説明

透明導電シート、透明導電シート製造用の感光材料、透明導電シートの製造方法、これらの透明導電シートを用いた静電容量方式のタッチパネル

【課題】透明導電シートの導電パターンの色味の違いを小さくすることにより、導電シートを画像表示装置に用いたときの視認性(色味ムラなど)を改良する。
【解決手段】透明支持体の両面に、導電性細線からなる導電層が形成された両面導電パターン型の透明導電シートであって、前記両面の導電層の少なくとも一方の面の導電層が導電性細線を構成する金属の密度が高い部分と、密度が低い部分を有することを特徴とする両面導電パターン型の透明導電シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明支持体上に高精細パターンの導電性細線が形成された透明導電シート、高精細パターンの導電性細線が形成された透明導電シートを製造するための感光材料、透明導電シートの製造方法、これらの透明導電シートを用いた静電容量方式のタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルの分野では、投影型静電容量方式のタッチパネルがPDAや携帯電話等に広く使用されるようになってきており、この方式のタッチパネルの大型化の試みが始まっている。パネルの大型化に際しては、導電層の低抵抗化が必須であり、この低抵抗化のための技術として、静電容量の感知部を網目状の導電性細線で形成する方法が、例えば特許文献1及び2に記載されている。これらの文献に記載されている網目状の導電性細線の形成方法は、導電性インクの印刷方式あるいは、ITOや金属薄膜のフォトリソグラフィーによる細線化であるが、前者の印刷方式では、20μm以下の線幅の細線を安定に形成することが困難であること、後者ではフォトリソグラフィー工程が複数の工程からなるためのコスト高が問題となっている。
一方、低抵抗の導電性細線をハロゲン化銀写真感光材料の現像で得られる銀像から形成する方法が電磁波シールド膜やプリント配線の分野で検討されている。この方式は種々のパターンをマスクを介した露光と引き続く現像処理により形成することができるので、製造工程が安定している。現像方式としては例えば、特許文献3をあげることができ、細線幅20μmで格子間隔250μmの網目パターンで表面抵抗50〜100Ω/□の実施例が記載されている。
これらの導電性細線により静電容量感知部を作成する方法では、特許文献1の図7に示されるような第一電極と第二電極とを積層しタッチパネルを形成したときには、このパネルをタッチ者側から透視したときに図8のような均一な網目状となるように積層する必要がある。均一な網目状となっておらず、不均一な電極の重なりや、空白が生じていると、画面が不均一に見え視認性が劣る欠陥となる。そのため、2つの電極の位置あわせには、高い精度が求められ、タッチパネル毎に高い精度での位置あわせをすることになり、タッチパネルの生産性が劣る問題がある。
【0003】
近年、2つの導電シート(電極)の貼り合わせ時の位置あわせを簡略にするために、一枚の透明支持体のおもて、うらの両面に導電パターンを形成する方法が試みられている。透明支持体の表裏両面に形成された導電性細線からなる導電パターン(電極)は、特許文献1の図8のように均一パターンとして視認される必要があるため、導電パターン形成材料としては感光材料を用い、両面からの露光と引き続く現像処理により導電パターンを形成する方法が有利であると考えられている。
ところが、透明支持体のおもてとうらの両面に電極を形成した試料は、おもて面とうら面の電極の透視像が均一のパターンとなるように露光パターンの位置あわせを厳密に行っても、微妙な色のムラを生じることがわかった。また、形成した電極表面の色味が、電極を形成する条件により変化する現象は、銀ペーストなどの導電性インクを印刷する方式や、蒸着やスパッタリング法を用いる方式でも観測され、特に膜厚の厚い電極を形成する場合に観測されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−039537号公報
【特許文献2】国際公開第2010/014683号公報
【特許文献3】特開2007−188655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記のような課題を考慮してなされたものであり、導電パターン表面の色調を制御した透明導電シートの提供を目的とする。更に本発明は、現像銀からなる導電パターンの色調を制御した透明導電シートの提供を目的とする。また、本発明はこれらの導電パターンの色調を制御した透明導電シートの製造方法の提供を目的とする。更に、本発明は、導電パターンの色調を制御すると共に、低抵抗で、大画面のタッチパネルに用いることのできる導電シートの提供を目的とする。更に本発明の別の目的は、色調が制御された電磁波シールドなどに用いることのできる導電シートの提供を目的とする。
なお、本発明の導電シートでは、“導電性細線からなる導電パターン”を種々の目的で用いるため、簡略化して“導電パターン”と言うが、タッチパネル用途などの電極用途に用いる場合は、わかりやすさを優先して、“導電パターン”と“電極”とを使い分ける。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の色味のムラは、電極の厚みが厚くなるほど観測され易いこと、また導電シートを2枚用い、かつ2枚の導電シートの同じ側の面を観測者が視認する場合には色ムラが観測されないこと、本件のように観測者が支持体から遠い電極表面と、支持体に近い電極表面とを交互に見る場合に観測され易いこと、本発明のように電極を微細パターンにより形成した場合でなく、支持体上に均一な導電膜を形成した試料においても支持体を通して観測した色味と、導電膜の表面から観測した色味とが異なることを見出した。これらの事実から、電極の形成プロセスの初期の膜表面と、プロセスが進行して厚膜となった電極の表面とでは、導電材料である金属の微細構造が異なることにより、反射光の色味が異なっていると推定され、以下の態様の発明にいたった。
【0007】
1)透明支持体の両面に、導電性細線からなる導電層が形成された透明導電シートであって、前記両面の少なくとも一方の導電層において、導電性細線を構成する金属の密度が高い部分と、低い部分を有することを特徴とする透明導電シート。
2)項1において、金属そのものの密度をρとしたとき、金属の密度が高いとは0.41ρ以上であり、金属の密度が低いとは0.33ρ以下であることを特徴とする透明導電シート。
3)前記透明導電シートが、透明支持体の両面に、ハロゲン化銀乳剤を含む感光層が形成された感光材料に、パターン露光と現像処理を施すことにより、現像銀の導電性細線からなる導電層を透明支持体の両面に形成した透明導電シートであり、前記両面の導電層の少なくとも一方の面の導電層が導電性細線を構成する現像銀密度が高い部分と、現像銀密度が低い部分を有することを特徴とする項1または2に記載の透明導電シート。
4)項3に記載の透明導電シートが、前記透明支持体の両面の一方の面に形成された現像銀細線の透明支持体に近い側の銀密度が前記細線中の銀の平均密度より低く、かつ他方の面に形成された現像銀細線の透明支持体から遠い側の銀密度が細線中の銀の平均密度より低いことを特徴とする透明導電シート。
5)前記感光材料は、透明支持体の両面に、ハロゲン化銀乳剤を含む感光層が形成された感光材料であって、おもて面またはうら面のいずれか一方の面に形成された感光層が、銀とバインダーの体積比(銀の体積/バインダーの体積)が小さい感光層と、銀とバインダーの体積比が大きい感光層とを有することを特徴とする項3または4に記載の感光材料。
6)前記感光材料は、透明支持体の両面に、ハロゲン化銀乳剤を含む感光層が形成された感光材料であって、透明支持体の一方の面に支持体面に近い方から、銀とバインダーの体積比が小さい感光層と、銀とバインダーの体積比が大きい感光層とを少なくともこの順に有し、透明支持体の他方の面に支持体面に近い方から、銀とバインダーの体積比が大きい感光層と、銀とバインダーの体積比が小さい感光層とを少なくともこの順に有することを特徴とする項3〜5のいずれか1項に記載の感光材料。
7)透明支持体の両面に形成された、ハロゲン化銀乳剤を含む感光層の塗布銀量がそれぞれ4g/m2以上20g/m2以下であることを特徴とする項3〜6のいずれか1項に記載の感光材料。
8)透明支持体の両面に形成された、ハロゲン化銀乳剤を含む感光層の膜厚に対して、銀とバインダーの体積比が小さい感光層の膜厚が、10%以上40%以下の膜厚であることを特徴とする項3〜7のいずれか1項に記載の感光材料。
9)前記銀とバインダーの体積比が小さい感光層の銀とバインダーの体積比は0.05以上、0.5以下であり、銀とバインダーの体積比が大きい感光層の銀とバインダーの体積比は0.7以上であることを特徴とする項5〜8のいずれか1項に記載の感光材料。
10)前記銀とバインダーの体積比が小さい感光層の銀とバインダーの体積比は0.1以上、0.4以下であり、銀とバインダーの体積比が大きい感光層の銀とバインダーの体積比は1.0以上であることを特徴とする項5〜9のいずれか1項に記載の感光材料。
11)前記感光材料は、塩臭化銀乳剤を含み、前記銀とバインダーの体積比が小さい感光層の塩臭化銀乳剤の臭化銀含有率は、銀とバインダーの体積比が大きい感光層の塩臭化銀乳剤の臭化銀含有率よりも5モル%以上高いことを特徴とする項5〜10のいずれか1項に記載の感光材料。
12)前記銀とバインダーの体積比が小さい感光層のハロゲン化銀乳剤の臭化銀含有率は40モル%以上であり、銀とバインダーの体積比が大きい感光層のハロゲン化銀乳剤の臭化銀含有率は40モル%未満であることを特徴とする項5〜11のいずれか1項に記載の感光材料。
13)前記銀とバインダーの体積比が小さい感光層の一方が現像抑制剤を含み、銀とバインダーの体積比が小さい感光層の他方が現像抑制剤を含まないことを特徴とする項5〜12のいずれか1項に記載の感光材料。
14)前記現像抑制剤がメルカプト化合物であることを特徴とする項13に記載の感光材料。
15)前記現像抑制剤が、現像により現像抑制剤を放出することができる化合物であることを特徴とする項13に記載の感光材料。
16)前記透明支持体の両面の感光材料が、透明支持体とそれぞれの感光層との間にアンチハレーション層を有することを特徴とする項5〜15のいずれか1項に記載の感光材料。
17)アンチハレーション層の光学濃度は0.5から3.0程度が好ましいことを特徴とする項16に記載の感光材料。
18)透明支持体とそれぞれのアンチハレーション層との間に易接着層を設けることを特徴とする項5〜17のいずれか1項に記載の感光材料。
19)感光層の表面に保護層を設けることを特徴とする項5〜18のいずれか1項に記載の感光材料。
20)保護層の膜厚が0.5μm以下であることを特徴とする項19に記載の感光材料。
21)前記パターン露光は、項5〜20の感光材料の両面から施されることを特徴とする透明導電シート。
22)前記パターン露光は、現像処理後に支持体の両面に形成された導電層の一方の面の導電パターンの導通方向と、他方の面の導電パターンの導通方向とが互いに直交となるようにパターン化されていることを特徴とする請求項21に記載の透明導電シート。
23)前記パターン露光は、現像処理後に支持体の両面に形成された現像銀の導電性細線からなる導電層パターンを、一方の側から透視したとき連続したパターンとみなせるように調整されていることを特徴とする項21または22に記載の透明導電シート。
24)項21〜23のいずれか1項に記載の透明導電シートを用いた静電容量方式のタッチパネル。
25)項24に記載の透明導電シートを用いた静電容量方式のタッチパネルにおいて、タッチ者側から測定した導電パターンの反射色度b*値を、両面導電パターンのタッチ者に近い側の導電パターン(おもて面導電パターン)の反射色度b1*と、タッチ者に遠い側の導電パターン(うら面導電パターン)の反射色度b2*としたとき、反射色度b1*と、反射色度b2*との差の絶対値が2以下(|△b*|=|b1*−b2*|≦2)であることを特徴とするタッチパネル。
26)さらに|△b*|=|b1*−b2*|≦1であることを特徴とする項25に記載のタッチパネル。
27)前記反射色度b1*は、−2.0<b1*≦0であることを特徴とする項25または26に記載のタッチパネル。
28)前記反射色度b2*は、−1.0<b2*≦1.0であることを特徴とする項25〜27のいずれか1項に記載のタッチパネル。
29)前記反射色度b1*とb2*とが、−2.0<b1*≦0、かつ−1.0<b2*≦1.0 であることを特徴とする項25〜28のいずれか1項に記載のタッチパネル。
30)前記反射色度b1*とb2*とが、−1.0<b1*≦−0.5、かつ−0.5<b2*≦0.2であることを特徴とする項25〜28のいずれか1項に記載のタッチパネル。
【発明の効果】
【0008】
本発明の透明支持体の両面に感光材料層を形成した感光材料にパターン露光、現像処理を施すと、透明支持体の両側に現像銀からなる上部導電パターン(上部電極)と下部導電パターン(下部電極)が形成されるため、導電シートを安価で安定して製造できる。また、上部導電パターンと下部導電パターンの色味を改良できるため、視認し易い導電シートを得ることができる。更に導電パターン材料に導電性の高い銀を用いたため、低抵抗の導電シートを得ることができ、発熱体、電磁波シールドなどに用いることができ、特に大画面適性を有するタッチパネルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】透明支持体の両面に導電パターンを形成したタッチパネルのモデルの断面図である。
【図2】透明支持体の両面に導電パターンを形成した本発明の透明導電シートモデルの断面図である。
【図3】透明支持体の両面に導電パターンを形成した本発明の別の透明導電シートモデルの断面図である。
【図4】透明支持体の両面に導電パターンを形成した従来の透明導電シートモデルの断面図である。
【図5】透明支持体の両面に形成された上部導電パターン11と下部導電パターン12の斜視図である。
【図6】図5の上部導電パターンの導電性格子部と連結部を説明する図である。
【図7】図5の下部導電パターンの導電性格子部と連結部を説明する図である。
【図8】上部導電パターンと下部導電パターンをタッチ者側から見たときの透視図である。
【図9】本発明の透明導電シートを製造するために用いる感光材料の断面図である。
【図10】本発明の透明導電シートを製造するために用いる感光材料の別の断面図である。
【図11】従来の透明導電シートを製造するために用いる感光材料の断面図である。
【図12】本発明の透明支持体の両面に導電パターンを形成した透明導電シートを製造するプロセスを示した図である。
【図13】本発明の感光材料の両面にフォトマスクを介して露光する図である。
【図14】従来の導電シートを2枚積層したタッチパネルの模式図である。
【図15】従来の導電シートを2枚積層したタッチパネルの別の模式図である。
【図16】従来の導電シートを2枚積層したタッチパネルの別の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る感光材料、その感光材料を用いて形成する導電シート、その導電シートの製造方法及び本発明の導電シートを用いたタッチパネルの実施の形態例を図1〜図16を参照しながら説明する。なお、本明細書において「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。また、本件では、後述するタッチパネルにおいてタッチ者側の表面をおもて面、タッチ者から遠い側の面をうら面という。本件で用いる図面では、上側の面がおもて面、下側の面がうら面となる。
【0011】
本発明の透明導電シートの第一の態様は、透明支持体の両面に、導電性細線からなる導電層が形成された両面導電パターン型の透明導電シートであって、前記両面の導電層の少なくとも一方の面の導電層が導電性細線を構成する金属の密度が高い部分と、金属の密度が低い部分を有することを特徴とする両面導電パターン型の透明導電シートである。
ここで金属の密度が高いとは、形成された導電パターンを導電パターン表面から透明支持体に向かって一定の厚みで切削したときの金属の密度を言う。密度差の原因となる金属以外の成分は、空気などの気体、各種のバインダー、金属に還元されていない金属の塩などの導電性を示さない物質のいずれでもよい。
【0012】
本発明の導電層の導電性細線を構成する金属としては、導電性の高い金属または合金を用いることが好ましい。このような金属としては、例えば、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、アルミニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、マンガン、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンテル、チタン、ビスマス、アンチモン、鉛などをあげることができる。これらの中で導電性に優れる点で、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、アルミニウム、及びこれらとの合金が好ましい。
これらの金属あるいは合金での導電パターン形成には、金属箔、あるいは金属薄膜を形成し、その後フォトリソグラフィーを利用して導電パターンを形成する方法、導電性のナノ粒子を含む導電性インク(またはペースト)によって導電パターンを印刷する方法があるが、本発明では後者の導電性インクまたはペーストを利用する方法、もしくは後述の現像銀を用いる方法が好ましい。
【0013】
導電性ナノ粒子は、上記の金属の微粒子の他にカーボンを用いてもよい。導電性ナノ粒子は金、銀、パラジウム、白金、銅、カーボン、またはそれらの混合物を含む粒子が好ましい。ナノ粒子の平均粒径は2μ以下、好ましくは200から500nmであり、従来のミクロン粒子よりも粒径が小さいものがメッシュパターンを形成する上で好ましい。メッシュパターン印刷には、スクリーン印刷法又はグラビア印刷法が用いられる。
インク(またはペースト)が含む導電材料は、金属粒子でなく、導電性繊維であってもよい。本件においては、導電性繊維には、金属ワイヤー、ナノワイヤーと呼ばれる繊維状の物質、中空構造のチューブ、ナノチューブを含めて呼称する。金属ナノワイヤーの平均短軸長さ(「平均短軸径」、「平均直径」と称することがある)としては、100nm以下が好ましく、1nm〜50nmがより好ましく、10nm〜40nmが更に好ましく、15nm〜35nmが特に好ましい。導電性繊維を用いて導電層を形成する場合には、例えば、特開2009−215594、特開2009−242880、特開2009−299162、特開2010−84173、特開2010−87105、特開2010−86714に開示の技術を組み合わせて形成することができる。
【0014】
図2〜図4は、両面導電パターン型の透明導電シートを表し、図2、図3の導電パターンの導電性細線21および22には、上記金属の密度が異なる部分があり、その密度差のある部分を点線で示した。図2では下部導電パターン細線22のみに密度差があり、図3では上部導電パターン細線21と下部導電パターン細線22の両方に密度差があることを示している。この密度差は、図2および図3の点線で表した部分のように点線部分を境にして密度が異なってもよいし、連続的に密度が変化する場合をも本発明は含む。
【0015】
さらに本発明の両面導電パターン型の透明導電シートの第二の態様は、透明支持体の両面に、ハロゲン化銀乳剤を含む感光層が形成された感光材料に、パターン露光と現像処理を施すことにより現像銀の導電性細線からなる導電層を透明支持体の両面に形成した両面導電パターン型の透明導電シートであり、前記両面の導電層の少なくとも一方の面の導電層が導電性細線を構成する現像銀密度が高い部分と、現像銀密度が低い部分を有することを特徴とする両面導電パターン型の透明導電シートである。第一の態様が導電パターン材料に金属一般を用いているのに対し、第二の態様では現像銀を用いる点に特徴を有する。上記態様の“前記両面の導電層の少なくとも一方の面の導電層が導電性細線を構成する現像銀密度が高い部分と、現像銀密度が低い部分を有する”態様とは図2の下部導電パターン22に相当する。
【0016】
さらに上記の本発明の両面導電パターン型の透明導電シートは、前記透明支持体の両面の一方の面に形成された現像銀細線の透明支持体に近い側の銀密度が前記細線中の銀の平均密度より低く、他方の面に形成された現像銀細線の透明支持体から遠い側の銀密度が細線中の銀の平均密度より低いことを特徴とする両面導電パターン型の透明導電シートである。
上記において、“前記透明支持体の両面の一方の面に形成された現像銀細線の透明支持体に近い側の銀密度が前記細線中の銀の平均密度より低く”に相当する導電パターンは図3の下部導電パターン22であり、“他方の面に形成された現像銀細線の透明支持体から遠い側の銀密度が細線中の銀の平均密度より低い” に相当する導電パターンは図3の上部導電パターン21である。
【0017】
以下では、本発明の両面導電パターン型の透明導電シートの第二の態様を形成するための感光材料、この感光材料を用いた両面導電パターン型の透明導電シートの作成方法について詳述する。
本発明の感光材料は、透明支持体の両面に、ハロゲン化銀乳剤を含む感光層が形成された感光材料であって、おもて面またはうら面のいずれか一方の面に形成された感光層が、銀とバインダーの体積比(即ち、銀の体積をバインダーの体積で割った比)が小さい感光層と、銀とバインダーの体積比が大きい感光層とを有する感光材料である。
本発明の別の感光材料は、透明支持体の両面に、ハロゲン化銀乳剤を含む感光層が形成された感光材料であって、透明支持体の一方の面に支持体面に近い方から、銀とバインダーの体積比が小さい感光層と、銀とバインダーの体積比が大きい感光層とを少なくともこの順に有し、透明支持体の他方の面に支持体面に近い方から、銀とバインダーの体積比が大きい感光層と、銀とバインダーの体積比が小さい感光層とを少なくともこの順に有する感光材料である。
【0018】
上記の感光材料の構成について図9および図10を用いて説明する。本発明の透明導電シートを製造するための感光材料05は、透明支持体32の両面に上部感光材料層(おもて面感光材料層)50と、下部感光材料層(うら面感光材料層)60とが形成されている。上部感光材料層および下部感光材料層は、それぞれ保護層55、65、感光層51、61、アンチハレーション層57、67、易接着層56、66を有する。この構成は、本発明の図9、図10および従来の構成例である図11で共通である。従来例の図11では、上部感光層51および下部感光層61の両層の銀密度(銀とバインダーの体積比)が層内で略一定であるのに対し、本発明の図9では下部感光層61の層内が、支持体に近い感光層69の銀密度(銀とバインダーの体積比)が低く、支持体から遠い側の感光層68の銀密度が高い構成であり、図10ではさらに上部感光層51の層内が、支持体に近い感光層58の銀密度(銀とバインダーの体積比)が高く、支持体から遠い側の感光層59の銀密度が低い構成となっている。本発明の図9および図10の感光材料ともに、透明支持体に対し、上部感光層と下部感光層の構成が非対称である。
尚、本発明においては、銀密度すなわち銀とバインダーの体積比は、それぞれの感光層内でのみ計算もしくは実測し、保護層、アンチハレーション層、易接着層などのハロゲン化銀乳剤を含まない層の成分は含めないものとする。さらに、銀の体積は銀の塗布量を計算もしくは実測により求め、比重10.5として体積に変換し、バインダーの体積は、銀以外の固形分量を計算するか実測により求め、ゼラチンの比重1.34として体積に変換するものとする。ゼラチンに対し含まれるラテックスポリマーの割合が20質量%を超えるときは、ラテックスポリマーの体積はラテックスポリマーの比重を用いて算出するものとする。
【0019】
本発明の感光材料の銀とバインダーの体積比が小さい感光層の銀とバインダーの体積比は0.05以上、0.5以下であり、銀とバインダーの体積比が大きい感光層の銀とバインダーの体積比は0.7以上であることが好ましく、銀とバインダーの体積比が小さい感光層の銀とバインダーの体積比は0.1以上、0.4以下であり、銀とバインダーの体積比が大きい感光層の銀とバインダーの体積比は1.0以上であることがより好ましい。
【0020】
本発明においては、感光層の厚みは塗布銀量によって記載する。厚みそのものは、塗布銀量とバインダーなどの添加物の量を上記の換算法により求めることができる。具体的には、上部感光層51と下部感光層61のそれぞれの塗布銀量は、4g/m2以上230g/m2以下が好ましく、5g/m2以上20g/m2以下がより好ましい。4g/m2以上230g/m2以下であると低抵抗でかつ製造の安定した塗布膜と導電シートを形成できる。上部感光層51と下部感光層61のそれぞれの塗布銀量は、上記の範囲内であれば、同じ塗布量でも、異なる塗布量であってもよい。
銀とバインダーの体積比が小さい感光層59及び69の膜厚は、それぞれ上部感光層51と下部感光層61の全膜厚に対し、10%以上40%以下が好ましく、15%以上30%以下がより好ましい。
以下に本発明の感光材料を構成する材料について詳述する。
【0021】
〔透明支持体〕
本発明の上記感光材料に用いられる透明支持体32としては、プラスチックフィルム、プラスチック板、及びガラス板などを用いることができるが、プラスチックフィルムが好ましい。
プラスチックフィルムの原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル類;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレンなどのポリオレフィン類;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの塩化ビニル系樹脂;その他、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)などを用いることができる。
本発明におけるプラスチックフィルムは、単層で用いることもできるが、2層以上を組み合わせた多層フィルムとして用いることも可能である。
支持体としては、PET(258℃)、PEN(269℃)、PE(135℃)、PP(163℃)、ポリスチレン(230℃)、ポリ塩化ビニル(180℃)、ポリ塩化ビニリデン(212℃)やTAC(290℃)等の融点が約290℃以下であるプラスチックフィルムが好ましく、特にPETが好ましい。( )内の数値は融点である。フィルムの透過率は85%〜100%であることが好ましい。
透明支持体フィルムの厚みは50μm以上、500μm以下の範囲で任意に選択することができる。特に透明導電シートの支持体の機能の他にタッチ面の機能をも兼ねる場合は、500μmを超えた厚みで設計することも可能である。透明支持体上にハロゲン化銀乳剤を含む感光層を塗布方式で設ける場合は、フィルムの厚みとしては、50μm以上、250μm以下とすることが製造上、より好ましい。
本発明の感光材料を用いて形成される透明導電シートをタッチパネルに用いる場合には、タッチ面となる透明材料30としては、上記の感光材料用支持体として用いられるプラスチックフィルムを用いることができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル類;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレンなどのポリオレフィン類からなるフィルムが好ましい。
またタッチパネルの下部の透明支持体33に用いることのできる材料も上記透明材料30と同じフィルムを用いることができる。
【0022】
〔ハロゲン化銀乳剤を含む感光層〕
次にハロゲン化銀乳剤を含む感光層について説明するが、現像銀を導電パターン材料とするためには、感光材料の種類と、現像処理の種類とを、以下の3通りの方式から選択することができる。
(1)物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀黒白感光材料を化学現像又は熱現像して金属銀部を該感光材料上に形成させる方式。
(2)物理現像核をハロゲン化銀乳剤層中に含む感光性ハロゲン化銀黒白感光材料を溶解物理現像して金属銀部を該感光材料上に形成させる方式。
(3)物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀黒白感光材料と、物理現像核を含む非感光性層を有する受像シートを重ね合わせて拡散転写現像して金属銀部を非感光性受像シート上に形成させる方式。
【0023】
上記(1)の態様は、黒白現像タイプであり、感光材料上に透光性電磁波シールド膜などの透光性導電性膜が形成される。得られる現像銀は化学現像銀又は熱現像銀であり、高比表面のフィラメントである。更に、メッキ処理、又は物理現像の後続過程を設ける場合は高活性で好ましい方式である。
上記(2)の態様は、露光部では、物理現像核近縁のハロゲン化銀粒子が溶解されて現像核上に沈積することによって感光材料上に透光性電磁波シールド膜や光透過性導電シートなどの透光性導電性膜が形成される。これも黒白現像タイプである。現像作用が、物理現像核上への析出であるので高活性であるが、得られる現像銀は比表面が小さい球形である。
上記(3)の態様は、未露光部においてハロゲン化銀粒子が溶解されて拡散して受像シート上の現像核上に沈積することによって受像シート上に透光性電磁波シールド膜や光透過性導電シートなどの透光性導電性膜が形成される。いわゆる2シートのセパレートタイプであって、受像シートを感光材料から剥離して用いる態様である。
いずれの態様もネガ型現像処理及び反転現像処理のいずれの現像を選択することもできる(拡散転写方式の場合は、感光材料としてオートポジ型感光材料を用いることによってネガ型現像処理が可能となる)。
【0024】
ここでいう化学現像、熱現像、溶解物理現像、及び拡散転写現像は、当業界で通常用いられている用語どおりの意味であり、写真化学の一般教科書、例えば菊地真一著「写真化学」(共立出版社刊行)、C.E.K.Mees編「The Theory of Photographic Process,4th ed.」(Mcmillan社、1977年刊行)に解説されている。また、例えば、特開2004−184693号公報、同2004−334077号公報、同2005−010752号公報等に記載の技術を参照することもできる。
【0025】
上記の(1)〜(3)の方式の中で、方式(1)が、現像前の感光層に物理現像核を有さないこと、2シートの拡散転写方式でないことから、方式(1)が最も簡便、安定な処理ができ、本発明の透明導電シートの製造には好ましい。以下、方式(1)での説明を記載するが、他の方式を用いる場合には上段記載の文献を参照することができる。なお、”溶解物理現像”は、方式(2)にのみ固有な現像法ではなく、方式(1)でも利用できる現像方法である。
(ハロゲン化銀乳剤)
【0026】
本発明のハロゲン化銀乳剤に含有されるハロゲン元素は、塩素、臭素、ヨウ素及びフッ素のいずれであってもよく、これらを組み合わせでもよい。例えば、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀を主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられ、更に臭化銀や塩化銀を主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられる。塩臭化銀、沃塩臭化銀、沃臭化銀もまた好ましく用いられる。
本発明の感光材料は、塩臭化銀乳剤を含むことがより好ましく、前記銀とバインダーの体積比が小さい感光層の塩臭化銀乳剤の臭化銀含有率は、銀とバインダーの体積比が大きい感光層の塩臭化銀乳剤の臭化銀含有率よりも5モル%以上高いことがさらに好ましい。
さらに、銀とバインダーの体積比が小さい感光層のハロゲン化銀乳剤の臭化銀含有率は40モル%以上であり、銀とバインダーの体積比が大きい感光層のハロゲン化銀乳剤の臭化銀含有率は40モル%未満であり、その臭化銀含有率差が5モル%以上であることが特に好ましい。このように設計することにより色味の差を小さくすることができる。
【0027】
なお、本発明においては、カブリを抑制するために、微量の沃化銀を含めることが好ましく、その沃化銀含有率は、ハロゲン化銀乳剤1モルあたり1.5mol%を超えない範囲であることが好ましい。沃化銀含有率を1.5mol%を超えない範囲とすることにより、カブリを防止し、圧力性を改善することができる。より好ましい沃化銀含有率は、ハロゲン化銀乳剤1モルあたり1mol%以下である。本発明においては0.5mol%の沃化銀を含めることとするが、記載の煩雑さを避けるため、沃化銀の表示は省略する。
【0028】
ハロゲン化銀の平均粒子サイズ、ハロゲン化銀粒子の形状及び分散度と変動係数は、特開2009−188360号の段落36及び37の記載を参照することができる。また、ハロゲン化銀乳剤の安定化や高感化のために用いられるロジウム化合物、イリジウム化合物などのVIII族、VIIB族に属する金属化合物、パラジウム化合物の利用については、特開2009−188360号の段落39〜段落42の記載を参照することができる。更に化学増感については、特開2009−188360号の段落43の技術記載を参照することができる。
【0029】
(バインダー)
ハロゲン化銀乳剤を含む感光層には、銀塩粒子を均一に分散させ、かつ乳剤層と支持体との密着を補助する目的でバインダーが用いられる。上記バインダーとしては、例えば、ゼラチン、カラギナン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリサッカライド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム等が挙げられが、ゼラチンが好ましい。
ゼラチンとしては石灰処理ゼラチンの他、酸処理ゼラチンを用いてもよく、ゼラチンの加水分解物、ゼラチン酵素分解物、その他アミノ基、カルボキシル基を修飾したゼラチン(フタル化ゼラチン、アセチル化ゼラチン)を使用することができる。
また、バインダーとしてラテックスを用いることもできる。ここでラテックスとしては、特開平2−103536号公報第18頁左下欄12行目から同20行目に記載のポリマーラテックスを好ましく用いることができる。
【0030】
本発明の感光層形成に用いられる溶媒は、特に限定されるものではないが、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、酢酸エチル等のエステル類、エーテル類等)、イオン性液体、及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
感光層に用いられる溶媒の含有量は、感光層に含まれる銀塩、バインダー等の合計の質量に対して30〜90質量%の範囲であり、50〜80質量%の範囲であることが好ましい。
〔現像抑制剤〕
【0031】
本発明においては後述の現像処理液に、臭化ナトリウム、臭化カリウムのような現像抑制剤を含ませることにより現像の速度を制御して露光域のみに現像銀が得られるようにしている。しかし、本発明のように銀量が多い系では、感光層の表面から現像液が浸透するに従い現像抑制物質が消費され、物理現像が進行する現象が起きることが予想される。そのため、感光層の下層側に現像抑制剤を含ませることが好ましい。
感光層に用いられる現像抑制剤としては、有機メルカプト化合物や、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環等の窒素原子を有する不飽和の5員ヘテロ環または6員ヘテロ環を挙げることができる。これらの化合物を特定の層中に留めておき、かつ浸透した現像液により活性化させるためには、a)比較的低分子であるが乳剤との相互作用により特定の層中に留まり、現像液中のアルカリにより活性化する化合物、b)分子量が大きく移動しにくいがアルカリと反応して低分子の抑制化合物を放出する化合物、c)分子量が大きく移動しにくいが処理液中の酸化生成物と反応して低分子の抑制化合物を放出する化合物をあげることができる。
【0032】
上記のa)の例としては、N−H構造を有する5員環アゾールまたはN−H構造を有する6員環アジンを骨格とするメルカプト化合物をあげることができる。前記のメルカプト化合物は、特開2007−116137号の段落34から、段落102に記載の化合物を用いることができ、好ましくは段落60から段落65に記載の39の化合物、段落90から段落93に記載の55化合物、段落101に記載の3化合物をあげることができる。これらの化合物の中で、特に好ましく用いることができる化合物は、段落60、段落65、段落101に記載の化合物である。
【0033】
上記のb)の例としては、特開平2−285344号に記載の、ハロゲン化銀粒子にたいして吸着能を有するが、現像前には吸着能を示さないように保護されている化合物群、即ち現像抑制剤プレカーサーとして知られる化合物をあげることができる。これらの化合物としては、特開平2−285344号の(1)〜(33)で表される化合物を用いることができる。
上記のc)の例としては、特許第4035268号に記載の、酸化されることにより低分子の現像抑制剤を放出しうるレドックス化合物をあげることができる。これらの化合物としては、特許第4035268号公報に記載の一般式(1)から(3)で表される化合物が好ましく、更にヒドラジン誘導体が好ましく、具体的にはR−1〜R−70のヒドラジン誘導体が特に好ましい。
【0034】
感光層に含まれる本発明の現像抑制化合物は、感光層に均一に含まれていてもよいが、感光層中の現像抑制化合物の含有量が、透明支持体に近い側の感光層(u層)で高いことが好ましい。更に透明支持体側の感光層のみにメルカプト化合物を含ませること、言い換えれば、このように現像液と接する感光層表面から最も遠い層に現像抑制剤を局在化させること、がより好ましい。あるいは、現像液と接する感光層表面から遠い層に向けて順次現像抑制剤の濃度を高くすることが好ましい。
【0035】
本発明の複数の感光層の少なくとも1つに含まれる現像抑制化合物の量は、a)の場合は添加量そのものの量で、b)およびc)の場合は放出された抑制剤の量として、現像抑制化合物と同じ層に含まれるハロゲン化銀乳剤中の銀1g(グラム)に対して、0.1mg以上、15mg以下であることが好ましく、0.5mg以上、10mg以下であることがより好ましく、1mg以上、6mg以下であることが特に好ましい。0.1mg以上、15mg以下の範囲であると色味調整がしやすい。
〔その他の層〕
【0036】
本発明の透明支持体の両面に感光層を有する感光材料は、透明支持体とそれぞれの感光層との間にアンチハレーション層57及び67を設けることが好ましい。
アンチハレーション層に用いる材料とその使用方法については、特開2009−188360号の段落29から32の記載を参照することができる。アンチハレーション層の光学濃度は露光する光の強さや波長によっても異なるが、0.5から3.0程度が好ましい。
【0037】
本発明の感光層の上に保護層55及び65を設けることが好ましい。本実施の「「形態において保護層」とは、後の感光材料及び現像処理により形成される導電パターンの、擦り傷による乳剤のカブリや導電パターンの損傷の防止や、力学特性を改良する効果を発現するために感光性を有する感光層上に形成される。保護層には、上記〔ハロゲン化銀乳剤を含む感光層〕に記載の(バインダー)項に記載のゼラチンや高分子ポリマーなどのバインダーに、膜の強度を高めるための微粒子、すべりを改良するための化合物、感光材料の表面粗さをコントロールしロール形状にした時の接着を防止するためのマット剤などを含ませることができる。保護層の厚みは0.5μm以下が好ましい。保護層の塗布方法及び形成方法は特に限定されず、公知の塗布方法及び形成方法を適宜選択することができる。なお、マット剤は現像処理後に残存しても透明性を阻害しない、もしくは処理工程で溶解するものが好ましい。
【0038】
次に、以上に記載した本発明の感光材料を用いて、本発明の透明導電シートを作るプロセスについて図12を用いて説明する。
図12の(a)は透明支持体32であり、(b)はこの透明支持体の両面に上部感光材料層50と、下部感光材料層60とを塗布により設けた本発明の感光材料05を表し、(c)は本発明の感光材料にフォトマスクを通して露光した図を表し、(d)は、露光に引き続く現像定着処理により形成された現像銀導電パターンを表す。以下では露光以降の各工程について説明する。
[露光]
【0039】
本発明の感光材料05は、支持体の両面に感光層が形成された感材であるため、本発明においては、導電パターンを形成するための露光は、本発明の感光材料の両面から施されることが好ましい。具体的には、図12(c)のように感光材料の両面に光を照射102a及び102bして露光する。光照射は、感光材料にフォトマスク110と120を介して行う。フォトマスク110と120は、後述する図7と図8の導電パターンを現像銀により形成するために用いるマスクであるから、フォトマスク110と120は、図5の上部導電パターン11と下部導電パターン12との導電パターンの導電性細線に相当する部分が光透過するマスクである。従って、フォトマスク110と120とは同一ではなく異なったパターンのマスクである。以上の説明のように、111と121とはマスクの開口部、112と122とはマスクの遮光部である。マスクの開口部を透過した光は感光層の131、141の部分のハロゲン化銀乳剤に潜像を形成する。この潜像が形成された131と141の部分は、次工程の現像処理により現像銀のパターンを形成する。マスクの遮光部により露光されなかった、感光材料の未感光部132、142は定着処理により感光しなかったハロゲン化銀乳剤粒子が溶解し層内から流出し、透明な膜152、162となる。
【0040】
上記のように、異なったパターンのマスクを用いて感光材料の両面からの露光をする場合は、以下のような問題が発生する。フォトマスク110の開口部111を透過した光は、感光材料の131の部分に潜像を形成するが、余分の光は透明支持体をも透過し、反対面の感光層61にも予期しない潜像を形成してしまう。このような問題は露光量の調節のみでは難しく、既に記載した感光層51を透過した光を吸収する光学濃度をもつアンチハレーション層57及び67を感光材料に設けることで対処できる。別の方法としては、感光層51と61のハロゲン化銀乳剤の感色性を増感色素により変える方法もある。
図13は本発明における露光装置のモデル図である。2つの光源100aと100bからの光はレンズにより平行光となり、前述のマスクを通して感光材料の両面を露光する。図13における光源からフォトマスクまでで構成される露光装置部は、2つの露光装置の位置決めが厳密になされる。図6及び図7のパターンを有するフォトマスク110と120により形成された銀像は、図8のような均一パターンとなるように厳密な位置決めがなされる。
2枚の導電シートを組み合わせてタッチパネルを構成する図14〜図16のような態様では、2枚の導電シートの位置決めを、各セットごとに行う必要があり、本件のような両面型に比べて生産性が大きく劣る。
【0041】
露光の光源としては、電磁波を用いることができる。電磁波としては、例えば、可視光線、紫外線等の光、X線等の放射線等が挙げられる。更に露光には波長分布を有する光源を利用してもよく、特定の波長の光源を用いてもよい。
露光方法は、図13のような面露光であってもよいし、異なったマスクを介する面露光であることもこのましい。また、図13のようなマスクを介するのではなく、走査露光であることも好ましい。
以上のようにして、本発明の導電シート製造用感光材料の両面に、像様パターン露光を施し、次いで現像処理することにより、現像銀の導電性細線からなるおもて面導電パターンと、現像銀の導電性細線からなるうら面導電層パターンとを、透明支持体の両面に形成することができる。
また、上記のようにして形成された導電シートは、おもて面導電パターンの導通方向と、うら面導電パターンの導通方向とは、互いに直交配置となるように露光され、その後現像処理されて形成される。
即ち、本発明のパターン露光は、現像処理後に支持体の両面に形成された導電層の一方の面の導電パターンの導通方向と、他方の面の導電パターンの導通方向とが互いに直交となるようにパターン化されていることを特徴としている。
また、本発明のパターン露光は、現像処理後に支持体の両面に形成された現像銀の導電性細線からなる導電パターンを、一方の側から透視したとき連続したパターンとみなせるように調整されていることを特徴としている。
【0042】
(現像処理)
本実施の形態では、感光層を露光した後、更に現像処理が行われる。現像処理は、銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる通常の現像処理の技術を用いることができる。現像液については特に限定はしないが、PQ現像液、MQ現像液、MAA現像液等を用いることもでき、市販品では、例えば、富士フイルム社処方のCN−16、CR−56、CP45X、FD−3、パピトール、KODAK社処方のC−41、E−6、RA−4、D−19、D−72等の現像液、又はそのキットに含まれる現像液を用いることができる。また、リス現像液を用いることもできる。
本発明における現像処理は、未露光部分の銀塩を除去して安定化させる目的で行われる定着処理を含むことができる。本発明における定着処理は、銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる定着処理の技術を用いることができる。
上記定着工程における定着温度は、約20℃〜約50℃が好ましく、更に好ましくは25〜45℃である。また、定着時間は5秒〜1分が好ましく、更に好ましくは7秒〜50秒である。定着液の補充量は、感光材料122の処理量に対して600ml/m以下が好ましく、500ml/m以下が更に好ましく、300ml/m以下が特に好ましい。
現像、定着処理を施した感光材料122は、水洗処理や安定化処理を施されるのが好ましい。上記水洗処理又は安定化処理においては、水洗水量は通常感光材料1m当り、20リットル以下で行われ、3リットル以下の補充量(0も含む、すなわちため水水洗)で行うこともできる。
現像処理後の露光部(導電パターン)に含まれる金属銀の質量は、露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上の含有率であることが好ましく、80質量%以上であることが更に好ましい。露光部に含まれる銀の質量が露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上であれば、高い導電性を得ることができるため好ましい。
本実施の形態における現像処理後の階調は、特に限定されるものではないが、4.0を超えることが好ましい。現像処理後の階調が4.0を超えると、光透過性部の透光性を高く保ったまま、導電性金属部の導電性を高めることができる。階調を4.0以上にする手段としては、例えば、前述のロジウムイオン、イリジウムイオンのドープ、また、現像処理液中に、ポリエチレンオキサイド誘導体を含有すること等が挙げられる。
【0043】
(現像処理後の硬膜処理)
感光層に対して現像処理を行った後に、硬膜剤に浸漬して硬膜処理を行うことが好ましい。硬膜剤としては、例えば、カリ明礬、グルタルアルデヒド、アジポアルデヒド、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン等のジアルデヒド類及びほう酸等の特開平2−141279号に記載のものを挙げることができる。
以上の工程を経て透明導電シートが得られるが、得られた透明導電シートの表面抵抗は0.1〜100オーム/sq.の範囲にあることが好ましく、1〜50オーム/sq.の範囲にあることが更に好ましく、1〜10オーム/sq.の範囲にあることがより好ましい。
また、得られた透明導電シートの体積低効率は160μオームcm以下であることが好ましく、1.6〜16μオームcmの範囲にあることが更に好ましく、1.6〜10μオームcmの範囲にあることがより好ましい。
【0044】
(カレンダー処理)
本実施の形態の製造方法では、現像処理済みの透明導電シートに平滑化処理を施す。これによって透明導電シートの導電性が顕著に増大する。平滑化処理は、例えばカレンダーロールにより行うことができる。カレンダーロールは、通常、一対のロールからなる。以下、カレンダーロールを用いた平滑化処理をカレンダー処理と記す。
カレンダー処理に用いられるロールとしては、エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等のプラスチックロール又は金属ロールが用いられる。特に、両面に乳剤層を有する場合は、金属ロール同士で処理することが好ましい。片面に乳剤層を有する場合は、シワ防止の点から金属ロールとプラスチックロールの組み合わせとすることもできる。線圧力の上限値は1960N/cm(200kgf/cm)、面圧に換算すると699.4kgf/cm)以上、更に好ましくは2940N/cm(300kgf/cm、面圧に換算すると935.8kgf/cm)以上である。線圧力の上限値は、6880N/cm(700kgf/cm)以下である。
カレンダーロールで代表される平滑化処理の適用温度は10℃(温調なし)〜100℃が好ましく、より好ましい温度は、金属メッシュパターンや金属配線パターンの画線密度や形状、バインダー種によって異なるが、おおよそ10℃(温調なし)〜50℃の範囲にある。
【0045】
(蒸気に接触させる処理)
そして、本実施の形態の製造方法では、平滑化処理された導電パターンを蒸気に接触させるようにしてもよい(蒸気接触工程)。この蒸気接触工程は、平滑化処理された透明導電シートを、過熱蒸気に接触させる方法と、平滑化処理された導電パターン108を、加圧蒸気(加圧された飽和蒸気)に接触させる方法とがある。これにより短時間で簡便に導電性及び透明性を向上させることができる。水溶性バインダの一部が除去されて金属(導電性物質)同士の結合部位が増加しているものと考えられる。
【0046】
(水洗処理)
本実施の形態の製造方法では、透明導電シートを過熱蒸気又は加圧蒸気に接触させた後に水洗処理することが好ましい。蒸気接触処理後に水洗することで、過熱蒸気又は加圧蒸気で溶解又は脆くなったバインダーを洗い流すことができ、これにより、導電性を向上させることができる。
【0047】
(めっき処理)
本実施の形態においては、上述した平滑化処理を行ってもよいし、透明導電シートに対してめっき処理を行ってもよい。めっき処理により、更に表面抵抗を低減でき、導電性を高めることができる。平滑化処理は、めっき処理の前段又は後段のいずれで行ってもよいが、めっき処理の前段で行うことで、めっき処理が効率化され均一なめっき層が形成される。めっき処理としては、電解めっきでも無電解めっきでもよい。まためっき層の構成材料は十分な導電性を有する金属が好ましく、銅が好ましい。
【0048】
(酸化処理)
本実施の形態では、現像処理後の透明導電シート、並びに、めっき処理によって形成された導電性金属部には、酸化処理を施すことが好ましい。酸化処理を行うことにより、例えば、光透過性部に金属が僅かに沈着していた場合に、該金属を除去し、光透過性部の透過性をほぼ100%にすることができる。
【0049】
以上のプロセスを経て形成された導電性細線からなる両面導電シート10は、複数の導電性細線からなるパターニングされた導電パターンである。
本発明の両面導電パターン型の透明導電シートは、帯電防止の目的にも用いられるが、発熱体や、電磁波シールド、電極材料として用いることが好ましい。より好ましくは静電容量方式のタッチパネルに用いられる。
以下では、本発明の透明支持体上に形成されパターニングされた導電性細線を有する導電シートについて、本発明の透明導電シートが好ましく用いられる静電容量方式のタッチパネルと関連させながら説明する。
従来の静電容量方式のタッチパネルでは、導電材料としてITO薄膜をバー電極に加工して使用されてきたが、本発明においてはITOより低抵抗の材料を用いた導電性細線の組み合わせにより電極を形成しているため、これを導電パターンと呼んでいる。
【0050】
本発明の透明導電シートを用いる静電容量方式のタッチパネルは、図1に示したように、画像表示装置などに設置する側となる図の下部より、必要に応じて設けられる硝子板34、透明支持体33、両面導電シート10、タッチ面を兼ねる透明支持体30が積層され、その上にタッチ面が開口した不透明の枠部材が重ねられている。図1の02で表示した部分がタッチ面である。両面導電シート10とその両側の透明支持体30、33との間には絶縁層を兼ねる接着剤41及び42が充填されている。
両面導電シート10の上部導電パターン(おもて面導電パターンとも言う)11は、図5の上図のようなパターンを有し、それぞれの導電パターンは、静電容量を感知する複数の導電性格子部14A、格子と格子を繋ぐ導電性の連結部16A、導電パターンと外部制御部を繋ぐ引き出し線18Aから構成されている。図6は導電性格子部14Aと連結部16Aの拡大図である。図6では、導電性格子部の形状が正方格子のメッシュ状に記載されているが、正方格子である必要は無く、菱形、長方格子であってもよい。導電性格子部14Aは、導電性細線21で構成される正方格子と、正方格子の周辺に配置され、多数の短線からなるダミー細線19、導電パターン方向に導電性格子部14Aを連結する導電性の連結部16Aが記載されている。導電性の連結部16Aは、予期しない断線故障により導電パターンが機能しなくなることを防ぐため、単一の細線での連結ではなく、複数の細線による連結としている。
下部導電パターン(うら面導電パターンとも言う)12は、図5の下図のようなパターンを有し、それぞれの導電パターンは、静電容量を感知する複数の導電性格子部14B、格子と格子を繋ぐ導電性の連結部16B、導電パターンと外部制御部を繋ぐ引き出し線18Bから構成されている。図7の説明は上部導電パターン11の説明に準ずることができる。
上記のパターニングされた導電パターンは、導電性細線により正方格子あるいは長方格子を導電パターン中に有する導電シートであることが好ましい。
【0051】
図8は、図5をタッチ者側から透視した場合の導電パターンの見え方を示している。本発明の上部導電シート11及び下部導電シート12を用いた図8は、均一な正方格子となり、視認しやすいパネルを構成できる。なお、図8では格子が直線で形成されているように見えるが、直線部分と、2本の短線からなる部分がある。この様子を示したのが図8の○印の部分を拡大した下図であり、左側の実線部は上部導電シートの導電性格子部14Aの導電性細線21の一部を表し、同じく実線の19(21)は、導電性格子部14Aの周囲のダミー細線である。同様に、右側の点線部は下部導電シートの導電性格子部14Bの導電性細線22の一部を表し、同じく点線の19(22)は、導電性格子部14Bの周囲のダミー細線である。このように視覚的には1本の直線に見えても実際には導電性細線21と22は導通しないし、ダミー細線19とも導通しない。
上記から理解できるように、本発明に用いられるダミー細線19は、視認性改良のために用いられる細線であり、図6及び図7で記載されるように、ダミー細線は正方格子の長線の両端部の延長線上に形成され、導電性格子部とは導通しないように断線されている。ダミー細線の長さは、導電パターン部分の単位格子の辺長の1/2以下であることが好ましい。
尚、図6〜8中に記載のZ−Zの表示は、この位置で両面導電シートを切断し、この位置の断面図が図1のタッチパネル及び図2から4の両面導電シートであることを示している。
【0052】
以下では、上部導電シート11を例にとり導電パターンの詳細について説明する。従来の導電パターンを形成してきたITOのダイヤモンドパターンは、ITOの抵抗値が高いため大画面への適用が困難であり、本発明ではダイヤモンド部分を低抵抗の細線からなるメッシュあるいは格子で形成し、低抵抗と画面の明るさを担保している。以下、正方格子での説明とするが、長方格子などの使用を妨げるものではない。
導電性の格子部を形成する導電性細線の線幅は、1μm以上、10μm以下であることが好ましく、2μm以上、6μm以下であることがより好ましい。1μm以上、10μm以下の範囲であると、低抵抗の導電パターンを比較的容易に形成できる。
導電性の格子部を形成する導電性細線の厚みは、0.1μm以上、1.5μm以下であることが好ましく、0.2μm以上、0.8μm以下であることがより好ましい。0.1μm以上、1.5μm以下の範囲であると、低抵抗の導電パターンで、耐久性に優れた導電パターンを比較的容易に形成できる。
【0053】
本発明の導電性格子部14A及び14Bの一辺の長さは、3〜10mmであることが好ましく、4〜6mmであることがより好ましい。一辺の長さが、3〜10mmであると、感知する静電容量の不足による検出不良になる可能性や、位置検出精度が低下するといった問題を起こしにくい。同様の観点から、導電性格子部を構成する単位格子の一辺の長さは50〜500μmであることが好ましく、150〜300μmであることが更に好ましい。単位格子の辺の長さが上記範囲である場合には、更に透明性も良好に保つことが可能であり、表示装置の前面にとりつけた際に、違和感なく表示を視認することができる。
【0054】
なお、図5のタッチパネルの上下導電パターンは導通方向をほぼ直交としているが、タッチの位置の座標決定に支障の無い限り任意の角度に設定することができる。
更に、図6及び7に例示した正方格子を構成する導電性細線の向きは、X、Y軸に対し45°方向となる。このパネルのX、Y方向を画像表示装置の導電パターン軸の方向として張り合わせると、モアレが発生しにくいという特徴を本発明のタッチパネルは有する。
【0055】
以上のパターニングされた導電パターンから構成される導電シートは、1つの導電パターンを1つのITO膜にて形成する構成よりも大幅に電気抵抗を低減することが可能となる。従って、本発明の導電シートを用いて例えば投影型静電容量方式のタッチパネルに適用した場合に、応答速度を速めることができ、タッチパネルの大サイズ化を促進させることができる。
「色味差の改良された両面導電シート」
【0056】
本発明の導電シートは、課題を解決するための手段項に説明したように、生産性を向上させるために用いられる一枚の透明支持体の両面に形成された上部導電パターンと下部導電パターンの色味差を小さくすることのできる導電シートである。
色味差の改良は、一枚の透明支持体の両面に形成された上部導電パターンと下部導電パターンを有する導電シート(両面導電シートとも言う)のおもて面導電パターンの透明支持体から遠い側の導電パターン表面の反射色度b1*と、うら面導電パターンの透明支持体に近い側の導電パターン表面の反射色度b2*との差の絶対値が2以下(|△b*|=|b1*−b2*|≦2)である透明導電シートにより達成できる。より具体的には、タッチ者側から測定した導電パターンの反射色度b*値を、両面導電パターンのタッチ者に近い側の導電パターン(おもて面導電パターン)の反射色度b1*と、タッチ者に遠い側の導電パターン(うら面導電パターン)の反射色度b2*としたとき、反射色度b1*と、反射色度b2*との差の絶対値が2以下(|△b*|=|b1*−b2*|≦2)である透明導電シートを用いたタッチパネルにより達成できる。
ここで、おもて面導電パターンの透明支持体から遠い側の導電パターン表面の反射色度b1*とは、図1のd1の領域の導電パターン表面の反射色度を、図の上部である視認者側から測定したときのb*値である。また、うら面導電パターンの透明支持体に近い側の導電パターン表面の反射色度b2*とは、図1のd2の領域の導電パターン表面の反射色度を、図の上部である視認者側から測定したときのb*値である。
【0057】
なお、反射色度bは、L***表色系で定義される特性値である。L***表色系は、国際照明委員会(CIE)において1976年に定められた表色の方法であり、本発明におけるL*値、a*値、b*値は、JIS−Z8729:1994に規定される方法によって測定して得られた値である。JIS−Z8729の測定方法としては、反射による測定方法、透過による測定方法があるが、本発明では反射で測定した値を用いる。
***表色系におけるL*値、a*値、b*値は、広く知られているように、L*値が明度、a*値とb*値とが、色相と彩度を表している。具体的には、a*値が正の符号であれば赤色の色相、負の符号であれば緑色の色相であることを示す。b*値が正であれば黄色の色相、負であれば青色の色相である。また、a*値とb*値とも、絶対値が大きいほどその色の彩度が大きく鮮やかな色であることを示し、絶対値が小さいほど彩度が小さいことを示す。
本発明においては、a*値は観察する方向(b方向とb2方向)での変化が小さい。一方、b*値は導電パターンの観察する方向による変化がa*値よりおおきく、具体的には、黄色味から青色味へ、あるいはその逆方向へ動くことで色ムラとして視認されやすい。測定方法の詳細は実施例の項に記載する。
【0058】
上記の両面導電シートの導電パターン表面の色味の改良は、既に説明した本発明の感光材料によって達成されている。
以下に、上記の反射色度調整のための感光層の各層の好ましい態様について再度、概略の説明をする。本発明のように低抵抗化のために銀量を多くし、かつ現像されて形成される銀像に導電性を付与するために銀の密度を高くした系では、現像銀導電パターンの透明支持体から遠い側の導電パターン表面の色味は青味傾向であり、現像銀導電パターンの透明支持体に近い側の導電パターン表面の色味は黄味傾向となりやすい。
この色味現象の原因として、銀量が多くかつ銀密度の高い系では、透明支持体から遠い側の感光層表面からの現像液浸透に伴い、表面側ではフレッシュな現像液組成で現像が進行するのに対し、現像液が感光層中を下層に向かって浸透するにしたがい、現像疲労物質の蓄積が起こり、また、現像液に含まれる現像抑制剤が表面層で消費されてしまうため、抑制剤の少ない液組成での現像が進行すると考えられる。これに伴い、感材の上層側(o層側)/下層側(u層側)で、現像銀のフィラメントの形状に差異が生じ、色度差として観察されるものと推定される。このような推定により、本発明における好ましい態様については、既に課題を解決するための手段項の1)〜30)項に記載した。
【0059】
なお、本発明は、下記表1に記載の公開公報及び国際公開パンフレットの技術と適宜組合わせて使用することができる。「特開」、「号公報」、「号パンフレット」等の表記は省略する。但し、日本の公開公報は、2004−221564のように年号のあとをハイフンで表示し、国際公開パンフレットは、2006/001461のように年号のあとをスラッシュで表示した。
【0060】
【表1】

【実施例】
【0061】
以下に本発明の実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。なお、以下の実施例に示される材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0062】
実施例1
(乳剤の調製)
38℃、pH4.5に保たれた下記1液に、下記の2液及び3液の各々90%に相当する量を攪拌しながら同時に20分間にわたって加え、0.16μmの核粒子を形成した。続いて下記4液、5液を8分間にわたって加え、更に、下記の2液及び3液の残りの10%の量を2分間にわたって加え、0.21μmまで成長させた。更に、ヨウ化カリウムを0.10g加え5分間熟成し粒子形成を終了した。
【0063】
1液:
水 750ml
ゼラチン(フタル化処理ゼラチン) 8g
塩化ナトリウム 3g
1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−チオン 20mg
ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム 10mg
クエン酸 0.7g
2液:
水 300ml
硝酸銀 150g
3液:
水 300ml
塩化ナトリウム 38g
臭化カリウム 32g
ヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム
(0.005%KClを含む20%水溶液) 5ml
ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム
(0.001%NaClを含む20%水溶液) 7ml
4液:
水 100ml
硝酸銀 50g
5液:
水 100ml
塩化ナトリウム 13g
臭化カリウム 11g
黄血塩 5mg
【0064】
その後、常法にしたがってフロキュレーション法によって水洗した。具体的には、温度を35℃に下げ、3リットルの蒸留水を加えてから、硫酸を用いてハロゲン化銀が沈降するまでpHを下げた(pH3.6±0.2の範囲であった)。次に、上澄み液を約3リットル除去した(第一水洗)。更に3リットルの蒸留水を加えてから、ハロゲン化銀が沈降するまで硫酸を加えた。再度、上澄み液を3リットル除去した(第二水洗)。第二水洗と同じ操作を更に1回繰り返して(第三水洗)、水洗・脱塩行程を終了した。水洗・脱塩後の乳剤をpH6.4、pAg7.5に調整し、ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム10mg、ベンゼンチオスルフィン酸ナトリウム3mg、チオ硫酸ナトリウム15mgと塩化金酸10mgを加え55℃にて最適感度を得るように化学増感を施し、安定剤として1,3,3a,7−テトラアザインデン100mg、防腐剤としてプロキセル(商品名、ICI Co.,Ltd.製)100mgを加えた。最終的に得られた乳剤は、沃化銀を0.05モル%含み、塩臭化銀の比率を塩化銀70モル%、臭化銀30モル%とする、平均粒子径0.22μm、変動係数9%のヨウ塩臭化銀立方体粒子乳剤であった。
【0065】
(感光層塗布液の調製)
上記乳剤に1,3,3a,7−テトラアザインデン1.2×10-4モル/モルAg、ハイドロキノン1.2×10-2モル/モルAg、クエン酸3.0×10-4モル/モルAg、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジンナトリウム塩0.90g/モルAg、微量の硬膜剤を添加し、クエン酸を用いて塗布液pHを5.6に調整して、感光層塗布液を調製し基準処方塗布液とした。このときの塗布液の銀とバインダーの体積比は2.0である。
銀とバインダーの体積比が基準処方の2.0より小さい場合は塗布液にゼラチンを加えることで銀とバインダーの体積比を調整し、塩化銀と臭化銀との比率を変更する場合は上記の3液と5液の塩化ナトリウムと臭化カリウムの比率を変更して表2のおもて面およびうら面用の塗布液を作成、準備をした。
表2の感光層は、3層の場合もあるため、便宜的に全ての例を3層構成で表し、支持体に近い側からu層、m層、o層として表した。比較例1の場合は、おもて面、うら面ともに単一の塗布層の構成の例である。また各層の銀密度列の()内の表示は膜厚の比を表し、例えば実施例1のうら面は、o層とu層の厚みが0.8:0.2の割合であることを示している。現像抑制剤は、表中の主としてu層に添付の構造式の化合物を添加した。
【0066】
100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの両面にコロナ放電処理を施した後、厚み0.1μmのゼラチン下塗り層(易接着層56、66)、更に下塗り層の上に光学濃度が約1.0で現像液のアルカリにより脱色する染料を含むアンチハレーション層57、67を、両面に設けて導電シート用の透明支持体32とした。
この支持体の両面に、上記で調製、準備した感光層塗布液を塗布した。感光層全体の銀の塗布量は表2の銀画像厚みから換算される量であり、感光層3層(u層、m層、o層)のそれぞれの膜厚と銀量は、()内に示した膜厚比、各層の銀密度、感光層全体の銀量から計算できる。
表2の銀とバインダーの体積比は、すでに述べたように、現像銀の密度が10.5、バインダーの密度は1.34であるとして体積に換算した。なお、密度1.34は、ゼラチンに適用できる密度であり、他の高分子化合物を用いる場合は化合物に応じた換算が必要である。また、各感光層に用いた現像抑制化合物の添加量は、銀1gに対する現像抑制化合物の添加量mgとして表示した。用いた現像抑制化合物の構造は、表2のあとに記載した。
更に上記o層の上に、防腐剤を含むゼラチンからなる膜厚0.15μmの保護層を設けた。3層の感光層と保護層の4層は同時塗布機を用いて塗布し、感光材料1〜29を作成した。
【0067】
(露光・現像処理)
次に、上記で作成した感光材料1〜29に、図13の両面露光機を用いて両面露光を施した。光源には高圧水銀ランプを用い、おもて面側のフォトマスクとしては図6(図5の上部導電パターン11)のパターン形成用のマスクを、うら面側のフォトマスクとしては図7(図5の下部導電パターン12)のパターン形成用のマスクを用いて露光した。用いたマスクの光透過用の窓は、それぞれ図6及び図7のネガティブパターンであり、格子を形成する単位正方格子の線幅は3μm、格子の辺長は300μmである。
露光後、下記の現像液で現像し、更に定着液(商品名:CN16X用N3X−R:富士写真フイルム社製)を用いて現像処理を行った後、純水でリンスし、乾燥して、両面導電パターン型の透明導電シート1を得た。同様にして、両面導電パターン型の透明導電シート2〜29を得た。
【0068】
(現像液の組成)
現像液1リットル(L)中に、以下の化合物が含まれる。
ハイドロキノン 0.037mol/L
N−メチルアミノフェノール 0.016mol/L
メタホウ酸ナトリウム 0.140mol/L
水酸化ナトリウム 0.360mol/L
臭化ナトリウム 0.031mol/L
メタ重亜硫酸カリウム 0.187mol/L
【0069】
(タッチパネルの作成)
上記の両面導電パターン型の透明導電シート1のおもて面側に、厚さ300μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを粘着剤を用いてはりつけた。また、透明導電シート1のうら面側には厚さ3mmのガラス板を粘着剤で貼り合わせて、比較例1の静電容量型のタッチパネルを作成した。透明導電シート1のかわりに透明導電シート2〜29を用いる以外は比較例1と同様にして、比較例2および3の静電容量型のタッチパネル、実施例1〜26の静電容量型のタッチパネルを作成した。
【0070】
(評価)
以上で作成した両面導電パターン型の透明導電シート1〜29を用いて以下の評価を行った。
(1)反射色度b1*と、b2*の測定
測定用のサンプルをBCRA黒タイル(光沢版)の上に載せ、0°方向から照射、45°方向で受光した光の分光反射率を測定する。好ましいタイルは、サカタインクスエンジニアリング株式会社製のBCRA黒タイル(光沢版)であり、黒タイルの反射色度は、L*が 3.6、aが −0.9、b* が−0.6である。反射濃度計としてはGretagMacbeth(グレタグマクベス)製 Spectro Eye LT を用いることができる。
反射色度の測定サンプルには、パターン露光用の通常のマスクではなく、おもて面露光用のマスク110は、反射色度測定が可能な大きさの窓を開けたベタのマスクを用い、うら面露光にはマスクを用いない全面ベタの露光を施した。反射色度の測定はおもて面側から行い、おもて面の露光され銀像が形成された部分の反射色度を反射色度b1*とし、おもて面の露光されていない部分を測定した反射色度を反射色度b*とし、得られた反射色度b1*と、反射色度b2*とから、差△b*の絶対値を計算した。
【0071】
(2)視認性の評価
作成した両面導電パターン型の透明導電シートを垂直方向、各方位の斜め方向から観察し、反射光の色のムラ、反射光の揺らぎ、導電パターンの輪郭などの官能評価を以下のように行った。
評価◎ 全く気にならない。
評価○ 気にならない。
評価△ 方向によっては気になる時がある。
評価× 気になる。
【0072】
(3)導電性の評価
透明導電シートの導電パターンの抵抗値を直読し、比較例1のおもて面の導電パターンとうら面の導電パターンの抵抗値を基準として評価した。
評価◎ 比較例1の抵抗値より明らかに低抵抗値を示す。表面抵抗値としては20Ω/□未満である。
評価○ 比較例1の抵抗値とほぼ同等。表面抵抗値としては20Ω以上50Ω/□である。
評価× 比較例1の抵抗値より何らかの理由で劣る。表面抵抗値としては50Ω/□をこえる値である。
以上の結果を以下の表2にまとめた。
【0073】
【表2−1】

【0074】
【表2−2】

【0075】
【化1】

【0076】
以上の表2の結果から、以下がわかった。
導電層の銀の密度(銀とバインダの体積比)が均一である比較例1〜3は、色味(反射色度、および色味ムラ、色味の視認性)と導電性の両方を満足するに至っていない。
比較例1〜3に対し、うら面導電パターンを銀密度1.0または1.5の高銀層と、0.3の低銀層とを有するようにした実施例1〜3は、色味を大きく改良している。実施例2は改良効果がやや小さいが、実施例1は視認性が最も良好である。
実施例4〜8は、おもて面導電パターン、うら面導電パターンをさらに多層に分割した例であり、うら面導電パターンのu層の銀密度0.3を更に銀密度0.375と0.2の層に分割した実施例6は、実施例1と同等の改良効果を有している。少ない銀量の低密度層を設けることが色味と導電性の両立のために有効であることがわかった。その他の実施例は実施例3と同等の性能である。
実施例9〜17は、上記の銀密度の違いによる多層化に加えて、臭化銀比率を変更した例である。臭化銀比率を高くすることは現像銀表面の色調を青み方向に寄せる効果をもっており、これらの組み合わせにより、実施例9〜16は、実施例2または3と同等な性能が達成できる。また、実施例17は実施例1に近い性能が達成できている。
実施例18〜26は、更に一方の面(実施例ではうら面導電パターン)のu層に現像抑制剤を添加した例である。現像抑制剤を使用すると、実施例20〜22のように実施例1と同等、あるいはそれ以上の性能を達成することができ、色味の調節のための手段として有効であることがわかった。実施例で用いた化合物12、化合物R-1、化合物Fの順に効果が大きいが、調節する色味に応じてそれぞれを使い分けることができる。
【符号の説明】
【0077】
01 タッチパネル
02 タッチ面
03 タッチ面カバー
05 透明導電シートを製造するための感光材料
10 透明導電シート(両面導電シートとも言う)
11 上部導電パターン(おもて面導電パターン、おもて面電極とも言う)
12 下部導電パターン(うら面導電パターン、うら面電極とも言う)
14A、14B 静電容量を感知する複数の導電性格子部
16A、16B 格子と格子を繋ぐ導電性の連結部
18A、18B 導電パターンと外部制御部を繋ぐ引き出し線
19 ダミー細線
21 上部導電パターン(上部電極とも言う)を構成する導電性細線
22 下部導電パターン(下部電極とも言う)を構成する導電性細線
30 タッチ面用の透明支持体
31 タッチ面を兼ねる導電シート用の透明支持体
32 導電シート用の透明支持体
33 透明支持体
34 ガラス板
41、42 絶縁層を兼ねる粘着層
50 上部感光材料層(おもて面感光材料層)
51 上部感光層(おもて面感光層)
52 上部第一感光層(上部u層)
53 上部第二感光層(上部m層)
54 上部第三感光層(上部o層)
55 上部保護層
56 上部下塗り層
57 上部アンチハレーション層
58 上部感光層中の銀の高密度層
59 上部感光層中の銀の低密度層
60 下部感光材料層(うら面感光材料層)
61 下部感光層(うら面感光層)
62 下部第一感光層(下部u層)
63 下部第二感光層(下部m層)
64 下部第三感光層(下部o層)
65 下部保護層
66 下部下塗り層
67 下部アンチハレーション層
68 下部感光層中の銀の高密度層
69 下部感光層中の銀の低密度層
100a、100b 露光用の光源aとb
101a、101b 露光用のレンズaとb
102a、102b 露光用の平行光aとb
110 上部導電パターン(おもて面導電パターン)形成のために用いるフォトマスク
120 下部導電パターン(うら面導電パターン)形成のために用いるフォトマスク
111、121 フォトマスクの光透過部
112、122 フォトマスクの遮光部
131、141 感光層中の露光された部分(潜像が形成された部分)
132、142 感光層中の露光されなかった部分(潜像が形成されなかった部分)
151(21) 現像処理後に形成された上部導電パターンの銀細線(上部導電パターンを構成する導電性
細線)
161(22) 現像処理後に形成された下部導電パターンの銀細線(下部導電パターンを構成する導電性
細線)
152、162 現像処理により、露光されなかったハロゲン化銀乳剤などが除去された
透明層
d1 上部導電パターンの導電性細線が連続して並ぶ領域(b1*として視認される場所)
d2 下部導電パターンの導電性細線が連続して並ぶ領域(b2*として視認される場所)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体の両面に、導電性細線からなる導電層が形成された透明導電シートであって、前記両面の少なくとも一方の導電層において、導電性細線を構成する金属の密度が高い部分と、低い部分を有することを特徴とする透明導電シート。
【請求項2】
前記透明導電シートが、透明支持体の両面に、ハロゲン化銀乳剤を含む感光層が形成された感光材料に、パターン露光と現像処理を施すことにより導電性細線からなる導電層を透明支持体の両面に形成した透明導電シートであり、前記両面の導電層の少なくとも一方の導電層において、導電性細線を構成する金属の密度が高い部分と、密度が低い部分を有することを特徴とする請求項1に記載の透明導電シート。
【請求項3】
請求項2に記載の透明導電シートが、前記透明支持体の両面の一方の面に形成された現像銀細線の透明支持体に近い側の銀密度が前記細線中の銀の平均密度より低く、かつ他方の面に形成された現像銀細線の透明支持体から遠い側の銀密度が細線中の銀の平均密度より低いことを特徴とする透明導電シート。
【請求項4】
前記感光材料は、透明支持体の両面に、ハロゲン化銀乳剤を含む感光層が形成された感光材料であって、おもて面またはうら面のいずれか一方の面に形成された感光層が、銀とバインダーの体積比が小さい感光層と、銀とバインダーの体積比が大きい感光層とを有することを特徴とする請求項2に記載の感光材料。
【請求項5】
前記銀とバインダーの体積比が小さい感光層の銀とバインダーの体積比は0.05以上、0.5以下であり、銀とバインダーの体積比が大きい感光層の銀とバインダーの体積比は0.7以上であることを特徴とする請求項4に記載の感光材料。
【請求項6】
前記感光材料は、塩臭化銀乳剤を含み、前記銀とバインダーの体積比が小さい感光層の塩臭化銀乳剤の臭化銀含有率は、銀とバインダーの体積比が大きい感光層の塩臭化銀乳剤の臭化銀含有率よりも5モル%以上高いことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の感光材料。
【請求項7】
前記銀とバインダーの体積比が小さい感光層のハロゲン化銀乳剤の臭化銀含有率は40モル%以上であり、銀とバインダーの体積比が大きい感光層のハロゲン化銀乳剤の臭化銀含有率は40モル%未満であることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の感光材料。
【請求項8】
前記銀とバインダーの体積比が小さい感光層の一方が現像抑制剤を含み、銀とバインダーの体積比が小さい感光層の他方が現像抑制剤を含まないことを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載の感光材料。
【請求項9】
前記現像抑制剤がメルカプト化合物であることを特徴とする請求項8に記載の感光材料。
【請求項10】
前記透明支持体の両面の感光材料が、透明支持体とそれぞれの感光層との間にアンチハレーション層を有することを特徴とする請求項2〜9のいずれか1項に記載の感光材料。
【請求項11】
前記パターン露光は、請求項2〜10の感光材料の両面から施されることを特徴とする透明導電シート。
【請求項12】
前記パターン露光は、現像処理後に支持体の両面に形成された導電層の一方の面の導通方向と、他方の面の導通方向とが互いに直交となるようにパターン化されていることを特徴とする請求項11に記載の透明導電シート。
【請求項13】
前記パターン露光は、現像処理後に支持体の両面に形成された現像銀の導電性細線からなる導電パターンを、一方の側から透視したとき連続したパターンとみなせるように調整されていることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の透明導電シート。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれか1項に記載の透明導電シートを用いた静電容量方式のタッチパネル。
【請求項15】
請求項14に記載の透明導電シートを用いた静電容量方式のタッチパネルにおいて、タッチ者側から測定した導電パターンの反射色度b*値を、タッチ者に近い側の導電パターン(おもて面導電パターン)の反射色度b1*と、タッチ者に遠い側の導電パターン(うら面導電パターン)の反射色度b2*としたとき、反射色度b1*と、反射色度b2*との差の絶対値が2以下(|△b*|=|b1*−b2*|≦2)であることを特徴とするタッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−218402(P2012−218402A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89398(P2011−89398)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】