説明

透明基板の欠陥検査装置および透明基板の欠陥検査方法

【課題】高価な評価機器や顕微鏡を用いることなく、非破壊にて精度高く透明基板の欠陥を検査することができる欠陥検査装置を提供する。
【解決手段】オフ角を有する透明基板の欠陥検査装置であって、該欠陥検査装置は、少なくとも、光源と、前記透明基板を透過した透過光を測定する固体撮像素子からなる受光部と、2枚の偏光板と、前記透明基板を載置するためのサンプルステージと、前記サンプルステージおよび前記2枚の偏光板を前記透明基板のオフ角に対応させて前記受光部に対して傾けることができるチルト機構とを備え、前記2枚の偏光板のうち一方は前記光源と前記サンプルステージとの間に、もう一方は前記サンプルステージと前記受光部との間に、少なくとも1枚の偏光板が前記サンプルステージと平行になるように配置され、かつ前記2枚の偏光板は透過軸のズレが30°以内となるように配置されたものであることを特徴とする透明基板の欠陥検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SiC等のオフ角を有する透明基板の欠陥を検査するための装置および検査方法に関わり、特にSiC基板のマイクロパイプを評価するのに好適な欠陥検査装置および欠陥検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
SiC単結晶は、シリコン(Si)単結晶と比較して、非常に優れた電気的、物理的性質を有しているため、従来にない高性能なパワーデバイスの実現を可能にすると考えられており、近年、パワーデバイス用途の基板材料として有望視されている。
【0003】
しかし、このSiC単結晶から製造されるSiC基板には、その製造の際に、マイクロパイプと呼ばれる直径10μm以下の中空のパイプ状貫通欠陥が含まれてしまうことがある。このマイクロパイプはデバイスの電気特性に悪影響を与えるため、良好な特性を有するデバイスを作製するには高品質なSiC基板が必要不可欠であり、それ故、SiC基板内部の欠陥の有無等の評価を行うことが重要であるといえる。
【0004】
一般的なSiC基板の欠陥(マイクロパイプ)の評価方法としては、破壊検査として、KOHエッチングによる検査方法がある。この方法は、高温で溶融したKOH中にSiC基板を浸漬させ、マイクロパイプを選択エッチングしてマイクロパイプの径を大きくし、光の散乱を利用して、肉眼又は光学顕微鏡により観察し、評価を行うものである。
【0005】
しかし、この方法は、劇薬であるKOHを用いる上、KOH選択エッチングの際、KOHを500℃前後にまで加熱する必要があり、安全上好ましくないものである。また、破壊検査のため、評価したSiC基板を製品として使用することができず、従って、製品歩留りを落としてしまうという問題もあった。
【0006】
非破壊の評価方法として、例えば特許文献1には、透明基板に光を透過させ投影画像を画像処理して検出する方法がある。具体的には、SiC基板裏面から透過照明にて照らし、基板表面からの透過光の投影画像をカメラによって撮像し、撮像した投影画像にマイクロパイプである画像処理を行い、画像処理によって区分された投影画像に基づいてマイクロパイプの検出を行う方法が開示されている。
【0007】
また、非破壊の評価方法として、例えば、特許文献2,3には、ホトルミネッセンスによる評価方法が開示されている。
しかし、これらの方法は、非破壊検査ではあるものの、顕微鏡や画像処理装置等が必要であり、高価な評価装置を一式揃えるのにコストがかかるという問題があった。また、これらの方法は、必ずしも評価精度も高くなかった。
【0008】
更に、非破壊の評価方法として、Candelaによる測定があるが、Candelaにて測定した場合は、マイクロパイプなのか、マイクロパイプでないのか、判定するために欠陥1個1個個別に解析する必要があり、このため、解析に時間が浪費されてしまうという問題があった。
【0009】
この他にも、特許文献4では、シートのピンホールを非破壊で検出する評価方法及び評価装置として、シートを透過させた光の強度をシートの他方に配置した固体撮像素子からなる受光部によって検出し、検出された光の強度からピンホールを検出する検査装置が開示されている。
このピンホールの検査対象としては、シート、被検査基板、円筒状被検物、光ディスク、金属板シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−309426号公報
【特許文献2】特許3917154号公報
【特許文献3】特開2009−54771号公報
【特許文献4】特開平6−18445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしこの特許文献4等の検査装置では、SiCのようにバンドギャップが大きい透明基板は光の透過性が高いため、マイクロパイプのようなピンホール検査に於いて、ピンホールを通過した光とそれ以外の部分で透過した光量が近くなり、S/N比が低く欠陥検出が困難であるという問題がある。また、フィルムシート検査のため、サンプルステージが傾かず、SiCのようにオフ角を持つ基板の場合、S/N比が低く欠陥検出が困難であるという問題がある。
【0012】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、高価な評価機器や顕微鏡を用いることなく、非破壊にて精度高く透明基板の欠陥を検査することができる欠陥検査装置と欠陥検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明では、オフ角を有する透明基板の欠陥検査装置であって、該欠陥検査装置は、少なくとも、光源と、前記透明基板を透過した透過光を測定する固体撮像素子からなる受光部と、2枚の偏光板と、前記透明基板を載置するためのサンプルステージと、前記サンプルステージおよび前記2枚の偏光板を前記透明基板のオフ角に対応させて前記受光部に対して傾けることができるチルト機構とを備え、前記2枚の偏光板のうち一方は前記光源と前記サンプルステージとの間に、もう一方は前記サンプルステージと前記受光部との間に、少なくとも1枚の偏光板が前記サンプルステージと平行になるように配置され、かつ前記2枚の偏光板は透過軸のズレが30°以内となるように配置されたものであることを特徴とする透明基板の欠陥検査装置を提供する。
【0014】
このような構造の透明基板の欠陥検査装置とすることによって、マイクロパイプを有するSiC等の透明基板のピンホールを透過して受光部に到達した光と、欠陥部以外の基板を透過して受光部に到達した光との区別を容易にすることができ、透明基板の有するピンホールの位置やその数などを非破壊にて高精度に評価することができる。また、2枚の偏光板の透過軸のズレは30°以内であるため、ピンホールを透過した光の光量の減衰を抑制することができ、高精度な欠陥検出が行える検査装置とすることができる。そして、主な構成は光源と2枚の偏光板と受光部であるため、高価な評価機器が不要であり、安価な高精度の透明基板の欠陥検査装置とすることができる。更に、検査対象の透明基板のオフ角に対応させて偏光板とサンプルステージを傾けることができるチルト機構を有しているため、オフ角を有する透明基板の欠陥を検査するにあたって、オフ角に対応させて偏光板やサンプルステージを傾けることができ、より高精度な欠陥評価が可能となる。
【0015】
ここで、前記チルト機構は、前記サンプルステージおよび前記2枚の偏光板を前記受光部に対して5〜15°傾けるものであることが好ましい。
このように、チルト機構によってサンプルステージや2枚の偏光板を傾ける角度を5〜15°とすることによって、より高精度な欠陥の検出が可能となる。
【0016】
また、前記2枚の偏光板は、前記透過軸のズレが0°となるように配置されたものであることが好ましい。
このように、2枚の偏光板の透過軸のズレが0°であれば、ピンホールを透過した光の光量が減衰されることなく、基板を透過した光とピンホールを透過した光とのS/N比を更に高いものとすることができ、更に高精度な欠陥検査を行うことができる検査装置となる。
【0017】
そして、前記2枚の偏光板と前記サンプルステージの全てが平行に配置されたものであることが好ましい。
このように、2枚の偏光板とサンプルステージの全てが平行に配置されたものとすることによって、オフ角を有する透明基板のピンホールを透過した光と基板を透過した光のS/N比を更に良好なものとすることができ、更に高精度な欠陥の検出を行える検査装置とすることができる。
【0018】
また、本発明では、オフ角を有する透明基板の欠陥検査方法であって、少なくとも、該透明基板に、光源から発せられた光を透過させ、該透過させた光を受光部で測定する際に、前記光源と前記透明基板との間と、前記透明基板と前記受光部との間にそれぞれ偏光板を、少なくとも一方が前記透明基板と平行になるように配置し、該2枚の偏光板の透過軸のズレを30°以内とすることを特徴とする透明基板の欠陥検査方法を提供する。
【0019】
このような欠陥検査方法では、透明基板のピンホールを透過した光と、基板を透過した光との区別が非常に容易であり、ピンホールの検出精度を従来に比べて大幅に向上させることができる。そして2枚の偏光板の透過軸のズレを30°以内として配置することによって、ピンホールを透過した光の減衰を抑制でき、より良好なピンホール検出が可能となる。また、2枚の偏光板は、検査対象の透明基板のオフ角に対応させて傾けることができるため、オフ角を有する透明基板の欠陥を検査する際にオフ角に対応させて偏光板を傾けることで、より高精度な欠陥評価が可能となる。更に、光源と2枚の偏光板と受光部によって透明基板の欠陥検査を行うことができるため、その構成が非常に簡易であり、高額な機器を必要とせず、高精度でありながらその実施は安価かつ容易である。
【0020】
ここで、前記偏光板と前記透明基板を、前記受光部に対して5〜15°傾けて配置することが好ましい。
このように、透明基板や偏光板を5〜15°傾けることによって、より高精度な欠陥の検出が可能となる。
【0021】
また、前記2枚の偏光板を、前記透過軸のズレを0°となるように配置することが好ましい。
このように、2枚の偏光板の透過軸のズレを0°となるように2枚の偏光板を配置することによって、ピンホールを透過した光の光量の減衰をより抑制することができ、基板を透過した光とピンホールを透過した光とのS/N比を更に高くできる。よって、より高精度な欠陥検査方法とすることができる。
【0022】
そして、前記2枚の偏光板と前記透明基板を、全て平行に配置することが好ましい。
このように、2枚の偏光板と透明基板を全て平行に配置することによって、オフ角を有するような透明基板のピンホールを透過した光と基板を透過した光のS/N比を更に良好にすることができ、更に高精度な欠陥検査が可能となる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明のように、透明基板の両側に一対の偏光板を配置し、該偏光板の透過軸のズレを30°以下にすることにより、基板を透過した光量と該基板のマイクロパイプ等のピンホールを通過した光量とのS/N比を大幅に改善することができ、光の透過性の高い透明基板のマイクロパイプ等のピンホールの非破壊での高精度な検出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の透明基板の欠陥検査装置の概略の一例を示した図である。
【図2】実施例1−4、比較例1−6のマイクロパイプ観察結果の一例を示した図である。
【図3】実施例5−10のマイクロパイプ観察結果の一例を示した図である。
【図4】実施例5,11−14のマイクロパイプ観察結果の一例を示した図である。
【図5】実施例15のマイクロパイプ観察結果の一例を示した図である。
【図6】実施例16のマイクロパイプ観察結果の一例を示した図である。
【図7】従来の透明基板の欠陥装置の概略の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明について図を参照してより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下では、オフ角を有する透明基板として、SiC基板の例を参照して説明するが、透明基板はもちろんこれに限定されない。
【0026】
ここで、SiC基板におけるオフ角とは、基板の主面と所定の結晶面とのなす角をいい、たとえば{0001}面SiC基板の場合、SiC基板の主面と{0001}面とのなす角をいう。別の観点から説明すると、たとえば{0001}面SiC基板の場合、主面に垂直な直線(法線)が<0001>方向に対してなす角をいう。なお、六方晶SiC基板の場合、オフ角は、たとえば8°または4°程度とされる。
【0027】
図1(a)に示したように、本発明のオフ角を有するSiC基板の欠陥検査装置10は、少なくとも、光源11と、SiC基板Wを透過した透過光を測定する固体撮像素子からなる受光部15と、2枚の偏光板12a,12bと、SiC基板Wを載置するためのサンプルステージ13と、サンプルステージ13および2枚の偏光板12a,12bをSiC基板Wのオフ角に対応させて受光部15に対して傾けることができるチルト機構14とを備えたものである。
そして、2枚の偏光板12a,12bのうち一方(偏光板12a)は光源11とサンプルステージ13との間に、もう一方(偏光板12b)はサンプルステージ13と受光部15との間に、少なくとも1枚の偏光板がサンプルステージ13と平行になるように配置され、かつ2枚の偏光板12a,12bは透過軸のズレが30°以内となるように配置されているものである。
【0028】
図7(a)に示すように、従来のSiC基板の欠陥検査装置20は、光源21と、SiC基板Wを透過した透過光を測定する固体撮像素子からなる受光部25と、偏光板22と、SiC基板Wを載置するためのサンプルステージ23とを備えたものであり、そして偏光板22は、サンプルステージ23と受光部25との間か、もしくは図7(b)に示すように、光源21とサンプルステージ23との間に配置されたもの(欠陥検査装置20’)もある。
【0029】
しかし、このような欠陥検査装置20,20’では、SiC基板を透過した光とマイクロパイプを透過した光の区別が難しく、高精度なマイクロパイプの評価を行うことが非常に難しい。
【0030】
これに対し、本発明のSiC基板の欠陥検査装置10では、SiC基板Wと光源11との間に偏光板12aを配置したことにより、特定の偏光面を有する光のみがSiC基板Wに照射されることになる。そして光源11側の偏光板12aによって得られる特定の偏光面を有する光は、SiC基板Wの歪み等によって散乱されることにより、再び不特定の偏光面を有する光となってSiC基板Wを透過する。これに対し、SiC基板Wのマイクロパイプを通過した光は散乱を受けないので、SiC基板Wに照射されたときと同じ偏光面を有していることになる。
【0031】
このSiC基板Wを通過または透過した光は、SiC基板Wとラインセンサー若しくはエリアセンサー等の固体撮像素子からなる受光部15との間に配置した偏光板12bを通過した後、受光される。ここで、2枚の偏光板12a,12bは透過軸のズレを30°以内となるように配置しているため、受光部15側の偏光板12bは、光源11側の偏光板12aとほぼ同じ偏光方向を有している。
従って、光が受光部15側の偏光板12bを通過する際、その光のうち、SiC基板Wで散乱されて偏光面が変化した光成分の受光部15への到達強度が著しく低下するのに対し、SiC基板Wのマイクロパイプを通過した特定の偏光面を有する光の成分の強度はほとんど低下しないものとなる。これによりマイクロパイプを通過した光の光量と、SiC基板を透過した光の光量のS/N比を改善することができる。
【0032】
更に、SiC基板Wのオフ角に対応させて少なくとも1枚の偏光板(12a,12bの少なくとも一方)とサンプルステージ13を傾けることができるチルト機構14が備わっており、SiC基板Wのマイクロパイプを検査する際に、偏光板12a,12bやサンプルステージ13をオフ角に対向させて傾けることができるため、マイクロパイプを通過した光と基板を透過した光のS/N比を更に良好なものとすることができ、高精度な欠陥評価が可能となる。
そして、光源11と2枚の偏光板12a,12bと受光部15からなる装置のため、構成が簡易なものであり、また高価な評価機器等を必要としないものである。従って、安価で高精度の透明基板の欠陥検査装置となる。
【0033】
ここで、受光部15にて検出された光を処理するためのPC16を備えたものとすることができる。
SiCのように歪を内在したウェーハにおいては、サンプルステージの両側に一組の偏光板を配した場合は、歪による影響も観察されることになる。ただし、この歪起因の信号は、観察されたとしても、歪によるコントラストの面積とマイクロパイプによるコントラストの面積は大きく異なるため、受光した信号を処理する画像処理PCにより面積でカットオフすることができ、これによって高感度な欠陥検出が可能となる。
【0034】
そして、チルト機構14は、サンプルステージ13および2枚の偏光板12a,12bを、受光部15に対して5〜15°傾けるものとすることができる。
このように、チルト機構によってサンプルステージや2枚の偏光板を5〜15°傾けたものとすることによって、マイクロパイプ等のSiC基板に存在する欠陥のより高精度な検出を行うことができる検査装置とすることができる。
【0035】
また、2枚の偏光板12a,12bは、各々の透過軸のズレが0°となるように配置されたものとすることができる。
このように、2枚の偏光板の透過軸のズレが0°となるように配置された欠陥検査装置であれば、SiC基板中のマイクロパイプを透過した光の光量は、サンプルステージと受光部との間に配置された偏光板を通過する際に減少することはない。これに対し、SiC基板を透過して異なった偏光面を有する光の光量は減少するため、SiC基板を透過した光とマイクロパイプを透過した光とのS/N比を更に高いものとすることができる。従って、更に高精度な欠陥検査を行うことができる欠陥検査装置とすることができる。
【0036】
更に、光量を更に改善して更に良好なS/N比を得るために、サンプルステージ13の両側に配置する2枚の偏光板12a,12bとサンプルステージ13との平行度を10°以下、特には全てを平行に配置されたものとすることができる。
【0037】
上記のような、本発明の透明基板の欠陥検査装置を用いた、本発明の透明基板の欠陥検査方法の一例をSiC基板の検査を例として以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
まず、検査を行いたいSiC基板と、光源と、2枚の偏光板と、光を受光するための固体撮像素子からなる受光部を準備する。
この準備するSiC基板の規格は特に限定されない。また偏光板や光源、受光部も特に限定はされない。
【0039】
そして、光源とSiC基板との間に偏光板を1枚、SiC基板と受光部との間にも偏光板を1枚配置する。またこの2枚の偏光板のうち、少なくとも一方をSiC基板と平行になるように配置する。また、2枚の偏光板の透過軸のズレを30°以内とするように配置する。
そして、受光部を、光源から発せられ、SiC基板を透過させた光を測定するように配置し、SiC基板を透過した光を測定する。
そしてこの測定した光を解析することによって、SiC基板の欠陥、特にはマイクロパイプを評価する。
【0040】
このような配置にすることによって、SiC基板のマイクロパイプを透過した光と、基板を透過した光との区別を容易に行うことができる。そして2枚の偏光板を、その透過軸のズレを30°以内となるように配置しているため、マイクロパイプを透過した光の減衰を抑制でき、高感度のマイクロパイプ検出が可能となる。
また、2枚の偏光板は、SiC基板のオフ角に対応させて受光部に対して傾けることができるので、より高精度なマイクロパイプの評価を行える。
【0041】
ここで、偏光板とSiC基板を、受光部に対して5〜15°傾けて配置することができる。
このように、SiC基板や偏光板を5〜15°傾けることによって、より高精度なマイクロパイプの検出・評価を行うことができるようになる。
【0042】
また、2枚の偏光板を、透過軸のズレを0°となるように配置することができる。
このように、2枚の偏光板を透過軸のズレを0°となるように配置すれば、マイクロパイプを透過した光の光量の減衰をより抑制することができるため、基板を透過した光とマイクロパイプを透過した光とのS/N比を更に高くすることができる。よって、より高精度な欠陥の検出が可能となる。
【0043】
そして、2枚の偏光板とSiC基板を、全て平行に配置することができる。
このように、2枚の偏光板とSiC基板を全て平行に配置すれば、一般的にオフ角を有するSiC基板のマイクロパイプを透過した光と、SiC基板を透過した光のS/N比を更に良好なものとすることができるため、更に高精度にマイクロパイプの位置や総数を評価することができ、より高精度な欠陥検出を行うことができるようになる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
図1(a)に示すように、光源及び受光部の間にマイクロパイプを持つSiC基板をサンプルステージに乗せ、光源とサンプルステージ、サンプルステージと受光部の間にステージ上のSiC基板とを平行になるように偏光板を載置した。なお、チルト機構による受光部からの傾き角度は0°とした。また、光源には蛍光灯とLEDリング照明を用いた。
そして、SiC基板上下の偏光板の透過軸のズレを0°とした。
また、SiC基板の歪み等による信号を画像処理用のPCを用いてカットして、マイクロパイプのマップのみ取得した。その結果を図2に示す。
【0045】
図2に示すように、マイクロパイプを透過した光のみS/N比が高く、マイクロパイプの高感度な検出が可能であることが判った。
【0046】
(実施例2−4、比較例1−3)
実施例1において、LEDリング照明を用いず、SiC基板上下の偏光板の透過軸のズレを0°(実施例2)、10°(実施例3)、30°(実施例4)、40°(比較例1)、60°(比較例2)、90°(比較例3)とした以外は同様の方法によってSiC基板のマイクロパイプの評価を行った。なお、本実施例2−4,比較例1−3では、実施例1と同じ基板の同じ位置のマイクロパイプの評価を行った。その結果を図2に示す。
【0047】
図2に示すように、SiC基板上下の偏光板の透過軸のズレを30°以内とすることによって、S/N比が高く取れ、ズレをそれ以上とすると評価に十分なS/N比が得られないことが判った。この透過軸のズレの範囲はさらには10°以下とすることがよいことが判った。
【0048】
(比較例4)
従来のような、金属顕微鏡によってSiC基板のマイクロパイプの評価を行った。その結果も図2に示す。
図2に示すように、従来法でもマイクロパイプの検出は可能であるものの、高価な金属顕微鏡が必要であり、容易に実施できるものではなかった。
【0049】
(比較例5−6)
図7(a)に示すような欠陥検査装置(比較例5)、図7(b)に示すような欠陥検査装置(比較例6)によって、SiC基板のマイクロパイプの評価を行った。なお、本比較例5,6も実施例1−4,比較例1−3と同じ基板の同じ位置のマイクロパイプの評価を行った。その結果を図2に示す。
【0050】
図2に示すように、偏光板が1枚であると、マイクロパイプを透過した光のみのS/N比が得られず、評価が不可能であることが判った。
【0051】
(実施例5−10)
図1(b)に示すように、光源及び受光部の間にマイクロパイプを持つSiC基板をサンプルステージに乗せ、光源とサンプルステージ、サンプルステージと受光部の間にステージ上のSiC基板とを平行になるように偏光板を載置し、チルト機構によって、光源とサンプルステージの間の偏光板を傾け、受光部からの傾き角度を0°(実施例5)、5°(実施例6)、10°(実施例7)、15°(実施例8)、20°(実施例9)、25°(実施例10)、とした欠陥検査装置10’によって欠陥検出を行った。また、光源には蛍光灯を用いた。
そして、SiC基板上下の偏光板の透過軸のズレを0°とした。
また、SiC基板の歪み等による信号を画像処理用のPCを用いてカットして、マイクロパイプのマップのみ取得した。その結果を図3に示す。
【0052】
図3に示すように、オフ角を有するSiC基板のオフ角に対応するように偏光板を傾けても良好なS/N比が得られ、チルト角度は5〜15°とすることによって実施例5(チルト角0°)に比べてS/N比が1割以上改善し、好適であることが判った。
【0053】
(実施例11−14)
図1(c)に示すように、光源及び受光部の間にマイクロパイプを持つSiC基板をサンプルステージに乗せ、光源とサンプルステージ、サンプルステージと受光部の間にステージ上のSiC基板とを平行になるように偏光板を載置し、チルト機構によって、2枚の偏光板を傾け、受光部からの傾き角度を0°(実施例11)、12°(実施例12)、25°(実施例13)、25°+LECリング補助照明付き(実施例14)、とした欠陥検査装置10’’によって欠陥検出を行った。また、光源には蛍光灯を用いた。
そして、SiC基板上下の偏光板の透過軸のズレを0°とした。
また、SiC基板の歪み等による信号を画像処理用のPCを用いてカットして、マイクロパイプのマップのみ取得した。その結果を図4に示す。
【0054】
図4に示すように、オフ角を有するSiC基板のオフ角に対応するように2枚の偏光板を傾けても良好なS/N比が得られ、実施例5−10と同様にオフ角度は5〜15°とすることによってS/N比が1割以上改善し、特によいことが判った。
【0055】
(実施例15)
実施例5において、チルト機構によって傾ける角度を18°とし、SiC基板のオリエンテーションフラットの位置を実施例5と比べて90°回転させてサンプルステージに載置した以外は同様の条件でSiC基板のマイクロパイプの評価を行い、同様の評価を行った。その結果を図5に示す。
【0056】
(実施例16)
実施例11において、チルト機構によって傾ける角度を18°とし、SiC基板のオリエンテーションフラットの位置を実施例5と比べて90°回転させてサンプルステージに載置した以外は同様の条件でSiC基板のマイクロパイプの評価を行い、同様の評価を行った。その結果を図6に示す。
【0057】
図5,6に示すように、基板の載置方向が変わっても、マイクロパイプの検出は可能であり、本発明の欠陥検出装置・方法は基板の載置方法に左右されないことが判った。
【0058】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0059】
10,10’、10’’…欠陥検査装置、
11…光源、 12a,12b…偏光板、 13…サンプルステージ、 14…チルト機構、 15…受光部、 16…PC、
20,20’…欠陥検査装置、
21…光源、 22…偏光板、 23…サンプルステージ、 25…受光部、
W…SiC基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オフ角を有する透明基板の欠陥検査装置であって、
該欠陥検査装置は、少なくとも、光源と、前記透明基板を透過した透過光を測定する固体撮像素子からなる受光部と、2枚の偏光板と、前記透明基板を載置するためのサンプルステージと、前記サンプルステージおよび前記2枚の偏光板を前記透明基板のオフ角に対応させて前記受光部に対して傾けることができるチルト機構とを備え、
前記2枚の偏光板のうち一方は前記光源と前記サンプルステージとの間に、もう一方は前記サンプルステージと前記受光部との間に、少なくとも1枚の偏光板が前記サンプルステージと平行になるように配置され、かつ前記2枚の偏光板は透過軸のズレが30°以内となるように配置されたものであることを特徴とする透明基板の欠陥検査装置。
【請求項2】
前記チルト機構は、前記サンプルステージおよび前記2枚の偏光板を前記受光部に対して5〜15°傾けるものであることを特徴とする請求項1に記載の透明基板の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記2枚の偏光板は、前記透過軸のズレが0°となるように配置されたものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の透明基板の欠陥検査装置。
【請求項4】
前記2枚の偏光板と前記サンプルステージの全てが平行に配置されたものであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の透明基板の欠陥検査装置。
【請求項5】
オフ角を有する透明基板の欠陥検査方法であって、少なくとも、
該透明基板に、光源から発せられた光を透過させ、該透過させた光を受光部で測定する際に、前記光源と前記透明基板との間と、前記透明基板と前記受光部との間にそれぞれ偏光板を、少なくとも一方が前記透明基板と平行になるように配置し、
該2枚の偏光板の透過軸のズレを30°以内とすることを特徴とする透明基板の欠陥検査方法。
【請求項6】
前記偏光板と前記透明基板を、前記受光部に対して5〜15°傾けて配置することを特徴とする請求項5に記載の透明基板の欠陥検査方法。
【請求項7】
前記2枚の偏光板を、前記透過軸のズレを0°となるように配置することを特徴とする請求項5または請求項6に記載の透明基板の欠陥検査方法。
【請求項8】
前記2枚の偏光板と前記透明基板を、全て平行に配置することを特徴とする請求項5ないし請求項7のいずれか1項に記載の透明基板の欠陥検査方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−237313(P2011−237313A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109964(P2010−109964)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000190149)信越半導体株式会社 (867)
【Fターム(参考)】