説明

透明固形石鹸組成物の製造方法

【課題】
従来の公知の技術にあるようなエチルアルコール等の一価の低級アルコールを使用することなく、低級アルコールを蒸散させるための、長時間にわたる熟成・乾燥工程の必要も無く、透明性に優れ、即泡性でかつ短時間にクリーミーで豊富な泡量を有し、使用期間中に白濁化等の溶け崩れをおこすことがない、透明固形石鹸組成物を生産性良く製造する方法を提供することである。
【解決手段】
透明固形石鹸組成物の製造方法は、炭素原子数12の脂肪酸及び炭素数14の脂肪酸の合計が脂肪酸中40〜80重量%である、炭素原子数12〜24の飽和脂肪酸及び/又は不飽和直鎖脂肪酸の2種以上の混合脂肪酸30〜40重量部、ジプロピレングリコール16〜26重量部、スクロース15〜25重量部、炭素数8〜12の直鎖及び分岐アルキル飽和脂肪酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪酸と低級多価アルコールとのエステルである中鎖脂肪酸エステル2〜7重量部及び水分を混合しながら加熱して前記脂肪酸を溶解させ、次いで、水酸化ナトリウム/水酸化カリウムの重量比が85/15〜50/50であるアルカリを用いて脂肪酸を中和した後、温度85〜100℃で均一な透明溶液となるまで熟成し、得られた該溶液混合物を所定の容器に充填冷却させて製造することを特徴とする、透明固形石鹸組成物の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚洗浄用の透明固形石鹸組成物の製造方法に関し、特に、透明性及び硬度に優れ、使用期間中、白濁化を発生することがなく、泡立ちが早く(即泡性)、クリーミーで豊富な泡量を得ることができる、透明固形石鹸組成物の製造方法を提供することにある。
【背景技術】
【0002】
一般的には、顔や身体などの皮膚洗浄用透明固形石鹸は 枠練り法により製造されている。
具体的には、従来の枠練り法による透明固形石鹸は、透明化溶液を得るために多量のエチルアルコールと、脂肪酸または油脂を苛性アルカリ、アルカノールアミン類や塩基性アミノ酸等によって中和またはケン化して得られる脂肪酸石鹸と、更に砂糖等の糖類、ソルビトール、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコール類、更に色素、香料等を加熱混合し、透明溶解させた後、所定の枠に流し込み、冷却固化後に切断、成形される。次いで当該成形物中のエチルアルコール等の揮発成分が目的の重量に達するまで揮発させる熟成工程を経て製造されている。
これらの工程中、水分や低級アルコール、糖類、多価アルコール等の量を調節することで、固形石鹸の透明性や硬度等の調整をおこなっている。
【0003】
しかしながら、これらの公知の技術では、透明で且つ流動性のある溶液を得るために使用するエチルアルコールは、最終製品に対して必要以上の多量のアルコールを用いる必要があり、不経済であった。また、石鹸固形成形物中に残存するアルコールを、目的の含有量になるまで常温にて揮発させる必要があり、1〜2ヶ月に及ぶ長期間を要した。その間、熟成、乾燥のために広大なスペースが必要である。更にその際に、温度・湿度管理システムなども必要となる等、工業的生産性上大きな阻害となり、問題であった。
【0004】
これらの公知の生産性を改良するための方法としてエチルアルコールを使用することのない種々の方法が提案されている。
例えば、特開2003−82394号公報には、油脂類の鹸化又は中和物、液状多価アルコール類、糖類及び水を含有し、低級一価アルコール類を実質的に含有しない枠練り透明固形石鹸が開示されている。更に詳しくは、当該透明固形石鹸の必須成分として、石鹸全量に対し、前記液状多価アルコール類を18〜24重量%、糖類を15〜22重量%、及び水を10〜16重量%含有し、前記液状多価アルコール類は石鹸全量に対して15重量%以上のジプロピレングリコールを少なくとも含むことが必要であり、同時に、前記糖類はソルビトールが主成分であることが記載されている。
しかし、当該公報の石鹸は、水に対する溶解度が大きいジプロピレングリコールとソルビトールを主要な透明化成分として多量に用いるために、使用時の水への溶け出し量が多く、消費が早すぎるという欠点がある。また当該公報の石鹸の硬度は十分ではなく、従って溶け崩れの問題点がある。
【0005】
また、石鹸の透明度を改良するために、透明化に寄与する成分として、例えば、ジヒドロキシアルキル化シクロデキストリン(特許文献2)、イソプロピレングリコール(特許文献3)等を使用することが提案されているが、多価アルコール以上の透明化性能は期待できない。
また、ポリオキシエチレンやポリオキシプロピレンなどのグリセリン誘導体と両性界面活性剤とノニオン界面活性剤等の組み合わせ(特許文献4)、モノカプリル酸グリセリルやモノカプリル酸ソルビタン等のHLBが6〜12の多価アルコールエステル(特許文献5)、高級脂肪酸塩とアシルアミノ酸塩等の組み合わせ(特許文献6)等が提案されているが、何れも親水性化合物であり、石鹸の硬度への改良、溶け崩れの改良に対する効果は期待できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−82394号公報
【特許文献2】特開平8−268876号公報
【特許文献3】特開平7−53997号公報
【特許文献4】特開2004−352997号公報
【特許文献5】特開2007−70415号公報
【特許文献6】特開平10−147800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、従来の公知の技術にあるようなエチルアルコール等の一価の低級アルコールを使用することなく、低級アルコールを蒸散させるための長時間にわたる熟成・乾燥工程を必要とせず、透明性に優れ、即泡性でかつ短時間にクリーミーで豊富な泡量が得られ、使用期間中に白濁化、溶け崩れをおこすことがない、透明固形石鹸組成物を生産性良く製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、所定組成の脂肪酸、スクロース、ジプロピレングリコールと、従来から透明化のための必須成分としては知られていなかった疎水性化合物である中鎖脂肪酸エステルとを、それぞれ所定量範囲で混合溶解させた後、アルカリによる中和、熟成、そして冷却を経ることによって、上記課題を解決できる透明固形石鹸組成物の製造が可能となることを見出し、本発明に到達した。
本発明は、従来透明化剤として使用されていたグリセリン、ソルビトールなどを使用することなく、疎水性化合物である中鎖脂肪酸エステルを用いて容易に透明な固形石鹸を製造することができる、透明固形石鹸の製造方法である。
【0009】
即ち、本発明の透明固形石鹸組成物の製造方法は、炭素原子数12の脂肪酸及び炭素数14の脂肪酸の合計が脂肪酸中40〜80重量%である、炭素原子数12〜24の飽和脂肪酸及び/又は不飽和直鎖脂肪酸の2種以上の混合脂肪酸30〜40重量部、ジプロピレングリコール16〜26重量部、スクロース15〜25重量部、炭素数8〜12の直鎖及び分岐アルキル飽和脂肪酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪酸と低級多価アルコールとのエステルである中鎖脂肪酸エステル2〜7重量部及び水分を混合しながら加熱して前記脂肪酸を溶解させ、次いで、水酸化ナトリウム/水酸化カリウムの重量比が85/15〜50/50であるアルカリを用いて脂肪酸を中和した後、温度85〜100℃で均一な透明溶液となるまで熟成し、得られた該溶液混合物を所定の容器に充填冷却させて製造することを特徴とする、透明固形石鹸組成物の製造方法である。
【0010】
また、好適には、本発明の透明固形石鹸組成物の製造方法は、前記透明固形石鹸組成物の製造方法において、低級多価アルコールがエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、透明固形石鹸組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の固形石鹸組成物の製造方法は、エタノール等の一価アルコールを多量に用いること無く、又長期間にわたる熟成も必要なく、長時間にわたる熟成・乾燥工程の必要も無く、透明性に優れ、即泡性でかつ短時間にクリーミーで豊富な泡量を有し、使用期間中に白濁化等の溶け崩れをおこすことがない、透明固形石鹸組成物を生産性良く製造することができる。
また、本発明の固形石鹸の製造方法は、融点が95℃であるソルビトールを使用せず、約180℃のスクロースを多量に使用しても均一に透明化でき、得られる固形石鹸の凝固点も上昇し、硬度にも優れ、使用途中の水による石鹸のふやけ、膨潤、白濁化などを生じることがない、透明固形石鹸組成物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を以下の好適例に基づいて説明するが、これらに限定されるものではない。
本発明の固形石鹸組成物の製造方法は、炭素原子数12の脂肪酸及び炭素数14の脂肪酸の合計が脂肪酸中40〜80重量%である、炭素原子数12〜24の飽和脂肪酸及び/又は不飽和直鎖脂肪酸の2種以上の混合脂肪酸30〜40重量部、ジプロピレングリコール16〜26重量部、スクロース15〜25重量部、炭素数8〜12の直鎖及び分岐アルキル飽和脂肪酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪酸と低級多価アルコールとのエステルである中鎖脂肪酸エステル2〜7重量部及び水分を混合しながら加熱して前記脂肪酸を溶解させ、次いで、水酸化ナトリウム/水酸化カリウムの重量比が85/15〜50/50であるアルカリを用いて脂肪酸を中和した後、温度85〜100℃で均一な透明溶液となるまで熟成し、得られた該溶液混合物を所定の容器に充填冷却させて製造する方法である。
【0013】
本発明で使用される脂肪酸としては、炭素原子数12〜24の、飽和脂肪酸及び/又は不飽和直鎖脂肪酸の2種以上の混合脂肪酸である。
好ましくは、炭素数12〜18の飽和脂肪酸及び/又は不飽和直鎖脂肪酸が好適に使用でき、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸及びそれらの混合物である混合脂肪酸、更に、ヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、パーム油脂肪酸等の水素添加による半硬化及び/又は完全硬化脂肪酸の分留脂肪酸を単独でまたは混合脂肪酸として使用することができる。
上記脂肪酸を2種以上の混合酸としたのは、各脂肪酸の単独組成のみでは透明な固形石鹸を得る製造することは出来ず、2成分以上の組成を用いた時のみ透明化が可能であるからである。
より好ましくは、本発明の透明固形石鹸組成物の原料となる混合脂肪酸の組成としては、脂肪酸中、炭素原子数12の脂肪酸が0〜60重量%、14の脂肪酸が0〜80重量%であって、当該炭素原子数12と炭素原子数14の脂肪酸の合計が40〜80重量%であることが、透明で、即泡性で且つ泡立ちの良い固形石鹸を製造できる点から好ましい。
好適には、前記脂肪酸中、特にラウリン酸及びミリスチン酸を使用することが即泡性で且つ泡立ちがよく、淡色の固形石鹸を製造できる点から望ましい。
さらに、脂肪酸中、炭素数16の脂肪酸が10〜50重量%、ステアリン酸とオレイン酸を含む炭素数18の脂肪酸が1〜50重量%であることが、透明性、即泡性、泡立ちをより向上させることができる点から好ましい。
【0014】
本発明の製造方法で使用される脂肪酸の配合割合は、上記したように、30〜40重量部であり、特に33〜37重量部が好ましい。
炭素数が12〜24の飽和脂肪酸及び/又は不飽和直鎖脂肪酸の配合量が、かかる範囲であると、石鹸の即泡性が優れ、石鹸の硬度も十分に固く、また石鹸の透明性も優れたものとなる。
【0015】
本発明の製造方法において、脂肪酸を中和して脂肪酸石鹸を得るために使用するアルカリは、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの混合物であり、かかる水酸化ナトリウム/水酸化カリウムの重量比は85/15〜50/50である。これらの水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムは、別個に配合しても、または予め配合された混合アルカリを用いてもいすれでも良い。
特に好ましい水酸化ナトリウム/水酸化カリウムの重量比は75/25〜55/45である。
水酸化ナトリウムの比率が85より高くなるにつれて透明性が失われ、50/50より水酸化カリウムが多くなると石鹸の硬度が低下すると共に水に溶けすぎる。
脂肪酸の中和には、かかるアルカリを予めアルカリ水溶液(例えば、有効分濃度48%を基準)として用いる方が短時間で均一な溶液を得ることができる。
【0016】
また、本発明による透明固形石鹸組成物に含有される脂肪酸石鹸としては、例えば、ラウリン酸ナトリウムまたはナトリウム/カリウムの混合塩、ミリスチン酸ナトリウムまたはナトリウム/カリウムの混合塩、パルミチン酸ナトリウムまたはナトリウム/カリウムの混合塩、ステアリン酸ナトリウムまたはナトリウム/カリウムの混合塩及びオレイン酸ナトリウムまたはナトリウム/カリウムの混合塩等が挙げられ、これらを2つ以上混合して使用することが透明で且つ即泡性で且つ泡立ちの良い固形石鹸を製造できる点から望ましい。
より好ましくは、ラウリン酸ナトリウムまたはラウリン酸ナトリウム/ラウリン酸カリウムの混合塩、ミリスチン酸ナトリウムまたはミリスチン酸ナトリウム/ミリスチン酸カリウムの混合塩、パルミチン酸ナトリウムまたはパルミチン酸ナトリウム/パルミチン酸カリウムの混合塩、ステアリン酸ナトリウムまたはステアリン酸ナトリウム/ステアリン酸カリウムの混合塩などの、飽和脂肪酸ナトリウムまたは飽和脂肪酸ナトリウム/飽和脂肪酸カリウムの混合塩が、得られる固形石鹸組成物の臭気、酸化による色相の黄変などの経時変化が少ないために望ましい。
【0017】
本発明の製造方法で使用されるジプロピレングリコールは、上記したように、16〜26重量部の量で配合され、特に17〜25重量部が好ましい。
配合量が16重量部未満であると透明性が低下し、一方、26重量部を越えると得られる石鹸が柔らかくなり、また使用時に溶けすぎ、使用しにくくなる。
【0018】
本発明で用いる中鎖脂肪酸エステルは、炭素数8〜12の直鎖及び分岐アルキル飽和脂肪酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリンからなる群より選ばれる少なくとも1種の低級多価アルコールとからなるエステルである。
具体的には、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
これらの中鎖脂肪酸エステルは少量の添加量でも優れた透明化効果を発揮するが、石鹸の油性成分としても作用し、優れた使用感と起泡力を与える。
本発明においては、中鎖脂肪酸エステルを用いることで、疎水性である中鎖脂肪酸エステル分子が石鹸分子の疎水基間へ介入することによって石鹸分子同士の会合が妨げられ、石鹸ミセルの会合数を極小化すると同時にジプロピレングリコールとスクロースの分子間に均一に拡散させることによって、可視光線を透過しやすくなり、結果として透明性を示すものとも推察される。
当該中鎖脂肪酸ク゛リコールエステルの配合量は、上記したように、1〜7重量部であり、特に2〜6重量部が好ましい。
1重量部未満であると透明化の効果が十分に得られず、一方、7重量部越えると逆に透明度が低下する傾向が強くなる。
【0020】
本発明で用いるスクロースは、スクロースであれば特に限定されないが、精製されたグラニュー糖が得られる石鹸組成物を着色する事が最も少ないために好ましい。
本発明の製造方法で使用されるスクロースの配合量は、上記したように、15〜25重量部である。特に好ましくは17〜24重量部である。15重量部未満では石鹸の硬度が低くなり、溶け崩れがおきやすく消費が早くなる。25重量部を超えると透明に溶解しきれなかったり、冷却後に透明度が低下したりもする。
【0021】
本発明の固形石鹸製造時における添加水及び各原料に含まれる水は、10〜15重量部である。
また、これらの水分の他に、脂肪酸とアルカリとの中和によって生成する水分等があり、本発明の透明石鹸の製造過程において含有される水分の合計量は、特に12〜17重量部となることが好ましい。
かかる範囲であると、石鹸の透明度が良好であり、粘度も適正な範囲であり、型枠への充填が容易だからである。
【0022】
本発明の製造方法は、アルカリ中和工程前にスクロースを含め主要な配合成分を全て仕込み、加温・混合しながら脂肪酸を溶解し、アルカリで中和して均一溶液とする。
スクロースが一部溶解しにくい場合には、一部又は全てのスクロースをアルカリ中和後に仕込み、混合溶解することも可能である。
次いで85〜100℃で均一な透明溶液となるまで熟成し、得られた混合物を所定の容器に充填冷却させて製造する。
このように、本発明の固形石鹸組成物の製造方法は、従来のような乾燥工程を必要としない簡便な方法である。
【0023】
更に、本発明の透明固形石鹸の製造方法には、上述した必須成分以外にも公知のアニオン界面活性剤類、ノニオン界面活性剤類、両性界面活性剤類や高級アルコール類、スクワラン、種々の液体状あるいは固体状脂肪酸エステル類、オリーブ油、ゴマ油等の各種精製天然油脂類などの油性成分、ポリオキシエチレンアルキル変性ジメチルシリコ―ンなどのシリコーン誘導体、各種水溶性高分子、各種キレート剤、各種防腐剤、各種紫外線防止剤、動植物由来の各種天然抽出物類、凝固点、硬度の調節に食塩、ボウ硝等の無機塩、酸化防止剤、色素類、香料類、その他を本発明の効果を損なわない程度の範囲内で含有させることができる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を次の実施例、比較例及び試験例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
使用した配合原材料は下記のものである。
[配合成分]
脂肪酸
ラウリン酸(MW200):商品名 ラウリン酸98・ミヨシ油脂株式会社製
ミリスチン酸(MW228):商品名 ミリスチン酸98・ミヨシ油脂株式会社製
パルミチン酸(MW256):商品名 パルミチン酸98・ミヨシ油脂株式会社製
ステアリン酸(MW284):商品名 ステアリン酸98・ミヨシ油脂株式会社製
オレイン酸(MW282):商品名 エキストラオレイン80−R・
日本油脂株式会社製
ベヘン酸(MW341):商品名 NAA−222S・日本油脂株式会社製
アルカリ
水酸化ナトリウム:商品名 水酸化ナトリウム・旭硝子株式会社製
水酸化カリウム:商品名 水酸化カリウム・旭硝子株式会社製
グリセリン・グリコール類
グリセリン:商品名 化粧品用濃グリセリン・ミヨシ油脂株式会社製
プロピレングリコール:商品名 プロピレングリコール・旭硝子株式会社製
ジプロピレングリコール:商品名 ジプロピレングリコール・旭硝子株式会社製
【0025】
糖類
ソルビトール:商品名 SORBITOL LTS POWDER 50M・
三菱商事フードテック株式会社製
スクロース(グラニュー糖):商品名 グラニュー糖・日新製糖株式会社製
脂肪酸エステル
トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル:
商品名 NIKKOLトリエスターF−810・
日光ケミカルズ株式会社製
トリカプリル酸グリセリル:トリカプリル酸グリセリル・日本精化株式会社製
トリカプリン酸グリセリル:トリカプリン酸グリセリル・日本精化株式会社製
ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール:MYRITOL PC・
コグニスジャパン株式会社製
ジカプリル酸プロピレングリコール:NIKKOL Sefsol−228・
日光ケミカルズ株式会社製
ジカプリン酸プロピレングリコール:NIKKOL PDD・
日光ケミカルズ株式会社製
その他(添加剤)
オリーブ油:NIKKOLオリーブ油・日光ケミカルズ株式会社製
エデト酢酸ナトリウム(4Na塩):キレスト40・キレスト株式会社
食塩:塩化ナトリウム・富田製薬株式会社
トコフェロール:イーミックス−D・エーザイ株式会社
香料:ラベンダーエッセンシャルオイル (株)生活の木
【0026】
実施例1〜15、比較例1〜12(固形石鹸の調製方法)
攪拌機付き2Lのステンレス製のビーカーに、表1〜表3に示す配合量で、脂肪酸、グリセリンやジプロピレングリコール等のグリセリン・グリコール類、ソルビトールやグラニュー糖等の糖類、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル等の中鎖脂肪酸エステル、必要に応じてオリーブ油、エデト酸四ナトリウム、食塩、トコフェノール及び水の所定量を投入し、加熱しながら混合し脂肪酸を溶解した。
約70℃に達した時に、各表に示す量の水酸化ナトリウムと水酸化カリウムを所定量の水に溶解した水溶液で、徐々に添加して脂肪酸を中和した。該中和後混合物の温度を90〜100℃に保ち、水を留出させない様に留意して、攪拌しながら熟成した。
その際に含まれる水分量を反応生成水も含めて計算し、水分総量(重量部、計算値)として表1〜3に示す。
その後、攪拌を停止し、ビーカー内を目視して透明、均一に溶解していることを確認した後、少量サンプルを採取してカールフィシャー法(JIS K 0113)にて水分を測定した。
得られた混合物をポリプロピレン製のバット(縦×横×高さ:125×220×35mm)に流し込み、放冷しながら24時間保存し、板状の固形石鹸を得る。その後、縦×横×高さ:30×50×25mmのサイズに切り出し評価試験の供試体とした。
【0027】
次に、評価試験の項目と評価方法を説明する。
(評価方法)
実際の使用に沿って評価・判断するため、透明性、硬さ、表面の状態そして外観安定性については男性パネラー5名(28、29,35,37と45歳)、洗浄使用時の状態評価については女性パネラー5名(27、30、35、46と55歳)により判定し、最多数の判定値を本評価値とした。その結果を表1〜表3に示す。
【0028】
1.透明性
白紙上に描かれた太さ2mm、長さ20mmの黒色の十字の上に各供試体の石鹸片を設置し、各供試体石鹸の厚さ25mmを通して上方から、前記十字を目視観察した。
得られた結果を各表1〜3に示す。
評価は次のようにして行なった。
極めてしっかりと黒く見えるとき(◎)、ほぼ黒く見えるとき(○)、全体的に僅かにごっている(半透明状態)か白濁部分がほぼ50%以下である(△)、ほとんど濁っている又は部分的に50%以上白濁状態である(×)。
【0029】
2.硬さ(釜出し24時間後)
各石鹸供試体を手指で押し、硬さを判定した。その結果を表1〜表3に示す。
評価は次のようにして行なった。
硬く全く変形無し(◎)、表面が僅かだが変形する(○)、表面が変形する(△)、全体的に変形し易い(×)。
【0030】
3.表面のベタツキ状態(釜出し後24時間後)
各石鹸供試体を手指・目視で接触・観察し、ベタツキ状態を判定した。その結果を表1〜表3に示す。
評価は次のようにして行なった。
ベタツキがなくさらっとしている(◎)、ほとんどベタツキは無い(○)、多少はある(△)、ベタツキがある(×)。
【0031】
4.表面の白化状態(釜だし後72時間後)
各石鹸供試体の目視観察により判定した。その結果を表1〜表3に示す。
評価は次のようにして行なった。
白化は全く無い(◎)、ほとんど無い(○)、多少はある(△)、全体的に白化状態である(×)。
【0032】
5.使用時の評価(部位:手洗い、洗顔)
以下の、石鹸の使用時の評価は、実用的評価として実際に1週間毎日(朝、晩 計2回)行った。
20〜25℃の水で両手を濡らし、上述の各石鹸供試体片を両手で2〜3回軽くこすり、各石鹸供試体の溶解性を判定した。更に石鹸を外した後に手もみを繰り返して泡立て、即泡性と泡量ときめ細かさを評価した。最多数の判定値を本評価値とした。
5−1.使用時の溶解性
上記溶解性の結果を表1〜表3に示す。
評価は次のようにして行なった。
普通である(○)、やや解け過ぎ(△)、解け過ぎまたは溶けにくい(×)。
5−2.使用時の泡の状態(部位:手洗い、洗顔)
上記使用時の泡の状態を評価し、その結果を表1〜表3に示す。
評価は次のようにして行なった。
5回以内の手もみで即泡立ち、泡量も多く、きめ細かさも良く洗顔は満足できた(◎)、5回以内の手もみで即泡立ち、泡量がやや少ないが洗顔は満足できた(○)、5回以上の手もみで泡は立つが、泡量はやや少な目で洗顔は不十分であった(△)、泡立ちが悪く、洗顔には不満足であった(×)。
【0033】
6.石鹸の凝固点
石鹸の凝固点を推定するために、製造時、充填前に100mlのガラスのビーカーに約60mlの溶融液を分取し、温度計でゆっくり攪拌しながら放冷し、流動性が急激になくなる温度を測定した。
なお、流動性の低下は急激に現れ、再現性の精度はプラス/マイナス1℃以内であった。
【0034】
総合評価
各表1〜3中の総合評価は、以下の評価で行なった。
○・・・上記1〜6の評価がすべて○以上のもの(合格・・・実用性あり)
×・・・上記1〜6の評価のうち△以下の評価が1つでもあるもの
(不合格・・・実用性なし)
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
上記表1の比較例1〜8より、配合成分が本件発明の範囲外であったり、その配合量が本件発明の範囲外であると、得られる石鹸は、透明性、即泡性、豊富な泡量及び耐白濁化性や耐溶け崩れ性をすべて満足することができないことがわかる。
【0039】
また、上記表2より、本発明の範囲で種々の中鎖脂肪酸エステルが透明化に寄与し、中鎖脂肪酸エステルの代わりにオリーブ油等の長鎖エステルを用いても透明石鹸は得られないことがわかる。
【0040】
上記表3より、本発明の中鎖脂肪酸エステルが2〜6重量%で透明化に有効に作用することがわかる。また、表1、3よりソルビトールよりスクロースのほうが石鹸の凝固点が高く使用時に溶け過ぎることが無く、実施例13、14、15に見られるように食塩等によって容易に凝固点を高めに調整することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の透明固形石鹸は、顔や身体の皮膚洗浄用に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素原子数12の脂肪酸及び炭素数14の脂肪酸の合計が脂肪酸中40〜80重量%である、炭素原子数12〜24の飽和脂肪酸及び/又は不飽和直鎖脂肪酸の2種以上の混合脂肪酸30〜40重量部、ジプロピレングリコール16〜26重量部、スクロース15〜25重量部、炭素数8〜12の直鎖及び分岐アルキル飽和脂肪酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪酸と低級多価アルコールとのエステルである中鎖脂肪酸エステル2〜7重量部及び水分を混合しながら加熱して前記脂肪酸を溶解させ、次いで、水酸化ナトリウム/水酸化カリウムの重量比が85/15〜50/50であるアルカリを用いて脂肪酸を中和した後、温度85〜100℃で均一な透明溶液となるまで熟成し、得られた該溶液混合物を所定の容器に充填冷却させて製造することを特徴とする、透明固形石鹸組成物の製造方法。
【請求項2】
請求項1項記載の透明固形石鹸組成物の製造方法において、低級多価アルコールがエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、透明固形石鹸組成物の製造方法。

【公開番号】特開2010−180381(P2010−180381A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27777(P2009−27777)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(503174051)有限会社エス・ピー・エイチ (2)
【Fターム(参考)】