説明

送液装置

【課題】双方向への送液や、送端部での液滴制御を容易に行うことができる送液装置を提供する。
【解決手段】液体の送液路に配設され且つ管壁が変形可能な管路1と、管路1の周面全周又は周面の一部を覆うように取付けられ且つ少なくとも管路1の管壁を収縮するように作動する圧電素子2と、圧電素子2の作動状態を制御する制御装置3とを備え、管路1に沿って圧電素子2を複数取付け、これを送液方向手前側から順次管路の管壁1を収縮するように作動させれば、管路1のどちらの方向にも送液することができるし、送端部から絞り出される液体の量を調整して液滴とすることもできる。また、圧電素子2への印加電圧を変更することにより管路1内の液体の送液速度を制御することにより、管路1内の液体の送液速度を容易に制御することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の送液装置に関し、例えばマイクロ流体や高粘度液体などの送液装置に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
マイクロ流体の送液は、従来よりμTAS(Micro Total Analysis System)などの分野で様々な方法が提案されており、小型ポンプを用いた送液、電気浸透流を用いた送液、遠心力を利用した送液、加熱気泡による送液方法などがある。例えば、下記特許文献1では、毛細管状の流路に磁性流体を導入し、流路外部から磁気を与えることにより磁性流体を流路方向に移動させ、これを駆動力として移送すべき対象流体を、流路内で移送するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−371954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載される送液方法を始めとして、何れの送液方法も、単に単一方向に連続的に送液するだけのものであり、例えば双方向への送液や、送端部での液滴制御などは容易に行うことができない。
本発明は、これらの諸問題に着目して開発されたものであり、双方向への送液や、送端部での液滴制御を容易に行うことができる送液装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記諸問題を解決するため、本発明の送液装置は、液体の送液路に配設され且つ管壁が変形可能な管路と、前記管路の周面全周又は周面の一部を覆うように取付けられ且つ少なくとも管路の管壁を収縮するように作動する圧電素子と、前記圧電素子の作動状態を制御する制御装置とを備えたことを特徴とするものである。
この送液装置によれば、例えば管路に沿って圧電素子を複数取付け、これを送液方向手前側から順次管路の管壁を収縮するように作動させれば、管路のどちらの方向にも送液することができるし、送端部から絞り出される液体の量を調整して液滴とすることもできる。
【0006】
また、前記圧電素子を、管路の長手に沿って複数取付け、前記制御装置は、管路内の液体の送液方向手前側から順次管路の管壁を収縮するように圧電素子を作動することを特徴とするものである。
この送液装置によれば、順次作動させる圧電素子の向きを変更することにより、双方向への送液ができ、送端部から所定量の液体が絞り出された状態を保持すれば液滴とすることができる。
また、前記制御装置は、前記圧電素子への印加電圧を変更することにより管路内の液体の送液速度を制御することを特徴とするものである。
この送液装置によれば、管路内の液体の送液速度を容易に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の送液装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図1の送液装置で送端部から液滴を送液する説明図である。
【図3】図2の液滴を用いてマイクロカプセルを製造する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明の送液装置の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態の送液装置の概略構成図である。図中の符号1は、液体の送液方向に配設された管路である。この管路1は、マイクロ流体のような液体を内部に収納して送液するものであるから、管径は極細いものでよい。同図の管路1は、単に図の左右方向に1本配設されているだけであるが、複数本並列に配設してもよいし、分岐したり集合したりしてもよい。また、既存の配管技術を利用して、開閉弁や逆止弁などを介装してもよい。
この管路1は、管壁が変形可能であり、特に本実施形態では弾性変形可能となっている。この管壁の変形可能、或いは弾性変形可能な部分は、少なくとも後述する圧電素子の取付部分だけでもよいが、本実施形態では、管路1の全長にわたって変形可能、或いは弾性変形可能なものとした。
【0009】
そして、管路1には、長手方向の3カ所に、所定の間隔をあけて、所定の幅を有するリング状の圧電素子2が取付けられている。この圧電素子2は、少なくとも電圧信号を印加すると、管路1の管壁を収縮するように作動するものであり、制御装置3からの駆動電圧信号が入力されると、その入力時のみ、管路1の管壁を収縮するように作動する。なお、圧電素子2は、必ずしも管路1の管壁全周を覆う必要はない。即ち、圧電素子2によって管路1の管壁が収縮すればよいので、管路の管壁の周囲の一部に取付けられていてもよい。また、本実施形態では、圧電素子2をリング状としたが、例えば管路1の管壁外周に膜状に成膜してもよい。圧電素子2の形態は、仕様に応じて、適宜設計してよい。また、圧電素子2の取付個数も3個に限らず、仕様に応じて、幾つ取付けてもよい。例えば、管路1の全長にわたって取付けても差し支えない。
【0010】
制御装置3からは、例えば管路1内の液体を矢印方向、即ち図の右から左に送液する場合、最初に図の最も右側の圧電素子2に駆動電圧信号を印加し、次いで図の中央の圧電素子2に駆動電圧信号を印加し、次いで図の最も左側の圧電素子2に駆動電圧信号を印加する。すると、管路1の管壁は、所謂蠕動運動のように、図の右側から収縮し、つまり絞られ、内部の液体が左から右に送液される。逆に、もし管路1内の液体を図の左から右に送液する場合には、最初に図の最も左側の圧電素子2に駆動電圧信号を印加し、次いで図の中央の圧電素子2に駆動電圧信号を印加し、次いで図の最も右側の圧電素子2に駆動電圧信号を印加すればよい。
【0011】
また、この送液装置では、管路1内の液体の送液速度、つまり流量を制御することも可能である。即ち、圧電素子2は、印加される駆動信号の電圧値が高いほど、変位が大きいので、駆動電圧信号の電圧値を高く設定すれば、管路1の管壁の収縮量も大きくなる。管路1の管壁の収縮量は、即ち管路1内の断面積の収縮量であり、断面積が小さくなるほど、流速が大きくなるので、送液速度、即ち流量を大きくする場合には、駆動電圧信号の電圧値を高くし、送液速度、即ち流量を小さくする場合には、駆動電圧信号の電圧値を低くすればよい。
【0012】
図2は、前記図1の管路1を上下方向に向け、上端部を開放して送端部としたものであり、図の右側は全ての圧電素子2に駆動電圧信号を印加していない状態を示し、図の左側は全ての圧電素子2に印加している状態を示している。本実施形態の送液装置では、圧電素子2に駆動電圧信号を印加すると、管路1が収縮されて内部の液体が送液されるのであるが、送端部でこれを行うと、送端部の管路1が絞られて液滴として送出することができる。また、圧電素子2への駆動電圧信号の印加と停止を繰り返せば、図2の左側の状態と右側の状態を繰り返すことも可能である。更に、図2は、液滴を管路1から排出せず、液体が送端部から盛り上がった状態で保持しているが、例えば送端部を下向きにして液滴が滴下するようにすることも可能である。
【0013】
図3は、図2の送液装置を用いてマイクロカプセルを製造するようにしたものである。同図では、図2の送液装置の上下を反転し、管路1の下端部に個別のチューブ10を接続し、このチューブ10の内部に、図の左から右に塩化カルシウム水溶液を送液する。このチューブ10内の塩化カルシウム水溶液の送液は、例えばポンプなどによって一定の速度、一定の流量で行えばよい。
【0014】
一方、管路1内にはアルギン酸ナトリウム溶液が導入されている。そして、前記図2と同様に、圧電素子2に駆動電圧信号を印加し、管路1の下端部の送端部からアルギン酸ナトリウム溶液を液滴状に絞り出すと、塩化カルシウム水溶液と接触している液滴の表面が硬化し、マイクロカプセルが形成される。マイクロカプセル化したアルギン酸ナトリウム溶液は、塩化カルシウム水溶液の送液力ではぎ取られて塩化カルシウム水溶液と共に流下する。この場合も、圧電素子2への駆動電圧信号の電圧値を変更することによって、アルギン酸ナトリウム溶液の液滴量を制御することができ、これによりマイクロカプセルの大きさを制御することができる。
【0015】
このように、本実施形態の送液装置では、液体の送液路に配設され且つ管壁が変形可能な管路1と、管路1の周面全周又は周面の一部を覆うように取付けられ且つ少なくとも管路1の管壁を収縮するように作動する圧電素子2と、圧電素子2の作動状態を制御する制御装置3とを備えたことにより、管路1に沿って圧電素子2を複数取付け、これを送液方向手前側から順次管路の管壁1を収縮するように作動させれば、管路1のどちらの方向にも送液することができるし、送端部から絞り出される液体の量を調整して液滴とすることもできる。
また、圧電素子2を、管路の長手に沿って複数取付け、管路1内の液体の送液方向手前側から順次管路1の管壁を収縮するように圧電素子2を作動することにより、双方向への送液ができ、送端部から所定量の液体が絞り出された状態を保持すれば液滴とすることができる。
また、圧電素子2への印加電圧を変更することにより管路1内の液体の送液速度を制御することにより、管路1内の液体の送液速度を容易に制御することが可能となる。
【0016】
なお、前記実施形態では、本発明の送液装置によりアルギン酸ナトリウム溶液を送液するものに具体化したが、この限りではなく、これ以外の他の液体(液体以外にも、機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルなどの流状体を含む)や液体以外の流体(流体として流して噴射できる固体など)の送液装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッサンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解の形態で含む液状体を送液する送液装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を送液する送液装置、精密ピペットとして用いられて試料となる液体を送液する送液装置であってもよい。更に、時計やカメラなどの精密機械にピンポイントで潤滑油を送液する送液装置、光通信素子などに用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するための紫外線硬化樹脂などの透明樹脂液を基板上に吐出する送液装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリなどのエッチング液を吐出する送液装置、ジェルを送液する送液装置、トナーなどの粉体を例とする固体を送液する送液装置であってもよい。そして、これらのうち何れか一種の送液装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0017】
1は管路、2は圧電素子、3は制御装置、10はチューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の送液路に配設され且つ管壁が変形可能な管路と、前記管路の周面全周又は周面の一部を覆うように取付けられ且つ少なくとも管路の管壁を収縮するように作動する圧電素子と、前記圧電素子の作動状態を制御する制御装置とを備えたことを特徴とする送液装置。
【請求項2】
前記圧電素子を、管路の長手に沿って複数取付け、前記制御装置は、管路内の液体の送液方向手前側から順次管路の管壁を収縮するように圧電素子を作動することを特徴とする請求項1に記載の送液装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記圧電素子への印加電圧を変更することにより管路内の液体の送液速度を制御することを特徴とする請求項2に記載の送液装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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