説明

通信システム

【課題】通信システムで、暗号を効果的に使用する。
【解決手段】送信局は、受信局情報、送信局情報及びデータを暗号化し、暗号化データを誤り検出符号化し、その結果の信号を送信し、送信信号に含まれる暗号化された受信局情報及び送信局情報を記憶し、受信局は、受信信号に含まれる受信局情報の復号結果に基づいて自局宛てである場合には暗号化データの誤り検出を行い、その結果に基づいて、受信局情報及び送信局情報を受信時の暗号化されたままの状態で誤り検出の結果に関する情報に付加した再送要求信号を送信し、送信局は、再送要求信号に含まれる暗号化された受信局情報及び送信局情報と記憶内容とが一致する場合には再送対象となるデータを送信し、受信局は、受信した非再送のデータ及び再送のデータに基づいてデータを復号する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再送及び暗号を用いて通信を行う通信システムに関し、特に、暗号を効果的に使用する通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、CSMA(Carrier Sense Multiple Access)等の方式を用いて、同一の周波数を複数の局が共有して通信を行うシステムでは、受信先を示す受信局のアドレスとその電波の送信元を示す送信局のアドレスを伝送フレームの先頭に付加して伝送することが行われている。受信局では、そのアドレスによって自局宛てであることを検出し、それに続くデータを受信する。
【0003】
更に、ARQ(Automatic Repeat Request)方式では、受信局で受信誤りの状況を検出してその結果を再送要求信号として返送する。この場合に、いずれの送信局に対する再送要求信号であるかを示すために、送信局と受信局のアドレスを付加して送信する必要がある。送信局では、その再送要求信号に付加されたアドレスによって、自局からの送信に対する要求であることを判別し、その要求に従って再送が必要なデータを選んで再送する。
【0004】
ここで、ARQ方式としては、種々な複数の方式が知られているが、以下では、一例として、セレクティブARQ方式を用いる場合を説明する。
セレクティブARQ方式では、送信側は、1フレームの送信データを複数のブロックに分割して、分割したブロックの単位で誤り検出可能な符号化を行って伝送し、受信側は、ブロック毎に誤り検出を行って、その結果に基づいてブロック毎の再送の要否の形式で再送要求信号を作成し、送信局に対して送信(返送)する。送信側は、その再送要求信号による指定に従って、再送を要求されたブロックを選択して再送データとして送信(再送)する。
【0005】
例えば、無線通信では、その通信内容を第三者に知られないようにするために、暗号が使用されることが多い。上記のような通信システムに暗号化を適用する場合には、データばかりでなくアドレス情報まで暗号化して送ることが望ましい。
しかしながら、アドレス情報の部分の暗号を一旦解いて、再送要求信号のためにそれを再暗号化して送信するという使い方は、暗号に対して好ましい方法ではない。例えば、同一の信号の再暗号化は、第三者に解読される危険性が高まると考えられるため、信号伝達の途中で暗号を解かないことが望ましい。
【0006】
図7(a)、(b)には、セレクティブARQ方式を適用した場合について、1フレーム分のデータの伝送シーケンスの一例を示してあり、図7(a)には送信局からの送信の様子を示してあり、図7(b)には受信局からの送信の様子を示してある。
本例では、送信局からの2回の再送で誤りが0になった(つまり、誤りが無くなった)場合を示してある。
【0007】
具体的には、送信局から1フレームのデータ(データフレーム)が送信され、これに対して、受信データの誤り状況を示す再送要求信号(REQ1)が受信局から返送され、この再送要求に基づいて再送データ(再送1)が送信局から送信される。
この再送データについてもまだ誤りが残っている場合には、その再送データに対する再送要求信号(REQ2)が受信局から返送され、この再送要求に基づいて再送データ(再送2)が送信局から送信される。
この結果、誤りが0になった場合には、誤り無しを示す再送要求信号(ER0)が受信局から返送され、これにより、1フレームの伝送が終了し、次のデータフレームの伝送へ移る。
【0008】
図8(a)には、上記のようなARQのシーケンスで使用されるデータフレームのフォーマットの一例を示してあり、図8(b)には、上記のようなARQのシーケンスで使用される再送要求信号のフレームのフォーマットの一例を示してある。
データフレームは、受信局のアドレス(AD1)、送信局のアドレス(AD2)、データの順に並べられて、フレームが構成される。
再送要求信号は、送信局のアドレス(AD2)、受信局のアドレス(AD1)、誤り状況を示すデータの順に並べられて、フレームが構成される。
なお、再送データのフォーマットは、データ長が異なること以外は、データフレームと同じである。
【0009】
上記のような通信方法に暗号を適用する場合には、例えば、アドレス部分については暗号化をしないで伝送する方法や、或いは、アドレスまで暗号化して伝送するようにし、受信において、一旦暗号を解いて受信局及び送信局のアドレスを判定し、自局宛てであったときには、暗号が解かれた送信局アドレス及び受信局アドレスを再暗号化したものを再送要求信号に付加して返送する方法が用いられている。
しかしながら、通信内容の秘匿という面で見ると、両者ともに好ましい方法とは言えない。
【0010】
【特許文献1】特開2000−269938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述のように、ARQ及び暗号を用いる通信システムでは、暗号の使用方法について未だに不十分な点があり、更なる開発が要求されていた。
本発明は、このような従来の事情に鑑み為されたもので、再送及び暗号を用いて通信を行うに際して、暗号を効果的に使用することができる通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明では、送信局から受信局へデータを伝送する通信システムにおいて、次のような構成とした。
すなわち、前記送信局は、受信局を識別する受信局情報、送信局を識別する送信局情報及び伝送対象となるデータを暗号化し、少なくとも暗号化された前記データを誤り検出符号化し、その結果の信号を送信し、当該送信した信号に含まれる暗号化された受信局情報及び送信局情報を記憶する。
前記受信局は、受信した信号に含まれる受信局情報を復号した結果に基づいて当該受信局情報が自局を識別する情報である場合には、当該受信した信号に含まれる暗号化されたデータについて誤り検出を行い、当該誤り検出の結果に基づいて、前記受信した信号に含まれる受信局情報及び送信局情報を受信時の暗号化されたままの状態で誤り検出の結果に関する情報に付加した再送要求信号を送信する。
前記送信局は、受信した再送要求信号に含まれる暗号化された受信局情報及び送信局情報と前記記憶した暗号化された受信局情報及び送信局情報とが一致するか否かを判定し、一致する場合には、当該再送要求信号に含まれる誤り検出の結果に関する情報に基づいて再送対象となるデータを送信する。
前記受信局は、受信した非再送のデータ(つまり、初回のデータ)及び再送のデータに基づいてデータを復号する。
【0013】
従って、送信局は送信したデータに付加したアドレス情報部分(ここでは、暗号化した受信局情報及び送信局情報)を記憶しておき、受信局は受信した信号に対する再送要求信号に当該受信信号に含まれていたアドレス情報部分をそのまま含めて送信し、送信局は受信した再送要求信号に含まれるアドレス情報部分と記憶しているアドレス情報部分とが同一である場合には、この再送要求信号は自局が送信したデータに対するものであると判定して、データの再送を行うことにより、例えば、再送及び暗号を用いて通信を行うに際して、暗号を効果的に使用することができ、効率的な通信を行うことができる。
【0014】
ここで、送信局と受信局としては、例えば、それぞれ異なる装置として構成されてもよく、或いは、送信局の機能と受信局の機能の両方を有する通信局の装置として構成されてもよい。
また、通信としては、例えば、無線通信に適用するのに適しているが、有線通信に適用されてもよい。
また、受信局や送信局を識別する情報としては、種々な情報が用いられてもよく、例えば、各局を識別する固有な装置番号や固有な文字列などの情報を用いることができる。なお、例えば、各局は、当該各局(自局)を識別する情報をメモリに記憶している。
【0015】
また、受信局情報と送信局情報とデータの並び順としては、例えば、受信局情報、送信局情報、データという順序が用いられるが、他の順序が用いられてもよい。
また、受信局情報、送信局情報、データを暗号化する態様としては、例えば、これらのそれぞれを別個に復号することができるように暗号化する態様や、或いは、受信局情報及び送信局情報の組と、データとを別個に復号することができるように暗号化する態様などを用いることができる。
また、誤り検出符号化としては、例えば、誤り検出符号を使用する態様ばかりでなく、誤り訂正符号を使用する態様が用いられてもよい。
【0016】
また、情報を記憶する手段としては、例えば、メモリを用いて構成することができる。
また、再送要求信号は、例えば、受信されたデータに誤りがあった場合に再送を要求するために送信されるばかりでなく、受信されたデータに誤りが無かった場合にその旨を通知するために送信されてもよい。
また、再送の要求や再送としては、例えば、一連のデータを複数のブロックに区切って、各ブロック毎に行うことができる。
また、再送要求信号に含まれる誤り検出の結果に関する情報としては、例えば、再送要求の対象となるデータを示す情報(データブロックの番号を示す情報)が用いられ、また、再送の要否(ブロック毎の再送の要否)を示す情報が用いられてもよい。
【0017】
また、非再送のデータ(初回のデータ)及び再送のデータに基づいてデータを復号する態様としては、例えば、非再送のデータで誤りが発生した部分を誤りの無い再送のデータで置き換えて復号する。
なお、非再送のデータ(初回のデータ)により誤り無く全てのデータが伝送された場合には、再送は行われなくてもよい。
また、例えば、全てのデータが誤り無く伝送されなくとも、同一のデータなどについての再送の回数が所定値を超えた(又は、所定値以上となった)場合には、その再送を止めて次のデータの伝送へ移行するような態様を用いることもできる。
【0018】
送信局の装置の構成例や、受信局の装置の構成例を示す。
送信局から受信局へデータを伝送する通信システムにおいて、
前記送信局は、信号を送信する送信側送信手段と、
信号を受信する送信側受信手段と、
暗号化を行う送信側暗号化手段と、
誤り検出符号化を行う送信側誤り検出符号化手段と、
受信局を識別する受信局情報、送信局を識別する送信局情報及び伝送対象となるデータを前記送信側暗号化手段により暗号化し、少なくとも暗号化された前記データを前記送信側誤り検出符号化手段により誤り検出符号化し、その結果の信号を前記送信側送信手段により送信するデータ送信制御手段と、
前記データ送信制御手段により送信された信号に含まれる暗号化された受信局情報及び送信局情報を記憶する送信側局情報記憶手段と、
前記送信側受信手段により受信された再送要求信号に含まれる暗号化された受信局情報及び送信局情報と前記送信側局情報記憶手段に記憶された暗号化された受信局情報及び送信局情報とが一致するか否かを判定し、一致する場合には、当該再送要求信号に含まれる誤り検出の結果に関する情報に基づいて再送対象となるデータを前記送信側送信手段により送信する再送制御手段と、を備え、
前記受信局は、信号を受信する受信側受信手段と、
信号を送信する受信側送信手段と、
誤り検出を行う受信側誤り検出手段と、
復号を行う受信側復号手段と、
前記受信側受信手段により受信された信号に含まれる受信局情報を前記受信側復号手段により復号した結果に基づいて当該受信局情報が自局を識別する情報である場合には、当該受信された信号に含まれる暗号化されたデータについて前記受信側誤り検出手段により誤り検出を行う誤り検出制御手段と、
前記誤り検出制御手段による誤り検出の結果に基づいて、前記受信された信号に含まれる受信局情報及び送信局情報を受信時の暗号化されたままの状態で誤り検出の結果に関する情報に付加した再送要求信号を前記受信側送信手段により送信する再送要求制御手段と、
前記受信側受信手段により受信された非再送のデータ(つまり、初回のデータ)及び再送のデータに基づいて前記受信側復号手段によりデータを復号する受信側復号制御手段と、を備えた、
ことを特徴とする通信システム。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明に係る通信システムによると、送信局から受信局へデータを伝送するに際して、送信局から受信局へのデータに付加された暗号化されたアドレス情報部分をそのまま使用して受信局から送信局へ再送要求信号を送信するようにしたため、例えば、再送及び暗号を用いて通信を行うに際して、暗号を効果的に使用することができ、効率的な通信を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明に係る実施例を図面を参照して説明する。
図1及び図2には、本発明の一実施例に係る無線通信システムで無線局として用いられる送信局と受信局の系統例を示してある。
なお、本例では、送信局の装置と受信局の装置を分けて説明するが、送信局の機能と受信局の機能の両方を有する装置を無線局として用いることも可能である。
また、本例では、ARQ方式の一例として、セレクティブARQ方式を用いる場合を説明するが、他の種々なARQ方式に適用されてもよい。
【0021】
図1には、送信局の装置の構成例を示してある。
本例の送信局は、送信メモリ1と、暗号化部2と、暗号データメモリ3と、誤り検出符号化部(誤り検出符号化回路)4と、変調回路5と、送信回路6と、送受スイッチ(送受SW)7と、アンテナ8と、受信回路9と、復調回路10と、制御部11を備えている。
制御部11には、送信制御部21と、アドレスメモリ22と、アドレス照合部23と、再送ブロック制御部24を備えている。
【0022】
図2には、受信局の装置の構成例を示してある。
本例の受信局は、アンテナ31と、送受スイッチ(送受SW)32と、受信回路33と、復調回路34と、誤り検出部(誤り検出回路)35と、暗号データメモリ36と、暗号解読部37と、受信メモリ38と、変調回路39と、送信回路40と、制御部41を備えている。
制御部41には、受信制御部51と、アドレスメモリ52と、宛先解読部53と、受信ブロック制御部54と、再送要求部55を備えている。
【0023】
図3には、本例の無線通信システムに設けられる複数の無線局のネットワークの構成例を示してある。
図3において、A〜Fはそれぞれ無線局を示している。
本例では、複数の無線局が同一の周波数を使用して独立に無線通信を行い、特に、図3に示されるように、互いの送信が干渉し合うような位置関係に存在する無線局が同一の周波数で複数の対向通信系を構成しているような場合に適用される。各無線局は、通信の相手を識別するために、送信局アドレスと受信局アドレスを付けて信号を送信する。
なお、局のアドレスとしては、例えば、局番号の情報などを用いることができる。
【0024】
図4(a)には、本例の伝送で用いられるデータフレームのフォーマットの一例を示してあり、図4(b)には、本例の伝送で用いられる再送要求信号のフレームのフォーマットの一例を示してある。
図4(a)、(b)において、AD1’は暗号化された受信局アドレスを示しており、AD2’は暗号化された送信局アドレスを示している。
送信局から送信されるデータフレームは、受信局アドレス、送信局アドレス、データから構成され、これらの全てが暗号化されて送信される。
受信局から送信される再送要求信号は、アドレス部分として送信局から受信されたアドレスをそのままの符号(暗号化された符号)AD1’、AD2’で使用したものを、誤り状況を示す信号に付加して送信される。
【0025】
次に、本例の送信局及び受信局で行われる動作の例を示す。
本例の送信局において行われる動作の一例を示す。
例えば外部から入力された送信データを送信メモリ1に一旦蓄積した後に読み出し、読み出した送信データを暗号化部2で暗号化し、誤り検出符号化部4で誤り検出符号化し、変調回路5で所定の変調方式により変調し、送信回路6で無線周波数の信号へ変換して増幅し、送受スイッチ7を通してアンテナ8から無線により送信する。
これに際して、暗号化されたデータは、送信と同時に暗号データメモリ3に記憶(蓄積)され、アドレス情報の部分は制御部11のアドレスメモリ22にも記憶される。
また、暗号化されたデータは、所定の長さのブロックに区切られ、誤り検出符号化はブロックを単位として行われる。暗号データメモリ3への蓄積についても、ブロック単位で読み出せる形式で蓄積される。
【0026】
1フレームのデータの送信が終了すると、再送要求信号を受信する動作になり、アンテナ8からの受信信号を送受スイッチ7を通して受信回路9で周波数変換して増幅し、復調回路10で復調する。復調回路10からの出力は制御部11に入力され、制御部11では、アドレス照合部23により、復調回路10から入力された先頭のアドレス情報の部分をアドレスメモリ22に記憶されている送信信号のアドレス情報の部分と比較し、これらが同じである場合には、自局宛ての再送要求信号であると判定する。
ここで、本例では、送信局から送信したデータフレーム中の暗号化されたアドレス部分がそのまま受信局からの再送要求信号のアドレス部分とされて返送されてくるため、このような判定が可能である。
【0027】
自局宛ての再送要求信号である場合には、続いて、再送要求の中身(本例では、誤り状況の情報)を受信してメモリに記憶する。この受信が終了した後に、再送ブロック制御部24により、その再送要求の中身に基づいて再送要求されたブロックのデータを暗号データメモリ3から読み出して、最初の送信と同じ暗号化されたアドレス情報を先頭に付けて送信する。このような動作を再送要求信号で誤り無しという情報が受信局から返送されてくるまで繰り返して行う。
【0028】
制御部11は、上記のような動作を制御するものであり、本例では、全体の送受信の流れを制御してメモリの読み書きを制御する送信制御部21の機能と、暗号化されたアドレス情報を記憶するアドレスメモリ22の機能と、アドレスメモリ22に記憶された暗号化されたアドレス情報と再送要求信号のアドレス情報とを比較して自局宛てであるか否かを判定するアドレス照合部23の機能と、再送要求の内容を記憶してそれに基づいて再送データを読み出して送信する再送ブロック制御部24の機能を有している。
【0029】
本例の受信局において行われる動作の一例を示す。
アンテナ31により無線受信した信号を送受スイッチ32を通して受信回路33に入力し、受信回路33で周波数変換して増幅し、復調回路34で復調し、誤り検出部35に入力する。誤り検出部35は、入力された受信信号について、誤り検出符号を使用してブロック毎に伝送誤りの有無を検出する。これと同時に、誤り検出部35は、誤り検出符号のパリティービットを除いたデータ部分を暗号データメモリ36に蓄積するとともに、当該データ部分を暗号解読部37や制御部41へ出力する。制御部41では、暗号化されたままのアドレス情報をアドレスメモリ52に記憶する。
【0030】
暗号解読部37は、受信信号の先頭に位置するアドレス部分の暗号を解き、その結果を制御部41へ出力する。制御部41は、宛先解読部53により、暗号解読部37から入力されたアドレスが自局宛てであるか否かを判定し、自局宛てであった場合には、受信ブロック制御部54により、誤り検出結果であるブロック毎の誤りの有無の情報をメモリに蓄積する。なお、誤り検出結果は、誤り検出部35から制御部41に入力される。
【0031】
1フレームのデータの受信が終了したときに、誤りのあるブロックがあった場合には、再送要求部55により、その誤りのあったブロックの番号を誤り状況として表示した再送要求信号を送信する。再送要求信号には、送信局から受信したデータフレーム中の先頭に位置するアドレス部分の暗号を解かないままのものをアドレスメモリ52から読み出して、アドレスとして先頭に付けて送信する。再送要求信号の送信では、制御部41で発生させた信号を変調回路39で所定の変調方式により変調し、送信回路40で無線周波数の信号へ変換して増幅し、送受スイッチ32を経てアンテナ31から無線により送信する。
【0032】
再送要求に基づいて送信局から再送されてきた再送データについては、通常のデータ(再送ではない最初のデータ)と同様な処理により誤り検出し、受信ブロック制御部54により、暗号データメモリ36において再送要求を行ったブロック番号のところに前の受信データと書き換えて蓄積する。なお、再送データに対する他の処理は、例えば、最初のデータの受信時と同様である。
【0033】
このような動作を行って、全てのブロックが誤り無しとなった場合には、誤り無しを示す再送要求信号を送信し、そして、受信したデータについては、暗号データメモリ36に蓄積されているデータを読み出して、暗号解読部37でその暗号を解き、受信メモリ38に一旦蓄積して、受信メモリ38から外部へ出力する。
なお、例えば、全てのブロックが誤り無しとならなくても、予め決められた回数だけ再送要求を繰り返して行った場合には、誤り無しを示す再送要求信号を送信して、そのデータフレームについての伝送処理を終了させて、次のデータフレームの伝送処理へ移行するような構成を用いることもできる。
【0034】
制御部41は、上記のような動作を制御するものであり、本例では、全体の送受信の流れを制御してメモリの読み書きを制御する受信制御部51の機能と、暗号化されたままのアドレス部分を記録して再送要求信号のアドレスとして送信するアドレスメモリ52の機能と、暗号を解いたアドレス部分に基づいて自局宛てであるか否かを判定する宛先解読部53の機能と、ブロック毎の誤り状況をメモリに記録して再送データについて暗号データメモリ36の書き換えを制御する受信ブロック制御部54の機能と、再送要求信号を作成(生成)して送信する再送要求部55の機能を有している。
なお、本例では、説明を省略したが、例えば、再送要求信号についても、誤り訂正符号化又は誤り検出符号化を行う構成とすることも可能である。
【0035】
次に、図5及び図6を参照して、本例の送信局及び受信局で行われる処理の手順の一例を示す。
図5には、データを送信する局となる送信局により行われる処理の手順の一例を示してある。
図6には、データを受信する局となる受信局により行われる処理の手順の一例を示してある。
【0036】
送信局では、送信対象となるデータ(送信データ)が発生した場合に、データフレームを構成するための送信データと宛先アドレス(受信局アドレス及び送信局アドレス)を読み出し(ステップS1)、読み出した受信局アドレス及び送信局アドレスを暗号化し(ステップS2)、読み出した送信データを暗号化して暗号化後のデータを複数のブロックに分割して誤り検出符号化し(ステップS3)、これらの暗号化結果(受信局アドレス、送信局アドレス、データ)からデータフレームを構成して無線により送信する(ステップS4)。
【0037】
受信局では、待ち受け状態において、送信局からのデータフレームを無線受信すると(ステップS21)、受信したデータフレームに含まれるアドレス部分の暗号を解読して(ステップS22)、自局宛てのデータフレームであるか否かを識別する(ステップS23)。
受信したデータフレームが自局宛てであった場合には、データ部分の受信を行い、受信したデータ部分について、受信したままの符号(暗号化されたままの符号)についてブロック単位に誤り検出を行う(ステップS24)。そして、ブロック単位の誤り検出結果に基づいて、誤りが0(無し)ではない場合には(ステップS25)、ブロック毎の再送の要否を示す再送要求信号の情報部分(本例では、誤り状況の情報部分)を作成し、この情報部分に対して送信局から受信した受信局アドレスと送信局アドレスを受信した符号(暗号化された符号)そのままでフレームの先頭にアドレスとして付加して再送要求信号を作成し(ステップS26)、作成した再送要求信号を無線により送信する(ステップS27)。
【0038】
送信局では、受信局からの再送要求信号を受信した場合には、受信した再送要求信号中のアドレス部分を自局が送信したデータフレーム中の暗号化されたアドレス部分と照合して(ステップS5)、これらが一致するか否かを判定する(ステップS6)。
これらのアドレス部分が一致した場合には、自局からの送信に対する再送要求信号であると判別し、引き続いて、ブロック毎の再送要否を示す信号部分(本例では、誤り状況の信号部分)を受信し(ステップS7)、再送要求信号の受信が終了した後に、その信号部分の内容に基づいて、受信局における誤りが0(無し)であるか否かを判定する(ステップS8)。
【0039】
受信局における誤りが0である場合には次のデータフレームの送信へ移行する一方、受信局における誤りが1個以上のブロックについてあった場合には、受信した再送要求信号の誤り状況の内容に基づいて、過去に送信したデータの中から再送が必要なブロックを選択して読み出し(ステップS9)、読み出したデータから再送データを構成して再送する(ステップS10)。
【0040】
受信局では、送信局からの再送データフレームを受信した場合には(ステップS28)、そのアドレス部の暗号を解読して(ステップS29)、自局宛てであるか否かを判定し(ステップS30)、自局宛てであった場合には、データ部を受信して誤り検出し、良好なデータブロックが得られたときには、最初の受信で誤りのあったブロックのデータを今回受信した再送データで置き換える(ステップS31)。
このような再送要求を行った結果、1フレーム分のデータの全ての誤りが0になった場合には(ステップS25)、誤りが0であることを示す再送要求信号を送信局に対して無線により送信し、また、受信したデータ部の暗号を解いて元の伝送データを取得する(ステップS32)。そして、次のデータフレームの受信(待ち受け状態)へ移行する。
【0041】
以上のように、本例では、送信局が受信局アドレスと送信局アドレスとデータから構成されるデータフレームを送信し、受信局が受信したデータの誤りを検出してその誤りの状況を送信局へ返送して再送要求を行い、送信局が受信した再送要求信号に応じて再送データを送信するARQ方式において、送信局は受信局アドレスと送信局アドレスとデータを暗号化して送信し、受信局は受信した受信局アドレスと送信局アドレスの部分について受信されたままの符号を再送要求信号のアドレスとして使用して、このアドレスと誤りの状況を示す情報とから再送要求信号を作成して返送し、送信局は受信した再送要求信号のアドレス部分を送信した暗号化されたアドレス部分の符号と照合して、これらが一致したときに、自局の送信に対する再送要求信号であると判定して、その後に続く誤り状況の情報によって再送が必要なデータを決定し、再送が必要なデータを初回のデータと同じアドレス符号と共に再送する。
【0042】
従って、本例では、例えば、CSMA等の方式を用いて同一の周波数を複数の無線局が共有して通信を行い、伝送誤りに対してARQ方式による再送を行い、伝送情報を暗号化して伝送する通信システムにおいて、受信局では送信局から受信したデータフレーム中のアドレス部分を受信した符号のままで再送要求信号に付加するアドレスとして使用することにより、効果的なアドレス情報の伝送方式を実現することができ、例えば、受信側においてアドレス部分に対する暗号を一度解いて再暗号化して送信するといった処理を回避することができる。
【0043】
なお、本例では、受信局アドレスの情報により受信局情報が構成されており、送信局アドレスの情報により送信局情報が構成されている。
また、本例の送信局では、変調回路5や送信回路6や送受スイッチ7やアンテナ8により信号を無線送信する機能により送信手段が構成されており、アンテナ8や送受スイッチ7や受信回路9や復調回路10により信号を受信する機能により受信手段が構成されており、暗号化部2の機能により暗号化手段が構成されており、誤り検出符号化部4の機能により誤り検出符号化手段が構成されており、制御部11の送信制御部21による制御により初回のデータを送信する機能によりデータ送信制御手段が構成されており、制御部11のアドレスメモリ22の機能により局情報記憶手段が構成されており、制御部11のアドレス照合部23や再送ブロック制御部24による制御や暗号データメモリ3により再送を行う機能により再送制御手段が構成されている。
【0044】
また、本例の受信局では、アンテナ31や送受スイッチ32や受信回路33や復調回路34により信号を受信する機能により受信手段が構成されており、変調回路39や送信回路40や送受スイッチ32やアンテナ31により信号を無線送信する機能により送信手段が構成されており、誤り検出部35の機能により誤り検出手段が構成されており、暗号解読部37の機能により復号手段が構成されており、制御部41の受信制御部51や宛先解読部53による制御により自局宛ての受信データについて誤り検出を行う機能により誤り検出制御手段が構成されており、制御部41の再送要求部55による制御やアドレスメモリ52により再送要求信号を送信する機能により再送要求制御手段が構成されており、制御部41の受信ブロック制御部54による制御や暗号データメモリ36により受信データを復号する機能により復号制御手段が構成されている。
【0045】
ここで、本発明に係るシステムや装置などの構成としては、必ずしも以上に示したものに限られず、種々な構成が用いられてもよい。また、本発明は、例えば、本発明に係る処理を実行する方法或いは方式や、このような方法や方式を実現するためのプログラムや当該プログラムを記録する記録媒体などとして提供することも可能であり、また、種々なシステムや装置として提供することも可能である。
また、本発明の適用分野としては、必ずしも以上に示したものに限られず、本発明は、種々な分野に適用することが可能なものである。
また、本発明に係るシステムや装置などにおいて行われる各種の処理としては、例えばプロセッサやメモリ等を備えたハードウエア資源においてプロセッサがROM(Read Only Memory)に格納された制御プログラムを実行することにより制御される構成が用いられてもよく、また、例えば当該処理を実行するための各機能手段が独立したハードウエア回路として構成されてもよい。
また、本発明は上記の制御プログラムを格納したフロッピー(登録商標)ディスクやCD(Compact Disc)−ROM等のコンピュータにより読み取り可能な記録媒体や当該プログラム(自体)として把握することもでき、当該制御プログラムを当該記録媒体からコンピュータに入力してプロセッサに実行させることにより、本発明に係る処理を遂行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施例に係る送信局の構成例を示す図である。
【図2】本発明の一実施例に係る受信局の構成例を示す図である。
【図3】ネットワークの構成例を示す図である。
【図4】(a)はデータフレームのフォーマットの一例を示す図であり、(b)は再送要求信号のフレームのフォーマットの一例を示す図である。
【図5】送信局により行われる処理の手順の一例を示す図である。
【図6】受信局により行われる処理の手順の一例を示す図である。
【図7】(a)、(b)はARQ方式の伝送シーケンスの一例を示す図である。
【図8】(a)はデータフレームのフォーマットの一例を示す図であり、(b)は再送要求信号のフレームのフォーマットの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1・・送信メモリ、 2・・暗号化部、 3、36・・暗号データメモリ、 4・・誤り検出符号化部、 5、39・・変調回路、 6、40・・送信回路、 7、32・・送受スイッチ、 8、31・・アンテナ、 9、33・・受信回路、 10、34・・復調回路、 11、41・・制御部、 21・・送信制御部、 22、52・・アドレスメモリ、 23・・アドレス照合部、 24・・再送ブロック制御部、 35・・誤り検出部、 37・・暗号解読部、 38・・受信メモリ、 51・・受信制御部、 53・・宛先解読部、 54・・受信ブロック制御部、 55・・再送要求部、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信局から受信局へデータを伝送する通信システムにおいて、
前記送信局は、受信局を識別する受信局情報、送信局を識別する送信局情報及び伝送対象となるデータを暗号化し、少なくとも暗号化された前記データを誤り検出符号化し、その結果の信号を送信し、当該送信した信号に含まれる暗号化された受信局情報及び送信局情報を記憶し、
前記受信局は、受信した信号に含まれる受信局情報を復号した結果に基づいて当該受信局情報が自局を識別する情報である場合には、当該受信した信号に含まれる暗号化されたデータについて誤り検出を行い、当該誤り検出の結果に基づいて、前記受信した信号に含まれる受信局情報及び送信局情報を受信時の暗号化されたままの状態で誤り検出の結果に関する情報に付加した再送要求信号を送信し、
前記送信局は、受信した再送要求信号に含まれる暗号化された受信局情報及び送信局情報と前記記憶した暗号化された受信局情報及び送信局情報とが一致するか否かを判定し、一致する場合には、当該再送要求信号に含まれる誤り検出の結果に関する情報に基づいて再送対象となるデータを送信し、
前記受信局は、受信した非再送のデータ及び再送のデータに基づいてデータを復号する、
ことを特徴とする通信システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−154287(P2008−154287A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67297(P2008−67297)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【分割の表示】特願2006−310386(P2006−310386)の分割
【原出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】