説明

透析患者における左室肥大の予防および処置に有用な化合物

ESRDまたは透析患者における左室肥大の予防および/または治療のための医薬を調製するためのプロピオニル L-カルニチン、またはその医薬用塩の使用について説明するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、末期の腎臓疾患透析患者(ESRD)における左室肥大(LVH)の予防および/または治療するためのプロピオニル L-カルニチンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
かれらの生存中、腎不全および慢性透析にかかっている患者は、腎臓疾患誘導性心不全の基礎を形成する様々な要因にさらされる。複数要因の中で、動脈血管のバイパス、尿毒性毒素、貧血、副甲状腺機能亢進症、脂質異常症、容積過負荷および圧負荷は、各患者の異なる重症度についての心臓容積の進行および収縮変化の一因である。
【0003】
年齢(透析施行患者の年齢は徐々に高くなっており、患者の多くは70歳以上の高齢者であることが知られている)、透析継続期間および既存の腎疾患は、さらなる悪化させる要因であり、また心臓レベルでは尿毒性代謝不全の表出である代謝不全が起こりうる。
【0004】
これらの代謝不全の予防および/または治療が、透析施行患者における罹患率および死亡率に対する原因との関連性がより一層重要となってきた腎不全によって生じた心不全の予防に対する最も論理的アプローチを示すことは明らかである。
【0005】
左室肥大の臨床経過は、慢性の腎不全と厳密に関連している。実際、Miner. Electrolyte Metab. 1999 Jan-Apr; 25(1-2):90-4」では、末期の腎臓疾患患者において左室肥大は非常によく起こる合併症であり、その頻度は透析患者においてより高い傾向にあることが報告されている。
【0006】
Nephron 2002 Mar; 90(3):256-61において、LVHは、ESRDに罹患した患者において一般的におこり、心臓血管イベントについての独立したリスクファクターであることが報告されている。
【0007】
Pediatr Nephrol 2000 Sep; 14(10-11):898-902において、左室肥大(LVH)は、末期の腎臓疾患に罹患した成人における心臓血管の罹患率および死亡率についての独立したリスクファクターとして認識されてきたことが報告されている。
【0008】
Nephron 1990; 55(2):114-20において、左室肥大に関する臨床および心エコーの結果に対する予想試験は、拡張型心筋症がなく糖尿病に罹っていない透析患者において実施され、患者は3〜5年間追跡されたことが報告されている。この期間の後、患者の33%は正常な心エコー図を示し、41%が軽度で、27%が重度の肥大(左室壁の厚み)であった。この研究から、重度の左室肥大は透析患者において生じることが多く、高い死亡率と関連していることが結論付けられた。
【0009】
通常、高血圧が診断された後にLVHが検出されるが、しかし最近の報告で、LVHが存在した後に高血圧が進行するか、または例えばアテロ−ム性動脈硬化症または糖尿病などの二次症状によって悪化され得るということが示された。LVHは、増強した電圧が検出される心電図を包含するいくつかの方法、胸部X線によって、または好ましくは心筋壁の厚みおよび質量の増加を検出する心エコー検査によって、診断される。
【0010】
現在までに、腎不全に影響されなかった患者におけるLVHの処置は、動脈の血圧コントロール、例えば1以上の後記の様々な薬剤を投与することからなる:利尿薬、例えばジアゾキシドまたはヒドロクロロチアジド;降圧薬、例えばメチルドパまたはヒドラジン;β-アドレナリン作動性遮断薬、例えばプロプラノールまたはラベタロール;カルシウムアンタゴニスト、例えばジルチアゼムまたはニフェデピン;またはアンギオテンシン転換酵素(ACE)阻害剤、例えばカプトプリル、スピラプリルまたはシラザプリル。本態性高血圧を処置するために一般的に前記した多くの他の薬剤、例えば利尿薬およびヒドラジンは、いずれもLVHに対する効果を示さない。
【0011】
プロピオニル L-カルニチンは、既知の化合物であって、その製造方法はUS 4,254,053において記載されている。
【0012】
プロピオニル L-カルニチンの医薬的使用は、既に知られている。
EP 0793962 は、Leriche Fontaine's 分類のステージIIにある慢性閉塞性動脈硬化症に罹患した患者を処置するための医薬品製造のための、プロピオニル L-カルニチンおよびその薬学的に許容し得る塩の使用を開示する。
【0013】
US 4,434,816 は、末梢血管障害を処置するために、DL-、D-またはL-カルニチンのアシル誘導体[ここで、該アシル基は、2-20個の炭素原子(例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリルおよびアセトアセチルカルニチン等)を含有する]の使用を開示する。
【0014】
US 4,968,719 は、末梢血管障害を処置するためのL-カルニチンおよびその薬学的に許容し得る塩の使用を開示する。
【0015】
Italian Patent IT-1155772 は、心臓の無酸素症、虚血、不整脈症および心不全を処置するためにL-カルニチンのアシル誘導体(例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル等)の使用を開示する。
【0016】
US 4272549 は、血液透析セッションの期間中および1セッション間の期間の両期間中も、アシル-カルニチン(例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル-L-カルニチン等)を尿毒性患者に経口投与することを含む、定期的な血液透析の下にある慢性の尿毒性患者の処置のための治療方法を開示する。
【0017】
J. Physiol. 1994 Jun; 266(6 Pt 2) において:H 2190-7は、ラットにおいて大動脈狭窄によってもたらされる左室肥大の処置のためのプロピオニル L-カルニチンの使用を記載している。この研究において採用した実験用モデルは、腎臓損傷のない高血圧ラットに関する。
【0018】
Am. J. Physiol. 1993 Apr; 264(4 Pt 2)において:H 1111-7は、ラットにおける心筋梗塞の処置のためのプロピオニル L-カルニチンの使用を記載する。この文献において報告された結果から、プロピオニル L-カルニチンがACE 阻害により見出された様式と類似した様式において、心筋梗塞によって生じた非代償性の異常肥大の程度を低下させることが判った。この研究において採用された実験モデルは、腎臓損傷がないラットにおける心筋梗塞に関する。このモデルにおいて、プロピオニル L-カルニチンは、腎不全を有する患者においてLVHの処置に活性ではないACE阻害剤と同じ程度活性である(この態様は、下記においてより詳しく議論される)。
【0019】
Mol.Cell Biochem. 1992 Oct 21;116(1-2):139-45において、ラットの摘出したかん流肥大心臓におけるプロピオニル L-カルニチンの代謝効果が記載されており、心臓内の肥大は圧負荷によって誘導される。この研究において採用された実験用モデルは、腎臓損傷がないラットの摘出したかん流肥大心臓に関する。
【0020】
J. Cardiovasc. Pharmacol. 1992 Jul;20(1):88-98において、加圧過負荷心臓肥大を有するラットにおけるプロピオニル-L-カルニチンの代謝活性が記載されている。また、この研究において採用された実験用モデルは、腎臓損傷がないラットの肥大心臓に関する。
【0021】
高血圧または虚血によって引き起こされる心臓の変化を処置するためのプロピオニル L-カルニチンの使用についてこれら全ての試験は、正常な腎臓機能を示す患者において実施されたものであり、これらのモデルにおいて、ACE阻害薬および他の抗高血圧剤などの薬剤の効力もまた認められる。
【0022】
上記した複数の文献は、尿毒性患者におけるLVHの予防および/または治療のためのプロピオニル L-カルニチンの使用を予測も示唆もしていない。実際、非尿毒性患者におけるLVHを処置するために有用な薬剤は、ESRD罹患患者または透析患者におけるLVHを処置するためには有効ではないことがよく知られている。
【0023】
Nephrol. Dial. Transplant(1998) 13: 1489-1493では、血圧降下剤薬剤および/または透析による血圧低下にもかかわらず、血液透析患者におけるLVHは、大抵、持続的かつ進行性であり、LVHにおける心筋に関する組織学的変化は不可逆的変化(一部)であると報告されている。この文献では、腎臓患者におけるLVHは、高血圧以外の要因によって引き起こされ、これらの要因の例は、副甲状腺機能亢進症、交感神経作用(N. Engl. J. Med. 1992; 327: 1912-1918)、動脈硬化(Kidney Int. 1993; 43 Suppl. 41: 42-49)による脈拍の反射および貧血であることも報告されている。
【0024】
Am. J. Kidney Dis. 2002 Feb; 39(2):227-44では、血圧降下剤単独では、血液透析患者における血圧(BP)をコントロールするには十分ではないことが報告されている。
【0025】
Ter. Arkh. 1997; 69(6) : 24-7では、初期の糸球体腎炎および軽症の慢性腎不全に罹った58人の患者において、左室(LV)筋肉体積およびLV収縮機能および左室拡張機能へのカプトプリル対エナラプリルの効果に対する試験において得られた結果は、LV駆出分画、初期および後期の経僧帽弁血流速度、および初期LV 対 後期LVの流入速度比が両方のACE阻害薬剤により有意に影響されなかったということが報告された。
【0026】
非尿毒性患者における高血圧または虚血により引き起こされるLVHは、病因の観点または治療方法の観点のいずれにおいても、尿毒性患者におけるLVHとは異なることは、当業者には自明である。また、当分野の技術者によっても、腎臓疾患の罹患患者におけるLVHの処置に関する有効な方法が今まで存在していないことはよく知られている。
【0027】
実際に、上記のとおり、ESRD 患者におけるLVHの進行は、非腎臓疾患患者における頻度に対して、より高い頻繁である(Miner. Electrolyte Metab. 99 Jan-Apr; Nephron 2002; Pediatr. Nephrol. 2000; Nephrol. Dial. Transpl. 97; Blood Perif. 94; Nephron. 90); ESRD 患者におけるLVHの原因は、副甲状腺機能亢進症、交感神経活性(N.Engl. J. Med. 1992; 327: 1912-1918)、硬化した動脈(Kidney Int. 1993; 43 Suppl. 41: 42-49)による脈拍の反射、貧血、高脂血症、尿毒性毒および代謝変調と関連している;血圧降下剤は血液透析患者において血圧をコントロールするのに十分ではない(Am. J. Kidney Dis. 2002 Feb; 39(2):227-44, Ter. Arkh. 1997; 69(6):24-7; Nephrol. Dial. Transpl. 97; Nephrol. Dial. Transpl. 98; Am. J. Kideny Dis. 2002)。
【0028】
腎不全に罹っていない患者におけるLVH を処置するために有用な薬剤(例えば、利尿薬、ACE阻害薬または本態性高血圧を処置するために通常処方される多くの他の薬剤)が、腎不全罹患患者におけるLVHを処置するために有効でないという知識から、他の化合物、例えばプロピオニル L-カルニチンが、腎不全罹患患者におけるLVHを処置するために効果的ではないであろうとされてきたことを強く示唆している。
【0029】
この技術的先入観にもかかわらず出願人は、腎不全を有する患者におけるLVHを予防および/または治療するためのプロピオニル L-カルニチンの効果についての試験を続けた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
驚くべきことに、プロピオニル L-カルニチンは、本態性高血圧により生じる高血圧に対して効果を示さず、高血圧を示すかまたは示さないESRDまたは透析患者における左室肥大の予防または処置のいずれにも有用であることが判った。
【課題を解決するための手段】
【0031】
従って、本発明の目的は、ESRDまたは透析患者における左室肥大の予防および/または治療のための医薬を調製のためのプロピオニル L-カルニチンまたはその医薬用塩の使用である。
【0032】
本発明のさらなる目的は、ESRDまたは透析患者における左室肥大の予防および/または治療のための医薬の調製のためのプロピオニル L-カルニチンの使用であって、ここで該患者における本態性高血圧は、存在しないか、または薬剤治療を必要とする程重症ではない。
【0033】
本発明のさらなる目的は、ESRDまたは透析患者における左室肥大の予防および/または治療のための医薬を調製のためのプロピオニル L-カルニチンの使用であって、ここで該患者における本態性高血圧が存在する。
【0034】
本発明のさらなる目的は、ESRDまたは透析患者における左室肥大の予防および/または治療のための医薬を調製のためのプロピオニル L-カルニチンの使用であって、ここで該プロピオニル L-カルニチンを、それ自身ではLVHを処置しない抗高血圧薬剤と組み合わせて使用できる。
【0035】
本発明のさらなる目的は、ESRDまたは透析患者における左室肥大の予防および/または治療のための医薬を調製するためのプロピオニル L-カルニチンの使用であって、ここで該プロピオニル L-カルニチンは、アンギオテンシン転換酵素阻害剤またはカルシウム チャンネル遮断薬を含む群から選択される抗高血圧薬剤と組み合わせて使用される。
【0036】
プロピオニル L-カルニチンの医薬上許容し得る塩が意味することは、望ましくない毒性または副作用を生じさせない酸とプロピオニル L-カルニチンのあらゆる塩である。
【0037】
プロピオニル L-カルニチンの医薬用塩は、Int. J. of Pharm. 33 (1986), 201-217に列挙されたFDAに承認された塩を意図するものである。
【0038】
これらの酸は、薬理学者および薬剤師にはよく知られており、かかる塩の非限定的な例示は次のとおりである:塩化物、臭化物、オロチン酸塩、アスパラギン酸塩、アスパラギン酸塩、クエン酸塩、クエン酸マグネシウム、リン酸塩、酸リン酸塩、フマル酸塩および酸フマル酸塩、フマル酸マグネシウム、乳酸塩、マレイン酸塩および酸マレイン酸塩、シュウ酸塩、酸シュウ酸塩、パモエート、酸パモエート、硫酸塩、酸硫酸塩、グルコース リン酸塩、酒石酸塩、酸酒石酸、グリセロホスフェート、ムケート(mucate)、酒石酸マグネシウム、2-アミノ エタンスルホネート、2-アミノ エタンスルホン酸マグネシウム、メタンスルホネート、コリン酒石酸、トリクロロ酢酸塩およびトリフルオロ酢酸塩。
【0039】
プロピオニル L-カルニチンが他の抗高血圧薬剤と組み合わせて投与される場合、好ましい降圧剤は、ACE阻害薬およびカルシウムアンタゴニストである。好ましいACE阻害薬は、スピラプリル、エナラプリル、ラミプリル、ペルインドプリル、インドラプリル、リシノプリル(lysinopril)、キナプリル、ペントプリル、シラザプリル、カプトプリル、ゾフェノプリル、ピバロプリルおよびフォシノプリルである。
【0040】
好ましいカルシウムアンタゴニストは、ジルチアゼム、ニフェジピン、ベラパミル、ニカルジピンおよびニモジピンである。
【0041】
透析患者においてLVHを予防および/または治療するためのプロピオニル L-カルニチンの有効性は、予備試験で示されている。
【0042】
下記の実施例は本発明を説明するものである。
【実施例】
【0043】
プロピオニル L-カルニチン(3および6 mg/kgを26週間、血液透析セッションの終了時に1週間に3回静脈投与する)による処置の予防および/または治療効果の両方を評価するために有用な臨床試験(300患者において、多施設共同試験、平行試験、無作為試験、二重盲験、プラセボ対照用量設定試験)を行った。
【0044】
試験対象患者基準
1)ESRDに罹患しており、1週間に3回の重炭酸透析を受ける、>18歳の男性または女性の外来患者;
2)治療処置の段階的患者適応による変動性をコントロールできるように、ある程度の透析安定性(少なくとも透析の6ヶ月以降)を達成しており、透析の終了時に水素過負荷の臨床的症候がない患者;
3)心室中隔および左室壁の厚みが11mmとして規定した心臓損傷の程度を示す患者;
4)左室駆出分画>40%を示す患者;
5)少なくとも3ヶ月間の安定な薬理学的処置の下にある患者;
6)過去3ヶ月間に急性虚血性イベントが存在しない(労作性狭心症、不安定狭心症、AMI);
7)十分な音響窓および良好なエコー輝度の存在;
8)投与質問票による協力能力。
【0045】
試験対象患者除外基準
患者が下記の試験対象患者除外基準のいずれかを満たす場合、該患者を本試験への参加を認めない:
1)重度の貧血の症候[試験前3ヶ月間に少なくとも一つの評価においてヘマトクリットが28%よりも低く、通常の疾患発現のイベント理由(例えば、出血)以外の明白な原因がない]を有する患者;
2)副甲状腺機能亢進症のイベント症候(血漿パラトルモン値>800 pg/ml;パラメーターの決定は一つの研究室に集約される)を有する患者;
3)体重>100 kgの患者;
4)骨折のリスクが高い骨の脱石灰化を有する患者;
5)腕に近接する動静脈瘻孔を有する患者;
6)中心静脈力テ−テルを有する患者;
7)心筋梗塞(患者の選抜3ヶ月前に)、労作性狭心症または不安定狭心症の既往歴をもつ患者;
8)心房細動または頻出する期外収縮性不整脈を有する患者(洞律動において10回の連続サイクルの記録が困難であるため);
9)血行動態的に有意な弁膜症(軽症-重症);
10)心膜炎および/または明白な心膜漏出液の存在;
11)腎不全を引き起こす全身性免疫疾患患者;
12)ペースメーカーを有する患者;
13)コントロール不可能な動脈性高血圧(SAP >180 mmHgおよびDAP>100 mmHgよりも、不変に高い血圧値);
14)試験開始3ヶ月前にLCまたはそのエステル誘導体により処置された患者;
15)妊娠が判定または予測される者、授乳者;
16)登録3ヶ月前に他の臨床試験の参加者。
【0046】
全ての無作為処置期間中、試験中に疾患の処置に必須であると考えられる全ての薬剤を、患者の登録前の少なくとも3ヶ月間該薬剤を投与し、そして該薬剤の用量は全処置期間をとおして一定であるという条件で、投与することができる。
【0047】
これらの薬剤は、エリスロポエチン、コルチゾン、抗血小板薬剤、ビタミンDおよびマルチビタミン複合剤、鉄を基にした溶液を含む。
【0048】
同じように、心動態に対して効果が知られる薬剤による処置を同様の規制でもって認めた:
アンギオテンシンIIレセプターのACE-阻害剤またはアンタゴニスト
α,β-遮断薬;
Ca2+-アンタゴニスト(ベラパミル、ニソルジピンなど);
ジギタリス。
【0049】
26thの処置の週の終了時に、予備分析(ANOVA 分散分析)を、最終評価とベースライン(T26 vs T0)の間、ならびに処理群とコントロール群間両方の、下記症候に関する差違を計算するために行った:
(a)左室隔膜の厚みに対して得られる変動;左室壁後部の厚みに対して得られる変動;収縮終期および心臓拡張終期の左室サイズ(1次元心エコー検査)に対して得られる変動;
(b)収縮終期および心臓拡張終期の左室容量に対して得られる変動;
(c)左室駆出分画(2次元心エコー検査);
(d)視覚的アナログ尺度による透析後の無力症
【0050】
得られた予備データから、本発明の化合物が処置患者[上記に報告した症候(a)-(c)]においてLVHの症候を処置するために有用であることが判った。
【0051】
さらに驚くべきことに、本発明の化合物は、ベースラインと比べて該処置群におけるLVHの症候[上記に報告した時点(a)-(c)]の進行を軽減させることができたことを見出した。コントロール群では、これらの症候はそのベースラインと比べて悪化した。
【0052】
様々な医薬用量形態は、プロピオニル L-カルニチンに対して適切であり、好ましくは経口または非経口投与であるが、物理的な送達システム、例えば経皮的投薬形態もまた考え得る。
【0053】
LVHの処置または予防のためのプロピオニル L-カルニチンの典型的な経口の一日用量は、単回または分割用量にて、一日あたり約1g〜約5g、好ましくは2-4gで投与される。
【0054】
一般的に、LVHに罹患している透析患者を処置またはLVHを予防する際に、本発明のプロピオニル L-カルニチンは、各透析セッションの終了時に好ましい一日用量では約1〜24mg/Kg/体重、好ましくは3〜6 mg/Kg/体重の範囲で静脈投与され得る。
【0055】
この発明において使用した薬剤のための通常の経口製剤は、錠剤、カプセル、シロップ、エリキシルおよび懸濁液を包含する。この発明において使用した薬剤について典型的な注射用製剤は、溶液および懸濁液を包含する。
【0056】
様々な医薬用量形態は、プロピオニル L-カルニチンに適当であって、好ましくは経口または非経口であるが、物理的送達システム、例えば経皮的投薬形態もまた考慮され得る。
【0057】
本発明は、活性成分(即ちプロピオニル L-カルニチン)および血圧降下薬剤を組合せて、透析患者においてLVHを治療または予防する方法に関するものであって、ここで該活性成分は別々に投与されてもよく、また本発明は、キット形態において別の医薬組成物を組み合わせることにも関する。即ち、一つのパッケージ中で、2つの別々のユニット、即ちプロピオニル L-カルニチン組成物および抗高血圧組成物(特に、ACE 阻害剤またはカルシウムアンタゴニストの組成物)を組み合わせるキットも意図する。該キット形態が特に有利であるのは、別々の成分が、異なる投薬形態(例えば、経口および非経口)で投与されなければならないか、または様々な投薬間隔で投与される場合である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ESRDまたは透析患者における左室肥大の予防および/または治療のための医薬品製造のための、プロピオニル L-カルニチン、またはその医薬用塩の使用。
【請求項2】
プロピオニル L-カルニチンの医薬用塩が、塩化物、臭化物、オロチン酸塩、アスパラギン酸塩、酸アスパラギン酸塩、酸クエン酸塩、クエン酸マグネシウム、リン酸塩、酸リン酸塩、フマル酸塩、酸フマル酸塩、フマル酸マグネシウム塩、乳酸塩、マレイン酸塩および酸マレイン酸塩、シュウ酸塩、酸シュウ酸塩、パモ酸塩および酸パモ酸塩、硫酸塩、酸硫酸塩、グルコースリン酸塩、酒石酸塩、酸酒石酸塩、グリセロホスフェート、ムケート、酒石酸マグネシウム塩、2-アミノ エタンスルホネート、マグネシウム2-アミノエタンスルホネート、メタンスルホネート、コリン酒石酸塩、トリクロロ酢酸塩およびトリフルオロ酢酸塩からなる群から選択される、請求項1記載の使用。
【請求項3】
本態性高血圧が存在しないか、または薬剤治療を必要とする程重症ではない場合に、プロピオニル L-カルニチンが投与される、請求項1記載の使用。
【請求項4】
本態性高血圧が存在する場合に、プロピオニル L-カルニチンが投与される、請求項1記載の使用。
【請求項5】
プロピオニル L-カルニチンが、抗高血圧薬剤自体がLVHを処置しない抗高血圧薬剤との組合せで使用される、請求項1記載の使用。
【請求項6】
抗高血圧薬剤が、アンギオテンシン転換酵素阻害剤、カルシウムチャンネル遮断薬、ACE阻害薬、利尿薬、β-アドレナリン作動性遮断薬またはカルシウムアンタゴニストからなる群から選択される、請求項5記載の使用。
【請求項7】
ACE 阻害剤が、スピラプリル、エナラプリル、ラミプリル、ペルインドプリル、インドラプリル、リシノプリル、キナプリル、ペントプリル、シラザプリル、カプトプリル、ゾフェノプリル、ピバロプリルおよびフォシノプリルからなる群から選択される、請求項6記載の使用。
【請求項8】
カルシウム アンタゴニストが、ジルチアゼム、ニフェジピン、ベラパミル、ニカルジピンおよびニモジピンからなる群から選択される、請求項6記載の使用。
【請求項9】
プロピオニル L-カルニチンが、経腸または非経口投与に適当な形態で存在する、請求項1記載の使用。
【請求項10】
プロピオニル L-カルニチンが、経口経路によって投与される場合は、単回または分割用量において1〜約5 g、好ましくは2〜4 g/日、または静脈投与される場合に各透析セッションの終了時に約1〜24 mg/Kg/体重、好ましくは3〜6 mg/Kg/体重で投与される、請求項1記載の使用。
【請求項11】
経腸または非経口投与のためのプロピオニル L-カルニチンは、錠剤、カプセル、シロップ、エリキシル、座薬、懸濁液または溶液の形態にある、請求項9記載の使用。
【請求項12】
組合せは、医薬的に許容し得る賦形剤および/または担体中に複数の活性成分を組合わせる一つの医薬組成物から投与され得る、請求項5記載の使用。
【請求項13】
2つの活性成分が、同時または連続過程で別々に投与され得る、請求項5記載の使用。
【請求項14】
2つの活性成分が、あらゆる適切な用量形態の組合せにて投与され得る、請求項13記載の使用。

【公表番号】特表2009−511619(P2009−511619A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536039(P2008−536039)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【国際出願番号】PCT/EP2006/067465
【国際公開番号】WO2007/045639
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(591043248)シグマ−タウ・インドゥストリエ・ファルマチェウチケ・リウニテ・ソシエタ・ペル・アチオニ (92)
【氏名又は名称原語表記】SIGMA−TAU INDUSTRIE FARMACEUTICHE RIUNITE SOCIETA PER AZIONI
【Fターム(参考)】