説明

送風機

【課題】送風機において、モータを収容するロータ内への塵埃侵入の防止、ならびにロータ内からの塵埃排出を可能とし、モータロックを従来よりも効果的に防止する。
【解決手段】モータ35が収容されているロータ20の開口21および回路基板40をカバー50Aによって覆い、ロータ20内への塵埃の侵入をカバー50Aで防ぐ。ロータ20と一体に回転するカバー50Aに形成したフィン(気流発生手段)54により気流を発生させてロータ20内への塵埃の侵入を抑えるとともに、ロータ20内の塵埃をロータ20の外部に排出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータで羽根車(羽根付きロータ)を回転させて空気を圧送する送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の送風機として、エアコン内の塵埃を外部に排出するものが知られている(特許文献1)。同文献の送風機は、外周に羽根部を有し、軸方向の一端側が開口する回転可能な略円筒状のロータと、ロータの内周に配置されるロータマグネットと、ロータ内部に配置され、ロータマグネットとの組み合わせでモータを構成するステータと、ステータの軸方向の一端側に配置され、ロータの回転駆動を制御する回路基板とを備えた構造において、回路基板を覆ってロータの開口に面して基板カバーを配置し、この基板カバーとロータの開口端との間にラビリンスシールを設けて、モータが収容されるロータ内部への塵埃の侵入を抑え、塵埃によるモータロックを防止するものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−232024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながらラビリンスシールであっても微小な隙間は存在するため、微細な塵埃がロータ内部に侵入する可能性があり、また、一旦塵埃がロータ内部に侵入すると、それは排出されにくく、長期にわたってモータロックを防止する上では不十分な構造である。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、モータが収容されるロータ内部への塵埃の侵入を十分に防ぐことができるとともにロータ内部からの塵埃の排出を可能として、モータロックを従来よりも効果的に防止することができる送風機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の送風機は、外周部に羽根を有するとともに軸方向の一端側に開口を有し、開口側に配置された支持部材に回転軸を介して回転自在に支持されるロータと、該ロータの内周面に配置されるロータマグネットと、前記ロータの内部に前記ロータマグネットに対向する状態に配置されて前記支持部材に固定され、ロータマグネットと協働してロータを回転駆動するステータと、前記ステータの軸方向の一端側に配置されて前記支持部材に固定され、前記ロータの回転駆動を制御する回路基板と、前記回路基板および前記ロータの開口を覆って配置されてロータに固定され、ロータの回転に伴って気流を発生させる気流発生手段を有するカバーとを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、回路基板とともにロータの開口を覆って配置されてロータに固定されるカバーによって、モータが収容されるロータ内部への塵埃の侵入を十分に防ぐことができる。また、カバーはロータとともに回転して気流発生手段により気流が発生し、その気流がロータ内部の空気をロータ外部に排出させる構成とすることにより、ロータ内部からの塵埃の排出を可能とする。これらの結果、モータロックを従来よりも効果的に防止することができる。
【0008】
本発明の気流発生手段は、前記カバーの下面に形成されている形態が挙げられる。また、気流発生手段の具体的形態としては、前記カバーの回転中心側から外周縁側に向かって形成されたフィン、または、前記カバーの回転中心側から外周縁側に向かって形成された貫通孔とフィンとからなることを含む。
【0009】
さらに、少なくとも前記フィンは、前記カバーの回転中心に対して放射状または略放射状に形成されている形態が挙げられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、モータが収容されるロータ内部への塵埃の侵入を十分に防ぐことができるとともにロータ内部からの塵埃の排出が可能であり、その結果、モータロックを従来よりも効果的に防止することができる送風機が提供されるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る送風機を示す断面図である。
【図2】一実施形態の送風機が備えるカバーを下から見た状態の斜視図である。
【図3】一実施形態の送風機の一部断面図である。
【図4】一実施形態の送風機のカバーを換えた変更例の一部断面図である。
【図5】一実施形態の送風機のカバーを換えた他の変更例の一部断面図である。
【図6】図5で示したカバーを上から見た状態の斜視図である。
【図7】図5で示したカバーの気流発生手段を換えた変更例の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、一実施形態に係る送風機1がケース100によって形成された送風経路101内に設置された状態を示している。図1で符号10は軸方向が図中上下方向に沿って配置された軸受支持部である。軸受支持部10は、円筒部11の下端にフランジ部12が形成されたもので、フランジ部12がケース100の底部に固定されている。円筒部11には上方から挿入された回転軸15が上下のベアリング16を介して回転自在に支持されており、この回転軸15の上端には、下側に開口21を有する円筒状のロータ20が同心状に固定されている。
【0013】
ロータ20は、円筒状のロータカップ22と、ロータカップ22の内面に固着されたロータホルダ23とから構成される。ロータホルダ23の内周面には、ロータマグネット25が固着されている。ロータ20は、ロータホルダ23の中心に形成されたボス部23aが回転軸15の上端に嵌合して固定されることにより、回転軸15と一体回転する。ロータカップ22の外周部には羽根29が形成されている。
【0014】
ロータ20の内部であって軸受支持部10の円筒部11の外周面には、ステータ30が、ロータマグネット25と隙間をおいて対向する状態に配置されて固定されている。ステータ30とロータマグネット25との組み合わせにより、ロータ20を回転駆動するモータ35が構成される。また、ステータ30の下側には、ロータ20の回転駆動を制御する回路基板40が配置されている。回路基板40はロータ20の開口21に面して配置され、ステータ30を介して軸受支持部10に固定されている。
【0015】
ロータ20のロータカップ22における下側の開口縁22aには、回路基板40とともにロータ20の開口21を覆う円板部51を有するカバー50Aが固定されている。カバー50Aは、図2に示すように、円板部51の周縁から上方に立ち上がる周壁部52を有し、その周壁部52の周縁に形成されたフランジ部53が、ロータカップ22に固定されている。
【0016】
カバー50Aはロータ20と一体に図2の矢印D方向に回転し、その回転中心である円板部51の中心には、軸受支持部10の円筒部11が貫通する円形状の孔51aが形成されている。孔51aの周囲の円板部51の下面には、カバー50Aの回転中心側から外周縁側に向かって略放射状に延びる複数のフィン(気流発生手段)54が形成されている。これらフィン54は、一周方向(矢印Aで示す)に湾曲するように形成され、等間隔をおいて配列されている。なお、フィン54を湾曲させずに直線的に形成して放射状に配置することも可能である。
【0017】
以上が本実施形態の送風機1の構成であり、この送風機1では、回路基板40を介してステータ30に電圧が印可されるとモータ35が作動状態となってロータ20が回転駆動され、ロータ20と一体に回転する羽根29の作用により、図1に示すように送風経路101を例えば矢印B方向の空気の流れが発生して空気がその方向に圧送される。
【0018】
矢印Bの気流は羽根29の作用による主流経路であり、送風機1を通過する空気の中には、送風機1の下方に流入してカバー50Aの下方を通過する矢印Cで示す副流経路を通るものもある。この副流経路を流れる空気に塵埃が混じっていると、モータ35が収容されるロータ20の内部にその塵埃が侵入してモータロックを招くというのが本発明の課題であった。しかしながら本実施形態によれば、カバー50Aによってロータ20内に塵埃が侵入することが防がれる。
【0019】
また、カバー50Aはロータカップ22とともに回転するが、回転中においてカバー50Aは図2の矢印D方向に回転するようになされており、このカバー50Aの回転により、カバー50Aの下方および周囲には、外周方向に放射方向に放散する気流(図1:矢印Eで示す)が発生する。このため、カバー50Aの孔51aにより軸受支持部10との間に隙間があっても、その隙間から塵埃はカバー50A内に侵入しにくく、また、その隙間からロータ20の外部に排出する気流が生じる(図3:矢印Fで示す)。このため、ロータ25の外部に塵埃を排出させることができる。これらの結果、モータロックを従来よりも効果的に防止することができる。
【0020】
次に、図4〜図7により、上記カバー50Aを変更した変更例を説明する。いずれの図も上記実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付してある。
【0021】
図4に示すカバー50Bは周壁部52を有さない円板部のみの平板状であり、周縁の上面が、下方に延長されたロータカップ22の開口縁22bに合わせて固定されている。このカバー50Bの下面には上記フィン54が形成されており、カバー50Aと同様の作用効果を奏する。
【0022】
次に、図5のカバー50Cにおいては、図6に示すように、外形は上記カバー50Aに近似しているが、円板部51に径方向に長い長方形状の貫通孔55が周方向に等間隔をおいて放射状に形成されているとともに、円板部51の内面(上面)における貫通孔55の長手方向の一方の縁に沿って、貫通孔55の上方に向かい傾斜して延びるフィン56が形成されている。したがって、フィン56も放射状に配置され、カバー50Cをロータカップ22に取り付けたとき、フィン56はロータ20の内側に突出した状態になる。貫通孔55およびフィン56は、例えば円板部51に貫通孔55に対応するスリットを形成し、フィン56部分を折り曲げ加工するといった手法で形成することができる。
【0023】
この変更例では、図6に示す矢印G方向にカバー50Cが回転するようにロータ20は回転駆動される。カバー50Cが矢印G方向に回転すると、カバー50C内の空気が図5の矢印Fのようにカバー50Cの外部に排出される気流がロータ20の内側に延びたフィン56によって発生し、これによってロータ20内への塵埃の侵入が防がれるとともに、ロータ20内から塵埃が排出される。
【0024】
図7に示すカバー50Dは、上記カバー50Cの変更例である。カバー50Dは周壁部52を有さない平板状であり、周縁の上面が、上記カバー50Bと同様に、下方に延長されたロータカップ22の開口縁22bに合わせて固定されている。このカバー50Dには上記カバー50Cと同様に貫通孔55およびフィン56が形成されており、カバー50Cと同様の作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0025】
1…送風機
10…軸受支持部(支持部材)
15…回転軸
21…ロータの開口
22…ロータカップ
25…ロータマグネット
29…羽根
30…ステータ
35…モータ
40…回路基板
50…カバー
54,56…フィン(気流発生手段)
55…貫通孔(気流発生手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周部に羽根を有するとともに軸方向の一端側に開口を有し、開口側に配置された支持部材に回転軸を介して回転自在に支持されるロータと、
該ロータの内周面に配置されるロータマグネットと、
前記ロータの内部に前記ロータマグネットに対向する状態に配置されて前記支持部材に固定され、ロータマグネットと協働してロータを回転駆動するステータと、
前記ステータの軸方向の一端側に配置されて前記支持部材に固定され、前記ロータの回転駆動を制御する回路基板と、
前記回路基板および前記ロータの開口を覆って配置されてロータに固定され、ロータの回転に伴って気流を発生させる気流発生手段を有するカバーと、
を備えることを特徴とする送風機。
【請求項2】
前記気流発生手段は、前記カバーの下面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の送風機。
【請求項3】
前記気流発生手段は、前記カバーの回転中心側から外周縁側に向かって形成されたフィンであることを特徴とする請求項2に記載の送風機。
【請求項4】
前記気流発生手段は、前記カバーの回転中心側から外周縁側に向かって形成された貫通孔とフィンとからなることを特徴とする請求項2に記載の送風機。
【請求項5】
少なくとも前記フィンは、前記カバーの回転中心に対して放射状または略放射状に形成されていることを特徴とする請求項3または4に記載の送風機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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