説明

透湿化粧材及びこれを用いた調湿化粧板

【課題】紙質材本来の透湿性能を確保しつつ、意匠性を損なうことなく耐アルコール性等に優れた透湿化粧材を提供することを目的とし、さらにはこの透湿化粧材を貼り合わせた調湿化粧板を提供する。
【解決手段】紙質材2/インキ層3/樹脂層4の順に形成された透湿化粧材1において、少なくとも紙質材2の表面の一部が露出している。樹脂層4は、インキ層3を覆うように形成されているが、紙質材2の露出部分を覆うことのないように形成されているので、インキ層3を保護して耐アルコール性等を確保しつつ、紙質材2の透湿性能を低減させることもない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内や収納内の相対湿度の変動を小さくする透湿機能を有する透湿化粧材に関し、特に住宅内装建材や収納内装材として使用される化粧板に用いられる透湿化粧材とこれを用いた調湿化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、相対湿度の変動を小さくする化粧材として、種々のものが提案されている。例えば、紙基材上に透湿性を有する樹脂層と透明紙とを順に積層した化粧シートが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、基材上に、吸水性物質を含有する吸放湿性樹脂層と、吸水性物質を含有しない発砲樹脂層とを積層した吸放湿性材料が提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
また、透湿度を確保するための化粧材として、原紙の表面に、絵柄印刷層及び表面保護樹脂層が形成され、絵柄印刷層のインキの塗布量を10g/m以下とし、表面保護樹脂層の塗布量を3g/m以下とした化粧紙が提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−113663公報
【特許文献2】特開2002−159825公報
【特許文献3】特開2002−180398公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、各層を構成する材料が紙基材や吸放湿性材料であっても、これらを互いに全面で積層構造としていることから、それぞれの吸放湿特性(調湿特性)が低減してしまい、本来の性能を発揮することができなかった。
【0007】
しかも、意匠性を確保するために、さらに表面に印刷層を設けても、表面に汚れがついたときにアルコールでふき取るような場合に、その表面印刷層がこすれ落ちてしまうという問題もあった。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みて、紙質材本来の透湿性能を確保しつつ、意匠性を損なうことなく耐アルコール性等に優れた調湿化粧材を提供することを目的とし、さらにはこの調湿化粧材を貼り合わせた調湿化粧板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、紙質材/インキ層/樹脂層の順に形成された透湿化粧材において、少なくとも紙質材の表面の一部が露出していることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、紙質材/インキ層/樹脂層の順に形成された透湿化粧材において、少なくとも紙質材の表面の一部が露出している透湿化粧材を、吸放湿性基材に貼り合わせたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、紙質材/インキ層/樹脂層の順に形成された透湿化粧材において、少なくとも紙質材の表面の一部が露出していることにより、この露出部分からの透湿性能を確保することができる。
【0012】
この透湿性能を発現する透湿化粧材を吸放湿性基材に貼り合わせることにより、吸放湿性基材本来の調湿性能を発揮させることができる。
【0013】
また、紙質材の露出部分を覆うことのないようにインキ層を形成することで、住宅内装建材や収納内装材の用途に応じて、好みの意匠性を付与することができる。
【0014】
また、樹脂層は、インキ層を覆うように形成されているが、紙質材の露出部分を覆うことのないように形成されているので、インキ層を保護して耐アルコール性等を確保しつつ、紙質材の透湿性能を低減させることもない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態である透湿化粧材を示す模式断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態である透湿化粧材を示す模式断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態である透湿化粧材を示す模式断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態である透湿化粧材を示す模式断面図である。
【図5】本発明の一実施形態である透湿化粧材を貼り合わせた化粧板を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による透湿化粧材1を示す模式断面図である。2は紙質材、3はインキ層、4は樹脂層である。
【0017】
紙質材2としては和紙、薄葉紙、紙間強化紙、チタン含浸紙及び不織布などを挙げることができ、JIS Z0208(温度条件23℃)で測定される透湿度が1000以上であることが好ましい。また、紙質材2の坪量は、23〜200g/mの範囲のものが好ましい。要するに、紙質材2が、その本来の透湿性能を有するものであれば、使用することができる。なお、樹脂含浸紙やPVAシートなどでは、透湿度が700〜800(温度条件23℃)であり透湿性能は劣るものの、用途に応じては、使用することは可能である。
【0018】
紙質材2の表面上にインキ層3を印刷により形成するが、この際、紙質材2の本来有する透湿性能を十分に発揮するためには、紙質材2の表面が10%以上露出するようにインキ層3を形成することが好ましく、意匠性を確保する点からは露出度を90%以下とすることが好ましい。この場合、露出度が紙質材2の表面全面に対して一様でなくてもよいが、紙質材2の表面全面に対して平均的に10〜90%の範囲で紙質材2の表面が露出するようにすると、インキ層3による絵柄模様が違和感なく視認されることになるため、意匠性も確保することができるので好ましい。さらに、同様の理由から、紙質材2の全面に対して平均的に露出度を20〜70%とすることがより好ましく、特に30〜50%とすることが好ましい。
【0019】
また、インキ層3の上には樹脂層4を設けてインキ層3の保護層としての役割を担わせるが、この樹脂層4がインキ層3のみならず紙質材2の表面をも覆ってしまうと、紙質材2の本来の調湿性能を低下させてしまうので、紙質材2/インキ層3/樹脂層4の順に形成された化粧材において、すくなくとも紙質材2の表面の一部が露出していることが重要となる。
【0020】
このようなインキ層3と樹脂層4との構成とする手段としては、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷などを挙げることができるが、繊細な模様や優れた意匠性を確保しつつ、インキ層3のパターンと樹脂層4のパターンを略一致するように形成させる点からはグラビア印刷が好ましい(図1参照)。
【0021】
また、インキ層3のパターン幅よりも樹脂層4のパターン幅を広くして、インキ層3の全面を樹脂層4で覆うように形成させると、化粧材1の表面の汚れをアルコールで拭き取るような場合にも、アルコールによってインキ層3が拭き取られることが防止される。したがって、インキ層3のパターンを形成するためのグラビア版の幅よりも樹脂層4のパターンを形成するためのグラビア版の幅を広くしたり、あるいは、インキ層3のパターンを形成するためのグラビア版の深さよりも樹脂層4のパターンを形成するためのグラビア版の深さを深くすることが好ましい。なお、この場合、樹脂層4を形成する樹脂量が多量であると隣接する樹脂層4と接触して紙質材2の露出部分を覆うことになるため、透湿性能と意匠性を考慮して、各グラビア版の幅や深さを適宜選択すればよい。
【0022】
インキ層3に使用される樹脂は、各種印刷方法における印刷適性、皮膜形成性などを考慮して適宜選択すればよい。グラビア印刷を例に取ると、ビヒクルとしてはアクリル系樹脂、セルロース系樹脂、酢酸ビニル系樹脂及びポリアミド系樹脂のうち、1種、あるいは2種以上を使用することができ、これらの樹脂に対して、溶剤、顔料、安定剤などが配合されたものがインキ層3を形成するためのインキとして使用することができる。
【0023】
樹脂層4を形成する樹脂としては各種の樹脂、例えばアミノアルキッド系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル樹脂、あるいは、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、不飽和ポリエステル系の紫外線硬化型樹脂などのうち、1種あるいは2種以上を使用することができる。樹脂層4を形成する樹脂が紙質材2に浸透性がある場合でも使用することはできるが(図2参照)、紙質材2の本来の透湿性能を確保するためには、極力、紙質材2の表面に広がって定着することを避け、しかも、インキ層3の保護層としての役割を発現させるために、樹脂の紙質材2及びインキ層3への濡れ性も重要となる。すなわち、樹脂が紙質材2に対しては濡れ性が抑制され、かつ、インキ層3に対しては濡れ性が良好であることが好ましい。したがって、樹脂層4を形成する樹脂とインキ層3との接触角よりも、樹脂層4を形成する樹脂と紙質材2との接触角の方が大きい樹脂を使用することが好ましい(図1、図3参照)。
【0024】
また、透湿化粧材1又はこれを貼り合わせた調湿化粧板の用途に応じては、樹脂層4が完全にインキ層3の表面全面を覆う必要がない場合も考えられるが、この場合には、図4に示すように、インキ層3の表面の一部を覆うようにすればよい。このような状態であっても、樹脂層4がインキ層3の表面近傍の一部を覆っているため、アルコールなどで表面の汚れを拭き取る際にも、樹脂層4がインキ層3の保護層としての役割を発現することができる。
【0025】
このようにして形成された透湿化粧材1を、接着剤5を用いて吸放湿性基材6に貼り合わせることにより、調湿性能に優れ、かつ、意匠性や耐アルコール性に優れる住宅内装建材や収納内装材用の調湿化粧板7を得ることができる(図5参照)。
【0026】
接着剤5としては、吸放湿性基材6への水蒸気移動を阻害しなければ特に限定されないが、酢酸ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合系樹脂のように、極性基を持つことで水分移動を阻害しない接着剤を使用することが好適である。この接着剤5の乾燥膜厚としては、20〜80g/mの範囲であれば、特に問題なく使用することができる。
【0027】
また、吸放湿性基材6としては、調湿性能と化粧板としての加工性を有していることが必要とされ、珪藻土、トバモライト、ゼオライト、セピオライト、シリカゲルなどの細孔を持つ無機粒子、あるいはポリアクリル酸ナトリウム系樹脂のような吸放湿する材料を、石膏ボード、繊維板、紙等に配合することで作製することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の透湿化粧材によれば、透湿性能を確保しつつ、意匠性及び耐アルコール性などを向上させることができるため、これを吸放湿性基材に貼り合わせることで、収納などの背板や室内の壁材あるいは天井材ばかりでなく、家具用やキッチン用の調湿化粧板としても有用である。
【符号の説明】
【0029】
1 透湿化粧材
2 紙質材
3 インキ層
4 樹脂層
5 接着剤
6 吸放湿性基材
7 調湿化粧板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙質材/インキ層/樹脂層の順に形成された化粧材において、少なくとも紙質材の表面の一部が露出していることを特徴とする透湿化粧材。
【請求項2】
該紙質材の表面の露出度が、該紙質材の表面の全面に対して10〜90%の範囲である請求項1に記載の透湿化粧材。
【請求項3】
該インキ層のパターンと該樹脂層のパターンが略一致するようにグラビア印刷により形成されている請求項1又は2に記載の透湿化粧材。
【請求項4】
該インキ層のパターン幅よりも該樹脂層のパターン幅が広くされている請求項1〜3のいずれかに記載の透湿化粧材。
【請求項5】
該樹脂層を形成する樹脂の接触角が、該インキ層に対する接触角よりも、該紙質材に対する接触角の方が大きい樹脂である請求項1〜4のいずれかに記載の透湿化粧材。
【請求項6】
請求項1〜6のいずれかに記載の透湿化粧材を、吸放湿性基材に貼り合わせたことを特徴とする調湿化粧板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−16297(P2011−16297A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162732(P2009−162732)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】