説明

透明導電性部材

【課題】本発明は、優れた透明性及び導電性を兼ね備え、且つ外観の良好な透明導電性部材を提供する。
【解決手段】本発明に係る透明導電性部材1は、グラフェン層2と、前記グラフェン層2に重なっている着色層3と、透明な基材4とを備える。前記透明導電性部材1には、前記グラフェン層2と前記着色層3と前記基材4とが重なっている領域からなる第一領域5と、前記着色層3と前記基材4とが重なっていると共に前記グラフェン層2は重なっていない領域からなる第二領域6とが形成されている。前記第一領域5の透過色と前記第二領域6の透過色との間における、L*の差ΔL*、a*の差Δa*、及びb*の差Δb*が、下記式(1)に示す関係を満たす。
{(ΔL*2+(Δa*2+(Δb*21/2≦1.2 …(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性と導電性とを兼ね備える透明導電性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
透明性と導電性とを兼ね備える部材(透明導電性部材)は、透明電極、タッチパネル用部品等に適用されており、用途の拡大も期待されている。このような部材としては、例えばガラス基材等の透明な基材にITOを堆積させることで構成される部材が代表例として挙げられる。
【0003】
しかし、ITOの主成分であるインジウムは稀少な金属であることから、コスト面並びに資源枯渇に関する問題がある。
【0004】
一方、近年、高い透明性と導電性とを兼ね備える材料としてグラフェンシートが注目されつつある。グラフェンシートはsp結合により炭素原子が平面状に六角格子構造で配置されることで構成される1原子分の厚さのシートであって、その室温での電気抵抗値が銅の2/3、その電流密度耐性が銅の100倍以上であるという、導電性、耐久性に共に優れる材料である。
【0005】
特許文献1では、グラフェンの製造方法に関し、ベース部材と、前記ベース部材上に形成された親水性の酸化層と、前記酸化層上に形成された疎水性の金属触媒層と、前記金属触媒層上に形成されたグラフェン層とを含むグラフェン部材を準備し、前記グラフェン部材に水を提供し、前記酸化層から前記金属触媒層を分離し、エッチング法を用いて前記金属触媒層を除去することが、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−63506
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、グラフェンは高い透明性を有するものの、その色は黒みがかっている。そのため特にグラフェン層がパターニングされる場合には、透明導電性部材においてグラフェンの色が斑に見えてしまい、外観の悪化を招いてしまうという問題がある。
【0008】
本発明は上記事由に鑑みてなされたものであり、優れた透明性及び導電性を兼ね備え、且つ外観の良好な透明導電性部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る透明導電性部材は、グラフェン層と、前記グラフェン層に重なっている着色層と、前記グラフェン層及び前記着色層を支持する透明な基材とを備え、
前記グラフェン層と前記着色層と前記基材とが重なっている領域からなる第一領域と、前記着色層と前記基材とが重なっていると共に前記グラフェン層は重なっていない領域からなる第二領域とが形成されており、
前記第一領域の透過色と前記第二領域の透過色との間における、L*の差ΔL*、a*の差Δa*、及びb*の差Δb*が、下記式(1)に示す関係を満たす。
{(ΔL*2+(Δa*2+(Δb*21/2≦1.2 …(1)
本発明において、前記グラフェン層が前記基材と前記着色層との間に介在していることが好ましい。
【0010】
本発明において、前記グラフェン層と前記基材との間に前記着色層が介在していることも好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、優れた透明性及び導電性を兼ね備え、且つグラフェンの色が目立たず視認性の良好な透明導電性部材が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態における第一の態様を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態における第二の態様を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態による透明導電性部材1は、グラフェン層2と、着色層3と、基材4とを備える。この透明導電性部材1において、グラフェン層2と着色層3とは重なっている。また、基材4はグラフェン層2と着色層3とを支持している。
【0014】
透明導電性部材1には、グラフェン層2と着色層3と基材4とが重なっている領域からなる第一領域5と、着色層3と基材4とが重なっていると共にグラフェン層2は重なっていない領域からなる第二領域6とが、形成されている。この第一領域の透過色と第二領域の透過色との間における、L*の差ΔL*、a*の差Δa*、及びb*の差Δb*が、下記式(1)に示す関係を満たす。尚、L*、a*、及びb*は、CIE1976(L*,a*,b*)色空間の座標である。
{(ΔL*2+(Δa*2+(Δb*21/2≦1.2 …(1)
本実施形態により得られる透明導電性部材1は、高い透明性と高い導電性とを兼ね備え、このため透明電極、タッチパネル用部品、ディスプレイ用部品等の、種々の用途への適用が期待される。
【0015】
更に、グラフェン層2と着色層3とが重ねられ、且つ上記の通り第一領域5と第二領域6との間の色差が小さいと、透明導電性部材1においてグラフェン層2の色が目立たなくなり、このためパターニングされているグラフェン層2が斑に見えるなどの外観の悪化が抑制される。このため、透明導電性部材1を備える機器の外観が良好となり、特に透明導電性部材1がタッチパネル用部品、ディスプレイ用部品等のような画像を表示する機器に適用される場合、画像の視認性が向上する。
【0016】
図1に、本実施形態による透明導電性部材1の第一の態様を示す。本態様では、基材4、グラフェン層2、着色層3が、この順に重なっている構造を有する。すなわち、基材4上には、パターニングされた形状を有するグラフェン層2が積層している。更に基材4上には、グラフェン層2を覆うように着色層3が積層している。着色層3は、グラフェン層2を覆うと共に、更に基材4上におけるグラフェン層2の隙間に充填されている。このように着色層3がグラフェン層2を覆うため、着色層3によってグラフェン層2が保護される。これにより、透明導電性部材1には、基材4、グラフェン層2、着色層3がこの順に重なっている領域からなる第一領域5と、着色層3と基材4とが重なっていると共にグラフェン層2は重なっていない領域からなる第二領域6とが、形成されている。
【0017】
基材4の材質としては、特に制限されないが、例えばソーダライムガラス、無アルカリガラスなどの透明ガラス;ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂、セルロース樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等から構成される透明なプラスチックなどが挙げられる。基材4の形状はフィルム状でも板状でもよい。
【0018】
基材4がポリエステルフィルムから形成される場合には、ポリエステルとして、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール等のグリコール成分とが反応することで生成する芳香族ポリエステルが好ましく、特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタリンジカルボキシレートなどが好ましい。またポリエステルは、前記例示した複数の成分等の共重合ポリエステルであってもよい。
【0019】
基材4は有機または無機の粒子を含有してもよい。この場合、基材4の巻き取り性、搬送性等が向上する。このような粒子として、炭酸カルシウム粒子、酸化カルシウム粒子、酸化アルミニウム粒子、カオリン、酸化珪素粒子、酸化亜鉛粒子、架橋アクリル樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、尿素樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子等が挙げられる。基材4は、着色剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、潤滑剤、触媒、他の樹脂等も、透明性を損なわない範囲で含有してもよい。
【0020】
基材4のヘイズは3%以下であることが好ましく、この場合、透明導電性部材1を通した映像等の視認性が向上し、光学的用途のフィルムとして特に適したものとなる。ヘイズが1.5%以下であれば更に好ましい。また、基材は無色であっても、有色であってもよい。
【0021】
基材4の厚みは特に制限されないが、基材4がフィルム状である場合にはその厚みは25μm以上200μm以下の範囲であることが好ましい。特に基材4の厚みが25μm以上100μm以下であると、透明導電性部材1の薄型化、軽量化が可能となり、また透明導電性部材1の表裏における干渉の発生が抑制され、更に基材4が加熱される際の熱収縮が抑制されて基材4の熱収縮による加工性の悪化等の不具合が抑制される。
【0022】
基材4は多層構造を有してもよい。例えば基材4は、上記のような透明なガラス又はプラスチックからなる板状又はシート状の基部と、この基部上に積層されている一層又は複数層の樹脂層とを備えてもよい。
【0023】
樹脂層は、反応性硬化型樹脂組成物から形成されることが好ましく、例えば熱硬化型樹脂組成物と活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の少なくとも一方から形成されることが好ましい。
【0024】
熱硬化型樹脂組成物は、例えばフェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等の熱硬化性樹脂を含有する。熱硬化性樹脂と共に、必要に応じて架橋剤、重合開始剤、硬化剤、硬化促進剤、溶剤等が使用されてもよい。このような熱硬化型樹脂組成物が塗布され、続いてこの熱硬化型樹脂組成物が加熱されて熱硬化することで、樹脂層が形成され得る。
【0025】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、アクリレート系の官能基を有する樹脂を含むことが好ましい。アクリレート系の官能基を有する樹脂としては、例えば比較的低分子量の多官能化合物の(メタ)アクリレート等のオリゴマー、プレポリマーなどが挙げられる。前記の多官能化合物としては、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等が挙げられる。活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は更に反応性希釈剤を含有することも好ましい。反応性希釈剤としては、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー、並びにトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートの多官能モノマーが挙げられる。
【0026】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が紫外線硬化型樹脂組成物などの光硬化型樹脂組成物である場合には、光硬化型樹脂組成物が光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としてはアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、α−アミロキシムエステル、チオキサントン類などが挙げられる。光硬化型樹脂組成物が光重合開始剤に加えて、或いは光重合開始剤に代えて、光増感剤を含有してもよい。光増感剤としては、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、チオキサントンなどが挙げられる。このような光硬化型樹脂組成物が塗布され、続いてこの光硬化型樹脂組成物に紫外線などの光が照射されて光硬化することで、樹脂層が形成され得る。
【0027】
樹脂層の屈折率は、樹脂層を形成するための樹脂組成物の組成によって容易に調整され得る。また、樹脂層が屈折率調整用の粒子を含有すると共にその割合が調整されることで、樹脂層の屈折率が調整されることも好ましい。
【0028】
屈折率調整用の粒子の粒径は十分に小さいこと、すなわち屈折率調整用の粒子がいわゆる超微粒子であるが好ましく、この場合、樹脂層の光透過性が十分に維持されるようになる。屈折率調整用の粒子の粒径は特に、0.5nm〜200nmの範囲であることが好ましい。この屈折率調整用の粒子の粒径とは、粒子の電子顕微鏡写真画像から算出される投影面積と同一の面積を有する円(面積相当円)の径のことである。
【0029】
屈折率調整用の粒子は、比較的屈折率の高い粒子であることが好ましく、特に屈折率が1.6以上の粒子であることが好ましい。この粒子は、金属や金属酸化物の粒子であることが好ましい。
【0030】
樹脂層中の屈折率調整用の粒子の含有量は、樹脂層の屈折率が適切な値となるように適宜調整される。特に樹脂層中の屈折率調整用の粒子の割合が5〜70体積%となるように調整されることが好ましい。
【0031】
屈折率調整用の粒子の具体例としては、チタン、アルミニウム、セリウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、アンチモンから選ばれる一種あるいは二種以上の酸化物を含有する粒子が挙げられる。酸化物の具体例としては、ZnO(屈折率1.90)、TiO2(屈折率2.3〜2.7)、CeO2(屈折率1.95)、Sb25(屈折率1.71)、SnO2、ITO(屈折率1.95)、Y23(屈折率1.87)、La23(屈折率1.95)、ZrO2(屈折率2.05)、Al23(屈折率1.63)等が挙げられる。
【0032】
樹脂層には帯電防止性能が付与されていることも好ましい。この場合、透明導電性部材1の帯電が抑制され、また透明導電性部材1へ埃の付着が抑制される。そのためには、樹脂層が導電性粒子を含有することが好ましい。導電性粒子は同時に屈折率調整用の粒子としても機能してもよい。導電性粒子はナノ粒子であることが好ましく、特に粒径が0.5〜200nmの超微粒子であることが好ましい。導電性粒子の粒径も面積相当円の径である。導電性粒子の材質としては導電性を有する適宜の金属、金属酸化物等が挙げられ、具体的にはインジウム、亜鉛、錫、アンチモンから選ばれる一種又は二種以上の金属の酸化物が挙げられ、更に具体的には酸化インジウム(ITO)、酸化錫(SnO2)、アンチモン/錫酸化物(ATO)、鉛/チタン酸化物(PTO)、アンチモン酸化物(Sb25)等が挙げられる。
【0033】
樹脂層に十分な帯電防止性能が付与されるためには、導電性粒子を含有することで樹脂層のシート抵抗が1015Ω/□以下となることが好ましい。樹脂層のシート抵抗は小さいほど帯電防止性が向上するので、下限は特に設定されないが、シート抵抗を小さくするのには限界があるため、樹脂層のシート抵抗の実質的な下限は106Ω/□である。
【0034】
樹脂層中の導電性粒子の含有量は、樹脂層の帯電防止性能が適切な程度となるように適宜調整されるが、特に樹脂層中の導電性粒子の割合が5〜70質量%となるように調整されることが好ましい。
【0035】
樹脂層は、次に示すようなバインダー材料及び必要に応じて使用される屈折率調整用の粒子を含有する組成物から形成されてもよい。バインダー材料と屈折率調整用の粒子とが併用される場合、両者の組み合わせ、配合比等により樹脂層の屈折率が適宜調整される。この樹脂層は、組成物にバインダー材料の性状に応じて加熱、加湿、紫外線照射、電子線照射等の処理が施されることで組成物が硬化することにより、形成され得る。
【0036】
バインダー材料としては、シリコンアルコキシド系樹脂、飽和炭化水素及びポリエーテルの少なくともいずれかを主鎖とするポリマー(例えばUV硬化型樹脂組成物、熱硬化型樹脂組成物等)、ポリマー鎖中にフッ素原子を含む単位を含む樹脂などが挙げられる。
【0037】
シリコンアルコキシド系樹脂としては、RmSi(OR´)nで表されるシリコンアルコキシド(R、R´は炭素数1〜10のアルキル基、m+n=4、m及びnはそれぞれ整数。)の部分加水分解縮合物であるオリゴマー及びポリマーが、挙げられる。シリコンアルコキシドとしては、具体的にはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラペンタエトキシシラン、テトラペンタ−iso−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−ブトキシシラン、テトラペンタ−sec−ブトキシシラン、テトラペンタ−tert−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルプロポキシシラン、ジメチルブトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン等が例示される。
【0038】
バインダー材料として、熱又は活性エネルギー線によって反応架橋する複数の基(重合性二重結合基等)を有する反応性有機珪素化合物が用いられてもよい。この有機珪素化合物の分子量は5000以下であることが好ましい。このような反応性有機珪素化合物としては、片末端ビニル官能性ポリシラン、両末端ビニル官能性ポリシラン、片末端ビニル官能ポリシロキサン、両末端ビニル官能性ポリシロキサン、並びにこれらの化合物を反応させて得られるビニル官能性ポリシラン及びビニル官能性ポリシロキサン等が挙げられる。これら以外にも、反応性有機珪素化合物としては、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシシラン化合物が挙げられる。
【0039】
屈折率調整用の粒子としては、比較的低屈折率の粒子が使用されることが好ましい。屈折率調整用の粒子の材質としては、シリカ、フッ化マグネシウム、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム等が挙げられる。屈折率調整用の粒子が中空粒子を含むことが好ましい。中空粒子とは外殻によって包囲された空洞を有する粒子である。中空粒子の屈折率は1.20〜1.45であることが好ましい。
【0040】
屈折率調整用の粒子には、必要に応じて、バインダー材料との濡れ性を向上するための表面処理が施されていることが好ましい。
【0041】
屈折率調整用の粒子の粒径は十分に小さいこと、すなわち屈折率調整用の粒子がいわゆる超微粒子であることが好ましく、この場合、樹脂層の光透過性が十分に維持されるようになる。屈折率調整用の粒子の粒径は特に、0.5nm〜200nmの範囲であることが好ましい。この屈折率調整用の粒子の粒径とは、粒子の電子顕微鏡写真画像から算出される投影面積と同一の面積を有する円(面積相当円)の径のことである。
【0042】
樹脂層中の屈折率調整用の粒子の含有量は、樹脂層の屈折率の値が適切な値となるように適宜調整されるが、特に樹脂層中の屈折率調整用の粒子の割合が20〜99体積%となるように調整されることが好ましい。
【0043】
組成物は、更に撥水、撥油性材料を含有してもよい。撥水、撥油性材料としては、一般的なワックス系の材料等が使用され得る。
【0044】
グラフェン層2は、グラフェンシートから構成される。グラフェン層2は単層のグラフェンシートから構成されてもよいが、複数層のグラフェンシートから構成されてもよい。グラフェン層2は1層以上300層以下のグラフェンシートからなることが好ましく、1層以上15層以下のグラフェンシートからなることが特に好ましい。
【0045】
このグラフェン層2はパターニングされている。このグラフェン層2の形状、寸法等は、適宜設定される。例えばグラフェン層2により、複数のパッド状の電極と、このパッド状の電極間を接続する細線とからなる感知用電極と、この感知用電極に接続する引き出し線とが形成される。この場合、パッド状の電極は例えば平面視0.5〜2.5mm角の寸法に形成される。また、細線及び引き出し線は例えば線幅10〜100μmの範囲に形成される。
【0046】
グラフェン層2は適宜の手法により基材4上に形成される。例えば、金属箔を準備するステップと、金属箔上にグラフェン層2を蒸着法により形成するステップと、グラフェン層2の金属箔とは反対側の面を基材4に接合するステップと、金属箔を除去するステップと、グラフェン層2にパターニング処理を施すステップとを含む方法により、パターニングされているグラフェン層2が基材4上に形成される。
【0047】
金属箔は、グラフェンを形成するための触媒として機能する金属から構成されることが好ましい。このような金属としては、ニッケル、銅、アルミニウム、鉄、コバルト、タングステン等が挙げられる。
【0048】
この金属箔上に、グラフェン層2が形成される。グラフェン層2はグラフェンシートから構成される。グラフェンシートは、例えば熱CVD法やプラズマCVD法などの蒸着法により形成される。この場合、例えばチャンバー内に金属箔を配置し、このチャンバー内に気相状態の炭素源を供給し、この炭素源をチャンバー内で加熱したりプラズマ処理したりする。これにより、炭素源が分解すると共に炭素原子が互いに結合して六角形の平面構造を形成し、これにより金属箔上にグラフェンシートが形成される。
【0049】
グラフェンシートを形成するための炭素源としては、特に制限されないが、一酸化炭素、メタン、エタン、エチレン、エタノール、アセチレン、プロパン、プロピレン、ブタン、ブタジエン、ペンタン、ペンテン、シクロペンタジエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。
【0050】
熱CVD法によりグラフェン層2が形成される場合、チャンバー内の温度、チャンバー内の炭素源の圧力等は適宜調整される。チャンバー内の温度は例えば300〜2000℃の範囲に調整される。またチャンバー内の炭素源の圧力は例えば1.3×10-4〜1.4×104Paの範囲で調整され、好ましくは1.3×10-1〜1.0×105Paの範囲で調整される。
【0051】
熱CVD法によりグラフェン層2が形成される場合には、チャンバー内に炭素源と共に水素が供給されることも好ましい。この場合の水素の量は、チャンバー全体の体積の5体積%以上40体積%以下であることが好ましく、10体積%以上30体積%以下であれば更に好ましく、15体積%以上25体積%以下であれば特に好ましい。
【0052】
グラフェン層2の金属箔とは反対側の面を透明な基材4に接合するにあたっては、適宜の手法が採用され得る。例えば基材4の少なくとも表層が加熱されることで溶融する材質からなる場合には、グラフェン層2と基材4とを熱融着することができる。また、基材4が多層構造を有する場合には、基材4の最外層に配置される樹脂層が未硬化状態又は半硬化状態であるうちに、この樹脂層にグラフェン層2を重ね、この状態で樹脂層を硬化させ、これによりグラフェン層2の金属箔とは反対側の面を透明な基材4に接合してもよい。この場合、未硬化状態又は半硬化状態にある樹脂層は、この樹脂層を構成する組成物の組成に応じ、例えば加熱、加湿、紫外線照射、電子線照射等の処理が施されることで硬化される。
【0053】
このようにグラフェン層2と基材4とが接合された後、グラフェン層2上から金属箔が除去される。金属箔の除去方法としては、特に制限されないが、例えば金属箔全体にウエットエッチング処理を施すことで、金属箔を除去することができる。
【0054】
グラフェン層2は転写法により基材4に接合されてもよい。この場合、例えばまず上記と同様にグラフェン層2が蒸着法等により金属箔上に形成される。このグラフェン層2に転写用のプラスチックフィルム(転写用フィルム)が重ねられ、続いて金属箔が全てエッチング処理等により除去される。これにより、転写用フィルムと、その上に重ねられているグラフェン層2とを備える転写用の部材が形成される。この転写用の部材におけるグラフェン層2が基材4上に重ねられて密着される。更に必要に応じて転写用フィルムが加熱されてから、グラフェン層2から転写用フィルムが剥離されることで、基材4上にグラフェン層2が転写される。
【0055】
基材4上に接合されたグラフェン層2には、パターニング処理が施される。グラフェン層2のパターニング処理にあたっては、公知の適宜の手法が採用される。例えばグラフェン層2に対して部分的に電子線の照射、レーザービームの照射、O2プラズマ処理を施すなどといった、ドライエッチング処理を施すことにより、グラフェン層2を部分的に除去することで、グラフェン層2をパターニングすることができる。
【0056】
グラフェン層2へのパターニング処理は、グラフェン層2が基材4に接合される前に施されてもよい。すなわち、金属箔上のグラフェン層2にパターニング処理が施され、或いは転写用フィルム上のグラフェン層2にパターニング処理が施されてもよい。また、金属箔上にグラフェン層2が形成される際にパターニングされた形状を有するグラフェン層2が形成されてもよい。
【0057】
着色層3は、有色透明の層である。着色層3の色は、第一領域5の透過色と第二領域6の透過色との間における、L*の差ΔL*、a*の差Δa*、及びb*の差Δb*が、{(ΔL*2+(Δa*2+(Δb*21/2≦1.2の関係を満たすように調整される。
【0058】
特に基材2が無色である場合には、着色層3の色はグラフェン層2と同じ色調に調整されることが好ましい。また、基材2が有色である場合、基材2の色を補正するために、着色層3の色と基材2の色とが補色関係になるように着色層3の色が調整されることが好ましい。
【0059】
着色層3は、着色材を含有することが好ましく、すなわち、着色層3を形成するための樹脂組成物は着色材を含有することが好ましい。この場合、着色材によって着色層3が所望の色に着色される。
【0060】
着色材としては、カーボンブラック、合成染料、酸化鉄、黒色チタン化合物、その他金属酸化物等が挙げられる。着色層3は、一種の着色材のみを含有しても、複数種の着色材を含有してもよい。着色層3が含有する着色材の種類、及び着色層3中の着色材の割合は、着色層3に要求される色、透明性等に応じて適宜選択される。基材2が無色である場合には、カーボンブラック等の黒色の着色材のみが使用されてもよい。基材2が有色である場合には、カーボンブラック等の黒色の着色材と共に、基材2の色と補色関係にある色の色調補正用の着色材(例えば赤色の着色材、青色の着色材など)が使用されることが好ましい。色調補正用の着色材としては、無機系顔料、有機系顔料、有機系染料、色素等、一般的な着色材が適宜使用され得る。無機顔料としては、コバルト化合物、鉄化合物、クロム化合物等が挙げられる。有機顔料としては、アゾ系、インドリノン系、キナクリドン系、バット系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系等の顔料が挙げられる。有機系染料及び色素としては、アゾ系、アジン系、アントラキノン系、インジゴイド系、オキサジン系、キノフタロン系、スクワリウム系、スチルベン系、トリフェニルメタン系、ナフトキノン系、ピラロゾン系、ポリメチン系等の着色材が挙げられる。これらの内で、発色性の観点から有機系色素が好適に用いられる。着色層3を形成するための樹脂組成物には、着色層3に要求される着色材の種類、割合等に応じて、着色材が含有される。
【0061】
着色層3を形成するための樹脂組成物が、基材4上のグラフェン層2が形成されている面上に塗布され、続いてこの樹脂組成物が硬化されることにより、着色層3が形成される。この着色層3の厚みは適宜設定されるが、着色層3の硬度が充分に高くなると共に着色層3の耐摩耗性が充分に向上するためには、着色層3の厚みが0.05〜10μmの範囲であることが好ましい。この着色層3の厚みは、基材4の表面から着色層3の表面までの間の寸法である。
【0062】
着色層3は、着色材を含有する反応性硬化型樹脂組成物から形成されることが好ましく、例えば熱硬化型樹脂組成物と活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の少なくとも一方から形成されることが好ましい。
【0063】
熱硬化型樹脂組成物は、例えばフェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等の熱硬化性樹脂を含有する。熱硬化性樹脂と共に、必要に応じて架橋剤、重合開始剤、硬化剤、硬化促進剤、溶剤等が使用されてもよい。このような熱硬化型樹脂組成物が塗布され、続いてこの熱硬化型樹脂組成物が加熱されて熱硬化することで、着色層3が形成され得る。
【0064】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、アクリレート系の官能基を有する樹脂を含むことが好ましい。アクリレート系の官能基を有する樹脂としては、例えば比較的低分子量の多官能化合物の(メタ)アクリレート等のオリゴマー、プレポリマーなどが挙げられる。前記の多官能化合物としては、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等が挙げられる。活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は更に反応性希釈剤を含有することも好ましい。反応性希釈剤としては、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー、並びにトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートの多官能モノマーが挙げられる。
【0065】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が紫外線硬化型樹脂組成物などの光硬化型樹脂組成物である場合には、光硬化型樹脂組成物が光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としてはアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、α−アミロキシムエステル、チオキサントン類などが挙げられる。光硬化型樹脂組成物が光重合開始剤に加えて、或いは光重合開始剤に代えて、光増感剤を含有してもよい。光増感剤としては、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、チオキサントンなどが挙げられる。このような光硬化型樹脂組成物が塗布され、続いてこの光硬化型樹脂組成物に紫外線などの光が照射されて光硬化することで、着色層3が形成され得る。
【0066】
着色層3の屈折率は、着色層3を形成するための樹脂組成物の組成によって容易に調整され得る。また、着色層3が屈折率調整用の粒子を含有すると共にその割合が調整されることで、着色層3の屈折率が調整されることも好ましい。
【0067】
屈折率調整用の粒子の粒径は十分に小さいこと、すなわち屈折率調整用の粒子がいわゆる超微粒子であるが好ましく、この場合、着色層3の光透過性が十分に維持されるようになる。屈折率調整用の粒子の粒径は特に、0.5nm〜200nmの範囲であることが好ましい。この屈折率調整用の粒子の粒径とは、粒子の電子顕微鏡写真画像から算出される投影面積と同一の面積を有する円(面積相当円)の径のことである。
【0068】
屈折率調整用の粒子は、比較的屈折率の高い粒子であることが好ましく、特に屈折率が1.6以上の粒子であることが好ましい。この粒子は、金属や金属酸化物の粒子であることが好ましい。
【0069】
着色層3中の屈折率調整用の粒子の含有量は、着色層3の屈折率が適切な値となるように適宜調整される。特に着色層3中の屈折率調整用の粒子の割合が5〜70体積%となるように調整されることが好ましい。
【0070】
屈折率調整用の粒子の具体例としては、チタン、アルミニウム、セリウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、アンチモンから選ばれる一種あるいは二種以上の酸化物を含有する粒子が挙げられる。酸化物の具体例としては、ZnO(屈折率1.90)、TiO2(屈折率2.3〜2.7)、CeO2(屈折率1.95)、Sb25(屈折率1.71)、SnO2、ITO(屈折率1.95)、Y23(屈折率1.87)、La23(屈折率1.95)、ZrO2(屈折率2.05)、Al23(屈折率1.63)等が挙げられる。
【0071】
着色層3には帯電防止性能が付与されていることも好ましい。この場合、透明導電性部材1の帯電が抑制され、また透明導電性部材1へ埃の付着が抑制される。そのためには、着色層3が導電性粒子を含有することが好ましい。導電性粒子は同時に屈折率調整用の粒子としても機能してもよい。導電性粒子はナノ粒子であることが好ましく、特に粒径が0.5〜200nmの超微粒子であることが好ましい。導電性粒子の粒径も面積相当円の径である。導電性粒子の材質としては導電性を有する適宜の金属、金属酸化物等が挙げられ、具体的にはインジウム、亜鉛、錫、アンチモンから選ばれる一種又は二種以上の金属の酸化物が挙げられ、更に具体的には酸化インジウム(ITO)、酸化錫(SnO2)、アンチモン/錫酸化物(ATO)、鉛/チタン酸化物(PTO)、アンチモン酸化物(Sb25)等が挙げられる。
【0072】
着色層3に十分な帯電防止性能が付与されるためには、導電性粒子を含有することで着色層3のシート抵抗が1015Ω/□以下となることが好ましい。着色層3のシート抵抗は小さいほど帯電防止性が向上するので、下限は特に設定されないが、シート抵抗を小さくするのには限界があるため、着色層3のシート抵抗の実質的な下限は106Ω/□である。
【0073】
着色層3中の導電性粒子の含有量は、着色層3の帯電防止性能が適切な程度となるように適宜調整されるが、特に着色層3中の導電性粒子の割合が5〜70質量%となるように調整されることが好ましい。
【0074】
着色層3は、次に示すような、着色材及びバインダー材料、並びに必要に応じて使用される屈折率調整用の粒子を含有する樹脂組成物から形成されてもよい。バインダー材料と屈折率調整用の粒子とが併用される場合、両者の組み合わせ、配合比等により着色層3の屈折率が適宜調整される。この着色層3は、樹脂組成物にバインダー材料の性状に応じて加熱、加湿、紫外線照射、電子線照射等の処理が施されることで樹脂組成物が硬化することにより、形成され得る。
【0075】
バインダー材料としては、シリコンアルコキシド系樹脂、飽和炭化水素及びポリエーテルの少なくともいずれかを主鎖とするポリマー(例えばUV硬化型樹脂組成物、熱硬化型樹脂組成物等)、ポリマー鎖中にフッ素原子を含む単位を含む樹脂などが挙げられる。
【0076】
シリコンアルコキシド系樹脂としては、RmSi(OR´)nで表されるシリコンアルコキシド(R、R´は炭素数1〜10のアルキル基、m+n=4、m及びnはそれぞれ整数。)の部分加水分解縮合物であるオリゴマー及びポリマーが、挙げられる。シリコンアルコキシドとしては、具体的にはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラペンタエトキシシラン、テトラペンタ−iso−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−ブトキシシラン、テトラペンタ−sec−ブトキシシラン、テトラペンタ−tert−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルプロポキシシラン、ジメチルブトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン等が例示される。
【0077】
バインダー材料として、熱又は活性エネルギー線によって反応架橋する複数の基(重合性二重結合基等)を有する反応性有機珪素化合物が用いられてもよい。この有機珪素化合物の分子量は5000以下であることが好ましい。このような反応性有機珪素化合物としては、片末端ビニル官能性ポリシラン、両末端ビニル官能性ポリシラン、片末端ビニル官能ポリシロキサン、両末端ビニル官能性ポリシロキサン、並びにこれらの化合物を反応させて得られるビニル官能性ポリシラン及びビニル官能性ポリシロキサン等が挙げられる。これら以外にも、反応性有機珪素化合物としては、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシシラン化合物が挙げられる。
【0078】
屈折率調整用の粒子としては、比較的低屈折率の粒子が使用されることが好ましい。屈折率調整用の粒子の材質としては、シリカ、フッ化マグネシウム、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム等が挙げられる。屈折率調整用の粒子が中空粒子を含むことが好ましい。中空粒子とは外殻によって包囲された空洞を有する粒子である。中空粒子の屈折率は1.20〜1.45であることが好ましい。
【0079】
屈折率調整用の粒子には、必要に応じて、バインダー材料との濡れ性を向上するための表面処理が施されていることが好ましい。
【0080】
屈折率調整用の粒子の粒径は十分に小さいこと、すなわち屈折率調整用の粒子がいわゆる超微粒子であることが好ましく、この場合、着色層3の光透過性が十分に維持されるようになる。屈折率調整用の粒子の粒径は特に、0.5nm〜200nmの範囲であることが好ましい。この屈折率調整用の粒子の粒径とは、粒子の電子顕微鏡写真画像から算出される投影面積と同一の面積を有する円(面積相当円)の径のことである。
【0081】
着色層3中の屈折率調整用の粒子の含有量は、着色層3の屈折率の値が適切な値となるように適宜調整されるが、特に着色層3中の屈折率調整用の粒子の割合が20〜99体積%となるように調整されることが好ましい。
【0082】
樹脂組成物は、更に撥水、撥油性材料を含有してもよい。撥水、撥油性材料としては、一般的なワックス系の材料等が使用され得る。
【0083】
図2に、本実施形態による透明導電性部材1の第二の態様を示す。本態様では、基材4、着色層3、グラフェン層2が、この順に重なっている構造を有する。すなわち、基材4上には着色層3が積層しており、更にこの着色層3の基材4とは反対側の表面上にパターニングされた形状を有するグラフェン層2が積層している。これにより、透明導電性部材1には、基材4、着色層3、グラフェン層2がこの順に重なっている領域からなる第一領域5と、着色層3と基材4とが重なっていると共にグラフェン層2は重なっていない領域からなる第二領域6とが、形成されている。
【0084】
基材4としては、第一の態様と同様の構成のものが用いられ得る。
【0085】
着色層3は、有色透明の層である。着色層3の色は、第一の態様の場合と同様に、透明導電性基材1における第一領域5の透過色と第二領域6の透過色との間における、L*の差ΔL*、a*の差Δa*、及びb*の差Δb*が、{(ΔL*2+(Δa*2+(Δb*21/2≦1.2の関係を満たすように調整される。着色層3の構成は、第一の態様の場合と同様である。
【0086】
基材4上に着色層3を形成するための樹脂組成物が塗布され、続いてこの樹脂組成物が硬化されることにより、着色層3が形成される。着色層3を形成するための組成物としても、第一の態様と同様のものが用いられ得る。この着色層3の厚みは適宜設定されるが、着色層3の硬度が充分に高くなると共に着色層3の耐摩耗性が充分に向上するためには、着色層3の厚みが0.05〜10μmの範囲であることが好ましい。
【0087】
グラフェン層2は、第一の態様の場合と同様に、グラフェンシートから構成される。グラフェン層2は単層のグラフェンシートから構成されてもよいが、複数層のグラフェンシートから構成されてもよい。グラフェン層2は1層以上300層以下のグラフェンシートからなることが好ましく、1層以上15層以下のグラフェンシートからなることが特に好ましい。
【0088】
このグラフェン層2はパターニングされている。このグラフェン層2の形状、寸法等は、適宜設定される。例えばグラフェン層2により、複数のパッド状の電極と、このパッド状の電極間を接続する細線とからなる感知用電極と、この感知用電極に接続する引き出し線とが形成される。この場合、パッド状の電極は例えば平面視0.5〜2.5mm角の寸法に形成される。また、細線及び引き出し線は例えば線幅10〜100μmの範囲に形成される。
【0089】
グラフェン層2は適宜の手法により着色層3上に形成される。例えば、金属箔を準備するステップと、金属箔上にグラフェン層2を蒸着法により形成するステップと、グラフェン層2の金属箔とは反対側の面を着色層3に接合するステップと、金属箔を除去するステップと、グラフェン層2にパターニング処理を施すステップとを含む方法により、パターニングされているグラフェン層2が着色層3上に形成される。
【0090】
金属箔は、グラフェンを形成するための触媒として機能する金属から構成されることが好ましい。このような金属としては、ニッケル、銅、アルミニウム、鉄、コバルト、タングステン等が挙げられる。この金属箔上に、第一の態様の場合と同様の方法により、グラフェン層2が形成される。
【0091】
グラフェン層2の金属箔とは反対側の面を着色層3に接合するにあたっては、適宜の手法が採用され得る。例えば着色層3が加熱されることで溶融する材質からなる場合には、グラフェン層2と着色層3とを熱融着することができる。また、着色層3が未硬化状態又は半硬化状態であるうちに、この着色層3にグラフェン層2を重ね、この状態で着色層3を硬化させ、これによりグラフェン層2の金属箔とは反対側の面を着色層3に接合してもよい。この場合、未硬化状態又は半硬化状態にある着色層3は、この着色層3を構成する組成物の組成に応じ、例えば加熱、加湿、紫外線照射、電子線照射等の処理が施されることで硬化される。
【0092】
このようにグラフェン層2と着色層3とが接合された後、グラフェン層2上から金属箔が除去される。金属箔の除去方法としては、特に制限されないが、例えば金属箔全体にウエットエッチング処理を施すことで、金属箔を除去することができる。
【0093】
グラフェン層2は転写法により着色層3に接合されてもよい。この場合、例えばまず上記と同様にグラフェン層2が蒸着法等により金属箔上に形成される。このグラフェン層2に転写用のプラスチックフィルム(転写用フィルム)が重ねられ、続いて金属箔が全てエッチング処理等により除去される。これにより、転写用フィルムと、その上に重ねられているグラフェン層2とを備える転写用の部材が形成される。この転写用の部材におけるグラフェン層2が着色層3上に重ねられて密着される。更に必要に応じて転写用フィルムが加熱されてから、グラフェン層2から転写用フィルムが剥離されることで、着色層3上にグラフェン層2が転写される。
【0094】
続いて、グラフェン層2にパターニング処理が施される。グラフェン層2のパターニング処理にあたっては、第一の態様の場合と同様に、公知の適宜の手法が採用される。また、第一の態様の場合と同様に、グラフェン層2へのパターニング処理は、グラフェン層2が着色層3に接合される前に施されてもよい。
【実施例】
【0095】
[実施例1]
基材としては、ほぼ無色であるが僅かに黄色がかっているPETフィルム(東レ株式会社製、商品名ルミラーU46、厚み125μm)を準備した。
【0096】
また、UV硬化性ハードコート樹脂(DIC株式会社製、品番7150F、固形分62.5質量%)6.0質量部、メチルエチルケトン93.1質量部、カーボンブラック(三菱化学株式会社製、平均粒径13nm)0.9質量部を配合することで、着色層を形成するための樹脂組成物を調製した。
【0097】
また、厚み12μmの銅箔を準備し、この銅箔上に熱CVD法によりグラフェン層を形成した。このとき、銅箔をチャンバー内に配置し、このチャンバー内にアセチレンガスを200sccm(3.38×10-2Pa・m3/sec)の一定速度で投入しつつ、銅箔を400℃で20分間熱処理することにより、銅箔上にグラフェンを生成させた。続いて、銅箔を自然冷却することにより、グラフェンを均一に配列した状態で成長させた。冷却速度は600℃/分であった。これにより、銅箔上にグラフェン層を形成した。
【0098】
この銅箔上のグラフェン層を転写用フィルム(日東電工株式会社製の熱剥離フィルム、品名リバアルファ No.3195)に重ねて密着させ、続いて銅箔を全てエッチングにより除去した。続いて、このグラフェン層に対して、酸素プラズマによるドライエッチング処理を施すことで、グラフェン層を平面視1.4mm×1.4mmの寸法を有する複数のパット状の形状にパターニングした。
【0099】
続いてグラフェン層を基材上に重ね、この状態で転写用フィルムを120℃で5分間加熱してから、転写用フィルムを剥離し、これにより基材上にグラフェン層を転写した。
【0100】
続いて、基材におけるグラフェン層が形成されている表面上に着色層を形成するための樹脂組成物を塗布し、更にこの樹脂組成物を80℃で2分間加熱することで乾燥させてから、更にこの樹脂組成物に紫外線を窒素雰囲気下で500mJ/cm2の条件で照射することで硬化させ、これにより、厚み0.2μmの着色層を形成した。これにより、透明導電性部材を得た。
【0101】
[実施例2]
基材としては、ほぼ無色であるが僅かに黄色がかっているPETフィルム(東レ株式会社製、商品名ルミラーU46、厚み125μm)を準備した。
【0102】
また、UV硬化性ハードコート樹脂(DIC株式会社製、品番7150F、固形分62.5質量%)50.8質量部、メチルエチルケトン0.6質量部、カーボンブラック(三菱化学株式会社製、平均粒径13nm)48.6質量部を配合することで、着色層を形成するための樹脂組成物を調製した。
【0103】
この樹脂組成物を、基材上に塗布し、更にこの樹脂組成物を80℃で2分間加熱することで乾燥させてから、更にこの樹脂組成物に紫外線を500mJ/cm2の条件で照射することで硬化させ、これにより、厚み3μmの着色層を形成した。
【0104】
また、厚み12μmの銅箔を準備し、この銅箔上に熱CVD法によりグラフェン層を形成した。このとき、銅箔をチャンバー内に配置し、このチャンバー内にアセチレンガスを200sccm(3.38×10-2Pa・m3/sec)の一定速度で投入しつつ、銅箔を400℃で20分間熱処理することにより、銅箔上にグラフェンを生成させた。続いて、銅箔を自然冷却することにより、グラフェンを均一に配列した状態で成長させた。冷却速度は600℃/分であった。これにより、銅箔上にグラフェン層を形成した。
【0105】
この銅箔上のグラフェン層を転写用フィルム(日東電工株式会社製の熱剥離フィルム、品名リバアルファ No.3195)に重ねて密着させ、続いて銅箔を全てエッチングにより除去した。続いて、このグラフェン層に対して、酸素プラズマによるドライエッチング処理を施すことで、グラフェン層を平面視1.4mm×1.4mmの寸法を有する複数のパット状の形状にパターニングした。
【0106】
続いてグラフェン層を着色層上に重ね、この状態で転写用フィルムを120℃で5分間加熱してから、転写用フィルムを剥離し、これにより着色層上にグラフェン層を転写した。これにより、透明導電性部材を得た。
【0107】
[実施例3]
UV硬化性ハードコート樹脂(DIC株式会社製、品番7150F、固形分62.5質量%)50.8質量部、メチルエチルケトン0.6質量部、カーボンブラック(三菱化学株式会社製、平均粒径13nm)48.4質量部、青色の染料(保土ヶ谷化学工業株式会社製、商品名SPLON BLUE GNH)0.02質量部を配合することで、着色層を形成するための樹脂組成物を調製した。
【0108】
着色層を形成するためにこの樹脂組成物を用いたこと以外は、実施例2と同じ方法及び条件で、透明導電性部材を得た。尚、本実施例では、基材の黄色がかった色を補正するために、補色関係にある青色の染料を用いたものである。
【0109】
[比較例1]
着色層を形成しない以外は実施例1と同じ方法及び条件で、透明導電性部材を得た。
【0110】
[評価試験]
(透過色)
各実施例で得られた透明導電性部材の第一領域及び第二領域の各透過色、並びに比較例1で得られた透明導電性部材の第一領域及び第二領域に相当する領域の各透過色の、CIE1976(L*,a*,b*)色空間の座標、コニカミノルタセンシング株式会社製の分光測色計(型番CM−3600d)を用いて測定し、その結果に基づいて、第一領域と第二領域との間のL*の差ΔL*、a*の差Δa*、及びb*の差Δb*を算出し、更にこれに基づいて、ΔE={(ΔL*2+(Δa*2+(Δb*21/2の値を算出した。
【0111】
(グラフェン層の視認性)
各実施例及び比較例で得られた透明導電性部材を目視で観察し、グラフェン層が視認しやすいか否かを判定した。
【0112】
(鉛筆硬度)
各実施例で得られた透明導電性部材における着色層の鉛筆硬度、並びに比較例1で得られた透明導電性部材における基材の鉛筆硬度を、JIS K5600による鉛筆硬度試験により評価した。10回の試験のうち8回以上の場合に着色層に傷が生じないことを、鉛筆硬度の判定基準とした。
【0113】
(耐摩耗性)
各実施例で得られた透明導電性部材における着色層上、並びに比較例1で得られた透明導電性部材における基材上に、#0000のスチールウールを載せ、このスチールウールに約49kPa(500g/cm2)の荷重をかけながら、このスチールウールを着色層上又は基材上で3000mm/minの速度で10往復させた。続いて、各実施例における着色層並びに比較例1における基材を目視で観察した。その結果を下記表に示す。
【0114】
【表1】

【符号の説明】
【0115】
1 透明導電性部材
2 グラフェン層
3 着色層
4 基材
5 第一領域
6 第二領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェン層と、前記グラフェン層に重なっている着色層と、前記グラフェン層及び前記着色層を支持する透明な基材とを備え、
前記グラフェン層と前記着色層と前記基材とが重なっている領域からなる第一領域と、前記着色層と前記基材とが重なっていると共に前記グラフェン層は重なっていない領域からなる第二領域とが形成されており、
前記第一領域の透過色と前記第二領域の透過色との間における、L*の差ΔL*、a*の差Δa*、及びb*の差Δb*が、下記式(1)に示す関係を満たす透明導電性部材。
{(ΔL*2+(Δa*2+(Δb*21/2≦1.2 …(1)
【請求項2】
前記グラフェン層が前記基材と前記着色層との間に介在している請求項1に記載の透明導電性部材。
【請求項3】
前記グラフェン層と前記基材との間に前記着色層が介在している請求項1に記載の透明導電性部材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−89581(P2013−89581A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232407(P2011−232407)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】