説明

通信システムおよび通信方法

【課題】できるだけ回線に負荷をかけずに、通信装置間の回線の混雑状況を通知する。
【解決手段】第1の通信装置が、既存プロトコルに基づく送信信号を、第2の通信装置に送信し、第2の通信装置が、回線の混雑状況を計測し、第1の通信装置から送信される送信信号を受信すると、計測した混雑状況と、予め定められた判定条件とに基づいて、応答信号を生成し、生成した応答信号を、第1の通信装置に送信し、第1の通信装置が、第2の通信装置から送信される応答信号を受信し、受信した応答信号と、予め定められた判定条件とに基づいて、回線の混雑状況を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置に通信回線の混雑状況を通知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
通信回線を介して通信を行う通信装置が、その通信回線の通信速度や混雑状況を計測して通知することがある。例えば、インターネット上でこのような通信速度の測定を行うウェブサービスが公開されている。このようなウェブサービスを提供する測定サイトは、ユーザPC(Personal Computer)等の通信装置からの要求に応じて一定容量のファイルを通信装置にダウンロードさせる。通信装置は、ダウンロードにかかった時間を測定し、測定した時間とダウンロードしたファイルの容量とに基づいて通信速度を算出することができる。特許文献1には、無線通信において、基地局が無線通信エリアの輻輳状態を判定し、判定結果を無線端末に送信する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−878867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、通信装置に実際にファイルをダウンロードさせて通信速度を測定する方法では、測定用のファイル自体が通信回線の混雑要因となり、他の通信を圧迫することがあると考えられる。特許文献1の技術においても、測定結果を無線端末に送信する際に、他の通信を圧迫することがあると考えられる。このような測定は、できるだけ通信回線に負荷をかけずに行われることが望ましい。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、できるだけ回線に負荷をかけずに、通信装置間の回線の混雑状況を通知する通信システムおよび通信方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、複数の第1の通信装置と、複数の第1の通信装置と回線を介して接続された第2の通信装置とを備えた通信システムであって、第1の通信装置は、予め定められた既存プロトコルに基づく信号の送受信に応じて回線の混雑状況を判定するために定められた判定条件が記憶される第1の判定条件記憶部と、既存プロトコルに基づく送信信号を、第2の通信装置に送信する送信信号送信部と、送信部が送信した送信信号に応じて、第2の通信装置から送信される応答信号を受信し、受信した応答信号と、第1の判定条件記憶部から読み出した判定条件とに基づいて、回線の混雑状況を判定する判定部と、を備え、第2の通信装置は、判定条件が記憶される第2の判定条件記憶部と、回線の混雑状況を計測する計測部と、第1の通信装置から送信される送信信号を受信すると、計測部によって計測された混雑状況と、第2の判定条件記憶部から読み出した判定条件とに基づいて、応答信号を生成する応答信号生成部と、応答信号生成部によって生成された応答信号を、第1の通信装置に送信する応答信号送信部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、既存プロトコルに基づく信号は、論理的なアドレスを物理的なアドレスに変換するための情報を送受信する信号であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、第2の通信装置の計測部は、一定時間毎に回線の混雑状況を計測して記憶し、第2の通信装置は、計測部によって一定時間毎に新たに混雑状況が計測されると、新たに計測された混雑状況と、一定時間前に計測して記憶した前回の混雑状況とを比較し、混雑状況に差分が存在する場合、第1の通信装置に送信信号を誘起させる誘起信号を生成して第1の通信装置に送信する誘起信号送信部を備え、第1の通信装置の送信信号送信部は、第2の通信装置から送信された誘起信号を受信すると、送信信号を第2の通信装置に送信することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、判定条件は、既存プロトコルに基づく要求信号である送信信号が送信されてから、送信信号に対する応答信号が送信されるまでの経過時間に応じて回線の混雑状況を判定する判定条件であり、第1の通信装置の判定部は、送信信号送信部が送信信号を送信してから、第2の通信装置から送信される応答信号を受信するまでの経過時間に応じて、回線の混雑状況を判定し、第2の通信装置の応答信号生成部は、第1の通信装置から送信される送信信号を受信すると、計測部によって計測された混雑状況に応じた、第2の判定条件記憶部から読み出した判定条件によって定められた経過時間が経過した後、応答信号を生成することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、判定条件は、応答信号に含まれる混雑状況に基づいて回線の混雑状況を判定する判定条件であり、第1の通信装置の判定部は、第2の通信装置から送信される応答信号に含まれる混雑状況に応じて、回線の混雑状況を判定し、第2の通信装置の応答信号生成部は、第1の通信装置から送信される送信信号を受信すると、計測部によって計測された混雑状況が含まれる応答信号を生成することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、予め定められた既存プロトコルに基づく信号の送受信に応じて回線の混雑状況を判定するために定められた判定条件が記憶される第1の判定条件記憶部を備える複数の第1の通信装置と、複数の第1の通信装置と回線を介して接続され、判定条件が記憶される第2の判定条件記憶部を備える第2の通信装置とを備えた通信システムの通信方法であって、第1の通信装置が、既存プロトコルに基づく送信信号を、第2の通信装置に送信するステップと、第2の通信装置が、回線の混雑状況を計測するステップと、第1の通信装置から送信される送信信号を受信すると、計測した混雑状況と、第2の判定条件記憶部から読み出した判定条件とに基づいて、応答信号を生成するステップと、生成した応答信号を、第1の通信装置に送信するステップと、第1の通信装置が、第2の通信装置から送信される応答信号を受信し、受信した応答信号と、第1の判定条件記憶部から読み出した判定条件とに基づいて、回線の混雑状況を判定するステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、第1の通信装置が、既存プロトコルに基づく送信信号を、第2の通信装置に送信し、第2の通信装置が、回線の混雑状況を計測し、第1の通信装置から送信される送信信号を受信すると、計測した混雑状況と、予め定められた判定条件とに基づいて、応答信号を生成し、生成した応答信号を、第1の通信装置に送信し、第1の通信装置が、第2の通信装置から送信される応答信号を受信し、受信した応答信号と、予め定められた判定条件とに基づいて、回線の混雑状況を判定するようにしたので、既存プロトコルに基づく通信により、回線に負荷をかけずに、通信装置間の回線の混雑状況を通知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態による通信システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態による宅内ルータとエッジルータとの構成例を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態による判定条件のデータ例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態による履歴情報のデータ例を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態による回線使用率のデータ例を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態によるエッジルータの動作例を示すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態によるエッジルータの動作例を示すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態による宅内ルータの動作例を示すフローチャートである。
【図9】本発明の一実施形態による宅内ルータの動作例を示すフローチャートである。
【図10】本発明の一実施形態による通信システムの動作例を示すシーケンス図である。
【図11】本発明の一実施形態による通信システムの動作例を示すシーケンス図である。
【図12】本発明の一実施形態による通信システムの動作例を示すシーケンス図である。
【図13】本発明の一実施形態による通信システムの動作例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態による通信システム1の構成を示すブロック図である。通信システム1は、複数の宅内ルータ10−N(宅内ルータ10−1、宅内ルータ10−2、宅内ルータ10−3、・・・)と、複数の宅内ルータ10−Nからの回線を集約する集約装置20と、集約装置20とアクセス回線30を介して接続され、コア網50に接続されたエッジルータ40とを備えている。ここで、複数の宅内ルータ10−Nは同様の構成であるため、特に区別して説明しない場合には宅内ルータ10として説明する。
【0015】
宅内ルータ10は、集約装置20と集約装置20とを介してエッジルータ40に接続された通信装置である。ここでは、宅内ルータ10は、ユーザ宅内に設置されたPC等の通信装置に接続される。図2は、宅内ルータ10の詳細な構成を示す図である。宅内ルータ10は、通信部11と、記憶部12と、状態管理部13と、入出力部14と、表示部15とを備えている。
【0016】
通信部11は、エッジルータ40と情報の送受信を行う。ここでは、通信部11は、IPv6(Internet Protocol Version 6)に基づく各種通信を行い、例えば、論理的なアドレスを物理的なアドレスに変換するための情報を送受信する既存プロトコルであるNDP(Neighbor Discovery Protocol)に基づく信号の送受信を行う。このとき、通信部11は、NDPに基づく要求信号であるNS(Neighbor Solicitation)信号をエッジルータ40に送信し、エッジルータ40からの応答信号であるNA(Neighbor Advertisement)信号を受信する。また、通信部11は、NDPに基づくRA(Router Advertisement)信号をエッジルータ40から受信すると、NS信号をエッジルータ40に送信する。
【0017】
記憶部12には、宅内ルータ10による通信のために用いる各種情報が記憶される。例えば、記憶部12には、予め定められた既存プロトコルに基づく信号の送受信に応じて回線の混雑状況を判定するために定められた判定条件が記憶される。ここで、判定条件としては、例えば、NDPに基づくNS信号を送信してから、NS信号に対するNA信号が送信されるまでの経過時間に応じて回線の混雑状況を判定することが適用できる。回線の混雑状況を示す情報としては、アクセス回線30の回線使用率が適用できる。図3は、このような判定条件のデータ例を示す図である。例えば、NS信号を送信してからNA信号の応答までの経過時間が2秒以上であることを条件として、アクセス回線30の回線使用率がα(例えば、99)%以上であることが定められる。同様に、経過時間が1秒以上2秒未満であれば、アクセス回線30の回線使用率がβ(例えば、80)%以上α%未満であることが定められる。経過時間が1秒未満であれば、アクセス回線30の回線使用率がβ未満であることが定められる。ここでは、経過時間として1秒または2秒の閾値を設定する例を示すが、この経過時間は、NS信号が再送されない程度の短い時間に設定することが望ましい。宅内ルータ10は、このような回線使用率に応じて、例えば宅内ルータ10に備えられる表示部15であるランプを、赤、黄、緑のいずれかに点灯させる。
【0018】
また、記憶部12には、このような判定結果の履歴が記憶されるようにしても良い。例えば、図4は、記憶部12に記憶される履歴情報のデータ例を示す図である。履歴情報には、時間帯毎、曜日毎に対応付けられた判定結果が含まれる。ここでは、回線使用率がα以上であった場合には「混雑」を示す判定結果が、β以上α未満であった場合には「やや混雑」を示す判定結果が、β未満であった場合には「空き」を示す判定結果が対応付けられて記憶される。
【0019】
状態管理部13は、通信部11によって行われる通信に基づいて宅内ルータ10の各部を制御する制御部である。例えば、状態管理部13は、一定周期(例えば、15分または30分)毎にNS信号を生成し、生成したNS信号を、通信部11によってエッジルータ40に対して送信させる。あるいは、状態管理部13は、エッジルータ40からRA信号を受信すると、NS信号を生成して、通信部11によってエッジルータ40に対して送信させる。状態管理部13は、通信部11が送信したNS信号に応じて、エッジルータ40から送信されるNA信号を受信し、受信したNA信号と、記憶部12から読み出した判定条件とに基づいて、アクセス回線30の混雑状況を判定する。
【0020】
例えば、状態管理部13は、通信部11がNS信号を送信してから、エッジルータ40から送信されるNA信号を受信するまでの経過時間に応じて、回線の混雑状況を判定する。これにより、宅内ルータ10は、エッジルータ40との間のエッジルータ40に、混雑状況測定のために新たなパケットの送受信を行わなくとも、アクセス回線30の混雑状況を取得することができる。すなわち、このようなNS信号やNA信号は、従来から宅内ルータ10とエッジルータ40との間で送受信される既存プロトコルに基づく信号であり、このような既存プロトコルを流用して混雑状況を取得することができる。また、状態管理部13は、判定結果を履歴情報として記憶部12に記憶させる。また、状態管理部13は、判定結果を表示部15に表示させる。
【0021】
入出力部14は、情報の入出力を制御する。
表示部15は、アクセス回線30の混雑状況を表示する。表示部15は、上述のように、例えば混雑状況の判定結果が「混雑」である場合には赤色を、「やや混雑」である場合には黄色を、「空き」である場合には緑色を表示するランプである。あるいは、表示部15は液晶ディスプレイであることとして、図4に示したような履歴情報を表示するようにしても良い。また、リアルタイムに変化する混雑状況に応じたランプの点灯を変化させるとともに、一定期間の混雑状況の推移を履歴情報として表示するようにしても良い。これにより、ユーザは、例えばアクセス回線30が混雑していない時間帯を知ることができる。このような履歴情報は、入出力部14により、宅内に接続されたPC等に出力され、PC等が備えるディスプレイに表示されるようにしても良い。
【0022】
図1に戻り、集約装置20は、複数の宅内ルータ10からの回線を集約するコンピュータ装置である。集約装置20は、複数の宅内ルータ10から送信される情報を、アクセス回線30を介してエッジルータ40に送信する。また、エッジルータ40から送信される情報を、複数の宅内ルータ10に分配する。
アクセス回線30は、集約装置20とエッジルータ40とを接続する通信回線であり、本実施形態により測定される混雑状況の測定対象である。
【0023】
エッジルータ40は、アクセス回線30を介して複数の宅内ルータ10と接続された通信装置である。図2は、エッジルータ40の詳細な構成を示す図である。エッジルータ40は、通信部41と、記憶部42と、状態管理部43と、入出力部44とを備えている。
通信部41は、宅内ルータ10と情報の送受信を行う。ここでは、通信部41は、IPv6に基づく各種通信を行い、例えばNDPに基づく信号の送受信を行う。通信部41は、NDPに基づくNS信号を宅内ルータ10から受信し、受信したNS信号に対して状態管理部43によって生成された応答信号であるNA信号を、宅内ルータ10に送信する。
【0024】
記憶部42には、エッジルータ40による通信のために用いる各種情報が記憶される。例えば、記憶部42には、状態管理部43によって測定された、アクセス回線30の回線使用率が記憶される。図5は、記憶部42に記憶される回線使用率のデータ例を示す図である。ここでは、エッジルータ40には複数のアクセス回線30が接続されており、接続されたアクセス回線30毎に回線使用率が対応付けられた例を示す。このように、記憶部42には、アクセス回線30を識別するアクセス回線No毎に、回線使用率が対応付けられて記憶される。
また、記憶部42には、宅内ルータ10の記憶部12に記憶された判定条件と同様の情報が記憶される。このような判定条件に基づいて、状態管理部43によりNA信号が生成される。
【0025】
状態管理部43は、通信部41によって行われる通信に基づいてエッジルータ40の各部を制御する制御部である。例えば、状態管理部43は、アクセス回線30の混雑状況を計測する。ここでは、状態管理部43は、一定時間(例えば、5分)毎に、集約装置20とエッジルータ40との間のアクセス回線30の回線使用率を計測する。状態管理部43は、計測した回線使用率を記憶部42に記憶させ、一定時間毎に新たに計測した回線使用率によって更新する。
【0026】
また、状態管理部43は、計測したアクセス回線30の混雑状況を宅内ルータ10に通知する応答信号を生成する。すなわち、状態管理部43は、宅内ルータ10から送信されるNS信号を受信すると、計測した混雑状況と、記憶部42から読み出した判定条件とに基づいて、NA信号を生成する。具体的には、状態管理部43は、宅内ルータ10から送信されるNS信号を通信部41が受信すると、その時点で記憶部42に記憶されている回線使用率を読み出す。状態管理部43は、記憶部42から、読み出した回線使用率に応じた判定条件として定められた経過時間を読み出す。状態管理部43は、読み出した経過時間が経過した後、NA信号を生成し、通信部41によって宅内ルータ10に送信させる。これにより、エッジルータ40は、NDPに基づくNA信号の送信タイミングにより、宅内ルータ10にアクセス回線30の混雑状況を通知することが可能となる。
【0027】
ここで、状態管理部43は、一定時間毎に回線使用率を計測する際に、前回計測した回線使用率と、新たに計測した回線使用率とを比較し、回線使用率に差分が存在する場合(回線使用率が変化した場合)に、宅内ルータ10からのNS信号を誘起させるRA信号を生成し、通信部41によって宅内ルータ10に送信させるようにしても良い。これにより、RA信号に応じて宅内ルータ10から送信されるNS信号に応じて、宅内ルータ10にNA信号を送信して回線使用率を通知することができる。これにより、状態管理部43側で任意のタイミングにより、回線使用率を宅内ルータ10に通知することができる。
入出力部44は、情報の入出力を制御する。
コア網50は、エッジルータ40が接続されるネットワークである。ここでは、エッジルータ40が接続されるネットワークは、通信事業者間を接続する基幹通信回線(コアネットワーク)であるとして説明する。
【0028】
次に、本実施形態による通信システム1の動作例を説明する。図6、7は、エッジルータ40の動作例を示すフローチャートであり、図8、9は、宅内ルータ10の動作例を示すフローチャートである。
図6において、エッジルータ40が動作を開始すると、状態管理部43は、一定周期毎にアクセス回線30の回線使用率を計測する(ステップS1)。状態管理部43は、記憶部42に記憶されている回線使用率と、計測した回線使用率とを比較し、差分があるか否かを判定する(ステップS2)。ここで、差分がないと判定すると(ステップS2:なし)、状態管理部43は、計測した回線使用率を記憶部42に記憶させ、処理を終了する。差分があると判定すると(ステップS2:あり)、状態管理部43は、計測した回線使用率を記憶部42に記憶させ、ReachableTime値が極端に短いRA信号を生成し、宅内ルータ10に送信する(ステップS3)。
【0029】
図8に移動し、宅内ルータ10の通信部11が、エッジルータ40から送信されたRA信号を受信すると(ステップS4)、状態管理部13は、RAのReachableTime値に設定された時間が経過した後、NS信号を生成する(ステップS5)。通信部11は、状態管理部13が生成したNS信号を、エッジルータ40に送信する(ステップS7)。宅内ルータ10は計時機能を備えており、宅内ルータ10は、NS信号を送信した時点からの経過時間を計測する。図7に移動し、エッジルータ40が宅内ルータ10から送信されたNS信号を受信すると(ステップS8)、エッジルータ40の状態管理部43は、記憶部42に記憶された回線使用率を読み出し、記憶部42に記憶された判定条件と比較する(ステップS9)。
【0030】
状態管理部43は計時機能を備えており、NS信号を受信してからの経過時間を計測する。状態管理部43は、回線使用率がα%以上であれば(ステップS9:α%以上)、NS信号を受信してから2秒間以上経過した後、NA信号を生成する(ステップS10)。回線使用率がβ%以上α%未満であれば(ステップS9:β%以上α%未満)、NS信号を受信してから1秒間以上2秒未満経過した後、NA信号を生成する(ステップS11)。回線使用率がβ%未満であれば(ステップS9:β%未満)、NS信号を受信してから1秒が経過する前に(1秒未満が経過した後)、NA信号を生成する(ステップS12)。通信部41は、状態管理部43によって生成されたNA信号を、宅内ルータ10に送信する(ステップS13)。
【0031】
図9に移動し、宅内ルータ10の通信部11が、エッジルータ40から送信されたNA信号を受信する(ステップS14)。状態管理部13は、ステップS7においてNS信号が送信されてから、ステップS14においてNA信号を受信するまでの経過時間が、2秒以上であると判定すると(ステップS15:2秒以上)、表示部15のランプを赤色に点灯させる(ステップS16)。経過時間が1秒以上2秒未満であると判定すると(ステップS15:1秒以上2秒未満)、表示部15のランプを黄色に点灯させる(ステップS17)。経過時間が1秒未満であると判定すると(ステップS15:1秒未満)、表示部15のランプを緑色に点灯させる(ステップS18)。
一方、図8において、宅内ルータ10が動作を開始し、状態管理部13が一定周期を経過したと判定すると、NS信号を生成し(ステップS6)、ステップS7に進む。
【0032】
図10〜13は、このような動作例を示すシーケンス図である。図10は、回線使用率がα%以上であった場合のシーケンス図である。エッジルータ40の状態管理部43は、回線使用率を計測し、計測した回線使用率を記憶部42に記憶させる(ステップS21)。宅内ルータ10は、一定周期が経過すると、NS信号を、混雑情報要求信号としてエッジルータ40に送信する(ステップS22)。エッジルータ40は、宅内ルータ10から送信されたNS信号を受信すると、記憶部42に記憶された回線使用率を読み出し、2秒以上が経過した後に、混雑情報通知信号であるNA信号を送信する(ステップS23)。宅内ルータ10の通信部11が、エッジルータ40から送信されたNA信号を受信すると、状態管理部13は、NS信号の送信からNA信号の受信までに2秒以上が経過したと判定し、アクセス回線30は混雑していると判定し、表示部15のランプを赤色に点灯させる(ステップS24)。
【0033】
図11は、回線使用率がβ%以上α%未満であった場合のシーケンス図である。この場合、エッジルータ40が、ステップS32において宅内ルータ10から送信されたNS信号を受信すると、1秒以上2秒未満が経過した後に、混雑情報通知信号であるNA信号を送信する(ステップS33)。宅内ルータ10の通信部11が、エッジルータ40から送信されたNA信号を受信すると、状態管理部13は、NS信号の送信からNA信号の受信までに1秒以上が経過したと判定し、アクセス回線30はやや混雑していると判定し、表示部15のランプを黄色に点灯させる(ステップS34)。
【0034】
図12は、回線使用率がβ未満であった場合のシーケンス図である。この場合、エッジルータ40が、ステップS42において宅内ルータ10から送信されたNS信号を受信すると、1秒未満の間に、混雑情報通知信号であるNA信号を送信する(ステップS43)。宅内ルータ10の通信部11が、エッジルータ40から送信されたNA信号を受信すると、状態管理部13は、NS信号の送信からNA信号の受信までの経過時間が1秒未満であると判定し、アクセス回線30は空いていると判定し、表示部15のランプを緑色に点灯させる(ステップS44)。
【0035】
図13は、エッジルータ40がRA信号を送信する場合のシーケンス図である。エッジルータ40の状態管理部43は、回線使用率を計測し、回線使用率がβ%以上からβ%未満に変化したことを検知する(ステップS51)。エッジルータ40は、RA信号を、混雑状況変化通知信号として宅内ルータ10に送信する(ステップS52)。宅内ルータ10は、エッジルータ40から送信されたRA信号を受信すると、RA信号に指定された時間が経過した後、エッジルータ40にNS信号を送信する(ステップS53)。エッジルータ40は、宅内ルータ10から送信されたNS信号を受信すると、記憶部42に記憶された回線使用率を読み出し、1秒未満の間に、NA信号を送信する(ステップS54)。宅内ルータ10の通信部11が、エッジルータ40から送信されたNA信号を受信すると、状態管理部13は、NS信号の送信からNA信号の受信までの経過時間が1秒未満であると判定し、アクセス回線30は空いていると判定し、表示部15のランプを緑色に点灯させる(ステップS55)。
【0036】
なお、本実施形態では、混雑状況を通知する既存プロトコルとしてIPv6におけるNDPを適用する例を示したが、IPv4においては、論理的なアドレスを物理的なアドレスに変換するための情報を送受信する既存プロトコルであるARP(Address Resolution Protocol)を適用しても良い。この場合、宅内ルータ10の通信部11が送信する送信信号はARPリクエストであり、エッジルータ40の通信部41が送信する応答信号はARPリプライである。
【0037】
また、本実施形態では、混雑状況を判定する回線使用率として、100%に近いα(99%)と、αに近付いていることを示すβ(80%)との2種類の閾値を用いる例を示したが、用途や状況に応じて、1種類または3種類以上の閾値を用いて判定するようにしても良い。
【0038】
上述の実施形態では、NS信号に対して送信するNA信号を、一定時間経過後に送信することで混雑状況を通知したが、NA信号のリザーブフィールドに混雑状況を示す情報を含ませるようにしても良い。この場合、混雑状況を示す情報は、例えば「混雑」、「やや混雑」、「空き」などの混雑状況を示す数値とすることができる。すなわち、宅内ルータ10が混雑状況を判定する判定条件を、NA信号に含まれる混雑状況を示す情報に基づいて回線の混雑状況を判定するものとすることができる。この場合、宅内ルータ10の状態管理部13は、エッジルータ40から送信されるNA信号に含まれる混雑状況に応じて、回線の混雑状況を判定する。エッジルータ40の状態管理部43は、宅内ルータ10から送信されるNS信号を受信すると、計測した混雑状況が含まれるNA信号を生成し、通信部41に送信させる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態によれば、NDPに基づく通信の中で、アクセス回線30の混雑状況をエッジルータ40から宅内ルータ10に通知し、判定することが可能となる。ここで、例えば従来のように測定サイトからファイルをダウンロードして通信速度を算出するとき、そのファイルを送信するサーバ装置は、一般的にエッジルータ40が接続されたコア網50に接続されている。この場合、ファイルのダウンロード時間には、宅内ルータ10とエッジルータ40とを接続するアクセス回線30の混雑状況の他に、コア網50のネットワークの状況やサーバ装置の応答速度など、他の要因の影響を受ける。これに対し、本実施形態によれば、エッジルータ40が自身に接続されたアクセス回線30の回線使用率を計測するため、アクセス回線30の混雑状況をより正確に、効率良く宅内ルータ10に通知することができる。また、測定サイトを提供するためのサーバ装置を構築する必要もない。
【0040】
なお、本発明における処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより混雑状況の判定を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0041】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0042】
1 通信システム
10 宅内ルータ
11 通信部
12 記憶部
13 状態管理部
14 入出力部
15 表示部
20 集約装置
30 アクセス回線
40 エッジルータ
41 通信部
42 記憶部
43 状態管理部
44 入出力部
50 コア網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1の通信装置と、当該複数の第1の通信装置と回線を介して接続された第2の通信装置とを備えた通信システムであって、
前記第1の通信装置は、
予め定められた既存プロトコルに基づく信号の送受信に応じて前記回線の混雑状況を判定するために定められた判定条件が記憶される第1の判定条件記憶部と、
前記既存プロトコルに基づく送信信号を、前記第2の通信装置に送信する送信信号送信部と、
前記送信部が送信した前記送信信号に応じて、前記第2の通信装置から送信される応答信号を受信し、受信した前記応答信号と、前記第1の判定条件記憶部から読み出した前記判定条件とに基づいて、前記回線の混雑状況を判定する判定部と、を備え、
前記第2の通信装置は、
前記判定条件が記憶される第2の判定条件記憶部と、
前記回線の混雑状況を計測する計測部と、
前記第1の通信装置から送信される前記送信信号を受信すると、前記計測部によって計測された前記混雑状況と、前記第2の判定条件記憶部から読み出した前記判定条件とに基づいて、前記応答信号を生成する応答信号生成部と、
前記応答信号生成部によって生成された前記応答信号を、前記第1の通信装置に送信する応答信号送信部と、
を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記既存プロトコルに基づく信号は、論理的なアドレスを物理的なアドレスに変換するための情報を送受信する信号である
ことを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記第2の通信装置の前記計測部は、一定時間毎に前記回線の混雑状況を計測して記憶し、
前記第2の通信装置は、前記計測部によって一定時間毎に新たに前記混雑状況が計測されると、新たに計測された混雑状況と、一定時間前に計測して記憶した前回の混雑状況とを比較し、混雑状況に差分が存在する場合、前記第1の通信装置に前記送信信号を誘起させる誘起信号を生成して前記第1の通信装置に送信する誘起信号送信部を備え、
前記第1の通信装置の前記送信信号送信部は、前記第2の通信装置から送信された前記誘起信号を受信すると、前記送信信号を前記第2の通信装置に送信する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記判定条件は、既存プロトコルに基づく要求信号である前記送信信号が送信されてから、当該送信信号に対する前記応答信号が送信されるまでの経過時間に応じて前記回線の混雑状況を判定する判定条件であり、
前記第1の通信装置の前記判定部は、
前記送信信号送信部が前記送信信号を送信してから、前記第2の通信装置から送信される応答信号を受信するまでの経過時間に応じて、前記回線の混雑状況を判定し、
前記第2の通信装置の前記応答信号生成部は、
前記第1の通信装置から送信される前記送信信号を受信すると、前記計測部によって計測された混雑状況に応じた、前記第2の判定条件記憶部から読み出した前記判定条件によって定められた経過時間が経過した後、前記応答信号を生成する
ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項5】
前記判定条件は、前記応答信号に含まれる前記混雑状況に基づいて前記回線の混雑状況を判定する判定条件であり、
前記第1の通信装置の前記判定部は、
前記第2の通信装置から送信される応答信号に含まれる前記混雑状況に応じて、前記回線の混雑状況を判定し、
前記第2の通信装置の前記応答信号生成部は、
前記第1の通信装置から送信される前記送信信号を受信すると、前記計測部によって計測された混雑状況が含まれる前記応答信号を生成する
ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項6】
予め定められた既存プロトコルに基づく信号の送受信に応じて回線の混雑状況を判定するために定められた判定条件が記憶される第1の判定条件記憶部を備える複数の第1の通信装置と、当該複数の第1の通信装置と前記回線を介して接続され、前記判定条件が記憶される第2の判定条件記憶部を備える第2の通信装置とを備えた通信システムの通信方法であって、
前記第1の通信装置が、
前記既存プロトコルに基づく送信信号を、前記第2の通信装置に送信するステップと、
前記第2の通信装置が、
前記回線の混雑状況を計測するステップと、
前記第1の通信装置から送信される前記送信信号を受信すると、計測した前記混雑状況と、前記第2の判定条件記憶部から読み出した前記判定条件とに基づいて、応答信号を生成するステップと、
生成した前記応答信号を、前記第1の通信装置に送信するステップと、
前記第1の通信装置が、
前記第2の通信装置から送信される前記応答信号を受信し、受信した前記応答信号と、前記第1の判定条件記憶部から読み出した前記判定条件とに基づいて、前記回線の混雑状況を判定するステップと、
を備えることを特徴とする通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−191325(P2012−191325A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51577(P2011−51577)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(399041158)西日本電信電話株式会社 (215)
【Fターム(参考)】