説明

透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成方法および装置

【課題】 サンプルが、効果的に区域限定されかつ再現されるような形で迅速に作成されることを可能にすると共に、多数の異なるサンプル材料に関して損傷を殆ど引き起こさない透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成方法、および該方法を実施するのに適した装置を提供する。
【解決手段】 透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成方法の場合、サンプルはサンプル材料の基材(110)から準備される。この目的のため、サンプル材料は、該サンプル材料中に脆弱路(301)を作成するべく、レーザービームにより照射軌道に沿って照射される。該照射は、上記脆弱路が、サンプル材料中を走る、レーザー照射によって同様に作成されるのが好ましい更なる脆弱路(302)に交差領域(305)において鋭角で交差するよう制御されている。基材は脆弱路に沿って切り離される。これにより、裂け目表面によって囲まれたくさび形のサンプル部を有すると共に、くさびの先端領域に少なくとも1個の電子透過領域を有するサンプルが作成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成方法、および該方法を実施するのに適した装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1930年代に登場した透過型電子顕微鏡は、以来、科学と産業のさまざまな分野で広く応用されている。現在最も高性能の透過型電子顕微鏡は、その分解能がサブオングストローム域と光学顕微鏡法に比べて格段に優れており、さまざまな種類の試料の微細構造やナノ構造を極めて詳細に検査することができる。
【0003】
特に固体の特性解析の分野では、透過型電子顕微鏡法(TEM)のおかげで、原子の単位で情報を入手することができる。この場合、X線分光法、電子エネルギー損失分光法などの専用分析法により、一方では原子の配列を調べることができると共に、他方では化学組成や原子構造を調べることもできる。電子エネルギー損失分光法の場合、少数の、例外的なケースでは個々の、原子の存在すら明らかにすることができる。
【0004】
数年前までは、電子顕微鏡で用いる電子光学システムは結像や分析を空間分解能の理論的限界で行うには不十分だった。電子レンズの開口収差や色収差などの制限パラメータを介して制御可能な極めて複雑な収差修正機や、モノクロメーターが登場して、現在では空間分解能の限界に大いに近づいた結像や分析が行われている。1990年代には、1MeV以上の極めて高い加速電圧を用いなければサブオングストローム域の空間分解能を得ること、およびこれに関連して極めて短い電子波長を得ることができなかったが、現在は、修正レンズの使用により、中程度の、例えば80から300keVの加速電圧でも、サブオングストロームの空間分解能域に到達することができる。これは、検査域における高度に分解された結像や分析を行うために極薄(数10nmの大きさ)にしなければならない極薄試料についてしばしば問題となるビーム損傷に関して、とりわけ好都合となる。
【0005】
従って、透過型電子顕微鏡法用サンプル(以下、略してTEMサンプルとも言う)を用意する効率的で損傷の少ない方法の必要性がますます増大している。本発明はTEMサンプルの作成方法に関するものであり、この場合特に、くさび面によって囲まれ、くさびの先端領域に少なくとも1個の電子透過領域を有するくさび形のサンプル部を備えたサンプルをサンプル材料の基材から用意するTEMサンプルの作成方法に関する。
【0006】
サンプルの薄板化が原則として純粋に機械的な方法で可能であることに間違いはない。しかし、少なくともある程度再現可能なサンプル品質に至るためには、手先の熟練が必要になる。更に、現在のところ、TEMサンプル上に薄い、電子透過領域を適宜作成するため、複数の、部分的には極めて複雑な技術がある。これらの技術には、特に前処理として機械的な薄板加工(研削、研磨、空洞研削)が含まれており、この加工の後に、イオンビームエッチング処理、集束イオンビームを用いた薄板部の切り抜き、およびミクロトームによる超薄切り片の切り出しが行われる。
【0007】
特許文献1はTEMサンプルを準備する方法を記述しており、その場合、真空室内での超短パルスのレーザーアブレーションにより、サンプル材料の基材から物質が取り除かれる。このアブレーションは細長いウェブが残るように行われるが、このウェブには後に不活性ガスイオンが低角度で照射され、その結果、該ウェブの領域に電子透過区域が作成される。この公報の記述の前置きには、従来のTEMサンプルの準備方法がこれ以外にも数多く記載されている。
【0008】
イオンビーム式薄板加工に用いられる方法は、サンプル材料の表面近くにアモルファス化/損傷が形成されることと本質的に密接な関係があり、形成の程度はイオンの加速電圧次第である。アモルファス化/損傷は、例えば3keVのガリウムイオンを用いたときは10nm以上になりうるが、一方、典型的な低角度のイオンエッチングを3keVで行った場合、損傷が3から6nmの間の厚さになることがしばしば観測される。関連する調査の結果によれば、低エネルギーのイオンビーム(通常200eVから500eVのエネルギー)を用いたときでも、1nm以下に縮小させることは殆ど不可能である。
【0009】
決まったへき開面を有する材料からなる基材という特別なケースのために、いわゆる「小角度へき開技術(SACT)」が提案されている(例えば、J.P.McCaffrey,Ultra microscopy 38,149(1991)または,J.P.McCaffrey,Microscopy Research and Technique 24,180(1993)参照)。研削加工によって薄板化された一片のサンプル材料の場合、この技術では、ダイヤモンドチップにより約500μm幅の平行な引っかき路が、サンプル材料の周知のへき開面に対して約18.5°の角度方向に形成される。その後、試料が引っかき路と材料固有のへき開面に沿って切り取られる。好ましいケースでは、サンプルの切り取りによって、裂け目表面間に約18.5°の内角を有するテーパー状の試料が得られる。
【0010】
理想的なケースでは、TEMによって検査可能な電子透過区域がくさび形サンプル片の最外端にできる。この技術の良い所は、イオンビームが作用しないため、用意されたTEMサンプルに、準備の段階で生ずるアモルファス化がなく、従って化学的な汚染がないことである。くさび形サンプル片上に原子的にフラットな面ができれば申し分ない。しかし、この方法を用いる可能性は限られている。なぜなら、この方法は、そもそも、結晶学的に決まったへき開面を有するサンプル材料にしか使用できないからである。加えて、この方法は、概して再現可能な結果に至らない。更に、この方法を自動化することは困難ないしは不可能である。最後に、目標とする試料を供給することすら殆ど不可能である。なぜなら、引っかき路の付け方が粗いため、亀裂開始の正確な場所を決定することができないからである。
【0011】
層構造物の表面法線にほぼ垂直な層、層システムまたは構造化された表面の検査を可能にすることを目的とする断面試料を準備することはとりわけ困難かつ複雑である。このような問題は、特に、品質管理と故障解析のために年間何千個もの断面試料を透過型電子顕微鏡で検査している半導体業界で起きている。透過型電子顕微鏡法の良さは、とりわけ、極めて高い空間分解能にあり、これにより、構造半導体の部品上にあるより小さい構造体の検査が可能になる。十分に薄い電子透過区域を有する高品質のTEMサンプルを用意することが処理能力を制約している段階であることがますます明白になっている。このような状況に対処するため、多数の準備機械を調達することがしばしば行われている。しかし、これは、例えば集束イオンビーム(FTB)加工用のシステムの場合、コストアップにつながる。
【0012】
品質管理と故障解析に当って構造半導体の部品を検査するとき、並立させるのが困難な複数の境界条件を特に考慮しなければならない。しばしば必要になるのは、構造化されたサンプル材料から、検査に適した電子透過区域が、極めて正確に決定でき、かつ理想的には、機械の位置決めおよび一連の工程に由来する位置にある断面試料を入手することである。この仕事は、専門家の間では「ターゲット準備」(または「サイト特定的準備」)という言葉で表されている。このターゲット準備は、品質管理の結果を部品の生産工程に迅速にフィードバックできるよう、できるだけ迅速に行わなければならない。更に、サンプル準備技術は、アーチファクトが試料に導入されるのを大幅に避けるよう、最適に制御されなければならない。代表的なアーチファクトには、構造的改質、拡散、熱のインプットによる相転移などの他、表面近くのアモルファス化(これは、例えばイオンビームを用いてサンプルを切り取るときに問題となる)が含まれる。最後に、特に工業的に使用する場合、再現可能な準備結果をできる限り広い加工分野で得られるよう、サンプル準備工程をできる限り自動化するよう努めなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】DE102004001173B4
【特許文献2】EP0633867B1
【特許文献3】DE69304194T2
【特許文献4】WO2003/077295A1
【特許文献5】EP1338371A1
【特許文献6】DE102004024475A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このような背景から、本発明の目的は、TEMサンプルが、効果的に区域限定され、かつ再現されるような形で迅速に作成されることを可能にすると共に、多数の異なるサンプル材料に関して損傷を殆ど引き起こさない透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成方法を提供することである。特にその狙いは、層構造体を備えた材料、例えば構造半導体材からできた断面試料を正確かつ再現可能な形で損傷を少なくして入手できるようにすることである。その狙いは、収差を修正した中等電圧の透過型電子顕微鏡を用い、高い空間分解能で結像や解析を実施するよう、独創的に用意されたTEMサンプルを使用することである。本発明の更なる目的は、上記方法を実施するのに適しており、そのおかげで半自動的あるいは全自動的に準備され、損傷が少なく、かつ、明確に限定可能な電子透過区域を有するTEMサンプルを短時間で再現することが可能な準備装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
これらの目的を達成するため、本発明は特許請求の範囲の請求項1の特長を有する方法および特許請求の範囲の請求項23の特長を有する装置を提供する。好都合な展開は従属の請求項で明細に述べる。全ての請求項の文言は、これらを参照することにより本記述に組み込まれる。
【0016】
本方法は、くさび面によって囲まれ、くさびの先端領域に少なくとも1個の電子透過領域を有するくさび形のサンプル部を備えたサンプルをサンプル材料の基材から用意するという事実により、透過型電子顕微鏡法用のサンプル(TEMサンプル)を作成することができる。この目的のため、サンプル材料は、該サンプル材料の中に第1の脆弱路を作成するべく、レーザービームにより第1の照射軌道に沿って照射される。該照射はこの場合、第1の脆弱路がサンプル材料の中を走る第2の脆弱路に交差領域において鋭角で交差するように制御されている。その後、基材は第1の脆弱路に沿って切り取られる。
【0017】
第2の脆弱路に沿う切り取りは、原則として第1の脆弱路の作成後に同様にして行われる。切り取り作業は同時に行ってもよく、また時間をずらせて行ってもよい。しかし、第1の脆弱路の作成に先立って、基材を第2の脆弱路に沿って切り取ることも可能である。この場合、第1の脆弱路は、基材のすでに存在する裂け目表面の近くに至るか、あるいはこれに直接ぶつかる。
【0018】
「脆弱路の交差領域」とは、この場合、鋭角で集束する脆弱路の出会い、あるいは脆弱路によって限定された好ましい亀裂の伝播線の出会いがある領域である。
【0019】
脆弱路は、空間的に限定された、ほぼ直線的な材料の脆弱領域である。脆弱路は、サンプル材料に機械的な負荷をかけた場合に亀裂が始まるか、あるいは亀裂が伝播する好ましい場所を構成し、目標区域内に、互いに向かって鋭角でテーパーになり、くさび形サンプル片のくさび面を形成する裂け目表面が作成されるのを確実にする。従って、該くさび形サンプル片は原子的に滑らかな面に囲まれうる。例えばイオンビームエッチングのような後処理段階の必要はなく、そのため、準備によって引き起こされるサンプル片のくさび面のアモルファス化が起きる可能性すらない。従って集束イオンビーム(FIB)加工あるいはイオンビームエッチングなどの他の方法にまさる点は、準備時間の大幅な短縮―これはキャリヤーへの積載を計算に入れなければ数秒の範囲に収まりうる―に見られることになる。第2の実質的な利点は、従来方法の場合にイオンビームとの接触によって起こる表面近くのアモルファス化が回避できることである。イオンの加速電圧を下げることでアモルファス化の厚みを縮小できる場合もあるということは確かに間違いではないが、イオンビーム式薄板加工法を用いるときは、アモルファス化を完全に防止することは原則として不可能である。更に、目標準備はミクロン単位でも可能である。なぜなら、レーザービームを用いた照射は、脆弱路の交差領域がサンプル材料内部の望みの検査区域(目標区域)に正確に位置するよう空間的に制御できるからである。
【0020】
例を挙げて説明すると、サンプル材料の内部に該サンプル材料の結晶質構造によって規定された自然の第2脆弱路として使用できる決まったへき開面を有するサンプル上に、機械的なスコアリングに代えて、レーザーに基づく脆弱路の作成、および好ましい亀裂開始または亀裂伝播の軌道の区域限定を実施することは可能である。しかし、互いに鋭角で走る2本の脆弱路がレーザー加工によって人工的に作成されるよう、第2の脆弱路を作成するためには、サンプル材料をレーザービームにより第2の照射軌道に沿って照射することが好ましい。その結果、本サンプル準備方法はサンプル材料から実質上独立しており、そのため、決まったへき開面を有しない材料、例えばガラス状構造の材料を準備することさえ可能である。更に、脆弱路間の交差領域の位置と、サンプル材料内部に作成されるくさびの方向の両方をサンプル材料の構造とは無関係に正確に決定でき、その結果、関心の的である検査区域の位置と方向については完全な自由度がある。
【0021】
サンプル材料および意図する検査方法によっては、第1および第2の脆弱路は、交差領域において両者間に存在し、後に該サンプルのくさび角を規定する交差角が25°以下となるよう互いに関して方向付けられることが好ましい。多くの場合、20°未満、特に15°からそれ以下の範囲の交差角が好都合である。サンプル材料によっては、くさびの角度は比較的小さくてもよい。例えば5°から10°まで小さくしてもよい。これらのケースでは、十分な横寸法および十分に小さい厚さを有する電子透過区域が特定の頻度で作成される
サンプル材料は単結晶質でも、部分的な結晶質でも、多結晶質でもよく、そのほか非結晶質でもよい。サンプルの準備に実質上利用できる材料は結晶学的に決定されたへき開面を欠くような材料(例えばガラス)のほか、すべてそこそこに脆い材料であり、特に無機の非金属材料である。
【0022】
半導体業界における応用、例えばマイクロリソグラフィーによるかその他の方法でウェハー面上に構築された半導体ウェハーの品質管理の場合、サンプル材料は、しばしば実質上は、シリコン、ゲルマニウムなどの半導体材料および/または1個または複数個の半導体材料に基づく1個または複数個の合成物から成っている。別構成の異なるドーピング層および/または機能層から成る層物質を有するヘテロ構造物がサンプル材料の一表面上に置かれてもよい。
【0023】
サンプル準備の出発点は、一般的に、基材となるか、あるいは基材がそこから物質除去処理によって作られる適当な大きさのサンプル材料の塊である。基材は通常、ほぼ平行な平面の薄い切片であり、これは単結晶質、部分的な結晶質、多結晶質、そのほか非結晶質のサンプル材料から成ってもよい。基材は、その構造が後にTEMによって検査されることになる検査区域すなわち目標区域が該基材の前側付近になるよう選択される。レーザー放射線による照射は、基材の後側、すなわち前側と反対の側から、特に前側付近にある検査区域が脆弱路の外側になるように行われるのが好ましい。この後方照射の結果、サンプル材料の検査されることになる区域そのものがレーザー照射によって損傷されないようにすることが可能になり、その結果、サンプル材料の構造が、実質上レーザーの照射による改質なしにTEM検査に供される。ビームの拡大度を大きくしてビームを適切に案内すること、その後収束角を大きくするか開口数を高くして焦点を合わせること、およびこれと関連して、例えば、損傷しきい値フルーエンス、すなわち、それを超えると損傷事例が生じ得る出力密度、が前側で過度にならないようレイリー長を設定して焦点深度を低くすることにより、材料の脆弱化あるいは材料の損傷の空間的限界を狭くすることを促進できる。
【0024】
大抵の応用にとって、照射前に基材の厚みがレーザー加工に提供された区域において約30μmと約500から550μmの間であるときに好都合であることが分かった。これにより、大抵の場合、亀裂を関心の的である検査区域に確実に伝播させることが可能になる。もし最初の材料が亀裂の伝播にとって厚すぎるなら、これを研削および/またはそのほかのタイプの物質除去処理方法によって好都合な基材厚さにすることができる。
【0025】
レーザー加工、すなわちレーザー放射線によってサンプル材料に改質および/または融除または損傷照射を行うことに関しては、サンプル材料により、また所望する試料により、多数の変形が可能である。
【0026】
1つの方法の変形の場合、照射は、それに対してサンプル材料が部分的に透過性であるレーザー放射線によって実施される。これらの条件の下では、基材の内部に、該基材の表面からある間隔を置いて位置する内部脆弱路が作成されるように照射を制御することができる。この内部加工の場合、TEMによって検査できる大幅な非損傷区域が、出来上がった試料における脆弱路の両側に対する基材法線の方向に存在し得る。しかし、非損傷区域が、入ってくるビーム側からそれた側に存在すれば概して十分である。
【0027】
特に、作業が部分的に透過性のサンプル材料について、および/またはサンプル内部に位置する損傷ゾーンについて進行する場合、表面粗さを小さくするため、および/または比較的滑らかな放射線の入射面を作成するため、基材の後側を照射の前に磨いてもよく、これにより、サンプル内部の限定された区域に対するレーザービームスポットのフォーカス性能を改善することができる。実験によれば、極端に粗い表面は、結合されるべきレーザー放射線を強くまき散らす可能性があり、その結果、脆弱路の位置が正確に限定されなくなったり、脆弱化作用の再現度が研磨したビーム入射面の場合よりも低くなったりする可能性がある。研磨加工により、例えば、10nm未満の粗さRaの平均深さを持ちうる光学的品質を持った放射線の入射面を作ることが好ましい。
【0028】
以下に「レーザースコアリング」という言葉でも表されている他の変形の場合、照射は脆弱路を基材の照射側の表面付近に作るよう制御される。このレーザースコアリングという方法変形は特に、その放射線がサンプル材料に強く吸収されるレーザーを用いて、後側の表面的なスコアリングを利用している。しかし、このレーザースコアリングは、レーザー放射線に対して部分的に透過的 または透過的な材料についても実施でき、従って基材材料から大きく独立した形で広く使用することができる。この方法変形の場合、照射の前に照射面を研磨することは一般に必要ではなく、このため、サンプル作成の全工程が簡素化され、かつ加速される。しかし、照射面が研磨されることは大変理にかなったことと言える。
【0029】
脆弱路から始めるにあたって、サンプル材料中に幾何学的に決まった裂け目を確保するためには、レーザー放射線が脆弱路の領域に基材の厚さの少なくとも2/3に相当する深さの損傷を作り出すことが好都合であることが分かった。損傷の深さがより大きくなる、例えばサンプルの厚さの4/5にもなることが、しばしばより好都合である。いずれの方法の場合も、損傷の深さを決める基準は基材前側上の検査されるべき構造体の健全性であり、該構造体は構造的かつ化学的に改質されることができるだけ少なくならなければならない。この点、検査区域に層構造体を有するサンプルは、とりわけ取り扱いに注意を要する。
【0030】
照射軌道の走査中に基材に作用する出力密度をほぼ一定に保つことは可能であるが、多くの方法変形の場合、照射軌道の走査中に基材に作用する出力密度を変えるため、空間依存的な制御が実施されている。これは、適宜構成され、および/またはプログラムされた制御装置を用いて自動的に行うことができ、さまざまな理由から極めて好都合であると言える。
とりわけ、取り扱いに極めて注意を要するサンプル材料の場合、非損傷区域が交差領域のすぐ近くに残るように照射を制御することが好都合であると言える。この場合、照射によって作り出された脆弱路は、該脆弱路によって定められた脆弱線の理論的な交差点には至らず、想像上の交差点の近くで、理論的な交差点から一定の間隔を置いて終わる。本方法のガイダンスは、第1の脆弱路が目標区域内を、サンプル材料の中を走る第2の脆弱路に対して鋭角に走るという事実、あるいは第1の脆弱路がサンプル材料の中を走る第2の脆弱路に脆弱路の交差点の領域において鋭角で接近するが、交差は実際には起こらないという事実の中で記述することもできる。理論的な交差点からの間隔は、好ましくは、サンプル材料内部における亀裂の伝播が脆弱路に沿い、若干損傷しているか、あるいは損傷していない交差領域を通り、同じ脆弱路の向う側の始点まで続き、その結果、非損傷区域が伝播している亀裂によって、いわば架橋されるように設定されるべきである。上記間隔、すなわち、あまり損傷を受けていない区域の半径は、例えば300μm未満でもよく、あるいは、例えば約50μmから約250μmの間、特に、約100μmから約200μmの間の範囲内であってもよい。上記半径は、くさび先端の領域において十分な大きさの非損傷電子透過区域を確保するためには、少なくとも0.5μm、あるいは少なくとも1μmにすべきである。
【0031】
照射軌道の走査中に損傷を及ぼす照射を局所的に阻止したり減らしたりすることは、種々のやり方で成し遂げることができる。ある変形の場合、レーザービームが適切な地点で制御可能なシャッター、あるいはその他のビーム阻止装置により、しばらくの間阻止される。これは、あらゆるタイプのレーザーについて、特に連続発振(CW)レーザーの場合も可能である。他の変形の場合、局所的な阻止は、照射軌道の走査中はレーザーを一時的に止めたり、交差領域を通過する時はパルスの始動を抑えたりすることにより達成できる。これは、例えばパルスレーザーの場合、問題なく可能である。照射軌道の走査中に損傷を及ぼす照射を局所的に阻止したり減らしたりすることは、レーザーの有効出力を、レーザー自体によるか、あるいはビーム通路に設置した制御可能な減衰器を用いるかして、局所的に制御することによっても達成できる。いかなる変形の場合も、くさび先端の領域において、くさび表面の、レーザー照射によって引き起こされる損傷から完全にフリーな区域を得ることが可能である。その上、これは、くさび先端の領域において発生し得る好ましくない熱の蓄積を防止するか、あるいは(連続的な脆弱路と比較して)少なくする。
【0032】
照射軌道の走査中に基材に作用する出力密度を変えるための局所的な制御は、基材を照射軌道の始めおよび/または終わりに照射軌道の交差領域から完全に遠ざけるためにも使用することができ、これにより、後に行う区域を限定した切り取りの開始を容易にする刻み目が作られる。
【0033】
サンプル材料が、検査区域内に1つもしくは複数の層ならびに1つもしくは複数の共有領域を有する層構造を備えているときには、本方法により格別の利益が提供される。ここでは、脆弱路を、共有領域の少なくとも1つに対してほぼ垂直なくさび表面を作り出すように方向づけることができ、これにより、透過型電子顕微鏡検査を上記共有領域の表面法線に対してほぼ垂直に実施することが可能になる。
【0034】
2つのパラメータ、特に波長と照射の時間的制御、とりわけパルスの持続時間が、照射のために適切なレーザーパラメータを設定する上で主として重要である。波長は、サンプル材料との絡みで、サンプル材料の部分的な透過性ができるだけ生じるよう(内部加工のため)、あるいはレーザー放射線のサンプル材料への吸収ができるだけ完全に生じるよう(レーザースコアリングのため)選択されるべきであるのに対して、パルスの持続時間は、レーザー放射線とサンプル材料との間の相互作用のメカニズム、ひいては熱影響域の広さに影響を及ぼす。超短パルスレーザーは、ピコ秒(ps)またはフェムト秒(fs)の範囲内の典型的なパルス持続時間でサンプル材料の電子構造と結合することができ、従って非熱的なアブレーションに至ることができるのに対して、そのパルスが一般にナノ秒(ns)またはマイクロ秒(μs)の範囲内のパルス幅を有する短パルスレーザー
との相互作用、あるいは連続放射レーザー(連続発振レーザー、CWレーザー)との相互作用は、しばしばサンプル材料の局所的溶融に至り、その後溶融物質が蒸発するという結果が生ずる。該して、短パルスレーザーおよびCWレーザーは、被処理サンプルを超短パルスレーザーよりもはるかに強く熱する。
【0035】
周知タイプのレーザーはすべて、ここで提案しているサンプル準備技術に適している。従って、例えば短パルスレーザーまたはCWレーザーは、熱伝導性が悪く、逆加熱性のために微細構造変化を基本的には被らないセラミック材を照射するのに使用できる。しかし、多数の応用については、例えば誘導体あるいは半導体の材料を準備する場合、照射は超短パルスレーザーによって実施されることが好ましい。なぜなら、このレーザーは、多光子吸収により、使用波長に対して実際に透過的である材料を加工するためにも使用できるからである。後者の現象は高い出力密度と結合するが、その状態では、非線形光学効果により、励起過程にある2個以上の光子のエネルギーが一緒になり、その結果、誘導体材料内で、個々の光子のエネルギーをはるかに超えるバンドギャップを乗り越えることが起こり得る。
【0036】
1個のレーザー源を使用して複数のさまざまなサンプル材料に最適な照射パラメータを設定できるように、ある好ましい変形例では、さまざまなサンプル材料に対してそれぞれに最適な波長を設定できるよう、調節可能なレーザー源を使用してレーザー放射線を作り出すことを記述している。適切な波長の選択に関しては、例えば光学パラメトリック増幅器(OPAs)を使用することができる。後者は、基本的なレーザー波長と白色光源と一緒に使用して、基本的なレーザー波長よりも大きいレーザー波長の調節可能なスペクトルを作り出すことができる。例えば、市販用のレーザーシステム(CLark−MXR社)が入手可能であり、該システムは、光学パラメトリック増幅によって、775nmの波長の種光源をベースに、約1.5μmから約2.5μmまでの波長範囲から任意の波長を出力することができる。他のシステムは、189nmから20μmまでの調節可能な範囲に達している。
【0037】
現在、約248nm(KrF エキシマレーザー)と最大3μmの間の波長が多くの応用に有用と思われる。これより短い波長では、ビームの案内にかかる費用が高くなる。なぜなら、吸収を避けるため、ビーム路を保護ガスで清めたり、退避させたりする必要があるからである。約3μm以上の波長では、レーザービームの焦点を合わせるための経費が嵩む。従って、動作波長は、約247nmと約3μmの間になることが好ましい。特に、約1μmと約2μmの間の範囲では、高いビーム品質と共に適切な出力を供給できるファイバーレーザーを使用することが可能になる。
【0038】
レーザー放射線のレーザー源へのフィードバックを排除するため、ある変形例では、レーザー放射線を、放射線入射表面の表面法線に対してある傾きで基材に照射することが記述されている。一般的に、フィードバックを避けるには、例えばビーム投射方向と表面法線との間が5°以下の小さい設定角で十分である。従って、高価な光アイソレーターその他の補助器具なしで済ますことが可能である。これは、傾動装置に基材ホルダーの保持面を、求めに応じて一時的あるいは永久に、若干傾斜させることにより簡単に達成できる。
【0039】
目標とする、基材の脆弱路に沿う切り取りは、さまざまな方法で実施できる。ある方法変形の場合、伸縮性フィルムが、初めに、特に脆弱路の導入前に、基材のビーム入射側からそれた一側上、特に前側上に接着され、亀裂の開始および/または亀裂の伝播に十分な力が、損傷路の導入後、フィルムを引っ張ることにより基材に働き、その結果、前記基材が損傷構造物によって決められた裂け目表面に沿って切り取られ、これによりTEMサンプルが出来上がる。フィルムは接着性の層を欠いた領域、例えば、好ましくは丸い、切り欠きを有し、損傷した基材上に、接着性の層を欠いた領域が脆弱路の交差点の領域に位置するようにして接着されるのが好ましい。これにより、極めて取り扱いに注意を要し、鋭角を成し、くさび形の、レーザー軌道によって囲まれた三角形の端部が自由となり、TEM検査に使用できるということが達成できる。接着性のフィルムが用いられるときは、その切れ端は一般に切り離し後もくっついたままであり、このことが、更に先の処理を容易にする。
【0040】
上記方法に代えて、他の亀裂開始の方法、例えば刃で切り離すことなどを適用することも可能である。
【0041】
本発明はまた、透過型電子顕微鏡法用サンプルを作成するための装置に関するものであり、該装置は、本方法を実施するため特別に設計、製造され、本方法が操作者による適宜の調整後、半自動あるいは全自動で実施できるようにしている。本装置は、サンプル材料から作られた基材を保持する基材ホルダー、レーザー放射線源とレーザービームを基材のビーム入射面上に案内するビーム案内システムとを有するレーザーシステム、および、レーザービームが少なくとも第1の投射軌道に沿って基材を照射するように、基材とレーザービームとの間に相対的な動きを生み出す移動システムを備えている。また、本方法を実施するよう構成することができる、あるいは構成されている制御装置を備えている。本制御装置は、さまざまな方法変形を実施するため、ある点では互いに調和している基材ホルダー、レーザーシステムおよび移動システムを動かすために用いることができる。装置全体がコンピュータ制御されることが好ましく、本制御装置は、数個の入力パラメータを入力することにより、さまざまな方法変形をプログラム化することができると共に、該パラメータを制御装置の制御信号に基づき自動的に走らせる運転プログラムを含んでいる。特に下記のパラメータは、そのような入力パラメータに属すると言える。
【0042】
(i)第1の照射軌道が第2の脆弱路に鋭い交差角で交差する目標区域の位置または場所を表す目標区域パラメータ。目標区域は、例えばカメラ画像に基づき、あるいは基材に関して付けられたマークで定められた、座標システムに関する座標を介して入力することができる。
【0043】
(ii)第1の脆弱路の、第2の脆弱路との交差角を直接、あるいは間接に(例えば投射軌道の規定可能なコースを介して)表す交差角パラメータ。
【0044】
(iii)例えば直線状、よじれている、曲がっているなど、少なくとも1個の投射軌道の形状を表す形状パラメータ。
【0045】
(iv)例えば、表面レーザースコアリングと内部損傷との間で選択するために、基材上あるいは基材内の焦点領域の位置を決める焦点調節パラメータ。もし適切ならば、同じ内部損傷路に関して複数の路の空間的な配列を規定することも可能である。
【0046】
(v)基材上に集束レーザービームの特定のビーム特性、例えば、焦点領域における収束角あるいはレンズ口径、を決める1個以上のレーザーパラメータ。もし適切ならば、波長(調節可能レーザー源)。もし適切ならば、照射、特にパルス繰り返し数の時間的制御。
【0047】
(vi)基材に作用するレーザー出力の位置同期可変制御のための出力可変制御パラメータを入力することは、特に、交差領域のすぐ近くにおける投射レーザービームの出力密度をある時間間隔を通じ、あるいはある通過距離を通じて減少できるため非損傷区域が交差領域の近くに残る、というような方法変形を許すためには、任意ではあるが可能である。この目的のため、軌道に沿って走査する速度を適宜変えられる形でプログラミングすることも可能である。
【0048】
(vii)もし適切ならば、通過機会の回数を変動パラメータ(i)から(vi)までと共に。
【0049】
パルスレーザーの場合も、繰り返し数とパルスエネルギーを設定できる。
【0050】
第1の脆弱路の作成と第2の脆弱路の作成は、その後自動的に、すなわちオペレーターの介入なしで、適宜、プログラム可能なレーザー加工装置により実施できる。
【0051】
従来のレーザーマイクロ処理装置が、レーザー源、フォーカス性能およびレーザービームと基材ホルダー間の相対移動についての可制御性に関して、それらの設計に基づいて本方法を実施するのに根本的に適切である限りは、該装置も本方法を実施するのに使用できる。なぜなら、脆弱路の少なくとも1つ、好ましくは互いに対して鋭角で走っている2本の脆弱路は、該装置によって作成されるからである。従って本発明は、本発明を実施するのに適切な構成から成るレーザーマイクロ処理システムの使用にも関わっている。
【0052】
クレームに由来するものに加えて、上記特長および更なる特長も本記述および図面から現われるが、本発明の実施態様のため、および他の分野で、個々の特長をそれぞれ独立して、あるいは副結合の形で別々に実施することが可能であり、また、個々の特長を、それ自身保護可能な好都合な設計であるとみなすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】レーザーマイクロ処理装置によって透過型電子顕微鏡法用サンプルを作成するための準備装置の不可欠な構成要素の概略図である。
【図2】基材の表面に交差した脆弱路を導入することによるTEMサンプルの作成におけるさまざまな方法段階の略図である(レーザースコアリング)。
【図3】基材の内部に交差した脆弱路を導入することによるTEMサンプルの作成におけるさまざまな方法段階の略図である。
【図4】照射軌道の交差領域のすぐ近くにあまり損傷を受けていない区域が残るように、基材に作用するレーザー放射線の出力を制御するさまざまな可能性についての略図である。
【図5】伸展性の接着フィルムを用いた基材の脆弱路に沿う切り離しについての略図である。
【図6】集束レーザービームがTEM検査に提供されるサンプル部を分離するのに使用されている状態についての略図である。
【図7】透過型電子顕微鏡への取り付けに、その上に固定されたくさび形試料と共に提供されるサンプルホルダーの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1は、集束レーザー放射線を用いて透過型電子顕微鏡法用サンプルを作成する装置100の不可欠な構成要素についての概略図を示す。該装置(以下、サンプル準備装置100とも称される)は、卓上用機器として設計されたレーザーマイクロ処理ステーションである。またその構成要素はその目的のために特別に設計されたものであり、互いに調和して、さまざまなサンプル材料から成る、前処理をされたか、あるいは特別の前処理をされていない基材から、TEMサンプルを半自動的あるいは自動的に作成している。TEMサンプルは超高分解能の透過型電子顕微鏡での検査、特に最新の収差補正された透過型電子顕微鏡を用いたTEM検査に適しており、その結果、試料のアーチファクト(例えば、表面近くのアモルファス化)が大幅に回避される。
【0055】
電動モータによって駆動可能であり、少なくとも1個の基材110を基材保持面となるその上側に保持して基材ホルダーの役目を果たす昇降テーブル102が、振動を弱めるように支持されたマシンベッド上に載せられている。なお、昇降テーブルは、例えば御影石の板である(図示せず)。昇降テーブルには、もし必要なら昇降テーブルを図1に示すゼロ位置から若干度(例えば、せいぜい5°)傾動可能な傾動機構が設けられてもよい。ゼロ位置では、昇降テーブルの上側は水平になっており、従って、縦のZ軸に対して、すなわちレーザービームの投射の平均方向に対して垂直になっている。基材保持面を、レーザービームの投射方向に対して恒久的な傾斜にすることも可能である。
【0056】
更に、本装置100は、レーザー放射線源120を有するレーザーシステムと、これに装備された、レーザー放射線を案内し、集束レーザービーム125を作り出すビーム案内システム124とを備えており、基材の上を向いているビーム入射表面112に向けることができる。本実施態様では、非常にメンテナンスフリーで費用効果の高いファイバーレーザー120が使用されている。ファイバーレーザーは超短パルスレーザーとして、ピコ秒(ps)の範囲内で、他の実施態様ではフェムト秒(fs)の範囲内で、レーザーパルスを出すことができる。
【0057】
サンプル材料、および本方法の望ましい処理により、次のようなタイプのレーザーが適当である。例えば、MBP−Communications社製のエルビウムまたはイッテルビウムファイバーレーザーは、受動モードカップリング付き(MLFL−Pシリーズ)で、λ=1530nm−1565nm(Er)または1020nm−1100nm(Yb)の動作波長、最大約200mWの平均出力、および30MHzと100MHzの間の繰り返し数を持つ。またAmplitude Systems社製のタンジェリンファイバーレーザーは、約2MHzと約30MHzの間の繰り返し数のほか、λ=1030nmの動作波長、14−20Wの出力、および100fs以下と10ps以下の間のパルス長を持つ。
【0058】
ビーム拡大器121を用いて拡大されたレーザービームは、コンピュータ制御の下で作動できるシャッター122および同様にコンピュータ制御下に置くことができる減衰器123を通過し、その後ガルバノスキャナー126のミラー機構により、レーザービームの焦点を基材の後側112(ビーム入射面の役割を果たす)の区域上に結ぶ焦点レンズ128の方向に屈折される。焦点レンズ128は、テレセントリックなf−θレンズとして、集束レーザービームが平坦な基材表面上の二次元的に広がる作業区域の内側の各集束位置で、弱弱しく変化する入射角に連動して基本的に同じビーム特性を持つように、ガルバノスキャナーの偏向レンジおよび入射レーザービームの特性に適合している。従ってf−θレンズは、屈折したレーザービームの焦点領域が確実に平面上を移動し、球面上を移動しないようにしている。昇降テーブルの高さ調節機構は、焦点平面が照射されるべき平面と一致するよう後者を位置決めするために使用される。
【0059】
上記装置100は比較的小さい(例えば、縁の最長が10nm以下の範囲の)基材を加工する目的で設計されているため、ガルバノスキャナー126と結像レンズ128が共同して作業する区域は比較的狭くてもよく、例えば20mm×20mmである。従って、比較的費用効果の高いレンズでも、平らな作業区域内でレーザービームの焦点を小さい焦点領域に結ぶことが可能になる。好ましい実施態様では、基材上の集束レーザービームのスポットの大きさ、すなわち最小直径の場所におけるビームの直径は、例えば20μm以下、特に15μm以下、あるいは10μm以下にもできる。一般的に、焦点における直径は約2μmから5μm以上である。同時に、損傷の深さ(これは集束レーザービームの開口数次第であるが)は比較的浅めにすることができ、これにより、脆弱化すべき区域の正確な限定が横方向と深さの両方で可能になる。好ましい実施態様では、損傷の深さについての、すなわちビームのフィールドの深さについてのレイリー長特性は100μm以下の範囲、特に80μm以下、あるいは60μm以下の範囲にもなり得る。ここでレイリー長とは、ビーム方向に沿って測った長さと定義されており、これは、最小ビーム収縮の位置(焦点位置)とビームの直径が焦点位置におけるビーム径の2倍にあたる位置との間隔にあたる。従って、場所的な正確さでも限定できるきわめて正確な材料損壊が基材材料の表面で、あるいは内部で可能になる。
【0060】
レーザー加工のための作業区域が比較的狭いおかげで、移動システムとして比較的費用効果の高い昇降テーブルで済ますことができ、また複雑なX−およびY−方向の精密移動システムを取り止めることができる。なぜなら、集束レーザービームなら、静止形の基材ホルダーさえあれば、ガルバノスキャナーとテレセントリックなf−θレンズを用いて作業区域内の全ての場所をカバーすることができるからである。これにより、装置全体のコンパクトで費用効果の高い設計が促進される。もちろん、本装置に精密移動システムを装備することも可能である。このシステムにより、サンプルテーブル102をビームの入射方向に対して横方向、すなわちX−およびY−方向に動かすことができる。この場合、ビームの焦点合わせのために、より費用効果の高い静止形のレンズを使用することができる。
【0061】
基材表面にビームを正確に位置決めするのを助けるために,基材表面と連携できるサーフェスカメラ130から成る観察システムが設けられている。基材をレーザービームに関して正確に位置決めするための位置決めシステムは、基材表面の正確な位置を検知する整列センサー140から成っている。この実施態様では、レーザー整列センサー140は自動焦点プロセスと関連して使用されている。
【0062】
レーザーマイクロ処理装置100に、基材上に設けられたマーカーを検知するマーカー検知システムを装備し、照射軌道の交差領域が設けられるべき目標領域の限定をマーカーに関して自動的に企てることも可能である。
【0063】
サンプル準備装置は切り取り装置(図示せず)を装備してもよい。この装置により、レーザービームによってあらかじめ損傷された基材をあらかじめ決められた表面に沿って切り離し、TEMサンプルを作り出すことができる。
【0064】
サンプル準備装置100の構成要素はすべて、中央制御・操作ユニット160に接続されており、該ユニットは、本実施態様の場合はユーザーインターフェイス(スクリーン、キーボード)を備えた制御コンピュータによって構成されている。中央制御ユニットは、例えば、レーザー放射線源120およびビーム偏向システム126のために特定の操作パラメータを設定したりプログラムに組んだりするために使用できる。例えば、レーザーの走査スピードのほか、その出力や繰り返し数を設定できる。更に、オペレーターは、基材の照射が始まる前に、観察システムからの支援の下に制御・操作ユニットを使用して、適当な入力パラメータを介し、照射軌道を正確に規定することができる。この照射軌道に沿って基材が照射されることになり、また、その間に交差領域が存在することになる。これにより、TEMサンプルのくさび角の正確な規定などの正確な目標準備が可能になる。更に言えば、もし必要なら、特に、例えば、交差領域のすぐ近くに非損傷領域ができるだけ残るようにするために、基材に作用するレーザー放射線について、その出力密度の局所的な形状を設定することが可能である(図4に関する説明も比較のこと)。従って、この目的を達成するために、プログラムの実行時に減衰器123および/またはシャッター122に適当な制御信号を出力することが可能である。あるいはレーザー120の出力を変化可能な形にして直接変えてもよい。
【0065】
分離されるべき基材の内部あるいはその表面のいずれかに導入されるレーザービームのフルーエンスを適当に選択することにより、軌道の走査中に、すなわち応力の状態もしくは材料の局所的な脆弱化が生じている間に、直接亀裂を開始することも可能であり、いずれの場合も、軌道の走査後に亀裂開始のために使用することができる。もし適切ならば、レーザーパラメータを最適化する目的で、レーザーを使った材料の分離の分野からの経験を求めることが可能である。例えば、非鉄金属の無機材料から成る物体をレーザー放射線で局所的に照射することにより分割できることが知られている。亀裂の伝播のために極度に局所限定された温度勾配を用いる方法(例えば、特許文献2に対応する特許文献3)に加えて、マイクロメカニカル素子(MEMS)、すなわち半導体チップの分割を目的とする、例えば特許文献4から知られる方法がある。このケースでは、分割されるべき半導体ウェハーは、保護フィルムを当てがわれた後、集束レーザービームで内部が局所的に溶融される。そして伸展性のフィルムを後側に貼り付けた後、脆弱化した位置で複数の亀裂が開始される。最後に、ある方法がまた、例えば特許文献5から知られている。この文献では、微細に集束された適当な波長のレーザービームが半導体ウェハーの内部で焦点を結ぶ結果、そこに内部応力が生じ、これが直接材料の分割に至るか、分割の前提条件となる。特許文献6は半導体材料を分割する方法を開示しており、そのケースでは、レーザービームが半導体材料の分割ゾーンに向けられ、レーザービームの波長が、レーザービームが半導体材料に部分的に吸収される状況下で部分的にこれを透過するように選択される。これらの文献がレーザーパラメータの設計のための材料固有のデータを含んでいる範囲内において、これらのデータを使って本発明方法のある実施態様を最適化することができる。
【0066】
処理ソフトウェアによる適切な補償があれば、レーザービームのレーザー放射線源へのはね返りを排除する目的のために、水平位置から若干度(例えば2°から10°の間)傾斜したサンプルテーブルを使用することができ、高価な光遮断器を使う必要はない。本実施例の場合、昇降テーブル102のフラットな上側は、保持面の役割を果たす上側の表面法線がレーザービーム125の投射の方向に対して約5°の取り付け角となるよう恒久的に若干傾いており、その結果、基材表面によって反射された放射線は焦点レンズ128の中を通ることができない。
【0067】
照射中の基材の、基材ホルダー上に位置している前側への好ましくない照射効果を回避するため、基材ホルダー(昇降テーブル)は、少なくとも基材支持面の領域では、レーザーの照射に対して透過的な材料から成っており、このため照射中に熱が出ることはない。これに代え、あるいはこれに加えて、作業区域の中央に、例えば倒円錐形の小さい切り抜きまたは開口を設けて、載せられた基材の目標区域が基材支持具と物理的な接触をしないようにすることができる。
【0068】
処理手続きに必要な制御パラメータをすべて入力した後、サンプル準備装置100は記述されたプログラムを自動的に実行する。制御パラメータは各処理の前に個別に入力してもよい。特定の種類のサンプルに割り当てられ、あらかじめプログラムされた種々の制御パラメータを制御・操作ユニット160のメモリーに記憶させておき、「ボタンの一押し」で呼び出すことも可能である。
【実施例】
【0069】
サンプル準備装置100を用いて半自動または全自動で実施できる種々のサンプル準備方法を図2、3、4を参照して以下に説明する。サンプル準備の出発点は、図2を参照して説明すると、単結晶質、部分的な結晶質、多結晶質、そのほか非結晶質のサンプル材料でできた、普通は平行平面の薄い切片であり、その構造が、表面に近い、関心の的である検査区域(目標区域)の範囲内で、断面試料として透過型電子顕微鏡の中で検査されることになる。基材は、例えば全面被膜または無被膜半導体ウェハーの長方形の切片であってもよい。典型的な大きさは縁の長さが10mm以下の範囲にある。
【0070】
この基材の表面(その近辺に関心の的である検査区域が存在する)が基材の前側114(点々で示す)になっている。この基材は、本方法の多くの変形では、サンプルの準備中は機械的にもあるいは他の方法でも加工あるいは改質されていない。本実施例の場合、構造化プロセスの結果、さまざまな材料からできた、その間に横たわる共有領域部を有する多数の層が前側の近辺に存在する。この層は前側とほぼ平行に走っており、検査されることになっている。
【0071】
基材が、関心の的である区域で十分な薄さになっていないときは、前側からそれた後側をあらかじめ平面平行に研削しておくことによって最適な厚さが得られる。一般に、最適な基材厚さは基材の材質とサンプルの種類によって決まるが、30μmと500から550μmの間の範囲にあることが多い。
【0072】
そのあと、加工されていない前側114を有する平行平面の基材は、昇降テーブル102の、そのために提供された平らな支持面上に載せられ、昇降テーブル上に最小応力で、例えば基材の、上になっている後側114に作用する複数の保持スプリングを用いて、しっかり固定される。そのあと、昇降テーブルが垂直方向に動き、その結果、基材の、上になっている後側がレーザービームのほぼ集束面、すなわちf−θレンズ128の焦点面に位置する。保持スプリングの代わりに、真空チャックの形で負圧を用いて固定してもよい。この目的を達成するため、保持テーブルを、少なくとも保持領域では、それを通じて基材が支持面上に吸着される多孔質セラミック材で構成してもよい。基材をただ単に支持面上に載せるだけで、いちいち固定しないことも一般的に可能である。
【0073】
本実施例の場合、基材の材質は使用されるレーザー波長に対してほぼ非透過性、すなわち強度の吸収性を持ち、従って集束レーザービームを用いた後側表面のスコアリングを可能にしている(レーザースコアリング)。
【0074】
位置決め終了後の第1の段階は、第1の照射軌道を集束レーザービームで走査することにより、第1の脆弱路201を後側112の上に導入することである(図2A)。本実施例の場合、第1の軌道は直線であるが、他の実施態様では一重または多重の曲線あるいは折れ線でもよい。そのあと第2の照射軌道が走査されるが、これも直線であっても、折れ線であっても、あるいは曲線であってもよい。その結果、本実施例の場合は第2のまっすぐな脆弱路202が作り出されるが、これは、今度は表面スコアリングの形で存在する。
【0075】
照射はこの場合、第1の脆弱路が、すでにサンプル材料中を走っている第2の脆弱路とあらかじめ決められた脆弱路の交差領域205で鋭い交差角210(一般的には18.5°未満)で交差するように制御されている。この場合、交差角の正確な大きさと2本の軌道の正確な形状は、それぞれの基材の材質と存在する被覆物の種類によって決まる。
【0076】
一般に、集束レーザービームの照射パラメータはサンプル材料と基材の表面の性質を関数として、脆弱路の領域にある深さの損傷が存在するように設定され、その深さは基材の厚さの少なくとも1/3から2/3であるが、もっと深く、例えば基材の厚さの4/5以上になることもある。しかし、基材まるまるの厚さになってはならない。レーザーに起因する材料の脆弱性が深まれば深まるほど、後続の方法段階で基材の材質中に局所的に限定された亀裂が生ずる確率が高くなる。他方、加工の深さは、前側114付近にある検査区域におけるサンプル材料の構造ができるだけ非損傷状態のままであり、化学的もしくは構造的な変質を被らない程度の深さであるべきである。
【0077】
しかし、深さの制限に対する例外は、照射軌道の始めには、またもし適切ならば終わりにも、目標区域には全く当てはまらない場合がある。照射軌道の始めと終わりには、基材の材質がまるまるの深さにわたって損傷を受け、この場合はいわば切断されるように加工のパラメータを設定することができる。これにより、V字形の刻み目410(図4参照)を作り出すことが可能になり、この刻み目は、切り離し時に亀裂を局所限定して導入することを促進する。
【0078】
図2Cに従って説明すると、レーザービーム加工の終了後、基材は、適切な機械的な圧力を基材に導入することにより、第1の脆弱路201に沿い、また第2の脆弱路202に沿って切り離される。この場合、局所的に特別に導入された脆弱路から始まって、裂け目の表面が生み出される。サンプル材料における裂け目のコースは、脆弱路の方向によって多かれ少なかれ規定される。これにより、それぞれがくさび形のサンプル部を備え、そのくさび面252A,252Bが原子的に滑らかで切子面状の裂け目表面によって形成された、1個または2個のTEMサンプル250を作り出すことが可能になる。圧倒的多数の実験において、これらのサンプルは、くさび先端の領域に、透過型電子顕微鏡法による検査に適した少なくとも1個の電子透過領域を備えることになるであろう。
【0079】
表面の後側レーザースコアリングの大きな利点は、この方法が、材料が透過性であるか、部分的に透過性であるか、あるいはほぼ吸収性であるかを問わず、あらゆるサンプル材料の場合に適用できる点にある。透過性材料の加工は、この場合、いわゆる多光子吸収を必要とするが、これは短パルスレーザーによって、ときには超短パルスレーザーによっても、容易に促進することができる。
【0080】
図3の概略図は、使用されるレーザー放射線の波長に対して少なくとも部分的に透過性であるか、あるいは比較的吸収性が低いサンプル材料からのTEMサンプルの作成における方法の段階を説明している。そのような材料において、大半のレーザービームエネルギーがサンプル材料の内部、すなわち基材表面(複数)の間に集中されるようにレーザービームを設定することができ、これにより、基材材質の内部加工、あるいは試料内部の損傷という結果になる。この方法変形の場合、最初の試料の役割を果たす薄い切片は、約10nm未満の平均表面粗さRaを有する光学的に滑らかなビーム入射面を作り出すように、最初にその後側112を研磨される。相当に粗い表面は、時には結合されたレーザー光を必要以上に強くまき散らすことがあり、結果、レーザービームのエネルギーをサンプルの内部に集中させることが困難かつ不正確になる。(もし基材の後側がすでに十分滑らかなら、例えば両側を研磨した半導体ウェハーの場合は、研磨の段階はもちろん省略できる。)後続の方法段階は図2の手順と同様、サンプル材料の内部にまず図3Aに従って第1の脆弱路301を、次に図3Bに従って交差領域305で鋭い交差角で第1の脆弱路に割り込む第2の脆弱路を作り出すことによって実施することができる。上述した亀裂開始および/または亀裂伝播のための方法はすべて、この後で基材を切り離してくさび形のTEMサンプル350を作り出すために使用することができる。
【0081】
特に熱に弱いサンプル材料の場合、次のような方法変形を使用することができる。すなわち、照射軌道の走査中、レーザーの照射を、実質的に非損傷である区域が照射軌道の交差領域のすぐ近くに残るように、場所的および/または時間的に制御することができる。例えば、基材に作用する出力密度を、当該基材の材質についての材料固有のアブレーション閾値に届かないように減らすことができる。ここでアブレーション閾値とは、レーザービームが所定の波長(レーザービームの他の特性、例えばパルスの持続時間や数なども)になったときに基材の材質が除去される限界出力密度または限界フルーエンスと定義されている。同様の例を図4を用いて説明する。
【0082】
図4Aは、第1の脆弱路401と第2の脆弱路402の望ましいコースを示し、両者は交差領域405で約20°の鋭角で交差する。熱に敏感ではない材料の場合、対応する照射軌道の走査中、集束レーザービームは、全体的に見て、図2および3の例について説明したのとほぼ同じ出力密度を持ち得る。しかしこの場合、くさびの先端の近くに位置する目標区域は、損傷を与える可能性のあるレーザー放射線に2倍曝されており、その結果、検査されるべき材料はおそらく改質されてしまい、後続のTEM検査では、実際に興味の的である非損傷材料を見せることができなくなる可能性があるということに注目すべきである。交差領域の過剰加熱(これは幾何学的境界条件の変化によって起こりうるものであるが)を防止するため、これらの方法変形の場合、入射出力密度が照射軌道の仮想的な交差領域における材料の改質をもたらす閾値出力密度を下回るように、レーザービームの焦点領域に作用するパワーPの時間および/または場所に依存する制御を行うこととしている。
【0083】
図4は、いくつかの場所的な出力密度形状の線図を示す。この場合、横座標にプロットされているのは照射軌道に沿う場所Xであり、一方、標準化された出力密度(これに基材が曝されている)が縦座標にプロットされている。変形V1に従うと、照射軌道の仮想的な交差領域の近くにおける有効電力はゼロに減っており、結果、照射レンジは完全に非照射状態になっている。そして、仮想的な交差点からの間隔Dで照射が突然中断し、交差点を越えて間隔Dだけ走った後、再び照射が始まる。ここで、間隔Dはいわばほぼ非照射状態の、あるいはごく弱く照射された区域Bの、仮想的な交差点を中心とする半径に相当する。この出力形状は、例えばシャッター122の、時間に依存した、あるいは場所に依存した駆動によって、あるいはパルスレーザーの場合は、例えばレーザーを一時的に消すことによって達成できる。変形V2によれば、有効電力は最初は集束レーザービームが交差領域に近づくにつれて直線的に減っており、そして交差点からの間隔Dで完全に中断される。これは減衰器123とシャッター122とを組み合わせた駆動により、あるいは該シャッターの、出力が制御できるレーザーとの共同による駆動によって達成できる。
【0084】
レーザーが照射される区域と全く照射されない区域との間の突然の変遷を避ける必要があるときは、交差領域の近くで、レーザー出力の連続可変、位置同期出力を行ってみることも可能である。変形V3によれば、この場合、基材に作用する出力は、交差点405の近くの領域においてのみ減少するため、ある程度の照射もまた交差領域で起こるものの、電力は材料固有の損傷閾値を下回る。変形V4の場合、レーザーの有効電力が連続的に変化するため、後者は交差点に近づくにつれてゼロまで減り、交差点を行き過ぎると、また連続的に上昇する。これらの変形のために連続可変形減衰器を適宜駆動させることができる。
【0085】
一方で亀裂の伝播が照射軌道に沿い、損傷されるほどには照射されていない交差領域を通って損傷されたゾーンのそれぞれ向かい合う端まで進むようにし、他方で材料を救うため照射の出力密度を交差点のすぐ近くで減らすようにするためには、照射軌道の仮想的な、あるいは実際の交差点405と、実際に作り出される損傷路の向かい合う端との間の間隔Dは比較的小さくしてもよく、例えば、約50μmと約300μmの間にしてもよい。間隔Dと場所的に依存する出力形状との換算値は、いくつかのサンプルを用いて実験的に確立するのが最良であり、次に、サンプルの作成前に同種のサンプルについてプログラム化するか、あるいは特定の種類のサンプルについては、一定のデータレコードに記憶させるようにしてもよい。
【0086】
レーザー加工の終了後、亀裂の開始のため、例えば被加工サンプルの前側または後側をいわゆるダイシングテープ、すなわち、表面にしっかりくっつき、引っ張ることにより亀裂の開始を可能にするフィルムに接着してもよい。図5を参照してより詳細に説明している手順の好ましい方法の場合、2本の損傷路の交差領域505の近くに丸い開口515を有する伸縮性フィルム500が使用されており、結果、レーザーの軌道に囲まれた、三角形の、取り扱いに極めて注意を要する、鋭角を成す、くさび形の端部が大気に曝される。切り抜きの直径は、例えば1mm以下の範囲であればよい。図5Aに示す通り、等方的に拡張可能なフィルム500が基材(透明なものとして図示する)の前側、スコアリングされた後側の向かい側、上に、互いに向かい合うくさびの先端が接着層から自由な切り抜き515の領域に自由に突き出るように接着されている。続いて、拡張可能な接着フィルムが四方八方へ引き伸ばされ、結果、該フィルムにくっついている、損傷前処理を受けたサンプルの部分がほぼ半径方向への引っ張り応力の支配を受けることになる。この場合、亀裂が損傷路から始まり、サンプル材料中に伝播し、最後に、その広い方の端部でまだ接着フィルムにくっついている、くさび形サンプル切片の作成という結果になる。
【0087】
次に、くさび形のサンプル切片は、全体として接着フィルムから分離されることになる。図6で概略的に示した方法変形の場合、フィルムにぴったりくっついている切片は該フィルム上にとどまってもよい。一方、切り抜きの領域へ自由に突き出ているくさび形の先端領域は、集束レーザービーム625を用いて分離される。この変形の場合、他の例ではフィルムにくっついているサンプル片を分離するためにしばしば使わなければならない熱および/または化学薬品の使用なしで済ませることができる。従って、引き伸ばし段階のあと、2個のくさびはレーザー切断により、電子透過領域を損なうことなく切り離すことができる。
【0088】
ただし上記方法に代えて、亀裂開始のために他の方法、例えば刃の上での切り離しなどを適用することも可能である。決まった形で直線の脆弱路を備えた基材も、制限的な柔軟性を持つ支持物上に載せ、続いて力を加えることにより切り離すことができる。この支持物は、例えばゲル状物質で形成することができる。これを基材の滑らかな面にしっかりと吸着させ、そしてサンプルを注意深く、かつゆっくりと刃の上に置いてサンプルを切り離した後、またサンプルから残りかすなしに取り外すものである。この場合、亀裂を促進する力が側面からのみ導入され、交差領域に直接導入されないように、交差領域を柔軟材の開口上に置いてもよい。これにより、くさび先端の取り扱いに注意を要する区域が損傷を免れる。
【0089】
一般的に言って、基材に最初は1つの路に沿ってのみ損傷を与え、次に該基材をこの路に沿って切り離し、そのあと第2の損傷路を与えることも可能である。サンプル材料がもともとへき開面をもっている限り、基材を最初にもともとのへき開面に沿って分離し、そのあと適切な直線の損傷路を、既存の裂け目の縁に対して鋭角で導入することも可能である。また、最初にレーザービームを用いてスコアリングを行い、レーザーに起因する脆弱路に沿って切り離しを行い、そのあともともとのへき開面に沿って切り離しを行うことも可能である。
【0090】
本発明に従って作成されたくさび形の試料はくさびの先端領域が電子透過性になっており、輸送台に適切に載せられたのち、透過型電子顕微鏡によって検査できる。この可能性の1つについて、図7を参照してより詳細に説明する。
【0091】
一般的に言って、作成されたほぼくさび形の試料は、透過型電子顕微鏡のサンプルホルダーに直接はめ込むのに適していない。従って、作成されたくさび形の試料を、その外形寸法が透過型電子顕微鏡のサンプルホルダーの形状に適合しているTEMのサンプル輸送台にしっかり固定することは、一般的に言って好都合である。図7に示すTEMのサンプル輸送台700は、基本的には平らなリング702から成っている。このリングの外径は、透過型電子顕微鏡におけるTEMサンプルホルダーの内径に適合しており、またこのリングはその内部に、TEMの検査中、それを通って電子ビームが案内される透孔704を有している。リング702は、基本的には導電性材料、例えば銅のような金属から成る網目構造であってもよい。キャリヤーネットは、例えばマイクロ処理システムを用いて製作されてもよい。くさび形のTEMサンプルは今、検査の目的で、その厚い方の端で、接着により、あるいはその他の方法でリング702の上面にしっかり固定されており、結果、くさびの先端付近にある電子透過領域がリングのほぼ中央に配置され、電子ビーム710がそこを通過するようになっている。後者は、高分解能インターフェイス解析を可能にするよう、近表面構造の層間インターフェイス領域を、層の法線方向に対してほぼ垂直な形で走査照射する。
【0092】
くさび形のTEMサンプルは作成後、手でTEMサンプルキャリヤーに取り付けてもよい。しかし、サンプル準備装置の一実施態様では、この取り付けを自動化することができる。この目的を達成するため、本サンプル準備装置にはくさび形のTEMサンプルを自動的にTEMサンプルキャリヤー上に運ぶマイクロロボットシステムが配備されている。
【符号の説明】
【0093】
102 昇降テーブル(基材ホルダー)
110 基材
112 後側
114 前側
120 レーザー放射線源
122 シャッター
124 ビーム案内システム
125 レーザービーム
201,301 第1の脆弱路
202,302 第2の脆弱路
205,305,405 交差領域
250 サンプル
410 刻み目
500 フィルム
505 交差点
515 切り抜き


【特許請求の範囲】
【請求項1】
くさび面に囲まれ、くさび先端領域に少なくとも1個の電子透過領域を有するくさび形のサンプル部を備えたサンプル(250)がサンプル材料の基材(110)から準備される、透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成方法であって、
前記サンプル材料中に第1の脆弱路(201,301)を作り出すために前記サンプル材料をレーザービーム(125)により第1の照射軌道に沿って照射する段階と、
前記基材を前記第1の脆弱路に沿い、かつ第2の脆弱路に沿って切り離す段階とを含み、
前記照射が,前記第1の脆弱路が前記サンプル材料の中を走る前記第2の脆弱路(202,302)に交差領域(205,305,405)において鋭角で交差するよう制御されていることを特徴とする、透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成方法。
【請求項2】
前上記第2の脆弱路(202,302)を作り出すために前記サンプル材料がレーザービームにより第2の照射射軌道に沿って照射され、その結果、レーザービームによる前記サンプル材料の照射により、互いに対して鋭角で走る2本の脆弱路が作り出されることを特徴とする、請求項1に記載の透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成方法。
【請求項3】
前記第1および第2の脆弱路が、前記交差領域(205,305,405)において両者の間に存在する角度が25°以下であり、該角度が好ましくは20°未満、特に15°以下の範囲になるよう互いに関して方向付けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載の透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成方法。
【請求項4】
透過型電子顕微鏡法による検査に供される検査区域が前記基材(110)の前側(114)付近に位置し、前記照射がレーザービームにより前記基材の後側(112)、すなわち前記前側と反対の側から行われ、前記照射が、好ましくは前記前側付近に位置する前記検査区域が前記脆弱路の外側に位置するように制御されることを特徴とする、先行請求項の1つに記載の透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成方法。
【請求項5】
前記照射前に、前記基材(110)が、照射に供された前記区域において、約30μmから約550μmの間の基材厚さを有することを特徴とする、先行請求項の1つに記載の透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成方法。
【請求項6】
前記照射前に、比較的滑らかな放射線の入射面を作り出すために前記基材がその後側(112)を研磨され、該研磨加工により10nm未満の粗さRaの平均深さを持った放射線の入射面を作り出すことが好まれる、先行請求項の1つに記載の透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成方法。
【請求項7】
前記照射が、それに対して前記サンプル材料が少なくとも部分的に透過性であるレーザー放射線によって実施され、前記照射が、好ましくは前記基材の内部に前記基材の表面からある間隔を置いて位置する内部脆弱路(301,302)を作り出すように制御されることを特徴とする、先行請求項の1つに記載の透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成方法。
【請求項8】
前記照射が、それに対してサンプル材料が強度の吸収性を持つレーザー放射線によって実施されることを特徴とする、先行請求項1から6に記載の透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成方法。
【請求項9】
前記照射が脆弱路(201,202)を前記基材の前記照射側の表面付近に作り出すように制御されることを特徴とする、先行請求項の1つに記載の透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成方法。
【請求項10】
前記レーザー放射線が前記脆弱路の領域に前記基材の厚さの少なくとも1/3、好ましくは少なくとも2/3に相当する深さの損傷を作り出すことを特徴とする、先行請求項の1つに記載の透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成方法。
【請求項11】
前記サンプル材料が前記検査区域内に1つもしくは複数の層ならびに1つもしくは複数の共有領域を有する層構造を備えており、前記脆弱路が、好ましくは前記共有領域の少なくとも1つに対してほぼ垂直なくさび表面を作り出すように方向づけられている ことを特徴とする、先行請求項の1つに記載の透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成方法。
【請求項12】
前記レーザー放射線を作り出すために調節可能なレーザー源が使用されていることを特徴とする、先行請求項の1つに記載の透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成方法。
【請求項13】
前記照射が超短パルスレーザーにより、ピコ秒またはフェムト秒の範囲内の特有のパルス持続時間で実施されることを特徴とする、先行請求項の1つに記載の透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成方法。
【請求項14】
前記レーザー放射線が、前記放射線入射表面の表面法線に対して斜めに基材に照射されることを特徴とする、先行請求項の1つに記載の透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成方法。
【請求項15】
照射軌道の走査中に、前記基材に作用する前記出力密度を変えるため、制御が局所的に行われることを特徴とする、先行請求項の1つに記載の透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成方法。
【請求項16】
前記照射が、実質的に非損傷である区域が前記交差領域(405)のすぐ近くに残るように制御され、該実質的に非損傷である区域の半径(D)が好ましくは300μm未満であり、特に、50μmから250μmの間にあることを特徴とする、請求項15に記載の透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成方法。
【請求項17】
照射軌道の走査中、前記実質的に非損傷である区域を作り出すために、前記交差領域が通過される時は、前記レーザービームが制御可能なビーム阻止装置により少しの間阻止されるか、あるいは照射軌道の走査中、前記実質的に非損傷である区域を作り出すために、前記交差領域が通過される時は、前記レーザーが少しの間止められることを特徴とする、請求項16に記載の透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成方法。
【請求項18】
前記実質的に非損傷である区域を作り出すために、前記レーザーの有効出力が局所的に制御され、前記交差領域が通過される時は前記基材に作用する出力密度が減らされることを特徴とする、請求項16および17のどちらにも記載の透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成方法。
【請求項19】
照射軌道の走査中、前記基材を照射軌道の始めおよび/または終わりに照射軌道の交差領域から完全に遠ざけるために前記基材に作用する出力密度が局所的に制御され、結果として刻み目(410)が生じることを特徴とする、請求項15から18の1つに記載の透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成方法。
【請求項20】
前記第1の脆弱路の作成と前記第2の脆弱路の作成がプログラム可能なレーザーマイクロ処理装置を用いて自動的に実施されることを特徴とする、先行請求項の1つに記載の透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成方法。
【請求項21】
前記基材を切り離すため、伸縮性フィルム(500)が、初めに、特に脆弱路の導入前に前記基材の一側上、特に前記基材の前側上に接着され、次に該フィルムを引っ張ることにより、亀裂の開始および/または亀裂の伝播に十分な力が該基材上に発揮されることを特徴とする、先行請求項の1つに記載の透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成方法。
【請求項22】
前記フィルムは接着性の層を欠いた領域、特に切り欠き(515)を有し、前記基材上に、接着性の層を欠いた領域が前記脆弱路の交差点(505)の領域に位置するようにして接着されることを特徴とする、請求項21に記載の透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成方法。
【請求項23】
サンプル材料から作られた基材(110)を保持する基材ホルダー(102)、レーザー放射線源(120)とレーザービームを前記基材のビーム入射面上に案内するビーム案内システム(124)とを有するレーザーシステムおよび、前記基材が、前記サンプル材料中に第1の脆弱路を作り出すため前記レーザービームによって第1の投射軌道に沿って照射され得るように、前記基材と前記レーザービームとの間に相対的な動きを生み出す移動システムとを備えた透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成装置であって、
前記照射が,前記第1の脆弱路(201,301)が前記サンプル材料の中を走る第2の脆弱路(202,302)に交差領域(205,305,405)において鋭角で交差するように制御されるよう構成された制御装置によって特徴付けられた透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成装置。
【請求項24】
前記制御装置が,前記サンプル材料が前記第2の脆弱路を作成するべく前記レーザービームにより第2の照射軌道に沿って照射されることができ、該第2の脆弱路は前記第1の脆弱路と交差領域において鋭角で交差し、好ましくは前記第1の脆弱路の作成と前記第2の脆弱路の作成を前記制御装置からの制御信号に基づき自動的に実施できるように構成されていることを特徴とする、請求項23に記載の透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成装置。
【請求項25】
前記制御装置が、少なくとも第1の照射軌道が第2の脆弱路に鋭い交差角で交差する目標区域の位置表す目標区域パラメータと、
第1の脆弱路の第2の脆弱路との交差角を直接あるいは間接に表す交差角パラメータと
から成る複数の入力パラメータを入力することによりプログラム化され得ることを特徴とする、請求項23または24に記載の透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成装置。
【請求項26】
前記制御装置が、照射軌道の走査中に前記基材に作用する出力密度を変えるために局地的に制御するようプログラム化され得るか、あるいはプログラム化されていることを特徴とする、請求項23、24または25に記載の透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成装置。
【請求項27】
少なくとも1個の投射軌道の局地的形状を表す形状パラメータと、
基材上あるいは基材内の焦点領域の位置を決める焦点調節パラメータと、
前記基材上に焦点を合わせたレーザービームのビーム特性を決める少なくとも1個のレーザーパラメータと、
前記基材に作用するレーザー出力密度の位置同期可変制御のための出力可変パラメータを表す出力可変パラメータのうち、少なくとも1つを更に前記制御装置でプログラムすることができることを特徴とする、請求項25または26に記載の透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成装置。
【請求項28】
前記制御装置が、前記照射が実質的に非損傷である区域が前記交差領域(405)のすぐ近くに残るように制御されるように構成され、前記実質的に非損傷である区域の半径(D)が好ましくは300μm未満であることを特徴とする、請求項23から27の1つに記載の透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成装置。
【請求項29】
前記レーザーシステムが制御可能なビーム阻止装置(122)を有し、前記制御装置が、照射軌道の走査中、前記実質的に非損傷である区域を作り出すために前記交差領域が通過される時は前記レーザービームが制御可能なビーム阻止装置により少しの間阻止されるように構成されており、また前記レーザー放射線源(120)、特にパルスレーザーが少しの間止めることができ、前記制御装置が、照射軌道の走査中、前記実質的に非損傷である区域を作り出すために前記交差領域が通過される時は前記レーザー放射線源が少しの間止められるように構成されていることを特徴とする、請求項28に記載の透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成装置。
【請求項30】
前記制御装置が、前記実質的に非損傷である区域を作り出すために前記レーザー放射線源の有効出力が局所的に制御され、前記交差領域が通過される時は前記基材に作用する出力密度が減らされるように構成されていることを特徴とする、請求項28または29に記載の透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成装置。
【請求項31】
前記基材ホルダーが、前記レーザービームの平均投射方向に専ら移動できる昇降テーブル(102)を有することを特徴とする、請求項23から30の1つに記載の透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成装置。
【請求項32】
前記基材ホルダーに、基材保持面の、前記レーザービームの投射方向に関する表面法線の一時的あるいは恒久的な傾斜を生ずる傾動機構が設けられていることを特徴とする、請求項23から31の1つに記載の透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成装置。
【請求項33】
前記基材ホルダーが、少なくとも前記基材保持面の領域においてレーザーの放射線に対して透過性である物質から成っており、および/または前記基材ホルダーにおける作業区域の中央に開口が設けられており、その結果、載置された基材の目標区域が前記基材ホルダーと物理的な接触をしないように基材を載せることが可能であることを特徴とする、請求項23から32の1つに記載の透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成装置。
【請求項34】
前記レーザー放射線源(120)が超短パルスレーザーを有することを特徴とする、請求項23から33の1つに記載の透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成装置。
【請求項35】
前記レーザー放射線源(120)がファイバーレーザーを有することを特徴とする、請求項23から34の1つに記載の透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成装置。
【請求項36】
前記レーザー放射線源が、特に光学的パラメトリック増幅器付き波長可変レーザーを有することを特徴とする、請求項23から35の1つに記載の透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成装置。
【請求項37】
請求項1から22に記載の方法を実施するためにレーザーマイクロ処理システムを使用することを特徴とする透過型電子顕微鏡法用サンプルの作成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−91562(P2010−91562A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−231486(P2009−231486)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(509277291)3D−マイクロマック アーゲー (2)
【Fターム(参考)】