説明

透明導電性フィルム、その製造方法

【課題】本発明は、上記のような事情に鑑みなされたものであり、耐久性が高く高導電性で透過性にすぐれた透明導電性フィルム、その製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】基材と基材の上にカーボンナノチューブと芳香族ポリマーからなる導電層を有し、さらに、導電層の上に樹脂層からなる層を有する透明導電性フィルムであって、
550nmの光線透過率が50%以上、表面抵抗値が10〜10Ω/□であることを特徴とする透明導電性フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電性フィルム、その製造方法に関する。より詳細には、高導電性で、透過性に優れ、摺動耐久性試験の負荷後における表面抵抗値の変化率が小さい透明導電性フィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブが最初に広く報告されたのは1991年である(非特許文献1)。カーボンナノチューブは実質的にグラファイトの1枚面を巻いて筒状にした形状を有しており、1層に巻いたものを単層カーボンナノチューブ、多層に巻いたものを多層カーボンナノチューブ、中でも特に2層に巻いたものを2層カーボンナノチューブという。カーボンナノチューブは、自体が優れた真性の導電性を有し、導電性材料として使用されることが期待されている。
【0003】
カーボンナノチューブを用いた透明導電性フィルムは公知である。カーボンナノチューブを用いて導電性をより効率よく発揮させるためにはより高分散させカーボンナノチューブの接点数を増やす必要がある。
【0004】
分散手法にはカーボンナノチューブを分散剤を用いて分散させる手法がある(非特許文献2)。しかし、本法はカーボンナノチューブを高分散させるために多くの分散剤が必要でありフィルムの導電性が不十分となる問題がある。
【0005】
また、分散剤を用いずにCNTを修飾・官能基化し分散させる方法がある(非特許文献3)。これらはカーボンナノチューブ自体の導電性を低下させるほか、導電層にはバインダー成分が含有されずにカーボンナノチューブのみで構成されるため、高導電性を達成させるために必要なカーボンナノチューブ塗布量では、カーボンナノチューブとフィルムとの密着性が悪く膜強度が低下し摺動耐久性が不十分である。
【0006】
一方、膜強度をあげるために塗液中に分散剤の他にバインダーを含有させる方法がある。しかしカーボンナノチューブ塗液中に十分な強度を発揮するためにバインダーを添加するとカーボンナノチューブ間の導通が阻害され著しく導電性が低下するといった問題がある。
【非特許文献1】“ニューサイエンティスト(New Scientist)”, 1996年7月6日, p.28−31, 「ナノチューブによって(Through the Nanotube)」, Philip Ball
【非特許文献2】J.Chen等、Science, 282, 95 (1998)
【非特許文献3】Nakajima等、Chem. Lett., 638 (2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みなされたものであり、カーボンナノチューブの特性を損なうことなく、耐久性が高く高導電性で透過性にすぐれた透明導電性フィルム、その製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、カーボンナノチューブと芳香族ポリマーで構成される導電層とさらに樹脂層が設けられたフィルムが、耐久性に優れ高導電性で透過性にすぐれた透明導電性フィルムであることを見出し、本発明に到ったものである。
【0009】
すなわち本発明は、下記の構成からなる。
<1>基材と基材の上にカーボンナノチューブと芳香族ポリマーからなる導電層を有し、さらに、導電層の上に樹脂層からなる層を有する透明導電性フィルムであって、透明導電性フィルムの550nmの光線透過率/基材の550nmの光線透過率が50%以上、表面抵抗値が10〜10Ω/□であることを特徴とする透明導電性フィルム。
<2>摺動耐久性試験後の表面抵抗値の変化率(負荷後表面抵抗値/初期表面抵抗値)が1.5以下であることを特徴とする請求項1記載の透明導電性フィルム。
<3>基材と基材の上にカーボンナノチューブと芳香族ポリマーからなる導電層を有し、さらに、導電層の上に樹脂層からなる層を有する透明導電性フィルムであって、摺動耐久性試験後の表面抵抗値の変化率(負荷後表面抵抗値/初期表面抵抗値)が1.5以下であることを特徴とする透明導電性フィルム。
<4>カーボンナノチューブ塗布量が1〜40mg/mであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の透明導電性フィルム。
<5>基材が表面樹脂層を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の透明導電性フィルム。
<6>表面樹脂層がアクリル樹脂またはポリエステル樹脂からなることを特徴とする請求項5記載の透明導電性フィルム。
<7>芳香族ポリマーがスルホン酸、カルボン酸系官能基を有するポリマーであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の透明導電性フィルム。
<8>芳香族ポリマーがポリスチレンスルホン酸やその塩、またはその誘導体であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の透明導電性フィルム。
<9>カーボンナノチューブ100本中50本以上が単層〜5層カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の透明導電性フィルム。
<10>導電層の上に積層される樹脂層がアクリル樹脂および/またはポリエステル樹脂からなることを特徴とする請求項9記載の透明導電性フィルム。
<11>基材の導電層側とは反対の面にハードコート層を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか記載の透明導電性フィルム。
<12>基材の上にカーボンナノチューブと芳香族ポリマーからなる分散液を塗布し、さらに樹脂を塗布することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項記載の透明導電性フィルムの製造方法。
<13>基材の上に表面樹脂層を形成し、該表面樹脂層の上にカーボンナノチューブと芳香族ポリマーからなる分散液を塗布し、さらに樹脂を塗布することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項記載の透明導電性フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐久性が高く、高導電性で光透過性に優れた透明導電性フィルム、その製造方法が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の透明導電性フィルムは、基材と基材の上にカーボンナノチューブと芳香族ポリマーからなる導電層を有し、さらに、導電層の上に樹脂層からなる層を有することを特徴とする透明導電性フィルムである。カーボンナノチューブを用いて透明導電性フィルムを作成する場合、優れた透明導電性を発揮させるには、カーボンナノチューブを溶媒中に均一に高分散させ、基材に塗布する必要がある。しかし、カーボンナノチューブは、強固なバンドルや互いに絡まり合い強固な凝集体を形成するため、非常に分散が困難である。本発明においてはカーボンナノチューブの分散に芳香族ポリマーを用いる。芳香族ポリマーはカーボンナノチューブのグラファイトとπ電子相互作用しバンドルや凝集を解す能力があるが、さらに、芳香族ポリマーに親水性基を導入することで、疎水性の芳香環はカーボンナノチューブのグラファイトと親水性基は溶媒と相互作用し、カーボンナノチューブの太いバンドルや強固な凝集体を解し一本あるいは数本の細いバンドル状で溶媒中に分散させることができる。そのような分散液を基材に塗布することで、カーボンナノチューブ単位量あたりの接点数を増やすことができ、透明導電性が非常に優れたフィルムをえることができる。また、親水性基を有する芳香族ポリマーは、少量であってもカーボンナノチューブを高分散させることができ、基材に塗布した場合においてもカーボンナノチューブの導電性が損なわれず優れた透明導電性を達成できる。一方でカーボンナノチューブを高分散させるために用いる親水性基を有する芳香族ポリマーは、親水性基を有するゆえ、基材に塗布した場合、基材とカーボンナノチューブの密着性を低下させ、また、カーボンナノチューブ間の密着性を低下させるために導電層の膜強度を低下させる。本発明では芳香族ポリマーとカーボンナノチューブの導電層上に樹脂層を設けることで、芳香族ポリマーで高分散させたカーボンナノチューブをフィルムへ強固に固定できる。一般的に膜強度をあげるために塗液中にバインダーとして樹脂成分を含有させるが、カーボンナノチューブと芳香族ポリマーの分散液中に樹脂成分を混合させてから塗布した場合は、カーボンナノチューブ間で形成される導電パスに樹脂成分が存在してしまうため導電性が著しく低下してしまう。さらに、親水性基を有する芳香族ポリマーで高度に分散された状態であっても、樹脂成分が含有されることでカーボンナノチューブの凝集や再バンドル化が生じて透明導電性が低下の原因や、また、樹脂成分がもつ本来のバインダー効果が低下する原因となってしまう。本発明においては、芳香族ポリマーを用いて高分散させたカーボンナノチューブを基材に固定化したのち、導電層上に樹脂層を形成するので、カーボンナノチューブの導電パス中に過剰の樹脂成分が存在せず、導電性を損なうことなく膜強度の高いフィルムが得られる。また、導電層の上から樹脂層を塗布することで導電層が樹脂層により押さえつけられることになりフィルム表面の導電性が均一になるという効果もある。さらに、本発明においては、基材に表面樹脂層を設けることがフィルムの膜強度向上に効果的である。基材に表面樹脂層を設けることで基材とカーボンナノチューブと芳香族ポリマーからなる導電層の密着性が向上でき、導電層上に樹脂層を設けた場合からさらに膜強度を向上できる。
【0012】
また、透明導電性にいっそう優れた透明導電性フィルムを得るには、結晶化度の高い高品質のカーボンナノチューブを好ましく用いることができる。結晶化度の高いカーボンナノチューブは、電気伝導性に優れる。しかし、このような高品質のカーボンナノチューブは、結晶化度の高いフィルムと比べより強固にバンドルや凝集体を形成しているため、一本一本を解し高分散させるのは非常に困難である。本発明において用いる芳香族ポリマーは前述のとおりカーボンナノチューブのグラファイトと芳香環がπ電子相互作用するが、結晶化度の高いカーボンナノチューブのグラファイトは構造の乱れが少ないのでより強くπ電子相互作用し、カーボンナノチューブを分散するため結晶化度の高い高品質カーボンナノチューブをも高分散させることができる。さらに、結晶化度の高いカーボンナノチューブと芳香環の強い相互作用により、導電層上に樹脂層を設けることでより強い膜密着性のある、透明性、導電性に優れた透明導電性フィルムを得ることができる。
【0013】
本発明の透明導電性フィルムは、主に、光学用に好適に用いられる。光学用とは、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ、ブラウン管などの部材、例えば拡散シートや電磁波遮蔽フィルム、近赤外線カットフィルム、反射防止フィルムといったフィルムや、あるいはディスプレイ用透明電極フィルムやタッチパネル用透明電極フィルムに用いられる。本発明の透明導電性フィルムは耐屈曲性に優れることから、特に入力ペンあるいは指等で押圧、描画されるようなタッチパネル用透明導電フィルムに極めて実用的に用いることができる。
【0014】
上記本発明の透明導電性フィルムにおける基材は、特に限定されないが、透明であるものが高透過性であり好ましく、例えば透明フィルムもしくは透明基板等である。基材が透明であるとは、少なくとも波長550nmの光を50%以上透過させる性能を有するものをいう。透明フィルムとしては、熱可塑性樹脂フィルムが好ましく用いられ、例えば、ポリエステル(PET、PENなど)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、トリアセチルセルロース(TAC)、非晶性ポリオレフィン(非晶PO)、ポリウレタンなどがあり、耐熱性・成形性など使用目的により選択できる。
【0015】
基材の厚みは、特に限定されず中程度の厚さから非常に薄い厚さまで種々の範囲をとることができる。例えば、本発明の基材は約0.5nm〜約1000μmの間の厚さとしうる。好ましい実施形態では基材の厚さは約0.005〜約1000μmとなりうる。別の好ましい実施形態では基材の厚さは約0.05〜約500μmである。また、別の好ましい実施形態では基材の厚さは約1.0〜約200μmである。
【0016】
また、基材には表面樹脂層を有することが透明導電性フィルムの耐久性、特に基材と導電層の密着性が向上し好ましい。表面樹脂層は、基材上に少なくとも樹脂を含む層が積層されていればよい。表面樹脂層の厚みは、厚みが大きいとカーボンナノチューブが基材へ固定されやすく導電層の膜強度は向上するが、カーボンナノチューブ間の導通が阻害され透明導電性フィルムの導電性が低下するため、好ましくは、塗布するカーボンナノチューブ量にもよるが、カーボンナノチューブと基材との密着性を考えると0.01〜0.5μmが好まく、さらに0.05〜0.2μmが好ましい。
【0017】
表面樹脂層の樹脂は特に限定されず、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、アルキッド樹脂、尿素樹脂、およびフェノール樹脂などを用いることができる。基材、導電層との密着性に特に優れ、高耐熱性、高透明性であることからアクリル樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。
【0018】
アクリル系樹脂を構成するモノマー成分としては、例えば、アルキルアクリレート(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基等)、アルキルメタクリレート(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基等)、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシ基含有モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキ10シメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド等のアミド基含有モノマー、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基含有モノマー、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有モノマー、アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等)等のカルボキシル基またはその塩を含有するモノマーなどを用いることができ、これらは1種もしくは2種以上を用いて共重合される。なかでもメチルメタアクリレートやエチルアクリレートやアクリル酸やN−メチロールアクリルアミド等の重合体が透明性、密着性の点から好ましい。
【0019】
ポリエステル樹脂は、主鎖あるいは側鎖にエステル結合を有するものであればよく、特に限定されないが、酸成分とグリコール成分から重縮合して得ることができる。
ポリエステル樹脂を構成する酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビスフェノキシエタン−p,p’−ジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸など、およびそれらのエステル形成性誘導体など、また、スルホン酸基およびその塩基を含む酸成分として、例えば、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、スルホ−p−キシリレングリコール、2−スルホ−1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、およびアンモニウム塩などを用いることができ1種もしくは2種以上共重合される。
【0020】
ポリエステル樹脂を構成するグリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3− プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、4,4’−チオジフェノール、ビスフェノールA、4,4’−メチレンジフェノール、4,4’−(2−ノルボルニリデン)ジフェノール、o−,m−,およびp−ジヒドロキシベンゼン、p,p’−イソプロピリデンジフェノール、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、およびシクロヘキサン−1,4−ジオールなどを用いることができこれらは1種もしくは2種以上を用いて共重合される。これら樹脂は一種または二種以上を用いることができる。本発明においては上記のうち、芳香族ジカルボン酸のグリコール重縮合物が樹脂の耐熱性、皮膜強度、耐水性の点で好ましい。なかでも強度、透明性の点からポリエチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレート等が好ましい。
【0021】
表面樹脂層には、樹脂以外の成分として各種の添加剤、例えば、架橋剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、および核剤が添加されていてもよい。
【0022】
表面樹脂層は通常、基材となるフィルムに樹脂成分をオフラインコーティングあるいはインラインコーティングすることにより形成することができる。また、易接着層を有するポリエステルフィルムの“ルミラー”(東レ(株)社製)等の商標で市販されているものを使用してもよい。表面樹脂層が存在することの確認方法は、積層されていることが確認できる方法であれば限定されないが、例えば透過型電子顕微鏡を用いてフィルムの断面写真をとることで確認できる。必要であればフィルムを染色してもよい。表面樹脂層は基材との界面が明確でなくグラデーションがかかっている場合においても、グラデーション部分の片側(基材とは反対側)に樹脂層が認められれば、表面樹脂層があることとする。
【0023】
カーボンナノチューブはグラファイトの1枚面を巻いて筒状にした形状を有しており、1層に巻いたものを単層カーボンナノチューブ、2層に巻いたものを2層カーボンナノチューブ、多層に巻いたものを多層カーボンナノチューブという。
【0024】
本発明の透明導電性フィルムには層数が単層〜5層であるカーボンナノチューブが100本中50本以上含まれることが好ましい。6層以上の多層カーボンナノチューブは結晶化度が低く導電性が低いうえ、直径が太く導電層中のカーボンナノチューブ単位量あたりの接点数が小さくなり透明導電性が低くなる。すなわち、単層〜5層であるカーボンナノチューブは導電性が高く透明性に優れ好ましい。好ましくは、単層〜5層のカーボンナノチューブが100本中70本以上である。さらに好ましくは単層〜5層のカーボンナノチューブが100本中80本以上である。さらに好ましい形態では、2層〜5層が100本中50本以上であれば分散性、導電性が好ましい。さらに好ましくは2層〜5層が70本以上である。好ましいのは上記単層〜5層のカーボンナノチューブの本数の範囲と2層〜5層のカーボンナノチューブの本数の範囲の両方を満たすことである。上記範囲を満たす中で、特に2層カーボンナノチューブがカーボンナノチューブ100本中50本以上であると導電性ならびに分散性が極めて高く好ましい。
【0025】
カーボンナノチューブの層数は、例えば透過型電子顕微鏡で測定できる。フィルム中のカーボンナノチューブは、溶媒でカーボンナノチューブを抽出して観察することができる。また、エポキシ樹脂で包埋した後、カミソリなどを用いて0.1μm以下に薄く切断した切片を観察することもできる。
【0026】
具体的には上述の方法で得られたカーボンナノチューブを透過型電子顕微鏡で観察した時に100本中50本以上のカーボンナノチューブが単層〜5層の範囲であることが好ましい。上記カーボンナノチューブの層数の測定は、次のようにして行う。透過型電子顕微鏡で40万倍で観察し、75nm四方の視野の中で視野面積の10%以上がカーボンナノチューブである視野中から任意に抽出した100本のカーボンナノチューブについて層数を測定し、評価する。一つの視野中で100本の測定ができない場合は、100本になるまで複数の視野から測定する。このとき、カーボンナノチューブ1本とは視野中で一部カーボンナノチューブが見えていれば1本と計上し、必ずしも両端が見えている必要はない。また視野中で2本と認識されても視野外でつながって1本となっていることもあり得るが、その場合は2本と計上する。
【0027】
芳香族ポリマーは主鎖に芳香族を含むポリマーである。芳香族ポリマーとカーボンナノチューブはπ電子のスタッキング効果により非常に強く相互作用する。本発明の導電層はカーボンナノチューブと芳香族ポリマーが含有されたものであり、芳香族ポリマーを用いることによって、溶媒中に高分散したカーボンナノチューブ分散液が得られ、基材に塗布したとき、得られた導電層はではカーボンナノチューブが効率的に導電パスを形成することができ透明導電性を向上させることができる。芳香族ポリマーは、主鎖に芳香族を含んでいれば良いが、カーボンナノチューブとより強く相互作用するものとしては、例えば芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ビニル樹脂例えばスチレン系樹脂、芳香族ポリイミド樹脂、ポリアニリン等の導電性ポリマーなどがある。
【0028】
芳香族ポリマーはそれ自身、特に芳香族環の部分が疎水性であるため、水系溶媒を分散媒とし、修飾して親水性にした、例えば親水基で官能基化された芳香族ポリマーを用いることがカーボンナノチューブをより高度に分散でき好ましい。その理由は芳香環がカーボンナノチューブに、親水基が水系溶媒にそれぞれ強い親和性を有しているからである。そのことにより分散剤が有効に働きカーボンナノチューブを水系溶媒へと分散させる。また親水基はイオン性のものがよく、親水基同士が反発してカーボンナノチューブを相互に乖離させるからである。
【0029】
芳香族ポリマーの親水基は、カルボン酸基、スルホン酸基、スルホン基、アミノ基、アミド基、水酸基、リン酸基、それらの塩があるが特に限定はない。中でも、カルボン酸基、スルホン酸基がカーボンナノチューブの分散性において好ましい。
【0030】
上記スルホン酸基を含有する芳香族ポリマー(以下スルホン酸基含有芳香族ポリマーと称する場合もある)を構成するモノマー単位としては、例えば、スチレンスルホン酸又はその塩、α−メチルスチレンスルホン酸又はその塩等が挙げられ、これらは単独または併用することができる。上記塩を構成する物質としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、アンモニア、あるいはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、エチルアミン、ブチルアミン、ヤシ油アミン、牛脂アミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ポリエチレンイミン等の有機アミン、または、これらのポリエチレンオキシドを用いることができるが、これらに限定されるものではない。中でも特に好適なものは、ポリスチレンスルホン酸のアンモニウム塩とポリスチレンスルホン酸のアルカリ金属塩であり、中でもポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩がカーボンナノチューブの導電性を低下させることなく、導電特性を効率的に発揮することができ好ましい。
【0031】
上記スルホン酸基含有芳香族ポリマーは、例えば、スチレンスルホン酸又はその塩、または、α−メチルスチレンスルホン酸又はその塩と、他のモノマー単位を共重合させることにより製造することができる。上記他のモノマー単位としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン等の芳香族炭化水素モノマー、ビニルトルエンスルホン酸又はその塩、ビニルナフタレンスルホン酸又はその塩等の芳香族スルホン酸モノマー、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、シクロペンタジエン等の共役ジエン類、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、シクロペンタジエン等の共役ジエンのスルホン化物またはその塩、エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸又はこれらの酸の一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、およびこれらの酸とアルコール、ポリエチレングリコール、イセチオン酸等の水酸基含有化合物とのエステル類が挙げられる。これらの他のモノマーは、1種単独あるいは2種以上を併用することができる。
【0032】
これらの(共)重合体は、芳香族骨格を有するモノマー単位を50〜100質量%とすることが望ましく、70〜100質量%含むことがより望ましい。芳香族骨格を有するモノマー単位が50質量%、あるいはそれより多い場合にカーボンナノチューブ分散性に特に優れる。本発明のスルホン酸基含有芳香族ポリマーは、例えば、スチレンスルホン酸又はその塩、または、α−メチルスチレンスルホン酸又はその塩と、上記他のモノマー単位を公知の方法、例えば、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などにより重合することにより得られ、かつ、その重量平均分子量を通常、400〜5000,000、1,000〜2000,000とすることが好ましい。重量平均分子量が、小さすぎるとカーボンナノチューブの分散性が不十分となる傾向にあり、透明導電性が劣る傾向にあり、一方、重量平均分子量が大きすぎると、分散液の粘度が大きく塗布が困難となる傾向にある。上記範囲においては特に分散性、塗布性ともに優れ、良好な透明導電性を得ることが可能である。
【0033】
また、本発明の親水性基含有芳香族ポリマーの芳香族骨格に対する親水性基の導入率はカーボンナノチューブを分散させる溶媒によるが、水系溶媒に分散させる場合は、好ましくは15モル%以上とすることが必要である。親水性基導入率が、15モル%未満では、得られるカーボンナノチューブの分散性が不十分であり透明導電性が低下する傾向にある。上限としては、非水系溶媒を用いる場合は95モル%以下であることが好ましい。
【0034】
更に、本発明のスルホン酸基含有芳香族ポリマーを得るその他の方法として、例えば、スチレンないしα−メチルスチレンのホモポリマー、あるいは、スチレンないしα−メチルスチレンと共重合可能なビニル性モノマーのコポリマーをスルホン化する方法が挙げられる。この場合も、芳香族骨格を有するモノマー単位含有量、芳香族骨格に対するスルホン酸基の導入率、重量平均分子量は、上記に準ずる。特に、スチレンないしα−メチルスチレンをカチオン重合して、次いで、これらのポリマーを無水硫酸、硫酸、発煙硫酸、無水硫酸とルイス塩基との錯体によりスルホン化したものが好適である。なお、スチレンないしα−メチルスチレンをカチオン重合させる方法としては、特開平3−52902号公報に記載の製造方法を好ましく適用することができる。
【0035】
このように構成される上記重量平均分子量、芳香族骨格を有するモノマー単位含有量及び芳香族骨格に対するスルホン酸基の導入率を上記特定範囲としたスルホン酸基含有芳香族系ポリマーからなる導電層は、カーボンナノチューブの透明導電性等の物性を損なうことなく、とりわけ透明導電性フィルムの優れた導電層となる。
【0036】
本発明において、上記芳香族ポリマーの導電層への添加量は、本発明で規定する透明、導電性を満たす限り制限はないが、カーボンナノチューブ1重量部に対し、0.1〜20重量部、好ましくは、0.3〜10重量部、より好ましくは0.5〜10重量部である。スルホン酸基含有芳香族ポリマーの添加量が0.1重量部以上であれば、十分な分散性が得られる。また、導電性の観点から20重量部以下が好ましい。
【0037】
上記ポリマーの重量平均分子量の測定方法は、限定されないが、例えば、一般的に標準物質として標準ポリスチレンスルホン酸ナトリウムを用い、分離カラムとして東ソー(株)製TSK−G3000SWとG4000SW(7.5mmID×30cm)を使用し、紫外線検出器(測定波長238nm)を用いてGPC法により求めることができる。
スルホン酸基の導入率の測定方法は、限定されないが、例えば元素分析計(カルロエルバ社製EA−1108型)により測定した炭素原子と硫黄原子の比から芳香環1ユニット当たりのスルホン酸基導入率を計算できる。また、該水溶性ポリマー中に硫酸塩を含む場合は、イオンクロマトグラフィーでその量を定量し、その硫黄原子量を元素分析計で得た硫黄原子量より差し引いて求めることができる。
【0038】
導電層中のカーボンナノチューブ量は、透明導電性フィルムを試料として測定する場合、透明導電性フィルムを透過型電子顕微鏡(1万倍)で観察し、その平面面積に占めるカーボンナノチューブの面積割合を測定し、これに透過型電子顕微鏡(10万倍)で観察した厚みとカーボンナノチューブの比重(グラファイトの文献値2.1〜2.3の平均値2.2を採用)を掛けることで計算できる。また、基材面積に対する塗布した液のカーボンナノチューブ濃度と液量が判明している場合にはこれらの値から見積もることができる。
【0039】
導電層中の芳香族ポリマー量は透明導電性フィルムを試料として測定する場合、芳香族ポリマーが発する蛍光を利用し、液体クロマトグラフィーを用いて測定することができる。また、ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて測定することもできる。また、基材面積に対する塗布した液の芳香族ポリマー濃度と液量が判明している場合にはこれらの値から見積もることができる。
【0040】
本発明の透明導電性フィルムは、樹脂層が導電層上に積層されているため、導電層中で相互作用している芳香族ポリマーとカーボンナノチューブが固定化され、膜強度は格段に向上する。樹脂層の測定方法は、積層されていることが確認できる方法であれば限定されないが、例えば透過型電子顕微鏡を用いてフィルムの断面写真をとることで確認できる。必要であればフィルムを染色してもよい。樹脂層は導電層との界面が明確でなくグラデーションがかかっている場合においても、導電層の基板側とは反対側にあるグラデーション部分をはさんで樹脂層が認められる場合には、樹脂層があることとする。樹脂層は少なくとも1層であり、2層以上であってもよい。
【0041】
上記樹脂層の樹脂材料としては、例えば塗料用のバインダーとして用いられるものであれば特に制限はなく、各種の有機および無機バインダー、すなわち透明な有機ポリマーまたはその前駆体(以下「有機ポリマー系バインダー」と称する場合もある)または無機ポリマーまたはその前駆体(以下「無機ポリマー系バインダー」と称する場合もある)が使用できる。有機ポリマー系バインダーは熱可塑性、熱硬化性、あるいは紫外線、電子線などの放射線硬化性のいずれであってもよい。適当な有機バインダーの例としては、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリアミド系(ナイロン6、ナイロン11、ナイロン66、ナイロン6、10等)、ポリエステル系(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、シリコン系ポリマー、ビニル系樹脂(ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアルキルアクリレート、ポリアルキルメタクリレート、ポリスチレン誘導体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール等)、ポリケトン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリアセタール、フッ素樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラニン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、セルロース系ポリマー、蛋白質類(ゼラチン、カゼイン等)、キチン、ポリペプチド、多糖類、ポリヌクレオチドなど有機ポリマー、ならびこれらのポリマーの前駆体(モノマー、オリゴマー)がある。これらは単に溶剤の蒸発により、あるいは熱硬化または光もしくは放射線照射による硬化により有機ポリマー系透明被膜(もしくはマトリックス(液中に配合する場合))を形成することができる。
【0042】
有機ポリマー系バインダーとして好ましいのは、熱、放射線もしくは光によりラジカル重合硬化可能な不飽和結合を有する化合物であり、これはビニル基ないしビニリデン基を有するモノマー、オリゴマー、あるいはポリマーである。この種のモノマーとしてはスチレン誘導体(スチレン、メチルスチレン等)、アクリル酸もしくはメタクリル酸またはそれらの誘導体(アルキルアクリートもしくはメタクリレート、アリルアクリレートもしくはメタクリレート等)、酢酸ビニル、アクリロニトリル、イタコン酸等がある。オリゴマーあるいはポリマーは、主鎖に二重結合を有する化合物または直鎖の両末端にアクリロイルもしくはメタクリロイル基を有する化合物が好ましい。この種のラジカル重合硬化性バインダーは、高硬度で耐擦過性に優れ、透明度の高い導電フィルム膜(もしくはマトリックス(液中に配合する場合))を形成することができる。なかでもポリアクリレート、ポリメタクリレート、それらの誘導体がカーボンナノチューブと親和性が高く導電層の密着性が高く好ましい。
【0043】
無機ポリマー系バインダーの例としては、シリカ、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等の金属酸化物のゾル、あるいは無機ポリマーの前駆体となる加水分解または熱分解性の有機リン化合物および有機ボロン化合物、ならびに有機シラン化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機鉛化合物、有機アルカリ土類金属化合物などの有機金属化合物がある。加水分解性または熱分解性の有機金属化合物の具体的例は、アルコキシドまたはその部分加水分解物、酢酸塩などの低級カルボン酸塩、アセチルアセトンなどの金属錯体である。
【0044】
これらの1種もしくは2種以上の無機ポリマー系バインダーを焼成すると、酸化物または複合酸化物からなるガラス質の無機ポリマー系透明被膜(もしくはマトリックス(液中に配合する場合))を形成することができる。無機ポリマー系マトリックスは、一般にガラス質であり、高硬度で摺動耐久性に優れ、透明性も高い。
【0045】
上記樹脂材料は多くの場合、溶媒に溶解または懸濁した液を塗布することにより樹脂層を形成するが、その際に用いる溶媒としては、一般に前記カーボンナノチューブを分散させる溶媒の説明で例示したような溶媒を使用するが、光または放射線硬化性の有機ポリマー系バインダーの場合には、常温で液状のバインダーを選択することにより、溶剤を存在させずに100%反応系のバインダー、あるいはこれを非反応性液状樹脂成分で希釈した無溶剤とすることができる。それにより、被膜の硬化乾燥時に溶媒の蒸発が起こらず、硬化時間が大幅に短縮され、かつ溶媒回収操作が不要となる。
【0046】
本発明において基材に表面樹脂層を設ける場合、表面樹脂層と導電層上に形成する樹脂層が同種または相溶性のあるものを用いるとフィルムの膜密着性および透過率が向上でき好ましい。
【0047】
本発明の透明導電性フィルムに形成される導電層ならびに樹脂層には、上記のカーボンナノチューブと芳香族ポリマー、樹脂以外に、導電性高分子もしくは非導電性高分子等の分散剤、溶媒、バインダーの他にカップリング剤、架橋剤、安定化剤、沈降防止剤、着色剤、電荷調整剤、滑剤等の添加剤を配合することができ、それらの種類、量について特に制限はない。
【0048】
本発明の透明導電性フィルムに形成される導電層ならびに樹脂層は上記のカーボンナノチューブと芳香族ポリマー、樹脂以外に、別の導電性材料、無機材料、あるいはこれらの材料の組合せをさらに含むことができる。導電性有機材料としては、バッキーボール、カーボンブラック、フラーレン、多種カーボンナノチューブ、ならびにそれらを含む粒子を好ましく挙げることができる。
【0049】
無機材料としては、アルミニウム、アンチモン、ベリリウム、カドミウム、クロム、コバルト、銅、ドープ金属酸化物、鉄、金、鉛、マンガン、マグネシウム、水銀、金属酸化物、ニッケル、白金、銀、鋼、チタン、亜鉛、ならびにそれらを含む粒子があげられる。好ましくは、酸化インジウムスズ、酸化アンチモンスズ、およびそれらの混合物があげられる。これらの導電性材料を含有させて得たフィルム、あるいはオーバーコーティングして得たフィルムは電荷の分散、または移動に非常に有利である。また、これらカーボンナノチューブ以外の導電性材料を含む層とカーボンナノチューブを含む層を積層させてもよい。
【0050】
樹脂層の厚みはカーボンナノチューブ層の厚みならびに塗布する樹脂により決定する必要があり、必要な膜強度が得られる厚みにすることができる。また、樹脂が低屈折率のものである場合には、カーボンナノチューブ上に積層する厚みを調整することで反射が防止でき、その結果、光線透過率・表面ヘイズを向上させることができ好ましい。
【0051】
本発明の透明導電性フィルムは、基材に導電層と反対面にハードコート層が設けられているものが好ましい。
【0052】
本発明において、ハードコート層を構成する材料は特に限定されるものではなく、可視光線を透過するものであればよいが、光線透過率が高いものが好ましい。用いられる材料としては、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、活性線硬化型樹脂などである。特に、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、活性線硬化型樹脂は、耐擦傷性、生産性などの点で好適に用いることができる。
【0053】
本発明にかかるハードコート層の構成成分として特に好ましく用いられる活性線硬化型樹脂は、該活性線硬化型樹脂を構成するモノマー成分としては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ビス(メタクロイルチオフェニル)スルフィド、2,4−ジブロモフェニル(メタ)アクリレート、2,3,5−トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3−フェニルフェニル)プロパン、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)スルホン、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)スルホン、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3−フェニルフェニル)スルホン、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルホン、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)スルフィド、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)スルフィド、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)スルフィド、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3−フェニルフェニル)スルフィド、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルフィド、ジ((メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フォスフェート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フォスフェートなどの多官能(メタ)アクリル系化合物を用いることができ、これらは1種もしくは2種以上を用いられる。上記の中ではジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタアクリレートが好ましく用いられる。
【0054】
また、これら多官能(メタ)アクリル系化合物とともに、活性線硬化型樹脂の硬度、透明性、強度、屈折率などをコントロールするため、スチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、N−ビニルピロリドン、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジメタリルフタレート、ジアリルビフェニレート、あるいはバリウム、鉛、アンチモン、チタン、錫、亜鉛などの金属と(メタ)アクリル酸との反応物などを用いることができる。これらは1種もしくは2種以上を用いてもよい。
【0055】
なお、本発明において、「(メタ)アクリル系化合物」という記載は、「メタアクリル系化合物およびアクリル系化合物」を略して表示したものであり、他の化合物についても同様である。
【0056】
本発明において活性線硬化型樹脂を硬化させる方法として、例えば、紫外線を照射する方法を用いることができるが、この場合には、前記化合物100重量部に対し、0.01〜10重量部程度の光重合開始剤を加えることが望ましい。
【0057】
本発明に用いられ得る活性線硬化型樹脂には、塗工時の作業性の向上、塗工膜厚のコントロールを目的として、本発明の所期の効果が損なわれない範囲において、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、メチルエチルケトンなどの有機溶剤を配合することができる。
本発明において活性線とは、紫外線、電子線、放射線(α線、β線、γ線など)などアク
リル系のビニル基を重合させる電磁波を意味し、実用的には、紫外線が簡便であり好まし
い。紫外線源としては、紫外線蛍光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノ
ン灯、炭素アーク灯などを用いることができる。また、電子線方式は、装置が高価で不活
性気体下での操作が必要ではあるが、光重合開始剤や光増感剤などを含有させなくてもよ
い点から有利である。
【0058】
本発明においては、ハードコート層の厚みは、ハードコート層を設けたフィルムが使われる用途によって任意に選ぶことができ、特に限定されるものではないが、通常は1〜10μm、好ましくは2〜5μmである。ハードコート層の厚みがかかる好ましい範囲であるとハードコート性が十分に発現し、一方、ハードコート層の硬化時の収縮によりフィルムがカールすることもない。
【0059】
本発明においては、ハードコート層の表面に、ちらつきを抑えるための反射防止層を設けたり、また、汚れ防止のための防汚処理を施すことが好ましい。反射防止層は特に限定されるものではないが、低屈折率化合物の積層やフッ化マグネシウムや酸化ケイ素などの無機化合物のスパッタリングや蒸着などにより形成することができる。防汚処理については、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂などによる防汚処理を施すことができる。
本発明の透明導電性フィルムは以下のように製造される。
【0060】
本発明で用いるカーボンナノチューブは、本発明で規定した条件を満たすカーボンナノチューブが得られる限り限定はないが、直線性があり結晶化度が高いカーボンナノチューブであることが芳香族ポリマーと強く相互作用でき好ましい。直線性のよいカーボンナノチューブとは、欠陥が少なくカーボンナノチューブ結晶化度が高いカーボンナノチューブとなる。カーボンナノチューブの結晶化度は、ラマン分光分析法により評価が可能である。ラマン分光分析法で使用するレーザー波長は種々あるが、ここでは532nm、633nmを利用する。ラマンスペクトルにおいて1590cm-1付近に見られるラマンシフトは、グラファイト由来のGバンドと呼ばれ、1350cm-1付近に見られるラマンシフトはアモルファスカーボンやグラファイトの欠陥に由来のDバンドと呼ばれる。このG/D比が高いカーボンナノチューブほど、直線性、かつ結晶化度が高く、高品質である。ラマンG/D比を評価するときは波長532nmを用いる。G/D比は高いほど良いが、30以上であれば高品質カーボンナノチューブと言うことができる。好ましくは40以上、さらに好ましくは50以上である。上限は特にないが、通常200以下である。またカーボンナノチューブのような固体のラマン分光分析法はサンプリングによってばらつくことがある。そこで少なくとも3カ所、別の場所をラマン分光分析し、その相加平均をとるものとする。
本発明のカーボンナノチューブは、例えば以下のように製造される。
【0061】
マグネシアに鉄を担持した粉末状の触媒を、縦型反応器中、反応器の水平断面方向全面に存在させ、該反応器内にメタンを鉛直方向に流通させ、メタンと前記触媒を500〜1200℃で接触させ、カーボンナノチューブを製造した後、カーボンナノチューブを酸化処理することにより得られる。すなわち上記カーボンナノチューブの合成法により、単層〜5層のカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブを得ることができる。カーボンナノチューブは、製造した後、酸化処理を施すことにより単層〜5層の割合を、特に2層〜5層の割合を増加させることができる。酸化処理は例えば、焼成処理する方法により行われる。焼成処理の温度は本発明のカーボンナノチューブが得られる限り、特に限定されないが、通常、300〜1000℃の範囲で選択される。酸化温度は雰囲気ガスに影響されるため、酸素濃度が高い場合には比較的低温で、酸素濃度が低い場合には比較的高温で焼成処理することが好ましい。カーボンナノチューブの焼成処理としては、例えば大気下、カーボンナノチューブの燃焼ピーク温度±50℃の範囲内で焼成処理をする方法が挙げられるが、酸素濃度が大気よりも高い場合はこれよりも低目の温度範囲、低い場合には高めの温度範囲が選択されるのが通常である。
【0062】
特に大気下で焼成処理を行う場合は燃焼ピーク温度±15℃の範囲で行うことが好ましい。
【0063】
カーボンナノチューブの燃焼ピーク温度は熱分析することで測定が可能である。大気下、熱分析するとは、約10mgの試料を示差熱分析装置(例えば島津製作所製 DTG−60)に設置し、空気中、10℃/分の昇温速度にて室温〜900℃まで昇温する。その時、試料の燃焼時の発熱ピーク温度を求めることが可能である。求めた燃焼ピーク温度±50℃の範囲で焼成処理することにより、製造したカーボンナノチューブ中の不純物や耐久性の低い単層カーボンナノチューブを除去することが可能である。これにより純度の高い単層〜5層を特に2層〜5層のカーボンナノチューブの純度を向上することが可能である。このとき燃焼ピークよりあまりにも低い温度、−50℃未満で焼成処理を行っても、不純物や純度の低い単層カーボンナノチューブは焼成されないために、除去されず単層〜5層カーボンナノチューブの純度は向上しない。また燃焼ピーク温度よりあまりにも高い温度、50℃超で焼成処理を行っても、今度は生成カーボンナノチューブ全てが焼成されて消失してしまう。よってカーボンナノチューブの燃焼ピーク温度付近で焼成するのが好ましい。このとき燃焼ピーク温度±50℃の範囲で焼成処理することが好ましい。更に好ましくは燃焼ピーク温度±15℃の範囲である。
【0064】
また、酸素または酸素を含む混合気体を間欠的に接触させて焼成処理を行なう方法によっても行なうことができる。
【0065】
酸素または酸素を含む混合気体を間欠的に接触させて焼成処理する場合は、酸素濃度が高くても、比較的高温、例えば500〜1000℃で処理が可能である。これは間欠的に酸素または酸素を含む混合気体を流すために、酸化が起きても、酸素を消費した時点ですぐに反応が停止するからである。このようにすることで酸化反応を制御することが可能となる。
【0066】
焼成温度が低いときは焼成処理時間を長く、焼成温度が高いときは焼成時間を短くするなどして、反応条件を調整することができる。よって焼成処理時間は本発明のカーボンナノチューブが得られる限り特に限定されない。通常は5分〜24時間、好ましくは10分〜12時間、さらに好ましくは30分〜5時間である。焼成は大気下で行うことが好ましいが、酸素濃度を調節した酸素/不活性ガス下で行っても良い。このときの酸素濃度は特に限定されない。酸素0.1%〜100%の範囲で適宜設定して良い。また不活性ガスはヘリウム、窒素、アルゴン等が用いられる。
【0067】
カーボンナノチューブの酸化処理として過酸化水素や混酸で処理することが挙げられる。
【0068】
カーボンナノチューブを過酸化水素で処理するとは、前記カーボンナノチューブを例えば市販の34.5%過酸化水素水中に0.01重量%〜10重量%になるように混合し、0〜100℃の温度にて0.5〜48時間反応させることを意味する。
【0069】
またカーボンナノチューブを混酸で処理するとは、前記カーボンナノチューブを例えば濃硫酸/濃硝酸(3/1)混合溶液中に0.01重量%〜10重量%になるように混合し、0〜100℃の温度にて0.5〜48時間反応させることを意味する。混酸の混合比としては生成したカーボンナノチューブ中の単層カーボンナノチューブの量に応じて濃硫酸/濃硝酸の比を1/10〜10/1とすることも可能である。
【0070】
また上記混酸処理した後、有機アミンで処理しても良い。有機アミンで処理することで残存混酸を減少させることができ、さらにアモルファスカーボンなどの不純物に生成したと考えられるカルボキシル基などの酸性基を塩化すると考えられ、よりカーボンナノチューブとの分離が良くなると考えられる。つまり混酸処理された不純物の水溶性が増し、ろ過することでカーボンナノチューブと不純物が容易に分離することが可能となる。有機アミンの中でもメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン等の低級アミンが好ましく、さらに好ましくはエチルアミン、プロピルアミンである。
【0071】
このような酸化処理を行うことで、生成物中のアモルファスカーボンなどの不純物および耐熱性の低い単層CNTを選択的に除去することが可能となり、単層〜5層、特に2層〜5層カーボンナノチューブの純度を向上することができる。
【0072】
これら酸化処理はカーボンナノチューブ合成直後に行っても良いし、別の精製処理後に行っても良い。例えば触媒として鉄/マグネシアを用いる場合、焼成処理後、塩酸等の酸により、さらに触媒除去のための精製処理を行っても良いし、先に塩酸等の酸により触媒除去のための精製処理を行った後に酸化処理してもよい。
【0073】
次に、上述のようにして得られたカーボンナノチューブと芳香族ポリマーを用いて分散体とする。分散体の調製方法には特に制限はない。
【0074】
例えば上記のようにして得たカーボンナノチューブと芳香族ポリマー、溶媒を塗装製造に慣用の混合分散機(例えばボールミル、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超音波装置、アトライター、デゾルバー、ペイントシェーカー等)を用いて混合し、分散体を製造することができる。中でも、超音波を用いて分散することでカーボンナノチューブの分散性が向上し好ましい。
【0075】
本発明において、上記分散体は、塗布前に遠心分離、フィルター濾過によってサイズ分画することが好ましい。例えば、液を遠心分離することによって、未分散のカーボンナノチューブや、過剰量の分散剤、カーボンナノチューブ合成時に混入する可能性のある金属触媒などは沈殿するので、遠心上清を回収すれば分散液中に分散しているカーボンナノチューブを分散液の形で採取することができる。未分散のカーボンナノチューブおよび、不純物などは沈殿物として除去することができ、それによって、カーボンナノチューブの再凝集を防止でき、液の安定性を向上することができる。さらに、強力な遠心力においては、カーボンナノチューブの太さや長さによって分離することができ、フィルムの光線透過率を向上させることができる。
【0076】
遠心分離する際の遠心力は、100G以上の遠心力であればよく、好ましくは、1000G以上、より好ましくは10,000G以上である。上限としては特に制限はないが、汎用超遠心機の性能より200,000G以下であることが好ましい。
【0077】
また、フィルター濾過に用いるフィルターは、0.05μm〜0.2μmの間で適宜選択することができる。それにより、未分散のカーボンナノチューブや、カーボンナノチューブ合成時に混入する可能性のある不純物等のうち比較的サイズの大きいものを除去することができる。
【0078】
このようにサイズ分画する場合においては、この分画される量を見越して、サイズ分画前の配合割合を決定する。サイズ分画前の配合割合の決定は、遠心分離後の沈殿物やフィルター上に残った分画物を乾燥させた後、400℃で1時間焼成した後秤量し、濃度を算出する方法により行われる。このようなサイズ分画の結果、カーボンナノチューブの長さや、層数、その他性状等バンドル構造の有無などでカーボンナノチューブを分離することができる。
【0079】
この分散体には上記芳香族ポリマーの他、界面活性剤、各種高分子材料等の添加剤を含有させることができる。
【0080】
上記界面活性剤やある種の高分子材料は、カーボンナノチューブの分散能や分散安定化能等を向上させるのに役立つ。界面活性剤としては、イオン性界面活性剤のものと非イオン性界面活性剤のものに分けられるが、本発明ではいずれの界面活性剤を用いることも可能である。イオン性界面活性剤としては、例えば以下のような界面活性剤があげられる。かかる界面活性剤は単独でもしくは2種以上を混合して用いることができる。
【0081】
イオン性界面活性剤は、陽イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤および陰イオン性界面活性剤にわけられる。陽イオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩などがあげられる。両イオン性界面活性剤としては、アルキルベタイン系界面活性剤、アミンオキサイド系界面活性剤がある。陰イオン性界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ドデシルフェニルエーテルスルホン酸塩等の芳香族スルホン酸系界面活性剤、モノソープ系アニオン性界面活性剤、エーテルサルフェート系界面活性剤、フォスフェート系界面活性剤、カルボン酸系界面活性剤であり、中でも、分散能、分散安定能、高濃度化に優れることから、芳香環を含むもの、すなわち芳香族系イオン性界面活性剤が好ましい。
【0082】
非イオン性界面活性剤としては、例えば以下のような界面活性剤をあげられる。かかる界面活性剤は単独でもしくは2種以上を混合して用いることができる。
【0083】
非イオン性界面活性剤の例としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの糖エステル系界面活性剤、ポリオキシエチレン樹脂酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエチルなどの脂肪酸エステル系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリプロピレングリコールなどのエーテル系界面活性剤、ポリオキシアルキレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルジブチルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルベンジルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルビスフェニルエーテル、ポリオキシアルキルクミルフェニルエーテル等の芳香族系非イオン性界面活性剤があげられる。中でも、分散能、分散安定能、高濃度化に優れることから、芳香族系非イオン性界面活性剤が好ましい。
【0084】
界面活性剤以外にも導電性もしくは非導電性高分子など各種高分子材料もカーボンナノチューブの他に添加ができる剤として用いることができる。
カーボンナノチューブ分散体の分散媒は特に限定されない。水系溶媒でも良いし非水系溶媒でも良い。非水系溶媒としては、炭化水素類(トルエン、キシレン等)、塩素含有炭化水素類(メチレンクロリド、クロロホルム、クロロベンゼン等)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ等)、エーテルアルコール(エトキシエタノール、メトキシエトキシエタノール等)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル等)、ケトン類(シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等)、アルコール類(エタノール、イソプロパノール、フェノール等)、低級カルボン酸(酢酸等)、アミン類(トリエチルアミン、トリメタノールアミン等)、窒素含有極性溶媒(N、N−ジメチルホルムアミド、ニトロメタン、N−メチルピロリドン等)、硫黄化合物類(ジメチルスルホキシド等)などを用いることができる。
【0085】
これらのなかでも分散媒としては、水、アルコール、トルエン、アセトン、エーテルおよびそれらを組み合わせた溶媒を含有する分散媒であることが好ましい。 上記分散液における各成分の配合割合は、以下のとおりである。
【0086】
すなわち、カーボンナノチューブと芳香族ポリマーを含有する分散体のカーボンナノチューブの濃度は0.01重量%以上、20重量%以下であることが好ましく、0.1〜10重量%であることが好ましい。
【0087】
芳香族ポリマーの分散体中の含有量としては、特に限定されるものではないが、好ましくは、0.01〜10重量%、より好ましくは、0.02〜5重量%である。芳香族ポリマー以外に添加剤を含有する場合は、芳香族ポリマーと添加剤の合計重量が0.01〜10重量%、より好ましくは、0.02〜5重量%となるようにする。また本発明のカーボンナノチューブの分散液は、分散性に優れるため、所望のカーボンナノチューブ含量よりも高濃度の分散液を作製し、溶媒で薄めて所望の濃度として使用することも可能である。本発明の分散体は、上記カーボンナノチューブ、芳香族ポリマー以外に、分散媒以外の物質、例えば後述する濡れ剤等をその他の添加剤として含んでいてもかまわない。
【0088】
このようなカーボンナノチューブの分散液を調製後、基材上に塗布することで導電層を形成することができる。
【0089】
カーボンナノチューブの分散液を塗布する方法は特に限定されない。公知の塗布方法、例えば吹き付け塗装、浸漬コーティング、スピンコーティング、ナイフコーティング、キスコーティング、グラビアコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、パット印刷、他の種類の印刷、またはロールコーティングなどが利用できる。また塗布は、何回行ってもよく、異なる2種類の塗布方法を組み合わせても良い。最も好ましい塗布方法は、ロールコーティングである。
【0090】
塗布厚み(ウエット厚)は塗布液の濃度にも依存するため、望む光線透過率、表面抵抗値が得られれば特に規定する必要はない。しかしその中でも0.1μm〜50μmであることが好ましい。さらに好ましくは1μm〜20μmである。
【0091】
カーボンナノチューブの水系分散液を基材上に塗布する時、分散液中に濡れ剤を添加しても良い。非親水性の基材へは特に界面活性剤やアルコール等の濡れ剤を分散液中に添加することで、基材に分散液がはじかれることなく塗布することができる。中でもアルコールが好ましく、アルコールの中でもメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールが好ましい。メタノール、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコールは揮発性が高いために塗布後の基材乾燥時に容易に除去可能である。場合によってはアルコールと水の混合液を用いても良い。
【0092】
このようにしてカーボンナノチューブの分散体を基材に塗布した後、風乾、加熱、減圧などの方法により不要な分散媒を除去することができる。それによりカーボンナノチューブは、3次元編目構造を形成し基材に固定化される。その後、液中の成分を適当な溶媒を用いて除去することもできる。この操作により、電荷の分散が容易になり透明導電性フィルムの導電性が向上する。
【0093】
上記液中の成分を除去するための溶媒としては除去したい透明導電性を低下させる成分、例えば添加剤、余剰量の芳香族ポリマーを溶解し、かつ除去不要なカーボンナノチューブ、カーボンナノチューブを固定する芳香族ポリマーを除去しないものであれば特に制限はなく、水性溶媒でも非水性溶媒でもよい。具体的には水性溶媒であれば、水やアルコール類、アセトニトリルが挙げられ、非水性溶媒であれば、クロロホルム、トルエンなどがあげられる。
【0094】
本発明においては上記のように分散体を塗布してカーボンナノチューブを含む導電層を形成後、このフィルムを有機または無機透明被膜を形成しうる樹脂を塗布する。その後、必要により加熱して塗膜の乾燥ないし焼付(硬化)を行い、樹脂層を形成する。その際の加熱条件は、樹脂種に応じて適当に設定する。樹脂が光または放射線硬化性の場合には、加熱硬化ではなく、塗布後直ちに塗膜に光または放射線を照射することにより塗膜を硬化させる。放射線としては電子線、紫外線、X線、ガンマー線等のイオン化性放射線が使用でき、照射線量はバインダー種に応じて決定する。樹脂を塗布することにより、導電層の膜密着性が大幅に向上し、描画耐久性や払拭耐久性等の摺動耐久性や、耐屈曲性の耐久性が向上する。また、導電層上に樹脂層を形成することにより、透過率の向上、ヘイズの減少、さらなる電荷の分散や、移動に効果的である。
【0095】
かくして得られる本発明の透明導電性フィルムは、優れた透明性および低ヘイズを示す。本発明のフィルムは、透明導電性フィルムの550nmの光線透過率/基材の550nmの光線透過率が少なくとも約50%である。可視光のヘイズ値は約2.0%以下であることが好ましい。好ましい実施形態では、透明導電性フィルムの550nmの光線透過率/基材の550nmの光線透過率は約60%以上である。別の好ましい実施形態では、透明導電性フィルムの550nmの光線透過率/基材の光線透過率は70%以上である。また、別の好ましい実施形態では、透明導電性フィルムの550nmの光線透過率/基材の550nmの光線透過率は80%以上である。さらに、別の好ましい実施形態では、透明導電性フィルムの550nmの光線透過率/基材の550nmの光線透過率は90%以上である。別の好ましい実施形態では、フィルムのヘイズ値は1.0%未満である。また、別の好ましい実施形態では、フィルムのヘイズ値は0.5%未満である。
【0096】
本発明において光線透過率は、フィルムを分光光度計(日立製作所 U−2100)に装填し、波長550nmでの光線透過率を測定して得られる値である。
【0097】
表面抵抗値はJISK7149準処の4端子4探針法を用い、ロレスタEP MCP−T360((株)ダイアインスツルメンツ社製)を用いて得られる値である。
【0098】
ヘイズは、スガ試験機(株)製、全自動直読ヘイズコンピューターメーター HGM−2DP型を用いて測定する。
【0099】
ラマン分光分析は、共鳴ラマン分光計(ホリバ ジョバンイボン製 INF-300)に粉末試料を設置し、532nmのレーザー波長を用いて測定を行う。測定に際しては3ヶ所、別の場所にて分析を行い、G/D比はその相加平均を表す。
【0100】
耐屈曲試験後の表面抵抗値変化率(負荷後表面抵抗値/初期表面抵抗値)は、フィルム(5×8cm)を15mmロッドの金属棒に導電層および樹脂層側が表面になるように300回巻き付けた前後の表面抵抗値を上述のとおり測定し変化率を測定する。本発明においてはこの測定は3回繰り返し、その結果を平均したものを変化率とする。
【0101】
本発明の透明導電性フィルムは導電層上に樹脂層を塗布して製造することにより、上記耐屈曲試験後の表面抵抗値変化率(負荷後表面抵抗値/初期表面抵抗値)を1.2以下にすることが可能であり、さらに基材に表面樹脂層を有する場合には1.1以下とすることも可能である。下限としては特に制限はなく、変化しないことが最も好ましいので、1以上である。
【0102】
摺動耐久性試験後の表面抵抗値の変化率(負荷後表面抵抗値/初期表面抵抗値)は、フィルムを200g荷重のおもり(摩擦布ハイゼガーゼ)を用いて100回払拭した前後の表面抵抗値を上述方法によって測定する。
【0103】
本発明の透明導電性フィルムは導電層上に樹脂層を塗布して製造することにより、上記
摺動耐久性試験後の表面抵抗値の変化率(負荷後表面抵抗値/初期表面抵抗値)を1.5以下にすることが可能であり、さらに基材に表面樹脂層を有する場合には1.2以下とすることも可能である。下限としては特に制限はなく、変化しないことが最も好ましいので、1以上である。本発明においてはこの測定は3回繰り返し、その結果を平均したものを変化率とする。
【0104】
本発明におけるカーボンナノチューブ塗布量は、透明導電性を必要とする種々の用途を達成するために、容易に調整可能であり、例えば膜厚を厚くすることにより表面抵抗は低くなり、膜厚を薄くすることにより高くなる傾向にあり、塗布量が1mg/m〜40mg/mであれば透明導電性フィルムの550nmの光線透過率/基材の550nmの光線透過率を50%以上とすることができる。塗布量を40mg/m以下とすれば50%以上とすることができる。さらに、塗布量を30mg/m以下とすれば60%以上とすることができる。さらに、塗布量を20mg/m以下であれば70%以上、塗布量を10mg/m以下であれば80%以上とすることでき好ましい。基材の550nmの光線透過率とは、基材に表面樹脂層がある場合は、表面樹脂層も含めた光線透過率をいう。
【0105】
また、塗布量によりフィルムの表面抵抗値も容易に調整可能であり、塗布量が1mg/m〜40mg/mであればフィルムの表面抵抗値は10〜10Ω/□とすることができ、好ましい。さらに、芳香族ポリマーや各種添加剤の含有量にもよるが、塗布量を40mg/m以下とすればフィルムの表面抵抗値を10Ω/□以下とすることができる。塗布量を30mg/m以下とすればフィルムの表面抵抗値を10Ω/□以下とすることができる。さらに、塗布量が20mg/m以下であれば、10Ω/□以下、塗布量を10mg/m以下であれば10Ω/□以下とすることできる。
【0106】
ただし、光線透過率と表面抵抗値は光線透過率をあげるために、塗布量を減らすと表面抵抗値が上昇し、表面抵抗値を下げるために塗布量を増やすと光線透過率が減少するといった相反する値であるため、所望の表面抵抗値および、光線透過率を選択し塗布量を調整する。また芳香族ポリマーの量を加減することによっても表面抵抗値を調整し得る。芳香族ポリマーの量を少なくすることで表面抵抗値を低下させる。本発明においては、芳香族ポリマーをカーボンナノチューブの分散剤として用いることによりカーボンナノチューブの導電性を阻害することなく、上記の優れた透明導電性を達成しかつ耐屈曲性や、耐密着性などの耐久性の高い透明導電性フィルムが得られる。
【0107】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0108】
実施例中、光線透過率、表面抵抗値、カーボンナノチューブのG/D比、カーボンナノチューブの層数測定、耐屈曲性試験、摺動耐久性試験は前記の方法で実施した。
【0109】
(参考例1)
以下のようにカーボンナノチューブを得た。
【0110】
(軽質マグネシアへの金属塩の担持)
クエン酸アンモニウム鉄(和光純薬工業社製)5gをメタノール(関東化学社製)250mLに溶解した。この溶液に、軽質マグネシア(和光純薬工業社製、かさ密度は0.16g/mLであった)を50g加え、超音波洗浄機で60分間処理し、40℃〜60℃で攪拌しながら乾燥してメタノールを除去し、軽質マグネシア粉末に金属塩が担持された固体触媒を得た。
【0111】
(カーボンナノチューブの合成)
図1に示した縦型反応器でカーボンナノチューブを合成した。
【0112】
反応器100は内径32mm、長さは1200mmの円筒形石英管である。中央部に石英焼結板101を具備し、石英管下方部には、不活性ガスおよび原料ガス供給ライン104、上部には廃ガスライン105および、密閉型触媒供給器102および触媒投入ライン103を具備する。さらに、反応器を任意温度に保持できるように、反応器の円周を取り囲む加熱器106を具備する。加熱器106には装置内の流動状態が確認できるよう点検口107が設けられている。
【0113】
触媒12gを取り、触媒投入ライン103を通して、石英焼結板101上に触媒をセットした。次いで、ガス供給ライン104から窒素ガスを1000mL/分で供給開始した。反応器内を窒素ガス雰囲気下とした後、温度を900℃に加熱した(昇温時間30分)。
【0114】
900℃に到達した後、温度を保持し、ガス供給ライン104の窒素流量を2000mL/分に上げ、石英焼結板上の固体触媒の流動化を開始させた。加熱炉点検口107から流動化を確認した後、さらにメタンを95mL/分(メタン濃度4.5vol%)で反応器に供給開始した。該混合ガスを30分供給した後、窒素ガスのみの流通に切り替え、合成を終了させた。
【0115】
加熱を停止させ室温まで放置し、室温になってから反応器から触媒とカーボンナノチューブを含有する組成物を取り出した。
【0116】
(カーボンナノチューブ含有組成物の熱分析)
約10mgのカーボンナノチューブ組成物を示差熱分析装置(島津製作所製 DTG-60)に設置し、空気中、10℃/分の昇温速度にて室温〜900℃まで昇温した。そのときの燃焼ピーク温度は511℃であった。
【0117】
(カーボンナノチューブ含有組成物の焼成、精製処理)
カーボンナノチューブ30gを磁性皿(150φ)に取り、マッフル炉(ヤマト科学社製、FP41)にて大気下、500℃まで1時間で昇温し、60分保持した後、自然放冷した。さらに、上記のカーボンナノチューブから触媒を除去するため、次のように精製処理を行った。6Nの塩酸水溶液に添加し、80℃のウォーターバス内で2時間攪拌した。孔径1μmのフィルターを用いてろ過して得られた回収物を、さらに6Nの塩酸水溶液に添加し、80℃のウォーターバス内で1時間攪拌した。これを孔径1μmのフィルターを用いてろ過し、数回水洗した後、ろ過物を120℃のオーブンで一晩乾燥することでマグネシアおよび金属を除去でき、カーボンナノチューブを精製することができた。
【0118】
(カーボンナノチューブ含有組成物の高分解能透過型電子顕微鏡分析)
上記のようにして得たカーボンナノチューブ含有組成物を高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、層数が2層のカーボンナノチューブが観察された。またカーボンナノチューブ100本中の単層〜5層の本数は、98本であり、2層〜5層の本数は95本であり、2層カーボンナノチューブは91本であった。
【0119】
(カーボンナノチューブ含有組成物の共鳴ラマン分光分析)
上記のようにして得たカーボンナノチューブを含有する組成物を、ラマン分光測定した。その結果、G/D比は75(532nm)と、結晶化度の高い高品質なカーボンナノチューブであることがわかった。
【0120】
(カーボンナノチューブと芳香族ポリマーを含む分散液調製)
50mLの容器に上記カーボンナノチューブ10mg、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム水溶液(アルドリッチ社製、30重量%、重量平均分子量20万、GPCで測定、ポリスチレン換算)100mgを量りとり、蒸留水9.89mLを加えて、超音波ホモジナイザー出力20W、20分間で氷冷下分散処理しカーボンナノチューブ液を調製した。調製した液には凝集体は目視では確認できず、カーボンナノチューブはよく分散していた。得られた液を高速遠心分離機にて10000G、15分遠心し、上清9mLを得た。この時の残存液1mLを孔径1μmのフィルターを用いてろ過、その後よく洗浄して得られたろ過物を120℃乾燥機にて乾燥した。重量を測ったところ、2.8mgであった。よって7.2mg(0.72mg/mL)のカーボンナノチューブが上清中に分散していることがわかった。
【0121】
(実施例1)
(カーボンナノチューブと芳香族ポリマーを含む透明導電性フィルム)
参考例1で得たカーボンナノチューブ分散液300μLにメタノール/水(重量比1/1)をぬれ剤として300μL添加後、アクリル樹脂表面樹脂層(Dry厚み80nm)を持つポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)社製188μm)光線透過率91.2%、15cm×10cm)上にバーコーター(No.8、塗布厚み12μm、カーボンナノチューブ塗布量計算値4.3mg/m)を用いて塗布し、風乾した後、120℃乾燥機内で2分間乾燥させカーボンナノチューブを固定化した。得られた塗布フィルムの表面抵抗値は1.6kΩ/□、光線透過率は76.2%(透明導電性フィルムの550nmの光線透過率/基材の550nmの光線透過率=84%)、ヘイズは0.6であり、高い導電性および、透明性を示した。
(樹脂層を塗布した透明導電性フィルム)
上記で得た透明導電性フィルムにポリメタクリル酸メチル樹脂バインダー(綜研化学(株)社製フォレットGS−1000)を1.5wt%にメチルイソブチルケトンで希釈し、バーコーター(No.8、塗布厚み12μm)を用いて塗布し、120℃で5分乾燥させた。得られた塗布フィルムの表面抵抗値は1.8kΩ/□、光線透過率は80.5%(透明導電性フィルムの550nmの光線透過率/基材の550nmの光線透過率=88%)、ヘイズは0.4であり、塗布前よりも透過率が向上した。
【0122】
得られたフィルムの摺動耐久性試験を行い、前述の方法で表面抵抗値を測定した。表面抵抗値の変化率は1.31であった。
【0123】
(実施例2)
(カーボンナノチューブと芳香族ポリマーを含む分散液調製)
50mLの容器に上記カーボンナノチューブ10mg、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム水溶液(アルドリッチ社製、30重量%、重量平均分子量20万、GPCで測定、ポリスチレン換算)33mgを量りとり、蒸留水9.96mLを加えて、超音波ホモジナイザー出力20W、20分間で氷冷下分散処理しカーボンナノチューブ分散液を調製した。調製した液には凝集体は目視では確認できず、カーボンナノチューブはよく分散していた。得られた液を高速遠心分離機にて10000G、15分遠心し、上清9mLを得た。この時の残存液1mLを孔径1μmのフィルターを用いてろ過、その後よく洗浄して得られたろ過物を120℃乾燥機にて乾燥した。重量を測ったところ、3.5mgであった。よって6.5mg(0.65mg/mL)のカーボンナノチューブが上清中に分散していることがわかった。
【0124】
(カーボンナノチューブと芳香族ポリマーを含む透明導電性フィルム)
上記で得たカーボンナノチューブ分散液にメタノール/水(重量比1/1)をぬれ剤として300μL添加後、アクリル樹脂表面樹脂層(Dry厚み80nm)を持つポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)社製188μm)光線透過率91.2%、15cm×10cm)上にバーコーター(No.5、塗布厚み8μm、カーボンナノチューブ塗布量計算値3.9mg/m))を用いて塗布し、風乾した後、120℃乾燥機内で2分間乾燥させカーボンナノチューブを固定化した。得られた塗布フィルムの表面抵抗値は390Ω/□、光線透過率は77.1%(透明導電性フィルムの550nmの光線透過率/基材の550nmの光線透過率=85%)、ヘイズは1.0であり、高い導電性および、透明性を示した。
【0125】
(樹脂層を塗布した透明導電性フィルム)
上記で得た透明導電性フィルムにポリメタクリル酸メチル樹脂バインダー(綜研化学(株)社製フォレットGS−1000)を1.5wt%にメチルイソブチルケトンで希釈し、バーコーター(No.8、塗布厚み12μm)を用いて塗布後120℃で5分乾燥させた。得られた塗布フィルムの表面抵抗値は550Ω/□、光線透過率は81.4%(透明導電性フィルムの550nmの光線透過率/基材の550nmの光線透過率=89%)、ヘイズは0.6であり、塗布前よりも透過率が向上しヘイズが低下した。
【0126】
得られたフィルムの摺動耐久性試験を実施例1と同様に行い、表面抵抗値を測定した。表面抵抗値の変化率は1.05であった。
【0127】
(実施例3)
(カーボンナノチューブと芳香族ポリマーを含む透明導電性フィルム)
実施例2で得たカーボンナノチューブ分散液を、ポリエステル樹脂表面樹脂層(Dry厚み140nm)を持つポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)社製188μm)光線透過率90.6%、15cm×10cm)上にバーコーター(No.8、塗布厚み12μm、塗布量計算値4.3mg/m)を用いて塗布し、風乾した後、120℃乾燥機内で2分間乾燥させカーボンナノチューブを固定化した。得られた塗布フィルムの表面抵抗値は597Ω/□、光線透過率は78.5%(透明導電性フィルムの550nmの光線透過率/基材の550nmの光線透過率=87%)であり、高い導電性および、透明性を示した。
【0128】
(樹脂層を塗布した透明導電性フィルム)
上記で得た透明導電性フィルムにポリエステル樹脂(互応化学工業(株)社製、プラスコート)を1.0wt%、バーコーター(No.10、塗布厚み120μm)を用いて塗布後120℃で5分乾燥させた。得られた塗布フィルムの表面抵抗値は868Ω/□、光線透過率は80.1%(透明導電性フィルムの550nmの光線透過率/基材の550nmの光線透過率=88%)であり、塗布前よりも透過率が向上した。
【0129】
得られたフィルムの摺動耐久性試験を行い、表面抵抗値を測定した。
【0130】
表面抵抗値の変化率は1.03であった。
【0131】
(実施例4)
(カーボンナノチューブと芳香族ポリマーを含む分散液調製)
50mLの容器に製造例1で得られたカーボンナノチューブ10mg、ポリアニソールスルホン酸ナトリウム(アルドリッチ社製)30mgを量りとり、蒸留水9.96mLを加えて、超音波ホモジナイザー出力20W、20分間で氷冷下分散処理しカーボンナノチューブ液を調製した。得られた液を高速遠心分離機にて10000G、15分遠心し、上清9mLを得た。この時の残存液1mLを孔径1μmのフィルターを用いてろ過、その後よく洗浄して得られたろ過物を120℃乾燥機にて乾燥した。重量を測ったところ、5.4mgであった。よって4.6mg(0.46mg/mL)のカーボンナノチューブが上清中に分散していることがわかった。
【0132】
(カーボンナノチューブと芳香族ポリマーを含む透明導電性フィルム)
上記で得たカーボンナノチューブ分散液300μLに、メタノールをぬれ剤として300μL添加後、ポリエステル樹脂表面樹脂層(Dry厚み80nm)を持つポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)社製188μm)光線透過率91.2%、15cm×10cm)上にバーコーター(No.8、塗布厚み12μm、カーボンナノチューブ塗布量5.5mg/m))を用いて塗布し、風乾した後、120℃乾燥機内で2分間乾燥させカーボンナノチューブを固定化した。得られた塗布フィルムの表面抵抗値は5.5×10Ω/□、光線透過率は82.8%(透明導電性フィルムの550nmの光線透過率/基材の550nmの光線透過率=91%)であり、高い導電性および、透明性を示した。
【0133】
(樹脂層を塗布した透明導電性フィルム)
上記で得た透明導電性フィルムにポリメタクリル酸メチル樹脂バインダー(綜研化学(株)社製フォレットGS−1000)を1.5wt%にメチルイソブチルケトンで希釈し、バーコーター(No.8、塗布厚み12μm)を用いて塗布後120℃で5分乾燥させた。得られた塗布フィルムの表面抵抗値は6.5×10Ω/□、光線透過率は85.8%(透明導電性フィルムの550nmの光線透過率/基材の550nmの光線透過率=94%)であり、塗布前よりも透過率が向上した。
【0134】
得られたフィルムの摺動耐久性試験を実施例1と同様に行い、表面抵抗値を測定した。表面抵抗値の変化率は1.40であった。
【0135】
(実施例5)
(カーボンナノチューブと芳香族ポリマーを含む透明導電性フィルム)
実施例2で得たカーボンナノチューブ分散液300μLに、メタノールを濡れ剤として300μL添加後、コロナ放電処理により濡れ性をあげた表面樹脂層を持たないポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)社製188μm)光線透過率89.8%、15cm×10cm)上にバーコーター(No.8、塗布厚み12μm、塗布量計算値4.3mg/m)を用いて塗布し、風乾した後、120℃乾燥機内で2分間乾燥させカーボンナノチューブを固定化した。得られた塗布フィルムの表面抵抗値は903Ω/□、光線透過率は82.9%(透明導電性フィルムの550nmの光線透過率/基材の550nmの光線透過率=92%)であり、高い導電性および、透明性を示した。
【0136】
(樹脂層を塗布した透明導電性フィルム)
上記で得た透明導電性フィルムにポリメタクリル酸メチル樹脂バインダー(綜研化学(株)社製フォレットGS−1000)を1.5wt%にメチルイソブチルケトンで希釈し、バーコーター(No.8、塗布厚み12μm)を用いて塗布後120℃で5分乾燥させた。得られた塗布フィルムの表面抵抗値は1.5kΩ/□、光線透過率は85.1%(透明導電性フィルムの550nmの光線透過率/基材の550nmの光線透過率=95%)であり、塗布前よりも透過率が向上した。
【0137】
得られたフィルムの摺動耐久性試験を行い、表面抵抗値を測定した。表面抵抗値の変化率は1.08であった。
【0138】
(比較例1)
実施例1〜5で得た樹脂層を塗布する前のフィルムの摺動耐久性試験を実施例1の場合と同様にして行った。
【0139】
摺動耐久性試験後の表面抵抗値の変化率はそれぞれ順に2.73、1.95、1.73,3.39、6.6であった。
【0140】
(比較例2)
(カーボンナノチューブと芳香族モノマーを含む分散液の調製)
50mLの容器に参考例1で得たカーボンナノチューブ10mg、トルエンスルホン酸1水和物(ナカライテスク(株)社製)30mgを量りとり、蒸留水9.96mLを加えて、超音波ホモジナイザー出力20W、20分間で氷冷下分散処理した。得られた液を高速遠心分離機にて10000G、15分遠心したところすべて沈殿した。
【0141】
(比較例3)
(カーボンナノチューブと非芳香族ポリマーを含む分散液の調製)
50mLの容器に参考例1で得たカーボンナノチューブ10mg、ポリビニルスルホン酸ナトリウム水溶液(アルドリッチ社製、25重量%)120mgを量りとり、蒸留水9.87mLを加えて、超音波ホモジナイザー出力20W、20分間で氷冷下分散処理した。得られた液を高速遠心分離機にて10000G、15分遠心したところすべて沈殿した。
【0142】
(比較例4)
(カーボンナノチューブと非芳香族ポリマーを含む分散液調製)
50mLの容器に参考例1で得たカーボンナノチューブ10mg、ポリジアリルジメチルアンモニウム水溶液(アルドリッチ社製、20重量%、重量平均分子量15万、GPCで測定)150mgを量りとり、蒸留水9.84mLを加えて、超音波ホモジナイザー出力20W、20分間で氷冷下分散処理しカーボンナノチューブ液を調製した。得られた液を高速遠心分離機にて10000G、15分遠心し、上清9mLを得た。この時の残存液1mLを孔径1μmのフィルターを用いてろ過、その後よく洗浄して得られたろ過物を120℃乾燥機にて乾燥した。重量を測ったところ、6.3mgであった。よって3.7mg(0.37mg/mL)のカーボンナノチューブが上清中に分散していることがわかった。
【0143】
(カーボンナノチューブと非芳香族ポリマーを含む透明導電性フィルム)
上記で得たカーボンナノチューブ分散液を、コロナ放電処理により濡れ性をあげた表面樹脂層を持たないポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)社製188μm)光線透過率89.8%、15cm×10cm)上にバーコーター(No.8、塗布厚み12μm、カーボンナノチューブ塗布量計算値4.9mg/m)を用いて塗布し、風乾した後、120℃乾燥機内で2分間乾燥させカーボンナノチューブを固定化した。得られた塗布フィルムの表面抵抗値は2.5×10Ω/□、光線透過率は79.5%(透明導電性フィルムの550nmの光線透過率/基材の550nmの光線透過率=89%)であった。
【0144】
(樹脂層を塗布した透明導電性フィルム)
上記で得た透明導電性フィルムにポリメタクリル酸メチル樹脂バインダー(綜研化学(株)社製フォレットGS−1000)を1.5wt%にメチルイソブチルケトンで希釈し、バーコーター(No.8、塗布厚み12μm)を用いて塗布後120℃で5分乾燥させた。得られた塗布フィルムの表面抵抗値は1.8×10Ω/□、光線透過率は83.0%(透明導電性フィルムの550nmの光線透過率/基材の550nmの光線透過率=92%)であり、塗布前よりも透過率が向上した。得られたフィルムの摺動耐久性試験を行い、表面抵抗値を測定した。表面抵抗値の変化率は32.5であった。
【0145】
(実施例6)
実施例2で得た樹脂層を塗布した透明導電性フィルム(導電層上に樹脂層を塗布し得たフィルム)の基材上(導電層と反対面)に次の組成のハードコート層形成塗液を塗布後、紫外線を15秒間照射し、硬化させ、積層フィルム上にハードコート層を設けた。
(ハードコート層形成塗液)
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 70重量部
・ジペンタエリスリトールテトラメタアクリレート 10重量部
・エチルアクリレート 5重量部
・N−ビニルピロリドン 15重量部
・1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 4重量部
その後、耐屈曲試験を行い表面抵抗値を測定した。表面抵抗値の変化率は1.02であった。
【0146】
(比較例5)
実施例2で得たカーボンナノチューブと芳香族ポリマーを含む透明導電性フィルム(導電層上に樹脂層を塗布しないフィルム)の基材上(導電層の反対面)に実施例6と同様の方法によりハードコート層を設けた。その後、耐屈曲試験を行い表面抵抗値を測定した。表面抵抗値の変化率は1.23であった。
【符号の説明】
【0147】
1 反応器
2 触媒を置く台
3 触媒
4 触媒以外の物体と触媒の混合物
5 触媒
100 反応器
101 石英焼結板
102 密閉型触媒供給機
103 触媒投入ライン
104 原料ガス供給ライン
105 廃ガスライン
106 加熱器
107 点検口
108 触媒
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】図1は参考例1で使用した流動床装置の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と基材の上にカーボンナノチューブと芳香族ポリマーからなる導電層を有し、さらに、導電層の上に樹脂層からなる層を有する透明導電性フィルムであって、透明導電性フィルムの550nmの光線透過率/基材の550nm光線透過率が50%以上、表面抵抗値が10〜10Ω/□であることを特徴とする透明導電性フィルム。
【請求項2】
摺動耐久性試験後の表面抵抗値の変化率(負荷後表面抵抗値/初期表面抵抗値)が1.5以下であることを特徴とする請求項1記載の透明導電性フィルム。
【請求項3】
基材と基材の上にカーボンナノチューブと芳香族ポリマーからなる導電層を有し、さらに、導電層の上に樹脂層からなる層を有する透明導電性フィルムであって、摺動耐久性試験後の表面抵抗値の変化率(負荷後表面抵抗値/初期表面抵抗値)が1.5以下であることを特徴とする透明導電性フィルム。
【請求項4】
カーボンナノチューブ塗布量が1〜40mg/mであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の透明導電性フィルム。
【請求項5】
基材が表面樹脂層を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の透明導電性フィルム。
【請求項6】
表面樹脂層がアクリル樹脂またはポリエステル樹脂からなることを特徴とする請求項5記載の透明導電性フィルム。
【請求項7】
芳香族ポリマーがスルホン酸、カルボン酸系官能基を有するポリマーであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の透明導電性フィルム。
【請求項8】
芳香族ポリマーがポリスチレンスルホン酸やその塩、またはその誘導体であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の透明導電性フィルム。
【請求項9】
カーボンナノチューブ100本中50本以上が単層〜5層カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の透明導電性フィルム。
【請求項10】
導電層の上に積層される樹脂層がアクリル樹脂および/またはポリエステル樹脂からなることを特徴とする請求項9記載の透明導電性フィルム。
【請求項11】
基材の導電層側とは反対の面にハードコート層を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか記載の透明導電性フィルム。
【請求項12】
基材の上にカーボンナノチューブと芳香族ポリマーからなる分散液を塗布し、さらに樹脂を塗布することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項記載の透明導電性フィルムの製造方法。
【請求項13】
基材の上に表面樹脂層を形成し、該表面樹脂層の上にカーボンナノチューブと芳香族ポリマーからなる分散液を塗布し、さらに樹脂を塗布することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項記載の透明導電性フィルムの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−163959(P2009−163959A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−341302(P2007−341302)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】