説明

透明導電膜の製造方法

【課題】大面積で導電性が高く、基板との密着性が高い透明導電膜を、低コストで、連続的に、簡易に生産効率よく製造することができる透明導電膜の製造方法や、この方法を用いて製造される透明導電膜を有する透明導電性部材を提供する。
【解決手段】透明導電材料微粒子にキャリアガスを混合してエアロゾルを形成する工程(I)、該エアロゾルをノズルから噴射して基板に衝突させ該基板上に透明導電膜を形成する工程(II)、及び該透明導電膜にマイクロ波又はプラズマの少なくとも1種を照射する工程(III)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電材料のエアロゾルを用いて基板上に透明導電膜を形成する透明導電膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽電池、OA機器及び携帯電話等の液晶ディスプレイ、フラットパネルディスプレイ等に用いる電極として、透明基板上に、光に対する透明性を有し、且つ適度な導電性を有する透明導電膜を形成した透明導電性部材が用いられている。透明導電性部材の透明導電膜は、一般的に錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)又はアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)等の透明導電材料を用いて、イオンプレーティング加工法、スパッタリング法等の物理蒸着法や、高蒸気圧を有する原材料ガスの熱分解による化学蒸着法(CVD法)、塗布法等により、基板上に形成されている。
【0003】
例えば特許文献1には、高密度のAZO焼結体をターゲットとしてスパッタリング法によりAZO透明導電膜を製造する方法が記載されている。この製造方法によって、高い導電性を有し透明性に優れた透明導電膜を製造することができる。しかし、スパッタリング法は一般的に高真空条件を要すること、大面積の膜の製造には適さないこと、また大掛かりな装置を要する等の問題がある。
【0004】
また特許文献2には、水と可溶な液体を主成分とする分散媒に透明導電材料微粒子を分散した塗料を支持体上に塗布、乾燥し、微粒子含有層を形成し、その後、前記微粒子含有層を圧縮し微粒子の圧縮層を形成する透明導電膜の製造方法の発明が開示されている。この製造方法は、簡易で生産性が高く、低コストで透明導電膜を製造することができる。しかし、透明電極等に要求されるような高い導電性を有する透明導電膜を得ることは困難である。
【0005】
一方、セラミックス等の脆性材料の成膜方法としてエアロゾルデポジション法(AD法)が開発され注目されている。この方法は、脆性材料の微粒子の分散液を用いず、微粒子を固体のまま直接キャリアガスと混合してエアロゾル化し、ノズルを通して高速で噴射して基板上に衝突させて被膜を形成する方法である。この方法を適用した透明導電膜の製造方法として、特許文献3には、透明導電材料の微粒子を作成する工程、微粒子をエアロゾル化する工程、エアロゾルを基板に吹き付ける工程を含む透明導電膜の製造方法が記載されている。この方法によれば、ITO等の透明導電膜を簡単な装置で製造できる。しかし、透明導電膜の基板に対する密着性については課題がある。
【特許文献1】特開平7−258836号公報
【特許文献2】特開2001−321717号公報
【特許文献3】特開2001−226780号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の事情を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、大面積で導電性が高い透明導電膜を、低コストで、連続的に、簡易に生産効率よく製造することができる透明導電膜の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、透明導電材料微粒子にキャリアガスを混合してエアロゾルを形成する工程(I)、該エアロゾルをノズルから噴射して基板に衝突させ該基板上に透明導電膜を形成する工程(II)、及び該透明導電膜にマイクロ波又はプラズマの少なくとも1種を照射する工程(III)を含むことを特徴とする透明導電膜の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の透明導電膜の製造方法によれば、大面積で導電性が高い透明導電膜を、低コストで、連続的に、簡易に生産効率よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の透明導電膜の製造方法は、透明導電材料微粒子にキャリアガスを混合してエアロゾルを形成する工程(I)、該エアロゾルをノズルから噴射して基板に衝突させ該基板上に透明導電膜を形成する工程(II)、及び該透明導電膜にマイクロ波又はプラズマの少なくとも1種を照射する工程(III)を含むことを特徴とする。
【0010】
[工程(I)]
本発明の透明導電膜の製造方法における、工程(I)において用いる透明導電材料微粒子は、特に限定されるものではなく、例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)等の酸化物半導体微粒子を挙げることができる。これらの酸化物半導体微粒子は、例えば気相法や液相法、固相法等を使用して製造することができる。気相法としては、例えば、原料の金属を加熱して蒸発させ、アルゴン、ヘリウム等の不活性雰囲気ガス中で凝集させて酸化物半導体微粒子を製造する蒸発凝縮法や、蒸気圧の高い金属塩化物、揮発性オキシ塩化物、金属アルコキシド、有機金属化合物等を原料化合物として使用し、高温で加熱分解させて酸化物半導体微粒子とする気相反応法等を挙げることができる。また液相法としては、例えば、金属塩水溶液又は金属アルコキシドから化学反応により酸化物半導体を固体微粒子として析出させる化学沈殿法、金属アルコキシドの加水分解と重縮合反応から微粒子を得るアルコキシド法、高温高圧の水熱条件を利用する水熱合成法等を挙げることができる。また固相法としては、例えば、原料の金属酸化物粉末を混合して分散した後、焼成を行い、さらに粉砕して酸化物半導体微粒子を製造する方法等を挙げることができる。固相法における焼成の温度は材質により適宜選択することができるが、例えば、酸化物半導体の場合は、800〜1200℃が好ましく、更に、好ましくは850〜1050℃である。この範囲の焼成温度で焼成した透明導電材料微粒子を用いれば、優れた導電性を有する透明導電膜を形成することができる。
【0011】
透明導電材料微粒子の平均粒子径は特に限定されるものではない。好ましくは体積基準による50%平均粒子径が0.5〜3.0μmであり、より好ましくは1.0〜1.5μmである。平均粒子径がこの範囲であれば、優れた導電性、膜硬度を有する透明導電膜を形成することができる。透明導電材料微粒子を上記の範囲の平均粒子径を有するように調製する方法としては、例えば、原料物質の粒子径を選択する方法、反応速度を調整する方法、得られた透明導電材料微粒子を分級する方法等を挙げることができる。
【0012】
ここで、透明導電材料微粒子の体積基準による50%平均粒子径は、レーザー回折散乱法によって測定される体積基準粒度分布のメジアン径(D50)であって、例えば日機装社製のマイクロトラック粒度分布測定装置を用いて測定した測定値を採用することができる。
【0013】
また、透明導電材料微粒子の形状は特に限定されるものではないが、粒子の形状が非球形で、且つ、少なくとも角を1個以上有する不定形形状であることが好ましい。このような形状であれば、優れた導電性、膜硬度を有する透明導電膜を形成することができる。微粒子の形状は走査型電子顕微鏡(SEM)等により確認することができる。
【0014】
上記透明導電材料微粒子は高い導電性を有することが、得られる透明導電膜において優れた導電性を有するため好ましい。
【0015】
かかる導電性は、2400ソースメーター(ケースレイ社製)を用い、JIS K7194に準拠する四端針法により測定した測定値を採用することができる。
【0016】
工程(I)において、上記透明導電材料微粒子とキャリアガスの混合方法としては、例えば、エアロゾル発生器を用いる方法を挙げることができる。エアルゾル発生器を用いる混合方法としては、具体的には、透明導電性微粒子を収容したエアロゾル発生器にキャリアガスを導入し、透明導電材料微粒子を巻き上げ、微粒子とキャリアガスとを混合しエアロゾルを形成し、形成されたエアロゾルを導出する方法を例示することができる。上記エアロゾル発生器の容量、エアロゾル発生器へのキャリアガスの導入量、エアロゾル発生容器からの導出量は、安定した透明導電材料微粒子のエアロゾルを形成可能な範囲で、適宜選択することができる。具体的には、キャリアガスの導入出量として、例えば、6〜15L/分を挙げることができる。ここで、エアロゾルは、キャリアガス中に透明導電材料微粒子が分散されたものである。
上記キャリアガスは、透明導電材料微粒子や形成した透明導電膜の性能に影響を与えないものが好ましく、具体的には、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、乾燥空気等を使用することができる。これらキャリアガスは単独で又は2種以上混合して使用することができる。
【0017】
工程(I)は、エアロゾル発生器中に装填する透明導電材料微粒子に対し、凝集を抑制する工程を含むことが好ましい。透明導電材料微粒子の凝集を抑制する工程としては、振動、電界、加熱等により透明導電材料微粒子に刺激を与える工程を挙げることができる。このような刺激を与えることにより、透明導電材料微粒子の粒子径を一定範囲に保持したエアロゾルを形成することができる。
【0018】
更に、工程(I)において、形成したエアロゾルを分級器を用いて分級し、また、解砕器を用いて解砕してもよい。これにより、エアロゾル中に含まれる透明導電材料微粒子を、透明導電膜の形成に有効な粒子径、粒度分布を有するものとし、安定したエアロゾルを供給することにより、均一な導電性を有する透明導電膜を形成することができる。
【0019】
[工程(II)]
本発明の透明導電膜の製造方法における工程(II)において、透明導電膜の形成方法としては、例えば、成膜装置を用いる方法を挙げることができる。成膜装置を用いる透明導電膜の形成方法は、具体的には、工程(I)において形成されたエアロゾルをノズルから噴射し、基板上にエアロゾルを衝突させて透明導電膜を形成する方法である。
【0020】
上記ノズルは、特に限定されるものではなく均一な透明導電膜の形成が可能なノズルであればよく、所定の噴射速度を容易に得ることができる点からラバルノズルが好ましい。ノズルの開口形状も、円形のみでなく、基板の幅方向に対応したスリット状であってもよい。ノズルの開口が円形の場合、例えば、噴射速度を500〜700m/secとする場合、0.5〜1mmの範囲の口径を有することが好ましい。
【0021】
ノズルは、1つのみでなく2以上設けられていてもよい。複数のノズルを設置する場合は、複数のノズルは1つのエアロゾル発生器から分岐して設けてもよいが、各ノズルはそれぞれ一つのエアロゾル発生器に対応して設けてもよい。複数のノズルが設置された成膜装置は、成膜を高速で行うことができ、大面積の透明導電膜の製造が容易となる点で好ましい。
【0022】
このようなノズルから噴射されるエアロゾルの衝突によって透明導電膜が形成される基板は、ノズルとの距離を例えば、0.5〜30mmとして配置されることが好ましく、10〜20mm間隔を保持して配置されることがより好ましい。基板とノズル間距離をこの範囲とすることにより、エアロゾルの基板への衝突速度の調整が容易となり、また、透明導電膜の形成に関与せず基板から反跳する粒子により透明導電膜の形成が阻害されるのを抑制することができる。
【0023】
上記基板の材質としては、例えば、ガラス、セラミック、石英、サファイア、シリコンウエハー、プラスチック等を挙げることができる。
【0024】
エアロゾルを基板へ衝突させる際、エアロゾルが衝突する基板上の位置を順次移動させ、エアロゾル中の透明導電材料微粒子が基板の新たな表面に順次付着、又は基板表面と反応し、基板上に透明導電膜を順次形成可能とするため、基板とノズルとを相対的に走査させることが好ましい。基板とノズルの相対的移動方法としては、具体的には、基板を載置する載置台を一定方向(X方向)に移動させ、ノズルを固定又は載置台の移動方向に対して垂直方向(Y方向)に移動させる方法等を挙げることができる。ノズルと基板の相対移動により透明導電膜の連続製造、大面積の製造を容易にすることができる。
【0025】
ノズルからのエアロゾルの噴射速度は、特に限定されるものではなく、エアロゾルの噴出量、ノズル形状、ノズルと基板の距離、ノズル及び/又は基板の走査速度、並びに形成膜厚等に応じて適宜選択することができる。好ましい噴射速度は100〜1,000m/secの範囲であり、より好ましくは500〜700m/secの範囲である。この範囲であれば、緻密で透明性があり高い導電性の透明導電膜を形成することができる。
【0026】
エアロゾルの噴射方向と基板表面の角度は、特に限定されるものではないが、エアロゾルの噴射方向と基板表面のなす角度は、基板表面の垂直方向に対して0°〜10°の範囲であることが好ましく、より好ましくは基板に対して垂直である。
【0027】
上記基板上に透明導電膜を形成する際、所定の雰囲気下で行うことができる。例えば、1,000〜50,000Pa、約20℃程度に調整する。成膜室内の圧力が上記範囲であると、導電性、膜硬度が高い透明導電膜の連続生産を可能とする。
【0028】
工程(II)において形成する透明導電膜の膜厚は、特に限定されるものではないが、150〜250nmの範囲が、優れた透明性、導電性及び膜硬度を有することから好ましい。
【0029】
[工程(III)]
本発明の透明導電膜の製造方法における工程(III)は、マイクロ波による誘電加熱、又はプラズマ照射により、工程(II)において形成された透明導電膜の導電性を高くすることを目的として行う工程である。マイクロ波による誘電加熱、又はプラズマ照射により、工程(II)において形成された透明導電膜の導電性が高くなるのは、焼結によるものと推定できる。
【0030】
工程(III)におけるマイクロ波照射による透明導電膜の誘電加熱は、マイクロ波照射装置を用いて行うことができ、マイクロ波の電界中に配置した誘電体である透明導電膜が、電界の作用により、その内部に存在する荷電体を分極させ、極性双極子が高周波交流の電界の反転に追従運動する結果の摩擦熱による加熱であり、赤外線加熱、抵抗加熱、誘導加熱等の他の加熱手段と比較して急速加熱が可能なため、製造に要する時間の短縮を図ることができる。また、マイクロ波による誘電加熱は他の加熱手段と比較して被加熱物を選択的に加熱させ得るため、基板の温度上昇を抑制し透明導電膜を選択的に加熱することができ、耐熱性に劣るプラスチックやガラス等の基板上に形成された透明導電膜にも適用することができる。さらに、マイクロ波照射は高真空条件を要しないため、マイクロ波照射装置への基板の搬入出は、大気圧下で行うことができ、バッファ室を介することなく自動搬送装置等を用いて連続的に行うことができる。
【0031】
上記マイクロ波照射に用いるマイクロ波の周波数は特に限定されるものではなく、例えば、周波数2.45GHzを挙げることができ、照射時間としては、例えば、30秒〜3分を挙げることができる。
【0032】
工程(III)における透明導電膜のプラズマ照射は、プラズマ照射装置を用いて行うことができ、マイクロ波照射と同様に透明導電膜の急速加熱が可能であり、製造に要する時間の短縮を図ることができる。また、基板の温度上昇を抑制し透明導電膜を表面から選択的に加熱することができ、耐熱性に劣るプラスチックやガラス等の基板上に形成された透明導電膜にも適用することができる。さらに、常圧プラズマ照射は高真空条件を要しないため、プラズマ照射装置への基板の搬入出は、大気圧下で行うことができ、バッファ室を介することなく自動搬送装置等を用いて連続的に行うことができることから、好ましい。
【0033】
このような透明導電膜のプラズマ照射に用いるプラズマとしては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン等の希ガスや、窒素、酸素等をプラズマ源ガスとして用い、放電によりこれらを電離、イオン化したものを用いることができる。これらのうち、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン等の希ガスをプラズマ源ガスとして用いることが、得られる透明導電膜の導電性が高く、好ましい。これらのプラズマの透明導電膜への照射時間としては、例えば、30秒〜3分を挙げることができる。
【0034】
また、上記常圧プラズマ照射を行う場合、プラズマ処理室内の圧力としては、具体的には、例えば、10×103〜105×103Paを挙げることができ、90×103〜103×103Paの範囲が、圧力調整が容易であることから装置の構成が簡便にできるため好ましい。
【0035】
工程(III)における透明導電膜へのマイクロ波照射やプラズマ照射はいずれか一方を選択して行ってもよく、また、両者を行ってもよい。
【0036】
更に、上記工程(II)及び工程(III)において、基板を自動搬送し、基板上に透明導電膜を形成する工程(II)、透明導電膜にマイクロ波照射やプラズマ照射する工程(III)を連続的に行うことが、透明導電膜を効率よく製造することができるため、好ましい。例えば、工程(II)において、1対のプーリーに懸架された搬送ベルト等の自動搬送装置を用い、搬送ベルト上に載置した基板を、ノズル下を通過させ、基板上に透明導電膜を形成する。この際、自動搬送装置の搬送速度は、工程(II)による透明導電膜の形成速度、ノズルの相対走査速度、透明導電膜の形成膜厚等に応じて適宜選択される。続いて、透明導電膜が形成された基板を、工程(II)に用いた自動搬送装置により、又は他の自動搬送装置により、マイクロ波照射装置又はプラズマ照射装置へ搬送し、マイクロ波照射やプラズマ照射を行う。この際、工程(II)における透明導電膜の形成を大気圧条件又は常圧条件とし、更に、工程(III)における常圧プラズマ照射を選択することで、高真空条件を要しない製造方法とすることができるため、簡易な方法で生産性が高く、連続生産が可能で、かつ大面積の透明導電膜を製造することが可能となる。
【0037】
本発明の透明導電膜の製造方法を適用した透明導電膜作成装置の一例として、図1に示すものを挙げることができる。図1に示す透明導電膜作成装置には、主として、エアロゾル発生器3と、成膜装置6と、マイクロ波照射装置20とが備えられる。
【0038】
エアロゾル発生器3には底部に接続されるガス搬送管2を介してキャリアガスを収納するガスボンベ1が接続され、ガスボンベから所定量のキャリアガスがエアロゾル発生器3に供給されると、内部に装填する透明導電材料微粒子Pとキャリアガスとが混合され、エアロゾルが形成される。更に、エアロゾル発生器の上部には搬送管4が接続され、エアロゾル発生器内で形成されたエアロゾルが搬送管4から導出されるようになっている。
【0039】
このようなエアロゾル発生器3には、内部に装填する透明導電材料微粒子の粒子径を一定範囲に保持するため、必要に応じて、透明導電材料微粒子に刺激を与えて透明導電材料微粒子の凝集を抑制する、振動装置、電界発生装置、加熱装置等が設けられていてもよい。また、エアロゾル発生器3や、搬送管4には、形成されたエアロゾル中に含まれる所定の粒子径以上の粒子径を有する透明導電材料微粒子を除去する分級器や、また、所定の粒子径以上の粒子径の透明導電材料微粒子を解砕する解砕器を設けていてもよい。
【0040】
成膜装置6には、搬送管4を介して供給されるエアロゾルを噴射するノズル5が搬送管4の先端に設けられる。また、透明導電膜を形成する基板7を載置する搬送ベルト12と、搬送ベルト12を懸架してこれをエンドレスに移動させるプーリー11とを有する自動搬送装置10aが備えられる。ノズル5は基板の幅のスリット状の開口を有するものであっても、また、搬送ベルトの走行方向と垂直方向に移動してエアノズルを噴射するものであってもよい。また、ノズルは一つのみ図示されているが、複数のノズルが設けられていてもよい。更に、成膜装置6には、必要に応じて、真空ポンプ9や、温調装置(図示せず)が設けられ、内部を大気圧又は減圧に設定し、所望の温度に設定可能となっている。
【0041】
搬送ベルト上に載置されて、ノズル5と所定の間隔を保持して基板を搬送する間に、ノズル5からエアロゾルを噴射させ基板に衝突させ、基板上に透明導電膜が形成されるようになっている。
【0042】
マイクロ波照射装置20には、マグネトロン等のマイクロ波発生装置22を備えたマイクロ波処理室21が設けられる。マイクロ波発生装置としては、例えば、円筒形の陽極とその中心軸に配置された陰極とを備え、この中心軸に平行に磁場を形成するフェライト磁石等が設けられ、陰極の周囲に生じる電流を利用してマイクロ波の周波数で振動する電力を発生させるものを挙げることができる。マイクロ波照射装置には、マイクロ波処理室内を通過する搬送ベルト12bとこれを懸架してエンドレスに移動させるプーリー11bとを有する自動搬送装置10bが備えられ、透明導電膜が形成された基板を、成膜装置の自動搬送装置10aから受け取り、搬送ベルト12b上に載置してマイクロ波処理室を通過させる間に、基板上の透明導電膜がマイクロ波照射を受けるようになっている。マイクロ波処理室は、真空ポンプ等の吸引装置(図示せず)により、必要に応じて内部を負圧に設定できるようになっている。
【0043】
本発明の透明導電膜の製造方法を適用した透明導電膜作成装置の他の例として、図2に示すものを挙げることができる。図2に示す透明導電膜作成装置には、主として、エアロゾル発生器3と、成膜装置6と、プラズマ照射装置30とが備えられる。エアロゾル発生器3と、成膜装置6は、上記マイクロ波照射装置におけるこれらと同様の構造のもの使用することができる。プラズマ照射装置30には、内部に1対の平行電極32a、32bを有するプラズマ処理室31が設けられ、プラズマ処理室には、内部空間を減圧する減圧手段35と、プラズマ源ガスの供給口、排気口34等が備えられる。更に、プラズマ処理室31の平行電極間には、搬送ベルト12cが配置され、搬送ベルト12cを懸架してエンドレスに移動させるプーリー11cとを有する自動搬送装置10cが備えられる。
【0044】
プラズマ処理室内部にプラズマ源ガスが常圧程度に満たされ、平行電極32a、32b間に電圧が印加されると、平行電極間にプラズマ源ガスが電離してイオン化されることによりプラズマが発生する。透明導電膜が形成された基板を、成膜装置の自動搬送装置10aから受け取り、搬送ベルト12c上に載置して平行電極間を通過させる間に、基板上の透明導電膜がプラズマ照射を受けるようになっている。
【0045】
上記透明導電膜作成装置においては、基板の自動搬送装置10aを適用した成膜装置6を示したが、成膜装置はこれに限定されず、図3に示すように、自動搬送装置に変えて基板を支持するステージ8を設けたものであってもよい。ステージ8は、XY方向移動機構に載置して用い、ノズルから噴射されるエアロゾルをステージ上の基板上に均一衝突させ、均一な透明導電膜を形成させることもできる。
【0046】
本発明の透明導電膜の製造方法によって得られる透明導電膜は、緻密であり、導電性が高く、太陽電池、OA機器及び携帯電話等の液晶ディスプレイ、フラットパネルディスプレイ等の電極用の部材に好適である。
【実施例】
【0047】
以下に、本発明の透明導電膜の製造方法を具体的に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
図1に示す透明導電膜作成装置を用い、以下の条件により透明導電膜を作製した。
【0048】
透明導電材料微粒子は、平均粒子径1.4μm、ドープ量5%のITO微粒子を用いた。このITO微粒子0.2gに焼結助剤として10質量%ポリビニルアルコール水溶液0.02gを添加、混合した後、10MPaで加圧してペレットを作成し、該ペレットを1200℃で2時間焼結した焼結体(直径8mm厚さ0.8mm)を用いて、導電性を測定した。測定は2400ソースメーター(ケースレイ社製)を用い、JIS K 7194の四端針法に準拠して行ったところ、7.8×10-3Ωcmであった。
【0049】
エアロゾル発生器には、振動装置(ネッターニューマチックタービンバイブレーターNCT1:ドイツネッター社製)を設け、キャリアガスとして窒素を、10L/minで供給しエアロゾルを作成した。
【0050】
76mm×26mmの大きさの基板(S−1214:マツナミ社製)上15mmに配置したノズルを10mm/secの速度で走査しつつ、基板に対し垂直方向にエアロゾルを600m/secの速度で、10分噴射して、20mm×20mmの範囲に150nm厚さの透明導電膜を形成した。このとき成膜室内は温度25℃、圧力10,000Paを保持した。
【0051】
透明導電膜が形成された基板に、マイクロ波照射装置を用いて2.45GHz周波数のマイクロ波を1分照射した。
【0052】
得られた透明導電膜の導電性を2400ソースメーター(ケースレイ社製)を用い、JIS K7194に準拠する四端針法により測定した。マイクロ波照射前の透明導電膜の導電性は5.1×10-2Ωcmであった。マイクロ波照射後の透明導電膜の導電性は、8.0×10-3Ωcmであった。
【0053】
得られた透明導電膜の透過率を自記分光光度計(UV−3100PC:島津製作所社製)により測定した。550nm波長における透過率は91%であった。
[実施例2]
マイクロ波照射装置に替えて、図2に示すプラズマ照射装置(UL120:アクシス社製)を用いた他は実施例1と同様にして、透明導電膜を作製した。プラズマ源ガスとして窒素ガスを200L/minでプラズマ処理室に供給し、プラズマ処理室内圧力100,000Paとし、透明導電膜へ1minのプラズマ照射を行った。
【0054】
得られた透明導電膜の導電性は8.2×10-3Ωcm、透過率90%であった。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の透明導電膜の製造方法の一例を適用した透明導電膜作成装置の概略構成図を示す図である。
【図2】本発明の透明導電膜の製造方法の他の例を適用した透明導電膜作成装置の概略構成図を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1 キャリアガスボンベ
3 エアロゾル発生器
5 ノズル
6 成膜装置
7 基板
9 真空ポンプ
10a、10b、10c 自動搬送装置
20 マイクロ波照射装置
30 プラズマ照射装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明導電材料微粒子にキャリアガスを混合してエアロゾルを形成する工程(I)、該エアロゾルをノズルから噴射して基板に衝突させ該基板上に透明導電膜を形成する工程(II)、及び該透明導電膜にマイクロ波又はプラズマの少なくとも1種を照射する工程(III)を含むことを特徴とする透明導電膜の製造方法。
【請求項2】
透明導電材料微粒子が酸化物半導体微粒子であることを特徴とする請求項1記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項3】
工程(I)が透明導電材料微粒子の凝集を抑制する工程を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項4】
工程(II)において、エアロゾルを複数のノズルから噴射することを特徴とする請求項1から3のいずれか記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項5】
工程(II)及び工程(III)において、基板を自動搬送して連続的に行うことを特徴とする請求項1から4のいずれか記載の透明導電膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−91604(P2009−91604A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261180(P2007−261180)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】