説明

送風機

【課題】 用途が広く、少ない労力で作業を行うことができる送風機を提供する。
【解決手段】 送風機としてのブロア10は、電動機13と、電動機13を駆動源とするファン11と、ファン11を収納するファンケーシング1と、送風手段3とを備えている。ファンケーシング1には、空気吸込部2と、送風手段3との接続部が形成されている。送風手段3は、ファンケーシング1と接続された状態で揺動することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気の吸い込み及び噴出を行う送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
ブロアは、空気の吸い込み及び噴出を行う送風機であり、主に配電盤や設備機器等の清掃、小規模な庭の清掃、湿ったものの乾燥などに用いられている。図6は、従来のブロア100の斜視図である。ブロア100は、ファンケーシング101と、吸込部102と、送風部103と、取手部104とを備えている。ファンケーシング101内には、電動機及びファンが内蔵されている。
【0003】
ファンが、電動機によって回転されることで、吸込部102から空気が吸い込まれ、吸込まれた空気は、ファンケーシング101内を通って、送風部103から噴出される。
【0004】
このような構成により、ブロア100は、送風部103から空気を噴出させて枯葉等を飛ばしたり、送風部103に袋等を取り付けて吸込口102からゴミ等を吸込んだりすることにより清掃作業を行うことができる。送風部103から空気を噴出させて清掃を行う場合には、取手部104を持ち、ブロア100全体を前後に揺らすことにより、広範囲の清掃を行うことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のブロアは、電動機に電力を供給するために、商用電源に接続するコード、又は、電池を備えている必要があった。そのため、コード付きブロアの場合には、使用できる範囲が限られ、コードレスブロアの場合には、重量のある電池を内蔵しているため、前述のように、ブロア全体を前後に揺らしながら掃除するのは、腕、手首等への負担が大きく、作業者に大きな労力をかけるという問題点があった。従って、従来のブロアの用途は、主に、前述のような比較的軽微かつ短時間で行われる作業に限られていた。
【0006】
そこで、本発明は、従来のブロアよりも用途が広く、少ない労力で作業を行うことができるブロアを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の送風機は、電動機と、電動機を駆動源とするファンと、ファンを収納し、空気吸込部と空気流出部とが形成されたファンケーシングと、空気流出部と接続された送風手段とを備え、送風手段は、空気流出部に接続された状態で揺動可能であることを特徴としている。
【0008】
また、請求項2に記載の送風機は、送風手段を揺動するための揺動駆動手段を更に備え、揺動駆動手段は、電動機の回転数を減少させる回転減少部と、回転減少部によって減少された回転数を送風手段を揺動させる力へと変換して送風手段に伝達する伝達部とを備えたことを特徴としている。
【0009】
また、請求項3に記載の送風機は、送風手段は、前記揺動のための支点を中心として約30度の範囲で揺動することを特徴としている。
【0010】
また、請求項4に記載の送風機は、ファンケーシングを支持するためのベルトを更に備えたことを特徴としている。
【0011】
また、請求項5に記載の送風機は、送風手段を所望の方向へ向けるための取手部を更に備えたことを特徴としている。
【0012】
また、請求項6に記載の送風機は、空気流出部と送風手段との接続部を覆う密封部を更に備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の送風機によれば、送風手段を揺動させることができるので、一定の範囲に空気を噴出させるために、送風機本体を揺らす労力が必要なくなる。
【0014】
また、請求項2に記載の送風機によれば、揺動駆動手段によって送風手段が自動的に揺動されるので、使用者の労力が一層軽減される。
【0015】
また、請求項3に記載の送風機によれば、送風手段が、掃除等に好ましい範囲でされる。
【0016】
また、請求項4に記載の送風機によれば、ベルトを肩等に掛けることができるので、使用者の労力が一層軽減される。
【0017】
また、請求項5に記載の送風機によれば、ベルトを肩等に掛けた際でも、取手部によって容易に送風手段の方向を変更することができる。
【0018】
また、請求項6に記載の送風機によれば、密封部が空気流出部と送風手段との接続部を覆うので、送風手段が揺動した場合でも、その接続部から空気が逃げることがなくなり、送風機を効率良く使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の一実施形態による送風機としてのブロア10について、図1から図5を参照して説明する。図1は、ブロア10の斜視図である。なお、本実施の形態では、図1に示されたブロア10において、紙面左側を前方、紙面右側を後方、紙面奥側を右方、紙面手前側を左方、紙面上側を上方、紙面下側を下方として説明する。
【0020】
ブロア10は、ファンケーシング1と、吸込部2と、送風部3と、揺動ピン4(図2)と、蛇腹5と、ノズル6とを備えている。ファンケーシング1は、後述するファン11(図2、3)及び減速機構20(図3、図4)等を内蔵している。また、ファンケーシング1の右方には、ファンケーシング1の外側に突出するように電動機13(図3)が取り付けられている。ファンケーシング1の左方は、中心部が開放されている。また、ファンケーシング1の上方かつ前方の部分も開放されている。
【0021】
吸込部2は、ファンケーシング1の前記左方の開放部分から外側に円筒状に突出するように設けられている。送風部3は、一端が、ファンケーシング1の前記上方かつ前方の開放部分に係合する形状を有する円筒であり、ファンケーシング1の上端から前方に延びている。送風部3は、揺動ピン4によって、ファンケーシング1の前記上方かつ前方の開放部分の前端において、ファンケーシング1と接続されている。揺動ピン4は、送風部3とファンケーシング1とを回転可能に接続しているため、送風部3は、揺動ピン4を中心として一定の範囲で揺動することが可能である。
【0022】
また、ファンケーシング1と送風部3との接続部には、その隙間を覆うように蛇腹5が取り付けられている。蛇腹5は、送風部3が揺動ピン4を中心として揺動する場合にも対応できるように伸縮可能であり、ビニール等の材質から構成されている。
【0023】
送風部3の他端には、その外周面に円周状の溝が形成されている。ノズル6は、その一端の内周面に弾性体からなる円周状の突出部を備えた円筒形状を有している。送風部3の前記溝にノズル6の前記突出部を嵌合させることで、送風部3にノズル6を接続することができる。ノズル6の他端からは、空気が噴出される。
【0024】
さらに、ブロア10は、肩下げ用ベルト7と、第1取手部8と、第2取手部9とを備えている。肩下げ用ベルト7は、ブロア10を肩から下げて作業する場合等に用いるためのものであり、その両端がファンケーシング1の左方において接続されている。第1取手部8は、ブロア10を片手で持って作業する場合等に用いるためのものであり、ファンケーシング1の右方から突出した電動機13上に設けられている。第2取手部9は、肩下げ用ベルト7を用いてブロア10を肩からぶら下げ、吸込部2を上方に向けて作業する場合等に手を添えてブロア10を安定させるためのものであり、ファンケーシング1の左方かつ前方側に設けられている。
【0025】
次に、ブロア10の内部構造について図2及び図3を参照しながら説明する。図2は、ブロア10の縦断面図であり、図3は、ブロア10の図2におけるA−A断面図である。ファンケーシング1内には、ファン11と、仕切り板12と、減速機構20と、伝達機構30とが内蔵されている。ファンケーシング1内は、仕切り板12によって右側と左側とに仕切られており、左側には、ファン11が内蔵されており、右側には、減速機構20が内蔵されている。
【0026】
ファン11は、ファンケーシング1に収まるような直径を有する略円形形状を有している。ファンケーシング1の右方から突出するように設けられている電動機13は、仕切り板12を貫通してファン11の中心部に接続された電動機軸13aを備えている。電動機13は、ブロア10にコード等(図示せず)を備えており、商用電源によって駆動される。
【0027】
電動機13からの動力により電動機軸13aが回転し、その回転がファン11に伝達されて、ファン11は回転する。ファン11が回転することで、吸込部2から空気が吸い込まれ、吸込まれた空気は、ファンケーシング1内を通って、送風部3から噴出される。このようにして、送風部3に袋等を取り付けて吸込口2からゴミ等を吸込んだり、送風部3から空気を噴出させて枯葉等を飛ばしたりすることにより清掃作業が行われる。
【0028】
また、送風部3にノズル6を取り付けることで、比較的遠方にあるゴミ等であっても吹き飛ばすことができる。更に、送風部3とノズル6が別体に設けられていることで、ブロア10の収納等が容易となる。
【0029】
ここで、本実施の形態では、ファン11の回転に連動して送風部3が揺動ピン4を中心に揺動する。詳細には、電動機13の回転速度を減速機構20で減速し、伝達機構30が、その減速された回転速度に応じて送風部3を揺動させる。
【0030】
ファンケーシング1内の右側に内蔵されている減速機構20について図4を参照しながら説明する。図4は、ブロア10の図2におけるB−B断面図である。
【0031】
本実施の形態の減速機構20は、ピニオン21(図3)と、遊星ギヤ機構22と、減速ギヤ23を備えており、ピニオン21から出力される回転速度は、遊星ギヤ機構22と減速ギヤ23とによって減速される。ピニオン21は、電動機軸13aの円周上に設けられている。
【0032】
遊星ギヤ機構22は、太陽ギヤ221と、遊星ギヤ222a、222b、222c(図示せず)と、外輪歯車223と、キャリア224と、ベアリング225とを備えている。太陽ギヤ221は、ファンケーシング1内の右側に設けられており、外輪を有している。太陽ギヤ221は、回転できないように固定されている。また、ベアリング225も、ファンケーシング1内の右側に設けられており、外輪歯車223を回転可能に支持している。外輪歯車223は、外輪と内輪を有しており、外輪でピニオン21と噛合し、内輪で遊星ギヤ222a、222b、222cのそれぞれと噛合している。また、遊星ギヤ222a、222b、222cは、太陽ギヤ221の外輪ともそれぞれ噛合している。遊星ギヤ222a、222b、222cは、キャリア224上に自転可能に搭載されている。キャリア224は、外輪を有しており、減速ギヤ23の外輪と噛合している。
【0033】
減速ギヤ23は、その中心にファンケーシング1の右方に向けて突出したギヤ軸23aを備えており、ギヤ軸23aは、ファンケーシング1内の右側に設けられたベアリング24に回転可能に支持されている。
【0034】
このような構成により、ピニオン21の回転が外輪歯車223に伝達され、外輪歯車223が回転する。外輪歯車223の回転に伴い、その内輪と噛合している遊星ギヤ222a、222b、222cも自転する。遊星ギヤ222a、222b、222cは、それぞれ、太陽ギヤ221とも噛合しているが、太陽ギヤ221は、ファンケーシング1に固定されているため、回転することができない。従って、遊星ギヤ222a、222b、222cは、自転を行うと同時に、太陽ギヤ221を中心とした公転も行う。遊星ギヤ222a、222b、222cの公転に伴い、遊星ギヤ222a、222b、222cを搭載したキャリア224も回転する。このようにして、ピニオン21から出力された回転速度は、減速されてキャリア224に伝達される。なお、この遊星ギヤ機構22により、ピニオン21から出力された回転速度は約40分の1に減速されるものとする。
【0035】
キャリア224は、減速ギヤ23と噛合しているため、キャリア224から出力された回転速度は、減速ギヤ23によって更に減速される。なお、この減速ギヤ23により、キャリア224から出力された回転速度は、約5分の1に減速されるものとする。このように、ピニオン21から出力された回転速度は、遊星ギヤ機構22と減速ギヤ23との2段階で約200分の1に減速されて、減速ギヤ23から出力される。
【0036】
次に、送風部3を揺動させるための伝達機構30について図2を参照しながら説明する。伝達機構30は、クランクピン31と、リンク32と、接続ピン33とを備えている。クランクピン31は、前述の減速ギヤ23の平面部からファンケーシング1の左方に向けて突出している(図3)。一方、送風部3の後端には、接続ピン33が設けられている。この接続ピン33とクランクピン31とが、リンク32によって枢着されている。
【0037】
このような構成により、減速ギヤ23が回転すると、減速ギヤ23上に設けられたクランクピン31も、ギヤ軸23aを中心とした円周運動を行う。ここで、前述したように、送風部3は、ファンケーシング1に、揺動ピン4によって回転可能に連結されている。従って、ギヤ軸23aとリンク32を介して接続された送風部3は、クランクピン31が円周運動を行うことによって、リンク32の動きに合わせて、揺動ピン4を中心とした揺動運動を行うことになる。
【0038】
なお、送風部3は、毎分約100回で送風部3を揺動させるのが好ましい。一方、電動機は、通常、毎分約2万回の回転を行う。従って、本実施の形態では、電動機の回転速度を減速機構20で約200分の1に減速させることにより、送風部3を毎分約100回で揺動させている。
【0039】
なお、送風部3が上方向を向いているとき、すなわち、クランクピン31が、減速ギヤ23の円周の下方に位置しているときには、送風部3の後端がファン11と衝突してしまう恐れがある。従って、本実施の形態では、クランクピン31が、減速ギヤ23の円周の最下方に位置しているときであっても、送風部3の後端がファン11と衝突しないように、ギヤ軸23aの位置、減速ギヤ23の半径、クランクピン31の位置、リンク32の長さ、接続ピン33の位置、ファン11の半径等の関係を調整している。なお、本実施の形態では、送風部3は、揺動ピン4を中心として約30度の範囲で揺動可能なように調整している。
【0040】
このような構成によれば、送風部3の揺動運動により、送風部3から空気を噴出させてゴミ等を吹き飛ばす場合には、ブロア10本体を動かすことなく広範囲の清掃を行うことができる。従って、従来のように、第1取手部8を持ってブロア10本体を揺らす必要がなくなり、作業者の労力が軽減される。更に、肩下げベルト7及び第2取手部9を備えたことにより、ブロア10を第1取手部8のみで片手で保持する必要がなくなるので、作業者の労力が一層軽減される。従って、公園等の比較的広い場所の清掃を行う場合でも、効率良く、楽に作業を行うができる。
【0041】
また、送風部3が自動的に揺動運動するため、ブロア10を据え置きにしたまま、例えば、各種農作物、干物等を乾燥等させる作業にも効果が期待できる。更に、ブロア10は、例えば、ノズル6の先端等の細い部分ではなく、ファンケーシング1と係合する形状を有する送風部3の後端等の面積の大きい部分が揺動する。従って、面積の大きい部分は風圧も小さいので、その接続部を覆う蛇腹5が風圧によって折れ曲がってしまう等の風量の損失が生じない。
【0042】
尚、本発明のブロア10は、上記した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0043】
例えば、図5に示すように、ブロア10は、減速機構20及び伝達機構30を備えていなくても良い。この場合、本実施の形態のように、送風部3が、ファン11の回転に連動して自動的に揺動を行うことはないが、作業者が自由に送風部3の方向を変えることができる。また、リンク32を自由に取り外すことができるような構造とし、送風部3が自動で揺動する場合と、手動で揺動させる場合とを切り替えることができるようにしても良い。更に、本実施の形態では、送風部3がファンケーシング1に対して揺動したが、ファンケーシング1内の部材が揺動することにより、送風部3を揺動させても良い。例えば、ファンケーシング1の送風部3と接続される開放部自体が動くことで、送風部3を揺動させる方法などが考えられる。
【0044】
また、本実施の形態の電動機13は、ブロア10にコード等を備え、商用電源によって駆動されていたが、電池によって駆動されても良い。更に、本実施の形態のブロア10では、送風部3とノズル6とは別体に備えられていたが、一体であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の送風機は、清掃や乾燥に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】は、ブロア10の斜視図である。
【図2】は、ブロア10の縦断面図である。
【図3】は、ブロア10の図2におけるA−A断面図である。
【図4】は、ブロア10の図2におけるB−B断面図である。
【図5】は、減速機構20及び伝達機構30を備えていないブロアの一例である。
【図6】従来のブロア100の斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
1 ファンケーシング、2 吸込部、3 送風部、4 揺動ピン、5 蛇腹、6 ノズル、7 肩下げ用ベルト、8 第1取手部、9 第2取手部、10 ブロア、11 ファン、13 電動機、20 減速機構、30 伝達機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機と、前記電動機を駆動源とするファンと、前記ファンを収納し、空気吸込部と空気流出部とが形成されたファンケーシングと、前記空気流出部と接続された送風手段と、を備えた送風機において、
前記送風手段は、前記空気流出部に接続された状態で揺動可能であることを特徴とする送風機。
【請求項2】
前記送風手段を揺動するための揺動駆動手段を更に備え、前記揺動駆動手段は、前記電動機の回転数を減少させる回転減少部と、前記回転減少部によって減少された回転数を前記送風手段を揺動させる力へと変換して前記送風手段に伝達する伝達部とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の送風機。
【請求項3】
前記送風手段は、前記揺動のための支点を中心として約30度の範囲で揺動することを特徴とする請求項1又は2に記載の送風機。
【請求項4】
前記ファンケーシングを支持するためのベルトを更に備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の送風機。
【請求項5】
前記送風手段を所望の方向へ向けるための取手部を更に備えたことを特徴とする請求項4に記載の送風機。
【請求項6】
前記空気流出部と前記送風手段との接続部を覆う密封部を更に備えたことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の送風機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−266125(P2006−266125A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−83180(P2005−83180)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】