説明

通信システム、通信方法および制御装置

【課題】移動局が移動中であっても、キャリア・アグリゲーションを利用した通信を安定的に行うことのできる通信システム、通信方法および制御装置を提供する。
【解決手段】通信システムは、移動局と、送信すべきデータを異なる周波数の複数の無線信号に分割して移動局へ送信する分割送信モードを有する複数の基地局と、制御手段とを含む。基地局は、分割送信モードにおいて、制御手段からの指令に従って、移動局との通信を制御するための制御情報を含む第1の無線信号を生成する主周波数を設定するともに、制御情報を含まない第2の無線信号を生成する副周波数を設定する。制御手段は、移動局の挙動を取得する手段と、分割送信モードにある基地局および他の基地局のそれぞれのセルの位置関係と移動局の挙動とに基づいて、主周波数を決定する手段とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データを異なる周波数の複数の無線信号に分割して送信可能な通信システム、通信方法および制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、3GPP(Third Generation Partnership Project)は、次世代通信方式である、LTE(Long Term Evolution:(第3世代の)長期進化)について仕様化を進めている。さらに、LTEを発展させた規格であるLTE−A(LTE-Advanced)についても仕様化の検討が行われている。
【0003】
LTE−Aでは、LTEに比較してより高速かつ大容量の通信を実現することが要求されている。そのため、LTE−Aは、LTEに比較してより広帯域な周波数範囲をサポートすることとされている。現在までの検討によれば、LTEの最大送信帯域幅が20MHzであるのに対して、LTEの最大送信帯域幅を100MHzまで拡張されることとされている。
【0004】
しかしながら、世界各国の電波利用状況を鑑みると、連続した広帯域の周波数範囲をLTE−A用として確保することは容易ではない。また、LTEとのバックワード・コンパチビリィティ(後方互換性)を可能な限り維持する必要もある。そこで、キャリア・アグリゲーション(Carrier Aggregation;CA)という無線通信技術の導入が検討されている。このキャリア・アグリゲーションでは、LTEの最大送信帯域幅である20MHzに相当するキャリアを複数まとめて利用することで、最大送信帯域幅を100MHzまで拡張する。このような20MHzまでのキャリアは、コンポーネントキャリア(Component Career;CC)と称される。
【0005】
このようなキャリア・アグリゲーションを用いることで、基地局と移動局(端末:User Equipment)との間で高速かつ大容量の通信を実現する。なお、このキャリア・アグリゲーションについては、3GPP RAN1#53b会合にて合意された(非特許文献1の5章参照)。現在、キャリア・アグリゲーションに関して、シグナリング、チャネル配置、マッピングなどの詳細仕様について検討が進められている。
【0006】
キャリア・アグリゲーションを利用した通信で使用されるコンポーネントキャリアとして、DL(Down Link;下りリンク)コンポーネントキャリアセット(以下「DL−CCセット」とも略称する。)、および、UL(Up Link;上りリンク)コンポーネントキャリアセット(以下「UL−CCセット」とも略称する。)が定義されている。
【0007】
このうち、DL−CCセットは、端末固有(UE specific)で通信に使用されるキャリアであり、端末(ユーザ)毎に使用すべき1つまたは複数のコンポーネントキャリアが基地局により指定される。このDL−CCセットでは、キャリア・アグリゲーションを実現するための制御情報が1つのコンポーネントキャリアに割当てられる。
【0008】
非特許文献2の7章参照に示されるように、端末へのデータ送信に加えて、キャリア・アグリゲーションを実現するための制御情報の送信を担当するセルはPCell(Primary serving Cell)と定義され、データ送信のみを担当するセルはSCell(Secondary serving Cell)と定義される。また、PCellに対応するコンポーネントキャリアはPCC(Primary Component Carrier)と定義され、SCellに対応するコンポーネントキャリアはSCC(Secondary Component Carrier)と定義される。
【0009】
上述したように、キャリア・アグリゲーションを実現するための制御情報はPCCにのみ含まれることになる。そのため、移動局と基地局との間で、PCCおよびSCCを用いたキャリア・アグリゲーションを利用した通信中に、PCCをハンドオーバーする場合には、PCCのハンドオーバーに伴って、一旦SCCをdeactivation(不活性化)して、SCCを利用した通信を終了することとされている。この内容は、3GPP RAN2#70bis会合において合意された。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】3GPP Organizational Partners, "3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Radio Access Network; Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA); Further advancements for E-UTRA physical layer aspects (Release 9)", 3GPP TS 36.814 V9.0.0 (2010-03), Section 5
【非特許文献2】3GPP Organizational Partners, "3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Radio Access Network; Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA) and Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network (E-UTRAN); Overall description; Stage 2 (Release 10)", 3GPP TS 36.300 V10.1.0 (2010-09), Section 7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、移動局と基地局との間で、PCCおよびSCCを用いたキャリア・アグリゲーションを利用した通信中に、PCCをハンドオーバーする場合には、PCCのハンドオーバーに伴って、一旦SCCをdeactivationすることになっている。
【0012】
一般的に、ハンドオーバーなどの通信制御は、通信中の無線伝搬路の品質などに基づいて行われる。より具体的には、無線伝搬路の品質が最も良いセルへハンドオーバーするように制御が行なわれる。しかしながら、あるタイミングで無線伝搬路の品質が最も良いセルにハンドオーバーしたとしても、移動局が移動中であれば、その移動方向とハンドオーバー先のセルの配置状況や大きさなどとの関係から、すぐ別のセルへのハンドオーバーが必要となる場合もある。このようにハンドオーバーが頻繁に発生する場合には、SCCのactivation(活性化)の動作とdeactivationの動作とが頻繁に発生することになり。その結果、通信速度が低下してしまう。
【0013】
そこで、本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、移動局が移動中であっても、キャリア・アグリゲーションを利用した通信を安定的に行うことのできる通信システム、通信方法および制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のある局面に従う通信システムは、移動局と、送信すべきデータを異なる周波数の複数の無線信号に分割して移動局へ送信する分割送信モードを有する複数の基地局と、制御手段とを含む。基地局は、分割送信モードにおいて、制御手段からの指令に従って、移動局との通信を制御するための制御情報を含む第1の無線信号を生成する主周波数を設定するともに、制御情報を含まない第2の無線信号を生成する副周波数を設定する。制御手段は、移動局の挙動を取得する手段と、分割送信モードにある基地局および他の基地局のそれぞれのセルの位置関係と移動局の挙動とに基づいて、主周波数を決定する手段とを含む。
【0015】
好ましくは、制御手段は、移動局の挙動として移動局の移動経路を取得するとともに、当該取得した移動経路と複数の基地局のそれぞれのセルの大きさとに応じて、主周波数を決定する。
【0016】
さらに好ましくは、制御手段は、移動局の移動経路に基づいて、移動局が通過する予定のセルを推定することで、主周波数を決定する。
【0017】
あるいは、さらに好ましくは、制御手段は、移動局が移動経路に沿って移動した場合に、セル間のハンドオーバー回数が少なくなるように、主周波数を決定する。
【0018】
好ましくは、制御手段は、より大きなセルに対応する周波数を優先して主周波数として決定する。
【0019】
好ましくは、制御手段は、移動局の挙動として移動局の移動速度を取得するとともに、当該取得した移動速度と複数の基地局のそれぞれのセルの大きさとに応じて、主周波数を決定する。
【0020】
さらに好ましくは、制御手段は、移動局の移動速度が大きいほど、より大きなセルに対応する周波数を主周波数として決定する。
【0021】
好ましくは、制御手段は、取得した移動局の挙動と移動局の挙動の履歴とを比較することで、主周波数を決定する。
【0022】
好ましくは、基地局は、第1の周波数で第1のセル範囲を提供し、第2の周波数で第1のセル範囲とは異なる大きさを有する第2のセル範囲を提供する。
【0023】
好ましくは、通信システムは、複数の基地局とネットワークとを接続する中継装置をさらに含む。中継装置が制御手段として機能する。
【0024】
この発明の別の局面に従えば、移動局と、送信すべきデータを異なる周波数の複数の無線信号に分割して移動局へ送信する分割送信モードを有する複数の基地局とを含む通信システムにおける通信方法を提供する。基地局は、分割送信モードにおいて、移動局との通信を制御するための制御情報を含む第1の無線信号を生成する主周波数を設定するともに、制御情報を含まない第2の無線信号を生成する副周波数を設定する。通信方法は、移動局の挙動を取得するステップと、分割送信モードにある基地局および他の基地局のそれぞれのセルの位置関係と移動局の挙動とに基づいて、主周波数を決定するステップとを含む。
【0025】
この発明のさらに別の局面に従えば、移動局と、送信すべきデータを異なる周波数の複数の無線信号に分割して移動局へ送信する分割送信モードを有する複数の基地局とを含む通信システムに適合される制御装置を提供する。基地局は、分割送信モードにおいて、制御装置からの指令に従って、移動局との通信を制御するための制御情報を含む第1の無線信号を生成する主周波数を設定するともに、制御情報を含まない第2の無線信号を生成する副周波数を設定する。制御装置は、移動局の挙動を取得する手段と、分割送信モードにある基地局および他の基地局のそれぞれのセルの位置関係と移動局の挙動とに基づいて、主周波数を決定する手段とを含む。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、移動局が移動中であっても、キャリア・アグリゲーションを利用した通信を安定的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態に従う通信システムの構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態に従う通信システムにおいて利用される基地局のブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に従う通信システムにおいて利用される移動局のブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態に従う通信システムにおいて利用されるコアネットワーク装置のブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態に従う通信システムにおけるキャリア・アグリゲーションおよびそのハンドオーバーについて説明するための図である。
【図6】図5に示すセル配置においてPCC設定に依存するハンドオーバー発生状況の相違を説明するための図である。
【図7】本発明の実施の形態に従うコアネットワーク装置のデータベースに格納される鉄道路線図データおよび幹線道路データの一例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に従うコアネットワーク装置のデータベースに格納されるセルエッジ位置情報の一例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態に従う通信システムにおいて生成されるハンドオーバーパターンの一例を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態に従う通信システムにおける処理手順を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明はこれら実施の形態に何ら限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施可能である。また、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0029】
<1.概要>
本実施の形態に従う通信システムは、移動局の挙動(典型的には、移動局の移動手段、移動局の予想される移動経路、移動局の移動速度、移動局の移動履歴など)に応じて、各基地局が移動局に対して、PCCを生成する周波数(主周波数)として割当てるべき周波数を決定する。すなわち、移動局の移動経路に基づいて、移動局が通過するセルを特定するとともに、移動局の移動に伴って生じるハンドオーバーの回数がより少なくなるように、PCCを生成する周波数(主周波数)が設定される。
【0030】
<2.システム構成>
まず、本発明の実施の形態に従う通信システムの構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態に従う通信システムの構成を示す模式図である。
【0031】
図1を参照して、本実施の形態に従う通信システムは、複数の基地局100と、移動局200と、複数の基地局100とコアネットワークNWとを接続するコアネットワーク装置300とを含む。
【0032】
基地局100の各々は、基本的なコンポーネントとして、受信アンテナ111,121と、受信部112,122と、送信アンテナ131,141と、送信部132,142と、制御部150とを含む。
【0033】
移動局200は、基本的なコンポーネントとして、受信アンテナ211,221と、受信部212,222と、送信アンテナ231,241と、送信部232,242と、制御部250とを含む。
【0034】
図1には、基地局100と移動局200との間で、下りリンクおよび上りリンクのいずれにおいても、キャリア・アグリゲーションを利用した通信が行なわれている例を示す。すなわち、キャリア・アグリゲーションを利用した通信中には、基地局100は、20MHz以下の帯域幅となる複数の下りリンクコンポーネントキャリア(DL−CC)を用いて移動局200へデータを送信する。また、移動局200は、同様に20MHz以下の帯域幅となる複数の上りリンクコンポーネントキャリア(UL−CC)を基地局100へ送信する。なお、上りリンクおよび下りリンクのそれぞれにおいて、1つのコンポーネントキャリアを用いてデータの送受信を行うこともできる(通常の通信モード)。
【0035】
ここで、複数の下りリンクコンポーネントキャリア(DL−CC)は、2種類のコンポーネントキャリアPCCおよびSCCを含む。また、複数の上りリンクコンポーネントキャリア(UL−CC)についても、2種類のコンポーネントキャリアPCCおよびSCCを含む。図1においては、説明の便宜上、基地局100および移動局200における送信部および受信部の各々に対して、PCCを送信または受信する場合には「P」を付し、SCCを送信または受信する場合には「S」を付している。
【0036】
また、下りリンクコンポーネントキャリアのうち、PCCは下り周波数Iを使用し、SCCは下り周波数IIを使用する。上りリンクコンポーネントキャリアのうち、PCCは上り周波数Iを使用し、SCCは上り周波数IIを使用する。
【0037】
キャリア・アグリゲーションを利用した通信中においては、基地局100の制御部150が、主としてキャリア・アグリゲーションに関する制御を行う。より具体的には、制御部150は移動局200へ送信すべきデータを分割し、分割された一方のデータにキャリア・アグリゲーションに必要な制御情報を付加して送信部132へ出力し、分割された他方のデータを送信部142へ出力する。また、制御部150は、送信部132および142に対して、無線信号を生成する周波数を指示する(図1に示す例では、それぞれ下り周波数IおよびII)。
【0038】
送信部132および142の各々は、制御部150からの情報に対して、符号化処理、変調処理およびアップコンバート処理などを行うことで無線信号(コンポーネントキャリア)を生成し、それぞれに接続された送信アンテナ131および141から移動局200へ放射する。
【0039】
一方、移動局200においては、受信部212および222がそれぞれに接続された受信アンテナ211および221を通じて基地局100からの無線信号を受信する。受信部212および222の各々は、受信した無線信号に対して、ダウンコンバート処理および復調処理を行うことでデータを生成し、制御部250へ出力する。
【0040】
制御部250は、複数のコンポーネントキャリアのそれぞれから得られたデータを結合することで、基地局100から送信されたデータを復元する。
【0041】
本実施の形態に従う通信システムでは、コアネットワーク装置300がそれぞれの基地局100におけるキャリア・アグリゲーションの実施を制御する。より具体的には、コアネットワーク装置300は、挙動決定ロジック311およびキャリア設定ロジック321を含む。
【0042】
挙動決定ロジック311は、後述するような各種の方法を用いて、移動局200の挙動を取得する。挙動決定ロジック311は、取得した移動局200の挙動をキャリア設定ロジック321へ出力する。キャリア設定ロジック321は、キャリア・アグリゲーションを実施する基地局100および他の基地局100のそれぞれのセルの位置関係と移動局200の挙動とに基づいて、主として、PCCを生成する周波数(主周波数)を決定する。そして、キャリア設定ロジック321は、決定した主周波数を基地局100へ通知する。すなわち、キャリア設定ロジック321は、移動局200の挙動(典型的には、移動局200の移動手段、移動局200の予想される移動経路、移動局200の移動速度、移動局200の移動履歴など)に応じて、各基地局100が対象の移動局200へ割当てるべき周波数を決定し、当該決定した周波数を基地局100へ通知する。
【0043】
<3.基地局100の構成>
次に、本発明の実施の形態に従う通信システムにおいて利用される基地局100の構成について説明する。図2は、本発明の実施の形態に従う通信システムにおいて利用される基地局100のブロック図である。
【0044】
図2を参照して、基地局100の各々は、上述したように、受信アンテナ111,121と、受信部112,122と、送信アンテナ131,141と、送信部132,142とを含む。基地局100の制御部150としては、中央処理部160と、信号処理部130と、上位ネットワークインターフェイス(I/F)172と、制御インターフェイス(I/F)174とを含む。
【0045】
中央処理部160は、主たる構成要素として、プロセッサと、プロセッサで実行されるプログラムを保持するための不揮発性メモリと、ワークメモリとして機能する揮発性メモリとを含む。特に、中央処理部160は、CA実施ロジック162を含む。このCA実施ロジック162は、典型的には、中央処理部160がプログラムを実行することで提供される。例えば、CA実施ロジック162に対応するモジュールが予め不揮発性メモリに記憶されており、中央処理部160がこれらのモジュールを読出して実行することで後述するような機能が提供される。
【0046】
CA実施ロジック162は、信号処理部130と連係して受信データおよび送信データに対する信号処理を行うとともに、送信部132,142および受信部112,122が使用するコンポーネントキャリアの周波数の制御といった、基地局100の通信に関する各種の制御を司る。本実施の形態に従う通信システムにおいては、後述するように、コアネットワーク装置300からコンポーネントキャリアとして使用すべき周波数が指定されるので、CA実施ロジック162は、この指定された周波域を用いて、キャリア・アグリゲーションを実施する。
【0047】
信号処理部130は、管理するセル範囲内の移動局200との間で遣り取りされる無線信号を処理する。より具体的には、信号処理部130は、中央処理部160などから与えられる内部指令に従って、移動局200への送信データを送信部132,142へ出力する。
【0048】
上位ネットワークインターフェイス172は、自局を管理するコアネットワーク装置300との間でユーザデータ、制御情報、および管理情報などを遣り取りする。特に、コアネットワーク装置300から送信されるキャリア・アグリゲーションにおいて使用する周波数を受信し、中央処理部160へ出力する。同様に、制御インターフェイス174は、他の基地局100との間で制御情報を遣り取りする。
【0049】
<4.移動局200の構成>
次に、本発明の実施の形態に従う通信システムにおいて利用される移動局200の構成について説明する。図3は、本発明の実施の形態に従う通信システムにおいて利用される移動局200のブロック図である。
【0050】
図3を参照して、移動局200は、上述したように、受信アンテナ211,221と、受信部212,222と、送信アンテナ231,241と、送信部232,242と、制御部250とを含む。受信アンテナ211,221および送信アンテナ231,241は、筐体260に設けられる。移動局200の制御部250としては、中央処理部210と、信号処理部230とを含む。
【0051】
中央処理部210は、主たる構成要素として、プロセッサと、プロセッサで実行されるプログラムを保持するための不揮発性メモリと、ワークメモリとして機能する揮発性メモリとを含む。中央処理部210は、信号処理部230と連係して受信データおよび送信データに対する信号処理を行うとともに、受信部212,222および送信部232,242が使用するキャリア周波数の制御といった、移動局200の通信に関する各種の制御を司る。
【0052】
信号処理部230は、自装置が存在するセル範囲を管理する基地局100との間で遣り取りされる無線信号を処理する。より具体的には、信号処理部230は、中央処理部210などから与えられる内部指令に従って、基地局100への送信データを送信部232,242へ出力する。
【0053】
図3に示す例では、理解を容易化するために、送信部および受信部の各々とアンテナとが一対一になっている構成を示すが、受信部212,222および送信部232,242とアンテナとの間にデュプレクサを設けることで、送信アンテナと受信アンテナとを共通化してもよい。
【0054】
なお、中央処理部210によって提供される機能の一部または全部を専用のハードウェア(集積回路)として実装してもよい。この場合には、中央処理部210によって提供される機能に加えて、信号処理部230、受信部212,222、および、送信部232,242によって提供される機能の全部または一部を含めて、1チップ化してもよい。さらに、プロセッサ、メモリ、周辺デバイス用のコントローラといった部品を1チップ化したSoC(System On a Chip)を利用することもできる。
【0055】
代替の構成として、信号処理部230、受信部212,222、および、送信部232,242によって提供される機能の全部または一部をソフトウェアとして実装してもよい。この場合には、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)といった演算装置(プロセッサ)が予めインストールされた命令セットを実行することになる。
【0056】
筐体260は、さらに、受信データに含まれる各種情報を表示するための表示部270と、送信データに含まれるユーザの音声などを取得するためのマイク272と、受信データに含まれる音声データを再生するためのスピーカ274と、ユーザ操作を受付けるための入力部276とを含む。これらの部位は、典型的には、筐体260から露出するように配置される。
【0057】
さらに、筐体260には、自局の位置情報を取得するためのコンポーネントの一例であるGPS(Global Positioning System)ユニット278とを含む。このGPSユニット278によって取得された自局の現在位置は、基地局100へ通知される。
【0058】
<5.コアネットワーク装置300の構成>
次に、本発明の実施の形態に従う通信システムにおいて利用されるコアネットワーク装置300の構成について説明する。図4は、本発明の実施の形態に従う通信システムにおいて利用されるコアネットワーク装置300のブロック図である。
【0059】
図4を参照して、コアネットワーク装置300は、中央処理部310と、データベース320と、複数のインターフェイス330とを含む。
【0060】
中央処理部310は、主たる構成要素として、プロセッサと、プロセッサで実行されるプログラムを保持するための不揮発性メモリと、ワークメモリとして機能する揮発性メモリとを含む。特に、中央処理部310は、上述したように、挙動決定ロジック311およびキャリア設定ロジック321を含む。これらのロジックは、典型的には、中央処理部310がプログラムを実行することで提供される。例えば、それぞれのロジックに対応するモジュールが予め不揮発性メモリに記憶されており、中央処理部310がこれらのモジュールを読出して実行することで後述するような機能が提供される。
【0061】
データベース320は、移動局200の挙動を取得するために必要な情報を保持する。例えば、移動局200を携帯するユーザが鉄道や自動車に乗って移動することを特定する場合には、データベース320は、鉄道路線図データ322と、幹線道路データ324と、セルエッジ位置情報326などを保持することになる。
【0062】
鉄道路線図データ322は、鉄道線路および駅舎などの位置情報を規定するものである。幹線道路データ324は、交通の往来の多い道路などの位置情報を規定するものである。セルエッジ位置情報326は、各基地局100が提供するセルのエッジに関する情報を定義する。
【0063】
このような形態に限られず、データベース320は、移動局200の挙動を取得するために必要な情報、すなわち、移動局200(を携帯しているユーザ)の移動経路や移動手段を特定するための情報を保持する。なお、図4には、コアネットワーク装置300がデータベース320を搭載している構成を示すが、必ずしもデータベース320自体を搭載しておく必要はない。代替的には、ネットワークを通じて、外部のサーバ装置などから必要な情報を取得するようにしてもよい。
【0064】
インターフェイス330の各々は、基地局100との間でユーザデータ、制御情報、および管理情報などを遣り取りする。
【0065】
<6.コンポーネントキャリアとして使用される周波数の決定処理>
(6.1 概要)
次に、図5を参照して、本実施の形態に従う通信システムにおいて提供されるキャリア・アグリゲーションについて説明する。図5は、本発明の実施の形態に従う通信システムにおけるキャリア・アグリゲーションおよびそのハンドオーバーについて説明するための図である。
【0066】
LTEおよびLTE−Aでは、周波数分割多重(Frequency Division Duplex:FDD)方式および時間分割多重(Time Division Duplex:TDD)方式をサポートすることになっているが、以下に説明する通信方法は、FDD方式に従う例を示す。FDD方式を採用した場合には、下りリンクコンポーネントキャリア(DL−CC)および上りリンクコンポーネントキャリア(UL−CC)とは、それぞれ異なる周波数が割当てられる。
【0067】
さらに、下りリンクコンポーネントキャリア(DL−CC)に含まれる1つ以上のコンポーネントキャリアについても、連続した周波数帯域ではなく、離散的に割当てられた複数の周波数帯域が割当てられるものとする。図5に示す例では、周波数Iのコンポーネントキャリアと、周波数IIのコンポーネントキャリアとが割当てられるとする。より具体的には、基地局100−1から100−3の各々は、その周辺に、周波数Iのセルを3つ、および、周波数IIのセルを3つそれぞれ形成しているものとする。
【0068】
また、周波数Iのセル範囲と周波数IIのセル範囲とは互いに重なって配置されており、各セルの大きさが異なっている場合を示す。すなわち、基地局100は、周波数Iで第1のセル範囲を提供し、周波数IIで第1のセル範囲とは異なる大きさを有する第2のセル範囲を提供する。
【0069】
このように利用可能な周波数帯域は、各国の電波行政などに従ってシステム的に規定される。例えば、周波数Iとしては、2GHz帯(アップリンク:1920MHz−1980MHz/ダウンリンク:2110MHz−2170MHz)のいずれかの周波数が割当てられ、周波数IIとしては、800MHz帯(アップリンク:824MHz−849MHz/ダウンリンク:869MHz−894MHz)のいずれかの周波数が割当てられる。
【0070】
なお、周波数に応じて無線信号の伝搬特性や減衰特性は異なるので、上述のような互いに異なる複数の周波数帯域を用いた場合には、同一の基地局100がカバーするセル範囲も異なったものとなり得る(図5に示す「周波数Iのセル範囲」および「周波数IIのセル範囲」)。
【0071】
上述のような状況下において、例えば、移動局200を携帯するユーザがある路線を走行する列車で移動する場合を考える。
【0072】
図5に示す通信システムにおいては、列車の路線410の両側に基地局100−1〜100−3が設けられており、それぞれの基地局100が周波数Iのセル(実線)および周波数IIのセル(破線)を提供する。路線410を走行する列車(および、移動局200)は、基地局100−1が提供するセル、基地局100−2が提供するセル、および、基地局100−3が提供するセルをその順序で通過することになる。すなわち、これらのセルを跨るタイミングにおいて、ハンドオーバーが生じる。
【0073】
上述したように、基地局100と移動局200との間で、キャリア・アグリゲーションを利用した通信が行われていると、データに加えて、キャリア・アグリゲーションに関する制御情報を伝送するためのコンポーネントキャリア(PCC)と、データのみを伝送するSCCとが設定される。また、PCCに対してハンドオーバーがなされると、対応するSCCは、一旦deactivation(不活性化)される。
【0074】
PCCに対するハンドオーバーが頻繁に生じる場合とには、SCCについても、activation(活性化)との動作とdeactivationの動作とが頻繁に発生することになり。その結果、通信速度が低下してしまう。
【0075】
したがって、キャリア・アグリゲーションによる高速通信のメリットを享受するためには、少なくとも、PCCに対するハンドオーバーについては、その発生頻度を可能な限り少なくすることが好ましい。
【0076】
再度図5を参照して、同一の基地局100が周波数別に異なる大きさ(セル半径)のセルを提供し、かつ、いずれの周波数についてもPCCを割当てることが可能な場合には、キャリア・アグリゲーションによる高速かつ大容量の通信を実現するために、いずれの周波数(セル)をPCCとして用いるのかを最適化することが好ましい。
【0077】
図6は、図5に示すセル配置においてPCC設定に依存するハンドオーバー発生状況の相違を説明するための図である。図6(a)および図6(b)には、移動局200を携帯したユーザが搭乗している列車が路線410を走行する場合における、ハンドオーバー動作(図6においては「HO」と記す)を示す。図6(a)には、基地局100−1〜100−3において、ハンドオーバー直後には、PCCとして周波数IIを割当てた場合の例を示し、図6(b)には、基地局100−1〜100−3において、ハンドオーバー直後には、PCCとして周波数Iを割当てた場合の例を示す。
【0078】
図5に示すように、周波数IIのセル範囲は、周波数Iのセル範囲に比較して小さい。そのため、基地局100−1が移動局200に対して周波数IIをPCCとして割当てた場合、移動局200が基地局100−2のセルの方向に移動すると、移動局200が基地局100−2のセル範囲に到達する前に、基地局100−1が提供する周波数Iのセルにハンドオーバーせざるを得ない。その後、基地局100−2が提供するセル圏内に移動局200が到達すると、基地局100−2が提供する周波数IIのセルへのハンドオーバーが生じる。基地局100−2が提供するセルにおいても、基地局100−1と同様のハンドオーバー動作が実行される。
【0079】
その結果、基地局100−1〜100−3において、ハンドオーバー直後にPCCとして周波数Iを割当てるとした場合には、基地局100の間でのハンドオーバーに加えて、同一の基地局100が提供するセルの間でのハンドオーバーも生じることになる。
【0080】
これに対して、図6(b)に示すように、基地局100−1〜100−3において、ハンドオーバー直後にPCCとして周波数Iを割当てるとした場合には、同一の基地局100が提供するセルの間でハンドオーバーをする必要がない。そのため、ハンドオーバー直後にPCCとして周波数Iを割当てるとした場合には、周波数IIを割当てるとした場合に比較して、ハンドオーバーの発生頻度を少なくすることができる。その結果、SCCのactivationおよびdeactivationの発生頻度についても、少なくすることができ、その結果、キャリア・アグリゲーションに備わっている本来の通信速度を実現できる。
【0081】
上述したように、本実施の形態に従う通信システムにおいては、移動局200の挙動を取得し、キャリア・アグリゲーションを実行中/実行準備中の基地局100および他の基地局100のそれぞれのセルの位置関係と移動局200の挙動とに基づいて、PCCとして用いるべき周波数を決定する。
【0082】
(6.2 移動局の挙動の決定手法)
上述したようなPCCに割当てる周波数の最適化に利用できる情報であれば、取得する移動局200の挙動としてはどのようなものであってもよい。本実施の形態に従う通信システムにおいては、典型例として、移動局200の移動手段、移動局200の予想される移動経路、移動局200の移動速度、および、移動局200の移動履歴などを取得する。
【0083】
まず、移動局200の移動手段、および、移動局200の予想される移動経路については、移動局200の現在位置を示す情報に基づいて決定することができる。典型的には、移動局200は、自局に搭載されたGPSユニット278によって取得された現在位置を基地局100へ送信する。この現在位置を送信するタイミングは、予め設定された所定周期であってもよいし、予め特定の時刻が設定(スケジューリング)されていてもよい。あるいは、基地局100が何らかのイベントに応じて現在位置の送信を移動局200に対して要求してもよい。基地局100は、移動局200から現在位置を受信すると、当該現在位置をコアネットワーク装置300へ送信する。
【0084】
コアネットワーク装置300は、移動局200の現在位置、および、現在位置の時間的変化に基づいて、移動局200の移動手段および/または移動経路を判断する。より具体的には、コアネットワーク装置300は、そのデータベース320に鉄道路線図データ322および幹線道路データ324を保持しており(図4)、移動局200の位置情報とこれらのデータと照合することで、移動局200の移動手段および/または移動経路を判断する。
【0085】
図7は、本発明の実施の形態に従うコアネットワーク装置300のデータベース320に格納される鉄道路線図データ322および幹線道路データ324の一例を示す図である。コアネットワーク装置300の挙動決定ロジック311(図1)は、図7に示す鉄道路線図データ322および/または幹線道路データ324を参照して、移動局200の現在位置(緯度および経度)に対応する地点が存在するか否か、ならびに、移動局200がいずれかの経路に沿って移動しているか否かを判断する。すなわち、挙動決定ロジック311は、移動局200の位置情報に基づいて、移動局200を携帯するユーザが列車で移動しているのか、あるいは、道路上を移動しているのかを判断する。さらに、移動局200の移動速度を算出し、移動局200を携帯しているユーザが徒歩で移動しているのか、あるいは、自動車で移動しているのかを判断してもよい。
【0086】
このように移動局200の移動手段および/または移動経路が特定されると、移動局200の挙動として、移動局200の(将来的な)移動経路が特定される。
【0087】
なお、移動局200の現在位置の取得形態としては、上述した移動局200に内蔵のGPSユニット278を用いる方法に代えて、移動局200を携帯するユーザが利用する交通手段からの情報を用いてもよい。例えば、位置測位システムであるGPSを列車に搭載するとともに、列車内に現在位置を示す無線信号を放送しておき(例えば、無線LAN(Local Area Network)等によって)、この無線信号を通じて列車の現在位置を受信した基地局100が当該列車の現在位置を自局の現在位置として、基地局100へ送信するような構成を採用できる。
【0088】
あるいは、移動局200に移動手段を利用するための付加機能(典型的には、交通機関を利用するための決済機能など)が搭載されている場合には、当該決済機能が利用されたことに応答して、当該決済処理を行う処理主体が利用先の交通機関などを基地局100へ通知するようにしてもよい。
【0089】
(6.3 PCC周波数の決定手法)
上述したように、移動局200の挙動として移動局200の移動経路が取得される。そして、取得された移動経路と複数の基地局100が提供するそれぞれのセルの大きさとに応じて、PCCに用いる周波数(主周波数)を決定する。より具体的には、移動局200の移動経路に基づいて、移動局200が通過する予定のセルを推定することで、PCCに用いる周波数(主周波数)を決定する。このとき、移動局200が当該推定した移動経路に沿って移動した場合に、セル間のハンドオーバー回数が少なくなるように、PCCに用いる周波数(主周波数)を決定する。
【0090】
コアネットワーク装置300のキャリア設定ロジック321(図1)は、移動局200の移動経路とセルの配置位置および大きさとを比較することで、移動局200がセル間をどのようにハンドオーバーしていくのかを判断する。
【0091】
図8は、本発明の実施の形態に従うコアネットワーク装置300のデータベース320に格納されるセルエッジ位置情報326の一例を示す図である。典型的には、キャリア設定ロジック321は、図8に示すセルエッジ位置情報326を参照して、周波数別のセルの配置位置および大きさを把握する。より具体的には、キャリア設定ロジック321は、図7に示す鉄道路線図データ322または幹線道路データ324に示される対応する移動経路上の位置(緯度および経度)と、図8に示すセルエッジ位置情報326に示されるセルエッジとの交点を探索することで、移動局200が通過予定のセルを把握する。
【0092】
上述したように、移動局200を携帯しているユーザが利用する交通手段を特定できれば、移動局200がどのようにハンドオーバーしていくのかを一意的に判断することができる。
【0093】
さらに、キャリア設定ロジック321は、特定された移動経路に沿って移動局200が移動するとした場合に、当該移動経路に応じて、PCCのハンドオーバー回数が最も少なくなるように、PCCに割当てる周波数を決定する。なお、このようなPCCのハンドオーバー回数を最も少なくする周波数(セル)の割当て方法については、公知の最適化手法を採用することができる。
【0094】
上述のようなハンドオーバー回数を最も少なくする周波数の割当てパターンは、移動局200が実際に移動する前に決定することができる。そのため、この算出結果は、ハンドオーバーパターンとして一時的に保存される。
【0095】
図9は、本発明の実施の形態に従う通信システムにおいて生成されるハンドオーバーパターンの一例を示す図である。図9に示すように、本実施の形態に従うハンドオーバーパターンでは、移動局200が所定の移動経路に沿って移動する場合にハンドオーバーによって移り変わるセル(を提供する基地局)を示す情報が順番に定義される(「基地局番号」の欄)。一例として、図9に示すハンドオーバーパターンでは、図5に示す列車の路線410に沿って移動局200が移動する場合を示す。すなわち、初期状態の位置401は、基地局100−1が提供するセル圏内に含まれる。さらに、移動局200が位置402を経て位置403まで移動すると、移動局200は基地局100−1が提供するセルから基地局100−2が提供するセルにハンドオーバーする。さらに、基地局が位置404まで移動すると、移動局200は基地局100−2が提供するセルから基地局100−3が提供するセルにハンドオーバーする。このような一連のハンドオーバー動作にあわせて、図9に示すようなハンドオーバーパターンが生成される。
【0096】
また、図5に示す例では、いずれのセルにおいても、PCCとしては周波数Iを割当てることが好ましいので、図9の「PCC周波数」の欄には、いずれも「周波数I」が設定される。すなわち、図5に示すような構成においては、より大きな(セル半径のより大きい)セルに対応する周波数を優先して、PCCを生成する周波数(主周波数)として決定する。
【0097】
コアネットワーク装置300のキャリア設定ロジック321は、このようなハンドオーバーパターンを参照して、移動局200の移動に応答して、基地局100−1〜100−3に対してPCCに割当てるべき周波数を通知する。
【0098】
(6.4 その他の手法)
上述の決定手法では、図9に示すようなハンドオーバーパターンを決定する方法について例示したが、移動局200の移動速度に基づいて、PCCに係る周波数の割当てを行ってもよい。すなわち、移動局200の挙動として移動局200の移動速度を取得するとともに、当該取得した移動速度と複数の基地局100のそれぞれのセルの大きさとに応じて、PCCを生成する周波数(主周波数)を決定してもよい。より具体的には、移動局200の移動速度が大きいほど、より大きな(セル半径のより大きい)セルに対応する周波数を、PCCを生成する周波数(主周波数)として決定する。
【0099】
移動局200の移動速度は、移動局200の現在位置の時間的変化を基地局100で観測することで算出してもよい。あるいは、移動局200自身がその移動速度を計算し、自局の現在位置とともに基地局100へ送信するようにしてもよい。
【0100】
また、図9に示すようなハンドオーバーパターンを基本としながら、移動局200の移動速度が所定のしきい値を超えた場合に限って、より大きな(セル半径の大きい)セルに対応する周波数を、PCCを生成する周波数(主周波数)として決定するようにしてもよい。
【0101】
このように、より大きなセルに対応する周波数を、PCCを生成する周波数(主周波数)として設定することによって、1つのセルが移動局200をカバーする時間が長くなるため、移動局200の移動速度が相対的に速い場合であっても、ハンドオーバーの回数を少なくできる。
【0102】
あるいは、基地局100、移動局200およびコアネットワーク装置300のいずれかにおいて、移動局200の移動履歴(現在位置の変化および接続先のセルの変化)を保存しておき、移動局200の移動経歴に基づいてPCCの設定を決定してもよい。この場合、取得した移動局200の挙動と移動局200の挙動の履歴とを比較することで、PCCを生成する周波数(主周波数)が決定される。
【0103】
<7.処理手順>
次に、上述したような判断基準に沿って実行される処理手順について、図10を参照して説明する。図10は、本発明の実施の形態に従う通信システムにおける処理手順を示すシーケンス図である。図10に示すシーケンス図では、図5に示すように、移動局200を携帯するユーザが列車に搭乗して、路線410に沿って移動する場合を例に説明する。なお、初期状態においては、移動局200は、基地局100−1との間で通信中であるとする。
【0104】
まず、移動局200は、GPSユニット278によって取得された現在位置を基地局100(図5に示す初期位置においては、基地局100−1)へ送信する(シーケンスSQ102)。続いて、移動局200からの現在位置を受信した基地局100−1は、当該受信した現在位置をコアネットワーク装置300へ送信する(シーケンスSQ104)。
【0105】
なお、シーケンスSQ100〜104は、所定周期で繰返される。図5に示すように、移動局200は、位置401および402において、それぞれ現在位置を基地局100−1へ送信したとする。
【0106】
コアネットワーク装置300(挙動決定ロジック311)は、基地局100−1を介して移動局200から受信した現在位置に基づいて、移動局200の移動経路を判断する(シーケンスSQ106)。より具体的には、コアネットワーク装置300は、鉄道路線図データ322および幹線道路データ324とを照合することで、移動局200の現在位置および移動速度などから移動局200の移動手段を判断する。そして、コアネットワーク装置300は、移動局200の移動経路および将来的な位置を算出する。
【0107】
続いて、コアネットワーク装置300(キャリア設定ロジック321)は、算出した移動局200の移動経路および将来的な位置とセルエッジ位置情報326とを照合することで、PCCに用いる周波数(主周波数)を決定する(シーケンスSQ108)。上述したように、コアネットワーク装置300は、セル間のハンドオーバー回数が少なくなるように、PCCに用いる周波数を決定する。さらに、コアネットワーク装置300は、決定したPCCに用いる周波数と対応するセルとを関連付けたハンドオーバーパターンを作成する(シーケンスSQ110)。
【0108】
最終的に、コアネットワーク装置300は、シーケンスSQ110において作成したハンドオーバーパターンを基地局100−1〜100−3へそれぞれ送信する。すなわち、コアネットワーク装置300は、PCCとして決定された周波数を割当てるように、それぞれの基地局100−1〜100−3へ指示する。なお、ハンドオーバーパターンを通知する基地局100は、移動局200の移動経路上に存在するセルを提供する基地局のみでよい。
【0109】
各基地局100は、移動局200がそのセル圏内に存在する場合には、通知されたハンドオーバーパターンにおいて指示される周波数をPCCの周波数として当該移動局200に割当てる。図5に示す例では、基地局100−1〜100−3のいずれもが、周波数IをPCCの周波数として設定する。
【0110】
その後、自局のセル圏内に存在する移動局200がセルエッジまで移動したと判断すると、基地局100は、ハンドオーバーの処理を開始する。図5に示す例では、移動局200が位置403に近付くと、基地局100−1がハンドオーバー要求の発生を検知する(シーケンスSQ114)。続いて、基地局100−1は、ハンドオーバー先の基地局100−2との間でハンドオーバー手続を行う(シーケンスSQ116)。また、基地局100−1は、移動局200に対して、基地局100−2へのハンドオーバー指示を与える(シーケンスSQ118)。一連のハンドオーバーの処理が完了すると、移動局200は、基地局100−2との間で通信中となる(シーケンスSQ120)。
【0111】
その後、移動局200が位置404に近付くと、基地局100−2がハンドオーバー要求の発生を検知する(シーケンスSQ124)。続いて、基地局100−2は、ハンドオーバー先の基地局100−3との間でハンドオーバー手続を行う(シーケンスSQ126)。また、基地局100−2は、移動局200に対して、基地局100−3へのハンドオーバー指示を与える(シーケンスSQ128)。一連のハンドオーバーの処理が完了すると、移動局200は、基地局100−3との間で通信中となる(シーケンスSQ130)。
【0112】
<8.変形例>
本実施の形態に従う通信システムにおいては、コアネットワーク装置300がPCCを生成する周波数(主周波数)を設定する制御手段として機能する構成について例示した。しかしながら、この制御手段の全部または一部をコアネットワーク装置300以外の処理主体に配置してもよい。例えば、制御手段の一部をそれぞれの基地局100に配置することで、コアネットワーク装置300の処理負荷を低減することもできる。
【0113】
<9.利点>
上述のように、移動局200の移動経路などを特定し、コアネットワーク装置300は、それぞれの基地局100におけるセルの位置関係(セル半径およびセル位置)と移動局200の挙動とに基づいて、各基地局100においてPCCを生成する周波数(主周波数)を決定する。特に、PCCを生成する周波数としては、移動局200の移動に伴うハンドオーバー回数がより少なくなるように、設定される。
【0114】
上述したように、PCCをハンドオーバーする場合には、PCCのハンドオーバーに伴って、一旦SCCをdeactivationすることになるが、上述のようにハンドオーバー回数がより少なくなるようにPCCを生成する周波数が決定されるので、スループットの低下を抑制できる。すなわち、PCCがハンドオーバーする回数を最小化することができるので、SCCのactivation/deactivationの処理の実行回数も最初化され、キャリア・アグリゲーションの本来の通信速度の利益を享受できる。
【0115】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0116】
100,100−1〜100−3 基地局、160,210,310 中央処理部、111,121,211,221 受信アンテナ、112,122,212,222 受信部、130,230 信号処理部、131,141,231 送信アンテナ、132,142,232,242 送信部、150,250 制御部、162 CA実施ロジック、172 上位ネットワークインターフェイス、174 制御インターフェイス、200 移動局、270 表示部、272 マイク、274 スピーカ、276 入力部、278 GPSユニット、260 筐体、300 コアネットワーク装置、311 挙動決定ロジック、320 データベース、321 キャリア設定ロジック、322 鉄道路線図データ、324 幹線道路データ、326 セルエッジ位置情報、330 インターフェイス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局と、
送信すべきデータを異なる周波数の複数の無線信号に分割して前記移動局へ送信する分割送信モードを有する複数の基地局と、
制御手段とを備え、
前記基地局は、前記分割送信モードにおいて、前記制御手段からの指令に従って、前記移動局との通信を制御するための制御情報を含む第1の無線信号を生成する主周波数を設定するともに、前記制御情報を含まない第2の無線信号を生成する副周波数を設定し、
前記制御手段は、
前記移動局の挙動を取得する手段と、
前記分割送信モードにある基地局および他の基地局のそれぞれのセルの位置関係と前記移動局の挙動とに基づいて、前記主周波数を決定する手段とを含む、通信システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記移動局の挙動として前記移動局の移動経路を取得するとともに、当該取得した移動経路と前記複数の基地局のそれぞれのセルの大きさとに応じて、前記主周波数を決定する、請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記移動局の移動経路に基づいて、前記移動局が通過する予定のセルを推定することで、前記主周波数を決定する、請求項2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記移動局が前記移動経路に沿って移動した場合に、セル間のハンドオーバー回数が少なくなるように、前記主周波数を決定する、請求項2に記載の通信システム。
【請求項5】
前記制御手段は、より大きなセルに対応する周波数を優先して前記主周波数として決定する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記移動局の挙動として前記移動局の移動速度を取得するとともに、当該取得した移動速度と前記複数の基地局のそれぞれのセルの大きさとに応じて、前記主周波数を決定する、請求項1に記載の通信システム。
【請求項7】
前記制御手段は、前記移動局の移動速度が大きいほど、より大きなセルに対応する周波数を前記主周波数として決定する、請求項6に記載の通信システム。
【請求項8】
前記制御手段は、取得した前記移動局の挙動と前記移動局の挙動の履歴とを比較することで、前記主周波数を決定する、請求項1に記載の通信システム。
【請求項9】
前記基地局は、第1の周波数で第1のセル範囲を提供し、第2の周波数で前記第1のセル範囲とは異なる大きさを有する第2のセル範囲を提供する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項10】
前記通信システムは、前記複数の基地局とネットワークとを接続する中継装置をさらに備え、
前記中継装置が前記制御手段として機能する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項11】
移動局と、送信すべきデータを異なる周波数の複数の無線信号に分割して前記移動局へ送信する分割送信モードを有する複数の基地局とを含む通信システムにおける通信方法であって、前記基地局は、前記分割送信モードにおいて、前記移動局との通信を制御するための制御情報を含む第1の無線信号を生成する主周波数を設定するともに、前記制御情報を含まない第2の無線信号を生成する副周波数を設定し、前記通信方法は、
前記移動局の挙動を取得するステップと、
前記分割送信モードにある基地局および他の基地局のそれぞれのセルの位置関係と前記移動局の挙動とに基づいて、前記主周波数を決定するステップとを含む、通信方法。
【請求項12】
移動局と、送信すべきデータを異なる周波数の複数の無線信号に分割して前記移動局へ送信する分割送信モードを有する複数の基地局とを含む通信システムに適合される制御装置であって、前記基地局は、前記分割送信モードにおいて、前記制御装置からの指令に従って、前記移動局との通信を制御するための制御情報を含む第1の無線信号を生成する主周波数を設定するともに、前記制御情報を含まない第2の無線信号を生成する副周波数を設定し、
前記制御装置は、
前記移動局の挙動を取得する手段と、
前記分割送信モードにある基地局および他の基地局のそれぞれのセルの位置関係と前記移動局の挙動とに基づいて、前記主周波数を決定する手段とを備える、制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−216915(P2012−216915A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79232(P2011−79232)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】