説明

透明ガスバリア性部材及びこれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】 有機EL素子の封止材として要求されるガスバリア性を十分に有すると共に、フレキシブル性を有する製造容易な透明ガスバリア性部材及びこれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【解決手段】 本発明に係る透明ガスバリア性部材1は、厚み10μm〜70μmの極薄板ガラス11と、当該極薄板ガラス11の少なくとも一方の面上に貼着された透明樹脂層12とを備え、前記極薄板ガラス11と前記透明樹脂層12とが20μm以下の厚みの透明粘着剤又は20μm以下の厚みの透明接着剤を介して貼着され、水蒸気透過度が0.005g/m2/day以下である。本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、前記透明ガスバリア性部材1を封止材として用いている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、適宜有機EL素子という)の封止材として用いるのに好適な透明ガスバリア性部材及びこれを用いた有機EL素子に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネッセンス(EL)素子とは、固体蛍光性物質(発光体)の電界発光(エレクトロルミネッセンス)といわれる現象を利用した発光デバイスであり、無機系材料を発光体として用いた無機EL素子が実用化され、液晶ディスプレイのバックライトやフラットディスプレイ等への応用展開がなされているのが現状である。このような状況下、簡素な工程で且つ低コストでの作製が可能であると期待されている有機EL素子の実用化を目指した研究開発が盛んに行われており、一部では実用化に至るまでの発展を遂げている。
【0003】
しかしながら、有機EL素子に使用される発光層(有機発光体)や、電子・正孔輸送材料等の有機固体は、一般的に水分や酸素に対して極めて不安定であり、有機EL素子内に存在する水分や酸素は勿論のこと、素子の外部から侵入する水分や酸素によって劣化し、いわゆるダークスポットの成長や光透過度の低下の他、発光効率の著しい低下を引き起こしてしまうという問題がある。さらには、電子注入効率の観点から使用されるMg、Ca、Liなどの仕事関数の低い金属からなる陰極は、有機固体と同様に、水分や酸素に対する安定性に乏しい。従って、有機EL素子の信頼性を高め、寿命を保証するためには、水分や酸素に対してより安定性を有する有機材料を開発しなければならない他、外部環境からの水分や酸素の侵入を阻止すべく、有機EL素子を封止しなければならない。
【0004】
有機EL素子の封止方法については、従来より多数の提案がなされてきた。この内、現在すでに実用化されている方法としては、有機EL素子を吸湿剤と共に金属封止する方法や、背面電極(陰極)の外側にガラス板を配置し、当該ガラス板と背面電極との間にシリコーンオイルを封入する方法などが知られている。
【0005】
特に、有機EL素子を封止するためのフィルムとしては、ポリクロロトリフルオロエチレン(PTCFE)等の高分子フィルムの他、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法(PVD法)や、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(CVD法)を利用して、プラスチックフィルムの表面上に、SiO2、Al23、MgO、SiN、SiOx、DLC(Diamond Like Carbon)等の無機酸化物膜を形成した透明なガスバリア性フィルムなどが検討されている。
【0006】
ここで、一般の食品包装用として使用される汎用的な有機ポリマーの酸素透過度は数十〜数百cc/m2/day、水蒸気透過度は数十〜数百g/m2/dayであり、前述したPTCFEなど特にガスバリア性を強化した分子構造を有する有機ポリマーの酸素透過度は数cc/m2/day、水蒸気透過度は数g/m2/dayである。
【0007】
一方、前述したPVD法やCVD法を利用して、プラスチックフィルムの表面上に無機酸化物膜を形成したガスバリア性フィルムは、有機物に比べて極めて緻密な無機薄膜が形成されているため、一般的に良好なガスバリア性を示す。例えば、厚み30μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に厚み100nmのSiOx膜が蒸着されたガスバリア性フィルムは、蒸着膜が良好な場合、酸素透過度は1cc/m2/day、水蒸気透過度は1g/m2/day程度である。また、特開平11−80934号公報には、プラスチック基材の表面に蒸着した酸化アルミニウム膜表面に、酸素ガスとアルゴンガスとの混合ガスによるプラズマ処理を施し、水酸基を導入して、酸化アルミニウムと水酸化アルミニウムとからなる複合薄膜を設けた酸化アルミニウム蒸着複合フィルムについて、1.2cc/m2/dayの酸素透過度、2.0g/m2/dayの水蒸気透過度がそれぞれ得られることが開示されている。さらに、特開平11−322979号公報には、ポリエチレンテレフタレートフィルム表面を酸素ガスでプラズマ処理した後に、無機酸化物の蒸着膜を形成したフィルムについて、0.9cc/m2/dayの酸素透過度、0.8g/m2/dayの水蒸気透過度がそれぞれ得られることが開示されている。
【0008】
しかしながら、有機EL素子の封止材としてガスバリア性フィルムを使用する場合に要求される性能は、前述した性能(酸素透過度、水蒸気透過度)をはるかに超えるものである。例えば、有機EL素子の寿命として3000日を保証するために必要な水蒸気透過度は10-4g/m2/day以下であると推算されている。この値は、例えば、水蒸気透過度の測定方法として規格化されたカップ法(JIS Z 0208、測定限界約1g/m2/day)や、モコン法(JIS K 7129B、測定限界約10-2g/m2/day)では評価できないほど高いガスバリア性を要求していることになる。従って、有機EL素子用ガスバリア性フィルムのガスバリア性は、実際に有機EL素子にガスバリア性フィルムを実装(ガスバリア性フィルムを封止材として使用)し、発光輝度の変化を観察すること等により評価する必要があるほど、高い性能が要求されている。
【0009】
換言すれば、現状の有機EL素子に用いられる発光体材料やキャリア輸送材料には、水分や酸素に対する安定性はほとんどなく、実用可能な長時間の寿命を保証するには、ガラス板や金属板などのように、実質的に酸素透過度及び水蒸気透過度が零に近いガスバリア性部材で封止する必要がある。
【0010】
斯かるガラス板や金属板の代替手段として、例えば、前述した無機酸化物膜を形成したプラスチックフィルムを数枚重ね合わせて使用することも考えられるが、前述した要求性能(酸素透過度及び水蒸気透過度)には到底到達し得ない。また、通常の高分子フィルムを用いて有機EL素子に十分なガスバリア性を実現するには、単純計算で10cm程度もの厚みにしなければならず、現実性が全くないものである。さらに、前記無機酸化物膜を蒸着膜とした場合、膜厚の増加に伴ってガスバリア性は向上するものの、100nm以上になるとガスバリア性は飽和し、それ以上向上しなくなるばかりか、厚膜になると膜の内部応力が大きくなるため、微小クラックが発生して却ってガスバリア性が低下してしまうことさえある。
【0011】
一方、フレキシブル性を有するプラスチック基板上に発光体等の有機EL素子本体を形成し、電子ペーパーのように折り曲げ可能にしたフレキシブルディスプレイが大きな注目を浴びている。この場合、有機EL素子を構成する封止材(基板も含む)はフレキシブル性を有する必要がある。従って、有機EL素子をフレキシブルディスプレイに適用する場合等には、有機EL素子の封止材として、極めて高いガスバリア性を有すると共にフレキシブル性を有する透明部材が必要となる。
【0012】
以上に説明したように、ガラス板や金属板と同様に酸素透過度や水蒸気透過度が実質的に零であると共に、フレキシブル性をも兼ね備えた透明ガスバリア部材は実現されていない。現状の有機EL素子は、専ら金属板やガラス板によって封止されているが、フレキシブル性、封止工程の煩雑さ、量産性などの点で問題を有するため、これらの欠点を有さず有機EL素子の封止に用い得る透明ガスバリア性部材の開発が切望されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、斯かる従来技術の問題を解決するべくなされたものであり、有機EL素子の封止材として要求されるガスバリア性を十分に有すると共に、フレキシブル性を有する製造容易な透明ガスバリア性部材及びこれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の発明者らは、前記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、厚み10μm〜70μmの極薄板ガラスの少なくとも一方の面上に透明樹脂層を貼着することにより、ガラス板や金属板と同等のガスバリア性を有し、しかもフレキシブル性及び透明性を兼ね備えたガスバリア性部材が得られることを見出し、本発明を完成させたものである。以下、より具体的に説明する。
【0015】
「薄板ガラス」と一般的に称されるガラスは、例えば、顕微鏡観察用のカバーガラスなどであり、その厚みは薄いものであっても100μm程度である。このような厚みの場合、フレキシブル性をほとんど有さず、僅かな曲げに対しても容易に破損してしまう。
【0016】
しかしながら、厚み10μm〜70μmの範囲までガラスの厚みが薄くなる(本発明では、前述したカバーガラスなどの薄板ガラスと区別するべく、当該厚みを有するガラスを極薄板ガラスと称する)と、フレキシブル性を有するようになることを本発明の発明者らは見出した。図6は、厚み30μmの極薄板ガラスの外観写真である。図6に示すように、極薄板ガラスは十分なフレキシブル性を有している。また、前記厚みを有する極薄板ガラスのガスバリア性は通常の厚板ガラスと同等である。なお、厚みが10μmより薄いガラスは、基本的に製造が困難である上、あまりに薄くしすぎると、ガスバリア性が低下してしまう。逆に、厚みが70μmより厚いガラスは、十分なフレキシブル性を有さないため、前記範囲の厚みを有する極薄板ガラスを適用する必要がある。
【0017】
ところが、極薄板ガラス単独では、機械的強度が低いという点やこれに起因したハンドリング性に問題がある。そこで、前述したように、極薄板ガラスの少なくとも一方の面上に透明樹脂層を貼着することにより、極薄板ガラス単独の場合に生じていた機械的強度やハンドリング性の問題が解消されると共に、有機EL素子の封止材として要求されるガスバリア性を十分に有し、フレキシブル性や透明性を具備する製造容易な透明ガスバリア性部材を提供し得ることに想到した。
【0018】
すなわち、本発明は、請求項1に記載の如く、厚み10μm〜70μmの極薄板ガラスと、当該極薄板ガラスの少なくとも一方の面上に貼着された透明樹脂層とを備え、前記極薄板ガラスと前記透明樹脂層とが20μm以下の厚みの透明粘着剤又は20μm以下の厚みの透明接着剤を介して貼着され、水蒸気透過度が0.005g/m2/day以下であることを特徴とする透明ガスバリア性部材を提供するものである。
【0019】
なお、本発明に関連する発明として、例えば、特開平7−287218号公報には、2枚のガラス板の間に耐熱性樹脂層を挟持した透明導電性基板が開示されている。しかしながら、前記公報に記載された発明で対象としているガラスの厚みは1mm程度の厚板ガラスであり、フレキシブル性という観点は全く考慮されておらず、むしろ基板の反りを低減することが課題とされている点で、本発明とは異なる技術的思想である。
【0020】
また、特開平7−65950号公報には、合成樹脂フィルムと透明ガラス薄膜とを積層した構造を防湿フィルムとして用いた分散型EL素子に関する発明が開示されている。しかしながら、ここでいう透明ガラス薄膜とは、合成樹脂フィルム上にPVD法やCVD法等によって成膜した薄膜を対象としたものであり、好ましい厚みとして10〜500nmの薄膜ガラス層を形成すると記載されている。さらに、特開2000−208250号公報には、防湿シートの表面に、薄い透明なガラス質皮膜を設けたEL素子に関する発明が開示されている。しかしながら、ここでいうガラス質皮膜も、PVD法やCVD法等によって成膜した厚み50nm〜1000nmの薄膜を対象としたものである。従って、これらの発明は、極薄板ガラスの機械的強度やハンドリング性を改善するべく、当該極薄板ガラスに透明樹脂層(極薄板ガラスとは別個に作成可能)を貼着するという本発明の技術的思想とは、ガラスの厚み範囲を含めて本質的に異なるものである。
【0021】
また、前記透明樹脂層と前記極薄板ガラスとは、透明粘着剤又は透明接着剤を介して貼着され、これにより極めて簡易に透明ガスバリア性部材を作成可能である。
【0022】
前記透明樹脂層は、請求項2に記載の如く、厚み10μm〜200μmの透明樹脂フィルムとすることができ、有機EL素子の封止材等として好適に利用することができる。或いは、前記透明樹脂層は、請求項3に記載の如く、厚み200μm〜2000μmの透明プラスチック基板とすることも可能であり、これにより、プラスチック基板の特徴である薄型で軽量であるという特徴を損なうことなく、高いガスバリア性を付与することができ、液晶表示装置のプラスチックセル等として好適に利用することができる。
【0023】
前記透明ガスバリア性部材によれば、請求項4に記載の如く、酸素透過度及び水蒸気透過度が、厚み0.2mm以上のガラス板と実質的に同等とすることが可能である。
【0024】
また、本発明は、請求項5に記載の如く、前記透明ガスバリア性部材を封止材として用いたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子としても提供される。また、請求項6に記載の如く、前記透明ガスバリア性部材の輝度低下率が25%以下であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子としても提供される。
【0025】
請求項5に係る発明によれば、有機エレクトロルミネッセンス素子の封止材として、本発明に係る透明ガスバリア性部材を用いるため、従来のガスバリア性フィルムでは到底満足し得ない高いガスバリア性が得られ、容易に素子の長寿命化を図ることが可能である。また、本発明に係る透明ガスバリア性部材はフレキシブル性を有するため、これを封止材(基板も含む)として用いた有機エレクトロルミネッセンス素子もフレキシブル性を有し、フレキシブルディスプレイ等への適用が可能である。
【発明の効果】
【0026】
以上に説明したように、本発明によれば、有機EL素子の封止材として要求されるガスバリア性を十分に有し、フレキシブル性や透明性を具備する製造容易な透明ガスバリア部材が提供される。従って、当該透明ガスバリア性部材を有機エレクトロルミネッセンス素子の封止材として用いれば、容易に素子の長寿命化を図ることが可能である。また、本発明に係る透明ガスバリア性部材はフレキシブル性を有するため、これを封止材(基板も含む)として用いた有機エレクトロルミネッセンス素子もフレキシブル性を有し、フレキシブルディスプレイ等への適用が可能であるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態に係る透明ガスバリア性部材の概略構成を示す縦断面図である。図1に示すように、本実施形態に係る透明ガスバリア性部材1は、極薄板ガラス11と、極薄板ガラス11の一方の面上に貼着された透明樹脂層12とを備えている。
【0029】
極薄板ガラス11の厚みは、10〜70μmとされており、好ましくは20〜50μmとされる。厚みが10μmより薄いガラスは、基本的に製造が困難である上、あまりに薄くしすぎると、ガスバリア性が低下してしまうからである。逆に、厚みが70μmより厚いガラスは、十分なフレキシブル性を有さず、カバーガラスやスライドガラス等と同等になってしまうからである。なお、極薄板ガラス11の材質は、特に制限されるものではなく、無水珪酸を代表とする通常の板ガラス等と同じ材料で形成することができる。
【0030】
また、透明樹脂層12の厚みに関しては、透明ガスバリア性部材1全体としてある程度のフレキシブル性を有する限りにおいて、特に制限されるものではない。より具体的には、透明樹脂層12として、厚み10μm〜200μm程度の透明樹脂フィルムを適用することも可能であるし、厚み200μm〜2000μm程度の透明プラスチック基板を適用することも可能である。通常、プラスチック基板は、その厚みが1mm程度と厚くても、ガスバリア性に乏しく、例えば、液晶表示装置に用いられるプラスチックセルに適用する場合には、プラスチック基板とは別に、適当な防湿層を形成する必要が生じるほどである。しかしながら、本実施形態に係る透明樹脂層12として透明プラスチック基板を適用することにより形成される透明ガスバリア性部材1は、それ単独でガラス板と同等のガスバリア性を有することが可能である。
【0031】
透明樹脂層12の材料は、ある程度透明性を有し、フレキシブル性を有する限りにおいて、特に制限されるものではない。また、ガスバリア性は、専ら極薄板ガラス11が担うため、ガスバリア性の高いものを透明樹脂層12の材料として選択する必要もない。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリエーテルエーテルケトン、エポキシ樹脂などを透明樹脂層12の材料として選択することができるが、何らこれらに限定されるものではない。
【0032】
また、極薄板ガラス11と透明樹脂層12との貼着方法は、特に制限されるものではなく、熱的に両者を融着させたり、ダイスコーティングなどによって得た透明樹脂層12を極薄板ガラス11に直接形成する方法の他、透明粘着剤や透明接着剤を介して両者を貼り合わせることも可能である。透明粘着剤や透明接着剤の厚みについても特に制限はなく、1μm〜1mm程度まで、用途に合わせ適宜選択すればよい。なお、透明粘着剤を用いる場合には、その弾性率や厚みによって、適当なクッション性や衝撃緩和性を付与することが可能である。
【0033】
本実施形態に係る透明ガスバリア性部材1は、フレキシブル性を有するため、ロール・トゥ・ロール方式により、極薄板ガラス11と、透明樹脂層12としての透明樹脂フィルムとを貼着させることもできるし、作成した透明ガスバリア性部材1をロール状に巻き取って提供することもできるため、生産効率が高くなり、取り扱いも容易になるという利点を有する。また、いわゆるトムソン式打ち抜き機等を適用することにより、透明ガスバリア性部材1を所望のサイズに容易に切り出すことが可能である。
【0034】
以上に説明したように、本実施形態に係る透明ガスバリア性部材1は、極薄板ガラス11に透明樹脂層12を貼着するのみで容易に製造可能であると共に、極薄板ガラス11の優れたガスバリア性とフレキシブル性とを保持したまま、透明樹脂層12によって機械的強度が改善され、ハンドリングが容易になるという極めて優れた利点を有する。
【0035】
従って、本実施形態に係る透明ガスバリア性部材1は、有機EL素子の封止材として好適に使用できる。より具体的には、有機EL素子本体(発光体等)を透明ガスバリア性部材1で覆い、ガスバリア性を有する接着剤を用いたり、熱ラミネート法等の方法によって、透明ガスバリア性部材1の周縁を気密的に接合接着することで、有機EL素子本体を片面又は両面から封止すれば良い。このように、封止材として本実施形態に係る透明ガスバリア性部材1を適用した有機EL素子は、水分や酸素によって劣化することがなく、いわゆるダークスポット等の成長が抑えられ、長寿命化を達成することが可能である。さらに、本実施形態に係る透明ガスバリア性部材1を封止材として用いた有機EL素子は、ステンレス等の金属板や通常のガラス板による封止構造に比べ、軽量化、薄型化されると共に、有機EL素子の基板にも透明ガスバリア性部材1を適用することにより、フレキシブルディスプレイ等への適用が可能な有機EL素子をも提供可能である。
【0036】
無論、本実施形態に係る透明ガスバリア性部材1は、有機EL素子の封止材用途に限定されるものではなく、例えば、液晶表示装置用のプラスチックセルとして利用することも可能である。
【0037】
なお、本発明に係る透明ガスバリア性部材は、図1に示す形態に限るものではなく、図2に示すように、極薄板ガラス11と、極薄板ガラス11の両方の面上にそれぞれ貼着された2つの透明樹脂層12とを備える透明ガスバリア性部材2とすることも可能である。図2に示す透明ガスバリア性部材2によれば、図1に示す形態よりも、カールの発生を低減することが可能である。
【0038】
また、各種用途に応じて、図1や図2に示した構成に対し、更にその外部又は内部に他の機能を有する層を付加したり、材料を添加したりすることも可能である。また、透明樹脂層12自体が、前記付加したい他の機能を有するように構成することも可能である。なお、透明ガスバリア性部材1又は2で有機EL素子を封止した後に、他の機能を有する層を貼着することも可能である。
【0039】
より具体的に説明すれば、例えば、有機EL素子の封止材として適用する場合に、背面金属電極における外光反射を抑制するべく、最表面に円偏光フィルタを貼着することが可能である。また、有機EL素子の封止材として適用する場合に、有機EL素子本体に対して外側に位置することになる透明樹脂層12自体を円偏光フィルタとすることも可能である。さらには、封止した後に円偏光フィルタを形成することも可能である。その他、有機EL素子で発光した光の外部への取り出し効率を向上させるための光拡散層、各種レンズフィルム、色純度の改善や色調変換のための各種カラーフィルター、電極、保護膜などを付加することも可能である。また、最表面やその他の部分に、PVD法やCVD法を用いた薄膜層を形成しても良い。すなわち、本発明に係る透明ガスバリア性部材は、極薄板ガラスと透明樹脂層とが貼着によって一体化されたものである限り、その構成は全く任意である。
【実施例】
【0040】
以下、実施例及び比較例を示すことにより、本発明の特徴をより一層明らかにする。
【0041】
(実施例1)
両面セパレータで挟持された厚み20μmのアクリル系透明粘着剤の一方のセパレータを剥離し、露出した粘着剤面を、厚み38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、ゴムローラを用いて貼着した。次に、前記ポリエチレンテレフタレートフィルム/透明粘着剤からなる複合フィルムの他方のセパレータを剥離し、露出した粘着剤面と、厚み30μmの極薄板ガラス(松浪ガラス社製、0100ガラス)とを、前記と同様にゴムローラを用いて貼着し、透明ガスバリア性フィルムを作成した。図3は、本実施例によって作成した透明ガスバリア性フィルムの概略構成を示す縦断面図であり、図4は、本実施例によって作成した透明ガスバリア性フィルムの外観写真である。
【0042】
(実施例2)
実施例1と同様の方法を用いて、極薄板ガラスの両面に、厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム/透明粘着剤からなる複合フィルムを貼着し、図5に概略構成を示す透明ガスバリア性フィルムを作成した。
【0043】
(比較例1)
厚み75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、品番0400)を、そのまま本比較例に係る透明ガスバリア性フィルムとした。
【0044】
(比較例2)
厚み1.3mmの青板ガラス(松浪ガラス社製、品番S3233)を、そのまま本比較例に係る透明ガスバリア性基板とした。
【0045】
(比較例3)
比較例1のポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の面上に、以下の手順により厚み80nmのAl23薄膜を成膜した。すなわち、バッチ式スパッタリング装置(ULVAC社製、型名SMH−2306RE)に、Alメタルターゲットを設置し、基板ホルダーに10cm×10cmの前記ポリエチレンテレフタレートフィルムを装着して、1×10-3Paになるまで真空排気した。次に、Arガスを30SCCM導入し、メインバルブの開閉度を調整して圧力を0.4Paに調整した。次に、パルスDC電源(ENI社製、型名RPG−100)を用いて、300Wのパルス電力(周波数150kHz、正電圧パルス幅1696ns)をAlターゲットに印加し、プレスパッタを実施した。その後、4SCCMの酸素ガスを導入し、再度圧力を0.4Paに調整してから反応性パルスDCスパッタリング法によって厚み80nmのAl23薄膜を成膜し、本比較例に係る透明ガスバリア性フィルムとした。なお、プラズマによる熱の影響でポリエチレンテレフタレートフィルムがダメージを受けるのを回避するべく、基板(ポリエチレンテレフタレートフィルム)を回転させながら成膜することにした。
【0046】
(比較例4)
比較例3と同様の方法を用いて、厚み75μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の面上に、厚み200nmのAl23薄膜を成膜し、本比較例に係る透明ガスバリア性フィルムとした。
【0047】
(比較例5)
比較例3と同様の方法を用いて、厚み75μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の面上に、厚み500nmのAl23薄膜を成膜し、本比較例に係る透明ガスバリア性フィルムとした。
【0048】
(比較例6)
比較例1のポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の面上に、以下の手順により厚み80nmのITO薄膜を成膜した。すなわち、バッチ式スパッタリング装置(ULVAC社製、型名SMH−2306RE)に、ITOセラミックターゲット(In23:SnO2=90重量%:10重量%)を設置し、基板ホルダーに10cm×10cmの前記ポリエチレンテレフタレートフィルムを装着して、1×10-3Paになるまで真空排気した。次に、Arガスを30SCCM、酸素ガスを1SCCM導入し、メインバルブの開閉度を調整して圧力を0.4Paに調整した。次に、DC電源(ENI社製、型名DCG−100)を用いて、300Wの直流電力をITOターゲットに印加し、十分にプレスバッタを実施した後、DCスパッタリング法によって厚み80nmのITO薄膜を成膜し、本比較例に係る透明ガスバリア性フィルムとした。なお、プラズマによる熱の影響でポリエチレンテレフタレートフィルムがダメージを受けるのを回避するべく、基板(ポリエチレンテレフタレートフィルム)を回転させながら成膜することにした。
【0049】
(比較例7)
比較例6と同様の方法を用いて、厚み75μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の面上に、厚み200nmのITO薄膜を成膜し、本比較例に係る透明ガスバリア性フィルムとした。
【0050】
(比較例8)
比較例6と同様の方法を用いて、厚み75μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の面上に、厚み500nmのITO薄膜を成膜し、本比較例に係る透明ガスバリア性フィルムとした。
【0051】
(比較例9)
比較例1のポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)の一方の面上に、比較例3及び比較例6と同様の方法を順次用いて、PET(75μm)/Al23薄膜(20nm)/ITO薄膜(20nm)/Al23薄膜(20nm)/ITO薄膜(20nm)の多層積層膜を成膜し、本比較例に係る透明ガスバリア性フィルムとした。
【0052】
(比較例10)
高真空蒸着装置(ULVAC社製、型名EX−550)に、粉砕したSiO2ペレットを設置し、1×10-3Paになるまで真空排気した後、比較例1のポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の面上に、電子ビーム真空蒸着法によって厚み500nmのSiO2薄膜を成膜し、本比較例に係る透明ガスバリア性フィルムとした。
【0053】
(比較例11)
比較例3で作成した透明ガスバリア性フィルムを3枚用意し、Al23薄膜面とポリエチレンテレフタレートフィルム面との間にアクリル系透明粘着剤を用い、前記3枚のフィルムを重ねて貼着することにより、本比較例に係る透明ガスバリア性フィルムを形成した。
【0054】
(実施例1〜実施例2、比較例1〜比較例11の評価)
以上に説明した実施例1〜実施例2及び比較例1〜比較例11の各透明ガスバリア性部材について、以下に説明する方法で、水蒸気透過度(透湿度)及び可視光線透過率を評価した。
【0055】
(1)透湿度の測定方法
透湿度の測定には、いわゆる小袋法を用いた。以下、具体的に説明する。住友化学工業(株)製コポリエステル組成物VC−40を厚み50μmに成膜したフィルムを、ホットメルトフィルムとして用いた。まず最初に、測定する透明ガスバリア性部材と前記ホットメルトフィルムとを、ロール式ラミネータによって貼り合せた。なお、貼り合せ条件は、透明ガスバリア性部材側のロール温度のみ110℃に加熱し、線圧約1.1kg/cm、速度0.35m/分とした。
【0056】
次に、上記のようにして作成した貼り合せフィルムを一辺9cmの正方形に切り出し、切り出した2枚の貼合せフィルムのホットメルトフィルム側が対向するようにして3辺をそれぞれヒートシールした。なお、ヒートシールには、富士インパルスシーラー(株)製FI−200−10Wを用い、シール幅は1cmとした。次に、ヒートシールされていない1辺を通じて、十分に乾燥したシリカゲルを約20g内部に充填し、内部に空気が極力入らないようにして、前記1辺もヒートシールし、測定用小袋を作成した。なお、ヒートシールの時間は、ホットメルトフィルムが溶融接着するのに必要な最低限の時間とした。有効な測定面積は、7cm×7cm×2(両面)で98cm2となる。
【0057】
以上に説明した測定用小袋を、各実施例及び比較例の透明ガスバリア性部材について3つずつ作成し、45℃90%RHに保った恒温恒湿器中に保存し、24時間〜48時間毎に小袋の質量を測定した。なお、初期には透明ガスバリア性部材への吸湿が生じるため、5日〜10日程度のコンディショニング期間を取り、当該期間経過後の質量変化の傾きから1m2、1日当たりの透湿度(g/m2/day)を計算した。本測定方法による測定限界は、電子天秤の精度にも依存するが、およそ0.005g/m2/day程度であり、透湿度がそれ以下になると、質量変化の傾きを求めること自体困難である。
【0058】
なお、比較例2の透明ガスバリア性部材(ガラス板)については、厚み1cmのガラス角材を別途用意し、当該ガラス角材と透明ガスバリア性部材との間に1cmのスペースを設けてシリカゲルを充填した。封止には、前記と同様にホットメルトフィルムを用いた。
【0059】
(2)可視光線透過率の測定方法
大塚電子社製の瞬間マルチ測光システム(MCPD−3000)を用い、波長380〜780nmの可視光線透過率を測定した。この測定値の内、波長550nmにおける透過率を可視光線透過率として評価した。
【0060】
以上に説明した透湿度及び可視光線透過率の評価結果を表1に示す。
【表1】

【0061】
表1に示すように、実施例1及び実施例2の透明ガスバリア性フィルムは、通常のポリエチレンテレフタレートフィルム(比較例1)と同等の可視光線透過率を示すと共に、透湿度は、比較例2の透明ガスバリア性部材(ガラス板)と同様に、小袋法では評価できないほど小さく、ガスバリア性に優れたものであることが分かった。しかも、フィルムとして取り扱う上で、十分なフレキシブル性を有していた(図4参照)。
【0062】
これに対し、スパッタリング法を用いて無機膜を成膜した比較例3〜比較例9の透明ガスバリア性フィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルム単体(比較例2)に比べると透湿度が大きく低減しているものの、実施例1及び実施例2の透明ガスバリア性フィルムに比べると、十分なガスバリア性を有すると言えるものではなかった。特に、透湿度を低減させるべく、無機膜の厚みを厚くしたり、異なる材料を多層に形成したフィルムにおいても、大きな効果を奏することができず、無機膜が厚くなるに従って、マイクロクラックが発生し、逆に透湿度が上昇してしまう傾向にあることが分かった。
【0063】
また、真空蒸着法を用いて作成した比較例10の透明ガスバリア性フィルムは、膜自体がスバッタ膜に比べてポーラスな膜となり、ほとんど透湿度低減効果が得られなかった。
【0064】
比較例11の透明ガスバリア性フィルムは、比較的良好なガスバリア性を示したものの、実施例1や実施例2の透湿度にまで及ぶものではなかった。
【0065】
(実施例3)
40mm×40mm×1.3mmの青板ガラス基板(松浪ガラス社製、品番S3233)の片面に、ITOセラミックターゲット(In23:SnO2=90重量%:10重量%)から、DCスパッタリング法を用いて、厚み120nmのITO透明膜からなる陽極を形成した。その後、中性洗剤、脱イオン水、アセトン、イソプロピルアルコールを用い、順次超音波洗浄を行った後、紫外線オゾン方式で基板洗浄を行った。次に、ITO面上に、抵抗加熱式真空蒸着装置内のモリブデン製ボートに配置したN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)と、別のモリブデン製加工ボートに配置したトリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)を介して、真空チャンバー内を1×10-4Paの減圧状態としてTPDを220℃に加熱し、厚み60nmのTPD膜からなる正孔輸送層を形成後、その上にAlqを275℃に加熱して厚み60nmのAlq膜を形成した。次に、更にその上にモリブデン製ボートに配置したマグネシウムと、別のモリブデン製加工ボートに配置した銀とを介して、真空チャンバー内を2×10-4Paの減圧状態として2元同時蒸着方式により、Mg・Ag合金(Mg/Ag=9/1)からなる厚み100nmの陰極を形成して、緑色(主波長513nm)に発光する有機EL素子を作成した。作成した有機EL素子の発光面積は2cm×2cmであった。また、この有機EL素子に6Vの電圧を印加した際の正面輝度は1220cd/m2であった。
【0066】
次に、上記有機EL素子をグローブボックスに移し、電圧を印加するべく、50μmφの金線をリード線とし、当該リード線を陽極(ITO)及び陰極(Mg・Ag合金)に銀ペーストでそれぞれ接続した。次に、陰極側に紫外線硬化性エポキシ樹脂(NORLAND PRODUCS社製、N0A81)を滴下し、50mm×50mmに切り出した実施例1の透明ガスバリア性フィルムをその上から被せた。この際、リード線を有機EL素子の外部まで引き出すように注意し、エポキシ樹脂が素子全面に広がるまで放置した後、UVランプを用いてエポキシ樹脂を硬化させた。
【0067】
以上のようにして、実施例1の透明ガスバリア性フィルムで封止した有機EL素子を作成した。
【0068】
(比較例12)
実施例1の透明ガスバリア性フィルムを用いる代わりに、比較例1のポリエチレンテレフタレートフィルムを用いて封止した以外は、実施例3と同様の有機EL素子を作成した。
【0069】
(比較例13)
実施例1の透明ガスバリア性フィルムを用いる代わりに、比較例2のガラス板を用いて封止した以外は、実施例3と同様の有機EL素子を作成した。
【0070】
(比較例14)
実施例1の透明ガスバリア性フィルムを用いる代わりに、比較例6の透明ガスバリア性フィルムを用いて封止した以外は、実施例3と同様の有機EL素子を作成した。
【0071】
(比較例15)
実施例1の透明ガスバリア性フィルムを用いる代わりに、比較例11の透明ガスバリア性フィルムを用いて封止した以外は、実施例3と同様の有機EL素子を作成した。
【0072】
(実施例3、比較例12〜比較例15の評価)
以上に説明した実施例3及び比較例12〜比較例15の各有機EL素子について、以下に説明する方法で、輝度低下率及びダークスポットを評価した。
【0073】
(1)輝度低下率の測定方法
各実施例及び比較例の有機EL素子を室温にて6Vの印加電圧で発光させ、初期及び1000時間経過後の輝度をそれぞれ輝度計(トプコン社製、BM9)を用いて測定した。そして、初期の輝度に対する1000時間経過後の輝度低下の割合を輝度低下率として算出した。
【0074】
(2)ダークスポットの評価方法
1000時間経過後、有機EL素子の劣化により生ずる非発光スポット(ダークスポット)の有無を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。
◎:ダークスポットの発生無し
○:直径0.5mm以下のダークスポットが3つ以内発生
△:直径0.5mm以上のダークスポットが3つ以上発生
×:ほぼ全面に亘りダークスポットが進展
【0075】
以上に説明した輝度低下率及びダークスポットの評価結果を表2に示す。
【表2】

【0076】
表2に示すように、実施例3の有機EL素子は、1000時間経過後もダークスポットの発生が観察されず、比較例13のガラス板で封止した有機EL素子と同様の耐久性を有することが分かった。輝度は21%程度低下しているが、これは外部からの水分の浸入に起因するものではなく、使用した有機EL素子の材料自体の耐久性に起因するものと考えられる。
【0077】
これに対し、比較例12及び比較例14の有機EL素子は、ダークスポットの発生が明らかに観察された。また、比較例15の有機EL素子は、ダークスポットは極僅かに発生しただけであったが、実施例3の有機EL素子に比べると明らかな差が認められた。
【0078】
(実施例4)
青板ガラス基板を用いる代わりに、実施例1の透明ガスバリア性フィルムの極薄板ガラス面上にITO膜を成膜した以外は、実施例3と同様の方法で有機EL素子を作成した。
【0079】
本実施例の有機EL素子について、前述した表2と同様の評価をしたところ、輝度低下率は25%で、ダークスポットの発生は観察されなかった。また、有機EL素子の基板としてガラス板を用いず、実施例1の透明ガスバリア性フィルムを用いているため、フレキシブル性を有する有機EL素子が得られた。
【0080】
(実施例5)
封止方法として、前述したように、対向するホットメルトフィルムの4辺をヒートシールする小袋法を用いた以外は、実施例4に準じて有機EL素子を作成した。
【0081】
本実施例の有機EL素子について、前述した表2と同様の評価をしたところ、輝度低下率は23%で、ダークスポットの発生は観察されなかった。また、実施例4と同様にフレキシブル性を有する有機EL素子が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る透明ガスバリア性部材の概略構成を示す縦断面図である。
【図2】図2は、本発明の他の実施形態に係る透明ガスバリア性部材の概略構成を示す縦断面図である。
【図3】図3は、本発明の一実施例に係る透明ガスバリア性フィルムの概略構成を示す縦断面図である。
【図4】図4は、図3に示す透明ガスバリア性フィルムの外観写真である。
【図5】図5は、本発明の他の実施例に係る透明ガスバリア性フィルムの概略構成を示す縦断面図である。
【図6】図6は、厚み30μmの極薄板ガラスの外観写真である。
【符号の説明】
【0083】
1,2…透明ガスバリア性部材 11…極薄板ガラス 12…透明樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み10μm〜70μmの極薄板ガラスと、
当該極薄板ガラスの少なくとも一方の面上に貼着された透明樹脂層とを備え、
前記極薄板ガラスと前記透明樹脂層とが20μm以下の厚みの透明粘着剤又は20μm以下の厚みの透明接着剤を介して貼着され、水蒸気透過度が0.005g/m2/day以下であることを特徴とする透明ガスバリア性部材。
【請求項2】
前記透明樹脂層は、厚み10μm〜200μmの透明樹脂フィルムとされていることを特徴とする請求項1に記載の透明ガスバリア性部材。
【請求項3】
前記透明樹脂層は、厚み200μm〜2000μmの透明プラスチック基板とされていることを特徴とする請求項1に記載の透明ガスバリア性部材。
【請求項4】
酸素透過度及び水蒸気透過度が、厚み0.2mm以上のガラス板と実質的に同等であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の透明ガスバリア性部材。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の透明ガスバリア性部材を封止材として用いたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記透明ガスバリア性部材の輝度低下率が25%以下であることを特徴とする請求項5に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−273211(P2008−273211A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130816(P2008−130816)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【分割の表示】特願2002−240946(P2002−240946)の分割
【原出願日】平成14年8月21日(2002.8.21)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】