一方、本実施例の場合、1回目の送信の中心周波数と2回目の送信の中心周波数は等しいが、1回目の送信の最大周波数偏移Δf1と2回目の送信の最大周波数偏移Δf2は異なっている。そうすると、ノイズの周波数領域が1回目の送信のいずれかのピーク出力強度の周波数と重なった場合であっても、2回目の送信のピーク出力強度の周波数は1回目とは異なっているので、2回目の送信のピーク出力強度の周波数は、ノイズの周波数領域から外れる可能性が高い。従って、たとえ、ノイズの周波数領域がピーク出力強度の周波数と重なった場合でも、同じ送信内容を異なる最大周波数偏移で複数回送信するので、複数回の内のいずれかの送信において、ピーク出力強度の周波数がノイズの周波数領域から外れることにより、通信が可能となる。
【0025】
1回目の最大周波数偏移Δf1と2回目の最大周波数偏移Δf2は、本図ではΔf1よりΔf2の方が大きいが、逆であってもよい。Δf1及びΔf2は、あまり大きくすると帯域巾が大きくなるので、例えば受信側のフィルターにおいて熱雑音が大きくなってしまう。一方、あまり小さくすると、FSK方式としての通信が困難になる。従って、Δf1及びΔf2は適宜選択される。
【0026】
例えば、送信装置1において、中心周波数を315MHz、一つの最大周波数偏移を40KHz(片側に+20KHzと−20KHzずつ)、他の最大周波数偏移を80KHz(片側に+40KHzと−40KHzずつ)とする。この場合、制御部10は、1回目の送信では、指令信号等を含む送信内容に加え、中心周波数として315MHz、最大周波数偏移として40KHzを含む出力情報を出力する。生成部20は、この出力情報に基づいて、中心周波数を315MHz、出力強度のピークを314.98MHz(315MHz−20KHz)と315.02MHz(315MHz+20KHz)として、送信内容のFSK変調信号を生成する。そして、送信アンテナ30はそのFSK変調信号を送信する。
【0027】
その後、制御部10は、2回目の送信では、指令信号等を含む送信内容に加え、中心周波数として315MHz、最大周波数偏移として80KHzを含む出力情報を出力する。生成部20は、この出力情報に基づいて、中心周波数を315MHz、出力強度のピークを314.96MHz(315MHz−40KHz)と315.04MHz(315MHz+40KHz)として、送信内容のFSK変調信号を生成する。そして、送信アンテナ30はそのFSK変調信号を送信する。
【0028】
このように、最大周波数偏移をわずかに変更するだけで、中心周波数を同一にして送信する場合、送信された信号を受信しアナログ信号をデジタル信号に変換し、処理を行う受信装置側では新たな設備投入を必要とせず、従来の(既存の)受信装置がそのまま本発明に使用できる。
【0029】
図4は、本実施例における送信方法のフローチャートを示す。なお、ステップをSと略して記載する。本送信方法では、(A)で示すように、図3のように1回目の送信の最大周波数偏移Δf1(第1の最大周波数偏移の値)と2回目の送信の最大周波数偏移Δf2(第2の最大周波数偏移の値)とが異なり、このΔf1とΔf2が交互に所定回数繰り返される。
【0030】
S10にて、制御部10は、使用者のFOBの操作に基づき、送信内容を決定する。S20にて、制御部10は、同じ送信内容を送信する回数を示す送信回数を設定する。この送信回数は初期設定などにより予め制御部10に与えられる。
【0031】
S30にて、制御部10が出力する第1の最大周波数偏移の値Δf1を含む出力情報に基づき、生成部20がFSK変調信号を生成し、送信アンテナ30がそれを送信する。S40にて、制御部10が出力する第2の最大周波数偏移の値Δf2を含む出力情報に基づき、生成部20がFSK変調信号を生成し、送信アンテナ30がそれを送信する。この場合、送信内容と中心周波数は、1回目の送信の時と同じである。
【0032】
S50にて、制御部10は、S20にて設定した送信回数を繰り返したかチェックし、まだ設定した送信回数に達していない場合は、S30に戻る。達していた場合は、送信を終了する。
【0033】
図5は、本実施例の変形例1における送信方法のフローチャートを示す。本変形例では、(A)で示すように、3種類の最大周波数偏移Δf1、Δf2、Δf3を用い、この3種類の最大周波数偏移により順次送信を所定回数繰り返す。
【0034】
S110にて、制御部10は、使用者のFOBの操作に基づき、送信内容を決定する。S120にて、制御部10は、同じ送信内容を送信する回数を示す送信回数を設定する。この送信回数は初期設定などにより予め制御部10に与えられる。
【0035】
S130にて、制御部10が出力する第1の最大周波数偏移の値Δf1を含む出力情報に基づき、生成部20がFSK変調信号を生成し、送信アンテナ30がそれを送信する。S140にて、制御部10が出力する第2の最大周波数偏移の値Δf2を含む出力情報に基づき、生成部20がFSK変調信号を生成し、送信アンテナ30がそれを送信する。この場合、送信内容と中心周波数は、1回目の送信の時と同じである。
【0036】
S150にて、制御部10が出力する第3の最大周波数偏移の値Δf3を含む出力情報に基づき、生成部20がFSK変調信号を生成し、送信アンテナ30がそれを送信する。この場合、送信内容と中心周波数は、1回目及び2回目の送信の時と同じである。
【0037】
S160にて、制御部10は、S120にて設定した送信回数を繰り返したかチェックし、まだ設定した送信回数に達していない場合は、S130に戻る。達していた場合は、送信を終了する。
【0038】
図6は、本実施例の変形例2における送信方法のフローチャートを示す。本変形例では、(A)で示すように、2種類の最大周波数偏移Δf1とΔf2を用い、Δf1を連続して2回、Δf2を連続して2回送信し、かかる送信を所定回数繰り返す。
【0039】
S210にて、制御部10は、使用者のFOBの操作に基づき、送信内容を決定する。S220にて、制御部10は、同じ送信内容を送信する回数を示す送信回数、同じ最大周波数偏移を連続し何回繰り返すかを示す送信方法を設定する。この送信回数及び送信方法は初期設定などにより予め制御部10に与えられる。
【0040】
S230にて、制御部10が出力する第1の最大周波数偏移の値Δf1を含む出力情報に基づき、生成部20がFSK変調信号を生成し、送信アンテナ30がそれを送信する。S240にて、制御部10は、S220にて設定した送信方法で設定した回数を繰り返したかチェックし、まだ設定した送信回数に達していない場合は、S230に戻る。達していた場合は、S250に進む。
【0041】
S250にて、制御部10が出力する第2の最大周波数偏移の値Δf2を含む出力情報に基づき、生成部20がFSK変調信号を生成し、送信アンテナ30がそれを送信する。この場合、送信内容と中心周波数は、S230での送信の時と同じである。S260にて、制御部10は、S220にて設定した送信方法で設定した回数を繰り返したかチェックし、まだ設定した送信回数に達していない場合は、S250に戻る。達していた場合は、S270に進む。
【0042】
S270にて、制御部10は、S220にて設定した送信回数を繰り返したかチェックし、まだ設定した送信回数に達していない場合は、S230に戻る。達していた場合は、送信を終了する。
【0043】
図7は、本実施例の物理的な構成図を示す。送信装置1の制御部10と生成部20は、IC回路により構成される。制御部10のIC回路は、マイクロコンピュータや入出力インターフェースと共に、制御論理を焼き付けたROMや、制御論理(プログラム)をロードしたRAMでもよい。生成部20のIC回路は、典型的にはPLL回路(Phase Locked Loop)を用いる。このPLL回路は、送信周波数を一定に保ち、また、レジスタに値を設定することにより目標とする周波数で信号を出力することができる。
【0044】
増幅器40は、FSK変調信号である入力信号を大きな電力の出力信号に変換する。増幅器40は、この機能を果たせばよく、特に限定されない。送信アンテナ30は、生成部20で生成されたFSK変調信号を無線信号として送信する。一般にコイルアンテナが用いられるが、特に限定されない。
【0045】
(第二実施例)
図8は、本発明に係る第二実施例における送信装置1Aのブロック図を示す。送信装置1Aは、車両のキーレスエントリシステムにおいて、車両側受信装置(図示せず)に対して無線通信を行う送信装置であり、典型的には、携帯機(FOB)に備えられる。
【0046】
送信装置1Aは、制御部10A、生成部20A、送信アンテナ30、及び増幅器40Aを備える。制御部10Aは、車両側受信装置に送信する送信内容とFSK変調での最大周波数偏移の値を決定する。ここで送信内容とは、FOBの認証のために必要な情報や、施錠/解錠等のFOBから車両側受信装置への指令信号を含む。FOBの認証のために必要な情報は、FOB毎に予め設定されており、指令信号は使用者によりFOB使用時に決定される。
【0047】
また、制御部10Aは、電圧検出部11Aと信号強度決定部12Aを備える。電圧検出部11Aは、送信装置1Aへの電源の供給電圧を検出する。ここで、電源は、より具体的には、FOBに内蔵された電池である。信号強度決定部12Aは、電圧検出部11Aが検出した供給電圧の値に基づき、FSK変調信号の信号強度を決定する。どのようにFSK変調信号の信号強度を決定するかについては後述する。
【0048】
制御部10Aは、上記で決定された送信内容と最大周波数偏移の値、FSK変調の中心周波数の値、及びFSK変調信号の信号強度を含む出力情報を出力する。これにより、送信装置1Aは、同一の送信内容を車両側受信装置に送信する際に、同じ中心周波数、2以上の異なる最大周波数偏移から構成されるFSK変調信号により、同一の送信内容を複数回送信する。
【0049】
生成部20Aは、制御部10Aが出力した送信内容、最大周波数偏移の値、及び中心周波数の値、及びFSK変調信号の信号強度に基づき、FSK変調信号を生成する。その際、生成部20AはFSK変調信号の信号強度の値を増幅器40Aに設定し、送信アンテナ30Aは、増幅器40Aに設定された信号強度で、FSK変調信号を無線信号として送信する。最大周波数偏移の値の変化のさせ方は、第一実施例と同じやり方でよい。
【0050】
どのようにFSK変調信号の信号強度を変化させるかについて、図9を参照し説明する。本図に示される中心周波数を中心にして2つの山からなる波形のグラフは、横軸が周波数、縦軸が出力強度を示すFSK変調のグラフである。(A)は電源が新品などで電源電圧が高い場合、(B)は電源が古くなったなどで電源電圧が低い場合を表わす。
【0051】
(A)の場合、電源電圧の電圧をそのまま用いて無線信号を生成すると、その信号強度が適正値よりも高い値となる。この場合、送信装置1Aへの電源の供給電圧は、電圧検出部11Aの検出により、予め与えられる適正値より高いことが分かるので、信号強度決定部12Aは、信号強度を抑え、適正な信号強度に近づけるように信号強度を決定する。これにより、節電が可能となる。
【0052】
また、(B)の場合、電源電圧の電圧をそのまま用いて無線信号を生成すると、その信号強度が適正値よりも低い値となる。この場合、送信装置1Aへの電源の供給電圧は、電圧検出部11Aの検出により、予め与えられる適正値より低いことが分かるので、信号強度決定部12Aは、信号強度を高め、適正な信号強度に近づけるように信号強度を決定する。これにより、通信品質の安定化が図られる。
【0053】
なお、本発明は、例示した実施例に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 送信装置
2 受信装置
10 制御部
11 電圧検出部
12 信号強度決定部
20 生成部
30 送信アンテナ
40 増幅器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信装置に対してFSK変調した無線信号を送信する送信装置であって、
前記送信装置は、
前記受信装置に送信する送信内容とFSK変調での最大周波数偏移の値を決定し、一の前記送信内容と、一の前記最大周波数偏移の値と、一のFSK変調の中心周波数の値とを含む出力情報を出力する制御部と、
前記制御部が出力した、前記送信内容、前記最大周波数偏移の値、及び前記中心周波数の値に基づき、FSK変調信号を生成する生成部と、
前記生成部で生成された前記FSK変調信号を無線信号として送信する送信アンテナと、
を備え、
前記制御部は、同一の前記送信内容を前記受信装置に送信する際に、同一の前記送信内容と、同一の前記中心周波数の値と、2以上の異なる前記最大周波数偏移の値をそれぞれ含む複数の前記出力情報を異なるタイミングで出力する、
ことを特徴とする送信装置。
【請求項2】
前記制御部は、同一の前記送信内容を前記受信装置に送信する際に、交互に異なる前記
最大周波数偏移の値を含む前記出力情報を出力することを特徴とする請求項1に記載の送
信装置。
【請求項3】
さらに、増幅器を備え、
前記制御部は、
電源の供給電圧を検出する電圧検出部と、
前記電圧検出部が検出した供給電圧の値に基づいて、前記FSK変調信号の信号強度を決定する信号強度決定部と、
を備え、
前記制御部は、前記信号強度決定部が決定した信号強度の値をさらに含む前記出力情報を出力し、
前記生成部は、前記信号強度の値を前記増幅器に設定し、
前記送信アンテナは、前記増幅器に設定された信号強度で、前記FSK変調信号を無線信号として送信する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の送信装置。
【請求項4】
受信装置に対してFSK変調した無線信号として、一の送信内容を、2以上送信する送信方法であって、
所定のFSK変調の中心周波数の値と一の最大周波数偏移の値とに基づいて、前記一の送信内容をFSK変調し、送信するステップと、
前記所定のFSK変調の中心周波数の値と他の最大周波数偏移の値とに基づいて、前記一の送信内容をFSK変調し、送信するステップと、
を有する送信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−209924(P2012−209924A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198066(P2011−198066)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(510123839)オムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社 (110)
【Fターム(参考)】