説明

送達手段

抗菌性金属、例えば銀の送達手段、例えば被覆材が、親水性ポリマーと組み合わされた金属イオンを含む。ポリマーはゲルを規定するためにブチリデンポリマーによって架橋され得る。実施例では、硝酸銀が金属状銀へ還元され、ゲルを規定するために架橋されたポリビニルアルコールを用いて保護され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は送達手段に関し、および特に、排他的でなく、送達し得る材料、例えば活性物質、またはその前駆体を、特に創傷床の位置に送達する送達手段に関する。好ましい実施態様は、創傷床への金属銀の送達のための傷手当デバイスの形をしている送達手段に関する。
【0002】
微生物の成長を制御するために、傷手当てデバイスに、銀を含有する活性な試剤を組み入れることが知られている。活性な銀含有試剤の種々の範囲が提案された。例えば、米国特許第3930000号は、アラントイン酸亜鉛銀のクリームの使用を開示する;日本特許第05179053号は、銀ナトリウム水素ジルコニウム・ホスフェートの使用を示す。このような錯塩を作ることは高価になり得て、および、その錯塩は扱うのが難しくなり得る。
【0003】
本発明は、既知の送達手段に関連した問題に取り組むことを目的とする。
【0004】
本発明は、送達し得る材料を、創傷床の中へ実質的な距離だけ送達する手段を提供することをもう一つの目的とする。
【0005】
本発明の第1の態様によれば、送達し得る材料を送達する送達手段が提供され、前記送達手段は送達し得る材料、および送達し得る材料を保護する保護手段を含む。
【0006】
好ましくは、前記送達し得る材料は金属を含む。金属は抗菌性の金属であり得る。金属は送達手段においていずれかの適切な形態であってよい。それは金属イオンとして存在してよい。好ましくは、それは、金属状金属(即ち、零価の酸化状態)の形で存在する。金属は正のゼータ電位を持ち得る。ゼータ電位は、40mV未満、好ましくは35mV未満、より好ましくは30mV未満であり得る。ゼータ電位はレーザー・ドップラー技術によって測定することができる。
【0007】
前記送達し得る材料は貴金属を含み得る。前記送達し得る材料は、銀、金および白金から選択されてよい。それは好ましくは銀または金である。最も好ましくは、それは銀である。
【0008】
送達し得る材料が金属を含むときは、金属の、適切には少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、特に、少なくとも95重量%は、その零価の酸化状態にある。最も好ましい態様において、金属のほぼ100重量%がその零価の酸化状態にある。このように、金属が前述のように銀を含むときは、送達手段の中にある実質的に全ての銀はその零価の酸化状態にある。
【0009】
送達し得る材料が金属を含むときは、金属は、好ましくは実質的に純粋な金属として存在する。このように、それは、好ましくは合金として存在しない。
【0010】
前記送達手段は複数の送達し得る材料(例えば複数の金属)を含んでよい。送達し得る材料である金属の合計量の、適切には、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、特に、少なくとも95重量%は、零価の酸化状態にある金属を含む。
【0011】
送達し得る金属の合計量の、適切には、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、特に、実質的に100重量%が、前述のように、適切にその零価の酸化状態にある銀を含む。
【0012】
前記送達手段において送達し得る材料の合計量の、適切には少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、特に少なくとも95重量%または約100重量%さえ、記述したように、金属、特に銀を、適切にはその零価の酸化状態で含む。
【0013】
前記送達手段は、好ましくは前記送達し得る材料のコロイド状粒子を含む。デバイスにおける前記送達し得る材料(例えば銀のような金属)の数平均粒子サイズは、例えばレーザー光散乱技術を用いて測定されて、1〜100nmの範囲、好ましくは1〜50nmの範囲にあり得る。誤解を避けるために言えば、用語、粒子サイズは、送達材料それ自身のサイズである。
【0014】
前記送達手段における前記送達し得る材料の粒子の、好ましくは5重量%未満、より好ましくは1重量%未満が、200nmを超える粒子サイズを有する。
【0015】
前記送達し得る材料が銀を含むときは、最も好ましいのであるが、前記銀は金属状銀粒子として、適切にはコロイド状粒子として存在してよい。銀の粒子は、好ましくは正のゼータ電位を持つ。このことは、正に帯電した粒子は負に帯電した細菌により容易に引きつけられ得るから、抗菌性用途における使用において有利であり得る。ゼータ電位は、少なくとも1mVであって、30mV以下であってよい。
【0016】
前記保護手段は、送達し得る材料が使用中に送達手段の外部に出た後、活性化形態にある時間を長引かせるようなものであり得る。送達手段は、銀のような金属を傷へ送達するために用いるときには(それは、本願明細書に記述した1つの好ましい用途である)、保護手段の金属との会合は、金属が、例えば、低活性になるか又は不活性化される前に傷へと拡散し得る距離を増加させ得る。該不活性化は、例えば体液のイオン成分、例えば塩化ナトリウムとの相互作用により、銀の場合には塩化銀沈殿の生成に帰着するであろう。このように、送達し得る材料が銀を含むときは、保護手段は、それが創傷床の中にある塩素イオンとの銀の酸化および/または反応による塩化銀への変換速度を減少するようなものあり得る。
【0017】
前記保護手段は、送達し得る材料の酸化を制限してもよい。
【0018】
前記保護手段は、好ましくは送達し得る材料の粒子の周りの保護層を含む。保護層はレーザー光散乱技術を用いて評価され得る。それは5〜100nmの範囲内の厚みを有し得る。厚みは、保護手段と送達し得る手段との間の相互作用の強さによって影響され得る。以下の図2は、好ましい保護手段と好ましい送達し得る材料との間の相互作用を示す。
【0019】
保護手段の存在は、保護手段を含むかまたは含まない送達手段のサンプルと、送達され得る材料と反応する試剤とを接触させることによって示され得る。保護手段を含むサンプルは、それが保護手段を含んでいない以外は同一のサンプルと比較すると、試剤との反応に遅れが生じ得る。これは、以下の実施例5に図示されている。
【0020】
前記保護手段は、ポリマー材料、好ましくは有機ポリマー材料を、好ましくは含み、より好ましくは該材料から本質的に成る。好ましいポリマー材料は、炭素、水素、窒素および酸素原子から選択された原子を含む。
【0021】
前記保護手段は0〜40℃の温度領域で水に最大の溶解度を有し得る。
【0022】
前記保護手段は好ましくは、要すれば誘導体化された、例えば架橋された親水性ポリマーを含む。親水性ポリマーは相対的に親水性の領域および相対的に疎水性の領域を含んでよい。使用時に例えば創傷床中へ送達され得る前記材料粒子への保護手段によって与えられる保護の範囲は、親水性ポリマーにおける親水性・疎水性の領域の相対的なレベルに関連づけられ得る、と云うことが理解される。この点で、送達し得る材料が金属状の金属粒子を含むときは、金属状の金属粒子に主に結合するのは、ポリマーの疎水性の領域であると信じられている。その結合力が大きいほど、より大きな保護が粒子に与えられる。相対的に大きな疎水性の領域があるポリマーは、相対的に小さな疎水性の領域のポリマーと比べて、金属状の金属粒子により強く結合し得る。また、疎水性の領域のより大きな%を備えたポリマーは、金属粒子により強く結合し得る。
【0023】
適当な親水性ポリマーの例は、ポリメタクリル酸ポリマー;ポリイミド;ポリビニルアルコールおよび前述のもののコポリマー、を含む。
【0024】
前記親水性ポリマーは、炭素原子を含む骨格を好ましくは含む。炭素原子は、C−C単結合によって好ましくは一緒に連結される。骨格は好ましくは他のタイプの原子を含んでいない。
【0025】
前記親水性ポリマーは、好ましくはカルボニル部位を含む。かかる部位はポリマーの骨格からのペンダント基に含まれてよい。前記カルボニル部位はカルボン酸またはカルボン酸誘導体の成分であってよい。好ましくは、カルボニル部位はエステル官能基の成分であり、例えば、−OCOR10基において、R10は、要すれば置換されたアルキルまたはアルケニル部位であり、特に、C1−4のアルキルまたはアルケニル部位である。R10は、好ましくは、置換されていないアルキル部位、特にメチル基である。このように、前記親水性ポリマーは好ましくは酢酸エステル部位を含む。
【0026】
前記親水性ポリマーは、好ましくはポリマー骨格からの適切にはペンダントな水酸基を含む。好ましくは、水酸基は、骨格、好ましくはその炭素原子に、直接結合される。好ましいヒドロキシ基はアルコール官能基を含む。
【0027】
前記親水性ポリマーは、記述されたような水酸基部位および記述されたようなカルボニル化合物部位の両方を好ましくは含んでおり、適切には、カルボニル部位および水酸基部位はポリマー骨格からペンダントな別個の官能基の中に存在する。
【0028】
前記親水性ポリマーの、適切には少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも75モル%、より好ましくは少なくとも95モル%、特に約100モル%は、カルボニル部位(好ましくはカルボン酸またはカルボン酸誘導体官能基の一部として)または水酸基(特にアルコール)部位を含む官能基を含む繰り返し単位から構成される。適切には、前記親水性ポリマー中のカルボニル含有官能基(例えば、カルボン酸またはカルボン酸誘導体官能基)および水酸基(特にアルコール)官能基のモル%の合計は、少なくとも70モル%、好ましくは少なくとも90モル%、より好ましくは少なくとも95モル%、特に約100モル%である。このように、好ましい実施態様において、前述の官能基を含む親水性ポリマー材料は他のタイプの官能基を含むコポリマーではない。
【0029】
前記親水性ポリマーは、好ましくはポリビニルポリマーを含む。適切には、前記ポリマーにおけるビニル部位のモル%の合計は、少なくとも70モル%、好ましくは少なくとも90モル%、より好ましくは少なくとも95モル%、特に約100モル%である。
【0030】
最も好ましい保護手段は、要すれば誘導体化された、例えば、架橋されたポリビニルアルコールを含む。好ましいポリビニルアルコールは、相対的に親水性の水酸基官能基および相対的に疎水性の酢酸エステル官能基を含む。要すれば誘導体化されたポリビニルアルコールが、銀のような金属を安定化するために用いられるときは、酢酸エステル基は主に、記述されたような粒子を安定化するために金属粒子と会合し、および/または金属粒子に付着している。相対的に加水分解度合いの低い(つまり、相対的に低濃度の水酸基および高濃度の酢酸エステル基を持っている)ポリビニルアルコールは、より高度に加水分解されたポリビニルアルコールと比較して、より高い程度まで粒子を安定させ得る。このように、要すれば誘導体化された相対的に加水分解度合いの低いポリビニルアルコールによって安定化された銀粒子は、相対的に高い加水分解率のポリビニルアルコールによって安定化されたものと比較して、創傷床中へさらに拡散することができ得る。このことは、実施例において以下に説明される。
【0031】
前記保護手段は、適切には、ビニルアルコールと酢酸ビニル官能基から本質的に成る、要すれば−誘導体化されたポリビニルアルコールを好ましくは含む。適切には、ポリビニルアルコールは100モル%未満の程度まで、好ましくは95モル%未満で加水分解される。それは少なくとも10モル%、好ましくは少なくとも25モル%、より好ましくは少なくとも50モル%、特に少なくとも60モル%の程度まで加水分解されてよい。適切には、前記ポリビニルアルコールにおいて、酢酸ビニル部位に対するビニルアルコール部位のモル%の比率は、少なくとも0.5、好ましくは少なくとも1、より好ましくは少なくとも3である。比率は10未満、好ましくは8未満であり得る。
【0032】
好ましいポリビニルアルコールは、少なくとも2mPa.sの、好ましくは少なくとも4mPa.sの粘度(20℃、4%の水溶液上で測定された)を有する。粘度は100mPa.s未満、好ましくは75mPa.s未満であり得る。
【0033】
前記保護手段の前記親水性ポリマーは、架橋手段によって好ましくは架橋される。
【0034】
好ましい架橋手段は、化学的架橋材料を含む。
かかる材料は、好ましくは前記親水性ポリマーの官能基と反応することができる少なくとも2つの官能基がある多官能性化合物である。好ましくは、前記架橋材料は、親水性ポリマーのポリマー骨格に沿ってまたはポリマー構造中に存在するグループと反応することができる、1つ以上のカルボニル基、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、ハロゲンまたはアミノ基を含む。好ましい架橋材料は少なくとも2つのアルデヒド基を含む。このように、好ましい実施態様において、前記保護手段は、少なくとも2つのアルデヒド基を有する材料を用いて、ポリビニルアルコールを架橋することによって生成された材料を含む。このように、前記保護手段は、式Iの部位を含んでよい。
【0035】
【化1】

【0036】
[式中、Lは前記架橋材料の残基である。]
【0037】
前記架橋材料は好ましくは第2のポリマー材料を含む。
前記第2のポリマー材料は、好ましくは式
【0038】
【化2】


【0039】
[式中、AとBは同一または異なり、要すれば置換された芳香環および複素環グループから選ばれ、および少なくとも1つは比較的極性な原子またはグループを含み、ならびにRおよびRは独立して、比較的無極性の原子またはグループを含む。]
の繰り返し単位を含む。
【0040】
Aおよび/またはBは多環性の芳香環か複素環グループであり得る。好ましくは、AおよびBは、要すれば置換された5員環またはより好ましくは6員環の芳香環および複素環グループから独立して選択される。前記複素環グループの好ましいヘテロ原子は窒素、酸素および硫黄原子を含んでおり、その内特に酸素および窒素が好ましい。好ましい複素環グループは、ただ1つのヘテロ原子を含む。好ましくは、或るまたは前記ヘテロ原子は、複素環グループのポリマー骨格への結合位置から最も遠くに位置する。例えば、複素環グループが6員環から成る場合、ヘテロ原子は、ポリマー骨格への環の結合位置に対して相対的に4位に好ましくは置かれる。
【0041】
好ましくは、AとBとは異なったグループを表わす。好ましくは、AまたはBのうちの1つは、要すれば置換された芳香環グループを、および他のものは、要すれば置換された複素環グループを表わす。好ましくは、Aは要すれば置換された芳香環グループを表わし、およびBは要すれば置換された複素環グループ、特にピリジニル基のような窒素ヘテロ原子を含む複素環を表す。
【0042】
他に明示されない限り、本願明細書に記述された、要すれば置換されたグループ、例えばグループAおよびBは、ハロゲン原子、および要すれば置換されたアルキル基、アシル基、アセタール基、ヘミアセタール基、アセタールアルキルオキシ基、ヘミアセタールアルキルオキシ基、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基、水酸基、アミノ基、アルキルアミノ基、スルフィニル基、アルキルスルフィニル基、スルホニル基、アルキルスルホニル基、スルホネート基、アミド基、アルキルアミド基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ハロカルボニル基およびハロアルキル基によって置換されてよい。要すれば好ましくは3までの、より好ましくは1までの置換基が、要すれば置換された基の上にあってもよい。
【0043】
他に明示しない限り、アルキル基は10までの、好ましくは6までの、より好ましくは4までの炭素原子を有してよく、特にメチル基およびエチル基が好ましい。
【0044】
好ましくは、AおよびBは各々極性な原子またはグループを表わす。
―すなわち、グループAおよびBの中に、好ましくは幾らかの電荷分離がある。および/または、グループAおよびBは炭素および水素原子だけを含むのではない。
【0045】
好ましくは、AまたはBの少なくとも1つは、例えば前記親水性ポリマーとの反応で縮合反応を受けることができる官能基を含む。好ましくは、Aは、縮合反応を受けることができる前記官能基を含む。
【0046】
好ましくは、グループAおよびBのうちの1つは、カルボニル基またはアセタール基を、特に好ましくはホルミル基を含む、必要に応じての置換基を含む。グループAおよびBの他の1つは、アルキル基、要すれば置換された、好ましくは未置換の、C1〜4のアルキル基、例えばメチル基が、特に好ましい必要に応じての置換基を含んでよい。
【0047】
好ましくは、Aは、例えば芳香族基、特に、ホルミル基または一般式
【0048】
【化3】

【0049】
[式中、xは1から6まで整数で、Rはそれぞれ独立してアルキル基またはフェニル基、もしくは共にアルケニル基を表す。];
によって置換された(Aが要すれば置換されたフェニル基を表すときは、好ましくはポリマー骨格の相対的に4位の位置で置換された)特にフェニル基を表す。
【0050】
好ましくは、Bは、ヘテロ原子上で水素原子、アルキルまたはアラルキル基で置換された、要すれば置換された複素環グループ、特に窒素含む複素環グループを表わす。
より好ましくは、Bは、一般式
【0051】
【化4】

【0052】
[式中、Rは水素原子もしくはアルキル基またはアラルキル基を表わし、Rは水素原子またはアルキル基を表わし、および、Xは強酸性のイオンを表わす。];
のグループを表わす。それは好ましくは、AgをAgに還元することができる。それは、有機の、例えば、アルキル硫酸エステル、例えば、硫酸メチルであってよい。
【0053】
好ましくは、RおよびRは、水素原子または要すれば置換された、好ましくは無置換のアルキル基から独立して選択される。好ましくは、RおよびRは同じ原子またはグループを表わす。好ましくは、RおよびRは水素原子を表わす。
【0054】
推奨される第2のポリマー材料が、国際特許公開第98/12239号に記載されていた方法によって次のモノマーのうちのいずれからも調製されてよく、前述の文献の内容は引用することによって本願明細書に組込まれる:
α−(p−フォルミルスチリル)−ピリジニウム、γ−(p−フォルミルスチリル)−ピリジニウム、α−(m−フォルミルスチリル)−ピリジニウム、N−メチル−α−(p−フォルミルスチリル)―ピリジニウム、N−メチル−β−(p−フォルミルスチリル)−ピリジニウム、N−メチル−α−(m−フォルミルスチリル)−ピリジニウム、N−メチル−α−(o−フォルミルスチリル)−ピリジニウム、N−エチル−α−(p−フォルミルスチリル)―ピリジニウム、N−(2−ヒドロキシエチル)−α−(p−フォルミルスチリル)−ピリジニウム、N−(2−ヒドロキシエチル)−γ−(p−フォルミルスチリル)−ピリジニウム、N−アリル−α−(p−フォルミルスチリル)−ピリジニウム、N−メチル−γ−(p−フォルミルスチリル)−ピリジニウム、N−メチル−γ−(m−フォルミルスチリル)−ピリジニウム、N−ベンジル−α−(p−フォルミルスチリル)−ピリジニウム、N−ベンジチル−γ−(p−フォルミルスチリル)−ピリジニウム、およびN−カルバモイルメチル−γ−(p−フォルミルスチリル)−ピリジニウム。これらの4級塩類は、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、過塩素酸塩、4フッ化ホウ酸塩、メトサルフェート、燐酸塩、硫酸塩、メタン−スルホン酸塩およびp−トルエン−スルホン酸塩の形で用いられてよい。
【0055】
また、モノマー化合物は、アセタール基を有するスチリルピリジニウム塩類で、以下のものを含んでよい:
【0056】
【化5】

【0057】
【化6】

【0058】
このように、前記第2のポリマー材料は、以下の一般式
【0059】
【化7】


【0060】
[式中、A、B、RおよびRは上述のとおりである。];
の化合物から、水性溶媒中で(適切には、その結果前記モノマーの分子が凝集するように)、前記化合物中のC=Cグループが互いに反応して前記第2のポリマー材料を生成するように、好ましくは調製されまたは調製可能である。
【0061】
前記第2のポリマー材料は、式
【0062】
【化8】


【0063】
[式中、A、B、RおよびRは上述のとおりであり、およびnは整数である。];
であってよい。整数nは適切には50以下、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、特に5以下である。整数nは、適切に少なくとも1、好ましくは2、より好ましくは少なくとも3である。
【0064】
前記送達し得る材料の重量%に対する前記保護手段の重量%の比率は、少なくとも10、好ましくは少なくとも15、より好ましくは少なくとも20であり得る。その比率は100未満であり得る。
【0065】
前記保護手段および前記送達し得る材料は、好ましくは互いによく混じり合っている。共に、それらは好ましくは実質的に均質の混合物を規定している。
【0066】
前記送達手段は好ましくは水を含む。
【0067】
前記送達し得る材料は送達手段の内部に拡散するように、好ましくは配列される。前記送達し得る材料は使用中、例えば創傷床中へ、送達手段から拡散するように配列され得る。
【0068】
前記送達手段は好ましくは水和された材料を含む。前記送達手段は適切には、少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも25重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、特に少なくとも80重量%の水を含む。水の量は95重量%未満であり得る。水のレベルは、どのような適切な手段、例えば熱重量分析法によって決定されてよい。
【0069】
前記送達手段は担体を含み得る。前記送達し得る材料は、好ましくは前記担体内に分散される。好ましくは、前記担体および前記送達し得る材料は、前記担体内に分散した送達し得る材料を含む実質的に均質の集合体(mass)を規定する。
【0070】
好ましくは、前記担体はポリマー材料を含む。かかるポリマー材料は天然のものまたは合成のものであってよい。好ましくは、それはヒドロゲルを含む。前記ヒドロゲルは、架橋された、水に非溶解性の、水を含む材料として規定され得る。
【0071】
前記担体は、架橋手段によって架橋されるポリマー材料を好ましくは含む。前記担体は、第1のポリマー材料の選択、およびそれを前記架橋手段で処理することによって調製され得る。前記第1のポリマー材料は、水酸基、カルボン酸基、カルボン酸誘導体(例えばエステル)基およびアミノ基から選択された官能基を含み得る。前記第1のポリマー材料は、好ましくは本質的に炭素原子を含む骨格を好ましくは含む。骨格は好ましくは飽和している。骨格からのペンダント基は、好ましくは1つ以上の前記官能基である。前記第1のポリマー材料は少なくとも10,000の分子量を有してよい。前記第1のポリマー材料は好ましくはポリビニルポリマーである。第1のポリマー材料は、要すれば置換された、好ましくは非置換の、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアルキルエン・グリコール(例えばポリプロピレングリコール)、およびコラーゲン(またそのいずれかの成分)を含む。ポリビニルアルコールは特に好ましい第1のポリマー材料である。
【0072】
前記ポリビニルアルコールは100モル%未満、好ましくは95モル%未満の程度まで加水分解されてよい。それは、少なくとも10モル%、好ましくは少なくとも25モル%、より好ましくは少なくとも50モル%、特に少なくとも60モル%の程度まで加水分解されてよい。適切には、前記ポリビニルアルコールにおいて、酢酸ビニル部位に対するビニルアルコール部位のモル%の比率は、少なくとも0.5、好ましくは少なくとも1、より好ましくは少なくとも3である。その比率は10未満、好ましくは8未満であり得る。
【0073】
前記親水性ポリマーおよび前記第1のポリマー材料は、好ましくは同じタイプのポリマー材料を含む。両方とも、好ましくはポリビニルアルコールを含む。好ましくは、両方とも、同一タイプのポリビニルアルコールを含む。
【0074】
特に好ましい実施態様において、前記担体は架橋されたポリビニルアルコールを含む。前記担体のポリマー材料を架橋する前記架橋手段は、前記保護手段の前記親水性ポリマーを架橋する架橋手段のいかなる特徴も独立に有してよい。好ましくは、前記保護手段および前記担体の前記架橋手段は、実質的に同一である。
【0075】
前記送達手段は、前記送達し得る材料を20重量%未満で含み得る。適切には、前記送達手段は、前記送達し得る材料を10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは3.5重量%未満、特に2重量%未満で含む。前記送達手段は、前記送達し得る材料を少なくとも0.01ppm、好ましくは少なくとも0.1ppm、より好ましくは少なくともlppmで含んでよい。
【0076】
前記送達手段は、有機ポリマー材料(例えば、前記親水性ポリマーおよび/または前記第1および/または第2のポリマー材料および/またはその反応生成物)を30重量%未満で、好ましくは20重量%未満で、より好ましくは15重量%未満で、特に12重量%未満で、適切に含む。送達手段は有機ポリマー材料を少なくとも5重量%で、好ましくは少なくとも8重量%で含んでよい。前記有機ポリマー材料の少なくともいくらか、適切には少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%が、ポリビニルアルコールおよび架橋されたポリビニルアルコールを含むグループから選択される。前記送達手段において、前記送達し得る材料の重量%に対する有機ポリマー材料全量の重量%の比率は、適切には少なくとも5、好ましくは少なくとも10である。その比率は、500未満、好ましくは250未満、より好ましくは100未満であり得る。
【0077】
適切には、前記送達手段は、
−前記送達し得る材料を0.000001重量%〜5重量%;
−有機ポリマー材料を5重量%〜30重量%;および
−水を65重量%〜94.999999重量%、
含む。
【0078】
適切には、前記送達手段は、
−銀(いかなる形態でもよいが、好ましくは金属状銀を大部分の量で含み、および最も好ましくは金属状銀から本質的に成る)を0.000001重量%〜5重量%;
−ポリビニルアルコールおよび/または架橋されたポリビニルアルコールを5重量%〜30重量%;
−水を65重量%から94.999999重量%、
含む。
【0079】
好ましくは、少なくとも前記送達手段のポリビニルアルコールの内のいくらかは架橋されている。
【0080】
第1の態様の送達手段は、流体の形態または固体の形態、例えばフィルムまたはシートの形態にあり得る。
【0081】
発明の第2の態様によれば、送達し得る材料の送達のために送達手段を調製する方法が提供され、該方法は、
送達し得る材料または送達し得る材料の前駆体を選択する工程;および
送達し得る材料の保護のために保護手段に前記送達し得る材料または前記前駆体を関連させる工程、を含む。
【0082】
その方法は、保護手段、例えば前記第1の態様に記述されたような、要すれば架橋された親水性ポリマー、を選択すること、および前記選択された材料を前記送達し得る材料または前駆体と接触させることを、好ましくは含む。その方法は選択された保護手段と前記送達し得る材料または前駆体とを緊密に混合することを、好ましくは含む。混合は、液体がある状態で、好ましくは水を含む液体の中で、適切に実施される。適切に混合すると、保護手段は、前記送達し得る材料または前記送達し得る材料の前駆体と会合したようになり、その結果として材料を安定化する。前記保護手段は、本願明細書に準用して記載されていたいずれかの記述の通りであり得る。それは前述のように、要すれば架橋されたポリビニルアルコールを好ましくは含む。前記保護手段が架橋されるときは、その方法は前述のように架橋手段を選択すること、および選択された親水性ポリマーおよび選択された架橋手段を緊密に混合することを含み得る。前記送達し得る材料または前記送達し得る材料の前駆体は、本願明細書に記載のある記述通りであり得る。それは、銀または金の一形態を含み得る。それが金属イオンを含む場合、その方法は金属イオンが還元される工程を含み得て、この場合、金属イオンが前記送達し得る材料の前駆体と見なされ得る。
【0083】
第2の態様の方法は、前記送達し得る材料または前記送達し得る材料の前駆体が分散し得る担体を形成することを含み得る。この場合、その方法は溶媒(特に水)がある状態で1つ以上の前駆体材料が前記担体を規定することを含み得る。
【0084】
前記担体を規定するために用いられる第1の前駆体材料は、第1の態様にしたがって記載された前記第1のポリマー材料であってよく、および前記第1の態様にしたがって記述された前記第1のポリマー材料のいずれかの特徴が、前記第2の態様に準じて適用されてよい。ポリビニルアルコールは上述されるように、特に好ましい第1のポリマー材料である。
【0085】
前記担体を規定するのに用いられる第2の前駆体材料は、前記キャリア材料が規定される工程で第1の前駆体材料と協働するように、好ましくは反応するように、好ましくは配列される。前記第2の前駆体材料は、好ましくは、第1の前駆体材料を架橋するために配列された架橋手段である。好ましい架橋手段は、第1の態様に記述されるように、化学的架橋手段である。前記第2の前駆体材料は第1の態様によって記述されるような第2のポリマー材料を含み得て、および前記第1の態様によって記述された前記第2のポリマー材料のいかなる特徴も、前記第2の態様に準用して適用され得る。
【0086】
前記第2の態様の方法は溶媒、特に水がある状態で第1および第2のポリマー材料を接触することを含み得る。触媒が存在してよい。
【0087】
好ましくは、前記第1および第2のポリマー材料からの前記担体の形成は縮合反応を含む。好ましくは、前記担体の生成は酸触媒反応を含む。好ましくは、前記第1および第2ポリマー材料は、例えば、前記担体を形成する工程で縮合反応を受けるために反応するように配列された官能基を含む。好ましくは、前記第1および第2ポリマー材料は、前記担体の形成の中で例えば、酸触媒反応を受けるように配列された官能基を含む。
【0088】
第2の態様の前記送達し得る材料は、前記第1の態様によって記述された通りであり得る。1つの実施態様において、金属の微粒子が選択され、選択された保護手段と混合され得る。その後、要すれば、前記担持手段は規定され得る。および、この場合、金属はその選択から前記担体におけるその分散に至るまで、実質的に化学的に不変であり得る。もう一つの実施態様において、前記送達し得る材料の前駆体が選択され、およびそれが、担体の中で分散した送達し得る材料と選択された前記送達し得る材料の前駆体とが異なるように、その形態(例えば化学的形態)を変更する方法で処理されてよい。例えば、前記送達し得る材料の前駆体は第1の酸化状態における金属塩および/または金属を含んでよい一方、担体の中で分散した送達し得る材料は、金属状の金属および/または異なった酸化状態の金属を含んでもよい。
【0089】
前記送達し得る材料の前駆体が選択されるときは、その方法は、送達手段の中で送達し得る材料を規定するために、前記送達し得る材料の前駆体の形態(例えば化学的形態)を変化させるための手段を利用し得る。変化のための前記手段は、化学的手段、例えば、前記送達し得る材料の前記前駆体の酸化状態の変化をもたらす手段を含んでよい。そのような手段は還元手段を含んでよい。
【0090】
第2の態様の方法は、還元手段がある状態で行なわれてよい。前記還元手段は、前記保護手段を、およびもし提供される場合は前記担体を規定する、前記方法の中で用いられる手段とは区別され得る。例えば、該方法は溶媒の存在する状態および前記第1または第2前駆体材料のどちらかとは異なる還元手段が存在する状態で、前述の第1および第2前駆体材料を接触することを含み得る。好ましくは、しかしながら、前記還元手段は、前記第1または第2前駆体材料、特に前記第2の前駆体材料によって提供される。このように、好ましくは前記第2の前駆体材料(特に、前述の前記第2のポリマー材料)には複数の役割がある−担体を規定することとなる前記第1の前駆体材料(例えば前記第1のポリマー材料)との協力、前記送達し得る材料の前駆体の還元、および前記保護手段の架橋手段である。
【0091】
好ましい実施態様において、第2の態様によれば、前記送達し得る材料の前駆体は銀塩(特に硝酸銀)であり、および前記塩は工程中で還元され、前記保護手段によって保護され、担体の中で分散される。還元は、好ましくは前記第2の前駆体材料によって、特に、本願明細書で言及された前記第2のポリマー材料によって引き起こされる。好ましい実施態様において、保護手段と担体とは、同一タイプの適切に架橋されたポリマー材料を含む。
【0092】
発明の第3の態様によれば、第1の態様によるか、または第2の態様により調製されるかした送達手段を含む、傷被覆材が提供される。
【0093】
被覆材の送達手段は、織物かその他同種のものの中で担持され得る;または、送達手段をシートまたはフィルムおよび/または固いヒドロゲルの形で提供することができ得る。
【0094】
被覆材は、実質的に無菌のパッケージで好ましくは提供される。
【0095】
第4の態様によれば、傷、病巣、または処置を必要とするヒトまたは動物体の他の領域を処置する方法が提供され、該方法は、第3の態様により傷被覆材で処置される領域と接触することを含む。
【0096】
本発明の第5の態様によれば、傷、病巣または処置を必要とする人体の他の領域の処置のため被覆材の製造のための第1の態様の送達手段の使用が提供される。
【0097】
本願明細書に記述されたいずれかの発明または実施態様のいずれかの態様のいかなる特徴も、本願明細書に準用して記述された他の発明または実施態様のいずれかの態様のいずれかの特徴と結合され得る。
【0098】
次の材料が、以下、言及される:
硝酸銀−Analar等級のものである;
【0099】
ポバール220−4%の水溶液中、20℃で測定された30.mPa.sの粘度(Brookfield社の、同期されたメートル回転型粘度計によって決定された)、および約88mol%の加水分解(けん化)率を有する、クラレから入手したポリビニルアルコール。分子量は約130,000である。
【0100】
KP−08およびKH−20は、マルベニ、スペシャリティケミカルズ社から得られたポリビニルアルコールを指す。KP−08は、上記の様に測定された6〜8mPa.sの粘度を有し、および71〜73.5mol%の加水分解率を有する;KH−20は44〜52mPa.sの粘度、および78.5〜81.5mol%の加水分解率を有する。
【0101】
JF−20−日本バム&ポバール社から得られたポリビニルアルコールで、35〜45mPa.sの粘度、および98.0〜99.0モル%の加水分解率を有する。
【0102】
Urgotul(登録商標)およびActisorb(登録商標)−銀を含む、登録された傷用被覆材。
【実施例】
【0103】
「実施例1」−ポリ(1、4−ジ(4−(N−メチルピリジニル))−2、3−ジ(4−(1−ホルミルフェニル))ブチリデン)の調製:
これは、国際特許出願第PCT/GB97/02529号の実施例1に記載されているように調製された。それらの内容は引用によって本願明細書に組込まれる。この方法において、4−(4−ホルミルフェニルエテニル)−1−メチルピリジニウム・メトスルホネート(SbQ)の1重量%以上の水溶液を、周囲温度でSbQを水と混合することにより調製される。かかる条件下、SbQ分子は凝集物を形成する。その後、その溶液は紫外光に露出された。このことは下記反応式
【0104】
【化9】



に示されるように、凝集物中の隣接した4−(4−ホルミルフェニルエテニル)−1−メチルピリジニウム・メトサルフェート分子(I)の炭素−炭素二重結合間の光化学反応に帰着し、ポリマーであるポリ(1、4−ジ(4−(N−メチルピリジニル))−2、3−ジ(4−(1−ホルミルフェニル))ブチリデン)・メトスルホネート(II)を生成する。化合物IおよびIIのアニオンが、明瞭さのために省略されたことが認識されるべきである。
【0105】
「実施例2a−2f」コロイド状銀の調製:
この実施例において、コロイド状銀の調製を実施例1に記載したブチリデン・ポリマーを用いて検討した。
【0106】
一連の水溶液を、下記の表に詳細に示したような硝酸銀およびブチリデンの重量%(バランスは水)を含有して調製した。調製は、硝酸銀を含む水溶液へのブチリデン・ポリマーを含む水溶液の添加を含んでいた。
【0107】
【表1】


【0108】
実施例2cの混合物は浅黄色の透明な溶液を与え、および沈殿の兆候はなかった。動的光散乱(DLS)は、溶液が54nmの平均直径の粒子を含むことを示した;散乱強度は、粒子の濃度が低いことを示した。その溶液を24時間暗やみの中で維持し、およびわずかな粒径の増加(60nmまで)があったことが認められたが、かかる粒子の濃度は依然として低かった。その後、その溶液を24時間、昼光に露出した。その後、DLSは、粒子の濃度が増加し、粒子が、+12.8mVのゼータ電位で41nmの平均粒径を持っていることを示した。
【0109】
一般的に、実施例2a〜2fまでの溶液は、正常な昼光下に置いた場合、5時間の間に浅黄色からより暗赤褐色に変化することを見出した。各場合において、溶液を調製後の2〜3時間後のDLSは、30〜40nmの直径を持った微粒子数の増加を示した。120時間の後、平衡状態に到達した。
【0110】
結論として、実施した研究は、硝酸銀およびブチリデン・ポリマーが光照射下において水溶液の中で接触すると、ブチリデン・ポリマーのメチルサルフェート・アニオンにより、全てのAgの金属銀(Ag)への光還元が起こることを示唆する。生成した銀は、40nmオーダーの平均粒径で、正に荷電したコロイド粒子の形をしている。
【0111】
「実施例3」−硝酸銀を含むポリビニルアルコール調製物の調製:
10重量%のポバール220ポリビニルアルコールおよび0.5重量%の実施例1のブチリデン・ポリマーを含む水溶液を調製した。その調製のための典型的な方法は、粉末状のポバール・ポリビニルアルコールをブチリデン・ポリマーの溶液中に、一定の撹拌下に徐々に溶解することを含み得る。完全な溶解は、6時間の間、60℃の温度で溶液を維持することにより達成され得る。調製された溶液に、硝酸銀0.5重量%を添加した。透明な溶液が生成し、それは周囲温度で昼光下に置かれると、4時間の間に浅黄色から暗橙色へと黒ずむ。沈殿の視覚的な兆候はなかった。
【0112】
「実施例4a、4bおよび4c」−硝酸銀の光還元:
実施例4aにおいて、実施例3の溶液を7〜9時間の間、UV光に露出した。その結果、Agは実施例2に記載されているような金属状銀に光還元される。この場合は、しかしながら、ポリビニルアルコールは銀の粒子上に吸着され、それらを安定化させる。DLSは、溶液が、ポリビニルアルコールおよびブチリデン化合物を含む粘着性の高分子溶液に拡散している金属銀のナノ微粒子(約90nmの直径)を含むことを示した。粒子は正に帯電し、+12.8mVのゼータ電位を有していた。
【0113】
実施例4bにおいて、ポバール・ポリビニルアルコールの代わりにKH−20・ポリビニルアルコールを用いた以外は、実施例4aの方法を実施した。
【0114】
実施例4aおよび4bの材料を分析し、そして、ポリビニルアルコールの吸着された層厚みに対するゼータ電位のグラフを、図1に示されるようにプロットした。図を参照すると、ポバール・ポリビニルアルコールについての吸着されたポリビニルアルコール層厚みが、KH−20・ポリビニルアルコールについての層厚みより著しく大きいことは注目されるであろう。
【0115】
一般的に、ポリビニルアルコールは大きな親水性領域および小さな疎水性の領域を有する。金属状銀への銀イオンの還元の後、ポリビニルアルコールの疎水性の領域は銀に結合し、および、従って、ポリビニルアルコールは銀を安定化させると信じられている。ポバール・ポリビニルアルコールはKH−20ほど疎水性ではない(即ち、ポバールはより高度に加水分解しているために、より少数の酢酸エステル部位しか有しない)。結果として、ポバールは銀粒子に強くは結合せず、従って、ポバールを用いて生成したポリビニルアルコール層は、より強く結合するKH−20を用いて生成したそれより厚い。
【0116】
ポバール220およびKH−20の結合を図2に表わす。
【0117】
実施例4cでは、ポバールの1重量%溶液が用いられたことを除いて、実施例4aの手順を用いた。再び、銀の粒子は、安定したコロイド溶液の中で生成した。この場合は、しかしながら、用いられるポバールの低レベルにより、混合物は他の実施例ほど粘稠ではなかった。
【0118】
「実施例5」−吸着したポリビニルアルコールによる銀粒子の安定性の確認:
塩化ナトリウム溶液を、金属状銀ナノ粒子を含む実施例4aの、光還元された混合物に加えた。塩化銀の白色沈殿が2時間を超える時間にわたって生成したことが分かった。これは、銀のナノ粒子がポリビニルアルコールによって塩素イオンとの即時反応から保護されることを示す。記述された方法で、ポリビニルアルコールによって、実施例4に記載されているような光還元以外のソースからのコロイド状Agを安定化することができることも又観察された。
【0119】
「実施例6」−ゲルの調製:
銀のナノ微粒子を含む実施例4aの調製物の50gを、0.5mlの7%硝酸の添加によってゲル化させた。酸の添加により、溶液は青白くなる。固いゲルが、周囲温度で約20〜30分の時間で生成する。ゲル生成は、下記反応式
【0120】
【化10】



に従って、ブチリデン・ポリマーによるポリビニルアルコール鎖の架橋を含むと考えられる。
【0121】
調製されたゲルは、ブチリデン・ポリマーによって架橋されたポリビニルアルコールによって安定化される銀のナノ微粒子を含むと考えられる。安定化された銀ナノ微粒子は、ブチリデン・ポリマーによって架橋されたポリビニルアルコールを同様に含むヒドロゲル・マトリックス内で自由に拡散できると考えられる。このことは、塩化ナトリウム溶液に1片の固体ゲルを置くことによって説明することができる。その間中、銀がゲルから拡散し塩化銀が沈殿するため、塩化ナトリウム溶液は濁ってくる。
【0122】
「実施例7」−抗菌性評価膜の調製:
膜を作るのに用いられる成分、および膜中の銀ナノ粒子の濃度の概要を、下表に示す。一般的に、10重量%の選択されたポリビニルアルコールを、選択された量の硝酸銀を付加する0.5重量%のブチリデン・ポリマーと混合することにより、ゲルを調製し、その混合物を、昼光中で5時間放置し、次に0.16%の硝酸で酸性化し、直径100mmのペトリ皿へ3mmの深さまで注入し、48時間かけてゲル化した。結果として、Agを組込んだゲルの薄膜が形成される。
【0123】
【表2】


【0124】
「実施例8」−異なった量のAgを含む調製物の殺菌効果の評価:
ペトリ皿を、緑濃菌, 大腸菌, 黄色ブドウ球菌、および表皮ブドウ球菌から選択した細菌株で接種した寒天培地が溶けている間に、満たした。寒天は、約1時間、凝固するにまかせ、その後、ディスク(10mmの直径)を実施例7の銀含有膜から切り取り、細菌を含む寒天上に、1つのペトリ皿当たり2つのディスクを置いた。これを、各細菌および各フィルムあたり各3回繰り返した。
【0125】
皿を35℃で24時間、培養した。その後、各膜の円ディスクのまわりの阻害ゾーンの直径を測定し、各膜および各細菌の平均値をとった。比較目的のために、類似した手順を登録製品Urgotul および Actisorbの阻害ゾーンを測定するために用いた。結果を図3に記録する。
【0126】
一般的に、実施例の膜の各7b〜7d、7f〜7h、7j〜7lおよび7m〜7p、は、登録製品UrgotulおよびActisorbが示す阻害ゾーンと比較して、より広い阻害ゾーンを示すことが、図2から注目されるであろう。更に、ポリビニルアルコールの加水分解度が低いほど(より高い酢酸エステル含量)、阻害ゾーンが広いように見え、それはより高い酢酸エステル含有ポリビニルアルコールがより低い酢酸エステル含有のものより、Agを保護することを示唆する。
【0127】
「実施例9」−異なった量のブチリデン・ポリマーを含む製剤の殺菌効果の評価:
膜を、ポバール220ポリビニルアルコールの10重量%および硝酸銀の0.5重量%を用いて調製したこと以外は、実施例8に一般に記載した手順に従った。および、ブチリデン・ポリマーの量を0.5重量%から2.0重量%まで変化させた。結果を図4に示した。図4では、フィルムを調製するために用いたブチリデンポリマーの重量%をx軸に示す。登録製品Urgotul および Actisorbについての結果は、細菌を含む寒天プレート上に置いた市販品被覆材の10mmのディスクを用いて得た。
【0128】
図4を見ると、膜を調製するために用いられるブチリデン・ポリマーのレベルによって阻害ゾーンがほとんど影響されないことが観察されるであろう。このことは、拡散プロセスが粒径の関数であるから、ポリビニルアルコールとのブチリデン相互作用は、吸着されたヒドロゲル層の厚みに何ら重要な効果がないことを示唆し得る。
【0129】
「実施例10」−安定したコロイド状金の調製物の調製:
コロイド状金の登録品の水調製物を選択し、および、水調製物におけるポリビニルアルコールの濃度が、固体のゲルまたは粘弾性の溶液を生成するために必要とされるのと同じくらい適切な量であるように、ポリビニルアルコール溶液と混合した。この段階では、溶液はコロイド状の金に特有のルビー色であった。その後、ブチリデン・ポリマーの水溶液を適当な濃度で加えてよい。ポリビニルアルコールに対するブチリデン・ポリマーの濃度の比率が、0.1〜0.05の範囲にある場合、酸の添加後に、粘性・弾性の溶液が生成し得る。ポリビニルアルコールの濃度がより高いときは、固体のヒドロゲルが生成し得る。
【0130】
調製されたコロイド状金は、被覆材などの中で用いることができる。記述された銀含有調製物のように、ポリビニルアルコールおよび/またはブチリデン・ポリマーによってコロイド状金の調製物が保護されて、それらが長期間、殺菌活性なままであることを可能にすることが分かる。
【0131】
記述された材料は、傷被覆材に組み入れられてよい。例えば、流体が織物などの中に担持されてよく、または材料の膜が被覆材の他の成分に固定されてあってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0132】
発明の具体的な実施態様は、以下の図に実施例として示される:
【図1】図1は、異なったポリビニルアルコールについての、ポリビニルアルコールに吸着された層厚みに対するゼータ電位のプロットである;
【図2】図2は、銀(Ag)粒子に結合するKH−20およびポバール220分子を示す;
【図3】図3は、特定された細菌に対して試験された選択された材料の阻害区域を比較する棒グラフである。
【図4】図4は、特定された細菌に対して試験された選択された材料の阻害区域を比較する棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送達し得る材料を送達する送達手段であって、前記送達手段は、送達し得る材料と、送達し得る材料を保護する保護手段とを含む、送達手段。
【請求項2】
前記送達し得る材料が抗菌性金属を含む、請求項1に記載の送達手段。
【請求項3】
前記送達し得る材料が銀、金または白金を含む、請求項1または2に記載の送達手段。
【請求項4】
前記送達し得る材料のコロイド粒子を含む、請求項1〜3のいずれか1つに記載の送達手段。
【請求項5】
コロイド金属銀粒子として存在する銀を含む前記送達し得る材料であって、銀粒子が正のゼータ電位を有するものである、請求項1〜4のいずれか1つに記載の送達手段。
【請求項6】
前記保護手段は送達し得る材料の酸化を制限し、および送達し得る材料の粒子周囲の保護層を含む、請求項1〜5のいずれか1つに記載の送達手段。
【請求項7】
前記保護手段は有機ポリマー材料を含む、請求項1〜6のいずれか1つに記載の送達手段。
【請求項8】
前記保護手段は要すれば誘導体化されてよい親水性ポリマーを含む、請求項1〜7のいずれか1つに記載の送達手段。
【請求項9】
前記保護手段は、要すれば誘導体化されてよいポリメタクリル酸、ポリイミド、ポリビニルアルコールおよびそれらのいずれかのコポリマーから選択される、請求項1〜8のいずれか1つに記載の送達手段。
【請求項10】
前記保護手段は要すれば誘導体化されてよいポリビニルアルコールを含む、請求項1〜9のいずれか1つに記載の送達手段。
【請求項11】
前記保護手段は少なくとも60モル%以上で95モル%未満の程度まで加水分解されているポリビニルアルコールを含む、請求項1〜10のいずれか1つに記載の送達手段。
【請求項12】
前記保護手段は下式:
【化1】


[式中、Lは架橋性材料の残基である。]
の部位を含む架橋した水溶性ポリマーを含む、請求項1〜11のいずれか1つに記載の送達手段。
【請求項13】
前記保護手段は架橋された親水性ポリマーを含み、ポリマーを架橋するために用いられる架橋材料が下式:
【化2】



[式中、AとBは同一または異なり、要すれば置換されてよい芳香環またはヘテロ芳香環基から選択され、および少なくとも一方は比較的極性のある原子または基を含み、ならびにRおよびRは独立して比較的非極性の原子または基を含む。]
の繰り返し単位を含む、請求項1〜12のいずれか1つに記載の送達手段。
【請求項14】
前記保護手段の重量%の、前記送達し得る材料の重量%に対する比率は、少なくとも10で100未満である、請求項1〜13のいずれか1つに記載の送達手段。
【請求項15】
少なくとも50重量%の水を含む、請求項1〜14のいずれか1つに記載の送達手段。
【請求項16】
前記送達し得る材料を少なくとも0.01重量%で20重量%未満含有する、請求項1〜15のいずれか1つに記載の送達手段。
【請求項17】
−0.000001重量%〜5重量%の、いずれかの形態における銀;
−5重量%〜30重量%のポリビニルアルコールおよび/または架橋されたポリビニルアルコール;および
−65重量%〜94.999999重量%の水
を含む、請求項1〜16のいずれか1つに記載の送達手段。
【請求項18】
送達し得る材料を送達する送達手段を調製する方法であって、
送達し得る材料または送達し得る材料の前駆体を選択する工程;および
送達し得る材料の保護のため、保護手段に前記送達し得る材料または前記前駆体を関連させる工程、を含む方法。
【請求項19】
保護手段を選択し、および選択した材料を前記送達し得る材料または前駆体と接触させることを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
金属イオンの状態にある送達し得る材料を選択することを含む方法であって、該方法が金属イオンを還元する工程を含む、請求項18または請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記送達し得る材料または前記送達し得る材料の前駆体が分配される担体の生成を含む方法であって、前記担体の生成は、第1および第2のポリマー材料を縮合反応で処理することを含む、請求項18〜20のいずれか1つに記載の方法。
【請求項22】
銀塩の形をしている前記送達し得る材料の前駆体を選択することを含む方法であって、前記塩は該方法中で還元され、前記保護手段によって保護され、および担体中に分配される、請求項18〜21のいずれか1つに記載の方法。
【請求項23】
請求項1〜17のいずれか1つに記載の手段、または請求項18〜22のいずれか1つに記載の方法よって調製された送達手段を含む、傷用被覆材。
【請求項24】
傷、病巣、または処置を必要とするヒトまたは動物体の他の領域を処置する方法であって、該方法は、処置されるべき領域を請求項23の傷用被覆材と接触させることを含む方法。
【請求項25】
傷、病巣または処置を必要とする人体の他の領域を処置する被覆材の製造のための、請求項1〜17のいずれか1つに記載の送達手段の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2009−527539(P2009−527539A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555862(P2008−555862)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【国際出願番号】PCT/GB2007/000592
【国際公開番号】WO2007/096606
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(508253878)エイジーティ・サイエンシーズ・リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】AGT SCIENCES LIMITED
【Fターム(参考)】