説明

透明性樹脂組成物

【課題】植物資源より誘導可能な構成単位を主として有する樹脂の柔軟性及び脆さを改善する。
【解決手段】全構成単位の50モル%超が下記一般式(1)で表される構成単位である重合体(A成分)と、


(式中、nは0、1、2のいずれかであり、R、R、R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を表す。)含窒素化合物(B成分)からなり、前記A成分とB成分の割合が質量比で30/70〜95/5であることを特徴とする樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透明性樹脂組成物に関するものであり、より詳しくは、植物資源より誘導可能なラクトン環構造を有し、透明性及び耐熱性に優れた樹脂を含む、柔軟性に富み成形性が良好な樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
メタクリル酸メチルを主成分とするメタクリル樹脂は、光学的性質および耐候性に極めて優れ、かつ機械的強度、熱的性質ならびに成形加工性などにおいても比較的バランスのとれた性能を有しているために、これらの特徴を生かして、看板、照明用カバー、銘板、自動車部品、電気機器部品、装飾用あるいは雑貨品などの多くの用途に使用され、さらに他の用途開発も進められている。
【0003】
また、近年、メタクリル酸メチルに第二成分を共重合させ耐熱性を向上させたメタクリル樹脂が開発されている(例えば特許文献1〜3等)。しかしながら、これらの方法では共重合化によって耐熱性が向上した代わりに、樹脂の光学的性質、機械的性質および耐候性等が低下し、上記のような用途に好ましい樹脂を得ることができてない。
【0004】
さらに、昨今では石油資源の枯渇や、廃棄物の焼却処理に伴い発生する二酸化炭素による地球温暖化が懸念されていることから、石油成分より誘導されるメタクリル酸メチルを主成分とする上記メタクリル樹脂を再生可能資源(石油や石炭のような枯渇性のあるような天然資源とは異なり、森林資源、バイオマス、風力、小規模水力などのようにそれ自身が再生能力を持つような資源)から構築することが強く望まれている。
【0005】
これら事由を鑑みて、上記の耐熱メタクリル樹脂に代わる高い耐熱性と透明性を有し、植物資源より誘導可能な樹脂としてα−メチレン−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−β−メチル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−γ−メチル−γ−ブチロラクトン(以下、MeMBLのように略記し、また、その重合体をPMeMBLのように略記することがある)などの付加重合体が注目されている(特許文献4及び5)。
【0006】
つまり、α−メチレン−γ−ブチロラクトンはグルコースの発酵により得られるコハク酸の脱水およびそれに続く還元により得られるγ−ブチロラクトンとホルムアルデヒドとの反応より得ることができる。また、α−メチレン−β−メチル−γ−ブチロラクトンは主にキシロースから誘導されるイタコン酸を経由して得られるβ−メチル−γ−ブチロラクトンとホルムアルデヒドとの反応より得ることができ、さらに、MeMBLは植物の主構成要素であるセルロースの酸処理により得られるレブリン酸からγ−メチル−γ−ブチロラクトン(MBL)を経由し、最終的にMBLとホルムアルデヒドとの反応により誘導される(特許文献6など)。このことからこれらラクトン環含有化合物は再生可能資源として位置付けることができ、また、これらのラクトン環含有化合物の付加重合体はガラス転移温度(Tg)が200℃程度であることから、従来の上記メタクリル樹脂と比較して高い耐熱性を有する。
【0007】
しかしながら、MeMBLの付加重合体は脆く、成形品にした場合の機械的強度が低いため、柔軟性改良剤の添加や他種のポリマーとのアロイ化による柔軟性の改良が検討されている(特許文献7、及び特許文献8など)。しかしこれらの特許文献中では他種のポリマーや改良剤との混練のために高温下での二軸押し出し機が必要であり、プロセス上多大なエネルギーを要する。さらにこれらの文献中では上記ラクトン環含有化合物の付加重合体との他成分との相溶性について化合物の構造的観点から述べられていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭49−10156号公報
【特許文献2】特公昭43−9753号公報
【特許文献3】特公平2−46605号公報
【特許文献4】特開平09−12645号公報
【特許文献5】特開平09−12646号公報
【特許文献6】国際公開第00/58297号パンフレット(特表2002−540200号公報)
【特許文献7】米国特許第6,723,790号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2004/0230019号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、植物資源より誘導可能な構成単位を有し、透明性及び耐熱性に優れた樹脂を含む、柔軟性に富み成形性が良好な樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を鑑みて検討を進め、本発明を完成させた。本発明の要旨を以下に示す。
【0011】
1. 全構成単位の50モル%超が下記一般式(1)で表される構成単位である重合体(A成分)と、
【化1】

(上記式中、nは0、1、2のいずれかであり、R、R、R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を表す。)
含窒素化合物(B成分)からなり、前記A成分とB成分の割合が質量比で30/70〜95/5であることを特徴とする樹脂組成物。
2. 上記1項において、含窒素化合物(B成分)が下記一般式(2)で表される化合物である樹脂組成物。
【化2】

(式中、Rは炭素原子数1〜22の直鎖状または分岐状のアルキレン基、炭素数5〜12のシクロアルキレン基、炭素数6〜18のアルキルシクロアルキレン基、炭素数7〜12のアラルキレン基又はフェニレン基を表す。Y、Yはそれぞれ独立に単結合、酸素原子、もしくは炭素原子数1〜18のアルキレン基を表す。X、Xはそれぞれ独立にニトリル基、ピロリドニル基、イミド基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルフォリニル基およびモルフォリノ基を有する官能基、または水素原子、メチル基を表し、X、Xのいずれか一方が水素原子またはメチル基である場合には他の一方は水素原子およびメチル基以外の官能基から選択される。)
3. 昇温速度10℃/分での示差走査熱量測定によるガラス転移温度が100℃以上であることを特徴とする上記1項または2項に記載の樹脂組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、植物資源より誘導可能なラクトン環構造を有し、透明性及び耐熱性に優れた樹脂を、柔軟性に富み成形性が良好な樹脂組成物とし、種々の成形品を効率よく生産することができるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明について詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物は、全構成単位の50モル%超が上記一般式(1)で表される構成単位である重合体(A成分)と、含窒素化合物(B成分)からなり、前記A成分とB成分の割合が質量比で30/70〜95/5であることを特徴とする樹脂組成物である。A成分/B成分の質量比が30/70よりも小さいと耐熱性が低下し、また得られる重合体の不透明化や成形時のブリードアウトの原因となるため好ましくない。またA成分/B成分の質量比が95/5よりも大きいと、柔軟性の改善効果が不十分となり得られる樹脂組成物が実用に耐えなくなるため好ましくない。A成分/B成分の質量比は40/60〜90/10であることがより好ましく、50/50〜90/10であると更に好ましく、60/40〜90/10であるとより一層好ましい。
【0014】
本発明にて用いる重合体(A成分)は、上記一般式(1)で表される構成単位が全構成単位の50モル%超のものであり、上記一般式(1)で表される構成単位が75モル%以上のものであると好ましく、90モル%以上のものであるとより好ましく、95モル%以上のものであると、より一層好ましい。
【0015】
本発明にて用いる重合体(A成分)としては、上記一般式(1)においてnが0、1、2のいずれかであり、R、R、R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基のものが好ましく、n=0でR、R、R、Rが全て水素原子(R、Rは存在せず)のもの、n=0でR、Rのいずれか1つがメチル基で残りが水素原子、R、Rがともに水素原子(R、Rは存在せず)のもの、及びn=0でR、Rがともに水素原子、R、Rのいずれか1つがメチル基で残りが水素原子(R、Rは存在せず)のものよりなる群から選ばれる1種類以上がより好ましい。
【0016】
下記式(3)で表されるラクトン環含有化合物を付加重合させることにより上記一般式(1)で表されるラクトン環構造を有する構成単位を含む重合体(A成分)を得ることができる。
【0017】
【化3】

(上記式中、nは0、1、2のいずれかであり、R、R、R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を表す。)
【0018】
上記式(3)で表されるラクトン環含有化合物として、上記一般式(3)においてnが0、1、2のいずれかであり、R、R、R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基のものが好ましく、α−メチレン−γ−ブチロラクトン
【化4】

α−メチレン−β−メチル−γ−ブチロラクトン
【化5】

α−メチレン−γ−メチル−γ−ブチロラクトン
【化6】

よりなる群から選ばれる1種類以上がより好ましい。これらラクトン環含有化合物の前駆対であるγ−ブチロラクトン、β−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−メチル−γ−ブチロラクトンは、自然界のバイオマスからも得られる物質で、再生可能資源と呼ばれるものの1つである。α−メチレン−γ−ブチロラクトンはグルコースの発酵により得られるコハク酸の脱水およびそれに続く還元により得られるγ−ブチロラクトンとホルムアルデヒドとの反応より得ることができる。また、α−メチレン−β−メチル−γ−ブチロラクトン主にキシロースから誘導されるイタコン酸を経由して得られるβ−メチル−γ−ブチロラクトンとホルムアルデヒドとの反応より得ることができ、さらに、MeMBLは植物の主構成要素であるセルロースの酸処理により得られるレブリン酸からγ−メチル−γ−ブチロラクトン(MBL)を経由し、最終的にMBLとホルムアルデヒドとの反応により誘導される。これらのラクトン環含有化合物の中でも得られる付加重合体のガラス転移点(Tg)の高さや原料となるバイオマスつまりセルロースの存在量や入手のし易さなどからα−メチレン−γ−メチル−γ−ブチロラクトンが好ましい。
【0019】
本発明に用いる上記式(3)で表されるラクトン環含有化合物の精製方法については特に限定されない。好ましくは、単蒸留、精留または再結晶のいずれか、もしくはこれらの手法の組み合わせにより精製してもよい。
【0020】
上記式(3)で表されるラクトン環含有化合物を原料とし、上記式(1)で表される構成単位を全構成単位に対して50モル%超の割合にて有する重合体を得る方法としては、付加重合であれば特に限定されないが、例えば塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等を挙げることができる。
【0021】
使用される重合開始剤は、重合時に副反応や着色等の悪影響をおよぼさないものであれば、特に限定されるものではなく、重合様式、重合温度、重合率、重合時間に応じて任意に選択でき、複数種の重合開始剤を併用して用いてもよい。重合開始剤の例としては、例えば2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ系開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾフェノン等の光開始剤、過硫酸アンモニウム等の硫酸塩、亜硫酸ソーダ、レドックス系開始剤などが挙げられる。
【0022】
また、重合において分子量を調節するために必要に応じて用いられる連鎖移動剤としては、重合時に副反応や着色等の悪影響をおよぼさないものであれば、特に限定されず、目的とする分子量に対して任意に選択でき、複数種の連鎖移動剤を組み合わせて用いることができる。連鎖移動剤の例としては、例えばn−ブチルメルカプタン、イソブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、オクチルメルカプタン等の第一級、第二級、第三級メルカプタン、チオグリコール酸および、そのエステルなどが挙げられる。
重合温度は、使用する重合開始剤、および重合形式により一概には決められないが、30〜150℃の範囲で行うことが好ましい。
【0023】
本発明では用いる重合体(A成分)としては上記式(3)で表されるラクトン環含有化合物に由来する上記式(1)の構成単位のみから成る単独重合体の他に、全構成単位あたり50モル%未満の量にて他の構成単位を含む共重合体も用いることができる。そのような他の構成単位となる共重合成分として、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等や、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、メタクリル酸トリシクロ〔5.2.1.02,6〕−デカ−8−イル、その他の脂環式(メタ)アクリル酸等や、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン等のα−置換スチレン、フルオロスチレン、メチルスチレン等の置換スチレン等の芳香族ビニル化合物が挙げられる。また、アクリロニトリル等のヘテロ原子含有ビニル化合物、(メタ)アクリル酸フルオロメチル、(メタ)アクリル酸フルオロエチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、(メタ)アクリル酸2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル、(メタ)アクリル酸1,1,2,2−テトラハイドロパーフルオロオクチル、(メタ)アクリル酸1,1,2,2−テトラハイドロパーフルオロデカニル、(メタ)アクリル酸ヘキサフルオロネオペンチル等のフッ素化(メタ)アクリル酸アルキルエステル類も用いることができる。さらに、イタコン酸、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジイソプロピル、イタコン酸ジn-プロピル、イタコン酸ジtert−ブチル、イタコン酸ジn−ブチル、その他のイタコン酸アルキルエステルやその他の多官能性不飽和カルボン酸のアルキルエステル類も用いることができる。なかでも、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸、これらの酸と炭素原子数1〜10のアルカノールから誘導されるアクリル酸アルキル、メタアクリル酸アルキル、イタコン酸アルキル、及びアクリルニトリルよりなる群から選ばれる1種類以上のものが共重合成分として好ましい。
【0024】
本発明に用いる重合体(A成分)の分子量としては、特に制限されるものではないが、高すぎる場合には、成型加工性が低下し、また低すぎる場合には、重合体自体の柔軟性が著しく低くなり、本発明において含窒素化合物添加による所望の可塑化・柔軟性改善効果が得られなくなるなどの欠点が生じるため、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)のポリスチレン換算により求めた分子量が重量平均分子量で10,000〜800,000の範囲が好適である。重量平均分子量は100,000以上が好ましく、より好ましくは150,000、さらに好ましくは200,000以上である。
【0025】
本発明に用いる重合体(A成分)は、ガラス転移温度が150℃以上のものが好ましく、180℃以上であるより好ましく、200℃以上であると特に好ましい。
本発明の樹脂組成物は、上記の重合体(A)と含窒素化合物(B成分)とを上記の割合にて含む組成物である。
【0026】
本発明において好適に用いられる含窒素化合物(B成分)は上記式(2)で表される。該含窒素化合物(B成分)は、上記式(2)中のX、Xのうち少なくとも1つがニトリル基、ピロリドニル基、イミド基、ピロリル基、ピラゾリル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、ピレニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、モルフォリニル基(2−モルフォリニル基、3−モルフォリニル基)、モルフォリノ基、アミド基、ウレタン基、オキサゾリン基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イソシアナート基などの含窒素官能基であるものが好ましい。この中でも特に、入手の容易さや低コストであることからニトリル基、アミド基、ピロリドニル基、イミド基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルフォリニル基(2−モルフォリニル基、3−モルフォリニル基)、およびモルフォリノ基が好ましく、ニトリル基、アミド基、ピロリドニル基、イミド基がより一層好ましい。
【0027】
本発明の含窒素化合物中、上記式(2)中のRで示される官能基としては、可塑化および柔軟性改善の点からエーテルや直鎖状および分岐状脂肪族炭化水素基などの柔軟性を有する基、また耐熱性保持の点から脂環族および芳香族炭化水素基などの環状骨格を有する剛直官能基が好ましく、炭素原子数1〜22の直鎖状または分岐状のアルキレン基、炭素数5〜12のシクロアルキレン基、炭素数6〜18のアルキルシクロアルキレン基、炭素数7〜12のアラルキレン基又はフェニル基であることが好ましい。この中でも炭素原子数2〜18の直鎖状または分岐状のアルキレン基、炭素数5〜10のシクロアルキレン基、炭素数6〜10のアルキルシクロアルキレン基、フェニレン基のいずれかであることがより好ましく、さらに好ましくは炭素原子数2〜12の直鎖状または分岐状アルキレン基、シクロペンチレン基、シクロへキサレン基、イソホロニレン基、フェニレン基のいずれかである。
【0028】
上記式(2)で表される該含窒素化合物(B成分)としては、該式(2)中のRが炭素原子数2〜12の直鎖状または分岐状アルキレン基、シクロペンチレン基、シクロへキサレン基、イソホロニレン基、フェニレン基のいずれかを表し、Y、Yがいずれも単結合を表し、X、Xはそれぞれ独立にニトリル基、ピロリドニル基、イミド基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルフォリニル基(2−モルフォリニル基、3−モルフォリニル基)、およびモルフォリノ基より選ばれる1つ以上を有する炭素数4〜10の官能基、または水素原子、メチル基を表し、X、Xのいずれか一方が水素原子またはメチル基である場合には他の一方は水素原子およびメチル基以外の官能基から選択されるものが好ましく、該式(2)中のRが炭素原子数2〜12の直鎖状または分岐状アルキレン基、イソホロニレン基のいずれかを表し、Y、Yいずれも単結合を表し、X、Xはそれぞれ独立ピロリドニル基、イミド基より選ばれる1つ以上を有する炭素数4〜10の官能基、または水素原子、メチル基を表し、X、Xのいずれか一方が水素原子またはメチル基である場合には他の一方は水素原子およびメチル基以外の官能基から選択されるものであると特に好ましい。
【0029】
以上より、当該含窒素化合物(B成分)として、具体的には、1−エチル−2−ピロリドン、1−プロピル−2−ピロリドン、1−ブチル−2−ピロリドン、1−ヘキシル−2−ピロリドン、1−オクチル−2−ピロリドン、1−ドデシル−2−ピロリドン、1−ヘキシルイミダゾ−ル、1−オクチルイミダゾ−ル、1−ドデシルイミダゾ−ル、1−ヘキシルピペラジン、1−オクチルピペラジン、1−ドデシルピペラジン、1,2−ビス(2−ピロリドニル)エタン、1,3−ビス(2−ピロリドニル)プロパン、1,4−ビス(2−ピロリドニル)ブタン、1,6−ビス(2−ピロリドニル)ヘキサン、1,8−ビス(2−ピロリドニル)オクタン、1,12−ビス(2−ピロリドニル)ドデカン、イソホロニレン−ビス(2−ピロリドン)、イソホロニレン−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボキシミド)、イソホロニレン−ビス(フタルイミド)からなる群より選ばれる1種類以上が好ましいものとして挙げられる。中でも、1−オクチル−2−ピロリドン、
【化7】

1,2−ビス(2−ピロリドニル)エタン、
【化8】

1,12−ビス(2−ピロリドニル)ドデカン、
【化9】

イソホロニレン−ビス(2−ピロリドン)、
【化10】

イソホロニレン−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボキシミド)
【化11】

からなる群より選ばれる1種類以上の含窒素化合物が特に好ましい。
【0030】
本発明の樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。例えば各成分を予備混合した後、射出成形に代表される成形手法により成形する方法が挙げられる。予備混合の手段としては、手動ブレンド、ナウターミキサー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機などを用いる方法を挙げることができる。予備混合においては場合により押出造粒器やブリケッティングマシーンなどにより造粒を行うこともできる。予備混合後の成形手法としては射出成形・押出成形・ブロー成形などを挙げることができる。
【0031】
また、上述の予備混合後、溶融混練を行いペレット化してもよい。この手法では、上述の予備混合後、ベント式二軸押出機に代表される溶融混練機で溶融混練、およびペレタイザー等の機器によりペレット化する。溶融混練機としては他にバンバリーミキサー、混練ロール、恒熱撹拌容器などを挙げることができるが、ベント式二軸押出機が好ましい。
他に、各成分を予備混合することなく、それぞれ独立に二軸押出機に代表される溶融混練機または成形機に供給する方法も取ることもできる。
【0032】
また、その他の混合方法としてはN,N’−ジメチルホルムアミドなどの有機溶媒やその他の適当な溶媒に各成分樹脂を溶解・膨潤させ、機械的に、あるいは超音波などを用いて撹拌したのち、溶媒を蒸発せしめ濃縮する方法も有効であり、特に本発明の樹脂組成物を用いてフィルムを得る為に当該方法は好適である。
【0033】
本発明の樹脂組成物は、昇温速度10℃/分での示差走査熱量測定によるガラス転移温度が100℃以上であるものが好ましく、120℃以上であるとより好ましく、140℃以上であると更に好ましく、160℃以上であると極めて好ましい。ガラス転移温度がこの範囲内にあるときは実用に耐えうる十分な耐熱性を有する。また、得られる樹脂組成物の成形性の観点から、ガラス転移点の上限は250℃であり、ガラス転移温度がこの範囲内であれば十分な成形性を有する。
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて架橋剤、熱安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、離型剤等を添加することもできる。
【実施例】
【0034】
以下の実施例により本発明の詳細をより具体的に説明する。しかし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
本実施例に使用したα−メチレン−γ−メチル−γ−ブチロラクトン(MeMBL)は東京化成製、メチルメタクリレート(MMA)およびN,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)は和光純薬製を使用し、使用前に蒸留精製したものを重合反応に用いた。
【0035】
ガラス転移温度(Tg)はTA instruments社製DSC2920を用い、温度範囲30〜250℃、昇温速度10℃/分にて測定し、1回目の測定を行った後に液体窒素で急冷・クエンチし、その後2回目の測定を行った。2回目の値を重合体および樹脂組成物のTgとして本実施例に記した。
【0036】
重合体の数平均重合度、重量平均重合度、分散度は数平均重合度、重量平均重合度、分散度はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定、標準ポリスチレンに換算した。
GPC測定機器は
検出器:RI−101 示差屈折率計 (昭和電工)
カラム:TSKgel Super AWM−H
6.0mm(ID)×15.0cm(L) (東ソー) 2本
測定装置:515ポンプ、717plus 自動注入装置 (日本ウォーターズ)
重合体から得られたフィルムの外観(透明性)を目視にて判断し、フィルムの柔軟性については下記の基準に従って評価した。
○・・・フィルムを折り曲げることができる。
×・・・フィルムを曲げようとすると曲率がつく前に割れる。
【0037】
[調製例1]
ポリ(α−メチレン−γ−メチル−γ−ブチロラクトン)(PMeMBL)の重合
α−メチレン−γ−メチル−γ−ブチロラクトン(MeMBL)33.6g(0.3mol)、重合開始剤としてN,N’−アゾビスイソブチロニトリル0.168g(1.0×10-3 mol)、溶媒としてDMFを三ツ口フラスコに入れオイルバス中、重合温度60℃で24時間付加重合せしめた。得られた重合体(PMeMBL)のガラス転移温度は220℃、重量平均分子量は431,000であった。
【0038】
[調製例2]
ポリ(α−メチレン−γ−メチル−γ−ブチロラクトン/メチルメタクリレート)共重合体(P(MeMBL/MMA)、MeMBL/MMA=70/30mol%)の重合
α−メチレン−γ−メチル−γ−ブチロラクトン(MeMBL)23.6g(0.21mol)、メチルメタクリレート(MMA)9.01(0.09mol)、重合開始剤としてN,N’−アゾビスイソブチロニトリル0.162g(1.0×10-3 mol)、溶媒としてDMFを三ツ口フラスコに入れオイルバス中、重合温度60℃で24時間付加重合せしめた。得られた重合体(P(MeMBL/MMA))のガラス転移温度は191℃、重量平均分子量は385,000であった。
【0039】
[調製例3]
ポリ(α−メチレン−γ−メチル−γ−ブチロラクトン/アクリロニトリル)共重合体(P(MeMBL/AN)、MeMBL/AN=70/30mol%)の重合
α−メチレン−γ−メチル−γ−ブチロラクトン(MeMBL)11.75g(0.105mol)、アクリロニトリル(AN)2.4(0.045mol)、重合開始剤としてN,N’−アゾビスイソブチロニトリル0.071g(4.3×10-4 mol)、溶媒としてDMFを三ツ口フラスコに入れオイルバス中、重合温度60℃で7時間付加重合せしめた。得られた重合体(P(MeMBL/AN))のガラス転移温度は215℃、重量平均分子量は340,000であった。
【0040】
[調製例4]
ポリ(α−メチレン−γ−メチル−γ−ブチロラクトン/イタコン酸ジn−ブチル)共重合体(P(MeMBL/DBIA)、MeMBL/DBIA=90/10mol%)の調製
α−メチレン−γ−メチル−γ−ブチロラクトン(MeMBL)15.1g(0.13mol)、イタコン酸ジn−ブチル(DBIA)3.65(0.015mol)、重合開始剤としてN,N’−アゾビスイソブチロニトリル0.094g(5.7×10-4 mol)、溶媒としてDMFを三ツ口フラスコに入れオイルバス中、重合温度60℃で7時間重合せしめた。得られた重合体(P(MeMBL/DBIA))のガラス転移温度は209℃、重量平均分子量は487,000であった。
【0041】
[実施例1]
調製例1で調製したPMeMBL0.7gと1−オクチル−2−ピロリドン0.3gをDMF4gに溶解した。得られたドープをガラス基板上で400μmのドクターナイフを用いてフィルム状に展開した。展開したドープを80℃のホットプレート上で2hr、80℃の真空乾燥機中で3時間保持することにより溶媒を除去しフィルムを作製した。得られた成形体は無色透明であり、ガラス転移温度は170℃であった。結果を表1に示す。
【0042】
[実施例2]
調製例1で調製したPMeMBL0.7gと1,2−ビス(2−ピロリドニル)エタン0.3gをDMF4gに溶解した以外は実施例1と同様の操作によりフィルムを作製した。結果を表1に示す。
【0043】
[実施例3]
調製例1で調製したPMeMBL0.7gと1,12−ビス(2−ピロリドニル)ドデカン0.3gをDMF4gに溶解した以外は実施例1と同様の操作によりフィルムを作製した。結果を表1に示す。
【0044】
[実施例4]
調製例1で調製したPMeMBL0.7gとイソホロニレン−ビス(2−ピロリドン)0.3gをDMF4gに溶解した以外は実施例1と同様の操作によりフィルムを作製した。結果を表1に示す。
【0045】
[実施例5]
調製例1で調製したPMeMBL0.7gとイソホロニレン−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボキシミド)0.3gをDMF4gに溶解した以外は実施例1と同様の操作によりフィルムを作製した。結果を表1に示す。
【0046】
[実施例6]
調製例2で調製したP(MeMBL/MMA)0.7gと1−オクチル−2−ピロリドン0.3gをDMF4gに溶解した以外は実施例1と同様の操作によりフィルムを作製した。結果を表1に示す。
【0047】
[実施例7]
調製例2で調製したP(MeMBL/MMA)0.7gと1,2−ビス(2−ピロリドニル)エタン0.3gをDMF4gに溶解した以外は実施例1と同様の操作によりフィルムを作製した。結果を表1に示す。
【0048】
[実施例8]
調製例3で調製したP(MeMBL/AN)0.7gと1−オクチル−2−ピロリドン0.3gをDMF4gに溶解した以外は実施例1と同様の操作によりフィルムを作製した。結果を表1に示す。
【0049】
[実施例9]
調製例4で調製したP(MeMBL/DBIA)0.9gと1−オクチル−2−ピロリドン0.1gをDMF4gに溶解した以外は実施例1と同様の操作によりフィルムを作製した。結果を表1に示す。
【0050】
[比較例1]
調製例1で調製したPMeMBL0.9gとフタル酸ジメチル0.1gをDMF4gに溶解した以外は実施例1と同様の操作によりフィルムを作製した。結果を表1に示す。
【0051】
[比較例2]
調製例1で調製したPMeMBL0.9gとアジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)0.1gをDMF4gに溶解した以外は実施例1と同様の操作によりフィルムを作製した。結果を表1に示す。
【0052】
[比較例3]
調製例2で調製したP(MeMBL/MMA)0.9gとアジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)0.1gをDMF4gに溶解した以外は実施例1と同様の操作によりフィルムを作製した。結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の樹脂組成物は、光ファイバなどの情報伝送体、光メディア用途、電気・電子・OA用途、自動車・産業機器用途、医療・保安用途、プラスチックレンズ、シート・フィルム・包装用途、雑貨用途をはじめとする様々な用途に幅広く用いることが、より具体的には、光メディア用途としてDVD、CD−ROM、CD−R、ミニディスク、電気・電子・OA用途として携帯電話、パソコンハウジング、電池のパックケース、液晶用部品、コネクタ、自動車・産業機器用途としてヘッドランプ、インナーレンズ、ドアハンドル、バンパ、フェンダ、ルーフレール、インバネ、クラスタ、コンソールボックス、窓ガラス、カメラ、電動工具、医療・保安用途として銘板、カーポート、液晶用拡散・反射フィルム、飲料水タンク、雑貨としてパチンコ部品、消火器ケース、プラスチックレンズとして撮像系レンズ、ピックアップレンズ、fθレンズ、球面レンズ、平面レンズなど様々な形状のプラスチックレンズなどに好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全構成単位の50モル%超が下記一般式(1)で表される構成単位である重合体(A成分)と、
【化1】

(式中、nは0、1、2のいずれかであり、R、R、R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を表す。)
含窒素化合物(B成分)からなり、前記A成分とB成分の割合が質量比で30/70〜95/5であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1において、含窒素化合物(B成分)が下記一般式(2)で表される化合物である樹脂組成物。
【化2】

(式中、Rは炭素原子数1〜22の直鎖状または分岐状のアルキレン基、炭素数5〜12のシクロアルキレン基、炭素数6〜18のアルキルシクロアルキレン基、炭素数7〜12のアラルキレン基又はフェニレン基を表す。Y1およびYはそれぞれ独立に単結合、酸素原子、もしくは炭素原子数1〜18のアルキレン基を表す。X、Xはそれぞれ独立にニトリル基、ピロリドニル基、イミド基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルフォリニル基およびモルフォリノ基を有する官能基、または水素原子、メチル基を表し、X、Xのいずれか一方が水素原子またはメチル基である場合には他の一方は水素原子およびメチル基以外の官能基から選択される。)
【請求項3】
昇温速度10℃/分での示差走査熱量測定によるガラス転移温度が100℃以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。

【公開番号】特開2011−46805(P2011−46805A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195559(P2009−195559)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】