透過光選択装置、立体画像表示装置及び立体画像表示方法
【課題】スペックル等の光のコヒーレンス度に起因した画像劣化を低減できる透過光選択装置、立体画像表示装置及び立体画像表示方法を提供する。
【解決手段】偏光方向のいずれか一方の画像光を透過する偏光フィルタ4a及び偏光フィルタ4aを透過した光に位相差を与えて複数の偏光方向の光が混在した光として観察者側へ出射する位相差フィルム5Aを有する第1の光選択部2aと、偏光フィルタ4aと偏光透過軸の方向が直交関係にある偏光フィルタ4b及び偏光フィルタ4bを透過した光に位相差を与えて複数の偏光方向の光が混在した光として観察者側へ出射する位相差フィルム5Bを有する第2の光選択部2bとを備えており、位相差フィルム5A,5Bが、偏光透過軸の方向が異なる領域を少なくとも2つ以上有し、偏光フィルタを画像表示装置側、位相差フィルムを観察者側に配置する。
【解決手段】偏光方向のいずれか一方の画像光を透過する偏光フィルタ4a及び偏光フィルタ4aを透過した光に位相差を与えて複数の偏光方向の光が混在した光として観察者側へ出射する位相差フィルム5Aを有する第1の光選択部2aと、偏光フィルタ4aと偏光透過軸の方向が直交関係にある偏光フィルタ4b及び偏光フィルタ4bを透過した光に位相差を与えて複数の偏光方向の光が混在した光として観察者側へ出射する位相差フィルム5Bを有する第2の光選択部2bとを備えており、位相差フィルム5A,5Bが、偏光透過軸の方向が異なる領域を少なくとも2つ以上有し、偏光フィルタを画像表示装置側、位相差フィルムを観察者側に配置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像表示装置で右目用画像と左目用画像を表示し、観察者の右目へ右目用画像の画像光を選択的に透過させ、左目に左目用画像の画像光を選択的に透過させる透過光選択装置、これを用いた立体画像表示装置及び立体画像表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、立体画像情報とともに文字情報も確実かつ鮮明に観察できる立体画像表示装置が開示されている。この装置は、分割波長板フィルタよりも狭い領域において光を円偏光に変換する1/4波長板のような円偏光手段を有するので、円偏光手段のある領域では、右目用画像及び左目用画像に分離されたそれぞれの画像が確実に観察者の右目又は左目に入射するため、鮮明な立体画像を得ることができる。一方、円偏光手段以外の分割波長板フィルタの領域では、円偏光手段が機能しないために、文字情報が分離されず、観察者の右目及び左目の双方に十分に入射する。従って、この領域においては、観察者が文字情報を鮮明に観察することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−157425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される発明を含む従来の技術では、右目用画像と左目用画像とを偏光方向で選択するため、片方の目には必ず一方の偏光しか到達しない。
なお、偏光は、直線偏光である場合のP偏光とS偏光、円偏光である場合の右回りと左回りというようにそれぞれ直交する2種類の光に分けられる。また、電磁波としての性質から、光も干渉現象を起こすが、同じ種類の光であると、波同士が強めあったり弱めあったりする干渉が起こり易くなる。この干渉のし易さを表す指標の1つにコヒーレンス度がある。
上述のように、従来の技術は、右目用画像と左目用画像とを偏光方向で選択するため、元々は直交する2種類の光であったところを、片方の目では必ず1種類の光が選択されて見ることになる。このため、光波の干渉が起こって、スペックル又はシンチレーションによる画像のちらつきが大きくなるという課題があった。
このような画像のちらつきは、画像表示装置の光源としてコヒーレンス度の高いレーザやLED(Light Emitting Diode)を用いた場合、又は画像表示装置が投写倍率の大きいプロジェクタであったり、プロジェクションテレビである場合等に顕著になる。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、スペックル等の光のコヒーレンス度に起因した画像劣化を低減できる透過光選択装置、立体画像表示装置及び立体画像表示方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る透過光選択装置は、画像表示装置で互いに直交する偏光方向で表示された画像の画像光を、偏光方向に応じて選択的に透過する透過光選択装置において、偏光方向のいずれか一方の画像光を透過する第1の偏光フィルタ及び第1の偏光フィルタを透過した光に位相差を与えて複数の偏光方向の光が混在した光として観察者側へ出射する第1の位相差フィルムを有する第1の光選択部と、第1の偏光フィルタと偏光透過軸の方向が直交関係にある第2の偏光フィルタ及び第2の偏光フィルタを透過した光に位相差を与えて複数の偏光方向の光が混在した光として観察者側へ出射する第2の位相差フィルムを有する第2の光選択部とを備え、偏光フィルタが画像表示装置側、位相差フィルムが観察者側に配置される。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、スペックル等の光のコヒーレンス度に起因した画像劣化を低減できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1による立体画像表示装置の構成を示す図である。
【図2】実施の形態1による立体画像表示装置の他の構成を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態2による立体画像表示装置の構成を示す図である。
【図4】実施の形態2による立体画像表示装置の他の構成を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態3による立体画像表示装置の構成を示す図である(時刻t=t1)。
【図6】この発明の実施の形態3による立体画像表示装置の構成を示す図である(時刻t=t2)。
【図7】この発明の実施の形態4による立体画像表示装置の構成を示す図である(時刻t=t1)。
【図8】この発明の実施の形態4による立体画像表示装置の構成を示す図である(時刻t=t2)。
【図9】この発明の実施の形態5による立体画像表示装置の構成を概略的に示す図である。
【図10】実施の形態5による画像表示装置の構成を示す図である。
【図11】実施の形態5による画像表示装置の他の構成を示す図である。
【図12】この発明の実施の形態6による立体画像表示装置の構成を概略的に示す図である。
【図13】実施の形態6による画像表示装置の構成を示す図である。
【図14】実施の形態6による画像表示装置の他の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による立体画像表示装置の構成を示す図である。図1において、実施の形態1の立体画像表示装置1は、観察者が、透過光選択装置2を通して見ることで、画像表示装置3の画面6上の画像が立体的に表示されて見える装置である。
透過光選択装置2は、画像表示装置3の画面6上に表示された左目用画像の画像光7aと右目用画像の画像光7bから観察者の左目Aと右目Bへの光を選択的に透過させる装置であり、例えば観察者がかける眼鏡の形で形成される。
画像表示装置3は、左目用画像に対応する偏光方向の画像光7aと、これに偏光方向が直交する右目用画像に対応した画像光7bとを画面6上に表示する装置である。
【0010】
また、透過光選択装置2は、観察者の左目Aと右目Bにそれぞれ対応する2つの光選択部である、第1の光選択部2a及び第2の光選択部2bを備える。
第1の光選択部2aは、偏光フィルタ4aと位相差フィルム5Aからなり、第2の光選択部2bは、偏光フィルタ4bと位相差フィルム5Bからなる。
偏光フィルタ4aは、画像表示装置3の画面6に表示された画像光7a,7bのうち、観察者の左目用の画像光7aをその偏光方向により選択的に透過させる機能を有し、偏光フィルタ4bは、観察者の右目用の画像光7bをその偏光方向により選択的に透過させる機能を有する。つまり、偏光フィルタ4aを透過する画像光7aは、偏光フィルタ4bを透過できず、反対に偏光フィルタ4bを透過する画像光7bは、偏光フィルタ4aを透過できない。なお、偏光フィルタ4a,4bの各偏光方向は互いに直交する関係にある。
【0011】
位相差フィルム5A,5Bは、光が透過する際に位相差を与える構成部であり、例えば1/4波長板等を使用する。また、図1の例では、第1の位相差フィルム領域5aと第2の位相差フィルム領域5bとの2種類の位相差フィルムから構成した場合を示している。
第1の位相差フィルム領域5aと第2の位相差フィルム領域5bとは、偏光透過軸の方向が互いに異なり、位相差が与えられた透過光の偏光方向は、第1の位相差フィルム領域5aと第2の位相差フィルム領域5bとで互いに異なる。なお、以降では、第1及び第2の位相差フィルム領域5a,5bの偏光透過軸の方向が互いに直交するように配置した場合について説明する。
【0012】
また、第1及び第2の光選択部2a,2bにおいて、第1及び第2の位相差フィルム領域5a,5bは、位相差フィルム5A面を左右に分割した略同一な面積の領域に配置される。このように構成することで、第1及び第2の位相差フィルム領域5a,5bの各領域で位相差を与えられた光の光量がほぼ等しくなる。すなわち、偏光フィルタ4a,4bを通過した偏光を、第1及び第2の位相差フィルム領域5a,5bにより位相差を与えられた偏光方向の異なる2つの光8a,8bに分けることができる。
【0013】
図2は、実施の形態1による立体画像表示装置の他の構成を示す図であり、図1と同一構成要素には同一符号を付している。立体画像表示装置1Aは、図1と同様に、観察者が透過光選択装置2Aを通して見ることで、画像表示装置3の画面6上の画像が立体的に表示されて見える装置である。
透過光選択装置2Aは、画像表示装置3で表示された左目用画像の画像光7aと右目用画像の画像光7bから観察者の左目Aと右目Bへの光を選択的に透過させる装置であり、第1の光選択部2c及び第2の光選択部2dを備える。
第1の光選択部2cは偏光フィルタ4aと位相差フィルム5A’からなり、第2の光選択部2dは偏光フィルタ4bと位相差フィルム5B’からなる。
【0014】
第1の光選択部2cの位相差フィルム5A’は、図2に示すように、第2の位相差フィルム領域5bをベースとしたフィルム面上の複数の部分領域に、第1の位相差フィルム領域5aがそれぞれ配置されている。ここで、第1の位相差フィルム領域5aに相当する部分領域の面積の総和と、フィルム面上の残りの第2の位相差フィルム領域5bに相当する領域の面積とを略同一にする。
第2の光選択部2dの位相差フィルム5B’では、第1及び第2の位相差フィルム領域5a,5bが、フィルム面を上下に分割した略同一な面積の領域にそれぞれ配置される。
このように、第1及び第2の位相差フィルム領域5a,5bの形状又は配置には様々な態様が考えられる。なお、図1及び図2において、透過光選択装置2,2Aを観察者が掛ける眼鏡として構成した場合を示したが、これに限定されるものではない。例えば、第1の光選択部2c及び第2の光選択部2dを設けたプレート状のものでもよく、望遠鏡のような形であってもかまわない。
【0015】
また、第1の光選択部2a,2cと第2の光選択部2b,2dにおいて、偏光フィルタ4a,4bは、画像表示装置3の画面6側にそれぞれ配置され、位相差フィルム5A,5A’,5B,5B’は、観察者側にそれぞれ配置される。なお、図1,2では、説明の簡単のために偏光フィルタと位相差フィルムを空間的に離して記載したが、空間的に接して配置してもかまわない。
【0016】
偏光フィルタと位相差フィルムは接着剤等で貼り合わせてもよく、偏光フィルタに位相差フィルムの光学膜をコーティング等により形成してもよい。
特に、偏光フィルタと位相差フィルムの間に空気層があると、各々と空気の屈折率は大きく異なるために、界面において、光のフレネル反射による損失が発生する。
そこで、偏光フィルタと位相差フィルムを一体に形成すれば、フレネル反射による損失を低減することができる。
【0017】
次に、実施の形態1の立体画像表示装置による画像表示の詳細を説明する。
以降では、実施の形態1の透過光選択装置の構成については図1を参照する。ただし、図2の構成であっても、同様な原理で画像表示がなされる。
第1の光選択部2aでは、偏光フィルタ4aによって画像表示装置3で表示された左目用画像の画像光7aが選択的に透過される。一方、画像光7aと直交する偏光方向の右目用画像の画像光7bは、第2の光選択部2bの偏光フィルタ4bで選択的に透過される。
【0018】
偏光フィルタ4aを透過した画像光7aは、位相差フィルム5Aによって位相差が与えられ、偏光方向が変わる。同様に、偏光フィルタ4bを透過した画像光7bは、位相差フィルム5Bにより位相差が与えられ、偏光方向が変わる。ここでは、説明の簡単のため、第1及び第2の位相差フィルム領域5a,5bが1/4波長板であり、位相差フィルム5A,5Bにおいて、これらの偏光透過軸の方向が互いに直交するように配置されているものとする。なお、1/4波長板を直線偏光が透過すると、電磁波の電場ベクトルに位相差が与えられて円偏光に変化する。
【0019】
位相差フィルム5Aにおいて、第1の位相差フィルム領域5aは、左目用画像の画像光7a(例えばP偏光)が入射されると、円偏光(例えば左回り)の第1の左目用画像光8aを透過する。一方、第2の位相差フィルム領域5bは、左目用画像の画像光7a(例えばP偏光)が入射されると、円偏光(例えば右回り)の第2の左目用画像光8bを透過する。つまり、第1の左目用画像光8aと第2の左目用画像光8bとは偏光方向が直交関係になる。
同様に、位相差フィルム5Bにおいても、第1の位相差フィルム領域5aは、右目用画像の画像光7b(例えばS偏光)が入射されると、円偏光(例えば左回り)の第1の右目用画像光8a’を透過する。一方、第2の位相差フィルム領域5bでは、右目用画像の画像光7b(例えばS偏光)が入射されると、円偏光(例えば右回り)の第2の右目用画像光8b’を透過する。従って、第1の右目用画像光8a’と第2の右目用画像光8b’とは偏光方向が直交関係になる。
【0020】
観察者の左目Aでは、位相差フィルム5Aを透過した第1の左目用画像光8aと第2の左目用画像光8bの双方が足し合わされた光が観測される。また、観察者の右目Bでは、位相差フィルム5Bを透過した第1の右目用画像光8a’と第2の右目用画像光8b’の双方が足し合わされた光が観測される。
従来の透過光選択装置である偏光眼鏡では、本発明における左目用の偏光フィルタ4aと右目用の偏光フィルタ4bを備えているが、上述のような位相差フィルム5A,5Bを備えていない。このため、観察者の左目では、偏光フィルタ4aを透過した直線偏光(例えばP偏光)の画像光7aのみが観測され、右目では、偏光フィルタ4bを透過した直線偏光(例えばS偏光)の画像光7bのみが観測される。
【0021】
光波のコヒーレンス度は、初期位相、周波数(エネルギースペクトル)、波数ベクトル(光の方向を示す)により規定されるモードが揃っていると高い状態にあるとされる。反対に、モードを規定するパラメータが揃っていない場合はコヒーレンス度が低くなる。つまり、位相が揃った光であったり、光の周波数が揃った光であったり、方向が揃った光であると、コヒーレンス度が高くなる。もう少し具体的に例示すると、レーザ光は、初期位相が揃っており、主波数幅が狭く(周波数が揃った)、広がりが小さい(方向の揃った)光であるので、コヒーレンス度が高い。一方、白色光は、初期位相がばらばらであり、周波数幅が広く、広がりも大きいため、コヒーレンス度が低い光(インコヒーレントな光)となる。
【0022】
また、量子力学的には、光は光子である。光子スピンには+1,−1の2つの状態があり、それぞれ円偏光の右旋光、左旋光と対応している。方向が揃った光である偏光では、異なる偏光方向であるとコヒーレンス度が低く、偏光方向が揃っていると、コヒーレンス度が高くなる。エネルギーで換言すると、基底状態に落ちこんで縮退すればコヒーレンス度が高く、縮退が解けるとコヒーレンス度が低くなる。
従って、コヒーレンス度を低減するには、揃っている偏光方向を様々な向きにしてそれらを混ぜればよい。
【0023】
そこで、この実施の形態1では、位相差フィルム5A,5Bにおいて、第1の位相差フィルム領域5aが設けられた領域で透過光をある偏光方向に揃え、第2の位相差フィルム領域5bが設けられた領域では、これに直交する偏光方向に揃えることにより、観察者が観察する画像光のコヒーレンス度を低減できる。例えば、直線偏光から円偏光に変換したり、偏光方向を回転させて、その後に空間的に状態が異なる光を混ぜて足し合わせることにより、コヒーレンス度を低減させる。
【0024】
つまり、図1の例では、位相差フィルム5Aの第1の位相差フィルム領域5aを透過した第1の左目用画像光8aと、位相差フィルム5bを透過した第2の左目用画像光8bとが、観察者の左目Aの瞳から網膜へ伝搬する間に空間的に偏光状態が混ざり合うことにより、直交した偏光を持つことになって左目用画像光のコヒーレンス度が低減する。同様に、位相差フィルム5Bの第1の位相差フィルム領域5aを透過した第1の右目用画像光8a’と、位相差フィルム5bを透過した第2の右目用画像光8b’が、観察者の右目Bの瞳から網膜へ伝搬する間に空間的に偏光状態が混ざり合い、右目用画像光のコヒーレンス度が低減する。これにより、コヒーレンス度に起因したスペックル等の画像劣化を低減することができる。
【0025】
以上のように、この実施の形態1によれば、偏光方向のいずれか一方の画像光を透過する偏光フィルタ4a及び偏光フィルタ4aを透過した光に位相差を与えて複数の偏光方向の光が混在した光として観察者側へ出射する位相差フィルム5Aを有する第1の光選択部2aと、偏光フィルタ4aと偏光透過軸の方向が直交関係にある偏光フィルタ4b及び偏光フィルタ4bを透過した光に位相差を与えて複数の偏光方向の光が混在した光として観察者側へ出射する位相差フィルム5Bを有する第2の光選択部2bとを備えており、位相差フィルム5A,5Bが、偏光透過軸の方向が異なる領域を少なくとも2つ以上有し、偏光フィルタを画像表示装置側、位相差フィルムを観察者側に配置する。
この透過光選択装置2において、画像表示装置3から出射された少なくとも一方の偏光方向の画像光を観察者の右目用画像及び左目用画像として透過させるにあたり、観察者の目に入射させる右目用画像及び左目用画像の各画像光が、複数の異なる偏光方向の光が混在した光になるよう位相差を与える。
このようにすることで、複数の異なる偏光方向の画像光が網膜に到達するまでに偏光状態が空間的に混ざり合ってコヒーレンス度が低減する。このため、人間の目という光学系に起因するスペックルノイズ、主観的なスペックルを低減でき、画像のちらつきによる画像劣化を低減することが可能となる。
【0026】
なお、上記実施の形態1では、画像表示装置3からの直線偏光の画像光を用いる場合を示したが、円偏光であっても同様の効果を得ることができる。つまり、複数の偏光から特定の偏光のみを抽出して観測する系では、偏光の種類(直線偏光、円偏光等)によらず、コヒーレンス度の増加に伴うスペックルノイズの増加が懸念される。
これに対し、本発明では、特定の偏光のみを抽出した後に、偏光の種類を再度増やして混ぜることにより、コヒーレンス度を低減している。
【0027】
実施の形態2.
図3は、この発明の実施の形態2による立体画像表示装置の構成を示す図であり、上記実施の形態1の図1と同一又はこれに相当する構成要素には同一符号を付している。図3において、実施の形態2の立体画像表示装置1Bは、観察者が、透過光選択装置2Bを通して見ることで、画像表示装置3の画面6上の画像が立体的に表示されて見える装置である。透過光選択装置2Bは、画像表示装置3の画面6上に表示された左目用画像の画像光7aと右目用画像の画像光7bから観察者の左目Aと右目Bへの光を選択的に透過させる装置であり、例えば観察者がかける眼鏡の形で形成される。
【0028】
また、透過光選択装置2Bは、観察者の左目Aと右目Bにそれぞれ対応する2つの光選択部である、第1の光選択部2e及び第2の光選択部2fを備える。
第1の光選択部2eは、偏光フィルタ4aと位相差フィルム5cからなり、第2の光選択部2fは、偏光フィルタ4bと位相差フィルム5cからなる。
偏光フィルタ4aは、上記実施の形態1と同様に、画像表示装置3の画面6に表示された画像光7a,7bのうち、観察者の左目用の画像光7aをその偏光方向により選択的に透過させる機能を有し、偏光フィルタ4bは、観察者の右目用の画像光7bをその偏光方向により選択的に透過させる機能を有する。なお、偏光フィルタ4a,4bの各偏光方向は互いに直交する関係にある。
位相差フィルム5cは、フィルム内で偏光透過軸が空間的にばらついている、すなわち偏光透過軸が揃っていない位相差フィルムである。例えば、フィルム内の残留応力が空間的にばらついているものであればよく、適度に厚みのある、押し出しによって成形されたシート状樹脂、具体的にはPET(PolyEthylene Terephthalate)等を用いる。
実施の形態2では、第1の光選択部2e及び第2の光選択部2fの双方が1種類の位相差フィルム5cを用いて構成される。
【0029】
また、第1及び第2の光選択部2e,2fにおいて、偏光フィルタ4a,4bは、画像表示装置3の画面6側にそれぞれ配置され、位相差フィルム5cは、観察者側にそれぞれ配置される。なお、図3では、説明の簡単のために偏光フィルタと位相差フィルムを空間的に離して記載したが、空間的に接して配置してもかまわない。
【0030】
偏光フィルタと位相差フィルムは接着剤等で貼り合わせてもよく、偏光フィルタに位相差フィルムの光学膜をコーティング等により形成してもよい。
偏光フィルタと位相差フィルムの間に空気層があると、各々と空気の屈折率は大きく異なるために、界面において、光のフレネル反射による損失が発生する。
そこで、偏光フィルタと位相差フィルムを一体に形成すれば、フレネル反射による損失を低減することができる。
【0031】
次に、実施の形態2の立体画像表示装置による画像表示の詳細を説明する。
第1の光選択部2eでは、偏光フィルタ4aによって画像表示装置3で表示された左目用画像の画像光7aが選択的に透過される。一方、画像光7aと直交する偏光方向の右目用画像の画像光7bは、第2の光選択部2fの偏光フィルタ4bで選択的に透過される。
偏光フィルタ4aを透過した画像光7aは、位相差フィルム5cによって位相差を与えられ、偏光方向が変わる。同様に、偏光フィルタ4bを透過した画像光7bは、位相差フィルム5cによって位相差を与えられ、偏光方向が変わる。
【0032】
位相差フィルムを直線偏光が透過すると、電磁波の電場ベクトルに位相差が与えられ、直線偏光が一般に楕円偏光に変わる。位相差フィルム5cのように、位相差フィルム内で偏光透過軸が空間的にばらついている場合には、フィルム面の各領域で楕円偏光の長軸の向きが異なる。また、画像表示装置3からの画像光7a,7bは広がりを持つため、偏光フィルタ4a,4bへ角度をもって入射する。つまり、偏光フィルタ4aによって選択的に透過された画像光7aは、位相差フィルム5cのフィルム面に垂直ではなく、角度をもってフィルム面の各領域へ入射する。同様に、偏光フィルタ4bによって選択的に透過された画像光7bも、位相差フィルム5cのフィルム面に垂直ではなく、角度をもってフィルム面の各領域へ入射する。
【0033】
位相差フィルム5cの偏光透過軸の向きにより画像光7a,7bの偏光状態が変わる。例えば、第1の光選択部2eの偏光フィルタ4aを透過した画像光7aは、位相差フィルム5cのフィルム面への入射領域ごとに偏光状態が変わり、第1の左目用画像光8a及び第2の左目用画像光8bとしてそれぞれ透過する。つまり、第1の左目用画像光8aと第2の左目用画像光8bは、互いに偏光状態が異なっている。
同様に、第2の光選択部2fの偏光フィルタ4bを透過した画像光7bは、位相差フィルム5cのフィルム面への入射領域ごとに偏光状態が変わり、第1の右目用画像光8a’及び第2の右目用画像光8b’としてそれぞれ透過する。第1の右目用画像光8a’と第2の右目用画像光8b’は、互い偏光状態が異なっている。
【0034】
位相差フィルム5cを透過した第1の左目用画像光8aと第2の左目用画像光8bは、観察者の左目Aの瞳から網膜へ伝搬する間に空間的に偏光状態が混ざり合うことにより、直交した偏光を持つことになって左目用画像光のコヒーレンス度が低減する。
同様に、第1の右目用画像光8a’と第2の右目用画像光8b’は、観察者の右目Bの瞳から網膜へ伝搬する間に空間的に偏光状態が混ざり合い、右目用画像光のコヒーレンス度が低減する。これにより、コヒーレンス度に起因したスペックル等の画像劣化を低減することができる。
【0035】
なお、この実施の形態2では、上記実施の形態1のように偏光透過軸が直交関係にある第1の位相差フィルム領域5aと第2の位相差フィルム領域5bを有さないため、第1の左目用画像光8aと第2の左目用画像光8bの偏光方向は必ずしも直交していない。同様に、第1の右目用画像光8a’と第2の右目用画像光8b’についても、必ずしも直交関係を満足していない。このため、コヒーレンスの低減具合は上記実施の形態1よりも劣るが、透過光選択装置の全体的な構成を簡略化することが可能である。
【0036】
図4は、実施の形態2による立体画像表示装置の他の構成を示す図であり、図3と同一構成要素には同一符号を付している。立体画像表示装置1Cは、図3の構成と同様に、透過光選択装置2Bを使用するが、画像表示装置3Aの表示機能が異なる。すなわち、画像表示装置3Aは、図4に示すように、画面6Aを空間的に分割して、左目用画像の画像光7aを表示する領域と右目用画像の画像光7bを表示する領域とに分けて表示する。
この構成においても、上述のように、透過光選択装置2Bが、左目用画像の画像光7aと右目用画像の画像光7bから、観察者の左目Aと右目Bへの光を選択的に透過させるので、図3の構成と同様の効果を得ることができる。また、画像表示装置3Aを上記実施の形態1による立体画像表示装置に適用しても、同様の効果を得ることができる。
【0037】
以上のように、この実施の形態2によれば、偏光方向のいずれか一方の画像光を透過する偏光フィルタ4a及び偏光フィルタ4aを透過した光に位相差を与えて複数の偏光方向の光が混在した光として観察者側へ出射する位相差フィルム5cを有する第1の光選択部2eと、偏光フィルタ4aと偏光透過軸の方向が直交関係にある偏光フィルタ4b及び偏光フィルタ4bを透過した光に位相差を与えて複数の偏光方向の光が混在した光として観察者側へ出射する位相差フィルム5cを有する第2の光選択部2fとを備え、偏光フィルタを画像表示装置側、位相差フィルムを観察者側に配置する。
この透過光選択装置2Bにおいて、画像表示装置3Aから出射された少なくとも一方の偏光方向の画像光を観察者の右目用画像及び左目用画像として透過させるとともに、観察者の目に入射させる右目用画像及び左目用画像の各画像光が、複数の異なる偏光方向の光が混在した光になるよう位相差を与える。
このようにすることで、網膜に到達するまでに偏光方向が直交する画像光の偏光状態が空間的に混ざり合ってコヒーレンス度が低減するため、人間の目という光学系に起因するスペックルノイズ、主観的なスペックルが低減し、画像のちらつきによる画像劣化を低減することが可能となる。
また、第1の位相差フィルム領域5aと第2の位相差フィルム領域5bが不要で、1種類の位相差フィルム5cを用いるので、透過光選択装置2Bの構成を簡略化することができる。
【0038】
実施の形態3.
図5,6は、この発明の実施の形態3による立体画像表示装置の構成を示す図であり、図5が時刻t=t1の場合を示しており、図6が時刻t1からシャッタの切り替わり時間が経過して時刻t=t2になった場合を示している。図5,6において、上記実施の形態1,2と同一又はこれに相当する構成要素には同一符号を付している。
図5,6において、実施の形態3の立体画像表示装置1Dは、観察者が、透過光選択装置2Cを通して見ることにより、画像表示装置3Bの画面6上の画像が立体的に表示されて見える装置である。また、画像表示装置3Bは、内部の表示制御部(不図示)によって偏光方向が互いに直交する画像光7a,7bを時系列に交互に表示する。
【0039】
透過光選択装置2Cは、画像表示装置3Bの画面6に表示された画像光7a,7bから観察者の左目Aと右目Bへの画像光を選択的に透過させる装置であり、例えば、観察者がかける眼鏡の形で形成される。
また、透過光選択装置2Cは、観察者の左目Aと右目Bにそれぞれ対応する2つの光選択部である、第1の光選択部2g、第2の光選択部2h、通信部10b及び制御部11bを備える。通信部10bは、画像表示装置3Bに設けた通信部10aと通信を行う構成部である。通信部10a,10bの通信方式には、例えば赤外線通信や、Bluetooth(登録商標)等の短距離無線通信を用いてもよい。制御部11aは、偏光方向が互いに直交する画像光7a,7bを表示するタイミングを示す時系列情報を上記表示制御部から取得し、通信部10aを介して当該時系列情報を透過光選択装置2Cへ通知する構成部である。
【0040】
透過光選択装置2Cにおいて、第1の光選択部2gは、偏光フィルタ4a、シャッタ12a及び位相差フィルム5cを備えており、第2の光選択部2hは、偏光フィルタ4a、シャッタ12b及び位相差フィルム5cを備える。
偏光フィルタ4aは、上記実施の形態1と同様に、画像表示装置3の画面6に表示された画像光7a,7bをその偏光方向により選択的に透過させる機能を有する。また、位相差フィルム5cは、上記実施の形態2と同様に、フィルム内で偏光透過軸が空間的にばらついている位相差フィルムである。
【0041】
シャッタ12a,12bは、偏光透過軸の方向を90度毎に回転可能な偏光子であり、偏光フィルタ4aに付設されることにより、偏光フィルタ4aを透過した画像光のうち、所定の偏光方向の画像光の透過を開閉するシャッタとして機能する。
制御部11bは、シャッタ12a,12bの偏光透過軸の方向の回転を制御する構成部であり、通信部10bを介して画像表示装置3B側から受信した時系列情報に基づいて、シャッタ12a,12bの偏光透過軸の方向を回転させる。
【0042】
次に、実施の形態3の立体画像表示装置による画像表示の詳細を説明する。
先ず、制御部11aが、画像表示装置3Bの表示制御部によって偏光方向が互いに直交する画像光7a,7bが表示されるタイミングを示す時系列情報を、上記表示制御部から取得し、通信部10aを介して当該時系列情報を透過光選択装置2Cへ通知する。
透過光選択装置2Cの制御部11bは、通信部10bを介して受信した上記時系列情報が示す表示タイミングに同期させてシャッタ12a,12bの偏光透過軸の方向の回転を制御する。
【0043】
図5に示す例では、制御部11bが、上記時系列情報が示す表示タイミングに同期させて、時刻t=t1のときに、第1の光選択部2gのシャッタ12aの偏光透過軸が、偏光フィルタ4aに平行になるように偏光透過軸の回転を制御し、さらに第2の光選択部2hのシャッタ12bの偏光透過軸が、偏光フィルタ4aに直交するように偏光透過軸の回転を制御している。このとき、画像表示装置3Bの画面6に表示された画像光7aは、第1及び第2の光選択部2g,2hの各偏光フィルタ4aを透過し、シャッタ12a,12bにそれぞれ入射される。
ここで、シャッタ12aは、偏光フィルタ4aに平行な偏光透過軸であるので、画像光7aが透過され、シャッタ12bでは、偏光フィルタ4aに直交する偏光透過軸であるので、画像光7aが透過されない。
【0044】
シャッタ12aを透過した画像光7aは、位相差フィルム5cのフィルム面への入射領域ごとに偏光状態が変わり、第1の左目用画像光8a及び第2の左目用画像光8bとしてそれぞれ透過する。位相差フィルム5cを透過した第1の左目用画像光8aと第2の左目用画像光8bは、観察者の左目Aの瞳から網膜へ伝搬して観察される。このとき、観察者の左目Aのみに画像光7aが観察され、右目Bには画像光7aが到達しない。
なお、第1の左目用画像光8aと第2の左目用画像光8bが、観察者の左目Aの瞳から網膜へ伝搬する間に空間的に偏光状態が混ざり合うことにより、直交した偏光を持つことになって左目用画像光のコヒーレンス度が低減する。
【0045】
一方、図6に示す例では、制御部11bが、上記時系列情報が示す表示タイミングに同期させて、時刻t=t2(t2>t1)のとき、第1の光選択部2gのシャッタ12aの偏光透過軸が偏光フィルタ4aに直交するように偏光透過軸の回転を制御し、さらに第2の光選択部2hのシャッタ12bの偏光透過軸が偏光フィルタ4aに平行になるように偏光透過軸の回転を制御している。このとき、画像表示装置3Bの画面6に表示された画像光7aは、第1及び第2の光選択部2g,2hの各偏光フィルタ4aを透過し、シャッタ12a,12bにそれぞれ入射される。ここで、シャッタ12aは、偏光フィルタ4aに直交する偏光透過軸であるので、画像光7aが透過されず、シャッタ12bでは、偏光フィルタ4aに平行な偏光透過軸であるので、画像光7aが透過される。
【0046】
シャッタ12bを透過した画像光7aは、位相差フィルム5cのフィルム面への入射領域ごとに偏光状態が変わり、第1の右目用画像光8a’及び第2の右目用画像光8b’としてそれぞれ透過する。
位相差フィルム5cを透過した第1の右目用画像光8a’と第2の右目用画像光8b’は、観察者の右目Bの瞳から網膜へ伝搬して観察される。このとき、観察者の右目Bのみに画像光7aが観察され、左目Aには画像光7aが到達しない。
なお、第1の右目用画像光8a’と第2の右目用画像光8b’が、観察者の右目Bの瞳から網膜へ伝搬する間に空間的に偏光状態が混ざり合うことにより、直交した偏光を持つことになって右目用画像光のコヒーレンス度が低減する。
【0047】
時刻t1とt2の各状態を、偏光方向が互いに直交する画像光7a,7bの表示タイミングに同期して繰り返すことにより、観察者からは、画像表示装置3Bの画面6上の画像が立体的に表示されて見える。
なお、図5及び図6のいずれの場合においても、偏光フィルタ4aを透過した後の画像光7aは、偏光方向が揃うため、コヒーレンス度が高い。従って、そのままではコヒーレンス度の増加に伴うスペックルノイズが増加する。
そこで、偏光フィルタで特定の偏光のみを抽出した後は、上記実施の形態1,2と同様に位相差フィルムを用いて再度偏光の種類を増やして混ぜ合わせることにより、コヒーレンス度を低減する。これにより、スペックルノイズを低減でき、画像劣化を抑制することができる。
【0048】
なお、上述の説明では、上記実施の形態2のように位相差フィルム5cを配置した例を示したが、上記実施の形態1のような位相差フィルム5A,5Bを配置してもよいことは言うまでもない。
【0049】
以上のように、この実施の形態3によれば、画像表示装置3Bから互いに直交する偏光方向の画像をそれぞれ表示するタイミングを受信する通信部10bと、第1の光選択部2gで偏光フィルタ4aと位相差フィルム5cの間に設けられ、偏光透過軸を直交する方向に交互に切り替え可能なシャッタ12aと、第2の光選択部2hで偏光フィルタ4bと位相差フィルム5cの間に設けられ、偏光透過軸を直交する方向に交互に切り替え可能なシャッタ12bと、通信部10bで受信された表示タイミングに応じて、シャッタ12a,12bの偏光透過軸の切り替えを制御する制御部11bとを備える。
このようにすることで、網膜に到達するまでに偏光方向が互いに異なる画像光の偏光状態が空間的に混ざり合ってコヒーレンス度が低減するため、人間の目という光学系に起因するスペックルノイズ、主観的なスペックルが低減し、画像のちらつきによる画像劣化を低減することが可能となる。
【0050】
また、上記実施の形態3において、例えば第2の光選択部2hの偏光フィルタ4aを、上記実施の形態1,2で示した偏光フィルタ4bに替え、シャッタ12bを制御して画像表示装置3Bで表示された画像光7bを透過させることで、観察者の右目Bには、画像光7aと直交する偏光方向の画像光7bによる第1の右目用画像光8a’と第2の右目用画像光8b’を観察させるように構成してもかまわない。このように構成しても、上記実施の形態3と同様の効果が得られる。
【0051】
実施の形態4.
図7,8は、この発明の実施の形態4による立体画像表示装置の構成を示す図であり、図7が時刻t=t1の場合を示しており、図8が時刻t1からシャッタの切り替わり時間が経過して時刻t=t2になった場合を示している。図7,8において、上記実施の形態1,2と同一又はこれに相当する構成要素には同一符号を付している。
図7,8において、実施の形態4の立体画像表示装置1Eは、観察者が、透過光選択装置2Dを通して見ることにより、画像表示装置3B’の画面6上の画像が立体的に表示されて見える装置である。また、画像表示装置3B’は、上記実施の形態3と異なり、内部の表示制御部(不図示)により一定の偏光方向の画像光7aを時系列に交互に表示する。
【0052】
透過光選択装置2Dは、画像表示装置3B’の画面6に表示された画像光7aから観察者の左目Aと右目Bへの画像光を選択的に透過させる装置であり、例えば、観察者がかける眼鏡の形で形成される。
また、透過光選択装置2Dは、観察者の左目Aと右目Bにそれぞれ対応する2つの光選択部である、第1の光選択部2i、第2の光選択部2j、通信部10b及び制御部11bを備える。通信部10bは、画像表示装置3B’に設けた通信部10aと通信を行う構成部である。通信部10a,10bの通信方式には、例えば赤外線通信や、Bluetooth(登録商標)等の短距離無線通信を用いてもよい。制御部11aは、一定の偏光方向の画像光7aを表示するタイミングを示す時系列情報を上記表示制御部から取得し、通信部10aを介して当該時系列情報を透過光選択装置2Dへ通知する構成部である。
【0053】
透過光選択装置2Dにおいて、第1の光選択部2iは、シャッタ12a及び位相差フィルム5cを備えており、第2の光選択部2jは、シャッタ12b及び位相差フィルム5cを備える。また、位相差フィルム5cは、上記実施の形態2と同様に、フィルム内で偏光透過軸が空間的にばらついている位相差フィルムである。
シャッタ12a,12bは、偏光透過軸の方向を90度毎に回転可能な偏光子であり、画像表示装置3B’で表示された一定の偏光方向の画像光の透過を開閉するシャッタとして機能する。制御部11bは、シャッタ12a,12bの偏光透過軸の方向の回転を制御する構成部であり、通信部10bを介して画像表示装置3B側から受信した上記時系列情報に基づいて、シャッタ12a,12bの偏光透過軸の方向を回転させる。
【0054】
次に、実施の形態4の立体画像表示装置による画像表示の詳細を説明する。
先ず、制御部11aが、画像表示装置3B’の表示制御部によって一定の偏光方向の画像光7aが表示されるタイミングを示す時系列情報を上記表示制御部から取得し、通信部10aを介して当該時系列情報を透過光選択装置2Dへ通知する。
透過光選択装置2Dの制御部11bは、通信部10bを介して受信した上記時系列情報が示す表示タイミングに同期させてシャッタ12a,12bの偏光透過軸の方向の回転を制御する。
【0055】
図7に示す例では、制御部11bが、上記時系列情報が示す表示タイミングに同期させて、時刻t=t1のときに、第1の光選択部2iのシャッタ12aの偏光透過軸が画像光7aの偏光方向に合致するように偏光透過軸の回転を制御し、さらに第2の光選択部2jのシャッタ12bの偏光透過軸が画像光7aの偏光方向に直交するように偏光透過軸の回転を制御している。このとき、画像表示装置3B’の画面6に表示された画像光7aは、第1及び第2の光選択部2i,2jのシャッタ12a,12bにそれぞれ入射される。
ここで、シャッタ12aは、画像光7aの偏光方向に合致した偏光透過軸であるので、画像光7aが透過され、シャッタ12bでは、画像光7aの偏光方向に直交する偏光透過軸であるので、画像光7aが透過されない。
【0056】
シャッタ12aを透過した画像光7aは、位相差フィルム5cのフィルム面への入射領域ごとに偏光状態が変わり、第1の左目用画像光8a及び第2の左目用画像光8bとしてそれぞれ透過する。位相差フィルム5cを透過した第1の左目用画像光8aと第2の左目用画像光8bは、観察者の左目Aの瞳から網膜へ伝搬して観察される。このとき、観察者の左目Aのみに画像光7aが観察され、右目Bには画像光7aが到達しない。
なお、第1の左目用画像光8aと第2の左目用画像光8bが、観察者の左目Aの瞳から網膜へ伝搬する間に空間的に偏光状態が混ざり合うことにより、直交した偏光を持つことになって左目用画像光のコヒーレンス度が低減する。
【0057】
一方、図8に示す例では、制御部11bが、上記時系列情報が示す表示タイミングに同期させて、時刻t=t2(t2>t1)のとき、第1の光選択部2iのシャッタ12aの偏光透過軸が画像光7aの偏光方向に直交するように偏光透過軸の回転を制御し、さらに第2の光選択部2jのシャッタ12bの偏光透過軸が画像光7aの偏光方向に合致するように偏光透過軸の回転を制御している。このとき、画像表示装置3B’の画面6に表示された画像光7aは、第1及び第2の光選択部2i,2jのシャッタ12a,12bにそれぞれ入射される。ここで、シャッタ12aは、画像光7aの偏光方向に直交する偏光透過軸であるので、画像光7aが透過されず、シャッタ12bでは、画像光7aの偏光方向に合致する偏光透過軸であるので、画像光7aが透過される。
【0058】
シャッタ12bを透過した画像光7aは、位相差フィルム5cのフィルム面への入射領域ごとに偏光状態が変わり、第1の右目用画像光8a’及び第2の右目用画像光8b’としてそれぞれ透過する。
位相差フィルム5cを透過した第1の右目用画像光8a’と第2の右目用画像光8b’は、観察者の右目Bの瞳から網膜へ伝搬して観察される。このとき、観察者の右目Bのみに画像光7aが観察され、左目Aには画像光7aが到達しない。
なお、第1の右目用画像光8a’と第2の右目用画像光8b’が、観察者の右目Bの瞳から網膜へ伝搬する間に空間的に偏光状態が混ざり合うことにより、直交した偏光を持つことになって右目用画像光のコヒーレンス度が低減する。
【0059】
時刻t1とt2の各状態を、一定の偏光方向の画像光7aの表示タイミングに同期して繰り返すことにより、観察者からは、画像表示装置3B’の画面6上の画像が立体的に表示されて見える。
なお、図7及び図8のいずれの場合においても、シャッタ12a,12bを透過した後の画像光7aは偏光方向が揃うため、コヒーレンス度が高い。従って、そのままではコヒーレンス度の増加に伴うスペックルノイズが増加する。
そこで、シャッタ12a,12bで特定の偏光を抽出した後は、上記実施の形態1,2と同様に位相差フィルムを用いて再度偏光の種類を増やして混ぜ合わせることにより、コヒーレンス度を低減する。これにより、スペックルノイズを低減でき、画像劣化を抑制することができる。
【0060】
なお、上述の説明では、上記実施の形態2のように位相差フィルム5cを配置した例を示したが、上記実施の形態1のような位相差フィルム5A,5Bを配置してもよいことは言うまでもない。
【0061】
以上のように、この実施の形態4によれば、画像表示装置3B’から互いに直交する偏光方向の画像をそれぞれ表示するタイミングを受信する通信部10bと、偏光透過軸を直交する方向に交互に切り替え可能なシャッタ12a及びシャッタ12aを透過した光に位相差を与えて観察者側へ出射する位相差フィルム5cを有する第1の光選択部2iと、偏光透過軸を直交する方向に交互に切り替え可能なシャッタ12b及びシャッタ12bを透過した光に位相差を与えて観察者側へ出射する位相差フィルム5cを有する第2の光選択部2jと、通信部10bで受信された表示タイミングに応じて、シャッタ12a,12bの偏光透過軸の方向が互いに直交関係になるようシャッタ12a,12bの偏光透過軸の切り替えを制御する制御部11bとを備える。
このようにすることでも、網膜に到達するまでに偏光方向が互いに異なる画像光の偏光状態が空間的に混ざり合ってコヒーレンス度が低減するため、人間の目という光学系に起因するスペックルノイズ、主観的なスペックルが低減し、画像のちらつきによる画像劣化を低減することが可能となる。
【0062】
また、上記実施の形態4において、画像表示装置3B’を、上記実施の形態3で示した画像表示装置3Bに替え、シャッタ12bを制御して画像表示装置3Bで表示された画像光7bを透過させることで、観察者の右目Bには、画像光7aと直交する偏光方向の画像光7bによる第1の右目用画像光8a’と第2の右目用画像光8b’を観察させるように構成してもかまわない。このように構成しても、上記実施の形態4と同様の効果が得られる。
【0063】
実施の形態5.
図9は、この発明の実施の形態5による立体画像表示装置の構成を概略的に示す図である。図9に示す立体画像表示装置は、観察者が、透過光選択装置2を通して見ることで、後述する画像表示装置3C,3Dの画面6上の画像が立体的に表示されて見える装置である。ここで、透過光選択装置2は、上記実施の形態1〜4に示したいずれかの透過光選択装置2〜2Dであり、画像表示装置3C,3Dの画面6上に表示された画像光から観察者の左目Aと右目Bへの光を選択的に透過させる。
また、画像表示装置3C,3Dは、上記実施の形態3,4と同様に透過光選択装置2に設けた通信部10b(不図示)と通信を行う通信部10aを備える。画像表示装置3C,3Dが時系列に左目用画像と右目用画像を交互に表示する場合には、画像表示装置3C,3Dが左目用画像と右目用画像を表示するタイミングを示す時系列情報を、通信部10aを介して透過光選択装置2へ通知することにより、上記実施の形態3,4と同様にして、画像光の選択を行うことができる。
【0064】
図9の例では、通信部10aを、画面6の左下の前面部、画面6を左右に分割する中心線上の装置上部、及び中心線上の装置下部に配置した場合を示したが、透過光選択装置2の通信部10bと通信し易い位置であれば、配置する場所は任意でよい。
例えば、透過光選択装置2を眼鏡状に形成した場合には、観察者がこれを掛けると、透過光選択装置2が観察者の視線と同等の高さになるので、画面6の中心線上の装置部分が好ましいが、画面6の裏側に通信部10aを設けてもよい。
【0065】
図10は、実施の形態5による画像表示装置の構成を示す図である。図10において、画像表示装置3Cは、プロジェクタ13、透過型スクリーン14及び反射鏡15を備えて構成される。プロジェクタ13は、表示画像の投写光7Aを出力する構成部であり、空間光変調器13a、投写光学系13b、照明光学系13c及び光源13dを備える。
空間光変調器13aは、投写光7Aの偏光を制御する構成部であり、投写光学系13bからの光に偏光変調を施して互いに直交する偏光方向の投写光7Aを生成する。投写光学系13bは、照明光学系13cからの照明光を使用して表示画像の投写光7Aを生成する光学系である。照明光学系13cは、光源13dで発光された光を元に照明光を生成する光学系である。光源13dは、少なくとも3原色に相当する異なる3つの波長帯の光を発光する光源であり、複数のレーザ光源やLED等で構成される。
【0066】
透過型スクリーン14は、プロジェクタ13からの投写光7Aが投写されるスクリーンであり、フレネルレンズスクリーン16及び光拡散部17を備える。
フレネルレンズスクリーン16は、プロジェクタ13からの投写光7Aを観察者側に曲げるフレネル光学素子であり、フレネルレンズ基板16aと出光面側フレネルレンズ16bから構成される。光拡散部17は、フレネルレンズスクリーン16で観察者側に曲げられた投写光7Aに発散角度を与えて拡散させる構成部であり、レンズ要素17aと光拡散シート17bから構成される。
また、反射鏡15は、プロジェクタ13からの投写光7Aを透過型スクリーン14へ導く構成部である。
【0067】
次に動作について説明する。
プロジェクタ13からの投写光7Aは、反射鏡15により透過型スクリーン14へ反射される。透過型スクリーン14では、フレネルレンズスクリーン16によって投写光7Aが観察者側に曲げられ、光拡散部17により発散角度が与えられて広がった画像光7が観察者方向へ伝搬し、透過光選択装置2を通して観察者の左目A及び右目Bに観測される。
【0068】
ここで、プロジェクタ13において、上記実施の形態3と同様にして、偏光方向が互いに直交する投写光を出力して、透過型スクリーン14から偏光方向が互いに直交する画像光7a,7bが時系列に交互に表示した場合を例に挙げる。この場合、画像表示装置3Cは、通信部10aを介して、画像光7a,7bが表示されるタイミングを示す時系列情報を透過光選択装置2Cへ通知する。
【0069】
透過光選択装置2Cでは、上記時系列情報が示す表示タイミングに同期させて、第1の光選択部2gのシャッタ12a及び第2の光選択部2hのシャッタ12bの偏光透過軸の回転を制御して観察者の左目Aと右目Bへの画像光を選択的に透過させる。
これにより、観察者からは、画面6に相当する透過型スクリーン14に映った画像が立体的に表示されて見える。なお、画像光7は、観察者の右目Bの瞳から網膜へ伝搬する間に空間的に偏光状態が混ざり合って、左目用画像及び右目用画像光の各コヒーレンス度が低減するので、スペックルノイズ等による画像劣化を低減させた画像表示を実現することができる。
【0070】
プロジェクタ13と組み合わせて用いる透過型スクリーン14のフレネルレンズスクリーン16に注目して、画像表示装置として下記の構成のものを使用してもよい。
図11は、実施の形態5による画像表示装置の他の構成を示す図であり、図10に示した構成と同一な構成要素には同一符号を付して説明を省略する。図11において、画像表示装置3Dは、プロジェクタ13、透過型スクリーン14A及び反射鏡15Aを備えて構成される。透過型スクリーン14Aは、プロジェクタ13からの投写光7Aが投写されるスクリーンであり、フレネルレンズスクリーン16A及び光拡散部17を備える。なお、フレネルレンズスクリーン16Aと光拡散部17は、接着剤等で一体に貼り合わせた構成にしてもよい。
【0071】
フレネルレンズスクリーン16Aは、プロジェクタ13からの投写光7Aを観察者側に曲げるフレネル光学素子であり、フレネルレンズ基板16aと、入光面側フレネルレンズ16cから構成される。光拡散部17は、フレネルレンズスクリーン16Aで観察者側に曲げられた投写光7Aに発散角度を与えて拡散させる構成部であり、レンズ要素17aと光拡散シート17bから構成される。
また、反射鏡15は、プロジェクタ13からの投写光7Aを透過型スクリーン14Aへ導く構成部である。
【0072】
入光面側フレネルレンズ16cとしては、光学系の設計に応じて、図11に示すように入光面側全反射と屈折の混合式フレネルレンズ16c−1、入光面側全反射式フレネルレンズ16c−2及び入光面側部分全反射式フレネルレンズ16c−3がレンズ面内に混在して形成されたレンズが利用される。
ここで、入光面側全反射と屈折の混合式フレネルレンズ16c−1は、入光面側全反射式フレネルレンズ16c−2と、入光された光束を屈折のみ出光面方向に偏光する屈折式フレネルレンズとが、1つのプリズム内に混合されたフレネルレンズである。
入光面側全反射式フレネルレンズ16c−2は、入光された光束を対面で全反射させて出光面方向へ偏光するフレネルレンズである。
入光面側部分全反射式フレネルレンズ16c−3は、入光面側全反射式フレネルレンズ16c−2の谷を出光面に平行とした入光面側部分全反射式フレネルレンズである。
【0073】
なお、これらのフレネルレンズ16c−1〜16c−3は、画像表示装置3Dであるプロジェクタ装置の設計に合わせて適宜選択すればよく、1つのフレネルレンズスクリーン16Aのレンズ面内に3種類を混在させなくてもよいことはいうまでもない。
また、レンズ形状を工作する都合からプリズム先端の一部分が入射光線と略平行に欠けていてもよい。
透過型スクリーン14Aにおいて、フレネルレンズスクリーン16Aは、プロジェクタ13の特性に応じて選択され、光拡散部17は、視野角やスクリーンの輝度等の光学特性に応じて選択されることから、別々に設計製作され、各々独立に選択されることが多い。従って、透過型スクリーン14Aにおけるフレネルレンズスクリーン16Aと光拡散部17は、光学的な特性上切り離して考えてよい。
【0074】
上述した透過型スクリーン14A、反射鏡15A及びプロジェクタ13を備えたプロジェクタ装置において、透過型スクリーン14Aのフレネルレンズスクリーン16Aとして入光面側フレネルレンズ16cを採用することにより、図11に示すように、プロジェクタ13がよりスクリーン側に近づいた斜め投写が可能となる。この結果、例えば、図10の構成と比較すると、プロジェクタ13から透過型スクリーン14Aまでの距離、つまり奥行きを小さくでき、薄型が可能である。
【0075】
以上のように、この実施の形態5によれば、プロジェクタ13からの投写光7Aを透過型スクリーン14Aに投写できることから、投写光7Aが観測者側に曲げられ、かつ発散角度で広げられ、観測者が良好な画像を見ることが可能となる。また、通信部10aによって透過光選択装置2の通信部10bと画像光7の時系列情報について通信できるため、透過光選択装置2が画像光の選択を行うことが可能となる。この結果、観察者が、画像表示装置3C,3Dの画面上に表示された画像を立体的に見ることができる。
【0076】
実施の形態6.
図12は、この発明の実施の形態6による立体画像表示装置の構成を概略的に示す図である。図12に示す立体画像表示装置は、観察者が、透過光選択装置2を通して見ることで、後述する画像表示装置3E,3Fの画面6上の画像が立体的に表示されて見える装置である。ここで、透過光選択装置2は、上記実施の形態1〜4に示したいずれかの透過光選択装置2〜2Dであり、画像表示装置3E,3Fの画面6上に表示された画像光から観察者の左目Aと右目Bへの光を選択的に透過させる。
また、画像表示装置3E,3Fは、上記実施の形態3,4と同様に透過光選択装置2に設けた通信部10b(不図示)と通信を行う通信部10aを備える。画像表示装置3E,3Fが時系列に左目用画像と右目用画像を交互に表示する場合には、画像表示装置3E,3Fが左目用画像と右目用画像を表示するタイミングを示す時系列情報を、通信部10aを介して透過光選択装置2へ通知することにより、上記実施の形態3,4と同様にして、画像光の選択を行うことができる。
【0077】
図12の例では、通信部10aを、画面6の左下の前面部、画面6を左右に分割する中心線上の装置上部、及び中心線上の装置下部に配置した場合を示したが、透過光選択装置2の通信部10bと通信し易い位置であれば、配置する場所は任意でよい。
例えば、透過光選択装置2を眼鏡状に形成した場合には、観察者がこれを掛けると、透過光選択装置2が観察者の視線と同等の高さになるので、画面6の中心線上の装置部分が好ましいが、画面6の裏側に通信部10aを設けてもよい。
【0078】
図13は、実施の形態6による画像表示装置の構成を示す図である。図13において、画像表示装置3Eは、通信部10a、バックライト18、光変調素子19、光拡散部20、駆動回路21a〜21d、制御部22、映像信号変調部23及び照明変調部24を備える。バックライト18は、光源である照明部18a及びレンズ等の光学系から構成され、画像光7の元となる光を生成して、光変調素子19が配置された表示画面に与える。外光を遮蔽する筐体18b面に配置された複数の照明部18aは、駆動回路21c,21dからの制御信号によって駆動され、バックライト18の明るさが調節される。
【0079】
また、複数の光変調素子19は、駆動回路21a,21bからの制御信号によって駆動して光の偏光が制御され、画像光7が生成される。なお、光変調素子19が配置された画面が、図12に示した画面6に相当する。光拡散部20は、バックライト18から表示画面へ照射される光を均一に拡散させる構成部である。なお、バックライト18は、図14に示す画像表示装置3Fのように、照明部18aからの光を光変調素子19側へ導光する導光部18cを備えた構成であってもよい。
【0080】
制御部22は、映像信号変調部23及び照明変調部24の動作を制御する構成部であり、映像信号変調部23は、駆動回路21a,21bによる光変調素子19の駆動を制御して、偏光方向が互いに直交した画像光を生成する構成部である。照明変調部24は、駆動回路21c,21dによる照明部18aの駆動を制御して、バックライト18の明るさを調節する構成部である。例えば、制御部22は、映像信号変調部23に駆動が制御される光変調素子19による画像光7の偏光方向の切り替えを制御するとともに、照明変調部24を制御してバックライト18の明るさを調節する。
【0081】
次に動作について説明する。
照明部18aからの光は、光拡散部20を介して光拡散された後に、光変調素子19が配置された表示画面へ照射される。光変調素子19は、映像信号変調部23に制御された駆動回路21a,21bで駆動して、照明部18aからの光が画像となるように空間的に変調し、画像光7を生成する。この画像光7が観察者方向へ伝搬して、透過光選択装置2を通して観察者の左目A及び右目Bに観測される。
【0082】
画像表示装置3Eにおいて、上記実施の形態3と同様に、光変調素子19が配置された表示画面から偏光方向が直交する画像光7を時系列に交互に表示した場合を例に挙げる。この場合、画像表示装置3Eは、通信部10aを介して画像光7が表示されるタイミングを示す時系列情報を、透過光選択装置2Cへ通知する。
【0083】
透過光選択装置2Cでは、上記時系列情報が示す表示タイミングに同期させて、第1の光選択部2gのシャッタ12a及び第2の光選択部2hのシャッタ12bの偏光透過軸の回転を制御して観察者の左目Aと右目Bへの画像光を選択的に透過させる。これにより、観察者からは、画面6に映った画像が立体的に表示されて見える。なお、画像光7は、観察者の右目Bの瞳から網膜へ伝搬する間に空間的に偏光状態が混ざり合って、左目用画像及び右目用画像光の各コヒーレンス度が低減するので、スペックルノイズ等による画像劣化を低減させた画像表示を実現することができる。
【0084】
以上のように、この実施の形態6によれば、透過光選択装置2の通信部10bと画像光7の時系列情報について通信できるため、透過光選択装置2が画像光の選択を行うことが可能となる。この結果、観察者が、画像表示装置3E,3Fの画面上に表示された画像を立体的に見ることができる。
【0085】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0086】
1,1A〜1E 立体画像表示装置、2,2A〜2D 透過光選択装置、2a,2c,2e,2g,2i 第1の光選択部、2b,2d,2f,2h,2j 第2の光選択部、3,3A〜3F,3B’ 画像表示装置、4a,4b 偏光フィルタ、5A,5B,5A’,5B’,5c 位相差フィルム、5a 第1の位相差フィルム領域、5b 第2の位相差フィルム領域、6,6A 画面、7,7a,7b 画像光、7A 投写光、8a 第1の左目用画像光、8b 第2の左目用画像光、8a’ 第1の右目用画像光、8b’ 第2の右目用画像光、10a,10b 通信部、11a,11b,22 制御部、12a,12b シャッタ、13 プロジェクタ、13a 空間光変調器、13b 投写光学系、13c 照明光学系、13d 光源、14,14A 透過型スクリーン、15,15A 反射鏡、16,16A フレネルレンズスクリーン、16a フレネルレンズ基板、16b 出光面側フレネルレンズ、16c 入光面側フレネルレンズ、16c−1 入光面側全反射と屈折の混合式フレネルレンズ、16c−2 入光面側全反射式フレネルレンズ、16c−3 入光面側部分全反射式フレネルレンズ、17,20 光拡散部、17a レンズ要素、17b 光拡散シート、18 バックライト、18a 照明部、18b 筐体、18c 導光部、19 光変調素子、21a〜21d 駆動回路、23 映像信号変調部、24 照明変調部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像表示装置で右目用画像と左目用画像を表示し、観察者の右目へ右目用画像の画像光を選択的に透過させ、左目に左目用画像の画像光を選択的に透過させる透過光選択装置、これを用いた立体画像表示装置及び立体画像表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、立体画像情報とともに文字情報も確実かつ鮮明に観察できる立体画像表示装置が開示されている。この装置は、分割波長板フィルタよりも狭い領域において光を円偏光に変換する1/4波長板のような円偏光手段を有するので、円偏光手段のある領域では、右目用画像及び左目用画像に分離されたそれぞれの画像が確実に観察者の右目又は左目に入射するため、鮮明な立体画像を得ることができる。一方、円偏光手段以外の分割波長板フィルタの領域では、円偏光手段が機能しないために、文字情報が分離されず、観察者の右目及び左目の双方に十分に入射する。従って、この領域においては、観察者が文字情報を鮮明に観察することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−157425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される発明を含む従来の技術では、右目用画像と左目用画像とを偏光方向で選択するため、片方の目には必ず一方の偏光しか到達しない。
なお、偏光は、直線偏光である場合のP偏光とS偏光、円偏光である場合の右回りと左回りというようにそれぞれ直交する2種類の光に分けられる。また、電磁波としての性質から、光も干渉現象を起こすが、同じ種類の光であると、波同士が強めあったり弱めあったりする干渉が起こり易くなる。この干渉のし易さを表す指標の1つにコヒーレンス度がある。
上述のように、従来の技術は、右目用画像と左目用画像とを偏光方向で選択するため、元々は直交する2種類の光であったところを、片方の目では必ず1種類の光が選択されて見ることになる。このため、光波の干渉が起こって、スペックル又はシンチレーションによる画像のちらつきが大きくなるという課題があった。
このような画像のちらつきは、画像表示装置の光源としてコヒーレンス度の高いレーザやLED(Light Emitting Diode)を用いた場合、又は画像表示装置が投写倍率の大きいプロジェクタであったり、プロジェクションテレビである場合等に顕著になる。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、スペックル等の光のコヒーレンス度に起因した画像劣化を低減できる透過光選択装置、立体画像表示装置及び立体画像表示方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る透過光選択装置は、画像表示装置で互いに直交する偏光方向で表示された画像の画像光を、偏光方向に応じて選択的に透過する透過光選択装置において、偏光方向のいずれか一方の画像光を透過する第1の偏光フィルタ及び第1の偏光フィルタを透過した光に位相差を与えて複数の偏光方向の光が混在した光として観察者側へ出射する第1の位相差フィルムを有する第1の光選択部と、第1の偏光フィルタと偏光透過軸の方向が直交関係にある第2の偏光フィルタ及び第2の偏光フィルタを透過した光に位相差を与えて複数の偏光方向の光が混在した光として観察者側へ出射する第2の位相差フィルムを有する第2の光選択部とを備え、偏光フィルタが画像表示装置側、位相差フィルムが観察者側に配置される。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、スペックル等の光のコヒーレンス度に起因した画像劣化を低減できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1による立体画像表示装置の構成を示す図である。
【図2】実施の形態1による立体画像表示装置の他の構成を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態2による立体画像表示装置の構成を示す図である。
【図4】実施の形態2による立体画像表示装置の他の構成を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態3による立体画像表示装置の構成を示す図である(時刻t=t1)。
【図6】この発明の実施の形態3による立体画像表示装置の構成を示す図である(時刻t=t2)。
【図7】この発明の実施の形態4による立体画像表示装置の構成を示す図である(時刻t=t1)。
【図8】この発明の実施の形態4による立体画像表示装置の構成を示す図である(時刻t=t2)。
【図9】この発明の実施の形態5による立体画像表示装置の構成を概略的に示す図である。
【図10】実施の形態5による画像表示装置の構成を示す図である。
【図11】実施の形態5による画像表示装置の他の構成を示す図である。
【図12】この発明の実施の形態6による立体画像表示装置の構成を概略的に示す図である。
【図13】実施の形態6による画像表示装置の構成を示す図である。
【図14】実施の形態6による画像表示装置の他の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による立体画像表示装置の構成を示す図である。図1において、実施の形態1の立体画像表示装置1は、観察者が、透過光選択装置2を通して見ることで、画像表示装置3の画面6上の画像が立体的に表示されて見える装置である。
透過光選択装置2は、画像表示装置3の画面6上に表示された左目用画像の画像光7aと右目用画像の画像光7bから観察者の左目Aと右目Bへの光を選択的に透過させる装置であり、例えば観察者がかける眼鏡の形で形成される。
画像表示装置3は、左目用画像に対応する偏光方向の画像光7aと、これに偏光方向が直交する右目用画像に対応した画像光7bとを画面6上に表示する装置である。
【0010】
また、透過光選択装置2は、観察者の左目Aと右目Bにそれぞれ対応する2つの光選択部である、第1の光選択部2a及び第2の光選択部2bを備える。
第1の光選択部2aは、偏光フィルタ4aと位相差フィルム5Aからなり、第2の光選択部2bは、偏光フィルタ4bと位相差フィルム5Bからなる。
偏光フィルタ4aは、画像表示装置3の画面6に表示された画像光7a,7bのうち、観察者の左目用の画像光7aをその偏光方向により選択的に透過させる機能を有し、偏光フィルタ4bは、観察者の右目用の画像光7bをその偏光方向により選択的に透過させる機能を有する。つまり、偏光フィルタ4aを透過する画像光7aは、偏光フィルタ4bを透過できず、反対に偏光フィルタ4bを透過する画像光7bは、偏光フィルタ4aを透過できない。なお、偏光フィルタ4a,4bの各偏光方向は互いに直交する関係にある。
【0011】
位相差フィルム5A,5Bは、光が透過する際に位相差を与える構成部であり、例えば1/4波長板等を使用する。また、図1の例では、第1の位相差フィルム領域5aと第2の位相差フィルム領域5bとの2種類の位相差フィルムから構成した場合を示している。
第1の位相差フィルム領域5aと第2の位相差フィルム領域5bとは、偏光透過軸の方向が互いに異なり、位相差が与えられた透過光の偏光方向は、第1の位相差フィルム領域5aと第2の位相差フィルム領域5bとで互いに異なる。なお、以降では、第1及び第2の位相差フィルム領域5a,5bの偏光透過軸の方向が互いに直交するように配置した場合について説明する。
【0012】
また、第1及び第2の光選択部2a,2bにおいて、第1及び第2の位相差フィルム領域5a,5bは、位相差フィルム5A面を左右に分割した略同一な面積の領域に配置される。このように構成することで、第1及び第2の位相差フィルム領域5a,5bの各領域で位相差を与えられた光の光量がほぼ等しくなる。すなわち、偏光フィルタ4a,4bを通過した偏光を、第1及び第2の位相差フィルム領域5a,5bにより位相差を与えられた偏光方向の異なる2つの光8a,8bに分けることができる。
【0013】
図2は、実施の形態1による立体画像表示装置の他の構成を示す図であり、図1と同一構成要素には同一符号を付している。立体画像表示装置1Aは、図1と同様に、観察者が透過光選択装置2Aを通して見ることで、画像表示装置3の画面6上の画像が立体的に表示されて見える装置である。
透過光選択装置2Aは、画像表示装置3で表示された左目用画像の画像光7aと右目用画像の画像光7bから観察者の左目Aと右目Bへの光を選択的に透過させる装置であり、第1の光選択部2c及び第2の光選択部2dを備える。
第1の光選択部2cは偏光フィルタ4aと位相差フィルム5A’からなり、第2の光選択部2dは偏光フィルタ4bと位相差フィルム5B’からなる。
【0014】
第1の光選択部2cの位相差フィルム5A’は、図2に示すように、第2の位相差フィルム領域5bをベースとしたフィルム面上の複数の部分領域に、第1の位相差フィルム領域5aがそれぞれ配置されている。ここで、第1の位相差フィルム領域5aに相当する部分領域の面積の総和と、フィルム面上の残りの第2の位相差フィルム領域5bに相当する領域の面積とを略同一にする。
第2の光選択部2dの位相差フィルム5B’では、第1及び第2の位相差フィルム領域5a,5bが、フィルム面を上下に分割した略同一な面積の領域にそれぞれ配置される。
このように、第1及び第2の位相差フィルム領域5a,5bの形状又は配置には様々な態様が考えられる。なお、図1及び図2において、透過光選択装置2,2Aを観察者が掛ける眼鏡として構成した場合を示したが、これに限定されるものではない。例えば、第1の光選択部2c及び第2の光選択部2dを設けたプレート状のものでもよく、望遠鏡のような形であってもかまわない。
【0015】
また、第1の光選択部2a,2cと第2の光選択部2b,2dにおいて、偏光フィルタ4a,4bは、画像表示装置3の画面6側にそれぞれ配置され、位相差フィルム5A,5A’,5B,5B’は、観察者側にそれぞれ配置される。なお、図1,2では、説明の簡単のために偏光フィルタと位相差フィルムを空間的に離して記載したが、空間的に接して配置してもかまわない。
【0016】
偏光フィルタと位相差フィルムは接着剤等で貼り合わせてもよく、偏光フィルタに位相差フィルムの光学膜をコーティング等により形成してもよい。
特に、偏光フィルタと位相差フィルムの間に空気層があると、各々と空気の屈折率は大きく異なるために、界面において、光のフレネル反射による損失が発生する。
そこで、偏光フィルタと位相差フィルムを一体に形成すれば、フレネル反射による損失を低減することができる。
【0017】
次に、実施の形態1の立体画像表示装置による画像表示の詳細を説明する。
以降では、実施の形態1の透過光選択装置の構成については図1を参照する。ただし、図2の構成であっても、同様な原理で画像表示がなされる。
第1の光選択部2aでは、偏光フィルタ4aによって画像表示装置3で表示された左目用画像の画像光7aが選択的に透過される。一方、画像光7aと直交する偏光方向の右目用画像の画像光7bは、第2の光選択部2bの偏光フィルタ4bで選択的に透過される。
【0018】
偏光フィルタ4aを透過した画像光7aは、位相差フィルム5Aによって位相差が与えられ、偏光方向が変わる。同様に、偏光フィルタ4bを透過した画像光7bは、位相差フィルム5Bにより位相差が与えられ、偏光方向が変わる。ここでは、説明の簡単のため、第1及び第2の位相差フィルム領域5a,5bが1/4波長板であり、位相差フィルム5A,5Bにおいて、これらの偏光透過軸の方向が互いに直交するように配置されているものとする。なお、1/4波長板を直線偏光が透過すると、電磁波の電場ベクトルに位相差が与えられて円偏光に変化する。
【0019】
位相差フィルム5Aにおいて、第1の位相差フィルム領域5aは、左目用画像の画像光7a(例えばP偏光)が入射されると、円偏光(例えば左回り)の第1の左目用画像光8aを透過する。一方、第2の位相差フィルム領域5bは、左目用画像の画像光7a(例えばP偏光)が入射されると、円偏光(例えば右回り)の第2の左目用画像光8bを透過する。つまり、第1の左目用画像光8aと第2の左目用画像光8bとは偏光方向が直交関係になる。
同様に、位相差フィルム5Bにおいても、第1の位相差フィルム領域5aは、右目用画像の画像光7b(例えばS偏光)が入射されると、円偏光(例えば左回り)の第1の右目用画像光8a’を透過する。一方、第2の位相差フィルム領域5bでは、右目用画像の画像光7b(例えばS偏光)が入射されると、円偏光(例えば右回り)の第2の右目用画像光8b’を透過する。従って、第1の右目用画像光8a’と第2の右目用画像光8b’とは偏光方向が直交関係になる。
【0020】
観察者の左目Aでは、位相差フィルム5Aを透過した第1の左目用画像光8aと第2の左目用画像光8bの双方が足し合わされた光が観測される。また、観察者の右目Bでは、位相差フィルム5Bを透過した第1の右目用画像光8a’と第2の右目用画像光8b’の双方が足し合わされた光が観測される。
従来の透過光選択装置である偏光眼鏡では、本発明における左目用の偏光フィルタ4aと右目用の偏光フィルタ4bを備えているが、上述のような位相差フィルム5A,5Bを備えていない。このため、観察者の左目では、偏光フィルタ4aを透過した直線偏光(例えばP偏光)の画像光7aのみが観測され、右目では、偏光フィルタ4bを透過した直線偏光(例えばS偏光)の画像光7bのみが観測される。
【0021】
光波のコヒーレンス度は、初期位相、周波数(エネルギースペクトル)、波数ベクトル(光の方向を示す)により規定されるモードが揃っていると高い状態にあるとされる。反対に、モードを規定するパラメータが揃っていない場合はコヒーレンス度が低くなる。つまり、位相が揃った光であったり、光の周波数が揃った光であったり、方向が揃った光であると、コヒーレンス度が高くなる。もう少し具体的に例示すると、レーザ光は、初期位相が揃っており、主波数幅が狭く(周波数が揃った)、広がりが小さい(方向の揃った)光であるので、コヒーレンス度が高い。一方、白色光は、初期位相がばらばらであり、周波数幅が広く、広がりも大きいため、コヒーレンス度が低い光(インコヒーレントな光)となる。
【0022】
また、量子力学的には、光は光子である。光子スピンには+1,−1の2つの状態があり、それぞれ円偏光の右旋光、左旋光と対応している。方向が揃った光である偏光では、異なる偏光方向であるとコヒーレンス度が低く、偏光方向が揃っていると、コヒーレンス度が高くなる。エネルギーで換言すると、基底状態に落ちこんで縮退すればコヒーレンス度が高く、縮退が解けるとコヒーレンス度が低くなる。
従って、コヒーレンス度を低減するには、揃っている偏光方向を様々な向きにしてそれらを混ぜればよい。
【0023】
そこで、この実施の形態1では、位相差フィルム5A,5Bにおいて、第1の位相差フィルム領域5aが設けられた領域で透過光をある偏光方向に揃え、第2の位相差フィルム領域5bが設けられた領域では、これに直交する偏光方向に揃えることにより、観察者が観察する画像光のコヒーレンス度を低減できる。例えば、直線偏光から円偏光に変換したり、偏光方向を回転させて、その後に空間的に状態が異なる光を混ぜて足し合わせることにより、コヒーレンス度を低減させる。
【0024】
つまり、図1の例では、位相差フィルム5Aの第1の位相差フィルム領域5aを透過した第1の左目用画像光8aと、位相差フィルム5bを透過した第2の左目用画像光8bとが、観察者の左目Aの瞳から網膜へ伝搬する間に空間的に偏光状態が混ざり合うことにより、直交した偏光を持つことになって左目用画像光のコヒーレンス度が低減する。同様に、位相差フィルム5Bの第1の位相差フィルム領域5aを透過した第1の右目用画像光8a’と、位相差フィルム5bを透過した第2の右目用画像光8b’が、観察者の右目Bの瞳から網膜へ伝搬する間に空間的に偏光状態が混ざり合い、右目用画像光のコヒーレンス度が低減する。これにより、コヒーレンス度に起因したスペックル等の画像劣化を低減することができる。
【0025】
以上のように、この実施の形態1によれば、偏光方向のいずれか一方の画像光を透過する偏光フィルタ4a及び偏光フィルタ4aを透過した光に位相差を与えて複数の偏光方向の光が混在した光として観察者側へ出射する位相差フィルム5Aを有する第1の光選択部2aと、偏光フィルタ4aと偏光透過軸の方向が直交関係にある偏光フィルタ4b及び偏光フィルタ4bを透過した光に位相差を与えて複数の偏光方向の光が混在した光として観察者側へ出射する位相差フィルム5Bを有する第2の光選択部2bとを備えており、位相差フィルム5A,5Bが、偏光透過軸の方向が異なる領域を少なくとも2つ以上有し、偏光フィルタを画像表示装置側、位相差フィルムを観察者側に配置する。
この透過光選択装置2において、画像表示装置3から出射された少なくとも一方の偏光方向の画像光を観察者の右目用画像及び左目用画像として透過させるにあたり、観察者の目に入射させる右目用画像及び左目用画像の各画像光が、複数の異なる偏光方向の光が混在した光になるよう位相差を与える。
このようにすることで、複数の異なる偏光方向の画像光が網膜に到達するまでに偏光状態が空間的に混ざり合ってコヒーレンス度が低減する。このため、人間の目という光学系に起因するスペックルノイズ、主観的なスペックルを低減でき、画像のちらつきによる画像劣化を低減することが可能となる。
【0026】
なお、上記実施の形態1では、画像表示装置3からの直線偏光の画像光を用いる場合を示したが、円偏光であっても同様の効果を得ることができる。つまり、複数の偏光から特定の偏光のみを抽出して観測する系では、偏光の種類(直線偏光、円偏光等)によらず、コヒーレンス度の増加に伴うスペックルノイズの増加が懸念される。
これに対し、本発明では、特定の偏光のみを抽出した後に、偏光の種類を再度増やして混ぜることにより、コヒーレンス度を低減している。
【0027】
実施の形態2.
図3は、この発明の実施の形態2による立体画像表示装置の構成を示す図であり、上記実施の形態1の図1と同一又はこれに相当する構成要素には同一符号を付している。図3において、実施の形態2の立体画像表示装置1Bは、観察者が、透過光選択装置2Bを通して見ることで、画像表示装置3の画面6上の画像が立体的に表示されて見える装置である。透過光選択装置2Bは、画像表示装置3の画面6上に表示された左目用画像の画像光7aと右目用画像の画像光7bから観察者の左目Aと右目Bへの光を選択的に透過させる装置であり、例えば観察者がかける眼鏡の形で形成される。
【0028】
また、透過光選択装置2Bは、観察者の左目Aと右目Bにそれぞれ対応する2つの光選択部である、第1の光選択部2e及び第2の光選択部2fを備える。
第1の光選択部2eは、偏光フィルタ4aと位相差フィルム5cからなり、第2の光選択部2fは、偏光フィルタ4bと位相差フィルム5cからなる。
偏光フィルタ4aは、上記実施の形態1と同様に、画像表示装置3の画面6に表示された画像光7a,7bのうち、観察者の左目用の画像光7aをその偏光方向により選択的に透過させる機能を有し、偏光フィルタ4bは、観察者の右目用の画像光7bをその偏光方向により選択的に透過させる機能を有する。なお、偏光フィルタ4a,4bの各偏光方向は互いに直交する関係にある。
位相差フィルム5cは、フィルム内で偏光透過軸が空間的にばらついている、すなわち偏光透過軸が揃っていない位相差フィルムである。例えば、フィルム内の残留応力が空間的にばらついているものであればよく、適度に厚みのある、押し出しによって成形されたシート状樹脂、具体的にはPET(PolyEthylene Terephthalate)等を用いる。
実施の形態2では、第1の光選択部2e及び第2の光選択部2fの双方が1種類の位相差フィルム5cを用いて構成される。
【0029】
また、第1及び第2の光選択部2e,2fにおいて、偏光フィルタ4a,4bは、画像表示装置3の画面6側にそれぞれ配置され、位相差フィルム5cは、観察者側にそれぞれ配置される。なお、図3では、説明の簡単のために偏光フィルタと位相差フィルムを空間的に離して記載したが、空間的に接して配置してもかまわない。
【0030】
偏光フィルタと位相差フィルムは接着剤等で貼り合わせてもよく、偏光フィルタに位相差フィルムの光学膜をコーティング等により形成してもよい。
偏光フィルタと位相差フィルムの間に空気層があると、各々と空気の屈折率は大きく異なるために、界面において、光のフレネル反射による損失が発生する。
そこで、偏光フィルタと位相差フィルムを一体に形成すれば、フレネル反射による損失を低減することができる。
【0031】
次に、実施の形態2の立体画像表示装置による画像表示の詳細を説明する。
第1の光選択部2eでは、偏光フィルタ4aによって画像表示装置3で表示された左目用画像の画像光7aが選択的に透過される。一方、画像光7aと直交する偏光方向の右目用画像の画像光7bは、第2の光選択部2fの偏光フィルタ4bで選択的に透過される。
偏光フィルタ4aを透過した画像光7aは、位相差フィルム5cによって位相差を与えられ、偏光方向が変わる。同様に、偏光フィルタ4bを透過した画像光7bは、位相差フィルム5cによって位相差を与えられ、偏光方向が変わる。
【0032】
位相差フィルムを直線偏光が透過すると、電磁波の電場ベクトルに位相差が与えられ、直線偏光が一般に楕円偏光に変わる。位相差フィルム5cのように、位相差フィルム内で偏光透過軸が空間的にばらついている場合には、フィルム面の各領域で楕円偏光の長軸の向きが異なる。また、画像表示装置3からの画像光7a,7bは広がりを持つため、偏光フィルタ4a,4bへ角度をもって入射する。つまり、偏光フィルタ4aによって選択的に透過された画像光7aは、位相差フィルム5cのフィルム面に垂直ではなく、角度をもってフィルム面の各領域へ入射する。同様に、偏光フィルタ4bによって選択的に透過された画像光7bも、位相差フィルム5cのフィルム面に垂直ではなく、角度をもってフィルム面の各領域へ入射する。
【0033】
位相差フィルム5cの偏光透過軸の向きにより画像光7a,7bの偏光状態が変わる。例えば、第1の光選択部2eの偏光フィルタ4aを透過した画像光7aは、位相差フィルム5cのフィルム面への入射領域ごとに偏光状態が変わり、第1の左目用画像光8a及び第2の左目用画像光8bとしてそれぞれ透過する。つまり、第1の左目用画像光8aと第2の左目用画像光8bは、互いに偏光状態が異なっている。
同様に、第2の光選択部2fの偏光フィルタ4bを透過した画像光7bは、位相差フィルム5cのフィルム面への入射領域ごとに偏光状態が変わり、第1の右目用画像光8a’及び第2の右目用画像光8b’としてそれぞれ透過する。第1の右目用画像光8a’と第2の右目用画像光8b’は、互い偏光状態が異なっている。
【0034】
位相差フィルム5cを透過した第1の左目用画像光8aと第2の左目用画像光8bは、観察者の左目Aの瞳から網膜へ伝搬する間に空間的に偏光状態が混ざり合うことにより、直交した偏光を持つことになって左目用画像光のコヒーレンス度が低減する。
同様に、第1の右目用画像光8a’と第2の右目用画像光8b’は、観察者の右目Bの瞳から網膜へ伝搬する間に空間的に偏光状態が混ざり合い、右目用画像光のコヒーレンス度が低減する。これにより、コヒーレンス度に起因したスペックル等の画像劣化を低減することができる。
【0035】
なお、この実施の形態2では、上記実施の形態1のように偏光透過軸が直交関係にある第1の位相差フィルム領域5aと第2の位相差フィルム領域5bを有さないため、第1の左目用画像光8aと第2の左目用画像光8bの偏光方向は必ずしも直交していない。同様に、第1の右目用画像光8a’と第2の右目用画像光8b’についても、必ずしも直交関係を満足していない。このため、コヒーレンスの低減具合は上記実施の形態1よりも劣るが、透過光選択装置の全体的な構成を簡略化することが可能である。
【0036】
図4は、実施の形態2による立体画像表示装置の他の構成を示す図であり、図3と同一構成要素には同一符号を付している。立体画像表示装置1Cは、図3の構成と同様に、透過光選択装置2Bを使用するが、画像表示装置3Aの表示機能が異なる。すなわち、画像表示装置3Aは、図4に示すように、画面6Aを空間的に分割して、左目用画像の画像光7aを表示する領域と右目用画像の画像光7bを表示する領域とに分けて表示する。
この構成においても、上述のように、透過光選択装置2Bが、左目用画像の画像光7aと右目用画像の画像光7bから、観察者の左目Aと右目Bへの光を選択的に透過させるので、図3の構成と同様の効果を得ることができる。また、画像表示装置3Aを上記実施の形態1による立体画像表示装置に適用しても、同様の効果を得ることができる。
【0037】
以上のように、この実施の形態2によれば、偏光方向のいずれか一方の画像光を透過する偏光フィルタ4a及び偏光フィルタ4aを透過した光に位相差を与えて複数の偏光方向の光が混在した光として観察者側へ出射する位相差フィルム5cを有する第1の光選択部2eと、偏光フィルタ4aと偏光透過軸の方向が直交関係にある偏光フィルタ4b及び偏光フィルタ4bを透過した光に位相差を与えて複数の偏光方向の光が混在した光として観察者側へ出射する位相差フィルム5cを有する第2の光選択部2fとを備え、偏光フィルタを画像表示装置側、位相差フィルムを観察者側に配置する。
この透過光選択装置2Bにおいて、画像表示装置3Aから出射された少なくとも一方の偏光方向の画像光を観察者の右目用画像及び左目用画像として透過させるとともに、観察者の目に入射させる右目用画像及び左目用画像の各画像光が、複数の異なる偏光方向の光が混在した光になるよう位相差を与える。
このようにすることで、網膜に到達するまでに偏光方向が直交する画像光の偏光状態が空間的に混ざり合ってコヒーレンス度が低減するため、人間の目という光学系に起因するスペックルノイズ、主観的なスペックルが低減し、画像のちらつきによる画像劣化を低減することが可能となる。
また、第1の位相差フィルム領域5aと第2の位相差フィルム領域5bが不要で、1種類の位相差フィルム5cを用いるので、透過光選択装置2Bの構成を簡略化することができる。
【0038】
実施の形態3.
図5,6は、この発明の実施の形態3による立体画像表示装置の構成を示す図であり、図5が時刻t=t1の場合を示しており、図6が時刻t1からシャッタの切り替わり時間が経過して時刻t=t2になった場合を示している。図5,6において、上記実施の形態1,2と同一又はこれに相当する構成要素には同一符号を付している。
図5,6において、実施の形態3の立体画像表示装置1Dは、観察者が、透過光選択装置2Cを通して見ることにより、画像表示装置3Bの画面6上の画像が立体的に表示されて見える装置である。また、画像表示装置3Bは、内部の表示制御部(不図示)によって偏光方向が互いに直交する画像光7a,7bを時系列に交互に表示する。
【0039】
透過光選択装置2Cは、画像表示装置3Bの画面6に表示された画像光7a,7bから観察者の左目Aと右目Bへの画像光を選択的に透過させる装置であり、例えば、観察者がかける眼鏡の形で形成される。
また、透過光選択装置2Cは、観察者の左目Aと右目Bにそれぞれ対応する2つの光選択部である、第1の光選択部2g、第2の光選択部2h、通信部10b及び制御部11bを備える。通信部10bは、画像表示装置3Bに設けた通信部10aと通信を行う構成部である。通信部10a,10bの通信方式には、例えば赤外線通信や、Bluetooth(登録商標)等の短距離無線通信を用いてもよい。制御部11aは、偏光方向が互いに直交する画像光7a,7bを表示するタイミングを示す時系列情報を上記表示制御部から取得し、通信部10aを介して当該時系列情報を透過光選択装置2Cへ通知する構成部である。
【0040】
透過光選択装置2Cにおいて、第1の光選択部2gは、偏光フィルタ4a、シャッタ12a及び位相差フィルム5cを備えており、第2の光選択部2hは、偏光フィルタ4a、シャッタ12b及び位相差フィルム5cを備える。
偏光フィルタ4aは、上記実施の形態1と同様に、画像表示装置3の画面6に表示された画像光7a,7bをその偏光方向により選択的に透過させる機能を有する。また、位相差フィルム5cは、上記実施の形態2と同様に、フィルム内で偏光透過軸が空間的にばらついている位相差フィルムである。
【0041】
シャッタ12a,12bは、偏光透過軸の方向を90度毎に回転可能な偏光子であり、偏光フィルタ4aに付設されることにより、偏光フィルタ4aを透過した画像光のうち、所定の偏光方向の画像光の透過を開閉するシャッタとして機能する。
制御部11bは、シャッタ12a,12bの偏光透過軸の方向の回転を制御する構成部であり、通信部10bを介して画像表示装置3B側から受信した時系列情報に基づいて、シャッタ12a,12bの偏光透過軸の方向を回転させる。
【0042】
次に、実施の形態3の立体画像表示装置による画像表示の詳細を説明する。
先ず、制御部11aが、画像表示装置3Bの表示制御部によって偏光方向が互いに直交する画像光7a,7bが表示されるタイミングを示す時系列情報を、上記表示制御部から取得し、通信部10aを介して当該時系列情報を透過光選択装置2Cへ通知する。
透過光選択装置2Cの制御部11bは、通信部10bを介して受信した上記時系列情報が示す表示タイミングに同期させてシャッタ12a,12bの偏光透過軸の方向の回転を制御する。
【0043】
図5に示す例では、制御部11bが、上記時系列情報が示す表示タイミングに同期させて、時刻t=t1のときに、第1の光選択部2gのシャッタ12aの偏光透過軸が、偏光フィルタ4aに平行になるように偏光透過軸の回転を制御し、さらに第2の光選択部2hのシャッタ12bの偏光透過軸が、偏光フィルタ4aに直交するように偏光透過軸の回転を制御している。このとき、画像表示装置3Bの画面6に表示された画像光7aは、第1及び第2の光選択部2g,2hの各偏光フィルタ4aを透過し、シャッタ12a,12bにそれぞれ入射される。
ここで、シャッタ12aは、偏光フィルタ4aに平行な偏光透過軸であるので、画像光7aが透過され、シャッタ12bでは、偏光フィルタ4aに直交する偏光透過軸であるので、画像光7aが透過されない。
【0044】
シャッタ12aを透過した画像光7aは、位相差フィルム5cのフィルム面への入射領域ごとに偏光状態が変わり、第1の左目用画像光8a及び第2の左目用画像光8bとしてそれぞれ透過する。位相差フィルム5cを透過した第1の左目用画像光8aと第2の左目用画像光8bは、観察者の左目Aの瞳から網膜へ伝搬して観察される。このとき、観察者の左目Aのみに画像光7aが観察され、右目Bには画像光7aが到達しない。
なお、第1の左目用画像光8aと第2の左目用画像光8bが、観察者の左目Aの瞳から網膜へ伝搬する間に空間的に偏光状態が混ざり合うことにより、直交した偏光を持つことになって左目用画像光のコヒーレンス度が低減する。
【0045】
一方、図6に示す例では、制御部11bが、上記時系列情報が示す表示タイミングに同期させて、時刻t=t2(t2>t1)のとき、第1の光選択部2gのシャッタ12aの偏光透過軸が偏光フィルタ4aに直交するように偏光透過軸の回転を制御し、さらに第2の光選択部2hのシャッタ12bの偏光透過軸が偏光フィルタ4aに平行になるように偏光透過軸の回転を制御している。このとき、画像表示装置3Bの画面6に表示された画像光7aは、第1及び第2の光選択部2g,2hの各偏光フィルタ4aを透過し、シャッタ12a,12bにそれぞれ入射される。ここで、シャッタ12aは、偏光フィルタ4aに直交する偏光透過軸であるので、画像光7aが透過されず、シャッタ12bでは、偏光フィルタ4aに平行な偏光透過軸であるので、画像光7aが透過される。
【0046】
シャッタ12bを透過した画像光7aは、位相差フィルム5cのフィルム面への入射領域ごとに偏光状態が変わり、第1の右目用画像光8a’及び第2の右目用画像光8b’としてそれぞれ透過する。
位相差フィルム5cを透過した第1の右目用画像光8a’と第2の右目用画像光8b’は、観察者の右目Bの瞳から網膜へ伝搬して観察される。このとき、観察者の右目Bのみに画像光7aが観察され、左目Aには画像光7aが到達しない。
なお、第1の右目用画像光8a’と第2の右目用画像光8b’が、観察者の右目Bの瞳から網膜へ伝搬する間に空間的に偏光状態が混ざり合うことにより、直交した偏光を持つことになって右目用画像光のコヒーレンス度が低減する。
【0047】
時刻t1とt2の各状態を、偏光方向が互いに直交する画像光7a,7bの表示タイミングに同期して繰り返すことにより、観察者からは、画像表示装置3Bの画面6上の画像が立体的に表示されて見える。
なお、図5及び図6のいずれの場合においても、偏光フィルタ4aを透過した後の画像光7aは、偏光方向が揃うため、コヒーレンス度が高い。従って、そのままではコヒーレンス度の増加に伴うスペックルノイズが増加する。
そこで、偏光フィルタで特定の偏光のみを抽出した後は、上記実施の形態1,2と同様に位相差フィルムを用いて再度偏光の種類を増やして混ぜ合わせることにより、コヒーレンス度を低減する。これにより、スペックルノイズを低減でき、画像劣化を抑制することができる。
【0048】
なお、上述の説明では、上記実施の形態2のように位相差フィルム5cを配置した例を示したが、上記実施の形態1のような位相差フィルム5A,5Bを配置してもよいことは言うまでもない。
【0049】
以上のように、この実施の形態3によれば、画像表示装置3Bから互いに直交する偏光方向の画像をそれぞれ表示するタイミングを受信する通信部10bと、第1の光選択部2gで偏光フィルタ4aと位相差フィルム5cの間に設けられ、偏光透過軸を直交する方向に交互に切り替え可能なシャッタ12aと、第2の光選択部2hで偏光フィルタ4bと位相差フィルム5cの間に設けられ、偏光透過軸を直交する方向に交互に切り替え可能なシャッタ12bと、通信部10bで受信された表示タイミングに応じて、シャッタ12a,12bの偏光透過軸の切り替えを制御する制御部11bとを備える。
このようにすることで、網膜に到達するまでに偏光方向が互いに異なる画像光の偏光状態が空間的に混ざり合ってコヒーレンス度が低減するため、人間の目という光学系に起因するスペックルノイズ、主観的なスペックルが低減し、画像のちらつきによる画像劣化を低減することが可能となる。
【0050】
また、上記実施の形態3において、例えば第2の光選択部2hの偏光フィルタ4aを、上記実施の形態1,2で示した偏光フィルタ4bに替え、シャッタ12bを制御して画像表示装置3Bで表示された画像光7bを透過させることで、観察者の右目Bには、画像光7aと直交する偏光方向の画像光7bによる第1の右目用画像光8a’と第2の右目用画像光8b’を観察させるように構成してもかまわない。このように構成しても、上記実施の形態3と同様の効果が得られる。
【0051】
実施の形態4.
図7,8は、この発明の実施の形態4による立体画像表示装置の構成を示す図であり、図7が時刻t=t1の場合を示しており、図8が時刻t1からシャッタの切り替わり時間が経過して時刻t=t2になった場合を示している。図7,8において、上記実施の形態1,2と同一又はこれに相当する構成要素には同一符号を付している。
図7,8において、実施の形態4の立体画像表示装置1Eは、観察者が、透過光選択装置2Dを通して見ることにより、画像表示装置3B’の画面6上の画像が立体的に表示されて見える装置である。また、画像表示装置3B’は、上記実施の形態3と異なり、内部の表示制御部(不図示)により一定の偏光方向の画像光7aを時系列に交互に表示する。
【0052】
透過光選択装置2Dは、画像表示装置3B’の画面6に表示された画像光7aから観察者の左目Aと右目Bへの画像光を選択的に透過させる装置であり、例えば、観察者がかける眼鏡の形で形成される。
また、透過光選択装置2Dは、観察者の左目Aと右目Bにそれぞれ対応する2つの光選択部である、第1の光選択部2i、第2の光選択部2j、通信部10b及び制御部11bを備える。通信部10bは、画像表示装置3B’に設けた通信部10aと通信を行う構成部である。通信部10a,10bの通信方式には、例えば赤外線通信や、Bluetooth(登録商標)等の短距離無線通信を用いてもよい。制御部11aは、一定の偏光方向の画像光7aを表示するタイミングを示す時系列情報を上記表示制御部から取得し、通信部10aを介して当該時系列情報を透過光選択装置2Dへ通知する構成部である。
【0053】
透過光選択装置2Dにおいて、第1の光選択部2iは、シャッタ12a及び位相差フィルム5cを備えており、第2の光選択部2jは、シャッタ12b及び位相差フィルム5cを備える。また、位相差フィルム5cは、上記実施の形態2と同様に、フィルム内で偏光透過軸が空間的にばらついている位相差フィルムである。
シャッタ12a,12bは、偏光透過軸の方向を90度毎に回転可能な偏光子であり、画像表示装置3B’で表示された一定の偏光方向の画像光の透過を開閉するシャッタとして機能する。制御部11bは、シャッタ12a,12bの偏光透過軸の方向の回転を制御する構成部であり、通信部10bを介して画像表示装置3B側から受信した上記時系列情報に基づいて、シャッタ12a,12bの偏光透過軸の方向を回転させる。
【0054】
次に、実施の形態4の立体画像表示装置による画像表示の詳細を説明する。
先ず、制御部11aが、画像表示装置3B’の表示制御部によって一定の偏光方向の画像光7aが表示されるタイミングを示す時系列情報を上記表示制御部から取得し、通信部10aを介して当該時系列情報を透過光選択装置2Dへ通知する。
透過光選択装置2Dの制御部11bは、通信部10bを介して受信した上記時系列情報が示す表示タイミングに同期させてシャッタ12a,12bの偏光透過軸の方向の回転を制御する。
【0055】
図7に示す例では、制御部11bが、上記時系列情報が示す表示タイミングに同期させて、時刻t=t1のときに、第1の光選択部2iのシャッタ12aの偏光透過軸が画像光7aの偏光方向に合致するように偏光透過軸の回転を制御し、さらに第2の光選択部2jのシャッタ12bの偏光透過軸が画像光7aの偏光方向に直交するように偏光透過軸の回転を制御している。このとき、画像表示装置3B’の画面6に表示された画像光7aは、第1及び第2の光選択部2i,2jのシャッタ12a,12bにそれぞれ入射される。
ここで、シャッタ12aは、画像光7aの偏光方向に合致した偏光透過軸であるので、画像光7aが透過され、シャッタ12bでは、画像光7aの偏光方向に直交する偏光透過軸であるので、画像光7aが透過されない。
【0056】
シャッタ12aを透過した画像光7aは、位相差フィルム5cのフィルム面への入射領域ごとに偏光状態が変わり、第1の左目用画像光8a及び第2の左目用画像光8bとしてそれぞれ透過する。位相差フィルム5cを透過した第1の左目用画像光8aと第2の左目用画像光8bは、観察者の左目Aの瞳から網膜へ伝搬して観察される。このとき、観察者の左目Aのみに画像光7aが観察され、右目Bには画像光7aが到達しない。
なお、第1の左目用画像光8aと第2の左目用画像光8bが、観察者の左目Aの瞳から網膜へ伝搬する間に空間的に偏光状態が混ざり合うことにより、直交した偏光を持つことになって左目用画像光のコヒーレンス度が低減する。
【0057】
一方、図8に示す例では、制御部11bが、上記時系列情報が示す表示タイミングに同期させて、時刻t=t2(t2>t1)のとき、第1の光選択部2iのシャッタ12aの偏光透過軸が画像光7aの偏光方向に直交するように偏光透過軸の回転を制御し、さらに第2の光選択部2jのシャッタ12bの偏光透過軸が画像光7aの偏光方向に合致するように偏光透過軸の回転を制御している。このとき、画像表示装置3B’の画面6に表示された画像光7aは、第1及び第2の光選択部2i,2jのシャッタ12a,12bにそれぞれ入射される。ここで、シャッタ12aは、画像光7aの偏光方向に直交する偏光透過軸であるので、画像光7aが透過されず、シャッタ12bでは、画像光7aの偏光方向に合致する偏光透過軸であるので、画像光7aが透過される。
【0058】
シャッタ12bを透過した画像光7aは、位相差フィルム5cのフィルム面への入射領域ごとに偏光状態が変わり、第1の右目用画像光8a’及び第2の右目用画像光8b’としてそれぞれ透過する。
位相差フィルム5cを透過した第1の右目用画像光8a’と第2の右目用画像光8b’は、観察者の右目Bの瞳から網膜へ伝搬して観察される。このとき、観察者の右目Bのみに画像光7aが観察され、左目Aには画像光7aが到達しない。
なお、第1の右目用画像光8a’と第2の右目用画像光8b’が、観察者の右目Bの瞳から網膜へ伝搬する間に空間的に偏光状態が混ざり合うことにより、直交した偏光を持つことになって右目用画像光のコヒーレンス度が低減する。
【0059】
時刻t1とt2の各状態を、一定の偏光方向の画像光7aの表示タイミングに同期して繰り返すことにより、観察者からは、画像表示装置3B’の画面6上の画像が立体的に表示されて見える。
なお、図7及び図8のいずれの場合においても、シャッタ12a,12bを透過した後の画像光7aは偏光方向が揃うため、コヒーレンス度が高い。従って、そのままではコヒーレンス度の増加に伴うスペックルノイズが増加する。
そこで、シャッタ12a,12bで特定の偏光を抽出した後は、上記実施の形態1,2と同様に位相差フィルムを用いて再度偏光の種類を増やして混ぜ合わせることにより、コヒーレンス度を低減する。これにより、スペックルノイズを低減でき、画像劣化を抑制することができる。
【0060】
なお、上述の説明では、上記実施の形態2のように位相差フィルム5cを配置した例を示したが、上記実施の形態1のような位相差フィルム5A,5Bを配置してもよいことは言うまでもない。
【0061】
以上のように、この実施の形態4によれば、画像表示装置3B’から互いに直交する偏光方向の画像をそれぞれ表示するタイミングを受信する通信部10bと、偏光透過軸を直交する方向に交互に切り替え可能なシャッタ12a及びシャッタ12aを透過した光に位相差を与えて観察者側へ出射する位相差フィルム5cを有する第1の光選択部2iと、偏光透過軸を直交する方向に交互に切り替え可能なシャッタ12b及びシャッタ12bを透過した光に位相差を与えて観察者側へ出射する位相差フィルム5cを有する第2の光選択部2jと、通信部10bで受信された表示タイミングに応じて、シャッタ12a,12bの偏光透過軸の方向が互いに直交関係になるようシャッタ12a,12bの偏光透過軸の切り替えを制御する制御部11bとを備える。
このようにすることでも、網膜に到達するまでに偏光方向が互いに異なる画像光の偏光状態が空間的に混ざり合ってコヒーレンス度が低減するため、人間の目という光学系に起因するスペックルノイズ、主観的なスペックルが低減し、画像のちらつきによる画像劣化を低減することが可能となる。
【0062】
また、上記実施の形態4において、画像表示装置3B’を、上記実施の形態3で示した画像表示装置3Bに替え、シャッタ12bを制御して画像表示装置3Bで表示された画像光7bを透過させることで、観察者の右目Bには、画像光7aと直交する偏光方向の画像光7bによる第1の右目用画像光8a’と第2の右目用画像光8b’を観察させるように構成してもかまわない。このように構成しても、上記実施の形態4と同様の効果が得られる。
【0063】
実施の形態5.
図9は、この発明の実施の形態5による立体画像表示装置の構成を概略的に示す図である。図9に示す立体画像表示装置は、観察者が、透過光選択装置2を通して見ることで、後述する画像表示装置3C,3Dの画面6上の画像が立体的に表示されて見える装置である。ここで、透過光選択装置2は、上記実施の形態1〜4に示したいずれかの透過光選択装置2〜2Dであり、画像表示装置3C,3Dの画面6上に表示された画像光から観察者の左目Aと右目Bへの光を選択的に透過させる。
また、画像表示装置3C,3Dは、上記実施の形態3,4と同様に透過光選択装置2に設けた通信部10b(不図示)と通信を行う通信部10aを備える。画像表示装置3C,3Dが時系列に左目用画像と右目用画像を交互に表示する場合には、画像表示装置3C,3Dが左目用画像と右目用画像を表示するタイミングを示す時系列情報を、通信部10aを介して透過光選択装置2へ通知することにより、上記実施の形態3,4と同様にして、画像光の選択を行うことができる。
【0064】
図9の例では、通信部10aを、画面6の左下の前面部、画面6を左右に分割する中心線上の装置上部、及び中心線上の装置下部に配置した場合を示したが、透過光選択装置2の通信部10bと通信し易い位置であれば、配置する場所は任意でよい。
例えば、透過光選択装置2を眼鏡状に形成した場合には、観察者がこれを掛けると、透過光選択装置2が観察者の視線と同等の高さになるので、画面6の中心線上の装置部分が好ましいが、画面6の裏側に通信部10aを設けてもよい。
【0065】
図10は、実施の形態5による画像表示装置の構成を示す図である。図10において、画像表示装置3Cは、プロジェクタ13、透過型スクリーン14及び反射鏡15を備えて構成される。プロジェクタ13は、表示画像の投写光7Aを出力する構成部であり、空間光変調器13a、投写光学系13b、照明光学系13c及び光源13dを備える。
空間光変調器13aは、投写光7Aの偏光を制御する構成部であり、投写光学系13bからの光に偏光変調を施して互いに直交する偏光方向の投写光7Aを生成する。投写光学系13bは、照明光学系13cからの照明光を使用して表示画像の投写光7Aを生成する光学系である。照明光学系13cは、光源13dで発光された光を元に照明光を生成する光学系である。光源13dは、少なくとも3原色に相当する異なる3つの波長帯の光を発光する光源であり、複数のレーザ光源やLED等で構成される。
【0066】
透過型スクリーン14は、プロジェクタ13からの投写光7Aが投写されるスクリーンであり、フレネルレンズスクリーン16及び光拡散部17を備える。
フレネルレンズスクリーン16は、プロジェクタ13からの投写光7Aを観察者側に曲げるフレネル光学素子であり、フレネルレンズ基板16aと出光面側フレネルレンズ16bから構成される。光拡散部17は、フレネルレンズスクリーン16で観察者側に曲げられた投写光7Aに発散角度を与えて拡散させる構成部であり、レンズ要素17aと光拡散シート17bから構成される。
また、反射鏡15は、プロジェクタ13からの投写光7Aを透過型スクリーン14へ導く構成部である。
【0067】
次に動作について説明する。
プロジェクタ13からの投写光7Aは、反射鏡15により透過型スクリーン14へ反射される。透過型スクリーン14では、フレネルレンズスクリーン16によって投写光7Aが観察者側に曲げられ、光拡散部17により発散角度が与えられて広がった画像光7が観察者方向へ伝搬し、透過光選択装置2を通して観察者の左目A及び右目Bに観測される。
【0068】
ここで、プロジェクタ13において、上記実施の形態3と同様にして、偏光方向が互いに直交する投写光を出力して、透過型スクリーン14から偏光方向が互いに直交する画像光7a,7bが時系列に交互に表示した場合を例に挙げる。この場合、画像表示装置3Cは、通信部10aを介して、画像光7a,7bが表示されるタイミングを示す時系列情報を透過光選択装置2Cへ通知する。
【0069】
透過光選択装置2Cでは、上記時系列情報が示す表示タイミングに同期させて、第1の光選択部2gのシャッタ12a及び第2の光選択部2hのシャッタ12bの偏光透過軸の回転を制御して観察者の左目Aと右目Bへの画像光を選択的に透過させる。
これにより、観察者からは、画面6に相当する透過型スクリーン14に映った画像が立体的に表示されて見える。なお、画像光7は、観察者の右目Bの瞳から網膜へ伝搬する間に空間的に偏光状態が混ざり合って、左目用画像及び右目用画像光の各コヒーレンス度が低減するので、スペックルノイズ等による画像劣化を低減させた画像表示を実現することができる。
【0070】
プロジェクタ13と組み合わせて用いる透過型スクリーン14のフレネルレンズスクリーン16に注目して、画像表示装置として下記の構成のものを使用してもよい。
図11は、実施の形態5による画像表示装置の他の構成を示す図であり、図10に示した構成と同一な構成要素には同一符号を付して説明を省略する。図11において、画像表示装置3Dは、プロジェクタ13、透過型スクリーン14A及び反射鏡15Aを備えて構成される。透過型スクリーン14Aは、プロジェクタ13からの投写光7Aが投写されるスクリーンであり、フレネルレンズスクリーン16A及び光拡散部17を備える。なお、フレネルレンズスクリーン16Aと光拡散部17は、接着剤等で一体に貼り合わせた構成にしてもよい。
【0071】
フレネルレンズスクリーン16Aは、プロジェクタ13からの投写光7Aを観察者側に曲げるフレネル光学素子であり、フレネルレンズ基板16aと、入光面側フレネルレンズ16cから構成される。光拡散部17は、フレネルレンズスクリーン16Aで観察者側に曲げられた投写光7Aに発散角度を与えて拡散させる構成部であり、レンズ要素17aと光拡散シート17bから構成される。
また、反射鏡15は、プロジェクタ13からの投写光7Aを透過型スクリーン14Aへ導く構成部である。
【0072】
入光面側フレネルレンズ16cとしては、光学系の設計に応じて、図11に示すように入光面側全反射と屈折の混合式フレネルレンズ16c−1、入光面側全反射式フレネルレンズ16c−2及び入光面側部分全反射式フレネルレンズ16c−3がレンズ面内に混在して形成されたレンズが利用される。
ここで、入光面側全反射と屈折の混合式フレネルレンズ16c−1は、入光面側全反射式フレネルレンズ16c−2と、入光された光束を屈折のみ出光面方向に偏光する屈折式フレネルレンズとが、1つのプリズム内に混合されたフレネルレンズである。
入光面側全反射式フレネルレンズ16c−2は、入光された光束を対面で全反射させて出光面方向へ偏光するフレネルレンズである。
入光面側部分全反射式フレネルレンズ16c−3は、入光面側全反射式フレネルレンズ16c−2の谷を出光面に平行とした入光面側部分全反射式フレネルレンズである。
【0073】
なお、これらのフレネルレンズ16c−1〜16c−3は、画像表示装置3Dであるプロジェクタ装置の設計に合わせて適宜選択すればよく、1つのフレネルレンズスクリーン16Aのレンズ面内に3種類を混在させなくてもよいことはいうまでもない。
また、レンズ形状を工作する都合からプリズム先端の一部分が入射光線と略平行に欠けていてもよい。
透過型スクリーン14Aにおいて、フレネルレンズスクリーン16Aは、プロジェクタ13の特性に応じて選択され、光拡散部17は、視野角やスクリーンの輝度等の光学特性に応じて選択されることから、別々に設計製作され、各々独立に選択されることが多い。従って、透過型スクリーン14Aにおけるフレネルレンズスクリーン16Aと光拡散部17は、光学的な特性上切り離して考えてよい。
【0074】
上述した透過型スクリーン14A、反射鏡15A及びプロジェクタ13を備えたプロジェクタ装置において、透過型スクリーン14Aのフレネルレンズスクリーン16Aとして入光面側フレネルレンズ16cを採用することにより、図11に示すように、プロジェクタ13がよりスクリーン側に近づいた斜め投写が可能となる。この結果、例えば、図10の構成と比較すると、プロジェクタ13から透過型スクリーン14Aまでの距離、つまり奥行きを小さくでき、薄型が可能である。
【0075】
以上のように、この実施の形態5によれば、プロジェクタ13からの投写光7Aを透過型スクリーン14Aに投写できることから、投写光7Aが観測者側に曲げられ、かつ発散角度で広げられ、観測者が良好な画像を見ることが可能となる。また、通信部10aによって透過光選択装置2の通信部10bと画像光7の時系列情報について通信できるため、透過光選択装置2が画像光の選択を行うことが可能となる。この結果、観察者が、画像表示装置3C,3Dの画面上に表示された画像を立体的に見ることができる。
【0076】
実施の形態6.
図12は、この発明の実施の形態6による立体画像表示装置の構成を概略的に示す図である。図12に示す立体画像表示装置は、観察者が、透過光選択装置2を通して見ることで、後述する画像表示装置3E,3Fの画面6上の画像が立体的に表示されて見える装置である。ここで、透過光選択装置2は、上記実施の形態1〜4に示したいずれかの透過光選択装置2〜2Dであり、画像表示装置3E,3Fの画面6上に表示された画像光から観察者の左目Aと右目Bへの光を選択的に透過させる。
また、画像表示装置3E,3Fは、上記実施の形態3,4と同様に透過光選択装置2に設けた通信部10b(不図示)と通信を行う通信部10aを備える。画像表示装置3E,3Fが時系列に左目用画像と右目用画像を交互に表示する場合には、画像表示装置3E,3Fが左目用画像と右目用画像を表示するタイミングを示す時系列情報を、通信部10aを介して透過光選択装置2へ通知することにより、上記実施の形態3,4と同様にして、画像光の選択を行うことができる。
【0077】
図12の例では、通信部10aを、画面6の左下の前面部、画面6を左右に分割する中心線上の装置上部、及び中心線上の装置下部に配置した場合を示したが、透過光選択装置2の通信部10bと通信し易い位置であれば、配置する場所は任意でよい。
例えば、透過光選択装置2を眼鏡状に形成した場合には、観察者がこれを掛けると、透過光選択装置2が観察者の視線と同等の高さになるので、画面6の中心線上の装置部分が好ましいが、画面6の裏側に通信部10aを設けてもよい。
【0078】
図13は、実施の形態6による画像表示装置の構成を示す図である。図13において、画像表示装置3Eは、通信部10a、バックライト18、光変調素子19、光拡散部20、駆動回路21a〜21d、制御部22、映像信号変調部23及び照明変調部24を備える。バックライト18は、光源である照明部18a及びレンズ等の光学系から構成され、画像光7の元となる光を生成して、光変調素子19が配置された表示画面に与える。外光を遮蔽する筐体18b面に配置された複数の照明部18aは、駆動回路21c,21dからの制御信号によって駆動され、バックライト18の明るさが調節される。
【0079】
また、複数の光変調素子19は、駆動回路21a,21bからの制御信号によって駆動して光の偏光が制御され、画像光7が生成される。なお、光変調素子19が配置された画面が、図12に示した画面6に相当する。光拡散部20は、バックライト18から表示画面へ照射される光を均一に拡散させる構成部である。なお、バックライト18は、図14に示す画像表示装置3Fのように、照明部18aからの光を光変調素子19側へ導光する導光部18cを備えた構成であってもよい。
【0080】
制御部22は、映像信号変調部23及び照明変調部24の動作を制御する構成部であり、映像信号変調部23は、駆動回路21a,21bによる光変調素子19の駆動を制御して、偏光方向が互いに直交した画像光を生成する構成部である。照明変調部24は、駆動回路21c,21dによる照明部18aの駆動を制御して、バックライト18の明るさを調節する構成部である。例えば、制御部22は、映像信号変調部23に駆動が制御される光変調素子19による画像光7の偏光方向の切り替えを制御するとともに、照明変調部24を制御してバックライト18の明るさを調節する。
【0081】
次に動作について説明する。
照明部18aからの光は、光拡散部20を介して光拡散された後に、光変調素子19が配置された表示画面へ照射される。光変調素子19は、映像信号変調部23に制御された駆動回路21a,21bで駆動して、照明部18aからの光が画像となるように空間的に変調し、画像光7を生成する。この画像光7が観察者方向へ伝搬して、透過光選択装置2を通して観察者の左目A及び右目Bに観測される。
【0082】
画像表示装置3Eにおいて、上記実施の形態3と同様に、光変調素子19が配置された表示画面から偏光方向が直交する画像光7を時系列に交互に表示した場合を例に挙げる。この場合、画像表示装置3Eは、通信部10aを介して画像光7が表示されるタイミングを示す時系列情報を、透過光選択装置2Cへ通知する。
【0083】
透過光選択装置2Cでは、上記時系列情報が示す表示タイミングに同期させて、第1の光選択部2gのシャッタ12a及び第2の光選択部2hのシャッタ12bの偏光透過軸の回転を制御して観察者の左目Aと右目Bへの画像光を選択的に透過させる。これにより、観察者からは、画面6に映った画像が立体的に表示されて見える。なお、画像光7は、観察者の右目Bの瞳から網膜へ伝搬する間に空間的に偏光状態が混ざり合って、左目用画像及び右目用画像光の各コヒーレンス度が低減するので、スペックルノイズ等による画像劣化を低減させた画像表示を実現することができる。
【0084】
以上のように、この実施の形態6によれば、透過光選択装置2の通信部10bと画像光7の時系列情報について通信できるため、透過光選択装置2が画像光の選択を行うことが可能となる。この結果、観察者が、画像表示装置3E,3Fの画面上に表示された画像を立体的に見ることができる。
【0085】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0086】
1,1A〜1E 立体画像表示装置、2,2A〜2D 透過光選択装置、2a,2c,2e,2g,2i 第1の光選択部、2b,2d,2f,2h,2j 第2の光選択部、3,3A〜3F,3B’ 画像表示装置、4a,4b 偏光フィルタ、5A,5B,5A’,5B’,5c 位相差フィルム、5a 第1の位相差フィルム領域、5b 第2の位相差フィルム領域、6,6A 画面、7,7a,7b 画像光、7A 投写光、8a 第1の左目用画像光、8b 第2の左目用画像光、8a’ 第1の右目用画像光、8b’ 第2の右目用画像光、10a,10b 通信部、11a,11b,22 制御部、12a,12b シャッタ、13 プロジェクタ、13a 空間光変調器、13b 投写光学系、13c 照明光学系、13d 光源、14,14A 透過型スクリーン、15,15A 反射鏡、16,16A フレネルレンズスクリーン、16a フレネルレンズ基板、16b 出光面側フレネルレンズ、16c 入光面側フレネルレンズ、16c−1 入光面側全反射と屈折の混合式フレネルレンズ、16c−2 入光面側全反射式フレネルレンズ、16c−3 入光面側部分全反射式フレネルレンズ、17,20 光拡散部、17a レンズ要素、17b 光拡散シート、18 バックライト、18a 照明部、18b 筐体、18c 導光部、19 光変調素子、21a〜21d 駆動回路、23 映像信号変調部、24 照明変調部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示装置で互いに直交する偏光方向で表示された画像の画像光を、前記偏光方向に応じて選択的に透過する透過光選択装置において、
前記偏光方向のいずれか一方の画像光を透過する第1の偏光フィルタ及び前記第1の偏光フィルタを透過した光に位相差を与えて複数の偏光方向の光が混在した光として観察者側へ出射する第1の位相差フィルムを有する第1の光選択部と、
前記第1の偏光フィルタと偏光透過軸の方向が直交関係にある第2の偏光フィルタ及び前記第2の偏光フィルタを透過した光に位相差を与えて複数の偏光方向の光が混在した光として前記観察者側へ出射する第2の位相差フィルムを有する第2の光選択部とを備え、
前記偏光フィルタを前記画像表示装置側、前記位相差フィルムを前記観察者側に配置したことを特徴とする透過光選択装置。
【請求項2】
前記画像表示装置から互いに直交する偏光方向の画像をそれぞれ表示するタイミングを受信する通信部と、
前記第1の光選択部で前記第1の偏光フィルタと前記第1の位相差フィルムの間に設けられ、偏光透過軸を直交する方向に交互に切り替え可能な第1のシャッタと、
前記第2の光選択部で前記第2の偏光フィルタと前記第2の位相差フィルムの間に設けられ、偏光透過軸を直交する方向に交互に切り替え可能な第2のシャッタと、
前記通信部で受信された表示タイミングに応じて、前記第1及び前記第2のシャッタの偏光透過軸の切り替えを制御する制御部とを備えたことを特徴とする請求項1記載の透過光選択装置。
【請求項3】
画像表示装置で互いに直交する偏光方向で表示された画像の画像光を、前記偏光方向に応じて選択的に透過する透過光選択装置において、
前記画像表示装置から互いに直交する偏光方向の画像をそれぞれ表示するタイミングを受信する通信部と、
偏光透過軸を直交する方向に交互に切り替え可能な第1のシャッタ及び前記第1のシャッタを透過した光に位相差を与えて複数の偏光方向の光が混在した光として観察者側へ出射する第1の位相差フィルムを有する第1の光選択部と、
偏光透過軸を直交する方向に交互に切り替え可能な第2のシャッタ及び前記第2のシャッタを透過した光に位相差を与えて複数の偏光方向の光が混在した光として前記観察者側へ出射する第2の位相差フィルムを有する第2の光選択部と、
前記通信部で受信された表示タイミングに応じて、前記第1のシャッタと前記第2のシャッタの偏光透過軸の方向が互いに直交関係になるよう前記第1及び前記第2のシャッタの偏光透過軸の切り替えを制御する制御部とを備えたことを特徴とする透過光選択装置。
【請求項4】
前記第1及び前記第2の位相差フィルムは、偏光透過軸の方向が異なる領域を少なくとも2つ以上有することを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の透過光選択装置。
【請求項5】
偏光方向が互いに直交する画像光を出射する画像表示装置と、請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載の透過光選択装置とを備えた立体画像表示装置。
【請求項6】
画像表示装置で互いに直交する偏光方向で表示された画像の画像光を、透過光選択装置で前記偏光方向に応じて選択的に透過させて、観察者に当該画像を立体表示する立体画像表示方法において、
前記透過光選択装置で、前記画像表示装置から出射された少なくとも一方の偏光方向の画像光を前記観察者の右目用画像及び左目用画像として透過させるにあたり、前記観察者の目に入射させる右目用画像及び左目用画像の各画像光が、複数の異なる偏光方向の光が混在した光になるよう位相差を与えることを特徴とする立体画像表示方法。
【請求項1】
画像表示装置で互いに直交する偏光方向で表示された画像の画像光を、前記偏光方向に応じて選択的に透過する透過光選択装置において、
前記偏光方向のいずれか一方の画像光を透過する第1の偏光フィルタ及び前記第1の偏光フィルタを透過した光に位相差を与えて複数の偏光方向の光が混在した光として観察者側へ出射する第1の位相差フィルムを有する第1の光選択部と、
前記第1の偏光フィルタと偏光透過軸の方向が直交関係にある第2の偏光フィルタ及び前記第2の偏光フィルタを透過した光に位相差を与えて複数の偏光方向の光が混在した光として前記観察者側へ出射する第2の位相差フィルムを有する第2の光選択部とを備え、
前記偏光フィルタを前記画像表示装置側、前記位相差フィルムを前記観察者側に配置したことを特徴とする透過光選択装置。
【請求項2】
前記画像表示装置から互いに直交する偏光方向の画像をそれぞれ表示するタイミングを受信する通信部と、
前記第1の光選択部で前記第1の偏光フィルタと前記第1の位相差フィルムの間に設けられ、偏光透過軸を直交する方向に交互に切り替え可能な第1のシャッタと、
前記第2の光選択部で前記第2の偏光フィルタと前記第2の位相差フィルムの間に設けられ、偏光透過軸を直交する方向に交互に切り替え可能な第2のシャッタと、
前記通信部で受信された表示タイミングに応じて、前記第1及び前記第2のシャッタの偏光透過軸の切り替えを制御する制御部とを備えたことを特徴とする請求項1記載の透過光選択装置。
【請求項3】
画像表示装置で互いに直交する偏光方向で表示された画像の画像光を、前記偏光方向に応じて選択的に透過する透過光選択装置において、
前記画像表示装置から互いに直交する偏光方向の画像をそれぞれ表示するタイミングを受信する通信部と、
偏光透過軸を直交する方向に交互に切り替え可能な第1のシャッタ及び前記第1のシャッタを透過した光に位相差を与えて複数の偏光方向の光が混在した光として観察者側へ出射する第1の位相差フィルムを有する第1の光選択部と、
偏光透過軸を直交する方向に交互に切り替え可能な第2のシャッタ及び前記第2のシャッタを透過した光に位相差を与えて複数の偏光方向の光が混在した光として前記観察者側へ出射する第2の位相差フィルムを有する第2の光選択部と、
前記通信部で受信された表示タイミングに応じて、前記第1のシャッタと前記第2のシャッタの偏光透過軸の方向が互いに直交関係になるよう前記第1及び前記第2のシャッタの偏光透過軸の切り替えを制御する制御部とを備えたことを特徴とする透過光選択装置。
【請求項4】
前記第1及び前記第2の位相差フィルムは、偏光透過軸の方向が異なる領域を少なくとも2つ以上有することを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の透過光選択装置。
【請求項5】
偏光方向が互いに直交する画像光を出射する画像表示装置と、請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載の透過光選択装置とを備えた立体画像表示装置。
【請求項6】
画像表示装置で互いに直交する偏光方向で表示された画像の画像光を、透過光選択装置で前記偏光方向に応じて選択的に透過させて、観察者に当該画像を立体表示する立体画像表示方法において、
前記透過光選択装置で、前記画像表示装置から出射された少なくとも一方の偏光方向の画像光を前記観察者の右目用画像及び左目用画像として透過させるにあたり、前記観察者の目に入射させる右目用画像及び左目用画像の各画像光が、複数の異なる偏光方向の光が混在した光になるよう位相差を与えることを特徴とする立体画像表示方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−173401(P2012−173401A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33329(P2011−33329)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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