説明

透過測定用ホルダ

【課題】本発明は、試料セットの作業性に優れた透過測定用ホルダを提供することにある。
【解決手段】試料28を光透過測定する際に用いられる透過測定用ホルダ10において、該試料28を保持するためのホルダ本体12と、該ホルダ本体12に着脱自在に設けられ、該ホルダ本体12に取り付けられた状態で該試料28を該ホルダ本体12とで挟持する試料押さえ14と、該ホルダ本体12ないし該試料押さえ14に設けられ、該ホルダ本体12に対し該試料押さえ14を磁力で着脱自在とする固定手段16とを備え、該ホルダ本体12に対し該試料押さえ14を磁力で着脱自在とし、かつ該試料押さえ14の材質を、該ホルダ本体12に対し該試料押さえ14を着脱する際および該ホルダ本体12と該試料押さえ14とで該試料28を挟持する際に、変形しない材質としたことを特徴とする透過測定用ホルダ10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透過測定用ホルダ、特にその試料保持機構の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、試料の分子構造や状態を測定するため、試料に赤外線を照射しその透過光を分光しスペクトルを得ることにより、試料の特性を知る赤外透過測定が行われている。
赤外透過測定においては、試料セットとして、試料を臭化カリウム(KBr)等の赤外透過剤と共にすりつぶし、錠剤整形をする錠剤法を用いるのが一般的である。液体試料の場合、KBrなどの窓板に試料を塗るか、塗れない粘性の低い試料は、2枚の窓板の間に挟んで測定を行う。
試料が薄いフィルム状の場合は、特に前処理を必要とせず、そのまま測定が可能であるが、液体やフィルムの透過測定には、液体やフィルムを装置にセットするためのホルダが必要となる。
従来のホルダとしては、例えばKBrを金属板で挟み、ネジで締め付け固定するネジ式があった(例えば、特許文献1,非特許文献1参照)。
また、従来のホルダとしては、例えばKBrを金属板で挟み、バネを使ったクリップで挟んで固定するクリップ式もあった(例えば、特許文献2,非特許文献2参照)。
【特許文献1】実全平3−16047号公報(第3図)
【特許文献2】特開平7−128206号公報(図1)
【非特許文献1】“FTIR TALK vol.9 液体試料の測定法”、[online]、株式会社 島津製作所、[平成19年4月4日検索]、インターネット<URL:http://www.an.shimadzu.co.jp/support/lib/ftirtalk/talk9/intro.htm>
【非特許文献2】“EZ-Clip Holder”、[online]、株式会社エス・テイ・ジャパン、[平成19年4月4日検索]、インターネット<URL:http://www.stjapan.co.jp/101_stjp/101_02_b/index.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来方式にあっても、試料セットの作業性は、改善の余地が残されていた。
すなわち、前記ネジ式のホルダでは、ネジを閉めるのに手間がかかり、強く締め過ぎると、窓板を破損する危険がある。また、人によって締め付ける強さが違うので測定結果も人により異なる。
また、前記クリップ式のホルダでは、バネにより簡単に保持が可能である。しかしながら、窓板をセットする際にクリップを持ち上げるために、片手がふさがる。また、押さえが邪魔になるので、別の場所で試料を窓板に塗る若しくは挟むなどのサンプリングを行い、これをホルダにセットする必要があり、面倒であった。
前記従来方式は、何れも、マスクをかけることで小さな窓板やフィルムを測定することができる。しかしながら、このマスクは、単に穴の開いた板であり、窓板のセット位置は目で見ながら、置く位置を手で調整する必要があり、面倒であった。
このように前記従来方式にあっても、試料セットの作業性に関しては、未だ改善の余地が残されていたものの、従来は、これを解決することのできる適切な技術が存在しなかった。
本発明は前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、試料セットの作業性に優れた透過測定用ホルダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するために、本発明にかかる透過測定用ホルダは、試料を光透過測定する際に用いられる透過測定用ホルダにおいて、ホルダ本体と、試料押さえと、固定手段と、本体側光通過穴と、押さえ側光通過穴と、を備え、該ホルダ本体に対し該試料押さえを磁力で着脱自在とし、かつ該試料押さえの材質を、該ホルダ本体に対し該試料押さえを着脱する際および該ホルダ本体と該試料押さえとで該試料を挟持する際に、変形しない材質としたことを特徴とする。
ここで、前記ホルダ本体は、試料を保持するためのものとする。
また、前記試料押さえは、前記ホルダ本体に着脱自在に設けられ、該ホルダ本体に取り付けられた状態で該試料を該ホルダ本体とで挟持する。
前記固定手段は、前記ホルダ本体ないし前記試料押さえに設けられ、該ホルダ本体に対し該試料押さえを磁力で着脱自在とする。
前記本体側光通過穴は、前記ホルダ本体に設けられ、該ホルダ本体および前記試料押さえに挟持された試料を光透過測定するためのものとする。
前記押さえ側光通過穴は、前記試料押さえに設けられ、前記ホルダ本体および該試料押さえに挟持された試料を光透過測定するためのものとする。
【0005】
<試料押さえの材質>
本発明の試料押さえの材質としては、ゴムよりも硬いもの、例えば金属等が挙げられる。
【0006】
<試料のセット>
試料のセットとしては、試料がそのままセットされる場合と、試料が窓板間に設けられてセットされる場合とを含めていう。
【0007】
<本体凹部>
なお、本発明において、前記ホルダ本体は、前記本体側光通過穴の中心軸上に前記試料の中心軸が位置するように、該試料を位置決め保持するための本体凹部を備えることが好適である。
ここで、前記本体凹部は、凹部周壁を含む。前記凹部周壁は、前記ホルダ本体に対する前記試料の軸直交方向位置を規定するためのものとする。
【0008】
<枠組>
また、本発明においては、前記本体凹部に着脱自在に設けられ、該本体凹部に位置決め保持される試料と大きさの異なる試料を位置決め保持するための枠組を備えることが好ましい。
前記枠組は、枠組内周壁および枠組外周壁を備える。前記枠組内周壁および前記枠組外周壁は、前記本体凹部に該枠組を嵌合した状態で、前記本体側光通過穴の中心軸上に該枠組に位置決め保持された試料の中心軸が位置するように、該ホルダ本体に対する該試料の軸直交方向位置を規定するためのものとする。前記枠組内周壁は、前記試料を位置決め保持する。前記枠組外周壁は、前記本体凹部周壁に嵌合する。
【0009】
<試料押さえ>
本発明において、前記試料押さえは、試料押さえ端部と試料押さえ中間部との間に、試料厚さに基づき定められた段差が設けられるように、断面略Ω字状に屈曲されたものであることが好適である。
そして、本発明においては、前記試料押さえを断面逆Ω字の向きで、前記試料押さえ中間部を前記ホルダ本体に設置し、該ホルダ本体と該試料押さえ中間部とで前記試料を挟持する。または、前記試料押さえを断面Ω字の向きで、前記試料押さえ端部を前記ホルダ本体に設置し、該ホルダ本体と前記試料押さえ中間部とで前記試料を挟持する。
【0010】
<パッキン>
本発明において、前記試料押さえは、前記試料を前記ホルダ本体に向けて押すためのリング状パッキンを備えることが好適である。
ここで、前記パッキンは、前記押さえ側光通過穴の中心軸上にパッキン中心軸が位置するように前記試料押さえに設けられ、試料厚さに基づき定められたパッキン厚さを有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる透過測定用ホルダによれば、ホルダ本体に対し試料押さえを磁力で着脱自在とし、かつ試料押さえの材質を、ホルダ本体に対し試料押さえを着脱する際およびホルダ本体と試料押さえで試料を挟持する際に変形しない材質としたので、試料セットの作業性が向上する。
【0012】
また、本発明においては、前記ホルダ本体が前記本体凹部を備えることにより、試料の位置決めを容易かつ正確に行うことができるので、試料セットの作業性が、より向上する。
本発明においては、前記本体凹部に着脱自在な枠組を備えることにより、種々の試料大きさに対応することができるので、試料セットの作業性が、より向上する。
本発明においては、前記試料押さえを前記断面略Ω字状とすることにより、種々の試料厚さに対応することができるので、試料セットの作業性が、より向上する。
本発明においては、前記試料押さえに前記パッキンを備えることにより、種々の試料厚さに対応することができるので、試料セットの作業性が、より向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に基づき本発明の好適な一実施形態について説明する。
図1には本発明の一実施形態にかかる透過測定用ホルダの概略構成が示されている。
なお、同図(A)はホルダ本体より試料押さえを取り外した状態を斜め上方より見た図、同図(B)はホルダ本体に試料押さえを取り付けた状態を斜め上方より見た図、同図(C)はホルダ本体に試料押さえを取り付けた状態の縦断面図である。
本実施形態では、試料として液体試料を想定し、液体試料を窓板間に設けた例について説明する。
同図に示す赤外透過測定用ホルダ(透過測定用ホルダ)10は、ホルダ本体12と、試料押さえ14と、磁石(固定手段)16と、本体側光通過穴18と、押さえ側光通過穴20と、本体凹部22と、を備える。
ここで、ホルダ本体12は、試料28を窓板30間に設けた状態で保持する。
また、試料押さえ14は、ホルダ本体12に着脱自在に設けられる。試料押さえ14は、ホルダ本体12に取り付けられた状態で、試料28をホルダ本体12とで挟持する。試料押さえ14の材質は、ホルダ本体12に対し試料押さえ14を着脱する際およびホルダ本体12と試料押さえ14とで試料28を挟持する際に、変形しない材質、例えば磁性金属とする。
磁石16は、ホルダ本体12に設けられ、ホルダ本体12に対し試料押さえ14を磁力で着脱自在とする。
【0014】
本体側光通過穴18は、ホルダ本体12に設けられ、試料28に測定光を入射させるためのもの、または試料28に測定光を入射して得られた試料28よりの透過光(測定光)を通過させるためのものとする。
押さえ側光通過穴20は、試料押さえ14に設けられ、試料28に測定光を入射させるためのもの、または試料28に測定光を入射して得られた試料28よりの透過光を通過させるためのものとする。
そして、本体側光通過穴18の中心軸上に押さえ側光通過穴20の中心軸が位置するように、ホルダ本体12に対し試料押さえ14が取り付けられる。
【0015】
同図において、ホルダ本体12の本体側光通過穴18の上部には、試料28、窓板30、および後述する枠組が嵌合される本体凹部22が設けられている。本体凹部22は、本体側光通過穴18よりも大きい寸法を有する。
本体凹部22は、本体側光通過穴18の中心軸上に試料28の中心軸が位置するように、試料28を位置決め保持するためのものとする。本体凹部22は、ホルダ本体12に対する試料28の中心軸方向位置を規定するための凹部底壁32、及びホルダ本体12に対する試料28の軸直交方向位置を規定するための凹部周壁34を含む。
【0016】
本実施形態にかかる赤外透過測定用ホルダ10は概略以上のように構成され、以下にその作用について説明する。
本実施形態においては、ホルダ本体12に対し試料押さえ14を磁力で着脱自在に設けているので、ホルダ本体12に対する試料押さえ14の着脱が容易となる。
このために試料セットを行う際、ホルダ本体12に対し試料押さえ14を完全に取り外している。
そして、ホルダ本体12の本体凹部22に、一方の窓板30、試料28、および他方の窓板30を順に設ける。ここで、試料セットを行う際、ホルダ本体12に対し試料押さえ14を完全に取り外しているので、クリップ式に比較し、ホルダ本体12への窓板30、試料28のセットが容易に行える。
また、ホルダ本体12の本体凹部22に、窓板30を設けた際、本体凹部周壁34に窓板30周壁が嵌合するように、本体凹部周壁34の形状および寸法が、窓板30周壁の形状及び寸法に応じて決められている。この結果、ホルダ本体12の本体凹部22に窓板30、試料28をセットするだけで、ホルダ本体12に対する試料28および窓板30の軸直交方向位置を容易かつ正確に位置決めすることができる。
さらに、ホルダ本体12の本体凹部22に、窓板30を設けた際、本体凹部底壁32に窓板30の底壁を当接させるだけで、ホルダ本体12に対する試料28および窓板30の軸方向位置を容易かつ正確に位置決めすることができる。
【0017】
このようして本体凹部22により試料28、窓板30が位置決め保持されると、本体側光通過穴18の中心軸上に押さえ側光通過穴20の中心軸が位置するように、ホルダ本体12に対し試料押さえ14を取り付ける。
その際、試料押さえ14はホルダ本体12に対し磁石16の磁力でしっかり取り付けられるので、試料28はホルダ本体12と試料押さえ14との間にしっかり挟持される。
また、ホルダ本体12に試料押さえ14を載せるだけで、ホルダ本体12に対する試料押さえ14の固定を行うことができるので、クリップ式やネジ式のものに比較し、ホルダ本体12に対する試料押さえ14の固定を容易に行うことができる。
【0018】
前述のようにして試料セットが終了した赤外透過測定用ホルダ10は、FTIR試料室内の所定光路上に位置するところにセットされ、試料28の赤外透過測定が行われる。
ここで、赤外透過測定用ホルダ10は、本体側光通過穴18の中心軸を基準に、試料28の中心軸、および押さえ側光通過穴20の中心軸が位置決めされているので、FTIR試料室内の所定光路上に本体側光通過穴18の中心軸を一致させるだけで、赤外透過測定用ホルダ10のFTIRへの位置決めを容易かつ正確に行うことができる。
そして、赤外透過測定の終了後、ホルダ本体12に対し試料押さえ14を引き離すだけで、ホルダ本体12より試料押さえ14を容易に取り外すことができるので、測定済みの試料28、窓板30を容易に取り出すことができる。その際も、ホルダ本体12に対し試料押さえ14を完全に取り外しているので、クリップ式に比較し、ホルダ本体12よりの窓板30および試料28の取り外しが容易に行える。
【0019】
ところで、従来より、ホルダ本体に対する試料押さえの固定手段としては、種々のものがあり、例えばクリップ式、ネジ式等がある。
本実施形態においては、試料の良好な保持、およびホルダ本体に対する試料押さえの着脱の容易性の双方を得るため、磁石固定式と試料押さえの材質との組合せが非常に重要である。本実施形態においては、試料押さえの材質を、ホルダ本体に対し試料押さえを着脱する際およびホルダ本体と試料押さえとで試料を挟持する際に、変形しない材質、例えば磁性金属としている。
【0020】
ここで、ホルダ本体に対し試料押さえを磁力で着脱自在に構成する際、通常は、着脱を容易に行うため、試料押さえをゴム磁石で構成することが考えられる。
しかしながら、試料押さえをゴム磁石で構成したのでは、試料の保持が良好に行えないことがある。
すなわち、試料押さえをゴム磁石で構成したのでは、ホルダ本体に試料押さえが取り付けられている状態で、ホルダ本体に試料押さえ端部がぴったり密着していることが考えられる。このような状態で、ホルダ本体より試料押さえを取り外す際、試料押さえ端部のみを若干、捲ってから(変形させてから)、試料押さえ全体を持ち上げることにより、ホルダ本体より試料押さえを容易に取り外すことができる。
しかしながら、試料押さえが取り外しの際に変形するので、ホルダ本体に試料押さえを取り付けた際に、試料押さえに変形が残っていると、ホルダ本体と試料押さえで試料をしっかり挟持するのが困難なことがある。
また、試料押さえをゴム磁石で構成したのでは、ホルダ本体と試料押さえで試料をしっかり挟持する際においても、試料厚さによっては、試料で試料押さえが盛り上がるように変形することがあるので、ホルダ本体と試料押さえとで試料をしっかり挟持するのが困難なことがある。
【0021】
そこで、本実施形態においては、ホルダ本体に対する試料押さえの着脱容易性、および試料の良好な保持を確実に両立するため、固定機構としては磁石式を採用し、さらに試料押さえの材質を変形しない材質、例えば磁性金属としている。このような有意義的な組合せによりはじめて、試料の良好な保持、およびホルダ本体に対する試料押さえの着脱容易性の双方を、確実に得ることができる。
【0022】
試料セットの作業性の更なる向上
本実施形態においては、試料セットの作業性の更なる向上のため、種々の試料大きさに対応することも非常に重要である。このために試料大きさに応じた枠組を介して、本体凹部に、種々の試料大きさの試料をセットすることも非常に好ましい。
<本体凹部,枠組>
以下に、本実施形態において特徴的な本体凹部22及び枠組24について、図2を参照しつつ、より具体的に説明する。
なお、同図(A)は本体凹部22及び枠組24の要部を上方より見た分解図、同図(B)は本体凹部22及び枠組24の要部を上方より見た組立図、同図(C)は同図(B)に示した本体凹部22及び枠組24の要部の縦断面図である。
【0023】
ホルダ本体12は、本体側光通過穴18の中心軸上に試料28の中心軸が位置するように、試料28を位置決め保持するための本体凹部22を備える。
本体凹部22は、ホルダ本体12に対する試料28の中心軸方向位置を規定するための凹部底壁32、及びホルダ本体12に対する試料28の軸直交方向位置を規定するための凹部周壁34(34a〜34d)を含む。
【0024】
本実施形態においては、本体凹部22に着脱自在に設けられ、本体凹部22に位置決め保持される試料28と大きさの異なる試料を位置決め保持するための枠組24を備える。
枠組24は、本体凹部22に嵌合した状態で、本体側光通過穴18の中心軸上に、枠組24に位置決め保持された試料28の中心軸が位置するように、ホルダ本体12に対する試料28の軸直交方向位置を規定するための枠組内周壁36a〜36d、及び枠組外周壁38a〜38dを含む。また、枠組24は、試料28の赤外透過測定を行うための枠組側光通過穴40を含む。
また、枠組24は、本体凹部22の凹部底壁32に枠組24の底部を当接した状態で、ホルダ本体12に対する、枠組24に位置決め保持された試料28の中心軸方向位置を規定するための枠組底壁41を含む。
【0025】
そして、試料28および窓板30が、本体凹部22の大きさよりも小さい場合、枠組24を介して、試料28および窓板30を本体凹部22にセットする。すなわち、試料28および窓板30の大きさに応じた枠組内周壁36a〜36dを有する枠組24を用意し、その枠組外周壁38a〜38dを、本体凹部22の凹部周壁34a〜34dに嵌合することにより、本体凹部22に対する枠組24の位置決めを行うことができる。
次に、この枠組24に、一方の窓板30、試料28および他方の窓板30を設けることで、窓板30間に試料28をセットすることができる。
ここで、本体凹部22の凹部周壁34a〜34dに、枠組24の外周壁38a〜38dを勘合させているので、ホルダ本体22に対し、試料28の軸直交方向位置を正確かつ容易に位置決めすることができる。このために枠組24の枠組外周壁38a〜38dは、本体凹部22の凹部周壁34a〜34dの形状及び寸法に対応した、枠組外周壁形状及び枠組外周壁寸法を有する。
また、本体凹部22の凹部底壁32に、枠組24の底壁を当接させることで、ホルダ本体12に対する試料28の中心軸方向位置を位置決めすることができる。このために枠組24は、本体凹部22の深さに対応した、枠組厚さを有する。
【0026】
このようして本体凹部22および枠組24により試料28が位置決めされると、本体側光通過穴18の中心軸上に押さえ側光通過穴20の中心軸が位置するように、ホルダ本体12に対し試料押さえ14が取り付けられ、試料セットを終了する。
【0027】
本実施形態においては、窓板30の大きさに応じた枠組24を用いることにより、窓板30の位置合わせの手間が要らず、窓板30を枠組24内に置くだけで、適切な位置に窓板30をセットすることができる。
【0028】
また、本実施形態においては、磁石16で試料押さえ14を固定することができるので、簡単に窓板30、液体やフィルム等などの試料28を保持することができる。
本実施形態においては、小型で使い捨ての窓板30もセットすることのできる枠組24を設けることにより、洗浄手間とコンタミネーションの危険とを取り除いた測定が行える。この枠組24は用いる窓板30の大きさによって取替えが可能である。
本実施形態においては、押さえ14を交換することによって、様々な大きさの窓板30やフィルム試料を保持することができる。
【0029】
本実施形態によれば、測定までの前処理とセットに要する時間は数秒で、小型の使い捨ての窓板30を用いれば洗浄手間も不要なため分析時間の短縮につながる。また、枠組24を取り替えることで小型の窓板(5mm×5mm×1mm)や、これまで一般的であった20mm〜30mm角のものなど、幅広く保持可能である。小さい窓板30を用いれば、必要とされる試料28も微量(液体であれば1μl程度)で、少量しかない試料28でも測定が可能である。
【0030】
本実施形態によれば、ホルダ本体12に対し試料押さえ14が磁石16で着脱自在であるので、試料28の固定が簡単であり、測定に際して個人差が出にくい。
本実施形態においては、窓板30を固定する試料押さえ14が取り外せ、窓板30を固定する枠組24があるので、本体凹部22ないし枠組24の中でサンプリングを行い、そのまま測定できる。
本実施形態においては、枠組24を取り替えることで、小型の使い捨ての窓板30以外にも様々な大きさや形の窓板30がセット可能で、フィルムやシリコンウェハのような板状の試料も簡便に保持して測定が可能である。
【0031】
<試料押さえ>
本実施形態においては、試料セットの作業性の更なる向上のため、種々の試料厚さに対応することも非常に重要である。このために本実施形態においては、試料押さえとして、板状のものに代えて、試料厚さに応じた段差を有するように断面略Ω字状に屈曲されたものを用いることも好ましい。
すなわち、本実施形態において、試料押さえ14は、図3(A)に示されるように、試料押さえ中間部42と試料押さえ端部44との間に、試料厚さに基づき定められた段差Sが設けられるように、断面略逆Ω字状に屈曲されたものを用いることも好ましい。
試料28が薄いフィルム試料の場合、同図(B)に示されるように、試料押さえ14を断面逆Ω字の向きで、ホルダ本体12と試料押さえ中間部42の外側面42aとで、試料28を挟持することができる。
また、試料28が液体試料の場合、同図(C)に示されるように、試料押さえ14を断面Ω字の向きで、試料押さえ端部44をホルダ本体12に設置し、ホルダ本体12と試料押さえ中間部42の内側面42bとで、窓板30を介して試料28を挟持することができる。
本実施形態においては、一の試料押さえ14で、異なる試料厚さの試料28に対応することができるので、試料セットの作業性の更なる向上を図ることができる。
【0032】
また、本実施形態においては、断面略Ω字状に屈曲している試料押さえ14を用いることにより、平板状のものに比較し、試料押さえ14の着脱を、より容易に行うことができるので、試料セットの作業性の更なる向上を図ることができる。
すなわち、同図(B)に示されるように試料押さえ14が断面逆Ω字の向きの場合は、試料押さえ端部44を持つことにより、ホルダ本体12に対する試料押さえ14の着脱を、より容易に行うことができる。
また、同図(C)に示されるように試料押さえ14を断面Ω字の向きの場合は、試料押さえ中間部42を持つことにより、ホルダ本体12に対する試料押さえ14の着脱を、より容易に行うことができる。
【0033】
<パッキン>
本実施形態においては、種々の試料厚さに対応することも非常に重要である。このために本実施形態においては、試料押さえに、試料厚さに応じた厚さを有するパッキンを設けることも好ましい。
すなわち、本実施形態においては、図4に示されるようなリング状のパッキン46を設けることも好ましい。
なお、同図(A)はパッキン46が設けられた試料押さえ14をホルダ本体12側より見た図である。同図(B)は同様の試料押さえ14をホルダ本体12に取り付けた状態の縦断面図である。
同図(A)に示されるように、パッキン46は、押さえ側光通過穴20の中心軸上にパッキン中心軸が位置するように、試料押さえ14に設けられている。
パッキン46は、試料厚さに基づき定められたパッキン厚さを有する。
また、パッキン46は、本体凹部22の試料28を確実に挟持するため、パッキン46外周壁全体が本体凹部22に入る必要がある。このためにパッキン46は、本体凹部22よりも若干小さいパッキン外周壁寸法を有する。
さらに、パッキン46は、赤外透過測定を妨げるのを防ぐため、パッキン内周壁の寸法が、押さえ側光通過穴20の寸法よりも大きい。
この結果、同図(B)に示されるように、試料厚さに応じたパッキン厚さを有するパッキン46が設けられた試料押さえ14を、ホルダ本体12に取り付けるだけで、パッキン46が試料28をホルダ本体12に向けて確実に押すことにより、窓板30を介して、試料28を確実に挟持することができる。これにより、例えば窓板30間に液体試料28を保持する場合であっても、窓板30間に液体試料28をぴったり密着させて保持することができるので、試料セットの作業性の更なる向上を図ることができる。
【0034】
<位置決め機構>
本実施形態においては、試料セットの作業性の更なる向上のため、ホルダ本体12に対する試料押さえ14の軸方向位置を、より容易かつ正確に、位置決めすることが非常に重要である。
このために本実施形態においては、図4に示されるように、ホルダ本体12及び試料押さえ14に、位置決めピン48及び位置決め穴50を設けている。この位置決めピン48及び位置決め穴50の軸直交方向位置は、ホルダ本体12に対する試料押さえ14の軸直交方向位置を位置決めした際に得ておいたものである。
これにより、本実施形態においては、ホルダ本体12に試料押さえ14を取り付ける際に、位置決めピン48に位置決め穴50を通すだけで、ホルダ本体12に対する試料押さえ14の軸直交方向位置の位置決めを、容易かつ正確に、行うことができる。
【0035】
なお、前記構成では、透過測定用ホルダを赤外領域での測定に用いた例について説明したが、本発明はこれに限定されず、他の領域での測定に用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態にかかる透過測定用ホルダの概略構成の説明図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる透過測定用ホルダにおいて好適なホルダ本体および枠組の説明図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる透過測定用ホルダにおいて好適な試料押さえの説明図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる透過測定用ホルダにおいて好適なパッキン及び位置決め機構の説明図である。
【符号の説明】
【0037】
10 赤外透過測定用ホルダ(透過測定用ホルダ)
12 ホルダ本体
14 試料押さえ
16 磁石(固定手段)
18 本体側光通過穴
20 押さえ側光通過穴
22 本体凹部
24 枠組


【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を光透過測定する際に用いられる透過測定用ホルダにおいて、
前記試料を保持するためのホルダ本体と、
前記ホルダ本体に着脱自在に設けられ、該ホルダ本体に取り付けられた状態で該試料を該ホルダ本体とで挟持する試料押さえと、
前記ホルダ本体ないし前記試料押さえに設けられ、該ホルダ本体に対し該試料押さえを磁力で着脱自在とする固定手段と、
前記ホルダ本体に設けられ、該ホルダ本体および前記試料押さえに挟持された試料の光透過測定を行うための本体側光通過穴と、
前記試料押さえに設けられ、前記ホルダ本体および該試料押さえに挟持された試料の光透過測定を行うための押さえ側光通過穴と、
を備え、前記ホルダ本体に対し前記試料押さえを磁力で着脱自在とし、
かつ、前記押さえの材質を、前記ホルダ本体に対し該試料押さえを着脱する際および該ホルダ本体と該試料押さえで前記試料を挟持する際に、変形しない材質としたことを特徴とする透過測定用ホルダ。
【請求項2】
請求項1記載の透過測定用ホルダにおいて、
前記ホルダ本体は、前記本体側光通過穴の中心軸上に前記試料の中心軸が位置するように、該試料を位置決め保持するための本体凹部を備え、
前記本体凹部は、前記ホルダ本体に対する前記試料の軸直交方向位置を規定するための凹部周壁を含むことを特徴とする透過測定用ホルダ。
【請求項3】
請求項2記載の透過測定用ホルダにおいて、
前記本体凹部に着脱自在に設けられ、該本体凹部に位置決め保持される試料と大きさの異なる試料を位置決め保持するための枠組を備え、
前記枠組は、前記本体凹部に嵌合した状態で、該枠組に位置決め保持された試料の中心軸が前記本体側光通過穴の中心軸上に位置するように、前記ホルダ本体に対する該試料の軸直交方向位置を規定するための枠組内周壁および枠組外周壁を備え、
前記枠組内周壁は前記試料を位置決め保持し、前記枠組外周壁は前記本体凹部周壁に嵌合することを特徴とする透過測定用ホルダ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の透過測定用ホルダにおいて、
前記試料押さえは、試料押さえ端部と試料押さえ中間部との間に、試料厚さに基づき定められた段差が設けられるように、断面略Ω字状に屈曲されたものであり、
前記試料押さえを断面逆Ω字の向きで、前記試料押さえ中間部を前記ホルダ本体に設置し、前記ホルダ本体と該試料押さえ中間部とで前記試料を挟持し、
または、前記試料押さえを断面Ω字の向きで、前記試料押さえ端部を前記ホルダ本体に設置し、該ホルダ本体と前記試料押さえ中間部とで該試料を挟持することを特徴とする透過測定用ホルダ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の透過測定用ホルダにおいて、
前記試料押さえは、前記試料を前記ホルダ本体に向けて押すためのリング状パッキンを備え、
前記パッキンは、前記押さえ側光通過穴の中心軸上にパッキン中心軸が位置するように前記試料押さえに設けられ、試料厚さに基づき定められたパッキン厚さを有することを特徴とする透過測定用ホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−47623(P2009−47623A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215510(P2007−215510)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(595005617)ジャスコエンジニアリング株式会社 (3)
【Fターム(参考)】