説明

透過性多孔質複合材料

本発明は、鉄粒子体並びに該鉄体の細孔及び空洞内に分布し、固定された0.01〜10重量%の少なくとも1つの機能成分を含むことを特徴とする、汚染された流体の処理のための多孔質で透過性の複合材料に関する。本発明はまた、水処理用の透過性多孔質複合材料を製造する方法に関する。本発明はまた、流体中の汚染物質の含量を減少させるための任意の前記請求項による透過性多孔質複合材料の使用に関し、前記流体は、透過性複合材料中を通過させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄粒子及び少なくとも1つの機能成分を含む複合材料に関する。機能成分の粒子は、透過性多孔質鉄体(iron body)中に十分に分布している。本発明はまた、該複合材料を製造する方法及び流体を浄化するための該複合材料の使用に関する。複合材料は、粉末冶金法を用いることによって粉末状、ペレット状及び様々な他の形態に製造することができる。
【背景技術】
【0002】
種々の水源中の有毒な無機/有機物質は、水が飲料水システムに入る前又は受益者に引き渡される前に規制レベル未満に減少させなければならない。
【0003】
硝酸塩(NO)は、営農が盛んに行われている地域の地下水に認められる最も一般的な無機汚染物質である。硝酸塩は、植物及び灌木に栄養素を与えるために農業及び園芸に用いられる肥料に通常由来する。
【0004】
そのような営みにより発生し得る他の汚染物質は、リン酸塩(PO3−)及びアトラジンなどの微量の農薬である。肥料は土壌を通過し、地下水系を汚染するので、肥料の蓄積は問題である。浅井戸及び深井戸の両方が影響を受け得る。
【0005】
ヒ素(As)、その酸化状態+6(CrVI)が最も有害とみなされているクロム(Cr)、鉛(Pb)、水銀(Hg)、カドミウム(Cd)、セレン(Se)等のような有毒金属、塩素化炭化水素のような他の物質及び総有機炭素(TOC)と時として測定される他の有機物質は、天然由来物又は産業若しくは農業活動から発生する。
【0006】
飲料水中の汚染物質の許容レベルに到達するために、いくつかの方法が現在用いられている。
【0007】
逆浸透は、浸透の過程に基づいている。これは、膜の片側から他の側への水の選択的移動を伴う。逆浸透の主な欠点は、流入水の50〜90%ほどであり得る、発生する汚染排水が大量であることである。時間が経過すると、鉄、塩及び細菌が膜表面上に蓄積するので、膜の細孔の詰りが起こる。これは、逆浸透システムの性能に影響を及ぼすだけでなく、水の細菌汚染も引き起こし得る。この技術はまた、非常にエネルギーを消費する。
【0008】
蒸留法も用いられる。硝酸塩及び他のミネラルは、沸騰タンク中に濃縮された状態で残存する。この方法の欠点は、消費されるエネルギーの量(水を沸騰させるために)、限られた能力及び不断の保守などである。
【0009】
イオン交換法は、水をビーズ様球形樹脂材料(イオン交換樹脂)に通すものである。水中のイオンは、ビーズに固定された他のイオンと交換される。2つの最も一般的なイオン交換法は、軟化及び脱イオン化である。イオン交換法は、沈殿させる必要がある有害な塩水廃棄物も発生する。脱イオン化(DI)システムは、イオンを効果的に除去するが、殆どの有機物や微生物を効果的に除去しない。微生物は樹脂に付着して、速やかな細菌の増殖及びその後の発熱物質の発生のための培地となり得る。この技術は、初期資本投資は低いが、長期運転費用は高い。
【0010】
米国特許第2007/0241063A1号は、揮発性有機化合物で汚染された水を、鉄、炭素及び酸素を含む鉄粉末顆粒で処理する方法を開示している。US2007/0241063A1における鉄粉末顆粒への炭素の添加は、微粉化工程中に行われ、混合工程にかけられない。これは、粉末冶金学の分野で「プレアロイ」工程として一般に公知である。
【0011】
米国特許第5534154号は、金属の粒子と物理的に混合された吸着性材料の粒子を含む処理材料の透過性物体に汚染物質を溶液として含む水を通すことにより汚染水を処理する方法を記載している。該特許で言及されている鉄金属粒子は、一般に固形顆粒状の鉄充填材である。該方法は、負のEh電圧を必要とし、ひいては酸素除去を必要とする。
【0012】
US6827757は、0.05〜10μmの非常に小さい平均粒径を有する磁鉄鉱−鉄系複合材料を記載している。
【0013】
EP1273371A2は、鉄粉末粒子及び無機化合物を含む媒体中のハロゲン化炭化水素を脱ハロゲン化することにより、選択される媒体を改善するように構成された鉄粉末を記載している。前記無機化合物は、Ca、Ti、V及びCrからなる群から好ましくは選択され、非常に低い電気抵抗率を有するべきである。前記無機化合物は、各粒子の表面上の少なくとも一部に存在すべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、流体、特に水などの液体の汚染物質浄化に適する鉄体を含む透過性多孔質複合材料を提供することである。該複合材料は、飲料水処理などの流体処理、都市及び産業廃水処理などの廃水処理に、また土壌改善にも適用することができる。さらに、透過性多孔質複合材料は、鉄体の細孔内に十分に分布し、固定されたそれらの遊離形(free form)の機能成分を有する。「に固定された」という用語は、浄化過程において流体により鉄体から除去されないような形で鉄体に機能成分粒子を付着させる作用を意味する。本発明の他の目的は、鉄系複合材料を製造する方法を提供することである。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、有害な廃棄物の発生を伴わずに水などの液体を汚染物から浄化する方法を提供することである。
【0016】
本発明のさらに他の好ましい目的は、水、特に飲料水として用いられる水中の硝酸塩を減少させるための製品及び方法を提供することである。
【0017】
本発明は、鉄粒子体(body of iron particles)並びに該鉄体の細孔及び空洞内に分布し、固定された0.01〜10重量%の少なくとも1つの機能成分を含むことを特徴とする、汚染された流体の処理のための多孔質で透過性の複合材料に関する。鉄粒子体は、鉄粒子が最初の状態にある又は鉄粒子が別の形状に成形されたときの粒子体(鉄体)と解釈すべきである。
【0018】
透過性多孔質複合材料は、好ましくは、炭素含有化合物、カルシウム含有化合物、ナトリウム含有化合物、鉄含有化合物、チタン含有化合物及びアルミニウム含有化合物から選択される0.01〜10重量%の少なくとも1つの機能成分を含み、好ましくは、前記炭素含有化合物は、黒鉛、活性炭(AC)及びコークスから選択され、前記鉄含有化合物は、硫酸第二鉄又は第一鉄、酸化第二鉄及び水酸化第二鉄から選択され、前記チタン含有化合物は、チタニアであり、前記アルミニウム含有化合物は、アルミナ、活性アルミナ及びゼオライトなどのケイ酸アルミニウムから選択され、前記ナトリウム含有化合物は、ソーダ(soda)である、前記カルシウム含有化合物は、石灰であり、好ましくは、前記機能成分は、黒鉛、活性炭、コークス、活性アルミナ及びゼオライトの群から、最も好ましくは黒鉛、活性炭、コークスの群からのものである。所望により、処理する汚染物質によって、述べた群以外のさらなる機能成分を選択することができる。すべての機能成分は、透過性多孔質鉄体中に固定させ、十分に分布させるべきである。
【0019】
本発明はまた、例えば、水処理用の透過性多孔質複合材料を製造する方法に関する。前記複合材料は、一般的な粉末冶金技術を用いて粉末、チップ、フレーク、ブロック又はペレットなどの様々な形態に製造することができる。
【0020】
汚染流体の処理のための多孔質で透過性の複合材料を製造する方法は、鉄体に相当する鉄粒子を0.01〜10重量%の量で存在する少なくとも1つの機能成分と、該機能成分が機械的力により該鉄体中に分布し、固定されるまで、機械的に混合するステップ;所望により、該少なくとも1つの機能成分の存在下若しくは不存在下で、不活性又は還元雰囲気中300℃から1200℃の間の温度で鉄体を熱処理するステップ;所望により、該少なくとも1つの機能成分の存在下若しくは不存在下で、鉄体を7.0g/cm以下の圧粉体密度を有する圧縮体に場合によって圧縮するステップ;及び/又は、所望により、該少なくとも1つの機能成分の存在下若しくは不存在下で、前記鉄体をサイズ分け(sizing)するステップを含み、該各ステップは、任意順序で実施することができる。
【0021】
本発明はまた、流体中の汚染物質の含量を減少させるための任意の前記請求項による透過性多孔質複合材料の使用に関し、該流体は、透過性複合材料中を通過させる。前記流体は、水含有流体、好ましくは地下水、河川水、産業廃水、生活排水及び/又は表流水であってよい。前記流体は、本発明による浄化処理の後に飲料水として用いることができる。前記汚染物質は、硝酸塩、亜硝酸塩、As、Pb、Hg、Cd、Se、Cr及び六価Crなどの重金属、他の有毒無機物質並びに有毒有機化合物又はそれらの組合せからなる群;好ましくは硝酸塩及び/又は亜硝酸塩から選択することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明による透過性多孔質複合材料は、多孔質の鉄、並びにコークス、黒鉛、活性炭、酸化第二鉄、水酸化第二鉄、チタニア、アルミナ、活性アルミナ、ゼオライト、石灰、ソーダ、硫酸第二鉄又は硫酸第一鉄から、好ましくはコークス、黒鉛、活性炭、活性アルミナ及びゼオライトの群から選択される0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜8重量%、好ましくは0.1〜5重量%の少なくとも1つの機能成分の混合物を含む。透過性多孔質鉄の細孔及び空洞のサイズによって、機能成分は、本発明のいくつかの実施形態において、20μm未満、好ましくは10μm未満の粒径を有してよく、他の実施形態において、機能成分の粒径は、10μm未満、好ましくは5μm未満であってよい。粒径は、約0.02μm超である。
【0023】
本明細書で開示した「透過性」という表現の使用は、特に液体又は気体が透過又は浸透するように複合材料又は鉄粉末若しくは鉄体が構成されていることと解釈すべきである。本明細書で開示した「多孔質」という表現の使用は、細孔又は間隙への気体又は液体の通過を可能にするように複合材料又は鉄粉末若しくは鉄体が構成されていることと解釈すべきである。したがって、本発明による透過性で、多孔質の複合材料は、複合材料の細孔及び空洞に位置する少なくとも1つの機能成分を含む。複合材料の鉄部分、すなわち、鉄体は、それら自体が多孔質である鉄粉末又は鉄粒子で構成され得る。さもなければ、鉄体、すなわち、多孔質で透過性の鉄構造体は、鉄粉末又は鉄粒子の圧縮及び/又は加熱及び所望によるサイズ分けを用いて調製する。
【0024】
鉄粉末又は鉄粒子を機能成分と混合して、本発明による複合材料を結果として得る。また、鉄粉末は、圧縮し、且つ/又は熱処理し、場合によって、続いて所望のサイズにサイズ分けする前に、機能成分(単数又は複数)と混合することができる。或いは、鉄粉末は、機能成分(単数又は複数)と混合する前に、圧縮し、且つ/又は熱処理し、場合によって、続いて所望のサイズにサイズ分けすることができる。
【0025】
すべての機能成分は、透過性多孔質鉄体又は鉄構造体中に固定され、十分に分布させるべきである。機能成分は、遊離形であり、すなわち、依然として最初の状態にあり、したがって、鉄体に合金化又は被覆された状態などのようには全く変化していない。機能成分の吸着能と多孔質の鉄の酸化還元能による複合技術効果を得ることは別として、多孔質の鉄を鉄の細孔内に固定された機能成分と組み合わせるときに相乗効果が得られる。機能成分という用語は、主な機能が、鉄粒子との相乗効果をもたらすことにより流体の浄化を促進することである添加物と解釈すべきである。この相乗効果は、複数の汚染物質、例えば、水中の硝酸塩とヒ素の組合せの除去に関する新規透過性多孔質複合材料の著しく高い効率によって明らかである。本発明による流体中の汚染物質を減少させる方法に関する付加的利点は、従来のイオン交換などの方法と対照的に、該方法によって有害な廃棄物が発生しないことである。
【0026】
一実施形態において、10mmから10μmの間、好ましくは5mmから20μmの間、最も好ましくは2mmから45μmの間の粒径範囲を有する多孔質鉄粉末粒子を用いることが好ましい。より微細な鉄粉末も用いることができ、これらの場合に、圧縮及びサイズ分け;熱処理及びサイズ分け;又は圧縮、熱処理及びサイズ分けなどの公知の方法により、より粗い多孔質粒子にすることができる。これらの場合に用いられる鉄粉末は、2mmから1μmの間、好ましくは1mmから1μmの間、好ましくは0.5mmから1μmの間の粒径範囲を有していてよい。過度に小さい平均粒子径を有することは、鉄粒子の酸化速度が過度に高いレベルに増加し、工程効率の損失を意味する。用途、すなわち、処理する流体の種類及び汚染物質の種類によって、最適な効率を得るために、異なる鉄粉末及び異なる機能成分を選択することができよう。飲料水中の硝酸塩含量を減少させるために、化学的に還元された鉄粉末が本発明の1つの好ましい実施形態であることが示された。
【0027】
好ましくは、鉄粉末は、90%を超える、好ましくは95%を超えるFeの含量を有する。用いる鉄粉末粒子は、溶融鉄の微粉化(atomization)、すなわち、溶融鉄のガス微粉化及び水微粉化、酸化鉄のCO還元又はH還元などの酸化鉄の化学的還元並びにその後、機能成分と混合し、場合によってさらに圧縮、熱処理、サイズ分け又はそれらの組合せなどの他の工程ステップに直接由来し得る。
【0028】
用いる鉄粒子又は鉄粉末は、10mmから10μmの間、好ましくは5mmから20μmの間、最も好ましくは2mmから45μmの間の粒径範囲を有する鉄粒子であってよいが、これらの粒径に限定されると解釈すべきでない。鉄粒子が圧縮及び/又は加熱を受ける場合、例えば、2mmから1μmの間、好ましくは1mmから1μmの間、好ましくは0.5mmから1μmの間のより小さい粒径を用いることができよう。さらに、他の実施形態において、鉄粒子は、好ましくは多孔質鉄粒子である。すなわち、粒子は、それら自体多孔質である。
【0029】
機能成分は、鉄体、すなわち、鉄粒子又は鉄粒子構造体に0.01重量%〜10重量%、好ましくは0.05〜8重量%、好ましくは0.1〜5重量%の少なくとも1つの機能成分の量で加える。機能成分の粒径は、20μm未満、好ましくは10μm未満、また場合によって好ましくは5μm未満、例えば、好ましくは0.01〜20μm、好ましくは0.01〜10μm、好ましくは0.02〜10μm、好ましくは0.02〜5μmであってよい。
【0030】
鉄粉末又は鉄粒子と少なくとも1つの機能成分との混合は、小機能粒子が透過性鉄粒子構造体の内部細孔に強制的に侵入し、構造体に固定された状態になるような形での機械的混合により行う。
【0031】
開示した材料の圧縮は、約7.0g/cm又はそれ未満の圧縮密度を達成してブロック、顆粒又はペレットなどの所望の形状を形成するために1000MPa未満、好ましくは600MPa未満、例えば、10〜1000MPa又は20〜600MPaの圧力で行う。好ましくは、圧縮密度は、用いる鉄粉末の種類によって2.5〜7.0g/cmの間、好ましくは4〜6g/cmの間である。圧縮過程は、機能成分が存在する場合、遊離のより小さい機能成分粒子に鉄体の内部に固定されることを余儀なくさせる。不規則形状及び多孔質構造を有する鉄粉末は、透過性多孔質複合材料に高い圧粉体強度をもたらし、それにより、より高い透過性を高めるより低い密度を可能にし得る。
【0032】
本発明による多孔質で透過性の複合材料を実現するために熱処理を必要とする実施形態は、還元又は不活性雰囲気中で用いられる鉄粉末及び機能成分の種類によって、1200℃未満、1000℃未満又は800℃未満の温度を必要とするであろう。熱処理は、300℃超、好ましくは400℃超である。対象の温度間隔は、特に300〜1200℃、400〜1200℃、300〜1000℃、400〜1000℃、300〜800℃、400〜800℃、300〜700℃、400〜700℃、300〜600℃、400〜600℃、300〜500℃及び400〜500℃である。本発明による熱処理は、鉄粒子間の結合、いわゆる熱結合を生じさせる。機能成分が存在する場合、熱処理温度はまた、機能成分がその最初の状態に維持されるように、例えば、鉄構造体中に拡散しないように選択すべきである。また、熱処理過程は、遊離のより小さい機能成分粒子に透過性多孔質鉄体の内部に固定されることを余儀なくさせる。
【0033】
少なくとも1つの機能成分の添加の前の開示された鉄材料の粒子へのサイズ分けにより、好ましくは、10mmから10μmの間、好ましくは5mmから20μmの間、最も好ましくは2mmから45μmの間の粒径範囲が得られる。
【0034】
混合ステップは、Zブレード混合機、コーン型混合機、リボン混合機又は高速混合機などの通常の混合機で0.5分から8時間の間、好ましくは1分から5時間又は30分から3時間の期間実施することができる。圧縮は、通常の一軸プレス機などの適切な圧縮装置で1000MPa未満の圧力で、又は高速圧縮機で実施することができる。熱処理は、回分式オーブン又はメッシュベルト式連続炉で300〜1200℃の温度で、5分から24時間の間、例えば、30分から18時間、1〜12時間、2〜8時間の期間にわたり実施することができる。サイズ分け又は緩やかな粉砕は、10mmから10μmの間、好ましくは5mmから20μmの間、最も好ましくは2mmから45μmの間の粒径をもたらす適切な装置で実施することができる。
【0035】
(1)本発明の一実施形態において、10mmから10μmの間の粒径範囲を有する化学的に還元された多孔質鉄粒子を少なくとも1つの機能成分と機械的に混合する。機能成分の粒径は、10μm未満、好ましくは5μm未満であってよい。機械的混合は、小粒子がスポンジ様還元鉄粉末などの多孔質鉄粒子の内部細孔に押し込められ、構造に固定された状態になるような方法で実施する。
【0036】
(2)本発明の他の実施形態において、2mmから1μmの間、好ましくは1mmから1μmの間、好ましくは0.5mmから1μmまでの粒径範囲を有する鉄粉末粒子を、還元又は不活性雰囲気中で粒径、鉄粉末及び機能成分の種類によって、300〜1200℃での熱処理にかける。熱処理の後、得られた粉末ケーキを所望のサイズを有する多孔質鉄粉末にサイズ分けする。熱処理し、サイズ分けした粉末を次に0.01〜10重量%の少なくとも1つの機能成分と機械的に混合する。機能成分の粒径は、10μm未満、好ましくは5μm未満であってよい。機械的混合は、小機能粒子が鉄粒子の内部細孔に押し込められ、構造に固定された状態になるような方法で実施する。
【0037】
(3)さらに他の実施形態において、10μmから10mmの間の粒径範囲を有する鉄粒子を0.01〜10重量%の少なくとも1つの機能成分と混合する。機能成分の粒径は、20μm未満、好ましくは10μm未満である。前記混合物を、用いる鉄粉末の種類によって2.5〜7.0g/cmの間、好ましくは4〜6g/cmの圧縮密度を達成するように1000MPa未満、好ましくは600MPa未満の圧力での圧縮をかけて、ブロック、顆粒又はペレットなどの所望の形状にする。圧縮複合材料は、或いは所望のサイズにサイズ分けしてもよい。圧縮過程は、遊離のより小さい機能粒子に多孔質鉄体の内部に固定されることを余儀なくさせる。不規則形状及び多孔質構造を有する鉄粉末は、透過性多孔質複合材料に高い圧粉体強度をもたらし、それにより、より低い密度がより高い透過性を促進することを可能にし得る。
【0038】
(4)さらに他の実施形態において、10mmから10μmの間、好ましくは5mmから20μmの間、最も好ましくは2mmから45μmの間の粒径範囲を有する鉄粒子を0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%の少なくとも1つの機能成分と混合する。機能成分の粒径は、20μm未満、好ましくは10μm未満である。前記混合物を還元又は不活性雰囲気中で300〜1200℃での熱処理にかける。熱処理の後、得られた粉末ケーキを所望のサイズにサイズ分けする。熱処理過程は、遊離のより小さい粒子に多孔質鉄粉末の内部に固定されることを余儀なくさせる。
【0039】
(5)さらに他の実施形態において、10mmから10μmの間の粒径範囲を有する鉄粒子を0.01〜10重量%の少なくとも1つの機能成分と混合する。機能成分の粒径は、20μm未満、好ましくは10μm未満である。前記混合物を7.0g/cm未満の圧縮密度を達成するように1000MPa未満の圧力で粉末圧縮をかけて、ブロック、顆粒又はペレットなどの所望の形状を形成する。圧縮過程は、遊離のより小さい粒子に鉄体の内部に固定されることを余儀なくさせる。前記圧粉体を次に還元又は不活性雰囲気中で用いる粒径、鉄粉末の種類及び機能成分によって300〜1200℃で熱処理にかける。熱処理温度はまた、機能成分がその最初の状態に維持されるように、例えば、鉄構造体中に拡散しないように選択すべきである。圧縮され、熱処理された複合材料は、或いは所望のサイズにサイズ分けしてもよい。
【0040】
(6)代替的実施形態において、2mmから1μmの間、好ましくは1mmから1μmの間、好ましくは0.5mmから1μmまでの粒径範囲を有する鉄粒子を用いる鉄粉末の種類によって2.5〜7.0g/cmの間、又は4〜6g/cmの間の圧縮密度を達成するように1000MPa未満の圧力での圧縮をかけて、ブロック、顆粒又はペレットなどの所望の形状を形成する。圧縮体を次に10mmから10μmの間の粒径範囲を有する粒子にサイズ分けする。サイズ分けした材料を0.01重量%〜10重量%の少なくとも1つの機能成分と機械的に混合する。機能成分の粒径は、10μm未満、好ましくは5μm未満であってよい。機械的混合は、小機能粒子が多孔質鉄粒子の内部細孔に押し込められ、構造に固定された状態になるような方法で実施する。
【0041】
(7)代替的実施形態において、2mmから1μmの間、好ましくは1mmから1μmの間、好ましくは0.5mmから1μmまでの粒径範囲を有する鉄粒子を用いる鉄粉末の種類によって2.5〜7.0g/cmの間、又は4〜6g/cmの間の圧縮密度を達成するように1000MPa未満の圧力での圧縮をかけて、ブロック、顆粒又はペレットなどの所望の形状を形成する。圧縮体を還元又は不活性雰囲気中で用いる粒径、鉄粉末の種類及び機能成分によって300〜1200℃で熱処理にかける。熱処理された材料を次に10mmから10μmの間、好ましくは5mmから20μmの間、最も好ましくは2mmから45μmの間の粒径範囲を有する粒子にサイズ分けする。サイズ分けした材料を0.01重量%〜10重量%の少なくとも1つの機能成分と機械的に混合する。機能成分の粒径は、10μm未満、好ましくは5μm未満であってよい。機械的混合は、小機能粒子が多孔質鉄粒子の内部細孔に押し込められ、構造に固定された状態になるような方法で実施する。
【0042】
さらに他の実施形態において、多孔質で透過性の複合材料を製造する方法は、粒径が45μmから850μmの間の粒径範囲を有し、少なくとも90重量%の鉄粉末のFe含量を有するH2還元鉄粉末(多孔質粒子)、これを黒鉛及び/又は活性炭から選択される機能成分と機械的に混合することを必要とし、機能成分は多孔質鉄粒子の細孔中に固定されている。複合材料は、粒径が45μmから850μmの間の粒径範囲を有し、少なくとも90重量%の鉄粉末のFe含量を有する多孔質粒子のH2還元鉄粉末体を含み、機能成分は、黒鉛及び/又は活性炭から選択される。
【0043】
本発明の他の実施形態において、上述のような透過性多孔質複合材料を得るステップと、汚染された流体を透過性複合材料に通過させ、それにより汚染物質の含量を減少させるステップとを含む、流体中の汚染物質の含量を減少させる方法を開示する。
【0044】
透過性多孔質複合材料は、処理する流体の供給システムに接続された容器の内側に設置することがあり得る。そのような容器は、流体中の有害物質の含量を減少させるための他の公知の物質を含む追加の容器に直列又は並列に設置し、接続することがあり得る。本発明による複合材料は、BET法(Brunauer、Emmett及びTeller、1938年)により測定したとき、0.2m/g超、好ましくは0.5m/g以超、最も好ましくは1m/g超の比表面積を有することが好ましい。
【0045】
本発明による透過性多孔質複合材料は、実施形態に無関係に11〜68%、好ましくは23〜50%の多孔率として表される透過性を有するべきである。
【0046】
本発明の一実施形態において、透過性多孔質複合材料は、多孔質鉄及び0.01重量%〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%の少なくとも1つの機能成分の混合物からなる。
【0047】
本発明の一実施形態は、該複合材料を飲料水処理、廃水(都市及び産業)処理、土壌改善に適用することである。本発明による透過性多孔質複合材料は、硝酸塩並びに亜硝酸塩並びに有毒無機及び有機汚染物質の最適な処理用に設計されている。
【0048】
水処理のために本発明による透過性多孔質複合材料を用いるとき、直接的有害廃棄物は発生しない。
【0049】
生じた副生成物、すなわち、使用済み多孔質複合材料は、他の産業に、例えば、鉄鋼産業用の原材料として用いることができる。本発明による複合材料は、水処理時に硝酸塩又は他の汚染物質の除去のより大きく、より一貫性のある性能を示し、直接的有害廃棄物をもたらさない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明による透過性多孔質複合材料及び該複合材料が成形され得る各種形状の概略図を示す図である。
【図2】本発明による透過性多孔質複合材料の性能を評価するために用いたカラムの概略図を示す図である。
【図3】本発明による透過性多孔質複合材料の透過性を評価するために用いた装置の概略図を示す図である。最大(最小)透過性密度(多孔率)を測定するために最小限の空気圧を用いて水が複合材料上の水の表面張力を克服することを補助する。複合材料を種々の密度(多孔率)に圧縮した。加圧下又は非加圧下での時間による複合材料を通過する水の量を測定。
【図4】本発明による製造方法の例を示す図である。
【図5】多孔質鉄粒子の写真である。
【図6】固体鉄粒子の写真である。
【図7】機械的混合過程により多孔質鉄粒子の細孔内に固定された遊離形の機能成分(ここでは活性炭(AC)粒子)を示す写真である。多孔質鉄粒子構造体は、入り込んだAC粒子より明るい色を有する。
【実施例】
【0051】
以下の材料は、機能材料として用いた。
【表1】

【0052】
(例1)
天然に存在する水の試料として、Martinsberg(PA、USA)の地下水を用いた。化学的分析を表2に示す。試験は、図3に示すように試験材料を有するカラムに水をポンプで送り込むことによって実施した。空の床の接触時間EBCTは、25分であった。特定の時間間隔の後に流出水を汚染物質に関して分析した。0時間における汚染物質の含量は、非処理水(流入液)中の含量と等しい。
【表2】

【0053】
種々の材料を溶液中の硝酸塩濃度を低下させるそれらの能力に注目して透過性材料として試験した。以下の材料を試験した。
【0054】
材料1;BET法により測定したとき600m/gの比表面積を有する0.6×2.4mmのサイズの市販の活性炭顆粒AC
【0055】
材料2;200μm未満の粒径を有し、鉄マトリックス中に溶解した0.1重量%未満の炭素含量及びBETにより測定したとき0.1m/g未満の比表面積を有する市販の固体非多孔質微粉化鉄粉末
【0056】
材料3;鉄マトリックス中に溶解した3重量%の炭素含量、BETにより測定したとき1.2m/gの比表面積及び0.3×5mmのサイズを有する市販の固体非多孔質鉄凝集体
【0057】
材料4;BETにより測定したとき2.7m/gの比表面積を有する本発明による透過性多孔質複合材料。複合材料は、黒鉛が鉄粉末の細孔に押し込められるまで30分の期間にわたり黒鉛Aを10〜850μmの間の粒径、約250μmの平均粒径を有する水素還元多孔質鉄粉末と混合することにより製造する。前記複合材料中の黒鉛Aの量は、複合材料の1重量%であった。
【0058】
材料5;BETにより測定したとき6.7m/gの比表面積を有する本発明による透過性多孔質複合材料。複合材料は、アルミナが鉄粉末の細孔に押し込められるまで30分の期間にわたり活性アルミナと10〜850μmの間の粒径、約250μmの平均粒径を有する水素還元多孔質鉄粉末とにより製造する。前記複合材料中の活性アルミナの量は、複合材料の4重量%であった。
【0059】
材料6;BETにより測定したとき2.0m/gの比表面積を有する本発明による透過性多孔質複合材料。複合材料は、ゼオライトが鉄粉末の細孔に押し込められるまで30分の期間にわたりゼオライトと10〜850μmの間の粒径、約250μmの平均粒径を有する水素還元多孔質鉄粉末とにより製造する。前記複合材料中のゼオライトの量は、複合材料の4重量%であった。
【0060】
試験は、各材料について72時間の期間中連続的に実施した。以下の表に各材料ごとの流出物中の硝酸イオンの濃度を示す。硝酸塩の濃度は、イオン選択電極により測定し、mg/l単位の窒素含量として表した。
【表3】

【0061】
上の表3からわかるように、本発明による透過性多孔質複合材料は、全試験期間中硝酸塩含量を低下させ、また、用いた機能成分にもよるが、3時間から48時間の間の稼働で90%超低下させることができる。材料1は、硝酸塩濃度を9時間までで約18〜45%低下させる。材料2は、低下作用を殆ど示さず、材料3は、試験期間中硝酸塩含量を50%未満低下させ、相当な期間の後にのみ作用し始める。
【0062】
(例2)
本発明による各種の透過性多孔質複合材料を硝酸塩減少能力に関して例1で述べた方法により試験した。用いる水は、同じ供給元から入手した。透過性多孔質複合材料は、各種機能成分を、酸化鉄の水素還元により得られ、10〜850μmの間の粒径、約250μmの平均粒径を有する多孔質鉄粉末と、該機能成分が透過性多孔質鉄の細孔内に十分に分布し、固定されるまで30分間混合することによって調製した。
【0063】
複合材料1において、1重量%のACを機能成分として用いた。複合材料1の比表面積は、BETにより測定したとき5.7m/gであった。
【0064】
複合材料2において、2重量%のACを機能成分として用いた。複合材料2の比表面積は、BETにより測定したとき12.8m/gであった。
【0065】
複合材料3において、1重量%の黒鉛Aを機能成分として用いた。複合材料3の比表面積は、BETにより測定したとき2.7m/gであった。
【0066】
複合材料4において、2重量%の黒鉛B、3重量%の酸化第二鉄Feを機能成分として用いた。複合材料1の比表面積は、BETにより測定したとき0.6m/gであった。
【0067】
硝酸塩の濃度は、イオン選択電極により測定し、mg/l単位の窒素含量として表した。
【表4】

【0068】
表4からわかるように、透過性多孔質複合材料1〜3は、9〜12時間後に90%を超える硝酸塩の除去の能力を有する。複合材料4は、32時間後から試験56時間まで硝酸塩含量を約70%のレベル低下させる。
【0069】
(例3)
この例では、地下水中の複数の汚染物質を減少させる本発明による透過性多孔質複合材料の能力を示す。ヒ素As、リン酸塩PO3−及び六価クロムCrVIを試験前に水に加え、スパイクしたこと以外は、試験を例1に従って実施した。
【0070】
透過性材料は、例2で用いた透過性多孔質複合材料No2であった。
【0071】
硝酸塩の濃度は、イオン選択電極により測定し、mg/l単位の窒素含量として表した。リン酸塩及び六価Crの濃度は、比色法により測定し、ヒ素の濃度は、原子吸光分析装置AASにより測定した。リン酸塩の濃度は、P mg/lとして表した。またAs及びCrの濃度は、mg/l単位で表す。
【表5】

【0072】
表5からわかるように、本発明による透過性多孔質複合材料は、汚染物質の複数の組合せの除去能力を有する。
【0073】
(例4)
この例では、例1における材料3と比較した地下水中の複数の汚染物質を減少させる本発明による透過性多孔質複合材料、例2の複合材料2の能力を示す。
【0074】
試験前にヒ素Asを水に加え、スパイクしたことを除いて、試験を例1に従って実施した。
【0075】
硝酸塩の濃度は、イオン選択電極により測定し、mg/l単位の窒素含量として表し、ヒ素の濃度は、AASにより測定した。
【表6】

【0076】
表6から明らかなように、本発明による透過性多孔質複合材料は、比較例と比較して長期的により高いヒ素除去能力を有する。24時間後、Asを減少させる比較材料の能力は低下しつつあるが、そのような傾向は本発明による複合材料については認められない。硝酸塩の除去の能力は、本発明による材料については約80〜90%であるが、鉄マトリックスに溶解した3重量%の炭素含量を有する非多孔質鉄粒子は、硝酸塩を限られた程度まで除去するに留まる。
【0077】
(例5)
この例では、本発明による透過性多孔質複合材料における固定の程度をどのように測定するかを示す。
【0078】
多孔質鉄粉末を各種機能成分、すなわち、それぞれ2重量%のAC、1重量%の黒鉛A及び2重量%の黒鉛Bと20分間混合した。標準ふるい分析を透過性多孔質複合材料について実施し、炭素の含量を各種分級物について測定した。より微細な機能成分が多孔質鉄の細孔内に十分に分布し、固定されている場合、各種分級物中の機能成分の相対的含量は、当該分級物における全材料の百分率にできる限り近いものとする。ふるい間隔における機能材料の含量を機能成分の総含量で割ることにより、分布及び固定の程度の尺度が得られる。機能成分の十分な分布及び固定を達成するために、この尺度、すなわち、相対的分布は、透過性多孔質複合材料の5重量%超を含む間隔について1.50から0.50の間になければならない。さらに、より微細な分級物、すなわち、0.075mm未満の機能材料の量は、機能材料の総量の30%を超えない、好ましくは20%を超えないものとする。
【0079】
用いた多孔質鉄粉末は、最小限97重量%のFe含量、0.1重量%未満の炭素含量、1.3g/cmの見かけの密度を有していた。46.8重量%が0.250mmを超え、30.9重量%が0.150mmを超え、13.8重量%が0.075mmを超え、残りの8.5重量%が0.075mm未満であった。
【0080】
以下の表7に各種透過性多孔質複合材料のふるい分析を、また各種ふるい分級物中の炭素の含量を示す。
【表7】

【0081】
(例6)
透過性多孔質複合材料の調製
この例では、調製の方法によって、各種の鉄粉末を透過性多孔質複合材料の製造にどのようにして用いることができるかを示す。用いた鉄粉末及び製造の方法は、透過性多孔質複合材料が20重量%未満の75μm未満、好ましくは10重量%未満の75μm未満のものを有するように選択するものとする。その理由は、より微細な多孔質鉄粒子が水流により容易に運び去られる可能性があるためである。機能成分として、2%のACを用いた。
【0082】
各種の透過性多孔質複合材料を以下により調製した。
(1)鉄粉末をTRS(抗折力)バーに圧縮した後、サイズ分けし、所望のサイズに緩やかに粉砕し、その後、機能成分と混合した−CSM
(2)鉄粉末をTRSバーに圧縮した後、窒素雰囲気中で熱処理し、続いてサイズ分けし、所望のサイズに粉砕し、その後、機能成分と混合した−CHSM
(3)機能成分を鉄粉末と混合し、混合物をTRSバーに圧縮した後、サイズ分けし、所望のサイズに緩やかに粉砕した−MCS
(4)機能成分を鉄粉末と混合し、混合物をTRSバーに圧縮した後、窒素雰囲気中で熱処理し、続いてサイズ分けし、所望のサイズに粉砕した−MCHS
【0083】
圧縮後に、圧粉体密度、多孔率及び圧粉体強度を測定した。圧粉体強度は、熱処理後にも測定した。その後、試料を所望のサイズにサイズ分けし、得られたサイズ分け済み粉末における粒径分布及び見かけの密度を測定した。
【0084】
圧粉体密度(GD)は、試料の重量を計算容積で割ることにより測定した。
【0085】
圧粉体強度(GS)は、調製した複合材料の多孔質構造体の強度を表し、ASTM B312−ISO3995に従って測定した。
【0086】
多孔率は、圧粉体密度測定及び材料の比密度(空孔を含まない密度)に基づいて測定した。
【0087】
見かけの密度(AD)は、ホール流量計(Hall Flow meter)を用いて測定した。比表面積(SSA)は、BET法により測定した。
【表8−1】


【表8−2】


【表8−3】

【0088】
表8に本発明による透過性多孔質複合材料が様々な方法により製造することができることを示す。
【0089】
例えば、非多孔質鉄粉末は、汚染された流体又は液体に対して十分な透過性を示す25%超の多孔率を有する透過性多孔質複合材料に変化させることができる。例えば、非多孔質鉄粉末は、多孔質鉄粉末又は構造体にも変化させることができる。
【0090】
より微細な鉄粉末は、実質的に20重量%未満が75μm未満である粒径分布を有する透過性多孔質複合材料を製造するのにも用いることができる。20重量%を超える透過性多孔質複合材料が75μm未満である場合、より微細な画分は液体により運び去られる傾向があるので、複合材料は効率が低い。
【0091】
処理後に崩壊しないようにするために、圧縮材料の圧粉体強度は、例6のすべての例により満たされる基準である500psiを超えるべきである。
【0092】
(例7)
この例では、透過性多孔質複合材料の最低限必要な多孔率をどのようにして測定したかを示す。透過性多孔質複合材料の製造に用いることに適する3種の鉄粉末及び本発明による2種の透過性多孔質複合材料を試験した。試験装置は、図3によるものと同様のものである。
【0093】
鉄粉末及び複合材料を各種圧粉体密度に圧縮した。透過性多孔質複合材料は、以前に開示した実施形態(3)に従って製造した。
【0094】
供試材料をカラムに入れ、水を通した。試験材料に浸透した水の量を5分後にmlとして測定した。
【0095】
以下の表9に透過性多孔質複合材料の多孔率は約11%を超えるものでなければならないことを示す。これは、試験1及び2により明らかである。9.7%の多孔率では、水はすべての印加圧力で複合材料を通過しない(試験2)。12.8%の多孔率では、水は5psi(0.03MPa)の最小圧力で複合材料を通過し、したがって、必要な多孔率は、約11%を超えるものでなければならない。
【表9】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染された流体の処理用の多孔質で透過性の複合材料であって、鉄粒子体並びに該鉄体の細孔及び空洞内に遊離の形態で分布し、固定されている炭素含有化合物、カルシウム含有化合物、ナトリウム含有化合物、鉄含有化合物、チタン含有化合物及びアルミニウム含有化合物からなる群から選択される0.01〜10重量%の少なくとも1つの機能成分を含み、該鉄粒子が10μmから10mmの間の粒径範囲を有することを特徴とする上記複合材料。
【請求項2】
鉄粉末粒子が、20μmから5mmの間、好ましくは45μmから2mmの間、又は1μmから2mm、好ましくは1μmから1mm、好ましくは1μmから0.5mmの粒径範囲を有する、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記炭素含有化合物が、黒鉛、活性炭及びコークスから選択され、前記鉄含有化合物が、硫酸第二鉄又は硫酸第一鉄、酸化第二鉄、及び水酸化第二鉄から選択され、前記チタン含有化合物がチタニアであり、前記ナトリウム含有化合物がソーダであり、前記カルシウム含有化合物が石灰であり、前記アルミニウム含有化合物が、アルミナ及びゼオライトなどのケイ酸アルミニウムから選択され、好ましくは黒鉛、活性炭、コークス、活性アルミナ及びゼオライトの群から選択される、請求項1又は2に記載の複合材料。
【請求項4】
前記少なくとも1つの機能成分が、20μm未満、好ましくは0.01〜20μm、好ましくは0.01〜10μm、0.02〜10μm、好ましくは0.02〜5μmの粒径を有する、請求項1から3までのいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項5】
前記鉄粒子が、90%を超える鉄、好ましくは95%を超えるFeの含量を有し、且つ/又は前記鉄粉末が酸化鉄の化学的還元若しくは溶融鉄の微粉化により製造される、請求項1から4までのいずれか一項に記載のもの。
【請求項6】
BET法により測定したときに0.2m/gを超える、好ましくは0.5m/gを超える、最も好ましくは1m/gを超える比表面積を有する、請求項1から5までのいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項7】
前記少なくとも1つの機能成分の総量が、0.05〜8重量%の間、好ましくは0.1〜5重量%の間である、請求項1から6までのいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項8】
前記鉄粒子が多孔質である、請求項1から7までのいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項9】
径が45μmから850μmの間の粒径範囲を有し、該鉄粉末の少なくとも90重量%のFe含量を有する多孔質粒子のH2還元鉄粉末体を含み、該機能成分が黒鉛及び/又は活性炭から選択される、請求項1から8までのいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項10】
汚染流体の処理のための多孔質で透過性の複合材料を製造する方法であって、
鉄体に相当する10μmから10mmの間の粒径範囲を有する鉄粒子を、0.01〜10重量%の量で存在する遊離形の炭素含有化合物、カルシウム含有化合物、ナトリウム含有化合物、鉄含有化合物、チタン含有化合物及びアルミニウム含有化合物からなる群から選択される少なくとも1つの機能成分と、該機能成分が機械的力により該鉄体中に分布し、固定されるまで、機械的に混合するステップ;
所望により、該少なくとも1つの機能成分の存在下若しくは不存在下で、不活性又は還元雰囲気中300℃から1200℃の間の温度で該鉄体を熱処理するステップ;
所望により、該少なくとも1つの機能成分の存在下若しくは不存在下で、該鉄体を7.0g/cm以下の圧粉体密度を有する圧縮体に圧縮するステップ;及び/又は
所望により、該少なくとも1つの機能成分の存在下若しくは不存在下で、該鉄体をサイズ分けするステップ
を含み、該各ステップが任意の順序で実施することができる上記方法。
【請求項11】
前記所望による圧縮を1000MPa未満、好ましくは600MPa未満、例えば、10〜1000MPa又は20〜600MPaの圧力で行う、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記所望による熱処理を300〜1200℃、好ましくは400〜1200℃、300〜1000℃、400〜1000℃、300〜800℃、400〜800℃、300〜700℃、400〜700℃、300〜600℃、400〜600℃、300〜500℃又は400〜500℃で行う、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記鉄粒子が、粒径が45μmから850μmの間の粒径範囲を有し、少なくとも該鉄粉末の90重量%のFe含量を有するH2還元多孔質鉄粉末粒子であり、黒鉛及び/又は活性炭から選択される機能成分と機械的に混合され、該機能成分が該多孔質鉄粒子の細孔内に固定される、請求項10から12までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
流体中の汚染物質の含量を減少させるための、請求項1から9に記載の複合材料の使用であって、該流体を該透過性複合材料中を通過させる、上記使用。
【請求項15】
流体中の汚染物質の含量を減少させるための、請求項1から9に記載の複合材料の使用であって、該流体が、水含有流体、好ましくは地下水、河川水、産業廃水、生活排水及び/又は表流水である、上記使用。
【請求項16】
硝酸塩、亜硝酸塩、As、Pb、Hg、Cd、Se、Cr及び六価Crなどの重金属、他の有毒無機物質並びに有毒有機化合物又はそれらの組合せからなる群;好ましくは硝酸塩及び/又は亜硝酸塩、から選択される汚染物質の含量を減少させるための、請求項1から9に記載の複合材料の使用。
【請求項17】
前記流体が、飲料水として使用されるものである、請求項1から9に記載の複合材料の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−501146(P2013−501146A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523327(P2012−523327)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061351
【国際公開番号】WO2011/015601
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(595054486)ホガナス アクチボラゲット (66)
【Fターム(参考)】