説明

透磁率測定装置及び透磁率測定方法

【課題】 複数の空孔を有した多孔質の磁性材料、粒状の磁性材料、粉末の磁性材料等において、材料を加工せずに透磁率を正確にかつ容易に測定することが可能な透磁率測定装置及び透磁率測定方法を提供する。
【解決手段】 透磁率測定装置10は、ソレノイドコイル12と、ソレノイドコイル12内に挿入された比透磁率が1である材料により形成された容器14、容器14の中に隙間の多いペレット20を充填したときのインダクタンスL及び容器14の中が空のときのインダクタンスL0を測定するインダクタンス測定部16、及び、ペレット20の透磁率μを決定する透磁率決定部18を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透磁率測定装置及び透磁率測定方に関する。特に、複数の空孔を有した多孔質の磁性材料、粒状の磁性材料、粉末の磁性材料等において、材料を加工せずに透磁率を正確にかつ容易に測定することが可能な透磁率測定装置及び透磁率測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車部品等に使用されている磁性体製品を製造する射出成型工場においては、原料が、粒状のペレットまたは粉体で供給されることが多い。このような射出成型工場において製造される磁性体製品の特性ばらつきは、原料の透磁率のばらつきに影響される。その為、原料の透磁率が測定されている。また、射出成型工場に限らず、様々な製造現場等において、磁性体の透磁率が測定されている。
【0003】
従来から、磁性体の透磁率を測定する方法として、様々な提案がされている。特許文献1では、コイル内に測定対象となる磁性体材料を挿入したときと、磁性体材料を挿入しなかったときのインピーダンスを測定し、それぞれのインピーダンスの差から磁性体材料の透磁率を求める方法が提案されている。
【特許文献1】特開平4−122870号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、透磁率できる磁性体は、コイルに挿入可能な形状の材料であり、空孔のない棒状又はドーナツ状に成型された材料に限定されるものであった。即ち、ペレットまたは粉体の磁性体材料の透磁率を測定することは出来なかった。その為、ペレットまたは粉体である原料の透磁率を測定する場合は、空孔のない棒状の材料に成型した後に、成型した材料の透磁率を測定しなければならなかった。従って、原料の透磁率を測定するのに、測定コスト及び測定時間がかかってしまうという問題点があった。
【0005】
本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたもので、複数の空孔を有した多孔質の磁性材料、粒状の磁性材料、粉末の磁性材料等において、材料を加工せずに透磁率を正確にかつ容易に測定することが可能な透磁率測定装置及び透磁率測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した従来の問題点を解決すべく下記の発明を提供する。
【0007】
本発明の第1の態様にかかる透磁率測定装置は、所定の容器に充填可能な大きさの被測定試料の透磁率μを測定する透磁率測定装置であって、コイルと、前記コイル内に挿入した前記容器と、前記容器内に1個または複数個の前記被測定試料を充填したときのインダクタンスL、及び、前記容器内が空のときのインダクタンスL0を測定するインダクタンス測定手段と、前記インダクタンス測定手段によって測定された前記インダクタンスL及び前記インダクタンスL0、並びに、前記容器内に充填された前記被測定試料の総重量W及び前記被測定試料の比重ρに基づいて、前記被測定試料の透磁率μを決定する透磁率決定手段と、を備え、前記インダクタンス測定手段は、前記容器内に前記被測定試料を充填したときの前記インダクタンスLが、複数個の前記被測定試料により前記容器内に隙間を有した状態のインダクタンス、または、複数の空孔を有した前記被測定試料を前記容器内に挿入した状態のインダクタンスであることを特徴とする。
【0008】
このような構成であれば、透磁率測定装置は、インダクタンス測定手段によって、コイル内に挿入した容器内に1個または複数個の被測定試料を充填したときのインダクタンスL、及び、容器内が空のときのインダクタンスL0が測定される。また、透磁率決定手段によって、インダクタンスL、インダクタンスL0、容器内に充填された被測定試料の総重量W、及び被測定試料の比重ρに基づいて、被測定試料の透磁率μが決定される。
【0009】
これにより、コイルが巻きつけられている容器の中に入れることが可能な磁性材料(例えば、複数の空孔を有した多孔質の磁性材料、粒状の磁性材料、粉末の磁性材料等)の透磁率を、材料を加工することなく、正確かつ容易に測定することが可能である。従って、原料をペレットまたは粉体で供給されることの多い射出成型工場、様々な状態の磁性体材料を原料として使用する製造現場等において、原料の磁性体材料の透磁率を測定する時間が短縮することが可能である。また、測定コストを低減することも可能である。
【0010】
本発明の第2の態様にかかる透磁率測定装置は、本発明の第1の態様にかかる透磁率測定装置において、前記容器は、比透磁率が1の材料によって作成されていることを特徴とする。
【0011】
これにより、容器の透磁率を考慮することなく、測定対象となる材料の透磁率を測定することが可能である。
【0012】
本発明の第3の態様にかかる透磁率測定装置は、本発明の第1または2の態様にかかる透磁率測定装置において、前記被測定試料は、粒状試料、または粉末試料であることを特徴とする。
【0013】
これにより、これにより、コイルが巻きつけられている容器の中に入れることが可能な粒状の磁性材料(ペレット)または粉末の磁性材料の透磁率を、材料を加工することなく、正確かつ容易に測定することが可能である。
【0014】
本発明の第4の態様にかかる透磁率測定装置は、複数の空孔を有した被測定試料の透磁率μを測定する透磁率測定装置であって、コイルと、前記コイル内に前記被測定試料を挿入したときのインダクタンスL、及び、前記コイル内に前記被測定試料を挿入しなかったときのインダクタンスL0を測定するインダクタンス測定手段と、前記インダクタンス測定手段によって測定された前記インダクタンスL及び前記インダクタンスL0、並びに、前記被測定試料の総重量W及び前記被測定試料の比重ρに基づいて、前記被測定試料の透磁率μを決定する透磁率決定手段と、を備えていることを特徴とする。
【0015】
このような構成であれば、透磁率測定装置は、インダクタンス測定手段によって、コイル内に被測定試料を挿入したときのインダクタンスL、及び、コイル内に被測定試料を挿入しなかったときのインダクタンスL0が測定される。また、透磁率決定手段によって、インダクタンスL、インダクタンスL0、被測定試料の総重量W、及び被測定試料の比重ρに基づいて、被測定試料の透磁率μが決定される。
【0016】
これにより、コイル内に挿入可能な複数の空孔を有した多孔質の磁性材料の透磁率を、正確かつ容易に測定することが可能である。
【0017】
本発明の第5の態様にかかる透磁率測定装置は、本発明の第1から4のいずれか1つの態様にかかる透磁率測定装置において、前記透磁率決定手段は、前記被測定試料の総重量W及び前記被測定試料の比重ρに基づいて、前記被測定試料の充填率pを算出する充填率算出手段と、前記インダクタンスL、前記インダクタンスL0、及び、前記充填率算出手段によって算出された前記被測定試料の充填率pに基づいて、前記被測定試料の透磁率μを算出する透磁率算出手段と、を備えていることを特徴とする。
【0018】
このような構成であれば、透磁率決定手段は、充填率算出手段によって、被測定試料の総重量W及び被測定試料の比重ρに基づいて、被測定試料の充填率pが算出される。また、透磁率算出手段によって、インダクタンスL、インダクタンスL0、及び、充填率算出手段によって算出された被測定試料の充填率pに基づいて、被測定試料の透磁率μが算出される。
【0019】
これにより、コイルが巻きつけられている容器の中に入れることが可能な磁性材料(例えば、複数の空孔を有した多孔質の磁性材料、粒状の磁性材料、粉末の磁性材料等)の透磁率を、材料を加工することなく、正確かつ容易に測定することが可能である。
【0020】
本発明の第6の態様にかかる透磁率測定装置は、本発明の第5の態様にかかる透磁率測定装置において、前記透磁率算出手段は、装置定数をkとしたとき、下記の関係式に基づいて、


【0021】
前記被測定試料の透磁率μが算出されることを特徴とする。
【0022】
これにより、コイルが巻きつけられている容器の中に入れることが可能な磁性材料(例えば、複数の空孔を有した多孔質の磁性材料、粒状の磁性材料、粉末の磁性材料等)の透磁率を、材料を加工することなく、正確かつ容易に測定することが可能である。
【0023】
本発明の第7の態様にかかる透磁率測定装置は、本発明の第1から6のいずれか1つの態様にかかる透磁率測定装置において、前記コイルは、ソレノイドコイルであることを特徴とする。
【0024】
これにより、測定対象となる磁性体材料を、コイルが巻きつけられている容器の中に、容易に充填することが可能である。また、測定対象となる複数の空孔を有した多孔質の磁性材料をコイルに容易に挿入することが可能である。従って、磁性体材料の透磁率を測定する時間が短縮することが可能である。
【0025】
本発明の第1の態様にかかる透磁率測定方法は、所定の容器に充填可能な大きさの被測定試料の透磁率μを測定する透磁率測定方法であって、(a)コイル内に挿入した前記容器内に1個または複数個の前記被測定試料を充填したときのインダクタンスLを測定する工程と、(b)前記コイル内に挿入した前記容器内が空のときのインダクタンスL0を測定する工程と、(c)前記容器内に充填された前記被測定試料の総重量Wを測定する工程と、(d)前記工程(a)によって測定された前記インダクタンスL、前記工程(b)によって測定された前記インダクタンスL0、前記工程(c)によって測定された前記被測定試料の総重量W、及び前記被測定試料の比重ρに基づいて、前記被測定試料の透磁率μを決定する工程と、を備え、前記工程(a)は、前記容器内に前記被測定試料を充填したときの前記インダクタンスLが、複数個の前記被測定試料により前記容器内に隙間を有した状態のインダクタンス、または、複数の空孔を有した前記被測定試料を前記容器内に挿入した状態のインダクタンスであることを特徴とする。
【0026】
これにより、上述した本発明の第1の態様にかかる透磁率測定方法と同等の効果が得られる。
【0027】
本発明の第2の態様にかかる透磁率測定方法は、本発明の第1の態様にかかる透磁率測定方法において、前記容器は、比透磁率が1の材料によって作成されていることを特徴とする。
【0028】
これにより、上述した本発明の第2の態様にかかる透磁率測定方法と同等の効果が得られる。
【0029】
本発明の第3の態様にかかる透磁率測定方法は、本発明の第1または2の態様にかかる透磁率測定方法において、前記被測定試料は、粒状試料、または粉末試料であることを特徴とする。
【0030】
これにより、上述した本発明の第3の態様にかかる透磁率測定方法と同等の効果が得られる。
【0031】
本発明の第4の態様にかかる透磁率測定方法は、複数の空孔を有した被測定試料の透磁率μを測定する透磁率測定方法であって、(a)コイル内に前記被測定試料を挿入したときのインダクタンスLを測定する工程と、(b)前記コイル内に前記被測定試料を挿入しなかったときのインダクタンスL0を測定する工程と、(c)前記被測定試料の総重量Wを測定する工程と、(d)前記工程(a)によって測定された前記インダクタンスL、前記工程(b)によって測定された前記インダクタンスL0、前記工程(c)によって測定された前記被測定試料の総重量W、及び前記被測定試料の比重ρに基づいて、前記被測定試料の透磁率μを決定する工程と、を備えていることを特徴とする。
【0032】
これにより、上述した本発明の第4の態様にかかる透磁率測定方法と同等の効果が得られる。
【0033】
本発明の第5の態様にかかる透磁率測定方法は、本発明の第1から4のいずれか1つの態様にかかる透磁率測定方法において、前記工程(d)は、(e)前記被測定試料の総重量W及び前記被測定試料の比重ρに基づいて、前記被測定試料の充填率pを算出する工程と、(f)前記工程(a)によって測定された前記インダクタンスL、前記工程(b)によって測定された前記インダクタンスL0、及び、前記工程(e)によって算出された前記被測定試料の充填率pに基づいて、前記被測定試料の透磁率μを算出する工程と、を備えていることを特徴とする。
【0034】
これにより、上述した本発明の第5の態様にかかる透磁率測定方法と同等の効果が得られる。
【0035】
本発明の第6の態様にかかる透磁率測定方法は、本発明の第5の態様にかかる透磁率測定方法において、前記工程(f)は、装置定数をkとしたとき、下記の関係式に基づいて、


【0036】
前記被測定試料の透磁率μが算出されることを特徴とする。
【0037】
これにより、上述した本発明の第6の態様にかかる透磁率測定方法と同等の効果が得られる。
【0038】
本発明の第7の態様にかかる透磁率測定方法は、本発明の第1から6のいずれか1つの態様にかかる透磁率測定方法において、前記コイルは、ソレノイドコイルであることを特徴とする。
【0039】
これにより、上述した本発明の第7の態様にかかる透磁率測定方法と同等の効果が得られる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、コイルが巻きつけられている容器の中に入れることが可能な磁性材料(例えば、複数の空孔を有した多孔質の磁性材料、粒状の磁性材料、粉末の磁性材料等)の透磁率を、材料を加工することなく、正確かつ容易に測定することが可能である。また、コイル内に挿入可能な複数の空孔を有した多孔質の磁性材料の透磁率を、正確かつ容易に測定することが可能である。従って、原料をペレットまたは粉体で供給されることの多い射出成型工場、様々な状態の磁性体材料を原料として使用する製造現場等において、原料の磁性体材料の透磁率を測定する時間が短縮することが可能である。また、測定コストを低減することも可能である。また、透磁率にばらつきのない原料を使用することにより、磁性体製品の特性ばらつきを低減することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
この発明の一実施態様を、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施態様は説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。従って、当業者であればこれらの各要素もしくは全要素をこれと均等なもので置換した実施態様を採用することが可能であるが、これらの実施態様も本発明の範囲に含まれる。
【0042】
図1は、本発明を適用可能な透磁率測定装置の構成図である。ここでは、透磁率測定対象となる磁生体材料として、ペレットを例に挙げて説明する。
【0043】
図1に示すように、透磁率測定装置10は、ソレノイドコイル12と、ソレノイドコイル12内に挿入された比透磁率が1である材料により形成された容器14、容器14の中に隙間の多いペレット20を充填したときのインダクタンスL及び容器14の中が空のときのインダクタンスL0を測定するインダクタンス測定部16、及び、ペレット20の透磁率μを決定する透磁率決定部18を備えている。
【0044】
ソレノイドコイル12内に挿入された容器14の中が空のときのインダクタンスL0は式(1)により、ソレノイドコイル12内に挿入された容器14の中に隙間の多いペレット20を充填したときのインダクタンスLは式(2)によって表される。
【0045】
ここで、Rcはソレノイドコイル12の中が空の時のソレノイドコイル12の内部の磁気抵抗、Raはソレノイドコイル12の中が空の時のソレノイドコイル12の外部の磁気抵抗である。また、Nはソレノイドコイル12の巻き数、μsはペレット20の隙間も含めて平均化された透磁率である。
【0046】
【数1】

【0047】
【数2】

また、隙間の多いペレット20の相対的実効透磁率L/L0は、式(1)及び式(2)に基づいて、式(3)によって表される。また、式(4)は、式(3)を、ペレット20の隙間も含めて平均化された透磁率μsについて解いた関係式である。ここで、装置定数kは、k=Ra/Rcであり、ソレノイドコイル12の形状によって定まる形状ファクターである。
【0048】
【数3】

【0049】
【数4】

従って、式(4)に基づいて、隙間の多いペレット20の相対的実効透磁率L/L0が実験的に与えられた時に、装置定数kの値が決まっているならば、ペレット20の隙間も含めて平均化された透磁率μsを求めることができる。
【0050】
次に、ペレット20の充填率pが既知のとき、ペレット20の隙間も含めて平均化された透磁率μsから射出成型品(100%充填)の透磁率μmを換算する。
【0051】
多くの場合、混合物の物性定数に関してはリヒテンネッカーの対数関係式が成立することが知られている。例えば、物性定数X1、X2の2つの物質を、体積比p:(1−p)の割合で混合した時、その混合物の物性定数Xは式(5)によって表される。
【0052】
【数5】

(5)式より、比透磁率μmのプラスチックマグネット(以下、プラマグと呼ぶ)で作られたペレット20の充填率がpの時、ペレット20の隙間を含めて平均化された透磁率μsは式(6)によって表される。ここで、(1−p)の項が消えたのは、X2に相当するμ0が空気なのでX2=1となるためである。
【0053】
【数6】

従って、式(4)及び式(6)に基づいて、射出成型品(100%充填)の透磁率μmは、式(7)によって表される。
【0054】
【数7】

また、ペレット20の充填率pは、ペレット20の総重量W及び射出成型品の密度ρに基づいて、式(8)によって表される。ここで、Vはソレノイドコイル12の容積である。
【0055】
【数8】

また、装置定数kは、透磁率μmが既知の標準試料となるペレット20を使用して、予め、実験的にkの値を求めておく。
【0056】
従って、式(7)において、隙間の多いペレット20の相対的実効透磁率L/L0及びペレット20の充填率pに基づいて、射出成型品(100%充填)の透磁率μmを算出することができる。
【0057】
即ち、インダクタンス測定部16において、容器14の中に隙間の多いペレット20を充填したときのインダクタンスL及び容器14の中が空のときのインダクタンスL0を測定する。また、透磁率決定部18において、ペレット20の総重量W及び射出成型品の密度ρに基づいて、ペレット20の充填率pを算出する。また、透磁率決定部18において、インダクタンス測定部16によって測定されたインダクタンスL及びインダクタンスL0から隙間の多いペレット20の相対的実効透磁率L/L0が算出し、算出した相対的実効透磁率L/L0及び充填率pに基づいて、射出成型品の透磁率μmを算出する。
【0058】
上述のコイルはソレノイドコイルであったが、ドーナツ型のトロイダルコイルであっても良い。トロイダルコイルであるとき、コイルの外部に磁束が漏れないのでRa=0となり、k=0となる。従って、式(4)及び式(7)は、式(9)及び式(10)という単純な形になる。この単純さがトロイダルコイルの利点である。
【0059】
【数9】

【0060】
【数10】

上述の実施の形態の透磁率測定装置10において、インダクタンス測定部16は、請求項1のインダクタンス測定手段、請求項8の工程(a)及び工程(b)に対応し、透磁率決定部18は、請求項1の透磁率決定手段及び請求項8の工程(d)に対応する。
【0061】
図2は、本発明を適用可能な別の透磁率測定装置の構成図である。ここでは、透磁率測定対象となる磁生体材料として、複数の空孔を有した多孔質の磁性材料(以下、多孔質材料と呼ぶ)を例に挙げて説明する。
【0062】
図2に示すように、透磁率測定装置30は、ソレノイドコイル32と、ソレノイドコイル32の中に多孔質材料34を挿入したときのインダクタンスL及びソレノイドコイル32の中が空のときのインダクタンスL0を測定するインダクタンス測定部36、及び、多孔質材料34の透磁率μを決定する透磁率決定部38を備えている。
【0063】
図1と同様に、インダクタンス測定部36において、ソレノイドコイル32の中に多孔質材料34を挿入したときのインダクタンスL及びソレノイドコイル32の中が空のときのインダクタンスL0を測定する。また、透磁率決定部38において、多孔質材料34の重量W及び密度ρに基づいて、多孔質材料34の充填率pを算出する。また、透磁率決定部38において、インダクタンス測定部36によって測定されたインダクタンスL及びインダクタンスL0から多孔質材料34の相対的実効透磁率L/L0が算出し、算出した相対的実効透磁率L/L0及び充填率pに基づいて、多孔質材料34の透磁率μmを算出する。
【0064】
上述の実施の形態の透磁率測定装置30において、インダクタンス測定部36は、請求項4のインダクタンス測定手段、請求項11の工程(a)及び工程(b)に対応し、透磁率決定部38は、請求項4の透磁率決定手段及び請求項11の工程(d)に対応する。
【実施例】
【0065】
図3は、透磁率測定装置のペレットを充填する容器及びコイルから構成される材料充填部を説明する図であり、図3(a)は側面図、図3(b)は正面図、図3(c)は背面図、図3(d)は平面図である。
【0066】
図3には示されていないが、測定用ソレノイドの中には、プラスチックの容器が挿入されており、ペレットが充填できるようになっている。材料充填部の上端部の蝶番によって上部の蓋が開けられ、ペレットを充填できるようになっている。容器は、長さが約60cm、直径が約6cmの円筒である。また、測定するペレットの大きさ、は1〜2mmの粒状の材料である。
【0067】
また、材料充填部の上端部の蝶番によって下部の蓋が開けられ、充填されていたペレットが、ペレット取り出し用プラスチックトレイに落ちるようになっている。また、ペレット取り出し用プラスチックトレイを利用してペレットの重量を測定することができるようになっている。
【0068】
図4は、標準試料を透磁率測定装置によって測定した実測結果を示した図である。図5は、透磁率測定装置の測定精度を示す図である。
【0069】
図4及び図5に示すように、フェライトの含有量の異なる5つの標準試料について、本発明の透磁率測定装置によって、透磁率を測定した。ここで、標準試料のフェライトの含有量は重量比で表されている。
【0070】
フェライト含有量が75%、79%、80%、81%及び85%の5つの標準試料のペレットを使用して、本発明の透磁率測定装置によって、透磁率を測定した。
【0071】
フェライト含有量が75%、79%、80%、81%及び85%の5つの標準試料の透磁率の実測結果は、それぞれ、(6.90±0.04)、(8.58±0.12)、(9.05±0.21)、(9.57±0.14)及び(12.76±0.23)であった。一方、フェライト含有量が75%、79%、80%、81%及び85%の5つの標準試料の透磁率の既知の値は、6.90、8.53、9.03、9.63及び12.76である。
【0072】
上述した結果より、5つの標準試料とも、透磁率の既知の値(x)と実測値(y)とは、約1〜2%の誤差範囲内で、極めて良く一致していることがわかった。即ち、y=xであることがわかった。
【0073】
従って、本発明の透磁率測定装置を使用して、複数の空孔を有した多孔質の磁性材料、粒状の磁性材料、粉末の磁性材料等の透磁率を、材料を加工することなく、正確かつ容易に測定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明を適用可能な透磁率測定装置の構成図である。
【図2】本発明を適用可能な別の透磁率測定装置の構成図である。
【図3】透磁率測定装置のペレットを充填する容器及びコイルから構成される材料充填部を説明する図であり、図3(a)は側面図、図3(b)は正面図、図3(c)は背面図、図3(d)は平面図である。
【図4】標準試料を透磁率測定装置によって測定した実測結果を示した図である。
【図5】透磁率測定装置の測定精度を示す図である。
【符号の説明】
【0075】
10、30 透磁率測定装置
12、32 ソレノイドコイル
14 容器
16、36 インダクタンス測定部
18、38 透磁率決定部
20 ペレット
34 多孔質材料




【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の容器に充填可能な大きさの被測定試料の透磁率μを測定する透磁率測定装置であって、
コイルと、
前記コイル内に挿入した前記容器と、
前記容器内に1個または複数個の前記被測定試料を充填したときのインダクタンスL、及び、前記容器内が空のときのインダクタンスL0を測定するインダクタンス測定手段と、
前記インダクタンス測定手段によって測定された前記インダクタンスL及び前記インダクタンスL0、並びに、前記容器内に充填された前記被測定試料の総重量W及び前記被測定試料の比重ρに基づいて、前記被測定試料の透磁率μを決定する透磁率決定手段と、
を備え、
前記インダクタンス測定手段は、
前記容器内に前記被測定試料を充填したときの前記インダクタンスLが、複数個の前記被測定試料により前記容器内に隙間を有した状態のインダクタンス、または、複数の空孔を有した前記被測定試料を前記容器内に挿入した状態のインダクタンスであることを特徴とする透磁率測定装置。
【請求項2】
前記容器は、比透磁率が1の材料によって作成されていることを特徴とする請求項1に記載の透磁率測定装置。
【請求項3】
前記被測定試料は、粒状試料、または粉末試料であることを特徴とする請求項1または2に記載の透磁率測定装置。
【請求項4】
複数の空孔を有した被測定試料の透磁率μを測定する透磁率測定装置であって、
コイルと、
前記コイル内に前記被測定試料を挿入したときのインダクタンスL、及び、前記コイル内に前記被測定試料を挿入しなかったときのインダクタンスL0を測定するインダクタンス測定手段と、
前記インダクタンス測定手段によって測定された前記インダクタンスL及び前記インダクタンスL0、並びに、前記被測定試料の総重量W及び前記被測定試料の比重ρに基づいて、前記被測定試料の透磁率μを決定する透磁率決定手段と、
を備えていることを特徴とする透磁率測定装置。
【請求項5】
前記透磁率決定手段は、
前記被測定試料の総重量W及び前記被測定試料の比重ρに基づいて、前記被測定試料の充填率pを算出する充填率算出手段と、
前記インダクタンスL、前記インダクタンスL0、及び、前記充填率算出手段によって算出された前記被測定試料の充填率pに基づいて、前記被測定試料の透磁率μを算出する透磁率算出手段と、
を備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の透磁率測定装置。
【請求項6】
前記透磁率算出手段は、
装置定数をkとしたとき、下記の関係式に基づいて、



前記被測定試料の透磁率μが算出されることを特徴とする請求項5に記載の透磁率測定装置。
【請求項7】
前記コイルは、ソレノイドコイルであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の透磁率測定装置。
【請求項8】
所定の容器に充填可能な大きさの被測定試料の透磁率μを測定する透磁率測定方法であって、
(a)コイル内に挿入した前記容器内に1個または複数個の前記被測定試料を充填したときのインダクタンスLを測定する工程と、
(b)前記コイル内に挿入した前記容器内が空のときのインダクタンスL0を測定する工程と、
(c)前記容器内に充填された前記被測定試料の総重量Wを測定する工程と、
(d)前記工程(a)によって測定された前記インダクタンスL、前記工程(b)によって測定された前記インダクタンスL0、前記工程(c)によって測定された前記被測定試料の総重量W、及び前記被測定試料の比重ρに基づいて、前記被測定試料の透磁率μを決定する工程と、
を備え、
前記工程(a)は、
前記容器内に前記被測定試料を充填したときの前記インダクタンスLが、複数個の前記被測定試料により前記容器内に隙間を有した状態のインダクタンス、または、複数の空孔を有した前記被測定試料を前記容器内に挿入した状態のインダクタンスであることを特徴とする透磁率測定方法。
【請求項9】
前記容器は、比透磁率が1の材料によって作成されていることを特徴とする請求項8に記載の透磁率測定方法。
【請求項10】
前記被測定試料は、粒状試料、または粉末試料であることを特徴とする請求項8または9に記載の透磁率測定方法。
【請求項11】
複数の空孔を有した被測定試料の透磁率μを測定する透磁率測定方法であって、
(a)コイル内に前記被測定試料を挿入したときのインダクタンスLを測定する工程と、
(b)前記コイル内に前記被測定試料を挿入しなかったときのインダクタンスL0を測定する工程と、
(c)前記被測定試料の総重量Wを測定する工程と、
(d)前記工程(a)によって測定された前記インダクタンスL、前記工程(b)によって測定された前記インダクタンスL0、前記工程(c)によって測定された前記被測定試料の総重量W、及び前記被測定試料の比重ρに基づいて、前記被測定試料の透磁率μを決定する工程と、
を備えていることを特徴とする透磁率測定方法。
【請求項12】
前記工程(d)は、
(e)前記被測定試料の総重量W及び前記被測定試料の比重ρに基づいて、前記被測定試料の充填率pを算出する工程と、
(f)前記工程(a)によって測定された前記インダクタンスL、前記工程(b)によって測定された前記インダクタンスL0、及び、前記工程(e)によって算出された前記被測定試料の充填率pに基づいて、前記被測定試料の透磁率μを算出する工程と、
を備えていることを特徴とする請求項8から11のいずれか1項に記載の透磁率測定方法。
【請求項13】
前記工程(f)は、
装置定数をkとしたとき、下記の関係式に基づいて、



前記被測定試料の透磁率μが算出されることを特徴とする請求項12に記載の透磁率測定方法。
【請求項14】
前記コイルは、ソレノイドコイルであることを特徴とする請求項8から13のいずれか1項に記載の透磁率測定方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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