説明

透明性樹脂組成物及び透明性フィルム

【課題】 透明性、耐熱性、力学特性、特に靱性に優れた透明性樹脂組成物及びそれよりなる透明性フィルムを提供する。
【解決手段】 α−オレフィン残基単位:N−フェニル置換マレイミド残基単位=49:51〜35:65(モル比)、重量平均分子量5×10以上5×10以下である共重合体(a)20〜50重量%、及び、アクリロニトリル残基単位:スチレン残基単位=20:80〜50:50(重量比)、重量平均分子量5×10以上5×10以下であるアクリロニトリル−スチレン共重合体(b)80〜50重量%からなる合計量100重量部に対し、ポリスチレン0.1〜10重量部を配合してなる透明性樹脂組成物および透明性フィルム

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α−オレフィン残基単位とN−フェニル置換マレイミド残基単位からなる特定の共重合体、特定のアクリロニトリル−スチレン系共重合体及びポリスチレンからなる透明性樹脂組成物、さらに該透明性樹脂組成物からなる透明性フィルムに関するものであり、特に透明性、耐熱性及び靱性に優れた透明性樹脂組成物及び該透明性樹脂組成物よりなる透明性フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
古くから光学材料として無機ガラスが使用されてきたが、近年、成形性、軽量性に優れた透明樹脂が無機ガラスに代わる光学材料として使用されている。光学部品の樹脂化は、近年の光を利用した情報関連技術の発展を反映して、例えばLCDなどのフラットパネルディスプレイ用フィルム及びシート、バックライトの導光板、光ディスク、光ファイバー、光導波路などの分野で盛んに検討されている。また、光学以外の分野、例えば電気・電子分野、自動車分野、医療分野、食品包装分野、建設資材分野などでも透明樹脂は広く使用されている。
【0003】
このような透明樹脂としては、例えばポリスチレン(以下、PSと略記する。)、ポリメタクリル酸メチル(以下、PMMAと略記する。)、ポリカーボネート(以下、PCと略記する。)、ナイロンなどが挙げられる。
【0004】
また、マレイミド系共重合体として、フェニルマレイミド残基とα−オレフィン残基からなる共重合体は、スチレン残基とアクリロニトリル残基からなる共重合体とのブレンドにおいて、特定の割合範囲内で熱力学的に混和性を示すことが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
そして、N−フェニル置換マレイミド−オレフィン共重合体20〜85重量%及びアクリロニトリル残基単位:スチレン残基単位=20:80〜50:50(重量比)であるアクリロニトリル−スチレン系共重合体80〜15重量%からなる合計量100重量部に対し、アクリル系可塑剤0.1〜10重量部を配合してなる透明性樹脂組成物及び該組成物よりなる透明性フィルムの提案を行なった(例えば特許文献2参照。)。
【0006】
【特許文献1】米国特許第4605700号公報
【特許文献2】特開2006−299029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、PS、PMMA、およびそれらを含む共重合体や樹脂組成物は透明性に優れるものの耐熱性、靱性が乏しいため、使用できる用途が限定される。また、PCは比較的高い耐熱性を示し靱性も優れるが、複屈折が生じ易いため、光学用途において問題となる場合があり、表面硬度が低く傷つきやすいなどの課題がある。ナイロンは耐熱性、靱性に優れるが、吸水性が高く、剛性、表面硬度が低いなどの問題がある。
【0008】
特許文献2において提案を行った透明性樹脂組成物及び透明性フィルムは、透明性、耐熱性、力学特性などに優れるものであったが、まだ靱性(脆さ)、特に伸びに課題を有するものであることが判明した。
【0009】
そこで、本発明は、透明性、耐熱性及び靱性に優れた透明性樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題に関し鋭意検討した結果、α−オレフィン残基単位とN−フェニル置換マレイミド残基単位からなる特定の共重合体、特定のアクリロニトリル−スチレン系共重合体、及びポリスチレンからなる樹脂組成物が高い透明性を有し、更に耐熱性、靱性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、下記式(i)で表されるα−オレフィン残基単位:下記式(ii)で表されるN−フェニル置換マレイミド残基単位=49:51〜35:65(モル比)からなり、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量5×10以上5×10以下である共重合体(a)20〜50重量%、及びアクリロニトリル残基単位:スチレン残基単位=20:80〜50:50(重量比)であり、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量5×10以上5×10以下であるアクリロニトリル−スチレン共重合体80〜50重量%からなる合計量100重量部に対し、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量6×10以上6×10以下であるポリスチレン0.1〜10重量部を配合してなることを特徴とする透明性樹脂組成物に関するものである。
【0012】
【化1】

(ここで、R1、R2、R3はそれぞれ独立して水素又は炭素数1〜6のアルキル基である。)
【0013】
【化2】

(ここで、R4、R5はそれぞれ独立して水素又は炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状アルキル基であり、R6、R7、R8、R9、R10はそれぞれ独立して水素、ハロゲン系元素、カルボン酸、カルボン酸エステル、水酸基、シアノ基、ニトロ基又は炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状アルキル基である。)
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明に用いられる共重合体(a)は、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量5×10以上5×10以下であり、上記式(i)で示されるα−オレフィン残基単位:上記式(ii)で表されるN−フェニル置換マレイミド残基単位=49:51〜35:65(以下、モル比)、特に耐熱性に優れる透明性樹脂組成物となることから好ましくは45:55〜35:65からなる共重合体である。ここで、重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、GPCと称する。)による共重合体の溶出曲線を標準ポリスチレン換算値として測定することができる。そして、共重合体(a)のポリスチレン換算の重量平均分子量が5×10未満である場合、得られる透明性樹脂組成物の成形加工が困難となると共に、透明性樹脂組成物は脆いものとなる。一方、重量平均分子量5×10を越える場合、得られる透明性樹脂組成物の成形加工が困難となる。また、式(i)で示されるα−オレフィン残基単位のモル比が35未満である場合、高分子量の共重合体を得ることが困難であり、その結果得られる透明性樹脂組成物は靱性に劣るものとなる。一方、該モル比が49を越える場合、得られる樹脂組成物は透明性、靱性に劣る場合がある。
【0015】
共重合体(a)を構成する式(i)で示されるα−オレフィン残基単位におけるR1、R2、R3はそれぞれ独立して水素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基等を挙げることができる。ここで、R1、R2、R3が炭素数6を越えるアルキル置換基である場合、共重合体のガラス転移温度が著しく低下する、共重合体が結晶性となり透明性を損なうなどの問題がある。そして、式(i)で示されるα−オレフィン残基単位を誘導する具体的な化合物としては、例えばイソブテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、2−メチル−1−ヘキセン、2−メチル−1−ヘプテン、1−イソオクテン、2−メチル−1−オクテン、2−エチル−1−ペンテン、2−メチル−2−ペンテン、2−メチル−2−ヘキセン、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンなどが挙げられ、その中でも1,2−ジ置換オレフィン類に属するα−オレフィンが好ましく、特に耐熱性、透明性、力学特性に優れる共重合体(a)が得られることからイソブテンであることが好ましい。また、α−オレフィン残基単位は1種又は2種以上組み合わされたものでもよく、その比率は特に制限はない。
【0016】
共重合体(a)を構成する式(ii)で示されるN−フェニル置換マレイミド残基単位におけるR4、R5はそれぞれ独立して水素又は炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状アルキル基であり、炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、n−ヘプチル基、2−ヘプチル基、3−ヘプチル基、n−オクチル基、2−オクチル基、3−オクチル基等を挙げることができる。また、R6、R7、R8、R9、R10はそれぞれ独立して水素、ハロゲン系元素、カルボン酸、カルボン酸エステル、水酸基、シアノ基、ニトロ基又は炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状アルキル基であり、ハロゲン系元素としは、例えばフッ素、臭素、塩素、沃素等を挙げることができ、カルボン酸エステルとしては、例えばメチルカルボン酸エステル、エチルカルボン酸エステル等を挙げることができ、炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、n−ヘプチル基、2−ヘプチル基、3−ヘプチル基、n−オクチル基、2−オクチル基、3−オクチル基等を挙げることができる。ここで、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10が炭素数8を越えるアルキル置換基の場合、共重合体のガラス転移温度が著しく低下する、共重合体が結晶性となり透明性を損なうなどの問題がある。
【0017】
そして、式(ii)で示されるN−フェニル置換マレイミド残基単位を誘導する化合物としては、例えばマレイミド化合物のN置換基として無置換フェニル基又は置換フェニル基を導入したマレイミド化合物を挙げることができ、具体的にはN−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(2−エチルフェニル)マレイミド、N−(2−n−プロピルフェニル)マレイミド、N−(2−イソプロピルフェニル)マレイミド、N−(2−n−ブチルフェニル)マレイミド、N−(2−s−ブチルフェニル)マレイミド、N−(2−t−ブチルフェニル)マレイミド、N−(2−n−ペンチルフェニル)マレイミド、N−(2−t−ペンチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジメチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジ−n−プロピルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジ−イソプロピルフェニル)マレイミド、N−(2−メチル,6−エチルフェニル)マレイミド、N−(2−メチル,6−イソプロピルフェニル)マレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、N−(2−ブロモフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジクロロフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジブロモフェニル)マレイミド、N−2−ビフェニルマレイミド、N−2−ジフェニルエーテルマレイミド、N−(2−シアノフェニル)マレイミド、N−(2−ニトロフェニル)マレイミド、N−(2,4,6−トリメチルフェニル)マレイミド、N−(2,4−ジメチルフェニル)マレイミド、N−パーブロモフェニルマレイミド、N−(2−メチル,4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジエチル,4−ヒドロキシフェニル)マレイミドなどが挙げられ、その中でもN−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(2−エチルフェニル)マレイミド、N−(2−n−プロピルフェニル)マレイミド、N−(2−イソプロピルフェニル)マレイミド、N−(2−n−ブチルフェニル)マレイミド、N−(2−s−ブチルフェニル)マレイミド、N−(2−t−ブチルフェニル)マレイミド、N−(2−n−ペンチルフェニル)マレイミド、N−(2−t−ペンチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジメチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジ−n−プロピルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジ−イソプロピルフェニル)マレイミド、N−(2−メチル,6−エチルフェニル)マレイミド、N−(2−メチル,6−イソプロピルフェニル)マレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、N−(2−ブロモフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジクロロフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジブロモフェニル)マレイミド、N−2−ビフェニルマレイミド、N−2−ジフェニルエーテルマレイミド、N−(2−シアノフェニル)マレイミド、N−(2−ニトロフェニル)マレイミドが好ましく、特に耐熱性、透明性、力学特性にも優れる共重合体(a)が得られることからN−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミドであることが好ましい。また、N−フェニル置換マレイミド残基単位は1種又は2種以上組み合わされたものでもよく、その比率は特に制限はない。
【0018】
該共重合体(a)は、上記した式(i)で示されるα−オレフィン残基単位を誘導する化合物及び式(ii)で示されるN−フェニル置換マレイミド残基単位を誘導する化合物を公知の重合法を利用することにより得ることができる。公知の重合法としては、例えば塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などを挙げることができる。また、別法として、上記した式(i)で示されるα−オレフィン残基単位を誘導する化合物と無水マレイン酸とを共重合することにより得られた共重合体に、さらに例えばアニリン、2〜6位に置換基を導入したアニリンを反応し、脱水閉環イミド化反応を行うことにより得ることもできる。
【0019】
共重合体(a)としては、上記した式(i)で示されるα−オレフィン残基単位及び式(ii)で示されるN−フェニル置換マレイミド残基単位からなる共重合体であり、例えばN−フェニルマレイミド−イソブテン共重合体、N−フェニルマレイミド−エチレン共重合体、N−フェニルマレイミド−2−メチル−1−ブテン共重合体、N−(2−メチルフェニル)マレイミド−イソブテン共重合体、N−(2−メチルフェニル)マレイミド−エチレン共重合体、N−(2−メチルフェニル)マレイミド−2−メチル−1−ブテン共重合体、N−(2−エチルフェニル)マレイミド−イソブテン共重合体、N−(2−エチルフェニル)マレイミド−エチレン共重合体、N−(2−エチルフェニル)マレイミド−2−メチル−1−ブテン共重合体等が挙げられ、その中でも特に耐熱性、透明性、力学特性にも優れるものとなることから、N−フェニルマレイミド−イソブテン共重合体、N−(2−メチルフェニル)マレイミド−イソブテン共重合体が好ましい。
【0020】
本発明に用いられるアクリロニトリル−スチレン共重合体(b)は、アクリロニトリル残基単位:スチレン残基単位=20:80〜50:50(以下、重量比)、特に靱性に優れた透明性樹脂組成物が得られることから好ましくは25:75〜50:50であり、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量5×10以上5×10以下であるアクリロニトリル−スチレン共重合体である。ここで、重量平均分子量は、GPCによる共重合体の溶出曲線を標準ポリスチレン換算値として測定することができる。そして、アクリロニトリル−スチレン共重合体(b)のポリスチレン換算の重量平均分子量が5×10未満である場合、得られる透明性樹脂組成物の成形加工が困難となると共に、得られる透明性樹脂組成物は脆いものとなる。一方、重量平均分子量5×10を越える場合、得られる透明性樹脂組成物の成形加工が困難となる。また、アクリロニトリル−スチレン共重合体(b)において、アクリロニトリル残基単位:スチレン残基単位=20:80を下回る場合、樹脂組成物の透明性、靱性が低下する。一方、アクリロニトリル残基単位:スチレン残基単位=50:50を上回る場合、樹脂組成物の透明性、靱性が低下する。また、本発明に用いられるアクリロニトリル−スチレン共重合体(b)としては、スチレン残基単位の一部又は全部をα−メチルスチレン残基単位としたアクリロニトリル−スチレン系共重合体を用いることもできる。
【0021】
本発明に用いられるアクリロニトリル−スチレン共重合体(b)の合成方法としては、公知の重合法が利用でき、例えば塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などにより製造することが可能である。また、市販品として入手したものであってもよい。
【0022】
本発明の透明性樹脂組成物は、さらに標準ポリスチレン換算の重量平均分子量6×10以上6×10以下であるポリスチレンを含有するものであり、該ポリスチレンにより、靱性に優れる透明性樹脂組成物となるものである。
【0023】
該ポリスチレンの合成方法としては、公知の重合方法が利用でき、例えばラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などにより製造することが可能である。また、市販品として入手したものであってもよい。その中でも、該共重合体(a)及びアクリロニトリル−スチレン系共重合体との相溶性に優れ、透明性樹脂組成物とした際の透明性、耐揮発性や耐ブリードアウト性がより優れたものとなることから、分子量分布が狭いポリスチレンであることが好ましく、このようなポリスチレンとして、例えば(商品名)TSK標準ポリスチレン(東ソー株式会社製)等を用いることが可能である。
【0024】
また、該ポリスチレンとしては、靱性、透明性が優れ、耐揮発性や耐ブリードアウト性に優れた透明性樹脂組成物となることから、ポリスチレンの重量平均分子量は6×10以上6×10以下であり、特に8×10以上3×10以下であることが好ましい。
【0025】
本発明の透明性樹脂組成物は、共重合体(a)20〜50重量%及びアクリロニトリル−スチレン共重合体(b)80〜50重量%からなる合計量100重量部に対し、該ポリスチレン0.1〜10重量部を配合してなるものであり、特に耐熱性、靱性のバランスに優れた樹脂組成物となることから共重合体(a)20〜45重量%及びアクリロニトリル−スチレン共重合体(b)80〜55重量%からなる合計量100重量部に対し、該ポリスチレン1〜10重量部を配合してなることが好ましい。ここで、共重合体(a)が20重量%未満である場合、得られる樹脂組成物の耐熱性が乏しくなり、共重合体(a)が50重量%を越える場合、得られる樹脂組成物は脆いものとなる。一方、アクリロニトリル−スチレン共重合体(b)が50重量%未満である場合、得られる樹脂組成物の靱性が乏しくなり、アクリロニトリル−スチレン共重合体(b)が80重量%を越える場合、得られる樹脂組成物は耐熱性が乏しいものとなる。また、該ポリスチレンが0.1重量部未満である場合、樹脂組成物の靱性改良の効果が不十分となり、該ポリスチレンが10重量部を超える場合、樹脂組成物の透明性、耐熱性が著しく乏しくなると共に、靭性が低下する場合がある。
【0026】
本発明の透明性樹脂組成物は、該共重合体(a)、該アクリロニトリル−スチレン系共重合体(b)、及び該ポリスチレンを一般的な混合・混練を行うことにより製造することができ、その際の混合・混練の装置としては、例えば単軸押出機、二軸押出機、ブラベンダー、ロール、ニーダー、バンバリーミキサーなどの溶融混練装置を挙げることができる。また、溶媒中にそれぞれの成分を溶解あるいは分散させて混合する方法であってもよい。さらに少なくともそれぞれの一成分が存在する中、他成分の原材料から他成分を変性・重合等の方法により製造する方法であってもよい。
【0027】
また、本発明の透明性樹脂組成物を光学材料として用いる際には、可視光線、紫外線、赤外線などの光の照射を受けることが予想され、特に高温状況下での光照射による熱着色や光劣化を抑制する目的にて、本発明の透明性樹脂組成物には、例えばヒンダードアミン系熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、近赤外線吸収剤などを必要に応じて含有しても良い。
【0028】
更に、本発明の透明性樹脂組成物は、上述の成分以外に、顔料、滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、界面活性剤、高分子電解質、導電性錯体、無機フィラー、染料、オイルなどを必要に応じて含有しても良い。
【0029】
本発明の透明性樹脂組成物は、従来公知の成形方法により成形体とすることができ、例えば射出成形、射出圧縮成形、ガスアシスト法射出成形、押出成形、多層押出成形、回転成形、熱プレス成形、ブロー成形、発泡成形などの方法により、射出成形体、フィルム、チューブ、シート、パイプ、ボトルなどに成形することができる。
【0030】
本発明の透明性樹脂組成物よりなる透明性フィルムの製造方法としては、如何なる方法を用いても良く、例えば溶液キャスティング法(溶液流延法)、溶融押出法、カレンダー法、圧縮成形法などの公知公用の方法が挙げられる。溶融押出法としては、例えばTダイ法、インフレーション法が挙げられる。このようにして得られたフィルムは延伸法により透明性延伸フィルムとしてもよく、採用できるニ軸延伸法としては、例えばテンター法、チューブ法等、一軸延伸法としては、例えば水槽延伸法、輻射延伸法、熱風加熱法、熱板過熱法、ロール加熱法などが挙げられる。
【0031】
該透明性フィルムの厚みは10〜500μmであることが好ましく、特に機械特性、ハンドリング性のバランスなどに優れることから、20〜200μmであることが好ましい。また、該透明性フィルムは、特に透明性に優れたものとなることから、JIS K7136に準拠したヘイズが2%以下であることが好ましい。
【0032】
また、該透明性フィルムは、ガスバリヤー性、耐傷つき性、耐薬品性等の機能を付与する目的にて、薄膜が塗工されたものであってもよい。すなわち、各種の熱可塑性樹脂;アミノ基、イミノ基、エポキシ基、シリル基などを有する熱硬化性樹脂;アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基などを有する放射線硬化型樹脂;これら樹脂の混合物に重合禁止剤、ワックス類、分散剤、顔料、溶剤、染料、可塑剤、紫外線吸収剤、無機フィラー等を加え、グラビアロールコーティング法、マイヤーバーコーティング法、リバースロールコーティング法、ディップコーティング法、エアーナイフコーティング法、カレンダーコーティング法、スキーズコーティング法、キスコーティング法、ファンテンコーティング法、スプレーコーティング法、スピンコーティング法等の方法により塗工することができる。さらに、塗工後、必要に応じて放射線照射による硬化、または加熱による熱硬化を行わせて硬化薄膜層とすることができる。また、印刷を行う際にはグラビア方式、オフセット方式、フレキソ方式、シルクスクリーン方式などの方法を用いることができる。また、ガスシール性等を付与する目的から、アルミニウム、ケイ素、マグネシウム、亜鉛等を主成分とする金属酸化物層を有してもよく、該金属酸化物層は真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法などにより形成することが好ましい。
【0033】
更に、該透明性フィルムは他のフィルムと積層化させることも可能である。積層化させる方法としては、公知公用のいかなる方法を用いてもよく、例えば、ヒートシール法、インパルスシール法、超音波接合法、高周波接合法などの熱接合方法;押出ラミネート法、ホットメルトラミネート法、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、無溶剤接着ラミネート法、サーマルラミネート法、共押出法等のラミネート加工方法などが挙げられる。積層化させるフィルムとしては、例えば、ポリエステル樹脂フィルム、ポリビニルアルコール樹脂フィルム、セルロース樹脂フィルム、ポリフッ化ビニル樹脂フィルム、ポリ塩化ビニリデン樹脂フィルム、ポリアクリロニトリル樹脂フィルム、ナイロン樹脂フィルム、ポリエチレン樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂フィルム、アセテート樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルム、ポリアクリレート樹脂フィルム等が挙げられる。
【0034】
本発明の透明性樹脂組成物は、透明性、耐熱性、靱性などに優れることから、LCD、有機EL、PDP、タッチパネル、電子ペーパー等のフラットパネルディスプレイや複写機、プリンター、ファクシミリ、光ファイル等の情報機器に使用される光学用フィルムとして好適に使用することができる。該光学用フィルムの具体例として、例えば位相差フィルム、偏光膜保護フィルム、リフレクターフィルム、セパレーターフィルム、光拡散フィルム、透明電極フィルム基板、ディスプレイの表面保護フィルム、アンチグレアフィルム、アンチリフレクションフィルム、電磁波遮蔽フィルム、紫外線吸収フィルム、遠赤外線吸収フィルム、近赤外線吸収フィルムなどを挙げることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の透明性樹脂組成物は、透明性、耐熱性及び靱性に優れた特性を有する樹脂組成物であり、それよりなる透明性フィルムは、耐熱性、靱性、外観を必要とする透明性フィルムに好適に用いることができる。
【実施例】
【0036】
以下に、本発明を実施例にて具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。各物性値の測定方法を以下に示す。
【0037】
〜重量平均分子量の測定〜
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製、商品名HLC−802A)を用い測定した溶出曲線により、標準ポリスチレン換算値として重量平均分子量(Mw)を測定した。
【0038】
〜ヘイズの測定〜
透明性の一評価として、JIS K 7136(2000年版)に準拠してヘイズの測定を行った。
【0039】
〜ガラス転移温度の測定〜
示差走査型熱量計(セイコー電子工業(株)製、商品名DSC220)を用い、10℃/分の昇温速度にて測定した。
【0040】
〜引張破断伸びの測定〜
ASTM D882に準拠して測定した。
【0041】
合成例1(N−フェニルマレイミド−イソブテン共重合体の調製例)
ステンレス製オートクレーブにN−フェニルマレイミド323重量部、t−ブチルパーオキシピバレート1.5重量部及びメチルエチルケトン606重量部を仕込み、窒素で数回パージした後、液化イソブテン105重量部を仕込み、60℃で8時間重合を行った。反応終了後の溶液を室温まで冷却した後、メタノールに徐々に添加して再沈澱処理を行い、次いでろ過、乾燥することにより共重合体を得た。
【0042】
H−NMR測定により生成した共重合体はN−フェニルマレイミド残基単位:イソブテン残基単位=60/40(モル比)のN−フェニルマレイミド−イソブテン共重合体(以下、共重合体A(1)と記す。)であることを確認した。また、重量平均分子量は140000であり、ガラス転移温度は220℃であった。
【0043】
合成例2(N−(2−メチルフェニル)マレイミド−イソブテン共重合体の調製例)
ステンレス製オートクレーブにN−(2−メチルフェニル)マレイミド335重量部、t−ブチルパーオキシピバレート1.9重量部及びメチルエチルケトン610重量部を仕込み、窒素で数回パージした後、液化イソブテン111重量部を仕込み、60℃で8時間重合を行った。反応終了後の溶液を室温まで冷却した後、メタノールに徐々に添加して再沈澱処理を行い、次いでろ過、乾燥することにより共重合体を得た。
【0044】
H−NMR測定により生成した共重合体はN−(2−メチルフェニル)フェニルマレイミド単位残基:イソブテン単位残基=59:41(モル比)のN−(2−メチルフェニル)マレイミド−イソブテン共重合体(以下、共重合体A(2)と記す。)であることを確認した。また、重量平均分子量は150000であり、ガラス転移温度は215℃であった。
【0045】
合成例3(N−フェニルマレイミド−イソブテン共重合体の調製例)
ステンレス製オートクレーブにN−フェニルマレイミド300重量部、t−ブチルパーオキシピバレート1.0重量部及びメチルエチルケトン660重量部を仕込み、窒素で数回パージした後、液化イソブテン112重量部を仕込み、60℃で8時間重合を行った。反応終了後の溶液を室温まで冷却した後、メタノールに徐々に添加して再沈澱処理を行い、次いでろ過、乾燥することにより共重合体を得た。
【0046】
H−NMR測定により生成した共重合体はN−フェニルマレイミド残基単位:イソブテン残基単位=57/43(モル比)のN−フェニルマレイミド−イソブテン共重合体(以下、共重合体A(3)と記す。)であることを確認した。また、重量平均分子量は170000であり、ガラス転移温度は209℃であった。
【0047】
合成例4(N−フェニルマレイミド−イソブテン共重合体の調製例)
ステンレス製オートクレーブにN−フェニルマレイミド43重量部、t−ブチルパーオキシピバレート0.2重量部及びメチルエチルケトン750重量部を仕込み、窒素で数回パージした後、液化イソブテン140重量部を仕込み、60℃で8時間重合を行った。反応終了後の溶液を室温まで冷却した後、メタノールに徐々に添加して再沈澱処理を行い、次いでろ過、乾燥することにより共重合体を得た。
【0048】
H−NMR測定により生成した共重合体はN−フェニルマレイミド残基単位:イソブテン残基単位=50/50(モル比)のN−フェニルマレイミド−イソブテン共重合体(以下、共重合体A(4)と記す。)であることを確認した。また、重量平均分子量は190000であり、ガラス転移温度は192℃であった。
【0049】
合成例5(N−フェニルマレイミド−イソブテン共重合体の調製例)
ステンレス製オートクレーブにN−フェニルマレイミド369重量部、t−ブチルパーオキシピバレート2.2重量部及びメチルエチルケトン606重量部を仕込み、窒素で数回パージした後、液化イソブテン72重量部を仕込み、60℃で8時間重合を行った。反応終了後の溶液を室温まで冷却した後、メタノールに徐々に添加して再沈澱処理を行い、次いでろ過、乾燥することにより共重合体を得た。
【0050】
H−NMR測定により生成した共重合体はN−フェニルマレイミド残基単位:イソブテン残基単位=66/34(モル比)のN−フェニルマレイミド−イソブテン共重合体(以下、共重合体A(5)と記す。)であることを確認した。また、重量平均分子量は82000であり、ガラス転移温度は235℃であった。
【0051】
合成例6(アクリロニトリル−スチレン共重合体の調製例)
ステンレス製オートクレーブにアクリロニトリル48重量部、スチレン33重量部、エチルベンゼン24重量部、α−メチルスチレンダイマー0.3重量部及びt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.01重量部を仕込み、窒素で数回パージした後、148℃で0.9時間重合を行った。次いで得られたポリマー溶液をオートクレーブから抜き出し、脱気装置を備えた容器(以下、容器−1と記す。)へと移送した後、容器−1を160℃に加熱し、真空度8000Paで脱気した。さらにポリマー溶液を容器−1から、脱気装置を備えた別の容器(以下、容器−2と記す。)へと移送した後、容器−2を260℃に過熱し、真空度4000Paで脱気した後、容器−2から抜き出すことにより共重合体を得た。
【0052】
H−NMR測定により生成した共重合体はアクリロニトリル残基単位:スチレン残基単位=51/49(重量比)のアクリロニトリル−スチレン共重合体(以下、共重合体B(1)と記す。)であることを確認した。また、重量平均分子量は120000であり、ガラス転移温度は116℃であった。
【0053】
実施例1
合成例1により得られた共重合体A(1)30重量%、アクリロニトリル−スチレン共重合体(旭化成ケミカルズ(株)製、商品名スタイラック727、重量平均分子量=130000、アクリロニトリル残基単位:スチレン残基単位(重量比)=38:62)(以下、共重合体B(2)と記す。)70重量%からなる合計量100重量部に対し、ポリスチレン(東ソー株式会社製、商品名TSK標準ポリスチレン A−1000、重量平均分子量=1050)(以下、ポリスチレンC(1)と記す。)3重量部を配合し、30mmφ2軸押出機に供して押出し、透明性樹脂組成物を得た。
【0054】
次いで、得られた透明性樹脂組成物を該透明性樹脂組成物の濃度が25重量%となるように塩化メチレンに溶解し、該塩化メチレン溶液をポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムと記す。)上に流延した後、室温で放置して自立性のあるフィルムとなるまで溶剤を揮発させた。更に、該フィルムをPETフィルムから剥離し、剥離後の該フィルムを乾燥機にて70℃から徐々に昇温して最終的にガラス転移温度で乾燥し、厚みが約100μmの透明性フィルムを得た。得られた透明性フィルムは靱性、透明性、耐熱性に優れるものであった。本透明性フィルムを用いて物性を測定した結果を表1に示す。
【0055】
実施例2
ポリスチレンC(1)3重量部の代わりにポリスチレンC(1)6重量部とした以外は、実施例1と同様の方法により透明性樹脂組成物、透明性フィルムを得、その評価を行った。
【0056】
得られた透明性フィルムは、靱性、透明性、耐熱性に優れるものであった。本透明性フィルムを用いて物性を測定した結果を表1に示す。
【0057】
実施例3
共重合体A(1)30重量%の代わりに合成例2により得られた共重合体A(2)30重量%とした以外は、実施例1と同様の方法により透明性樹脂組成物、透明性フィルムを得、その評価を行った。
【0058】
得られた透明性フィルムは、靱性、透明性、耐熱性に優れるものであった。本透明性フィルムを用いて物性を測定した結果を表1に示す。
【0059】
実施例4
共重合体A(1)30重量%の代わりに合成例3により得られた共重合体A(3)30重量%とした以外は、実施例1と同様の方法により透明性樹脂組成物、透明性フィルムを得、その評価を行った。
【0060】
得られた透明性フィルムは、靱性、透明性、耐熱性に優れるものであった。本透明性フィルムを用いて物性を測定した結果を表1に示す。
【0061】
実施例5
共重合体A(1)30重量%の代わりに共重合体A(1)40重量%、共重合体B(2)70重量%の代わりに共重合体B(2)60重量%とした以外は、実施例1と同様の方法により透明性樹脂組成物、透明性フィルムを得、その評価を行った。
【0062】
得られた透明性フィルムは、靱性、透明性、耐熱性に優れるものであった。本透明性フィルムを用いて物性を測定した結果を表1に示す。
【0063】
実施例6
ポリスチレンC(1)3重量部の代わりにポリスチレン(東ソー株式会社製、商品名TSK標準ポリスチレン A−2500、重量平均分子量=2500)(以下、ポリスチレン(2)と記す。)2重量部とした以外は、実施例1と同様の方法により透明性樹脂組成物、透明性フィルムを得、その評価を行った。
【0064】
得られた透明性フィルムは、靱性、透明性、耐熱性に優れるものであった。本透明性フィルムを用いて物性を測定した結果を表2に示す。
【0065】
実施例7
共重合体B(2)の代わりにアクリロニトリル−スチレン共重合体(ダイセルポリマー(株)製、商品名セビアン080、重量平均分子量=130000、アクリロニトリル残基単位:スチレン残基単位(重量比)=30:70)(以下、共重合体B(3)と記す。)とし、ポリスチレンC(1)3重量部の代わりにポリスチレン(東ソー株式会社製、商品名TSK標準ポリスチレン A−5000、重量平均分子量=5870)(以下、ポリスチレンC(3)と記す。)2重量部とした以外は、実施例1と同様の方法により透明性樹脂組成物、透明性フィルムを得、その評価を行った。
【0066】
得られた透明性フィルムは、靱性、透明性、耐熱性に優れるものであった。本透明性フィルムを用いて物性を測定した結果を表2に示す。
【0067】
比較例1
ポリスチレンC(1)を配合しなかった以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物、フィルムを得、その評価を行った。
【0068】
得られたフィルムは、靱性に劣るものであった。本フィルムを用いて物性を測定した結果を表3に示す。
【0069】
比較例2
ポリスチレンC(1)3重量部の代わりにポリスチレンC(1)12重量部とした以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物、フィルムを得、その評価を行った。
【0070】
得られたフィルムは、靱性、透明性に劣るものであった。本フィルムを用いて物性を測定した結果を表3に示す。
【0071】
比較例3
ポリスチレンC(1)3重量部の代わりにポリスチレン(東ソー株式会社製、商品名TSK標準ポリスチレン F−1、重量平均分子量=9490)(以下、ポリスチレンC(4)と記す。)3重量部とした以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物、フィルムを得、その評価を行った。
【0072】
得られたフィルムは、靱性、透明性に劣るものであった。本フィルムを用いて物性を測定した結果を表3に示す。
【0073】
比較例4
ポリスチレンC(1)3重量部の代わりにポリスチレン(東ソー株式会社製、商品名TSK標準ポリスチレン A−500、重量平均分子量=495)(以下、ポリスチレンC(5)と記す。)3重量部とした以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物、フィルムを得、その評価を行った。
【0074】
得られたフィルムは、靱性に劣るものであった。本フィルムを用いて物性を測定した結果を表3に示す。
【0075】
比較例5
共重合体A(1)30重量%の代わりに共重合体A(1)10重量%とし、共重合体B(2)70重量%の代わりに共重合体B(2)90重量%とした以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物、フィルムを得、その評価を行った。
【0076】
得られたフィルムは、耐熱性に劣るものであった。本フィルムを用いて物性を測定した結果を表3に示す。
【0077】
比較例6
共重合体A(1)30重量%の代わりに共重合体A(1)70重量%とし、共重合体B(2)70重量%の代わりに共重合体B(2)30重量%とした以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物、フィルムを得、その評価を行った。
【0078】
得られたフィルムは、靱性に劣るものであった。本フィルムを用いて物性を測定した結果を表4に示す。
【0079】
比較例7
共重合体A(1)30重量%の代わりに合成例4により得られた共重合体A(4)30重量%とした以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物、フィルムを得、その評価を行った。
【0080】
得られたフィルムは、透明性、靱性に劣るものであった。本フィルムを用いて物性を測定した結果を表4に示す。
【0081】
比較例8
共重合体A(1)30重量%の代わりに合成例5により得られた共重合体A(5)30重量%とした以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物、フィルムを得、その評価を行った。
【0082】
得られたフィルムは、靱性に劣るものであった。本フィルムを用いて物性を測定した結果を表4に示す。
【0083】
比較例9
共重合体B(2)70重量%の代わりに合成例6により得られた共重合体B(1)70重量%とした以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物、フィルムを得、その評価を行った。
【0084】
得られたフィルムは、透明性、靱性に劣るものであった。本フィルムを用いて物性を測定した結果を表4に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【0087】
【表3】

【0088】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(i)で表されるα−オレフィン残基単位:下記式(ii)で表されるN−フェニル置換マレイミド残基単位=49:51〜35:65(モル比)からなり、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量5×10以上5×10以下である共重合体(a)20〜50重量%、及びアクリロニトリル残基単位:スチレン残基単位=20:80〜50:50(重量比)であり、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量5×10以上5×10以下であるアクリロニトリル−スチレン共重合体80〜50重量%からなる合計量100重量部に対し、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量6×10以上6×10以下であるポリスチレン0.1〜10重量部を配合してなることを特徴とする透明性樹脂組成物。
【化1】

(ここで、R1、R2、R3はそれぞれ独立して水素又は炭素数1〜6のアルキル基である。)
【化2】

(ここで、R4、R5はそれぞれ独立して水素又は炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状アルキル基であり、R6、R7、R8、R9、R10はそれぞれ独立して水素、ハロゲン系元素、カルボン酸、カルボン酸エステル、水酸基、シアノ基、ニトロ基又は炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状アルキル基である。)
【請求項2】
請求項1に記載の透明性樹脂組成物からなることを特徴とする透明性フィルム。

【公開番号】特開2008−303257(P2008−303257A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−149959(P2007−149959)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】