説明

透明導電性フィルムおよび透明導電性フィルムの製造方法

【課題】網目状の導電性薄膜を保護する樹脂層を設けた場合でも、導電性の低下を防止することができる透明導電性フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】合成樹脂フィルム上に、金属微粒子溶液を塗布することによって形成された網目状の金属層、樹脂層を有する積層フィルムであって、金属層の凸部により囲まれた凹部に形成される樹脂層の厚みが、金属層の凸部の厚みの10〜110%であり、樹脂層を形成する樹脂成分の硬化前の貯蔵弾性率(E’)が、2.0×10Pa以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電性フィルムに関し、特に、表面に傷がつきにくく、電気的性能が低下しない透明導電性フィルム、および透明導電性フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性フィルムとして、基材上に、導電性薄膜が面状に設けられたものや、網目状に設けられたものがある。このような導電性フィルムは、導電性薄膜に傷がつくと、導電性薄膜の電気抵抗が増大したり、断線を生じ、導電性が低下するといった問題があった。
【0003】
そのため、導電性フィルムに、耐擦傷性のある樹脂層を設けることが考えられる。
【0004】
しかし、導電性フィルムの導電性薄膜上に、樹脂層を設けてしまうと、樹脂層によって、導電性薄膜が覆われてしまい、導電性が失われてしまう(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−31203号公報(段落番号0007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記問題を解決するために、樹脂層自体に導電性を付加することが考えられるが、樹脂層に導電性材料を添加すると、耐擦傷性や透明性の低下といった問題が発生する。
【0007】
そこで、本発明では、網目状の導電性薄膜を保護する樹脂層を設けた場合でも、導電性の低下を防止することができる透明導電性フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、樹脂層を構成する樹脂の硬化前の貯蔵弾性率(E’)を特定の値とし、樹脂層の厚みを金属層の厚みの10〜110%とすることにより、網目状の金属層の凸部により囲まれた凹部のみに樹脂層を設けることができ、金属層を保護しつつ、導電性の低下を防止することができることを見出し、これを解決するに至った。
【0009】
即ち、本発明の透明導電性フィルムは、合成樹脂フィルム上に、網目状の金属層、樹脂層を有する積層フィルムであって、金属層の凸部により囲まれた凹部に形成される樹脂層の厚みが、金属層の凸部の厚みの10〜110%であり、樹脂層を形成する樹脂成分の硬化前の貯蔵弾性率(E’)が、2.0×108Pa以下であることを特徴とするものである。
【0010】
また、前記網目状の金属層が、金属微粒子溶液を塗布することによって、形成されたものであることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の導電性フィルムの製造方法は、網目上の金属層を有する合成樹脂フィルムの金属層上に、金属層の凸部の厚みの10〜110%となるように、貯蔵弾性率(E’)が、2.0×108Pa以下である樹脂成分を含む樹脂層塗布液を塗布することにより、樹脂層を形成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の透明導電性フィルムは、耐擦傷性を付与しつつ、導電性の低下を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の透明導電性フィルムの実施の形態について説明する。本発明の透明導電性フィルムは、合成樹脂フィルム上に、網目状の金属層、樹脂層を有する積層フィルムであって、金属層の凸部により囲まれた凹部に形成される樹脂層の厚みが、金属層の凸部の厚みの10〜110%であり、樹脂層を形成する樹脂成分の硬化前の貯蔵弾性率(E’)が、2.0×108Pa以下であることを特徴とするものである。
【0014】
基材として用いられる合成樹脂フィルムとしては、ポリエステル、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリル、ポリオレフィン、セルロース樹脂、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミド、塩化ビニル系樹脂、フッ素樹脂などの合成樹脂フィルムなどがあげられる。その中でも平面性に優れるものが好適に用いられ、特に延伸加工、二軸延伸加工されたポリエステルフィルムが機械的強度、寸法安定性に優れ、さらに腰が強いため好ましい。また、厚みは、1〜100μm程度が好ましい。また、このような合成樹脂フィルムには、後述する金属層や樹脂層をより効率的に形成するために下引き層を設けてもよい。
【0015】
合成樹脂フィルムに設けられる網目状の金属層は、凸部により網目状を形成される。金属層の凸部で形成される網目状は、円輪形、楕円形、多角形、蜂の巣形、網目形など特に限定されるものではないが、モアレ現象を防止するために、不規則な構造であることが好ましい。このような金属層が設けられることにより、合成樹脂フィルムに導電性が付与される。このような金属層は、開孔率が60〜90%、網目の太さが、1〜10μm、凸部のピッチが10〜150μm程度が好ましい。網目の太さが太すぎると、後述の樹脂層が凸部に形成されやすくなる。
【0016】
また、金属層の凸部の断面形状は、四角型などのような角ばった形状より、山型や半球型のような比較的丸みを帯びた形状とすることが、樹脂層が金属層の凸部をより覆いにくくなるため好ましい。
【0017】
金属層の厚みは、特に限定されないが、凸部の厚みが1μm以上、好ましくは、2μm以上、10μm以下である。特に、金属層を塗布により設ける場合には、2μm以上、5μm以下が好ましい。金属層を塗布により設ける場合には、2μm以上とすることにより、金属層のネットワークが確実に形成される。また、10μm以下とすることにより、透明性の低下を防止することができる。
【0018】
このような網目状の金属層を形成する方法としては、金属微粒子溶液を塗布する方法、金属メッキなどを用いることにより部分的に金属層を施したり、スパッタリングなどにより金属層を形成した後、エッチングにより部分的にメッキを除去する方法などを用いることができる。
【0019】
金属微粒子溶液を塗布する方法としては、溶媒の蒸発温度が異なることを利用したり、合成樹脂フィルムと金属微粒子溶液の濡れ性の違いを利用して、金属微粒子と、水や有機溶媒などの溶媒とからなる金属コロイド溶液を、合成樹脂フィルムに塗布・溶媒を除去する方法などがあげられる。このような塗布により金属層を網目状に形成する方法は、生産性が高く、環境への負荷も少ないため好ましい。さらに、塗布により金属層を網目状に形成する方法は、金属層の凸部の断面形状を、丸みを帯びた形状としやすいため好ましい。
【0020】
このような金属層を形成する金属微粒子としては、白金、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、ビスマス、コバルト、鉄、アルミニウム、亜鉛、錫などやその合金の一種又は二種以上を組み合わせたものを用いることができる。特に、金属層を塗布により設ける場合には、分散し易く、抵抗値が低い、銀を用いることが好ましい。
【0021】
金属微粒子溶液には、金属微粒子のほかに、分散剤、界面活性剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、微粒子、充填剤、帯電防止剤、バインダー樹脂などの無機成分や有機成分を適宜加えることができる。
【0022】
樹脂層は、金属層の凸部の厚みの10〜110%であり、金属層の凸部を露出させるために、金属層の凸部を覆わないように、金属層の凸部により囲まれた凹部に形成される。金属層の凸部の厚みの10%以上とするのは、金属層の凸部を側面から保護し、耐擦傷性を向上させるためである。さらに、110%以下とするのは、金属層の凸部を覆わず、導電性を低下させないためである。また、樹脂層の金属層に近い部分と金属層から遠い部分での厚みの差が大きいと、ヘーズが高くなるため、樹脂層は、金属層の凸部の厚みの70%以上がより好ましい。
【0023】
このように、金属層の凸部に囲まれた凹部にのみ樹脂層を設けた場合であっても、金属層の凸部が樹脂層により側面から支えられている点、金属層の凸部が樹脂層表面から突出しないため、金属層の凸部が削られることを防止できる点などから、金属層自体の耐擦傷性を向上させることができ、透明導電性フィルムとした場合の耐擦傷性を向上することができる。
【0024】
樹脂層は、樹脂層を形成する樹脂成分と、必要により加えられる溶剤や添加剤などと共に樹脂溶液として、塗布することによって形成される。
【0025】
樹脂層を形成する樹脂成分は、硬化前の貯蔵弾性率(E’)が、2.0×108Pa以下、好ましくは、1.0×108Pa以下、さらに好ましくは、3.0×107Paである。貯蔵弾性率(E’)が2.0×108Pa以下の樹脂成分を用いることにより、金属層上に、樹脂溶液を塗布、必要により乾燥、電離放射線照射などを行うことで、金属層の凸部を覆うことなく、金属層の凸部に囲まれた凹部のみに樹脂層を形成することができる。樹脂成分の硬化前の貯蔵弾性率(E’)を2.0×108Pa以下とすることにより、金属層の凸部を覆うことなく、金属層の凸部に囲まれた凹部のみに樹脂層を形成することができるのは、樹脂溶液を塗布した後、溶媒を除去していく過程や、樹脂が硬化していく過程で、樹脂成分が凸部から凹部へ流動することが可能であるためと考えられる。
【0026】
本発明における貯蔵弾性率(E’)は、JIS K7244−4に記載の方法に従い、樹脂層を形成する樹脂成分だけ(樹脂溶液中の樹脂成分だけ)を、例えば、樹脂成分が溶剤に溶解している場合には、溶剤を蒸発させた100%樹脂成分として、サンプルサイズを長さ30mm、幅5mm、厚0.3mmの試料片を作製し、動的粘弾性測定装置(Rheogel−E4000、ユービーエム社)により、測定条件をスパン間距離20mm、測定周波数1Hz、20℃にて測定して得られる値(単位:Pa)である。なお、樹脂成分を2種以上使用する場合には、混合された樹脂成分を一つの樹脂成分とみなし、貯蔵弾性率(E’)を求める。
【0027】
このような樹脂成分としては、アクリル系、ポリエステル系、ポリスチレン系、ポリ酢酸ビニル系、ポリウレタン系、酢酸セルロース系、シリコーン系、エポキシ系、ビニルエーテル系などの樹脂のほか、アクリル系プレポリマー、例えば、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート、ポリフルオロアルキルアクリレート、シリコーンアクリレートや、光重合性モノマー、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート等の単官能アクリルモノマー、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート等の2官能アクリルモノマー、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチルプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等の多官能アクリルモノマーの1種若しくは2種以上を使用することができる。特に、耐擦傷性をより向上させることができるため、アクリル系プレポリマーや光重合性モノマーを用いることが好ましい。
【0028】
貯蔵弾性率(E’)は、樹脂成分の分子量が大きいと高くなり、分子量が小さいと低くなる傾向がある。また、同程度の分子量の場合には、分岐鎖が多くなると、貯蔵弾性率(E’)は高くなる傾向がある。そのため一概には言えないが、樹脂成分の分子量は、100以上、30000以下、より好ましくは20000以下、更に好ましくは15000以下のものを用いることが、貯蔵弾性率(E’)を2.0×108Pa以下に調整しやすくできるため好ましい。
【0029】
樹脂溶液には、分散剤、界面活性剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、微粒子、充填剤、帯電防止剤などの無機成分や有機成分を適宜加えることができる。
【0030】
本発明の透明導電性フィルムの他方の面には、離型層、ハードコート層、防眩層などの機能層を設けても良い。
【0031】
本発明の透明導電性フィルムは、表面抵抗値が30Ω/□以下であることが好ましく、全光線透過率は、75%以上、ヘーズは、15%以下であることが好ましい。
【0032】
樹脂層、必要により設けられる機能層は、各層を構成する材料を含む溶液をロールコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、エアナイフコーティング法、ダイコート法、アプリケーター法、コンマコーティング法、ディッピング法などの公知の方法により合成樹脂フィルム上に塗布し、必要に応じて加熱や電離放射線照射することにより形成することができる。
【0033】
以上のように本実施形態によれば、透明導電性フィルムの導電性を低下させることなく、耐擦傷性を向上させることができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明を更に説明する。なお、「部」、「%」は特に示さない限り、重量基準とする。
【0035】
[金属層を有する積層フィルムの作成]
湿度35%RH、温度20℃、風速0.6m/秒の雰囲気に維持した熱風オーブン内で二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラーT60:東レ社)に金属微粒子溶液(CE103−7:Cima NanoTech社)を塗布、室温で10分間静置し銀微粒子を網目形状に形成した。
【0036】
次に、この積層フィルムを150℃、2分間、熱処理を行い、続いて、この積層フィルムを25℃のアセトンに30秒間浸けた後、25℃で3分間乾燥させた。次に、この積層フィルムの銀微粒子を酸処理するために、1Nの塩酸に1分間浸け、水洗した後、水分を蒸発させるために積層フィルムを150℃、2分間乾燥を行い、網目形状の金属層を有する積層フィルムを得た。金属層の凸部の厚みは、2.8μm、網目の太さは、5〜10μm、開孔率は、85.5%、全光線透過率は、80%であった。
【0037】
[実験例1]
上記網目形状の金属層を有する積層フィルムの金属層上に、厚み2.7μmとなるように下記樹脂溶液を塗布、乾燥した後、高圧水銀灯で紫外線を照射し(照射量300mJ/cm2)、樹脂層を形成し、実験例1の透明導電性フィルムを作製した。塗液の粘度は4.9mPa・sであった。
【0038】
<樹脂溶液>
・電離放射線硬化型樹脂 38.0部
(紫光UV-1700B:固形分90%、分子量:5,000未満、日本合成化学社)
・重合開始剤 2部
(イルガキュア184:固形分100%、チバ・ジャパン)
・希釈溶媒 60.0部
【0039】
[実験例2]
上記網目形状の金属層を有する積層フィルムの金属層上に、厚み2.7μmとなるように下記樹脂溶液を塗布、乾燥し、樹脂層を形成し、実験例2の透明導電性フィルムを作製した。塗液の粘度は56.2mPa・sであった。
【0040】
<樹脂溶液>
・電離放射線硬化型樹脂 36.0部
(アートレジン UN-7700:固形分100%、分子量:20,000、根上工業社)
・重合開始剤 1.5部
(イルガキュア184:固形分100%、チバ・ジャパン社)
・希釈溶媒 62.5部
【0041】
[実験例3]
上記網目形状の金属層を有する積層フィルムの金属層上に、厚み2.7μmとなるように下記樹脂溶液を塗布、乾燥した後、高圧水銀灯で紫外線を照射し(照射量300mJ/cm2)、樹脂層を形成し、実験例3の透明導電性フィルムを作製した。塗液の粘度は8.2mPa・sであった。
【0042】
<樹脂溶液>
・熱硬化性樹脂 25.6部
(アクリディック A-165:固形分45%、DIC社)
・電離放射線硬化型樹脂 25.6部
(紫光UV-1700B:固形分90%、日本合成化学社)
・重合開始剤 1.3部
(イルガキュア184:固形分100%、チバ・ジャパン)
・希釈溶媒 47.5部
【0043】
[実験例4]
実験例1の樹脂層の厚みを、3.0μmとした以外は、実験例1と同様に実験例4の透明導電性フィルムを作製した。
【0044】
[実験例5]
上記網目形状の金属層を有する積層フィルムの金属層上に、厚み2.4μmとなるように下記樹脂溶液を塗布した後、十分に湿度のあるオーブンで熱しその後乾燥させ、樹脂層を形成し、実験例5の透明導電性フィルムを作製した。塗液の粘度は5.0mPa・sであった。
【0045】
<樹脂溶液>
・湿気硬化性樹脂 27.0部
(ES1001N:固形分45%、信越化学工業社)
・アルコキシオリゴマー 3.0部
(X−40−2308:固形分100%、信越化学工業社)
・重合開始剤 0.5部
(2PZ−CN:固形分100%、四国化成工業社)
・希釈溶媒 69.5部
【0046】
[実験例6]
上記網目形状の金属層を有する積層フィルムの金属層上に、厚み2.4μmとなるように下記樹脂溶液を塗布した後、十分に湿度のあるオーブンで熱しその後乾燥させ、樹脂層を形成し、実験例6の透明導電性フィルムを作製した。塗液の粘度は2.8mPa・sであった。
【0047】
<樹脂溶液>
・湿気硬化性樹脂 20.8部
(KR5235:固形分60%、信越化学工業社)
・アルコキシオリゴマー 3.0部
(X−40−2308:固形分100%、信越化学工業社)
・重合開始剤 0.5部
(2PZ−CN:固形分100%、四国化成工業社)
・希釈溶媒 75.7部
【0048】
[実験例7]
実験例1の樹脂層の厚みを、2.1μmとした以外は、実験例1と同様に実験例7の透明導電性フィルムを作製した。
【0049】
[実験例8]
実験例1の樹脂層の厚みを、1.5μmとした以外は、実験例1と同様に実験例8の透明導電性フィルムを作製した。
【0050】
[実験例9]
実験例1の樹脂層の厚みを、0.28μmとした以外は、実験例1と同様に実験例9の透明導電性フィルムを作製した。
【0051】
[実験例10]
実験例1の樹脂層の厚みを、0.13μmとした以外は、実験例1と同様に実験例10の透明導電性フィルムを作製した。
【0052】
[実験例11]
上記網目形状の金属層を有する積層フィルムの金属層上に、厚み2.5μmとなるように下記樹脂溶液を塗布、乾燥し、樹脂層を形成し、実験例11の透明導電性フィルムを作製した。塗液の粘度は55.4mPa・sであった。
【0053】
<樹脂溶液>
・熱硬化性樹脂 73.3部
(アクリディック A-165:固形分45%、DIC社)
・希釈溶媒 26.7部
【0054】
[実験例12]
実験例11の樹脂層の厚みを、2.0μmとした以外は、実験例11と同様に実験例12の透明導電性フィルムを作製した。
【0055】
[実験例13]
上記網目形状の金属層を有する積層フィルムの金属層上に、厚み2.5μmとなるように下記樹脂溶液を塗布、乾燥し、樹脂層を形成し、実験例13の透明導電性フィルムを作製した。塗液の粘度は30.4mPa・sであった。
【0056】
<樹脂溶液>
・熱硬化性樹脂 66.7部
(アクリディック A-801-P:固形分50%、DIC社)
・希釈溶媒 33.3部
【0057】
[実験例14]
実験例1の樹脂層の厚みを、3.3μmとした以外は、実験例1と同様に実験例14の透明導電性フィルムを作製した。
【0058】
得られた透明導電性フィルム(実験例1〜14)と樹脂層を設けていない金属層を有する積層フィルム(参考例)について、下記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0059】
[貯蔵弾性率(E’)]
JIS K7244−4に記載の方法に従い、実験例1〜14の樹脂溶液中の樹脂成分のみとした塗布溶液の溶剤分を蒸発させ、長さ30mm、幅5mm、厚さ0.3mmの試料片を作製し、測定条件をスパン間距離20mm、測定周波数1Hz、20℃にて、貯蔵弾性率(E’)を測定した。
【0060】
測定条件
測定機器:ユービーエム社 動的粘弾性測定装置 Rheogel−E4000
周波数:1Hz
試料形状:長さ30mm、幅5mm、厚さ:0.3mm
30秒ごとに測定し、測定ごとに10μm引っ張る
【0061】
また、樹脂成分のみとした場合に、貯蔵弾性率(E’)が低く、固化できないもの(実験例1、実験例2)については、JIS K7244−6に記載の方法に従い、測定周波数1Hz、20℃にて、貯蔵弾性率(G’)を測定し、貯蔵弾性率(E’)=貯蔵弾性率(G’)×3として、貯蔵弾性率(E’)を求めた。
【0062】
[導電性の評価]
実験例1〜14の透明導電性フィルム、金属層を有する積層フィルム(参考例)を、10cm×10cmを3×3等分し、9つの試料片として、表面抵抗値を測定した。試料片全ての表面抵抗値が、20Ω/□未満であったものを「◎」、9サンプル中5サンプル以上の表面抵抗値が20Ω/□未満であったものを「○」、5サンプル以上の表面抵抗値が20Ω/□以上であったものを「×」とした。
【0063】
[光学特性]
実験例1〜14の透明導電性フィルム、金属層を有する積層フィルム(参考例)について、ヘーズメーター(HGM−2K:スガ試験機社)を用いて、JIS K7105:1981にしたがって、全光線透過率とヘーズを測定した。
【0064】
[耐擦傷性]
セルロース製不織布に200gの分銅を、実験例1〜14の透明導電性フィルム、金属層を有する積層フィルム(参考例)上を往復20回摺動し、その後表面抵抗値を測定した。表面抵抗値が、20Ω/□未満のものを「○」、20Ω/□以上のものを「×」とした。
【0065】
【表1】

【0066】
実験例1〜9の透明導電性フィルムは、樹脂層に用いる樹脂成分の貯蔵弾性率(E’)が、2.0×108Pa以下であり、かつ樹脂層の厚みが、金属層の凸部の厚みの10〜110%であるため、金属層の凸部を覆うことなく、金属層の凸部に囲まれた凹部のみに樹脂層を形成することができ、導電性の低下がみられないものであった。
【0067】
特に、実験例1〜7の透明導電性フィルムは、樹脂層の厚みが、金属層の凸部の70%以上であるため、ヘーズが15%以下であり、特に、透明性が良好なものであった。
【0068】
また、実験例1〜4、実験例6の透明導電性フィルムは、樹脂層の厚みが比較的厚いが、樹脂層に用いる樹脂成分の貯蔵弾性率(E’)が、3.0×107Pa以下であるため、金属層の凸部を覆うことなく、金属層の凸部に囲まれた凹部のみに、安定して樹脂層を形成することができ、均一に導電性が得られるものであった。
【0069】
実験例10の透明導電性フィルムは、樹脂層に用いる樹脂成分の貯蔵弾性率(E’)が、2.0×10Pa以下であるが、樹脂層の厚みが、金属層の凸部の10%以下であるため、導電性は得られているが、金属層の凸部を側面から保護することができず、耐擦傷性に劣るものであった。また、樹脂層の金属層に近い部分と金属層から遠い部分での厚みの差が大きいため、ヘーズが高いものであった。
【0070】
実験例11〜13の透明導電性フィルムは、樹脂層に用いる樹脂成分の貯蔵弾性率(E’)が、2.0×108Paより大きいため、金属層の凸部を覆ってしまい、導電性が得られないものであった。
【0071】
実験例14の透明導電性フィルムは、樹脂層に用いる樹脂成分の貯蔵弾性率(E’)が、2.0×108Pa以下であるが、樹脂層の厚みが、金属層の凸部の厚みの110%より厚いため、金属層の凸部を覆ってしまい、導電性が得られないものであった。
【0072】
参考例の透明導電性フィルムは、金属層のみで、樹脂層が設けられていないため、耐擦傷性が得られないものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂フィルム上に、網目状の金属層、樹脂層を有する積層フィルムであって、金属層の凸部により囲まれた凹部に形成される樹脂層の厚みが、金属層の凸部の厚みの10〜110%であり、樹脂層を形成する樹脂成分の硬化前の貯蔵弾性率(E’)が、2.0×108Pa以下であることを特徴とする透明導電性フィルム。
【請求項2】
網目状の金属層が、金属微粒子溶液を塗布することによって、形成されたものであることを特徴とする請求項1記載の透明導電性フィルム。
【請求項3】
網目上の金属層を有する合成樹脂フィルムの金属層上に、金属層の凸部の厚みの10〜110%となるように、貯蔵弾性率(E’)が、2.0×108Pa以下である樹脂成分を含む樹脂層塗布液を塗布することにより、樹脂層を形成することを特徴とする透明導電性フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2011−253751(P2011−253751A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127606(P2010−127606)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000125978)株式会社きもと (167)
【Fターム(参考)】