説明

透明伝導性ナノ粒子コーティングフィルムの製造方法

【課題】実質的に透明な、電気的に伝導性のフィルムを形成するための方法を提供すること。
【解決手段】(a)実質的に球状の形を有する金属または金属酸化物の一次粒子を含むナノ結晶性材料を水に加え;(b)前記ナノ結晶性材料および前記水を混合して、実質的に安定な水性ディスパージョンを形成し;(c)基材に適用された際に、前記ディスパージョンが、一様な欠陥の無いフィルムであって、且つ105Ω/□未満のシート抵抗を有するフィルムを与えるために効果的な量で、フィルム形成剤を前記水性ディスパージョンに加え;(d)希釈剤を前記水性ディスパージョンに加えて、処方を作製し、(e)前記処方を基材に適用し;及び(f)フィルム内でナノ結晶性粒子を硬化させるために基材を加熱し、該加熱が、約300℃〜約800℃の間の温度で行われる、ステップを含む、実質的に透明な、電気的に伝導性のフィルムを形成するための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願へのクロスレファレンス
【0002】
この出願は、「透明伝導性ナノ粒子コーティング形成用の組成物」と題された1998年8月17日に出願された米国仮特許出願、シリアル番号第60/096,829号に関連し、且つ、その出願からの優先権の利益を主張する。その’829号出願の全体を、参照することによりここに取り込む。
【0003】
発明の分野
【0004】
本発明は、一般に、透明な、電気的に伝導性のコーティングを形成するための組成物に関する。より詳しくは、本発明は、透明な伝導性のコーティングを形成するナノ結晶性(nanocrystalline)材料の実質的に安定なディスパージョンに関する。
【背景技術】
【0005】
発明の背景
【0006】
透明な伝導性のコーティングは、一般に、低い電気抵抗、可視光の高い透過率、および良好なフィルム強度によって特徴づけられる。このようなコーティングは、静電荷を消散させ、電磁放射を低減し、または特定のタイプの放射を吸収および/または反射するように機能することができる。したがって、このようなコーティングは、透明電極、液晶ディスプレイ、建築のガラスにおける反射層、およびマイクロエレクトロニクスの伝導性構成要素、および太陽電池のための窓材料を含む、広範囲のデバイスで使用される。
【0007】
米国国防総省によるシート抵抗で定義されるように、「伝導的」は、105Ω/□(オームパースクェア)未満、「静電気消散的」は105〜109Ω/□、および「静電気防止的」は109〜1014Ω/□である。
【0008】
透明な伝導性フィルムは、一般に、インジウムスズ酸化物(「ITO」)(それは、酸化スズのマイナーな量を含む酸化インジウムである)が典型的である酸化物半導体から作られる。透明性を必要としない伝導性用途の場合、適当な電子導体は、炭素繊維、金属繊維、金属被覆繊維およびアルミニウムフレークを含む。
【0009】
静電気消散的な用途で使用される最も普通の材料のうちの2つは、カーボンブラックおよびドープされた金属酸化物である。サブミクロンサイズのアンチモン酸化スズ(ATO)は、ATO一次粒子またはATOドープされたSiO2、TiO2またはマイカとして利用可能な静電気消散的な材料である。
【0010】
静電気防止的な材料は、典型的には吸湿性であり、静電荷の蓄積を防止するのを助長する水分の薄層をトラップすることによって「イオン導体」として機能する。このような材料は、第四級アンモニウム塩、スルホネートおよび脂肪酸エステル等の化合物を含む。
【0011】
3つの公知のプロセスは、伝導性フィルムを基材に適用する、すなわち、(l)スパッタリング・フィルム前駆体のプロセス、(2)フィルム前駆体の化学蒸気堆積(「CVD」)のプロセス、および(3)ディスパージョンからフィルム前駆体を適用するプロセスである。スパッタリングの場合、基材がマスクされ、減圧チャンバ内に配置され、スパッタリングの間にフィルムが適用される。CVDプロセスは、スパッタリングと同様である。ディスパージョンの場合、基材へディスパージョンを適用するために、スピン・コーティング、ディップコーティングまたはスプレーの技術を使用することができる。ディスパージョン適用のためのフィルム前駆体を製造するために、ゾル−ゲル化学および機械的摩耗(attrition)が典型的に使用される。ゾル−ゲル材料は、有機溶媒ベースのディスパージョンである。
【0012】
上記プロセスのうち、複雑な設備を使用することが必要なスパッタリングおよびCVDプロセスは、高い運転開始および維持費に伴う欠点を有する。したがって、フィルム前駆体を適用するディスパージョンプロセスは、フィルム前駆体を適用する一般に好ましいプロセスである。
【0013】
しかしながら、ゾル−ゲルディスパージョンを使用するプロセスは、このようなディスパージョンが、粒子またはゾル−ゲル前駆体の間で進行中の化学的相互作用のために不安定であるという問題がある。従って、ディスパージョンから大きい微粒子または凝集体が形成され、それにより光学的特性に劣るフィルムを生じる。ディスパージョン不安定性は、比較的短い操作上の寿命(貯蔵寿命)をもたらす。例えば、上記したように、ディスパージョンを形成する粒子間で継続する反応性および化学的相互作用を低減するために、従来のゾル−ゲル誘導されたディスパージョンは、ドライアイス、他の適当な冷媒を用いるか、またはいくつかの他の適当な冷蔵方法を用いて、冷凍または冷蔵して発送しなければならない。更に、大部分のディスパージョンは、主に有機溶媒の複合した混合物を加えることによって処方化される。それらの処方は、短い貯蔵寿命を有し、大きい伝導性粒子(それらは、光学的特性に悪影響を及ぼす)を含み、または、それらの適用を制限する高い硬化温度を必要とする。
【0014】
ここで開示されるコーティング組成物は、ナノ粒子から透明な、電気的に伝導性のコーティングを形成する。ここで開示される製造方法は、透明な、電気的に伝導性のフィルムを形成するために適当な、実質的に安定な組成物を与える。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の概要
【0016】
本発明の1つの面において、プロセスは、透明な伝導性コーティングを形成するためのナノ結晶性粒子の実質的に安定な水性ディスパージョンを製造する。そのプロセスは、以下のステップを含む:
(a)実質的に球状の形を有する金属または金属酸化物の一次粒子を含むナノ結晶性材料を水に加え;および、
【0017】
(b)ナノ結晶性材料および水を混合して、水性ディスパージョンを作製する。
【0018】
本発明の他の面において、透明な伝導性コーティングを形成するナノ結晶性粒子の実質的に安定な水性ディスパージョンが、上記プロセスによって製造される。
【0019】
本発明の更に他の面において、実質的に透明な伝導性フィルムを適用するためにプロセスが提供される。そのプロセスは、以下のステップを含む:
【0020】
(a)実質的に球状の形を有する金属または金属酸化物の一次粒子を含むナノ結晶性材料を水に加え;
【0021】
(b)ナノ結晶性材料および水を混合して、水性ディスパージョンを形成し;
【0022】
(c)フィルム形成剤をその水性ディスパージョンに加え;
【0023】
(d)希釈剤を前記水性ディスパージョンに加えて、処方を作製し;および、
【0024】
(e)その処方を基材に適用する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
好ましい態様の詳細な記述
【0026】
先ず図1を参照して、本発明の一態様に従って伝導性透明フィルムを作製するためのプロセスのフローダイアグラムが示される。図1に示されるように、ナノ結晶性材料は、透明な伝導性(「TC」)フィルムを形成するように処理される。より詳しくは、透明な伝導性コーティングを形成するためのナノ結晶性材料の水性ディスパージョンを製造するためのプロセスが示される。均一、制御された厚さ、組成および形態のTCフィルムを製造するためのナノ結晶性材料の処方化されたディスパージョンを堆積させるためのプロセスのフローダイアグラムも示される。また、フィルム性質に影響を及ぼすために、堆積されたナノ結晶性材料フィルムの特性を制御するためのプロセスのフローダイアグラムも、図1に示される。
【0027】
図1に示されるように、第1のプロセス・ステップは、100%の結晶性ナノ粒子材料(明瞭に定義された界面で100nm未満の)を水に加える。代わりに、酸性または塩基性水性ディスパージョンを、それぞれ、酸性または塩基性のナノ結晶性粉末のための脱イオン水の代わりに使用することができる。本発明において有用なナノ結晶性材料は、(これらに制限されないが)ドープされた酸化スズ、CuO、酸化鉄、白金、パラジウム、銀および金を含む。本発明の組成物およびプロセスで有用なナノ粒子状材料は、実質的に球状の形のディスクリートな一次粒子でありえる。このようなナノ結晶性材料、および、このようなナノ結晶性材料を作製するためのプロセスおよび装置は、それらの全体を参照することによりここに取り込む、米国特許第5,874,684号、第5,514,349号および第5,460,701号に開示されている。ナノサイズのインジウムスズ酸化物(ITO)は、溶媒中に、または混合有機溶媒(少なくとも1つの極性溶媒および少なくとも1つの無極性溶媒)に溶解されたバインダーポリマーを含むバインダー溶液中にITOを分散させることによって製造された、有機ベースの微粒子状ゾルとして利用可能である。
【0028】
ナノ結晶性粒子は、組成物が希釈されて基材に適用された際に、少なくとも電気的に伝導性のコーティングを与えるために充分な量で存在すべきである。ナノ結晶性粒子は、ディスパージョンの約1〜約40重量%(質量%)、最も好ましくはディスパージョンの約7〜約30重量%(質量%)の範囲の量で存在することができる。
【0029】
ナノ結晶性粒子および溶媒は、次いで、水性ディスパージョンを形成するために充分な時間、ミクサー乳化機または他の適当な混合方法等の高剪断の混合に供される。そのディスパージョンは、次いで遠心分離され、または、他の適当な方法により凝集体が除去され、上澄みが集められ濾過されて、それにより相対的に凝集体が除去された濃縮された水性金属酸化物溶液を与える。
【0030】
フィルム形成剤が、次いでディスパージョンに加えられる。フィルム形成剤は、(これらに制限されないが)ポリビニルアルコール−、ポリエチレングリコール−またはセルロース−ベースのポリマー等の、少なくとも一つのヒドロキシル基を含むポリマー性であることができる。フィルム形成剤は、(これらに制限されないが)オルガノシラン、エトキシル化されたアルコール、リン酸エステル、グリセロールエステル、脂肪族ポリエーテルおよびエトキシル化された脂肪性(fatty)エステル等の界面活性剤であることもできる。フィルム形成剤は、一様な、欠陥の無いフィルムを与えるために効果的な量で存在すべきである。フィルム形成剤は、好ましくはナノ結晶性材料含有量の25重量%(質量%)までで、ディスパージョンに加えられる。水性ディスパージョンの固形分は、次いで希釈によって調節することができる。
【0031】
この方法は、実質的に安定な、主題のナノ結晶性粒子の濃縮された水性ディスパージョンを与える。実質的に安定とは、粒子が容易にアグロメレート、凝集(aggregate)、または更なる実質的な化学的活性を受けないことを意味する。換言すれば、ナノ結晶性粒子の間には、実質的に潜在性の化学的活性はない。
【0032】
図1に示されるように、ナノ結晶性粒子の濃縮された水性ディスパージョンは、そのディスパージョンを基材に適用することによって、フィルムを作製するために使用することができる。より詳しくは、そのディスパージョンは、その処方を0.1〜5重量%(質量%)固形分とするように、溶媒混合物の適切な重量パーセントを混合することによって、処方を作製するために希釈される。希釈剤組成物は、水から有機ベースの溶媒までの範囲にあることができる。希釈剤組成物は、典型的には、低、中位および高沸点溶媒の混合物である。適当な有機希釈剤は、(これらに制限されないが)アルコール、ケトンおよびエーテルを含む。希釈剤は、低剪断技術(例えば、パドルブレード等)によって、ディスパージョンと混合される。
【0033】
希釈された水性ディスパージョンは、次いで、スピンコーティング、ディップコーティング、メニスカスコーティング、スプレーコーティングまたは他の適当なコーティング方法によって、クリーニングされた基材に適用することができる。そのコーティングの方法は、適用に特異的である。例えば、フィルムはスピンコーティングによってCRT表面に、ロールコーティングによってプラスチックに適用される。ディスパージョンが適用された後、フィルムは溶媒を除去するために充分な時間加熱される。その乾燥時間は、希釈剤組成物によって変化する。
【0034】
所望により、乾燥されたフィルムは、フィルムの電気的および機械的な性質を調整する(tailor)ために、更に処理してもよい。このような処理は、熱的処理、化学的還元およびコーティングの適用を含む。
【0035】
熱的処理の場合、フィルムは導電率を増大させるために加熱される。より詳しくは、フィルムは堆積されたフィルム内の粒子を硬化させるための充分に高い温度で、充分な時間加熱すべきである。適当な温度は、約300℃〜約800℃の範囲を含む。
【0036】
堆積されたフィルムは、導電率を増大させるための化学的還元によって処理することもできる。
【0037】
適当なコーティングは、上記で議論したものと同様の方法、例えば、スピンコーティングによって適用することができる。適当なコーティングは、(これらに制限されないが)テトラエトキシシラン(TEOS)またはテトラメトキシシラン(TMOS)から形成されるもの等の、シランモノマーまたはオリゴマーを含み、それは次いで、フィルムを乾燥、硬化させるための充分な期間、空気または還元的環境中でフィルムとともに約150℃まで加熱することができる。適当な還元的環境は、例えば、水素および不活性ガス(例えば、予め精製された窒素またはアルゴン等)の混合物である。
【0038】
以下の例は、本発明の特定の態様およびそれらの操作を記述する。これらの特定の例は、ここに記述された請求項により定義されるような発明の範囲、およびそれらの均等を制限することを意図しない。
【0039】
例1
【0040】
物理的蒸気合成(PVS)によって製造された100gのITOを、400gのイオン水に加えて、20重量%(質量%)スラリーを作製した。そのディスパージョンを、高剪断混合し、遠心分離した。清澄化した上澄みを集め、濾過して、ITOの濃縮された水性ディスパージョンを得た。
【0041】
例2
【0042】
酸性または塩基性のナノ結晶性粉末のために、脱イオン水を、酸性または塩基性の溶液でそれぞれ置換したことを除いて、例1に記述したものと同様の方法で、ディスパージョンを製造した。
【0043】
例3
【0044】
(これらに制限されないが)ドープされた酸化スズ、CuO、酸化鉄、白金、パラジウム、銀および金等の他のナノ結晶性金属および金属酸化物でITOを置換したことを除いて、例1または2に記述した方法でディスパージョンを製造した。
【0045】
例4
【0046】
フィルム形成剤を加えたことを除いて、例1〜3に記述した方法でディスパージョンを製造した。フィルム形成剤は、(これらに制限されないが)ポリビニルアルコール−、ポリエチレングリコール−またはセルロース−ベースのポリマー等の少なくとも一つのヒドロキシル基を含むポリマー性のものであることができ;または、(これらに制限されないが)オルガノシラン、エトキシル化アルコール、リン酸エステル、グリセロールエステル、脂肪族ポリエーテルおよびエトキシル化脂肪性エステル等の界面活性剤であることができる。フィルム形成剤を、金属または金属酸化物含有量の約25重量%(質量%)までで、ディスパージョンに加えた。
【0047】
例5
【0048】
希釈剤で適切な重量パーセントに希釈することによって、例1〜4における水性ディスパージョンをコーティングのために処方化した。その希釈剤組成物は、水から有機ベースの溶媒までの範囲であることができる。希釈剤組成物は、フィルム乾燥時間を決定し、それは典型的には低−、中位−および高沸点溶媒の混合物である。
【0049】
例6
【0050】
例5で製造したITO処方を基材に適用し、120℃で30分間乾燥させた。制御された伝導率のフィルムを製造するために、フィルムを更に加熱してもよい。
【0051】
例7
【0052】
例5で製造したITO処方を基材に適用して、120℃で30分間乾燥させた。堆積されたフィルムを、その後、(これらに制限されないが)TEOSまたはTMOSから形成したもの等のシランオリゴマーでコートし、空気、または(これらに制限されないが)水素および不活性ガス(予め精製した窒素またはアルゴン)の混合物等の還元的環境内で150℃まで、少なくとも15分間加熱した。
【0053】
例8
【0054】
例5で製造したITO処方を基材に適用し、堆積されたフィルム内の粒子を硬化させるために、350℃〜800℃の間で加熱した。堆積されたフィルムを、その後、(これらに制限されないが)TEOSまたはTMOSから形成したもの等のシランオリゴマーでコートし、(これらに制限されないが)水素および不活性ガス(予め精製した窒素またはアルゴン)の混合物等の還元的環境で150℃まで、少なくとも15分間加熱した。
【0055】
透明性結果
【0056】
図2は、例8に従って作製されたフィルムに対する波長の関数としての、ガラス上にコートされたフィルムを通るパーセント透過のプロットである。図2に示したように、堆積されたフィルムは、95%の光学的透明度を与える高度な透過率によって特徴づけられる。
【0057】
例9
【0058】
(これらに制限されないが)ドープされた酸化スズ、CuO、酸化鉄、白金、パラジウム、銀および金等の他のナノ結晶性金属および金属酸化物でITOナノ結晶性粉末を置換し、または組み合わせた以外は、例7〜8に従ってコーティングを製造した。シート抵抗は2,000Ω/□であり、室温および20%の相対湿度において安定である。透明度は、以下のように測定される。
【0059】
【表1】

【0060】
安定性結果
【0061】
図3は、ここで開示した方法に従って製造したITOの水性ディスパージョンの安定性を示すプロットである。そのITOディスパージョンを、例5で議論したような適切な有機溶媒で希釈することによって、処方化した。例6および7におけるように、この処方を基材に適用し、処理した。そのフィルムのシート抵抗を測定し、ITOディスパージョンの安定性を追跡するための方法として使用した。この安定性試験を、40℃、80%の相対湿度の下で、湿度チャンバー内で行った。このようなテストは、1日が4日に等価である約4対1の割合に経時変化を加速する。12日で、シート抵抗は上昇し始め、ITOディスパージョンが比較的不安定になったことを示唆する。したがって、本発明のITOディスパージョンが、典型的には40℃、相対湿度80%で数時間(hours)以内にアグロメレートする透明伝導性コーティングのための公知のディスパージョン組成物より、更に安定であることが明白に示される。
【0062】
伝導率結果
【0063】
ITOフィルムを堆積させ、空気中で約150℃で乾燥させた。測定されたシート抵抗は、約1×l04Ω/□である。
【0064】
ITOフィルムを堆積させ、空気中で約800℃で乾燥させた。測定されたシート抵抗は、約1×l03Ω/□である。
【0065】
ITOフィルムを堆積させ、還元的雰囲気中で約300℃で乾燥させた。測定されたシート抵抗は、約2×l03Ω/□である。
【0066】
CuOフィルムを堆積させ、還元的雰囲気中で約120℃で乾燥させた。測定されたシート抵抗は、約2Ω/□である。
【0067】
次に本発明の実施態様を示す。
1. (a)実質的に球状の形を有する金属または金属酸化物の一次粒子を含むナノ結晶性材料を水に加え;
(b)ナノ結晶性材料および水を混合して、水性ディスパージョンを作製する、
ステップを含む、透明な伝導性コーティングの形成における使用に適したナノ結晶性粒子の実質的に安定な水性ディスパージョンを作製するための方法。
2. 前記ナノ結晶性材料が、インジウムスズ酸化物を含み、水性ディスパージョンの約1重量%(質量%)〜約25重量%(質量%)の量で存在する上記1の方法。
3. 前記ナノ結晶性材料が、アンチモンスズ酸化物を含み、水性ディスパージョンの約1重量%(質量%)〜約35重量%(質量%)の量で存在する上記1の方法。
4. 前記ナノ結晶性材料の約25重量%(質量%)までの量でフィルム形成剤を加える更なるステップを含む上記1の方法。
5. 前記フィルム形成剤が、少なくとも1つのヒドロキシル基を含む上記4の方法。
6. 前記フィルム形成剤が、ナノ結晶性材料含有量の約25重量%(質量%)までの量でセルロースベースのポリマーを含む上記4の方法。
7. 前記フィルム形成剤が、ナノ結晶性材料含有量の約5重量%(質量%)までの量でセルロースベースのポリマーを含む上記4の方法。
8. 前記フィルム形成剤が、有機および水性相に可溶である上記4の方法。
9. 前記フィルム剤が、ナノ結晶性材料含有量の約5重量%(質量%)〜約15%の量でディスパージョン中に存在する上記4の方法。
10. 前記水溶液に希釈剤を加える更なるステップを含む上記4の方法。
【0068】
11. (a)実質的に球状の形を有する金属または金属酸化物の一次粒子を含むナノ結晶性材料を水に加え;
(b)ナノ結晶性材料および水を混合して、水性ディスパージョンを形成し;
(c)フィルム形成剤を水性ディスパージョンに加え;
(d)希釈剤を前記水性ディスパージョンに加えて、処方を作製し;および、
(e)前記処方を基材に適用する、
ステップを含む、実質的に透明な、電気的に伝導性のフィルムを形成するための方法。
12. 前記フィルム形成剤を、ナノ結晶性材料の約25重量%(質量%)までの量で加える上記11の方法。
13. 前記フィルム形成剤が、少なくとも1つのヒドロキシル基を含む上記11の方法。
14. 前記フィルム形成剤が、金属または金属酸化物含有量の約25重量%(質量%)までの量でセルロースベースのポリマーを含む上記11の方法。
15. フィルム形成剤を前記水性溶液に加える更なるステップを含み、そのフィルム形成剤が、金属または金属酸化物含有量の約5重量%(質量%)までの量でセルロースベースのポリマーを含む上記4の方法。
16. 前記フィルム形成剤が、有機および水性相に可溶である上記11の方法。
17. 前記フィルム形成剤が、金属または金属酸化物含有量の約5重量%(質量%)〜約15%の量でディスパージョン中に存在する上記11の方法
【0069】
18. 水および希釈剤を実質的に除去するために基材を加熱し、それにより基材上でフィルムを形成する更なるステップを含む上記11の方法。
19. フィルム内でナノ結晶性粒子を硬化させるために充分な時間、約300℃〜約800℃の間の温度に基材を加熱する更なるステップを含む上記18の方法。
20. フィルムをシランモノマーまたはオリゴマーでコートする更なるステップを含む上記18の方法。
21. 更に、フィルムのシート抵抗を低減するために充分な期間、還元的環境でフィルムを加熱するステップを含む上記18の方法。
22. 透明な伝導性コーティングを形成することに適した、上記1の方法によって製造された金属酸化物粒子の実質的に安定な水性ディスパージョン。
23. 透明な伝導性コーティングを形成することに適した、上記11の方法によって製造された金属酸化物粒子の実質的に安定な水性ディスパージョン。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に従って伝導性透明フィルムを作製するためのプロセスを示すフローダイアグラムである。
【図2】上述した例(例8)に従って作製されるフィルムのための波長の関数としてのパーセンテージ透過のプロットである。
【図3】上述した他の例(例7)に従って製造されるインジウムスズ酸化物ディスパージョンの安定性を示すプロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)実質的に球状の形を有する金属または金属酸化物の一次粒子を含むナノ結晶性材料を水に加え;
(b)前記ナノ結晶性材料および前記水を混合して、実質的に安定な水性ディスパージョンを形成し;
(c)基材に適用された際に、前記ディスパージョンが、一様な欠陥の無いフィルムであって、且つ105Ω/□未満のシート抵抗を有するフィルムを与えるために効果的な量で、フィルム形成剤を前記水性ディスパージョンに加え;
(d)希釈剤を前記水性ディスパージョンに加えて、処方を作製し、
(e)前記処方を基材に適用し;及び
(f)フィルム内でナノ結晶性粒子を硬化させるために基材を加熱し、該加熱が、約300℃〜約800℃の間の温度で行われる、ステップを含む、実質的に透明な、電気的に伝導性のフィルムを形成するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−131844(P2009−131844A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314223(P2008−314223)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【分割の表示】特願2000−564901(P2000−564901)の分割
【原出願日】平成11年8月16日(1999.8.16)
【出願人】(501066794)ナノフェイズ テクノロジーズ コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】