説明

逆止弁

【課題】シンプルな構造でコストを抑えた逆止弁を提供する。
【解決手段】車両の燃料タンクに燃料を供給するパイプ4に取り付けるための筒状の本体部20と、本体部20の開口を開閉可能な開閉部材と、を備える逆止弁において、本体部20は、流出口側の開口部22と、開閉部材を回動可能に支持する支持部24とを有する。また開閉部材は、開口部22を閉じる蓋部42と、支持部24に支持される軸部46と、蓋部42と軸部46とを連結するアーム部44とを有する。開口部22は、パイプ4に取り付けられた状態で、水平方向に対して傾斜し、かつ開口部22の開口方向は上向きである。蓋部42はアーム部44に対して鈍角に折れるよう傾斜する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクに燃料を供給するパイプに取り付けるための逆止弁に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の燃料タンクに燃料を供給する給油パイプの先端には逆止弁が取り付けられる(特許文献1参照)。特許文献1の逆止弁は、給油パイプに連結される中空状の本体と、本体の開口を開閉する蓋体と、蓋体を閉じるよう付勢するスプリングと、を備える。この逆止弁の本体の開口は、下向きに開口する給油パイプと同様に下に向いており、本体の開口の外側に蓋体の軸部が配される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−290574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術は、本体の下向きの開口を蓋体によって閉じるためにスプリングを用いており、構造が複雑であり、コストがかかる。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、シンプルな構造でコストを抑えた逆止弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の逆止弁は、車両の燃料タンクに燃料を供給するパイプに取り付けるための筒状の本体部と、本体部の開口を開閉可能な開閉部材と、を備える逆止弁であって、本体部は、流出口側の開口部と、開閉部材を回動可能に支持する支持部と、を有する。開閉部材は、開口部を閉じる蓋部と、支持部に支持される軸部と、蓋部と軸部とを連結するアーム部と、を有する。開口部は、パイプに取り付けられた状態で、水平方向に対して傾斜し、かつ開口部の開口方向は上向きであり、蓋部はアーム部に対して鈍角に折れるよう傾斜する。
【0007】
この態様によると、斜め下向きに傾斜したパイプへ逆止弁を取り付けても、開閉部材が開口部の上に載置された状態となるため、開閉部材の自重により開口部を閉状態に保持でき、スプリングを用いずとも開口部のシール性を高めることができる。また、蓋部がアーム部に対して鈍角に折れるよう傾斜しているため、直角である場合と比べて、開閉部材が開き方向に少し回転すれば開口部を比較的大きく開くことができ、燃料を注入した際に燃料が開閉部材に当たって生じる圧力損失を抑えることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、燃料タンクに燃料を供給するパイプに取り付けるための逆止弁において、シンプルな構造でコストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係る逆止弁の取付状態を説明するための説明図である。
【図2】実施形態に係る逆止弁の斜視図である。
【図3】実施形態に係る逆止弁の側面図である。
【図4】実施形態に係る逆止弁の断面図である。
【図5】実施形態に係る逆止弁の取付状態における開口部の角度について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、実施形態に係る逆止弁10の取付状態を説明するための説明図である。逆止弁10は、車両の燃料タンク2の内部に配され、燃料タンク2に燃料8を供給するパイプ4の先端に取り付けられる。ガソリンなどの流体の燃料8はパイプ4の一端である注入口6から注入され、パイプ4および逆止弁10の内部を通って燃料タンク2に供給される。燃料8を重力により燃料タンク2に供給するため、逆止弁10が取り付けられるパイプ4の先端は下向きに開口する。
【0011】
図2は、実施形態に係る逆止弁10の斜視図を示す。図2(a)は閉状態の逆止弁10を示し、図2(b)は開状態の逆止弁10を示す。また図3は、実施形態に係る逆止弁10の側面図を示す。図3(a)は閉状態の逆止弁10を示し、図3(b)は開状態の逆止弁10を示す。図4は、実施形態に係る逆止弁10の断面図を示す。図4(a)は図2(b)の線分A−Aの断面を示し、図4(b)は図4(a)の線分B−Bの断面を示す。ここで各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0012】
逆止弁10は、筒状の本体部20と、本体部20の開口を開閉可能な開閉部材40と、を備える。本体部20は、流出口側の開口部22と、流入口側の取付部30と、支持部24と、回転規制部26と、段部28と、を有する。
【0013】
開口部22は、筒を斜めに切った切り口であり、楕円形状に形成される。開口部22により形成される開口面の垂線は、本体部20の軸心に対して傾斜して形成される。開口部22とは反対側の取付部30には、パイプ4が挿入される。
【0014】
支持部24は、本体部20の外周面に設けられ、開閉部材40を回動可能に支持する。また支持部24は、本体部20の外周面において、取付部30側の端部から数mm以内の端部近傍に設けられる。支持部24は、楕円形の開口部22の短軸と平行に配され、本体部20の外周面において、取付部30と開口部22の間隔が最短となる位置に設けられる。
【0015】
回転規制部26は、本体部20の外周面に突起状に形成され、開閉部材40が開方向に所定の角度を超えて回転すると、開閉部材40のアーム部44に当接して開閉部材40の開方向への回転を規制する。
【0016】
段部28は、本体部20の内周面に周方向に形成された段差である。図4(a)に示すように段部28は、パイプ4に取り付けた場合にパイプ4の先端に当接して、パイプ4と本体部20の一方の相対移動を止める。
【0017】
開閉部材40は、蓋部42と、アーム部44と、軸部46とを有する。開口部22を閉じるための蓋部42は、開口部22の形状に応じて楕円形に形成される。蓋部42の外径は、開口部22の内径より大きい。なお、閉状態とは、蓋部42が開口部22に接触した状態をいい、開状態とは、蓋部42が開口部22から離間した状態をいう。
【0018】
軸部46は、アーム部44に設けられ、支持部24に回動可能に支持される。アーム部44は、蓋部42と軸部46とを連結する。燃料8が供給されると本体部20の内部から燃料8の圧力により蓋部42の内面が押されて、蓋部42が開方向に回転して開口部22が開く。
【0019】
アーム部44は軸部46を開口部22から所定の間隔以上に離間させる。図4(b)に示すようにアーム部44における本体部20との対向面44aは、対向する本体部20の外周面20aと同じ曲面形状である。これにより、閉状態において、アーム部44の対向面44aと本体部20の外周面20aとが密着し、開閉部材40の軸ぶれを抑えることができ、軸ぶれによりシール性が低下することを抑えることができる。
【0020】
図4(a)に示すように、蓋部42はアーム部44に対して鈍角に折れるよう傾斜する。すなわち蓋部42の内面42aとアーム部44の対向面44aとにより形成される角度が鈍角に形成される。また、開口部22は、パイプ4に取り付けられた状態で、水平方向に対して傾斜し、かつ開口部22の開口方向は上向きである。なお、開口部22の開口方向は、本体部20の内部から開口面を通って外に向かう方向である。
【0021】
これにより、斜め下向きに傾斜したパイプ4へ逆止弁10を取り付けると、開閉部材40が開口部22の上に載置された状態となるため、開閉部材40の自重により閉状態に保持できる。また、ばねを使用せずに閉状態に保持できるため、ばねのへたりもなく、耐久性に優れ、シンプルな構造でコストを抑えることができる。また、蓋部42がアーム部44に対して直角である場合と比べて、蓋部42がアーム部44に対して鈍角に折れるよう傾斜しているため、開閉部材40が開方向に少しの回転角で開口部22を比較的大きく開くことができ、燃料8を注入した際に燃料8が開閉部材40に当たって生じる圧力損失を抑えることができる。
【0022】
図5は、実施形態に係る逆止弁10の取付状態の角度について説明するための説明図である。図5では、水平方向50と、開口部22の長軸を延長した開口線52と、軸部46と開閉部材40の重心Gを結ぶ結線54とを示す。
【0023】
実施形態では、パイプ4および逆止弁10の軸56の水平方向50に対する第1角度58は40度である。図5に示す開口線52と水平方向50とにより形成される角度60は、開口部22および開口面の水平方向50に対する傾斜角度である。開口部22の水平方向50に対する傾斜角度は、30度から85度に設定される。これにより、開閉部材40の自重により閉状態に保持しつつ、開閉部材40に水平方向の力が加わったとしても、開閉部材40を開きにくくすることができる。より好ましくは、開口部22の水平方向50に対する傾斜角度は、46度から72度に設定されてよい。これにより、開閉部材40を閉状態により安定的に保持できる。
【0024】
ところで、車両には水平方向50の加速度が生じ、その加速度により開閉部材40に水平方向50の力が働く。軸部46と開閉部材40の重心を結ぶ結線54が鉛直方向と平行であるとすると、水平方向50に働く力のほとんどが開閉部材40を回転させる方向に作用し、開閉部材40が開いて閉状態に戻る。開閉部材40が閉状態に戻るときに打音が発生することがある。一方、結線54が水平方向50と平行であれば、水平方向50に働く力が生じても、開閉部材40を回転させる方向に作用しなくなる。つまり、結線54の傾斜を水平方向50に近づけるほど、車両に水平方向の加速度が生じても、開閉部材40を開方向に回転しづらくできる。そこで、軸部46と開閉部材40の重心Gを結ぶ結線54の水平方向50に対する傾斜角度62が、0度より大きく、かつ86度以下となるように設定する。これにより、車両に水平方向の加速度が多少生じても開閉部材40を閉状態に保持して、打音が発生する可能性を抑えることができる。なお、傾斜角度62が86度以下であれば、開閉部材40に対して水平方向かつ開き方向に0.08Gの加速度が加わったとしても、開閉部材40を閉状態に保持できる。0.08Gの加速度は、10・15モード燃費の測定試験において通常走行する車両に加わる加速度にもとづく。
【0025】
より好ましくは、軸部46と開閉部材40の重心Gを結ぶ結線54の水平方向50に対する傾斜角度62は、45度から64度となるように設定してよい。これにより、開閉部材40を閉状態により安定的に保持できる。なお、傾斜角度62が、64度以下であれば開閉部材40に対して水平方向かつ開き方向に0.5Gの加速度が加わった場合に、開閉部材40を閉状態に保持できる。0.5Gの加速度は、一般的な急ブレーキ時に車両に加わる。また傾斜角度62が、45度であれば開閉部材40に対して水平方向かつ開き方向に1Gの加速度が加わったとしても、開閉部材40を閉状態に保持でき、それ以上の加速度が車両に加わった場合には開閉部材40による打音を無視してよい。
【0026】
本発明は上述の各実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施例に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施例も本発明の範囲に含まれうる。
【0027】
実施形態では、開閉部材の軸部を蓋部と一体で形成した態様を示したが、その態様に限られない。たとえば、開閉部材の軸部は、蓋部と別体の棒形状で、開閉部材に形成された軸孔に挿入される。
【符号の説明】
【0028】
2 燃料タンク、 4 パイプ、 6 注入口、 8 燃料、 10 逆止弁、 20 本体部、 22 開口部、 24 支持部、 26 回転規制部、 28 段部、 30 取付部、 40 開閉部材、 42 蓋部、 44 アーム部、 46 軸部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の燃料タンクに燃料を供給するパイプに取り付けるための筒状の本体部と、前記本体部の開口を開閉可能な開閉部材と、を備える逆止弁であって、
前記本体部は、流出口側の開口部と、前記開閉部材を回動可能に支持する支持部と、を有し、
前記開閉部材は、前記開口部を閉じる蓋部と、前記支持部に支持される軸部と、前記蓋部と軸部とを連結するアーム部と、を有し、
前記開口部は、前記パイプに取り付けられた状態で、水平方向に対して傾斜し、かつ前記開口部の開口方向は上向きであり、
前記蓋部は前記アーム部に対して鈍角に折れるよう傾斜することを特徴とする逆止弁。
【請求項2】
前記アーム部における前記本体部との対向面は、対向する前記本体部の外周面と同じ形状を有することを特徴とする請求項1に記載の逆止弁。
【請求項3】
前記開口部の水平方向に対する傾斜角度が、30度から85度であることを特徴とする請求項1または2に記載の逆止弁。
【請求項4】
前記軸部と前記開閉部材の重心を結ぶ直線の水平方向に対する傾斜角度が、0度より大きく、かつ86度以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の逆止弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−49398(P2013−49398A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189816(P2011−189816)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000124096)株式会社パイオラックス (331)
【Fターム(参考)】