説明

透明体打込みコンクリート体の施工方法

【課題】コンクリートで打込まれた透明体によって、前記コンクリート体の表面に模様を形成させたコンクリート体を施工する方法であって、作業効率に優れ、気密性や水密性に優れた施工方法を提供する。
【解決手段】模様を形成する透明体を、模様を描出するように配置した後に固定化材を使用して固設して形成された透明体ユニットを製造する第一工程と、前記透明体ユニットを型枠の内部に設けられる鉄筋に固設する第二工程と、前記型枠の内部に生コンクリートを打設する第三工程と、前記生コンクリートが硬化後、前記型枠を除去し、前記透明体の先端面を壁面に現出させる第四工程を含む工程からなる施工方法によって課題解決できた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明体を型枠中に固設した状態で生コンクリートを打設し、コンクリート体の両面又は片面に透明体による模様を形成させる施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンクリート壁にガラスを嵌め込み、そのガラスによって壁面に模様を形成したコンクリート壁が存在する。こうした壁は、コンクリート壁を形成するための型枠に、ガラスよりやや大きい型材を設置した後、生コンクリートを打設し、一定時間経過後、型材を抜き出し、それによって形成された空間部にガラスを嵌め込むものである。そして、コンクリート壁とガラスとの間に必然的に形成される隙間にシール材を充填している。
【0003】
他には、ガラスを設置したコンクリート壁に関しては、軽量気泡コンクリートパネルに、その表面を貫通する貫通穴を設け、その貫通穴にガラスブロック又はガラス棒などの透明体を装着する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
さらに、ガラスを設置したコンクリート壁に関しては、壁の表裏の表面に沿ってコンクリート層に埋め込まれた鉄筋を有する鉄筋コンクリート壁において、中空の多数のガラス容器を相互一体に拘束したガラス容器集合体が、前記鉄筋から距離を隔てた壁の厚み方向の中間部分に面状に占めて前記コンクリート層に埋め込まれている鉄筋コンクリート壁の技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−336239号公報
【特許文献2】特開平9−78729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のコンクリート壁にガラスを嵌め込み、そのガラスによって壁面に模様を形成したコンクリート壁の施工方法は、型枠にガラスを挿入するためのガラスよりやや大きめの型材を設置し、生コンクリートを打設し、打設後に型材を抜き出して形成された空間部にガラスを嵌め込み、さらにガラスの周囲の狭い隙間にシール材を充填する施工方法であるため、作業効率が悪いという問題があった。
【0007】
特許文献1に記載の発明は、コンクリートパネルに貫通穴を設けてガラス棒やガラスブロッックを嵌め込むのが目的であるが、貫通穴を設ける作業や、貫通穴の内壁とガラス棒との狭い隙間に接着剤を流入させる作業を必要とするので、作業効率が悪いという問題があった。
【0008】
特許文献2記載の発明は、コンクリート壁にガラスによる模様を形成するのが目的でなく、コンクリート壁の厚みの中間部分に断熱層をつくるのが目的である。そのため、特許文献2の段落[0007]に記載があるように、ガラス容器単体をワイヤーなどの緊締具で緊結したガラス容器集合体を、ある程度完成した鉄筋構造や型枠構造の内側に吊り下ろして配設している。コンクリート壁にガラスによる模様を形成するためには、個々の単体のガラス板又はガラス瓶を鉄筋構造や型枠構造の内側にガラスによる模様を形成するように配設をしなければならないが、この施工方法では、前記個々のガラス板又はガラス瓶の位置や向きを固設することが極めて困難であるという問題があった。
【0009】
また、特許文献2の段落[0011]に記載があるように、ガラス容器の隙間にコンクリートが充填されない場合も前提にしているため、特許文献2の施工方法を外壁面に実施すると、ガラス周辺の空隙から水漏れなどが発生するという問題があった。
【0010】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、生コンクリートを打ち込んでガラス板などの透明体による模様をコンクリート体に形成する方法であって、作業効率に優れ、気密性や水密性に優れ、透明体による模様を形成するコンクリート体を施工する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明における「番線」とは、型枠工事や足場工事などの仮設工事などに用いる結束線の俗称を意味し、本発明における「セパレーター」とは、鉄筋コンクリート工事において鉄筋間の間隔、鉄筋と型枠との間隔を保持する目的で使用される飼い物を意味し、本発明における「型枠」とは生コンクリートを流し込み成形するための堰板と支保工より成る仮設の枠組を意味し、本発明における「堰板」とは、型枠の部分でコンクリートに接する木材、合板、金属板又はプラスチック板などの類を意味し、本発明における「鉄筋」とは、構造物において引張力に対して弱いコンクリートを補強する目的でコンクリート中に埋め込む鉄線を意味する(以上、建築大辞典 彰国社 昭和62年8月20日第10刷)。
【0012】
本発明における「モルタル」とは、一般にセメント・砂・水を練り混ぜたセメントモルタルを意味し(建築大辞典 彰国社 昭和62年8月20日第10刷)、本発明における「軽量モルタル」とは、砂の量を少なくし、それに代えて発泡体を加えることによって作るモルタルを意味する。
【0013】
本発明における「コンクリート体」とは、壁、屋根、床、堀、オブジェ、建築物、工作物などの生コンクリートを打設して施工する物を意味し、本発明における「透明体」とは、透き通っている物体と、透明の程度の少ない物体である半透明体とを含んだ物体を意味し、本発明における「打込み」とは、コンクリートで、ある物を固設するために、ある物を型枠内に設置した状態のまま生コンクリートを流し込むことを意味し、本発明における「打設」とは、コンクリートを型枠中に流し込むことを意味し、本発明における「固定化材」とは、モルタル、樹脂、ゴム、木枠、液体ガラス、アクリル又はFRPなどで、流体状態で他の物体を包囲して密着した後に硬化して固体状態になったときに他の物体を固定化する材料、又は固体の材料で他の物体を固定化することが可能な材料を意味し、本発明における「透明体ユニット」とは、透明体の鉄筋に対する固定化を容易にするために、固定化材を媒体として透明体と緊結材とを一体化させた物を意味する。
【0014】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の透明体打込みコンクリート体1の施工方法の発明は、透明体3を生コンクリート内に打込んで模様を形成させる施工方法であって、コンクリート体1の厚さと略同一の長さを有する個々の透明体3を、形成する模様における個々の透明体3の対応する位置関係に基づいて配設した後、前記配設した透明体3の両端部を露出させ、前記透明体3の中間部を固定化材41によって固めた透明体ユニット10を製造する第一工程と、打設前の型枠20における、形成する模様における個々の透明体ユニット10の対応する位置に、前記個々の透明体ユニット10に貫設された透明体3の両先端面12aを堰板21に当接させた状態で、前記個々の透明体ユニット10を鉄筋22に固設する第二工程と、前記型枠20の内部に生コンクリートを打設する第三工程と、前記生コンクリートが硬化後、前記型枠20を除去し、前記個々の透明体3の堰板21に当接させた両先端面12aをコンクリートC表面に現出させる第四工程と、を含む工程からなることを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の透明体打込みコンクリート体1の施工方法の発明は、透明体3を生コンクリート内に打込んで模様を形成させる施工方法であって、コンクリート体1の厚さより短い長さを有する個々の透明体3を、形成する模様における個々の透明体3の対応する位置関係に基づいて配設した後、前記配設した透明体3の少なくとも一方の端部を露出させ、前記透明体3の非露出部を固定化材41によって固めた透明体ユニット10を製造する第一工程と、打設前の型枠20における、形成する模様における個々の透明体ユニット10の対応する位置に、前記個々の透明体ユニット10に貫設された透明体3の少なくとも一方の先端面12aを堰板21に当接させた状態で、前記個々の透明体ユニット10を鉄筋22に固設する第二工程と、前記型枠20の内部に生コンクリートを打設する第三工程と、前記生コンクリートが硬化後、前記型枠20を除去し、前記個々の透明体3の堰板21に当接させた先端面12aをコンクリートC表面に現出させる第四工程と、を含む工程からなることを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の透明体打込みコンクリート体1の施工方法の発明は、請求項1又は2において、第一工程において、透明体3の外周面と、固定化材41及び/又はコンクリートCとの間に止水材42を介設することを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の透明体打込みコンクリート体1の施工方法の発明は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、第一工程において、前記透明体ユニット10の中心部に貫通孔11を穿設し、第二工程において前記個々の透明体ユニット10の貫通孔11にセパレーター23を挿通させて、前記セパレーター23と鉄筋22とを緊結する方法、及び/または、第一工程において、番線13を固定化材41によって透明体3とともに固めて前記透明体ユニット10に植設し、第二工程において、前記個々の透明体ユニット10に植設されている番線13を鉄筋22に緊結する方法により、前記個々の透明体ユニット10を固設することを特徴とする。
【0018】
請求項5に記載の透明体打込みコンクリート体1の施工方法の発明は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、第三工程において,生コンクリートを、平面視で前記透明体ユニット10の上面を避けて、前記透明体ユニット10間の隙間に向けて打設することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の発明を実施することによって、透明体3による模様を有するコンクリート体1を効率よく施工することができる。すなわち、第一工程で、透明体3が貫設された透明体ユニット10を型枠20の内部に配設した後、生コンクリートを打設するので、従来技術のように透明体3嵌入用の枠体を取り除いた後に、透明体3を嵌入する作業や、透明体3周囲にシール材を充填する作業を本発明では必要としない。したがって、作業効率を高め工期を短縮することができる。
【0020】
本発明による施工方法により、透明体3の外周面に生モルタル又は生コンクリートなどの固定化材41を密着させることができるので、シール材を使用しなくても透明体3の外周面の気密性や水密性に優れたコンクリート体1を提供することができる。
【0021】
透明体3の両先端面12aのそれぞれを型枠20の二つの堰板21に当接させるので、コンクリート体1の内側と外側の両面2aに透明体3による模様を形成することができる。これによって、日没後にコンクリート体1の室内側で照明を点灯すると、前記コンクリート体1の透明体3による模様が輝いて見える。前記模様が、例えば花模様であれば花模様が輝いて見え、幾何学模様であれば幾何学模様が輝いて見えるという効果を奏する。
【0022】
固定化材41として、樹脂などの軽量の材料を使用すれば透明体ユニット10自体は極めて軽量化されるので、製造するときの取扱い作業が極めて容易になるという効果を奏する。
【0023】
請求項2に記載の発明は、作業効率を高め工期を短縮できる効果や、気密性や水密性に優れた透明体3を配設されたコンクリート体1を提供できるという効果については請求項1と同じ効果を奏する。さらに、コンクリート体1の外側又は内側のみに透明体3による模様を有するコンクリート体1を提供することができるという効果を奏する。
【0024】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2と同じ効果を奏する。さらに、固定化材41及び/又はコンクリートCと、透明体3との間に、樹脂やゴムなどの止水材42を介設することによって、前記止水材42がなくても浸透水の漏れなどに対する防止効果はあるが、その漏れ防止対策を二重に設定するという効果を奏する。
【0025】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかの発明と同じ効果を奏する。さらに、透明体ユニット10の中心孔に挿設したセパレーター23及び/又は前記透明体ユニット10に植設した番線13と、鉄筋22とを固縛するので、透明体ユニット10を回転防止やグラツキを防止して狙いの位置に配設することができるという効果を奏する。
【0026】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかの発明と同じ効果を奏する。さらに、生コンクリートを、透明体ユニット10の上面に当たらないように打設するので、前記透明体ユニット10には生コンクリートが下方から盛り上がるように流入するようになる。これにより、前記透明体ユニット10の周囲に
円滑に万遍なく前記生コンクリートが充填されるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態によって施工された透明体打込みコンクリート体の正面概要図である。
【図2】本発明の実施形態における第一工程によって施工された透明体ユニットの正面概要図である。
【図3】本発明の実施形態における第一工程によって施工された透明体ユニットの図2におけるA−A断面の概要図である。
【図4】本発明の実施形態における第一工程で固定化材を投入する前を示す平面概要図である。
【図5】本発明の実施形態における第一工程で固定化材を投入した後を示す平面概要図である。
【図6】本発明の実施形態における第一工程で固定化材を投入した後を示す図5におけるB−B断面の概要図である。
【図7】本発明の実施形態における第二工程を示す正面概要図である。
【図8】本発明の実施形態における第二工程を示す堰板を片側のみに設置した場合の図7におけるC−C断面の概要図である。
【図9】本発明の実施形態における第二工程を示す堰板を両側に設置した場合の図7におけるC−C断面概要図である。
【図10】本発明の実施形態における第四工程後のコンクリート体の一部を示す正面概要図である。
【図11】本発明の実施形態における第四工程後の両面に透明体を現出させたコンクリート体の一部を示す図10におけるD−D断面の概要図である。
【図12】本発明の実施形態における第四工程後の片面のみに透明体を現出させたコンクリート体の一部を示す図10におけるD−D断面の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態を図1乃至図9で説明する。透明体打込みコンクリート体1の施工方法であって、模様を形成する透明体3を固設した透明体ユニット10を形成する第一工程と、前記透明体ユニット10を鉄筋22に固設する第二工程と、前記型枠20の内部に生コンクリートを打設する第三工程と、前記生コンクリートが硬化後、前記型枠20を除去し、前記透明体3の先端面12aをコンクリート体1の表面2aに現出させる第四工程を含む工程からなる。
【0029】
まず、事前準備として、コンクリートCで打込まれる透明体3による、花模様、葉模様、竹模様、幾何学模様など表現したい模様を決める。
【0030】
決めた前記模様を形成するために、直線状、曲線状、薄板状、厚板状、円状、三角形状、幾何学形状、文字状など種々の形状であって、透明、半透明、色つきなど種々の色彩の中から使用する透明体3を選択し、前記透明体3のコンクリート体1の中での配置を決める。
【0031】
透明体3を一つずつ型枠20内に固設することは可能であるが、多数の透明体3を一つずつ型枠20の内に固設することは作業時間がかかり作業効率が低下する。そこで、本発明においては、単一の透明体3を一つの透明体ユニット10とすると共に、数個ずつの透明体3の集合体も一つの透明体ユニット10とする。また、透明体ユニット10の大きさは自由に設定できる。
【0032】
次に、第一工程を図2乃至図6で説明する。第一工程は決定した模様を形成するように透明体3を固設した透明体ユニット10を製造する工程である。第一工程における透明体ユニット10の製造方法の一例を示すが、下記方法に限定されるものではない。
【0033】
コンクリート体1の両面に模様を形成するためには、コンクリート体1の厚さと略同一の長さを有する透明体3を使用し、コンクリート体1の片面に模様を形成するためには、コンクリート体1の厚さより短い長さを有する透明体3を使用する。
【0034】
まず、水平な土台30の上面に透明体3の下端部を挟持して支持する支持材31を固定する。支持材31の形状は、透明体の断面形状によって対応した形状を有する支持材とする。たとえば、板状であれば断面が長方形状の物を挟持可能なU字型形の支持材31を、円柱形であれば断面が円形状の物を挟持可能な筒形の支持材31とする。
【0035】
次に、土台30の上面に、4枚の側板33を立設して枠体32を形成する。そして、前記支持材31によって立設される透明体3が挿通する複数の孔部(図なし)を設けた下型板36を任意の高さに設置する。そして、前記下型板36が固定化材41の重みなどで変位や変形しないように下型板36の下側に内桟木35を設置するなどの下型板36の補強を行う。そして、前記下型板36の上に全面に固定化材41の流し込みによって固定化材41の漏れが生じないように、固定化材41では破損しない材質や厚さを有する薄膜(例えばビニールシート37)を載置する。
【0036】
次に、透明体3を下型板36の孔部に差込み、前記透明体3の下端部を支持材31によって挟持させて固定する。そして、図4に示すように、透明体3の外周部を結ぶ線と、流し込む固定化材41の外周面との中間位置で、配設された透明体3すべてを包囲するように番線40を環形状に配置し、かつ前記環形状に配置した番線40の中心点を交差点とし十字状にした番線40で環形状と十字状との番線40同士を結線する。これによって、固まった固定化材41の割れを防止することができる。また、少なくとも1本以上の番線13を、前記番線13の一端を前記環状の番線40と結線し、他端をフリー状態で配置する。
【0037】
そして、固定化材41を流し込むときに、硬化後の固定化材41の厚さ方向の中間位置に、前記番線40が配設されるように、番線40の高さを調整する。
【0038】
次に、透明体3の外周面に、樹脂、ゴム、不透水性粘土などの浸透水を止める止水材42を周着させる。止水材42を使用すると止水対策を二重にすることができるが、止水材42の使用はしなくとも止水効果を有するので、使用してもしなくともよい。なお、止水材42を透明体3の外周面に周着させる作業は、透明体3を下型板36に挿入する前の段階、または透明体ユニット10が完成された後の段階において実施してもよい。
【0039】
次に、固定化材41の投入量を減じ、かつ透明体ユニット10の軽量化を実現させるために、枠体32の側板33内であって、下型板36の上に載置した薄膜(例えばビニールシート37)の上に、例えば、平面視三角形状の物を枠体32の四隅に配置したり、又はすべてのガラス板12を包囲する穴を有する平面視平板形状の物を枠体32内に配置したりする。ここで、枠体32内に設置する、固定化材41の投入量を減じるための物の形状は制限されない。
【0040】
次に、固定化材41を、枠体32の内部にコンクリートCの厚さ以下で任意の厚さになるまで流し込み、その表面をヘラで均す。その後、固定化材41を養生後、枠体32から取り出し、その平面中心部に図2に示すように貫通孔11を穿設する。
【0041】
以上の製造方法によって、図2又は図3に示すように、透明体3の中央部が固定化材41で固設され、前記透明体3の両端部近傍又は一方の端部近傍が露出し、番線13の一部を露出させた透明体ユニット10が製造される。そして、必要とする透明体ユニット10の数を同様の方法で製造する。
【0042】
透明体ユニット10製造にあたり、軽量の固定化材41を使用すれば透明体ユニット10が軽量化されるので、容易に作業者が取り扱うことができる。
【0043】
次に、第二工程を図7乃至図9で説明する。第二工程は、前記透明体ユニット10を型枠20の内部に設けられる鉄筋22に固設する工程であり、複数の透明体ユニット10のそれぞれを、透明体3の両端面又は片側のみの端面を、型枠20を構成する堰板21の内面に当接させた状態で、型枠20の内部に設けられる鉄筋22に固設する。
【0044】
透明体ユニット10の鉄筋22への固設方法は、透明体ユニット10に貫通孔11を穿孔しセパレーター23を挿通して、前記セパレーター23と鉄筋22とを番線13で緊結して固設する方法、及び/又は、透明体ユニット10の四隅に固定化材41で植設した番線13を鉄筋22に緊結して固設する方法などがあり、固定化方法は前記方法に限定されない。ここで、透明体ユニット10の大きさが鉄筋22間の間隔の大きさよりも大きい場合には、透明体ユニット10と干渉する部分の鉄筋22を切断して固設することもできる。
【0045】
次に、第三工程は前記型枠20の内部に生コンクリートを打設する工程であり、型枠20の内部に生コンクリートを打設する。この打設は、流し込む生コンクリートが透明体ユニット10に直接当たらないように流し込む。なお、必要に応じて、バイブレーターによって生コンクリートを型枠20の内部全体に均等に行き渡らせるが、この際、振動によって透明体3が破損することがないように留意する必要がある。
【0046】
そして、第四工程は前記透明体3の堰板21に当接した先端面12aをコンクリート体1の表面2aに現出させる工程であり、生コンクリートが養生硬化した後、型枠20を除去し、透明体3の堰板21に当接した両先端面12aをコンクリート体1の表面2aに現出させ、前記現出した透明体3の両先端面12aによって、図1又は図10に示すように、コンクリート体1の表面2aに模様を形成させる。図11はコンクリート体1の両面に透明体3を現出させた場合を示し、図12はコンクリート体1の片面に透明体3を現出させた場合を示している。
【0047】
次に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は実施例により限定されるものでない。
【実施例】
【0048】
実施例として、コンクリート体1としてコンクリート壁2を、透明体3として透き通ったガラス板12を、模様として8枚の花びらを有する一組の花模様を8組設定した場合について説明をする。
【0049】
まず、第一工程は花模様を形成するようにガラス板12を固設した透明体ユニット10を製造する工程であり、第一工程における透明体ユニット10の製造方法を説明する。
【0050】
透明体ユニット10の製造方法を図2乃至図6で説明する。コンクリート壁2に花模様を形成するために、コンクリート壁2の厚さと略同一の長さを有する透明なガラス板12を使用する。
【0051】
まず、水平な床面である土台30の上面にガラス板12の下端部を挟持して支持するU字形の支持材31を固定する。前記支持材31はU字形の凹部でガラス板12の下端部を挟持して支持する。
【0052】
次に、土台30の上面に、4枚の側板33を立設して平面正方形状の枠体32を形成する。前記枠体32の外周面の上端部と下端部には外桟木34を横設し、前記枠体32の形態を強固にする。また、枠体32の内周面には前記土台30からコンクリート壁2の厚さの約30%の高さに内桟木35を横設する。
【0053】
そして、前記支持材31によって立設されるガラス板12が挿通する複数の穴部(図なし)を設けた下型板36を内桟木35の上に載置する。そして、下型板36の上面にビニールシート37を敷いて、軽量モルタルMの漏れを防止する。また、ガラス板12を含む透明体ユニット10の軽量化を図るために、枠体32の四隅に平面三角形状の発泡樹脂材38を配置する。
【0054】
次に、8枚のガラス板12を下型板36の穴部にそれぞれ差込み、前記ガラス板12の下端部を支持材31によって挟持させて固定する。そして、図4に示すように、8枚のガラス板12の外周部を結ぶ線と、流し込む固定化材41の外周面との中間位置で、配設された8枚のガラス板12すべてを包囲するように番線40を環形状に配置し、かつ前記環形状に配置した番線40の中心点を交差点とし十字状にした番線40で環形状と十字状との番線40同士を結線する。また、4本の番線13を、前記番線13の一端を前記環状の番線40と結線し、他端をフリー状態で配置する。
【0055】
そして、固定化材41を流し込むときに、硬化後の固定化材41の厚さ方向の中間位置に番線40が配設されるように、前記番線40を上方に引き上げて番線40の高さを調整する。
【0056】
次に、パーライト(発泡体)を混合して製造した軽量生モルタルMを、枠体32の内部に約30〜80mmの厚さになるまで流し込み、その表面をヘラで均す。その後、軽量モルタルMを養生後、枠体32から取り出し、図2に示すように、その平面中心部に約8mmの貫通孔11を穿設する。これによって、一つの透明体ユニット10の製造が完了する。
【0057】
以上の製造方法によって、図2又は図3に示すように、ガラス板12の中央部が軽量生モルタルMで固設され、前記ガラス板12の両端部近傍が露出し、番線13をその一部を露出させた透明体ユニット10が製造される。そして、必要とする8つの透明体ユニット10を製造する。
【0058】
透明体ユニット10を、軽量モルタルMを使用して形成しているので、容易に作業者が取り扱うことができる。
【0059】
次に、第二工程を図7乃至図9で説明する。第二工程は、前記透明体ユニット10を型枠20の内部に設けられる鉄筋22に固設する工程であり、複数の透明体ユニット10のそれぞれを、ガラス板12の一方の先端面12aを、型枠20を構成する一方の堰板21の内面に当接させた状態で、型枠20の内部に設けられる鉄筋22に固設する。その後、型枠20を構成する他方の堰板21を取付け、その内面にガラス板12の他方先端面12aを当接させる。
【0060】
また、透明体ユニット10の貫通孔11にセパレーター23を挿通し、前記セパレーター23と鉄筋22とを番線13で結びつけて固縛している。また、透明体ユニット10の四隅に軽量モルタルMで植設した番線13と鉄筋22と結びつけて固縛する。
【0061】
次に、第三工程は前記型枠20の内部に生コンクリートを打設する工程であり、型枠20の内部に生コンクリートを打設する。この打設は、生コンクリートを、透明体3ユニット10に当たらないように流し込んで行う。
【0062】
そして、第四工程は前記ガラス板12の堰板21に当接した先端面12aをコンクリート壁2の表面2aに現出させる工程であり、生コンクリートが養生硬化した後、型枠20を除去し、ガラス板12の両先端面12aをコンクリート壁2の表面2aに現出させ、この現出したガラス板12の両先端面12aによって、図1に示すようにコンクリート壁2の内側と外側の両面2aに花模様を形成させる。
【0063】
以上の工程を経て、ガラス板12を設置した型枠20内にコンクリートCを打ち込んで、1枚のガラス板12を1枚の花びらとする8枚の花びらを有する花模様を8組配置したコンクリート壁2を施工することができた。
【符号の説明】
【0064】
1 コンクリート体
2 コンクリート壁
2a 表面
3 透明体
10 透明体ユニット
11 貫通孔
12 ガラス板
12a 先端面
13 番線
20 型枠
21 堰板
22 鉄筋
23 セパレーター
30 土台
31 支持材
32 枠体
33 側板
34 外桟木
35 内桟木
36 下型板
37 ビニールシート
38 発泡樹脂材
40 番線
41 固定化材
42 止水材
C コンクリート
M モルタル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明体を生コンクリート内に打込んで模様を形成させる施工方法であって、コンクリート体の厚さと略同一の長さを有する個々の透明体を、形成する模様における個々の透明体の対応する位置関係に基づいて配設した後、前記配設した透明体の両端部を露出させ、前記透明体の中間部を固定化材によって固めた透明体ユニットを製造する第一工程と、打設前の型枠における、形成する模様における個々の透明体ユニットの対応する位置に、前記個々の透明体ユニットに貫設された透明体の両先端面を堰板に当接させた状態で、前記個々の透明体ユニットを鉄筋に固設する第二工程と、前記型枠の内部に生コンクリートを打設する第三工程と、前記生コンクリートが硬化後、前記型枠を除去し、前記個々の透明体の堰板に当接させた両先端面をコンクリート表面に現出させる第四工程と、を含む工程からなることを特徴とする透明体打込みコンクリート体の施工方法。
【請求項2】
透明体を生コンクリート内に打込んで模様を形成させる施工方法であって、コンクリート体の厚さより短い長さを有する個々の透明体を、形成する模様における個々の透明体の対応する位置関係に基づいて配設した後、前記配設した透明体の少なくとも一方の端部を露出させ、前記透明体の非露出部を固定化材によって固めた透明体ユニットを製造する第一工程と、打設前の型枠における、形成する模様における個々の透明体ユニットの対応する位置に、前記個々の透明体ユニットに貫設された透明体の少なくとも一方の先端面を堰板に当接させた状態で、前記個々の透明体ユニットを鉄筋に固設する第二工程と、前記型枠の内部に生コンクリートを打設する第三工程と、前記生コンクリートが硬化後、前記型枠を除去し、前記個々の透明体の堰板に当接させた先端面をコンクリート表面に現出させる第四工程と、を含む工程からなることを特徴とする透明体打込みコンクリート体の施工方法。
【請求項3】
第一工程において、透明体の外周面と、固定化材及び/又はコンクリートとの間に止水材を介設することを特徴とする請求項1又は2に記載の透明体打込みコンクリート体の施工方法。
【請求項4】
第一工程において、前記透明体ユニットの中心部に貫通孔を穿設し、第二工程において前記個々の透明体ユニットの貫通孔にセパレーターを挿通させて、前記セパレーターと鉄筋とを緊結する方法、及び/または、第一工程において、番線を固定化材によって透明体とともに固めて前記透明体ユニットに植設し、第二工程において、前記個々の透明体ユニットに植設されている番線を鉄筋に緊結する方法により、前記個々の透明体ユニットを固設することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の透明体打込みコンクリート体の施工方法。
【請求項5】
第三工程において,生コンクリートを、平面視で前記透明体ユニットの上面を避けて、前記透明体ユニット間の隙間に向けて打設することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の透明体打込みコンクリート体の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−226110(P2011−226110A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95621(P2010−95621)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(510108939)
【出願人】(509258382)
【Fターム(参考)】