説明

透かし情報入り印刷物の印刷

【課題】 透かし情報を迅速に検出可能な印刷物を印刷するための印刷データの生成を可能とする。
【解決手段】 画像処理装置は、印刷データを受領する印刷データ受領部と、透かし埋め込み処理部と、を備える。透かし埋め込み処理部は、印刷データに基づき生成される印刷物に所定の情報を表す透かし画像が異なる向きに複数配置されるように、印刷データに透かし画像を表す透かし画像データを埋め込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透かし情報を検出可能な印刷物を印刷する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷物の複製を禁止したり、印刷物の印刷元を特定したりするために、印刷物の印刷に電子透かしの技術を応用できることが知られている(例えば特許文献1)。すなわち、印刷物に、例えば複製禁止を示す情報や印刷元を特定する情報を、透かし情報として埋め込むことが可能である。このような印刷物の印刷では、印刷データに対して透かし情報を表すデータが埋め込まれ、埋め込み後の印刷データに基づき印刷が行われる。このようにして印刷された印刷物からは、画像入力装置による印刷物の読み取りを含む所定の検出処理を行うことにより、透かし情報を検出することができる。
【0003】
【特許文献1】特開2001−218034
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の電子透かしを応用した印刷物の印刷では、透かし情報の検出に時間がかかったり、検出できなかったりする場合があった。この原因の1つとして、画像入力装置による印刷物の読み取りの際に、印刷物の向きが任意に設定されることが挙げられる。すなわち、印刷データに対して埋め込んだ透かし情報を表すデータの向きと読み取り時の印刷物の向きとの関係によっては、印刷物からの透かし情報の検出が困難となる場合がある。
【0005】
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、透かし情報を迅速に検出可能な印刷物を印刷するための印刷データの生成を可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の画像処理装置は、
印刷データを受領する印刷データ受領部と、
前記印刷データに基づき生成される印刷物に所定の情報を表す透かし画像が異なる向きに複数配置されるように、前記印刷データに前記透かし画像を表す透かし画像データを埋め込む、透かし埋め込み処理部と、を備える。
【0007】
この画像処理装置では、印刷物に所定の情報を表す透かし画像が異なる向きに複数配置されるように、印刷データに透かし画像を表す透かし画像データを埋め込むことができるため、透かし情報を迅速に検出可能な印刷物を印刷するための印刷データを生成することができる。
【0008】
上記画像処理装置において、前記透かし埋め込み処理部は、前記印刷物に、向きが約90度ずつ異なる4種類の前記透かし画像が配置されるように、前記透かし画像データを埋め込むとしてもよい。
【0009】
このようにすれば、透かし情報の検出のための印刷物の読み取り時に、読み取られた印刷物上の透かし画像の向きと、印刷データに対する透かし画像データの埋め込みの向きとを、適合させることが容易となる。そのため、透かし情報をより迅速に検出可能な印刷物を印刷するための印刷データを生成することができる。
【0010】
また、上記画像処理装置において、前記透かし埋め込み処理部は、前記透かし画像データを、前記印刷データ中の多値画像を表す多値画像データの部分に埋め込むとしてもよい。
【0011】
このようにすれば、印刷物の画質等への影響を抑制しつつ、透かし情報を迅速に検出可能な印刷物を印刷するための印刷データを生成することができる。
【0012】
また、上記画像処理装置において、前記透かし埋め込み処理部は、1つの前記多値画像上に向きが約90度ずつ異なる4種類の前記透かし画像が配置されるように、前記透かし画像データを埋め込むとしてもよい。
【0013】
このようにすれば、透かし情報の検出の際に、印刷物上の少なくとも1つの多値画像の部分のみを探索すればよいため、透かし情報をより迅速に検出可能な印刷物を印刷するための印刷データを生成することができる。
【0014】
また、上記画像処理装置において、前記透かし埋め込み処理部は、前記多値画像の周縁部に沿って、前記透かし画像の向きが環状となるように前記透かし画像が配置されるように、前記透かし画像データを埋め込むとしてもよい。
【0015】
このようにすれば、透かし情報検出の際に、印刷物の向きに関わらず、印刷物に配置された透かし画像の向きを略一定とすることが可能であるため、透かし情報をより迅速に検出可能な印刷物を印刷するための印刷データを生成することができる。
【0016】
また、上記画像処理装置において、前記透かし埋め込み処理部は、前記印刷データに多値画像データが含まれていないときには、前記印刷データに所定の多値画像データを追加した後に、前記透かし画像データの埋め込みを行うとしてもよい。
【0017】
このようにすれば、印刷データに多値画像データが含まれていないときにも、透かし情報を迅速に検出可能な印刷物を印刷するための印刷データを生成することができる。
【0018】
また、上記画像処理装置において、前記透かし埋め込み処理部は、前記印刷物の四隅に多値画像が配置されるように多値画像データを追加すると共に、4つの多値画像に配置される4つの透かし画像の向きが約90度ずつ異なるように、前記透かし画像データを埋め込むとしてもよい。
【0019】
このようにすれば、四隅に配置された多値画像の少なくとも1つが読み取られた時点で透かし情報の検出を行うことが可能となり、透かし情報を迅速に検出可能な印刷物を印刷するための印刷データを生成することができる。
【0020】
また、上記画像処理装置において、前記透かし埋め込み処理部は、前記4つの多値画像に配置される前記4つの透かし画像について、前記多値画像上の所定の基準点と当該多値画像に配置される前記透かし画像との位置関係が同じとなるように、前記透かし画像データを埋め込むとしてもよい。
【0021】
このようにすれば、多値画像上において透かし画像の配置された位置を容易に推測でき、透かし情報を迅速に検出可能な印刷物を印刷するための印刷データを生成することができる。
【0022】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、画像処理方法および装置、透かし情報埋め込み方法および装置、印刷方法および装置、これらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.実施例:
B.変形例:
【0024】
A.実施例:
図1は、電子透かしを応用した印刷物の印刷の概念を示す説明図である。電子透かしを応用した印刷物の印刷では、本来の印刷対象を印刷するための印刷データに対して、所定の透かし情報を表すデータが埋め込まれ、埋め込み後の印刷データに基づき印刷が行われる。透かし情報としては、複製禁止を示す情報や印刷元を特定する情報等が用いられる。このようにして印刷された印刷物をスキャナ等の画像入力装置を用いて読み取り、生成された電子データに対して所定の検出処理を行うことにより、印刷物から透かし情報を検出することが可能である。そのため、このような技術を用いれば、印刷物の複製を禁止したり、印刷物の印刷元を特定したりすることが可能となる。
【0025】
図1の上段には、透かし情報埋め込み後の印刷用画像データを示している。印刷用画像データは2値画像データであってもよいし、多値画像データであってもよい。また、モノクロ画像データであってもよいし、カラー画像データであってもよい。図1の例では、印刷用画像データはRGBの多値画像データであるとしている。
【0026】
図1に示した印刷用画像データには、所定の透かし情報を表す透かし画像データが埋め込まれている。具体的には、図1上段に示すように、印刷用画像データ中の所定の部分が透かし埋め込み部分として設定され、当該部分中の一部の画素(ハッチングを付して示す)の値が変更されている。この画素値が変更された画素によって、透かし画像データが構成される。画素値の変更方法としては、例えば、当該画素の輝度値を所定値以上(あるいは所定値以下)に変更する方法や、当該画素を特定の色(例えば黄色)に変更する方法が用いられる。なお、透かし画像データを構成する画素数および画素の配置は、印刷物の画質に与える影響や透かし情報の情報量、透かし情報の検出精度等を考慮して設定される。また、透かし埋め込み部分は、図1上段に示すように印刷用画像データの全体に連続的に配置されてもよいし、印刷用画像データ中に分散配置されてもよい。
【0027】
透かし画像データが埋め込まれた印刷用画像データを用いて印刷を行うことにより、透かし情報を表す透かし画像が配置された印刷物を印刷することができる。図1中段には、印刷された印刷物を示している。
【0028】
印刷物からの透かし情報検出の際には、印刷物がスキャナ等の画像入力装置によって読み取られ、透かし検出用の画像データが生成される。図1下段には、生成された透かし検出用画像データを示している。透かし検出用画像データは、例えば、RGBデータとして生成される。
【0029】
その後、透かし検出用画像データを対象に透かし画像データの探索が行われる。透かし画像データの探索は、透かし画像データの埋め込み方法に関する情報や印刷物の印刷条件(例えば印刷解像度)に関する情報に基づき行われる。具体的には、例えば、輝度値が所定値以上に変更された画素によって透かし画像データが構成されている場合には、透かし検出用画像データ上に透かし埋め込み部分に対応した大きさの検出ウィンドウが設定され、検出ウィンドウ内の画素から輝度値が所定値以上の画素が抽出され、抽出された画素の配置が埋め込まれた透かし画像データの配置に合致するか否かが判定される。このような判定が、検出ウィンドウの移動および回転を行いつつ繰り返され、透かし検出用画像データから透かし画像データが検出される。このようにして、印刷物から、埋め込まれた透かし情報を検出することができる。
【0030】
なお、図1に示した電子透かしを応用した印刷物の印刷および印刷物からの透かし情報の検出は、あくまで一例であり、他の態様をとることも可能である。例えば、透かし画像データの埋め込みを周波数成分に対して行うとしてもよいし、複数種類の透かし画像データを埋め込むとしてもよい。
【0031】
図2は、本発明の実施例としての画像処理装置の構成を概略的に示す説明図である。実施例の画像処理装置100は、コンピュータとして構成されている。画像処理装置100は、CPU110と、液晶モニタ等の表示部120と、キーボードやマウス等の操作部130と、インターフェイス部(I/F部)140と、ROMやRAM等の内部記憶装置160と、を備えている。これら画像処理装置100の構成要素は、バス150を介して互いに接続されている。なお、画像処理装置100は、ハードディスクドライブ等の外部記憶装置を備えていてもよい。
【0032】
インターフェイス部140は、複数の入出力端子を備えており、外部機器との間で情報のやり取りを行う。例えば、インターフェイス部140は、ケーブルを介してプリンタ300と接続され、プリンタ300に印刷データを供給する。
【0033】
内部記憶装置160には、印刷処理部180として機能するコンピュータプログラムが格納されている。印刷処理部180は、プリンタ300を制御するプリンタドライバであり、透かし埋め込み処理部182としてのモジュールを含んでいる。CPU110は、内部記憶装置160からこれらのプログラムを読み出して実行することにより、後述の印刷処理を実行する。
【0034】
図3は、画像処理装置100による印刷処理の流れを示すフローチャートである。本実施例の印刷処理は、ユーザの指示に応じて印刷データに透かし情報を表す透かし画像データを埋め込み、埋め込み後の印刷データに基づき印刷を行う処理である。
【0035】
ステップS110では、印刷処理部180(図2)が、印刷指示を受領する。印刷指示は、例えば、ユーザの操作部130の操作に応じて、所定のアプリケーションプログラムから印刷処理部180に送られる。印刷指示には、印刷対象を表す印刷データや印刷枚数を表す情報等が含まれる。
【0036】
ステップS120では、印刷処理部180の透かし埋め込み処理部182(図2)が、印刷データに対して透かし情報を表す透かし画像データを埋め込むか否かを判定する。具体的には、透かし埋め込み処理部182は、ユーザからの操作部130を介した透かし情報埋め込み指示があるか否かを判定する。透かし情報埋め込み指示には、透かし情報の内容や埋め込み方法等が含まれていてもよい。透かし情報の埋め込みを行わない場合には、処理はステップS160に進み、以降通常の印刷処理が行われる。一方、透かし情報の埋め込みを行う場合には、処理はステップS130に進む。
【0037】
ステップS130では、透かし埋め込み処理部182が、印刷指示中の印刷データに、多値画像を表す多値画像データが含まれているか否かを判定する。多値画像データが含まれていると判定された場合には、処理はステップS140に進む。ステップS140では、透かし埋め込み処理部182が、透かし情報埋め込みの対象とする多値画像データを選択する指示をユーザから受領する。例えば、透かし埋め込み処理部182は、印刷されるべき印刷画像を表示部120上に表示させ、ユーザに1つ以上の多値画像を選択させる。なお、印刷データ中に1つの多値画像データのみが含まれている場合には、ステップS140をスキップしてもよい。
【0038】
ステップS150では、透かし埋め込み処理部182が、透かし情報埋め込み対象の多値画像データに対し、透かし情報を表す透かし画像データを埋め込む。このとき、透かし埋め込み処理部182による透かし画像データの埋め込みは、印刷処理によって生成される印刷物に透かし画像が異なる向きに複数配置されるように、行われる。
【0039】
図4は、透かし画像の埋め込み方法の一例を示す説明図である。図4(a)には、透かし画像データが埋め込まれる前の印刷データによる印刷画像PIを示している。図4の例では、印刷画像PIが1つの多値画像MIそのものとなっているため、当該多値画像MIが透かし画像の埋め込み対象として選択される。図4(b)には、多値画像MI上における透かし画像の埋め込み方法を示している。図4(b)中、破線で囲んだ領域(「透かし埋め込み領域WA」と呼ぶ)は、透かし情報を表す透かし画像WIが埋め込まれている領域を示している。また、図4(b)中の矢印は、埋め込まれた透かし画像WIの向きを示している。図4(b)の例では、多値画像MIの上端には右向きの透かし画像WIが埋め込まれており、同様に、多値画像MIの右端には下向きの透かし画像WIが、下端には左向きの透かし画像WIが、左端には上向きの透かし画像WIが、それぞれ埋め込まれている。すなわち、多値画像MIの周縁部に沿って、複数の透かし画像WIが、向きが時計回りの環状となるように埋め込まれている。さらに、多値画像MIの周縁部の透かし埋め込み領域WAの内側には、同様の環状の透かし埋め込み領域WAが設定されている。なお、複数の透かし画像WIを、多値画像MIの周縁部に沿って、向きが反時計回りの環状となるように埋め込むとしてもよい。
【0040】
図5は、透かし画像の埋め込み方法の他の例を示す説明図である。図5(a)には、透かし画像データが埋め込まれる前の印刷データによる印刷画像PIを示している。図5の例では、印刷画像PI中に、多値画像MIと二値画像BI(例えば文字を表す画像)とが混在している。図5(b)には、多値画像MI上における透かし画像の埋め込み方法を示している。図5(b)の例では、印刷画像PI中のすべての多値画像MIが透かし画像の埋め込み対象として選択されている。多値画像MIにおける透かし埋め込み領域WAの設定および透かし画像WIの配置は、図4の例と同様である。
【0041】
一方、ステップS130において、印刷データに多値画像データが含まれていないと判定された場合には、処理はステップS180に進む。ステップS180では、透かし埋め込み処理部182が、印刷画像に対する透かし画像を埋め込むための多値画像の追加が許容されるか否かを判定する。具体的には、透かし埋め込み処理部182は、表示部120を介して多値画像の追加を許容するか否かをユーザに問い合わせ、ユーザから許容の指示があるか否かを判定する。多値画像の追加が許容されたと判定された場合は、処理はステップS190に進む。一方、多値画像の追加が許容されなかったと判定された場合は、処理はステップS160に進み、以降通常の印刷処理が行われる。
【0042】
ステップS190では、透かし埋め込み処理部182が、透かし画像を埋め込むために追加する多値画像を印刷画像上に配置する。図6は、透かし画像の埋め込みのための多値画像の追加方法の一例を示す説明図である。図6(a)には、多値画像を追加する前の印刷データによる印刷画像PIを示している。印刷画像PIには、二値画像BIのみが含まれている。図6(b)には、印刷画像PIへ追加する追加多値画像AIの配置方法を示している。図6(b)の例では、印刷画像PI中の印刷ができない余白領域に追加多値画像AIが配置されている。より具体的には、印刷画像PIの4隅に4つの追加多値画像AIが配置されている。追加多値画像AIの配置をこのような配置とすれば、追加多値画像AIによる印刷画像PIに対する影響を極力小さくすることができる。ただし、追加多値画像AIの配置を他の配置とすることも可能であり、例えば、追加多値画像AIを二値画像BIが配置された領域に配置してもよい。
【0043】
図6(b)には、また、追加多値画像AI上における透かし画像の埋め込み方法を示している。図6(b)の例では、印刷画像PIの左上隅の追加多値画像AIには右向きの透かし画像WIが埋め込まれており、同様に、右上隅の追加多値画像AIには下向きの透かし画像WIが、右下隅の追加多値画像AIには左向きの透かし画像WIが、左下隅の追加多値画像AIには上向きの透かし画像WIが、それぞれ埋め込まれている。
【0044】
なお、追加多値画像AIは、地紋のような見えにくい画像であってもよいし、はっきり視認できる画像であってもよい。
【0045】
ステップS160(図2)では、印刷処理部180(図1)が、印刷データに対してハーフトーン処理等の所定の画像処理を行う。ステップS170では、印刷処理部180が、画像処理後の印刷データをプリンタ300に送信し、プリンタ300が印刷を実行して印刷物を生成する。
【0046】
以上説明したように、本実施例の画像処理装置100では、生成される印刷物に透かし画像が異なる向きに複数配置されるように、印刷データに対する透かし画像データの埋め込みが行われる。そのため、透かし情報検出のための画像入力装置による印刷物の読み取りの際に印刷物の向きが任意に設定された場合、本実施例の印刷処理による印刷物からは、透かし画像が単一の向きに配置されている印刷物と比較して、透かし情報を迅速に検出することができる。すなわち、本実施例の画像処理装置100では、透かし情報を迅速に検出可能な印刷物を印刷するための印刷データを生成することができる。
【0047】
特に、本実施例の画像処理装置100では、生成される印刷物に、約90度ずつ異なる4種類の向きの透かし画像が配置されるように、印刷データに対する透かし画像データの埋め込みが行われる。ここで、印刷物は、一般的には長方形(または正方形)形状であり、画像入力装置による読み取り時の印刷物の向きは、概ね90度ずつ異なる4種類の向きとなる。そのため、画像入力装置による読み取り時に、読み取られた印刷物上の透かし画像の向きと、印刷データに対する透かし画像データの埋め込みの向きとを、適合させることが容易となる。従って、本実施例の画像処理装置100は、透かし情報をより迅速に検出可能な印刷物を印刷するための印刷データを生成することができる。
【0048】
また、本実施例の画像処理装置100では、図4および図5に示すように、印刷画像PI中に多値画像MIが含まれる場合には、多値画像MIの周縁部に沿って、透かし画像WIが配置される。そのため、透かし情報検出時に、多値画像MIの周縁部が読み取られた時点で透かし情報の検出が可能となり、より迅速に透かし情報を検出することができる。
【0049】
また、本実施例の画像処理装置100では、図4および図5に示すように、印刷画像PI中に多値画像MIが含まれる場合には、多値画像MIの周縁部に沿って、複数の透かし画像WIが、向きが環状となるように配置される。そのため、本実施例の画像処理装置100では、透かし画像検出のための読み取り時において、印刷物の向きに関わらず、印刷物に埋め込まれた透かし画像の向きを略一定とすることが可能である。従って、本実施例の画像処理装置100は、透かし情報をさらに迅速に検出可能な印刷物を印刷するための印刷データを生成することができる。
【0050】
また、本実施例の画像処理装置100では、図4および図5に示すように、印刷画像PI中に多値画像MIが含まれる場合には、多値画像MIの周縁部に沿って、複数の透かし画像WIが、向きが環状となるように配置され、さらに、その内側に、同様の環状の透かし埋め込み領域WAが設定されている。そのため、印刷物上に透かし画像を配置する領域を広くとることができ、その分、多くの透かし画像を配置することができる。従って、本実施例の画像処理装置100は、透かし情報を迅速に検出可能な印刷物を印刷するための印刷データを生成することができる。
【0051】
また、本実施例の画像処理装置100では、図6に示すように、印刷画像PI中に多値画像MIが含まれない場合には、印刷画像PIの4隅に追加多値画像AIが配置され、追加多値画像AI上に透かし画像が埋め込まれる。そのため、透かし情報検出時に、追加多値画像AIが読み取られた時点で透かし情報の検出が可能となり、より迅速に透かし情報を検出することができる。
【0052】
B.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0053】
B1.変形例1:
上記実施例における透かし画像の内容や透かし画像の埋め込み方法は、あくまで一例であり、他の内容や方法を用いることも可能である。また、上記実施例における印刷画像PI上の透かし画像の配置は、あくまで一例であり、他の配置を採用することも可能である。図7は、印刷画像PI上の透かし画像WIの配置方法の変形例を示す説明図である。図7(a)には、透かし画像データが埋め込まれる前の印刷データによる印刷画像PIを示している。図7(b)には、多値画像MI上における透かし画像WIの埋め込み方法を示している。図7(b)の例では、多値画像MI上に、透かし画像WIが、透かし画像WIを含む最小正方形の領域に、90度ずつ向きを変更しながら連続的に配置されている。透かし画像WIをこのような配置とすれば、透かし画像WIの高さ(または幅)分の1ラインの画像が読み取られた時点で透かし情報の検出が可能となり、より迅速に透かし情報を検出することができる。
【0054】
なお、図7(b)の例では、透かし画像WIの向きを90度ずつ変更して配置しているが、90度以外の角度(例えば45度や30度など)ずつ変更して配置するとしてもよい。
【0055】
また、図4から図6に示した透かし画像WIの配置についても、他の配置を採用することができる。例えば、図4(b)の例では、必ずしも、多値画像MI上に約90度ずつ異なる4種類の向きの透かし画像WIが配置される必要は無く、多値画像MI上に約180度ずつ異なる2種類の向きの透かし画像WIが配置されるとしてもよい。また、図4(b)の例では、多値画像MIの周縁部に沿って、複数の透かし画像WIが、向きが時計回りの環状となるように埋め込まれていると共に、多値画像MIの周縁部の透かし埋め込み領域WAの内側に、同様の環状の透かし埋め込み領域WAが設定されているが、さらに内側に同様の透かし埋め込み領域WAを設定してもよいし、透かし画像WIを多値画像MIの周縁部のみに配置してもよい。
【0056】
B2.変形例2:
上記実施例では、透かし画像WIを多値画像MI上に配置しているが、透かし画像WIを二値画像BI上に配置することも可能である。ただし、印刷物の画質に与える影響等から、透かし画像WIを多値画像MI上に配置するのが好ましい。
【0057】
B3.変形例3:
上記実施例における画像処理装置100の構成は、あくまで一例であり、画像処理装置100の構成を他の構成とすることも可能である。また、上記実施例では、印刷処理部180が画像処理装置100としてのパソコンに含まれているが、印刷処理部180がプリンタ300に含まれ、プリンタ300が画像処理装置として機能するとしてもよい。さらに、上記実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】電子透かしを応用した印刷物の印刷の概念を示す説明図。
【図2】本発明の実施例としての画像処理装置の構成を概略的に示す説明図。
【図3】画像処理装置による印刷処理の流れを示すフローチャート。
【図4】透かし画像の埋め込み方法の一例を示す説明図。
【図5】透かし画像の埋め込み方法の他の例を示す説明図。
【図6】透かし画像の埋め込みのための多値画像の追加方法の一例を示す説明図。
【図7】印刷画像上の透かし画像の配置方法の変形例を示す説明図。
【符号の説明】
【0059】
100...画像処理装置
110...CPU
120...表示部
130...操作部
140...インターフェイス部
150...バス
160...内部記憶装置
180...印刷処理部
182...透かし埋め込み処理部
300...プリンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像処理装置であって、
印刷データを受領する印刷データ受領部と、
前記印刷データに基づき生成される印刷物に所定の情報を表す透かし画像が異なる向きに複数配置されるように、前記印刷データに前記透かし画像を表す透かし画像データを埋め込む、透かし埋め込み処理部と、を備える、画像処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像処理装置であって、
前記透かし埋め込み処理部は、前記印刷物に、向きが約90度ずつ異なる4種類の前記透かし画像が配置されるように、前記透かし画像データを埋め込む、画像処理装置。
【請求項3】
請求項2記載の画像処理装置であって、
前記透かし埋め込み処理部は、前記透かし画像データを、前記印刷データ中の多値画像を表す多値画像データの部分に埋め込む、画像処理装置。
【請求項4】
請求項3記載の画像処理装置であって、
前記透かし埋め込み処理部は、1つの前記多値画像上に向きが約90度ずつ異なる4種類の前記透かし画像が配置されるように、前記透かし画像データを埋め込む、画像処理装置。
【請求項5】
請求項4記載の画像処理装置であって、
前記透かし埋め込み処理部は、前記多値画像の周縁部に沿って、前記透かし画像の向きが環状となるように前記透かし画像が配置されるように、前記透かし画像データを埋め込む、画像処理装置。
【請求項6】
請求項3記載の画像処理装置であって、
前記透かし埋め込み処理部は、前記印刷データに多値画像データが含まれていないときには、前記印刷データに所定の多値画像データを追加した後に、前記透かし画像データの埋め込みを行う、画像処理装置。
【請求項7】
請求項6記載の画像処理装置であって、
前記透かし埋め込み処理部は、前記印刷物の四隅に多値画像が配置されるように多値画像データを追加すると共に、4つの多値画像に配置される4つの透かし画像の向きが約90度ずつ異なるように、前記透かし画像データを埋め込む、画像処理装置。
【請求項8】
請求項7記載の画像処理装置であって、
前記透かし埋め込み処理部は、前記4つの多値画像に配置される前記4つの透かし画像について、前記多値画像上の所定の基準点と当該多値画像に配置される前記透かし画像との位置関係が同じとなるように、前記透かし画像データを埋め込む、画像処理装置。
【請求項9】
画像処理方法であって、
(a)印刷データを受領する工程と、
(b)前記印刷データに基づき生成される印刷物に所定の情報を表す透かし画像が異なる向きに複数配置されるように、前記印刷データに前記透かし画像を表す透かし画像データを埋め込む工程と、を備える、画像処理方法。
【請求項10】
画像処理プログラムであって、
印刷データを受領する機能と、
前記印刷データに基づき生成される印刷物に所定の情報を表す透かし画像が異なる向きに複数配置されるように、前記印刷データに前記透かし画像を表す透かし画像データを埋め込む機能と、を、コンピュータに実現させることを特徴とする、画像処理プログラム。
【請求項11】
印刷装置であって、
印刷データを受領する印刷データ受領部と、
前記印刷データに基づき生成される印刷物に所定の情報を表す透かし画像が異なる向きに複数配置されるように、前記印刷データに前記透かし画像を表す透かし画像データを埋め込む、透かし埋め込み処理部と、
前記透かし画像データ埋め込み後の印刷データに基づき印刷物を印刷する印刷部と、を備える、印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−28256(P2007−28256A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−208225(P2005−208225)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】