説明

通信システム、基地局装置、移動局装置、及び通信方法

【課題】移動通信システムにおいて、制御チャンネルの通信モードと、通信チャンネルの通信モードとが異なることに起因して、通信チャネルへ移行したときの送信タイミングが不明となるのを防止する。
【解決手段】複数の移動局11と、各移動局間の通信を中継し、各移動局の送信権を管理する基地局12とを備え、送信権の要求及び付与は第1の伝送速度による制御チャネルを介してランダムアクセスにより行われ、各移動局間の通信は第2の伝送速度による通信チャネルを介して行われる通信システムにおいて、各移動局が制御チャネルを介し、送信権を要求するフレームを送信し、これに応答して基地局が該要求を許可するフレームを該移動局に送信し、これに応じて該移動局が通信チャネルを介してフレームの送信を開始するときに、該フレームの送信タイミングを、通信チャネルにおける適正なタイミングとなるように補正するタイミング補正手段を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の移動局と、各移動局間の通信を中継し、各移動局の送信権を管理する基地局とを備えた通信システム、及び該通信システムに適した基地局装置及び移動局装置並びに通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動通信システムとして、トランクドシステムのように基地局と複数の移動局を備え、移動局がランダムアクセスという手法を用い、制御チャネルを介して基地局から送信権を取得し、通信チャネルを介して通信を行うようにしたものが知られている(たとえば特許文献1や特許文献2参照)。各移動局及び基地局間の通信は、所定のフレームを同期させながら無線で送受することにより行われる。
【0003】
図3(a)及び(b)はこのような従来の移動通信システムの構成例を示す。同図に示すように、この移動通信システムにおいては、複数の移動局31、及び各移動局31間の通信を中継し、各移動局31の送信権を管理する基地局32を備える。移動局31及び基地局32間の通信は、同図(a)に示すように4800[bps]の伝送速度で行われ、又は同図(b)のように9600[bps]の伝送速度で行われる。
【0004】
図5(a)及び(b)は図3の移動通信システムにおけるランダムアクセス時のフレームのタイミングを示す。図5(a)では、図3(a)のように、伝送速度が4800[bps]の通信モードで通信を行う場合のタイミングを示しており、図5(b)では、図3(b)のように、伝送速度が9600[bps]の通信モードで通信を行う場合のタイミングを示している。4800[bps]の通信モードの場合、各フレームの長さは80[ms]となり、9600[bps]の通信モードの場合、各フレームの長さは40[ms]となる。
【0005】
図5(a)の場合、制御チャネルにおいて、移動局31は、基地局32が4800[bps]の伝送速度で送信するフレーム55を受信し、ランダムアクセスによる送信が可能であることを確認すると、ランダムアクセスを行うために、フレーム55のフレーム区間が終了してから40[ms]後に、送信権を要求するフレーム56を送信する。これに応答して、フレーム56の区間が終了してから40[ms]後に基地局32が送信する要求を許可するフレーム57を受信すると、移動局31は、通信チャネルにおいて通信を開始するために、フレーム57の区間が終了してから40[ms]後に、フレーム58の送信を行う。このようにして、移動局31は、ランダムアクセスによって、基地局32から送信権を取得し、送信を行うことができる。図5(b)の場合においても、各フレーム区間が40[ms]であること以外は同様にして、ランダムアクセスにより、通信が開始される。
【0006】
このように、図3(a)及び(b)の各同一サイト内では、制御チャネル及び通信チャネルは共に同じ通信モード(伝送速度)で用いられるのが一般的である。
【0007】
【特許文献1】特開2006−93869号公報
【特許文献2】特開2006−174142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、同一サイト内において異なる通信モード(伝送速度)を有する基地局を想定してみる。すなわち、2つの通信モードが混在しており、制御チャネルでの通信モード及び通信チャネルでの通信モードが異なる場合である。この場合、通信モードが異なるので、各通信モードのフレーム長や送受信タイミングに応じて、移動局における制御チャネルでの送信タイミングと、通信チャネルでの送信タイミングとが異なるおそれがある。このため、2つの通信モードが混在した通信システムを単純に構成することはできない。
【0009】
図1(a)及び(b)は制御チャネル及び通信チャネルにおいて異なる通信モードで通信を行う場合のものとして考えられる移動通信システムの構成例を示す。同図に示すように、このシステムにおいては、複数の移動局11、及び各移動局11間の通信を中継し、各移動局11の送信権を管理する基地局12を備える。
【0010】
この例では、伝送速度が4800[bps]の通信モード及び伝送速度が9600[bps]の通信モードが1つのサイトにおいて共存している。このような場合のランダムアクセス時のタイミングとしては、同図(a)のように、4800[bps]の制御チャネルにおいてランダムアクセスを行い、9600[bps]の通信チャネルにおいて通信を行う場合と、逆に同図(b)のように、9600[bps]の制御チャネルにおいてランダムアクセスを行い、4800[bps]の通信チャネルにおいて通信を行う場合が考えられる。
【0011】
図4(a)は図1(a)の構成の場合におけるランダムアクセス時のフレームのタイミングを示す。図4(b)及び(c)は図1(b)の構成の場合におけるランダムアクセス時のフレームのタイミングを示す。なお、4800[bps]の通信モードでは1フレームが80[ms]となり、9600[bps]の通信モードでは1フレームが40[ms]となる。
【0012】
図4(a)のタイミングにおいては、制御チャネルにおいて4800[bps]でランダムアクセスが行われ、通信チャネルにおいて9600[bps]で通信が行われる。すなわち、移動局11の動作に着目すると、移動局11が通信を行うために発信を行う際、制御チャネルにおいて、基地局12が送信する4800[bps]のフレーム41を受信し、ランダムアクセスによる送信が可能であることを確認した後、40[ms]後にランダムアクセスにより送信権を要求するフレーム42を送信する。基地局12は、このフレーム42を受信すると、次のフレームタイミングにおいて、どの通信チャネルでの通信を許可するかを示すフレーム43を送信する。このフレーム43を受信すると、移動局11は、フレーム43によって指定された通信チャネルへ移行し、40[ms]後に送信を行う。
【0013】
この場合、ランダムアクセスを行うタイミングが異なることにより、制御チャネルから通信チャネルへ移行して送信を開始するタイミングが異なることはない。したがって、移動局11の通信チャネルにおける送信タイミングは制御チャネルでのタイミングを維持していることになり、異なる通信モードの共存が可能となる。
【0014】
一方、図4(b)及び(c)のタイミングにおいては、制御チャネルにおいて9600[bps]でランダムアクセスが行われ、通信チャネルにおいて4800[bps]で通信が行われる。すなわち、移動局11の動作に着目すると、まず、図4(b)に示すタイミングにおいては、移動局11が通信を行うために発信を行う際、9600[bps]の制御チャネルにおいてフレームを受信する。このフレームは40[ms]のフレームであるため、通信チャネルの80[ms]のフレーム45のフレーム区間に対して、2つ分が配置される。この2つの制御チャネルのフレームのうちの後半部分46を受信し、ランダムアクセスによる送信が可能であることを確認すると、移動局11は40[ms]後に、ランダムアクセスにより送信権を要求するフレーム47を送信する。このフレーム47を受信すると、基地局12は、次のフレームタイミングにおいて、どの通信チャネルでの通信を許可するかを示すフレーム48を送信する。このフレーム48を受信すると、移動局11は、フレーム48により指定された通信チャネルへ移行し、40[ms]後に、フレーム49の送信を行う。
【0015】
この場合、制御チャネルから通信チャネルへ移行しても、移行の前後において送信タイミングが異なることはない。つまり、移動局11の通信チャネルにおける送信タイミングは制御チャネルでのタイミングを維持している。したがって、この場合には、異なる通信モードが共存することによる問題は生じない。
【0016】
図4(c)のタイミングにおいては、移動局11が通信を行うために発信を行う際、9600[bps]の制御チャネルにおいてフレームを受信する。受信するフレームは、40[ms]のフレームであるため、通信チャネルの80[ms]のフレーム50に対して2つ分が配置される。この2つの制御チャネルのフレームのうちの前半部分51を受信して、ランダムアクセスによる送信が可能であることを確認すると、移動局11は40[ms]後に、ランダムアクセスにより送信権を要求するフレーム52を送信する。このフレーム52を受信すると、基地局12は、次のフレームタイミングにおいて、どの通信チャネルでの通信を許可するかを示すフレーム53を送信する。このフレーム53を受信すると、移動局11は、フレーム53によって指定された通信チャネルへ移行し、通信チャネルにおける送信タイミングに適合するように、80[ms]後に、フレーム54の送信を行う。この場合、制御チャネルから通信チャネルへ移行したとき、移行の前後において、送信タイミングが異なる。
【0017】
このように、図4(b)及び(c)は、移動局11によるランダムアクセスのタイミングに応じて、制御チャネルから通信チャネルへ移行したときの、フレームを送信するタイミングが異なることを示している。しかしながら、移動局11は、送信権を要求するフレームを送信したタイミングが図4(b)又は(c)のタイミングのいずれであるかがわからないので、通信チャネルへ移行したときのフレームの送信タイミングを認識することができない。
【0018】
以上のように、制御チャネルにおいて9600[bps]でランダムアクセスを行い、通信チャネルにおいて4800[bps]で通信を行う場合、移動局11は、自身が送信権を要求するフレームを送信したタイミングが図4(b)又は(c)のタイミングのいずれであるかがわからないので、通信チャネルへ移行したときの送信タイミングを判別することができないという問題がある。
【0019】
本発明の目的は、このような従来技術の問題点に鑑み、移動通信システムにおいて、制御チャンネルの通信モードと、通信チャンネルの通信モードとが異なることに起因して、通信チャネルへ移行したときの送信タイミングが不明となるのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この目的を達成するための第1の発明は、複数の移動局と、各移動局間の通信を中継し、各移動局の送信権を管理する基地局とを備え、各移動局及び基地局間の通信は、第1の伝送速度による制御チャネル及び第2の伝送速度による通信チャネルを介して所定のフレームを同期させながら無線により送受することにより行われ、前記送信権の要求及び付与は前記制御チャネルを介してランダムアクセスにより行われ、各移動局間の通信は前記通信チャネルを介して行われる通信システムに関する。そして、各移動局が前記制御チャネルを介し、前記送信権を要求するフレームを送信し、これに応答して前記基地局が該要求を許可するフレームを該移動局に送信し、これに応じて該移動局が前記通信チャネルを介してフレームの送信を開始するときに、該フレームの送信タイミングを、前記通信チャネルにおける適正なタイミングとなるように補正するタイミング補正手段を具備することを特徴とする。ここで、通信システムとしては、たとえばトランクドシステムによるものが該当する。
【0021】
この構成において、制御チャネル及び通信チャネルの伝送速度が異なるので、通信チャネルにおける1つのフレーム区間に対し、複数の制御チャネルのフレームが対応する場合がある。この場合、制御チャネルによりランダムアクセスを行うに際し、移動局が送信権を要求し、及び基地局がこれを許可するフレームのタイミングとしては、通信チャネルにおけるフレームのタイミングに対して複数種類のタイミングがありうることになる。そして移動局は、ランダムアクセスを行う際には、制御チャネルにおけるフレームのタイミングに同期させて、送信権を要求するフレームを送信すればよいので、前記複数種類のタイミングのうちのいずれのタイミングにおいて送信権を要求するフレームを送信したかを知る術は、従来技術においては存在ない。したがって、通信チャンネルへ移行し、単に一定のタイミングでフレームの送信を開始すると、通信チャネルにおける適正な送信タイミングに合致しない場合がある。しかしながら、本発明によれば、該フレームの送信タイミングを、通信チャネルにおける適正なタイミングとなるように補正するタイミング補正手段を具備するので、通信チャネルに移行した後、適正なタイミングでフレームの送信を行うことができる。
【0022】
第2の発明に係る基地局装置は、複数の移動局との間で第1の伝送速度による制御チャネル及び第2の伝送速度による通信チャネルを介して所定のフレームを同期させながら送受する無線通信手段を備え、前記制御チャネルを介して各移動局の送信権を管理するとともに、前記通信チャネルを介して各移動局間の通信を中継する基地局装置であって、ランダムアクセスによる前記送信権を要求するフレームを前記制御チャネルを介して各移動局から受信し、これに応答して可能な場合に該要求を許可するフレームを該移動局に送信するとともに、その際、前記要求フレームを受信したタイミングに基づき、前記通信チャネルにおいて該移動局がフレームの送信を開始すべきタイミングに関する情報を、送信するフレームに含めることを特徴とする。
【0023】
第3の発明に係る移動局装置は、所定の基地局との間で第1の伝送速度による制御チャネル及び第2の伝送速度による通信チャネルを介して所定のフレームを同期させながら送受する無線通信手段を備え、前記制御チャネルを介して前記基地局から送信権を取得するとともに、前記通信チャネルを介して他の移動局との間の通信が前記基地局により中継される移動局装置であって、ランダムアクセスによる前記送信権を要求するフレームを前記制御チャネルを介して前記基地局に送信し、これに応答して前記基地局が送信した該要求を許可するフレームを受信し、その後、該許可フレームに含まれる前記通信チャネルにおけるフレームの送信タイミングに関する情報に基づいたタイミングで前記通信チャネルにおけるフレームの送信を行うことを特徴とする。
【0024】
第4の発明に係る移動局装置は、第2又は第3発明において、前記第1伝送速度は前記第2伝送速度の整数倍であることを特徴とする。
【0025】
第5の発明に係る装置は、第4発明において、前記送信タイミングに関する情報は、前記要求フレームが、前記通信チャネルのフレーム区間におけるどの位置に配置されているかを示す情報であることを特徴とする。
【0026】
第6の発明に係る移動局装置は、所定の基地局との間で第1の伝送速度による制御チャネル及び第2の伝送速度による通信チャネルを介して所定のフレームを同期させながら送受する無線通信手段を備え、前記制御チャネルを介して前記基地局から送信権を取得するとともに、前記通信チャネルを介して他の移動局との間の通信が前記基地局により中継される移動局装置であって、前記第1伝送速度は前記第2伝送速度の整数倍であり、前記制御チャネルのフレームはスーパーフレームを構成しており、前記スーパーフレームを構成するフレーム数は前記整数の整数倍であり、移動局装置は、前記スーパーフレームを構成する各フレームを受信する毎に、各フレームの前記スーパーフレームにおける順番をカウントしており、移動局装置は、ランダムアクセスによる前記送信権を要求するフレームを前記制御チャネルを介して前記基地局に送信し、これに応答して前記基地局が送信した該要求を許可するフレームを受信し、その後、前記スーパーフレームのカウント値に基づき、前記通信チャネルにおけるフレームの送信タイミングを認識し、該タイミングにおいて、前記通信チャネルにおけるフレームの送信を行うことを特徴とする。
【0027】
第7の発明に係る通信方法は、複数の移動局と、各移動局間の通信を中継し、各移動局の送信権を管理する基地局とを備え、各移動局及び基地局間の通信は、第1の伝送速度による制御チャネル及び第2の伝送速度による通信チャネルを介して所定のフレームを同期させながら無線により送受することにより行われ、前記送信権の要求及び付与は前記制御チャネルを介してランダムアクセスにより行われ、各移動局間の通信は前記通信チャネルを介して行われる通信システムにおける通信方法であって、各移動局が前記制御チャネルを介し、前記送信権を要求するフレームを送信し、これに応答して前記基地局が該要求を許可するフレームを該移動局に送信し、これに応じて該移動局が前記通信チャネルを介してフレームの送信を開始するときに、該フレームの送信タイミングを、前記通信チャネルにおける適正なタイミングとなるように補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、通信チャネルへ移行してからフレームの送信を行うタイミングを、通信チャネルにおける適正なタイミングとなるように補正するタイミング補正手段を設けるようにしたため、制御チャンネル及び通信チャンネルの通信モードとが異なることに起因して、通信チャネルへ移行したときの送信タイミングが不明となるのを防止し、通信チャネルへの移行後、適正なタイミングでフレームの送信を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1(a)及び(b)はそれぞれ本発明の一実施形態に係る移動通信システムを示す。同図に示すように、この通信システムは、車両や作業者に付随してそれぞれ移動する複数の移動局11、及び所定数の無線チャネルを各移動局11により共用可能とするための制御情報を各移動局11に送信し、各移動局11を管理する基地局12を備える。基地局12は各移動局11間の通信を中継し、各移動局11の送信権を管理する。各移動局11及び基地局12は、各移動局11及び基地局12間の通信を、伝送速度が異なる制御チャネル及び通信チャネルを介して所定のフレームを同期させながら無線で送受することにより行うための無線通信手段を備える。送信権の要求及び付与は制御チャネルを介してランダムアクセスにより行われ、各移動局11間の通信は通信チャネルを介して行われる。
【0030】
同図(a)においては、基地局12が制御チャネルの伝送速度を4800[bps]とし、通信チャネルの伝送速度を9600s[bps]として、制御チャネル及び通信チャネルを管理している場合を示している。同図(b)においては、基地局12が制御チャネルの伝送速度を9600[bps]とし、通信チャネルの伝送速度を4800[bps]として、制御チャネル及び通信チャネルを管理している場合を示している。
【0031】
図2は図1の通信システムにおける通信フレームのフォーマットを示す。同図に示すように、フレームの先頭は同期ワード、その後がチャネル識別情報のフィールド、そしてその後が制御情報等のフィールドとなっている。同期ワードは基地局12及び移動局11間の通信におけるフレームの同期を確立するために用いられる。チャネル識別情報フィールドは、そのフレームが制御チャネルのフレームであるか又は通信チャネルのフレームであるかを示す無線チャネル識別エリア、及びどの機能チャネルを使用するかを示す機能チャネル識別エリアにより構成される。本実施形態においては、無線チャネル識別エリアは制御チャネルが4800[bps]又は9600[bps]のいずれであるかを示す。機能チャネル識別エリアには、それが下り共通制御チャネルを示す場合において、新たにタイミング識別エリアを配置し、次表のとおりの設定を可能としている。
【表1】

【0032】
すなわち、タイミング識別エリアが「0」の場合、無線チャネル識別エリアによって示される制御チャネルが4800[bps]であれば、図4(a)のように、移動局11における制御チャネルのフレームの受信タイミングは、基地局12における制御チャネルのフレーム41や43のタイミングに一致することを示し、制御チャネルが9600[bps]であれば、図4(b)のように、移動局11における制御チャネルのフレームの受信タイミングは、基地局12における制御チャネルの後半のフレーム46や48のタイミングに一致することを示す。また、タイミング識別エリアが「0」の場合、制御チャネルが4800[bps]に対する設定はなく、制御チャネルが9600[bps]であれば、図4(c)のように、移動局11における制御チャネルのフレームの受信タイミングは、基地局12における制御チャネルの前半のフレーム51や53のタイミングに一致することを示す。
【0033】
この構成において、ランダムアクセス時のタイミングは、図4(a)〜(c)に示すとおりであり、ランダムアクセスは図4を用いて上述した手順に従って行われる。つまり図1(a)の構成の場合におけるランダムアクセスは図4(a)のタイミングに従って行われ、図1(b)の構成の場合におけるランダムアクセスは、図4(b)又は(c)のタイミングに従って行われる。
【0034】
その際、基地局12は、移動局11からの送信権を要求する要求フレームに応じてどの通信チャネルで通信することを許可するかを示す許可フレームを送信するとき、制御チャネルが4800[bps]の場合には、該許可フレームにおけるタイミング識別エリアを「0」として送信する。この許可フレームは、図4(a)におけるフレーム43である。制御チャネルが9600[bps]の場合には、9600[bps]の要求フレームが4800[bps]のフレーム区間の後半に配置されているときには、許可フレームにおけるタイミング識別エリアを「0」として送信する。この許可フレームは、図4(b)におけるフレーム48である。前半に配置されているときには許可フレームにおけるタイミング識別エリアを「1」に設定して送信する。この許可フレームは、図4(c)におけるフレーム53である。
【0035】
なお、制御チャネルと通信チャネルとで異なる通信モードではない場合、タイミング識別アリアの設定は、通信モードが4800[bps]のときには「0」とする。9600[bps]のときには「0」でもよいし、「1」でもよい。特に規定しないものとする。
【0036】
移動局11は、制御チャネルにおいて、許可フレームを受信した場合、そのタイミング識別エリアを調べることによって、通信チャネルにおける送信タイミングを認識することができる。すなわち4800[bps]の制御チャネルにおいて許可フレームを受信した場合に、そのタイミング識別エリアが「0」であれば、図4(a)に示すように、制御チャネルにおけるタイミングを維持し、許可フレーム43を受信したタイミングから40[ms]後に通信チャネルにおけるフレーム44の送信を開始する。
【0037】
一方、9600[bps]の制御チャネルにおいて許可フレームを受信した場合に、そのタイミング識別エリアが「0」であれば、図4(b)に示すように、制御チャネルにおけるタイミングを維持し、許可フレーム48を受信したタイミングから40[ms]後に通信チャネルにおけるフレーム49の送信を開始する。また、9600[bps]の制御チャネルにおいて許可フレームを受信した場合に、タイミング識別エリアが「1」であれば、図4(c)に示すように、許可フレーム53を受信したタイミングから80[ms]後に通信チャネルにおけるフレーム54の送信を開始する。これにより、移動局11は、許可フレームの受信タイミングに関係なく常に、適正なタイミングで通信チャネルにおける送信を開始することができる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態によれば、移動局11が制御チャネルにおいて9600[bps]でランダムアクセスを行い、通信チャネルにおいて4800[bps]で通信を行う場合において、ランダムアクセスに使用されたフレームが通信チャネルのフレーム区間における前半又は後半のいずれに配置されたものであるかを示す情報を通信チャネル許可フレームに含めるようにしたため、移動局11は常に適正なタイミングで通信チャネルにおけるフレームの送信を行うことができる。
【0039】
次に、本発明の別の実施形態に係る移動通信システムついて説明する。このシステムの構成図及びフレームのタイミングチャートとしては図1及び図4をそのまま適用することができる。すなわち、この場合においても、制御チャネル及び通信チャネルの伝送速度が異なり、一方の伝送速度が9600「bps」で、他方の伝送速度が4800[bps]であり、ランダムアクセス時のフレームのタイミングとして、図4(a)〜(c)の場合がある。したがって、この場合も、移動局11が制御チャネルにおいて9600[bps]でランダムアクセスを行い、通信チャネルにおいて4800[bps]で通信を行うときに、図4(b)及び(c)で示されるような、通信チャネルへの移行時におけるタイミングのずれが生じる場合がある。これを回避するため、本実施形態においては、上述表1のタイミング識別エリアによる情報を用いる代わりに、スーパーフレームのカウント情報を用いるようにしている。
【0040】
すなわち、この移動通信システムにおいては、所定数のフレームによりスーパーフレームが構成されている。移動局11は、制御チャネルにおいてスーパーフレームを受信する際に、それに含まれる各フレームについて、その先頭のフレームからフレームの順番をカウントするようにしている。そこで、この通信システムにおいては、ランダムアクセスに際し、移動局11が、先頭フレームの順番を1番目とした場合に奇数番目又は偶数番目のいずれのフレームを制御チャネルにおいて受信するかに応じて、移動局11自身が通信チャネル上での送信タイミングを切り替えるようにしている。
【0041】
すなわち、移動局11は制御チャネルにおいて偶数番目のフレームを受信し、ランダムアクセスを行う際には、通信チャネルにおいて送信するタイミングは、図4(b)のとおり、通信チャネルでの送信を許可する許可フレーム48を受信してから40[ms]後に通信チャンネルにおけるフレームの送信を行う。一方、制御チャネルにおいて奇数番目のフレームを受信してランダムアクセスを行う場合には、図4(c)のとおり、許可フレーム53を受信してから80[ms]後に、通信チャネルにおけるフレームの送信を行う。
【0042】
ただし、これによって通信チャネルにおけるフレームの送信タイミングを常に適正なものとするためには、スーパーフレームを構成するフレームの数を偶数にする必要がある。奇数であると、各スーパーフレームにおける同一番目のフレームについての、通信チャネルのフレーム区間における配置が、スーパーフレーム毎に異なるからである。また基地局12は、移動局11のランダムアクセスの送信フレームを受信した後、40ms後に移動局11に対して送信することが必要である。なお、制御チャネルにおける伝送速度が、通信チャネルにおける伝送速度の整数倍である場合には、スーパーフレームを構成するフレーム数を該整数の整数倍とすればよい。
【0043】
本実施形態によれば、移動局11が9600[bps]の制御チャネルでランダムアクセスを行い、4800[bps]の通信チャネルで通信を行う場合において、移動局11自身が、ランダムアクセスに使用されたフレームがスーパーフレームにおける奇数番目又は偶数番目であるかに基づいて通信チャネルのフレーム区間における前半又は後半のいずれに配置されたものであるかを認識し、通信チャネルにおけるフレームの送信を行うようにしたため、フレームのフォーマットを変更する必要なく、常に適正なタイミングで通信チャネルにおけるフレームの送信を行うことができる。
【0044】
なお、本発明は上述実施形態に限定されることなく、適宜変形して実施することができる。たとえば、上述においては、通信チャネルの伝送速度が4800[bps]で、制御チャネルの伝送速度がその2倍の9600[bps]である場合に通信チャネルへの適切な移行を図る例について説明したが、伝送速度や伝送速度の比率はこの例に限られることはない。たとえば、通信チャネルの伝送速度が1200[bps]で、制御チャネルの伝送速度がその整数倍の9600[bps]である場合等においても本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態に係る移動通信システムを示すブロック図である。
【図2】図1の通信システムにおける通信フレームのフォーマットを示す図である。
【図3】従来の移動通信システムの構成例を示すブロック図である。
【図4】図1の移動通信システムにおけるランダムアクセス時のフレームのタイミングを示す図である。
【図5】図3の移動通信システムにおけるランダムアクセス時のフレームのタイミングを示す図である。
【符号の説明】
【0046】
11,31:移動局、12,32:基地局、41〜58:フレーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の移動局と、各移動局間の通信を中継し、各移動局の送信権を管理する基地局とを備え、各移動局及び基地局間の通信は、第1の伝送速度による制御チャネル及び第2の伝送速度による通信チャネルを介して所定のフレームを同期させながら無線により送受することにより行われ、前記送信権の要求及び付与は前記制御チャネルを介してランダムアクセスにより行われ、各移動局間の通信は前記通信チャネルを介して行われる通信システムであって、
各移動局が前記制御チャネルを介し、前記送信権を要求するフレームを送信し、これに応答して前記基地局が該要求を許可するフレームを該移動局に送信し、これに応じて該移動局が前記通信チャネルを介してフレームの送信を開始するときに、該フレームの送信タイミングを、前記通信チャネルにおける適正なタイミングとなるように補正するタイミング補正手段を具備することを特徴とする通信システム。
【請求項2】
複数の移動局との間で第1の伝送速度による制御チャネル及び第2の伝送速度による通信チャネルを介して所定のフレームを同期させながら送受する無線通信手段を備え、前記制御チャネルを介して各移動局の送信権を管理するとともに、前記通信チャネルを介して各移動局間の通信を中継する基地局装置であって、
ランダムアクセスによる前記送信権を要求するフレームを前記制御チャネルを介して各移動局から受信し、これに応答して可能な場合に該要求を許可するフレームを該移動局に送信するとともに、その際、前記要求フレームを受信したタイミングに基づき、前記通信チャネルにおいて該移動局がフレームの送信を開始すべきタイミングに関する情報を、送信するフレームに含めることを特徴とする基地局装置。
【請求項3】
所定の基地局との間で第1の伝送速度による制御チャネル及び第2の伝送速度による通信チャネルを介して所定のフレームを同期させながら送受する無線通信手段を備え、前記制御チャネルを介して前記基地局から送信権を取得するとともに、前記通信チャネルを介して他の移動局との間の通信が前記基地局により中継される移動局装置であって、
ランダムアクセスによる前記送信権を要求するフレームを前記制御チャネルを介して前記基地局に送信し、これに応答して前記基地局が送信した該要求を許可するフレームを受信し、その後、該許可フレームに含まれる前記通信チャネルにおけるフレームの送信タイミングに関する情報に基づいたタイミングで前記通信チャネルにおけるフレームの送信を行うことを特徴とする移動局装置。
【請求項4】
前記第1伝送速度は前記第2伝送速度の整数倍であることを特徴とする請求項2又は3に記載の装置。
【請求項5】
前記送信タイミングに関する情報は、前記要求フレームが、前記通信チャネルのフレーム区間におけるどの位置に配置されているかを示す情報であることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
所定の基地局との間で第1の伝送速度による制御チャネル及び第2の伝送速度による通信チャネルを介して所定のフレームを同期させながら送受する無線通信手段を備え、前記制御チャネルを介して前記基地局から送信権を取得するとともに、前記通信チャネルを介して他の移動局との間の通信が前記基地局により中継される移動局装置であって、
前記第1伝送速度は前記第2伝送速度の整数倍であり、
前記制御チャネルのフレームはスーパーフレームを構成しており、
前記スーパーフレームを構成するフレーム数は前記整数の整数倍であり、
移動局装置は、前記スーパーフレームを構成する各フレームを受信する毎に、各フレームの前記スーパーフレームにおける順番をカウントしており、
移動局装置は、ランダムアクセスによる前記送信権を要求するフレームを前記制御チャネルを介して前記基地局に送信し、これに応答して前記基地局が送信した該要求を許可するフレームを受信し、その後、前記スーパーフレームのカウント値に基づき、前記通信チャネルにおけるフレームの送信タイミングを認識し、該タイミングにおいて、前記通信チャネルにおけるフレームの送信を行うことを特徴とする移動局装置。
【請求項7】
複数の移動局と、各移動局間の通信を中継し、各移動局の送信権を管理する基地局とを備え、各移動局及び基地局間の通信は、第1の伝送速度による制御チャネル及び第2の伝送速度による通信チャネルを介して所定のフレームを同期させながら無線により送受することにより行われ、前記送信権の要求及び付与は前記制御チャネルを介してランダムアクセスにより行われ、各移動局間の通信は前記通信チャネルを介して行われる通信システムにおける通信方法であって、
各移動局が前記制御チャネルを介し、前記送信権を要求するフレームを送信し、これに応答して前記基地局が該要求を許可するフレームを該移動局に送信し、これに応じて該移動局が前記通信チャネルを介してフレームの送信を開始するときに、該フレームの送信タイミングを、前記通信チャネルにおける適正なタイミングとなるように補正することを特徴とする通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−153022(P2009−153022A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330649(P2007−330649)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】