説明

送風機

【課題】騒音を著しく低減することができる送風機を提供する。
【解決手段】本発明の送風機1は、ファン11又は25を回転させて送風するものであって、ファン11又は25の空気吹出側、若しくは、空気吸込側の通風経路14又は28に位置するブラケット13又は27に、この部材の存在によって生ずる空気流速変化の勾配、若しくは、圧力変動を緩和する緩衝手段としての網15又は29を設けた。特に、プロペラファンには有効であり、緩衝手段は、柔毛やブラシでも良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンを回転させて送風する送風機、特に、ファンで生じる空気流によって発生する騒音を改善することができる送風機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、空気調和装置の室外機や、冷却貯蔵庫の機械室などには、圧縮機や凝縮器からの廃熱を空冷する凝縮器用送風機などが設置されている。例えば、冷却貯蔵庫の機械室には、前面に開口が形成され、該開口には、パネルが開閉自在に取り付けられている。この機械室内には前方に引き出し可能なユニットベースが設けられ、ユニットベース上の最前部に凝縮器、その後側に凝縮器用送風機、更に、その後方に圧縮機と云う順で各機器は設置される。
【0003】
この場合、凝縮器用送風機は、気体を軸方向から吸い込んで軸方向に送風するプロペラファンなどが採用されている。プロペラファンは、モータにて駆動されるものであり、当該モータは一対のブラケットにてユニットベースに固定されている。ブラケットは凝縮器用送風機が機械室内に取り付けられた状態で手前側(機械室の開口側)に位置すると共に、ブラケットは奥側に位置する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−310475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した如き凝縮器用送風機が運転されると、プロペラファンの回転によって空気流が形成される。図8は凝縮器用送風機100を運転した場合にブラケット近傍に見られる空気流の速度分布を示しており、図9は当該速度分布によって生じる渦の状態を示している。
【0006】
通常、プロペラファンの回転によって空気が固体壁面に衝突すると圧力変動が生じる。特許文献1に示す如き構成では、モータを固定するブラケットがプロペラファンの直ぐ後に配置されているため、プロペラファンが回転することにより、固体壁面であるブラケットSに衝突し、強い剪断流が形成され、大きな流速勾配によって、強い渦Tが形成される。当該渦は消失する際に、広帯域音の乱流騒音を生じる。当該乱流騒音は、渦が強いほど大きくなる。
【0007】
また、図10に示すように、プロペラファンの回転によって、ブラケットに空気流が衝突すると当該面100の空気圧が高くなり(ハッチングの大きさにて空気圧の高さを示している)、離散的な回転騒音が生じる。
【0008】
本発明は、従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、騒音を著しく低減することができる送風機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の送風機は、ファンを回転させて送風するものであって、ファンの空気吹出側、若しくは、空気吸込側の通風経路に位置する部材に、この部材の存在によって生ずる空気流速変化の勾配、若しくは、圧力変動を緩和する緩衝手段を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、上記発明において、ファンを回転駆動するモータと、このモータを支持するブラケットとを備え、このブラケットに緩衝手段を設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、上記各発明において、緩衝手段は、部材に巻き付けられた網であることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、上記請求項1又は請求項2の発明において、緩衝手段は、部材から突出するように設けられた柔毛であることを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、上記請求項1又は請求項2の発明において、緩衝手段は、部材に取り付けられたブラシであることを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、上記各発明において、ファンはプロペラファンであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ファンを回転させて送風する送風機において、ファンの空気吹出側、若しくは、空気吸込側の通風経路に位置する部材、例えば、モータを支持するブラケットに、このブラケット等の部材の存在によって生ずる空気流速変化の勾配、若しくは、圧力変動を緩和する緩衝手段を設けたことにより、乱流騒音や回転騒音を効果的に低減することができる。
【0016】
また、請求項3乃至請求項5の発明のように、緩衝手段として、部材に巻き付けられる網や、部材から突出するように設けられる柔毛、ブラシなどによって構成することで、別部材を取り付けることで、乱流騒音や回転騒音の原因となる部材の表面に空気緩衝層を容易に形成することができる。そのため、安価にて本願発明を実現することができる。
【0017】
特に、プロペラファンの場合には、ファンを回転駆動させるモータを支持するためのブラケットがプロペラファンの回転領域周辺に設けられるため、本願発明は、極めて有効となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を適用した冷却装置の斜視図である。
【図2】図1の冷却装置の側面図である。
【図3】送風機の斜視図である。
【図4】送風機を運転した場合の空気流の速度分布を示す図である。
【図5】速度分布によって生じる渦の状態を示す図である。
【図6】ブラケット表面の空気圧を示す図である。
【図7】室外機の部分破断斜視図である。(実施例2)
【図8】従来の送風機における速度分布によって生じる渦の状態を示す図である。
【図9】従来のブラケット表面の空気圧を示す図である。
【図10】従来のブラケット表面の空気圧を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、実施例1及び実施例2の各送風機を例に挙げて説明する。
【実施例1】
【0020】
実施例1における送風機1は、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどに設置される冷却貯蔵庫の機械室に配設されている。冷却貯蔵庫の本体を構成する断熱箱体の下部には、前面に開口した機械室2が構成され、この前面開口2Aは吸込口が複数形成された図示しないパネルにより開閉自在に閉塞されている。
【0021】
機械室2内の底面には、鋼板製のユニットベース3が本体に固定されている。このユニットベース3上には、冷却装置Rを構成する図示しない圧縮機や凝縮器4、本発明の送風機1に相当する凝縮器用送風機が配設されている。この場合、凝縮器4の前面開口2Aとは反対側に位置する空気流出側には、グリル5が形成されたファンケーシング6が立設されている。
【0022】
送風機1は、ファン11と、当該ファン11を回転軸12Aを中心として回転駆動させるモータ12と、当該モータ12を支持する一対のブラケット13、13とから構成される。本実施例では、ファン11は、プロペラファン(軸流ファン)により構成されており、ファンケーシング6のグリル5から凝縮器4側に臨んで設けられている。ファン11はモータ12の回転駆動によって、空気が凝縮器4側から吸い込まれ、機械室2後部に吹き出される構成とされる。
【0023】
これにより、機械室2の前面開口2に設けられたパネルの吸込口から吸い込まれた外気は、凝縮器4を経る過程にて、当該凝縮機内の冷媒と熱交換し、熱交換した空気は、ファン11の回転駆動によって、機械室2後部に吹き出される。
【0024】
ここで、モータ12を支持するブラケット13、13は、送風機1が機械室2内に取り付けられた状態で、ファン11が凝縮器4が位置する空気吸込側に位置し、ブラケット13は、凝縮器4とは反対側の空気吹出側の通風経路14に位置してモータ12にネジ止め固定されている。
【0025】
通常、当該ブラケット13は、鋼板製材料を折曲することにより所定の強度を確保して構成されている。そして、このファン11の空気吹出側の通風経路14に位置する部材であるブラケット13には、緩衝手段としての網15が巻き付けられている。尚、この際網15は、一重巻きに限定されるものではなく、複数巻きとしてもよい。これにより、巻回される網15によって、ブラケット13表面に形成される空気緩衝層をより厚く形成することができる。
【0026】
係る構成によりファン11がモータ12により回転駆動されると、凝縮器4を通過した後の空気は、ファン11の軸方向から吸い込まれ、凝縮器4とは反対側の空気吹出側に吐出される。図3では、実線矢印にてファン11の回転方向を示し、白抜き矢印にて空気の流通方向を示している。
【0027】
この際、ファン11の空気吹出側の通風経路14内に配置されるブラケット13に衝突する空気は、当該ブラケット13の周囲に巻き付けられた緩衝手段としての網15を介して衝突する。ここで、図4は送風機1を運転した場合にブラケット13近傍に見られる空気流の速度分布を示しており、図5は当該速度分布によって生じる渦の状態を示している。
【0028】
これによると、ファン11の回転によって、一様に空気吹出側の通風経路14内に吹き出された空気流は、ブラケット13に衝突することとなるが、この際、ブラケット13表面には、網15が設けられているため、当該網15によって、ブラケット13周囲には、空気緩衝層が形成されることとなる。
【0029】
即ち、ブラケット13の表面において網15によって、空気流を緩和する層が形成されることで、空気流に対する当該ブラケット13端部周辺では、空気流の速度差が小さくなる。これにより、当該ブラケット13の空気流出側における空気流速の変化の勾配が緩和され、網15を設けない場合と比べて、弱い渦Uが形成されることとなる。
【0030】
当該渦が消失する際には、従来の場合と同様に乱流騒音を生じることとなるが、従来と比較して、渦を著しく弱いものとすることができ、当該乱流騒音を著しく低減することが可能となる。
【0031】
また、図6に示すように、ブラケット13の表面に巻き付けられる網15によって、空気流を緩和する層(空気緩衝層)が形成されるため、空気吸込側の通風経路14内に位置する当該ブラケット13の空気吸込側の面13Aにおける空気圧は、著しく低減される(ハッチングの大きさにて空気圧の高さを示している)。そのため、当該ブラケット13の空気吸込側の面13A周辺における領域13Bの空気の圧力変動を緩和することができるため、当該領域13Bにファン11が横切って回転した場合であっても、断続的に生じる回転騒音は著しく低減される。
【0032】
このように、本実施例では、ファン11を回転させて送風する送風機11は、空気吸込側の通風経路14内に位置するブラケット13に、網15を巻き付けたことにより、当該ブラケット13の存在によって生ずる空気流速変化の勾配を緩和することができ、乱流騒音を効果的に低減することができる。また、当該ブラケット13の存在によって生ずる空気圧力変動を緩和することができ、ファン11が横切るときに生ずる風切り音、即ち、回転騒音を効果的に低減することができる。
【0033】
特に、本実施例では、通風経路14内において、風が衝突する部材はブラケットのみであり、当該通風経路14内に存在する当該ブラケット13に係る騒音を低減する緩衝手段として別部材により構成される網15を巻き付けて取り付けることとしているため、簡素な構成にて乱流騒音や回転騒音を効果的に低減することができる。特に、網15は別部材にて構成されているため、既存の設備にも容易に適用することができると共に、安価にて実現することができる。
【実施例2】
【0034】
実施例2における送風機20は、空気調和装置の室外機21に適用されたものである。空気調和装置は、室外に配置される室外機21と、室内の天井や壁に配置された図示しない室内機とが配管接続されて構成され、配管接続により構成される冷媒回路に冷媒を流して冷房運転や暖房運転を行う。室外機21は、外気と冷媒とを熱交換し、冷房運転時には冷媒を凝縮させて外気へ熱を放出し、暖房運転時には冷媒を蒸発させて外気から熱を取り込むものである。
【0035】
この室外機21について図7の部分破断斜視図を参照して説明する。室外機21は、筐体22内に図示しない圧縮機や熱交換器を配設し、当該筐体22の側面に空気流入部23が形成されている。そして、筐体22の上面には、空気吐出部24が形成されている。この空気吐出部24内には、本発明に係る送風機20が配設されている。
【0036】
送風機20は、空気吐出部24に臨んで配設されるファン25と、当該ファン25を回転軸26Aを中心として回転駆動させるモータ26と、当該モータ26を支持する一対のブラケット27とから構成される。
【0037】
本実施例では、ファン25は、プロペラファン(軸流ファン)により構成されており、その下側に位置して、ブラケット27により支持されるモータ26が取り付けられる。このモータ26は、圧縮機や熱交換器の上方に配置される。ファン2のモータ26による回転駆動によって、空気(外気)が空気流入部23より筐体2内に吸入され、熱交換器に至り、当該熱交換器内の冷媒と外気とが熱交換される。そして、熱交換された後の空気は、ファン25の回転駆動によって、空気吐出部24より外部に吐出される。
【0038】
当該実施例では、モータ26を支持するブラケット27、27は、送風機20が筐体22内に取り付けられた状態で、ファン25が空気吐出部24側に位置し、ブラケット27は空気流入部23側の通風経路28に位置して設けられる。
【0039】
当該実施例におけるブラケット27にも、上記実施例1と同様に緩衝手段としての網29が巻き付けられている。
【0040】
これにより、ファン25の空気吸込側の通風経路28内に配置されるブラケット27に衝突する空気は、上記実施例1の場合と同様に、ブラケット27の周囲に巻き付けられた緩衝手段としての網29を介して衝突する。
【0041】
そのため、ファン25の回転によって、一様に空気吸込側の通風経路28内に吸い込まれた空気流は、ファン25に至る以前にブラケット27に衝突することとなるが、この際、ブラケット27表面には、網29が設けられているため、当該網29によって、ブラケット27周囲には、空気緩衝層が形成されることとなる。
【0042】
この場合においても、ブラケット27の表面において網29によって、空気流を緩和する層が形成されることで、空気流に対する当該ブラケット27端部周辺では、空気流の速度差が小さくなる。これにより、当該ブラケット27の空気吸込側における空気流速の変化の勾配が緩和され、網29を設けない場合と比べて、弱い渦が形成されることとなる。
【0043】
従って、当該渦が消失する際に生じる乱流騒音を従来と比較して、渦を著しく弱いものとすることができ、著しく低減することが可能となる。
【0044】
尚、上記各実施例では、ブラケット13等とは別部材にて構成される網15、29によって緩衝手段を構成しているが、乱流騒音や回転騒音の原因となるブラケット(部材)13又は27の表面に空気緩衝層を形成することができるものであればこれに限定されるものではなく、ブラケット(部材)13又は27等に一体に構成されるものや、当該ブラケットの表面から突出するように設けられる金属製又は樹脂製の柔毛や、当該ブラケット13又は27の表面に取り付けられるブラシなどによって構成してもよい。
【0045】
また、上記各実施例では、送風機に取り付けられるファンとしてプロペラファン(軸流ファン)を例に挙げて説明しているが、これに限定されるものではなく、ターボファンやシロッコファンなどに適用してもよい。但し、本実施例のように、プロペラファンの場合には、当該ファンを駆動するモータが空気流の中心に位置するため、該モータを支持するブラケットには、空気流が衝突しやすい。そのため、ファンを回転駆動させるモータを支持するためのブラケットがファンの回転領域周辺に設けられるプロペラファンの場合には、本願発明は、極めて有効となる。
【符号の説明】
【0046】
1、20 送風機
2 機械室
2A 前面開口
3 ユニットベース
4 凝縮器
5 グリル
6 ファンケーシング
11、25 ファン(プロペラファン)
12、26 モータ
13、27 ブラケット
14、28 通風経路
15、29 網(緩衝手段)
21 室外機
22 筐体
23 空気流入部
24 空気吐出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンを回転させて送風する送風機において、
前記ファンの空気吹出側、若しくは、空気吸込側の通風経路に位置する部材に、該部材の存在によって生ずる空気流速変化の勾配、若しくは、圧力変動を緩和する緩衝手段を設けたことを特徴とする送風機。
【請求項2】
前記ファンを回転駆動するモータと、該モータを支持するブラケットとを備え、該ブラケットに前記緩衝手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の送風機。
【請求項3】
前記緩衝手段は、前記部材に巻き付けられた網であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の送風機。
【請求項4】
前記緩衝手段は、前記部材から突出するように設けられた柔毛であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の送風機。
【請求項5】
前記緩衝手段は、前記部材に取り付けられたブラシであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の送風機。
【請求項6】
前記ファンはプロペラファンであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちの何れかに記載の送風機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−72311(P2013−72311A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210496(P2011−210496)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】