説明

通信システム

【課題】ACKなどで通信負荷を増加させることなく、再送制御が実現でき、データの欠落を解消できる通信システムを提供する。
【解決手段】送信局20が取得した測定データをパケットで送信できるように所定数の測定データ毎にデータ番号を付与してリングバッファの形式で記憶し、パケットを受信局30に対して一方向のマルチキャスト通信で送信し、これを受信した受信局が欠落したパケットを検知すると、受信局から送信局へ対し再送信要求手段34によって再送信要求を送信し、送信局は再送信要求に該当するデータ番号とデータ番号に対する全測定データをパケットとして受信局へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信負荷を増加させることなく、再送制御が実現でき、データの欠落を解消できる通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
温度調節器や計測器及びPLCといった制御装置と、監視装置(PC、サーバ)等との間をネットワークで接続して時系列データ通信が行われている。このようなデータ通信は、各種プロセスの状態量を通信するものであるが、その方式には種々のものがある。例えば、計測器が計測したデータを別の機器に送信する場合、TCP/IPなどコネクション型の通信形式を使用すれば、取りこぼしを起こさないように送信できる。それは、送信するパケット(ある期間の計測データを含む)が番号付けされ、受信側からACK(Acknowledge:受信確認)の来ないパケットは、送信側がパケットを再送することで取りこぼしなく受信できるようにするものである。
【0003】
しかしながら、このような技術の場合、次のような問題点がある。その一つは、計測器側に多くのメモリ資源を搭載できず受信側がACKを返せない状況の場合、計測器で計測データが次々に生成されると、送信側(つまり計測器側)に未送信完了のデータが同様に増えて、何れかのメモリがそのようなデータで一杯になってしまう。
【0004】
測定したデータを必ず受信側に送信する必要がある場合は上記の機構は必須であるが、ある程度時間が経過してしまったデータ(リアルタイムデータ等)の場合は、古いデータの再送のために、最新のデータ転送を損なうことが問題となる。つまり、そこまで時間が経過したデータの保存を行うことが必ずしも良いとは言えない場合がある。また別の問題は、計測データを複数の機器で受信したい場合、複数のコネクションを張らなければならず、より一層メモリ資源の圧迫が考えられると同時に、同一期間のデータ送信において複数のパケットが必要になる。
【0005】
例えば、ネットワークシステムにおいて、イーサネット(登録商標)対応の通信インタフェースに、マルチキャスト受信テーブルを設け、その受信テーブルには、受信可能なフレーム(自己が使用する必要なデータを送信する)に付されているマルチキャストアドレスを記憶保持させる。
【0006】
通信インタフェースは、このマルチキャストで送信されてきたフレームを通信インタフェースにて一旦取り込み、受信したフレームのマルチキャストアドレスがマルチキャスト受信テーブルに登録されているか否かを判断し、登録されている場合には、受信したフレームをMPUやRAMへと転送し、登録されていないフレームは通信インタフェースで廃棄する。
【0007】
従って、ノード(1)が記憶保持する送信すべきデータが仮想メモリアドレス1、仮想メモリアドレス2、仮想メモリアドレス3の3つが存在する場合、マルチキャストアドレス「MA1−1」、「MA1−2」、「MA1−3」の3つの送信フレームをノード(1)からネットワークケーブルに向けて順次送信する。すると、それら各送信フレームを受信したスイッチングハブは、マルチキャストによる送信フレームであるため、その送信フレームをネットワークに加入する全てのノードに送信する。
【0008】
従って、ノード(2)には、一旦ノード(1)から送信されたマルチキャストによる送信フレームが全て取り込まれるものの、ノード(2)の通信ユニットのマルチキャスト受信テーブルには、「MA1−1」と「MA1−2」が登録され、「MA1−3」は登録されていないため、通信インタフェースは、受信した2つのフレームをMPUやRAMへと転送し、登録されていない「MA1−3」のフレームを廃棄する。つまり、受信側のノードは通信インタフェースにて自己が必要なフレームのみを正規のフレームと判断して所定の処理を行い、不要なものは通信インタフェース側で廃棄処理として各ノードの負荷の軽減を図るようにしたものが知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−217580公報(10頁、図5、6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記した特許文献1のものは、基本的にはマルチキャスト通信を用いて不要なアドレスノードからの通信を廃棄することが記載されており、「受信側は、自己が必要とするデータのみノード内に取り込む」とあるが、自己が必要とするデータのアドレスが、テーブルのマルチキャストアドレスに存在するか否かを判定して、存在しない場合は全て廃棄している。
【0010】
また、「同時性を必要とするデータを複数のフレームに分割して送信する場合」について言及しており、これは一つの送信タイミングでのデータ欠落を考慮しているが、その処理はデータ整合性の問題解決だけで、一つの送信全体の欠落については何ら解決されていない。さらに、受信側から送信側に対して問い合わせの旨は言及されているが、この問い合わせは単に適合アドレスの取得のためだけであった。
【0011】
また、昨今のデータ通信は、マルチキャスト通信が主流であり、信頼性を重視するマルチキャスト通信では、データ欠落にかかる再送を促すために、同一期間の再送制御を実現することが必要となる。マルチキャスト通信は、複数の通信相手に対して効率的にデータを配信するものであり、“特定”の多数の相手に対しての送信をおこなうものである。
【0012】
しかしながら、マルチキャスト通信は、データの受信相手が多数存在するため、双方向にやり取りが出来ず、通信に信頼性の必要な用途には不向きである。また、所謂TCP/IPの双方向通信では、通信の負荷が重くなってしまうといった問題がある。さらに、同一期間の再送制御としてACKを用いる場合には、複数の受信側から送信されたACKが、送信側に集中(ACK−Implosion)してしまうといった問題があった。
【0013】
本発明の目的は、一方向のマルチキャスト通信を用いて、送信局である制御機器からプロセス状態量にシーケンス番号を付して送信する。また、受信局である監視装置ではプロセス状態量を受信できたものを受信し、その際シーケンス番号の飛躍によってデータ欠落を検知して再送信要求をする。これにより、ACKなどで通信負荷を増加させることなく、再送制御が実現でき、データの欠落を解消できる通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の請求項1に記載の通信システムは、
一または二以上の送信局と複数の受信局とが、所定のネットワークで通信可能に接続され、前記送信局と前記受信局は、それぞれ前記送信局と前記受信局を制御する制御手段と通信インタフェースからなるノードを有し、前記送信局のノードから前記受信局のノードへマルチキャスト通信を行う通信システムであって、
前記送信局は、所定の制御周期毎に測定された測定データを取得する状態量取得手段と、
前記状態量取得手段によって取得された測定データは、データ番号が付与された所定数のバッファに順次記憶される送信用記憶手段と、
前記送信用記憶手段に記憶された所定数の測定データに付されたデータ番号毎のバッファを読み出し、前記制御手段及び通信インタフェースを介して前記ネットワークへ向けてマルチキャスト通信を行う送信手段と、
前記受信局から再送信要求が行われたデータ番号に対するバッファを前記送信用記憶手段から読み出して、読み出すことが可能な場合に前記ノード及び前記ネットワークを介して再送信要求を行った前記受信局へ向けて送信し、再送信要求が行われたデータ番号に対するバッファを前記送信用記憶手段から読み出せなかった場合には、再送信要求を無視する再送信手段とからなり、
前記受信局は、前記ネットワーク及び前記ノードを介してデータ番号に対するバッファを受信する受信手段と、
前記受信手段によって受信されたデータ番号に対するバッファが、該データ番号順に順次記憶される受信用記憶手段と、
前記受信用記憶手段に記憶されたデータ番号に欠落があるか否かを検知し、欠落があると判定した場合にのみ、前記制御手段と通信インタフェースを介して前記送信局へ対し、データ番号を含む再送信要求を送信する再送信要求手段とからなることを特徴としている。
【0015】
請求項1に係る通信システムがこのような構成を有することで、送信局によって受信局がパケットを受信したかの確認を行うことなく、受信局が受信できなかったバケットの再送信要求を行うことで、データの欠落を防止できるとともに複数の受信局へ向けて時系列のデータを送信できるようになる。
【0016】
本発明の請求項2に記載の通信システムは、請求項1に記載の通信システムにおいて、
前記送信用記憶手段は、前記データ番号の数が予め設定した所定数に達すると、最古のデータ番号を最新のデータ番号に書き換えて前記測定データが前記バッファメモリに上書きされて、順次記憶されるリングバッファであることを特徴としている。
【0017】
本発明の請求項3に記載の通信システムは、請求項2に記載の通信システムにおいて、
前記送信局は、前記再送要求にある欠落したデータ番号にかかるバッファが前記送信用記憶手段のリングバッファに存在する場合に前記再送信要求手段を実行し、
そのバッファが前記リングバッファに存在しない場合には再送要求を無視することを特徴としている。
【0018】
また、請求項2または3に係る通信システムが、このような構成を有することで、リングバッファの数を使用環境によって設定するとき、数を増やせば受信データの欠落確率を低減し、数を減せば送信局の処理負荷を軽減することができるようになる。
【0019】
本発明の請求項4に記載の通信システムは、請求項1乃至4のいずれかに記載の通信システムにおいて、
前記データ番号は、該データ番号に対する全測定データ毎にインクリメントされ、該データ番号の数値は上限値を持ち上限値を超えると0リセットされるものとし、前記上限値は前記リングバッファに記憶されるバッファの数よりも大きいことを特徴としている。
【0020】
さらに、請求項4に係る通信システムが、このような構成を有することで、リングバッファの範囲内においてデータの欠落を防止できるようになる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、再送信要求を全て処理するのでは送信局の負担が大きいため、再送信要求処理のできる限度数を設定して、その数のデータ番号に対する所定数の測定データが記憶されたバッファからなるリングバッファ内にあるデータ番号に限るようにして、再送処理に制限を設けてリングバッファの範囲内で取りこぼしを防止できる通信システムを提供することが出来るようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態に係る通信システムを図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る通信システム1のブロック構成図であり、上位コンピュータ40と、サーバ等からなる受信局30がネットワーク7で接続され、受信局30と各種計測機器が接続された送信局20は、有線あるいは無線などのLAN5で接続されている。
【0023】
ここでは、複数の受信局30と、センサや流量計等の計測機器と接続されて、測定データを取得する送信局20について詳細に説明する。なお、各種計測機器が送信局であってもよく、その場合は当該送信局が有する機能を計測機器が有するものとする。なお、送信局20から受信局30への通信は、一方向マルチキャスト通信であり、データの宛先にマルチキャストアドレスと呼ばれる送信先グループを識別するためのIPアドレスを指定して送信する。すると、通信経路に存在するルータ(図示しない)が状況に応じて送られるデータのコピーを作り、予め設定された複数の相手に届けるため、送信側は自身で大量のデータを送信する必要がなく、不要なパケットが流れることによるネットワーク負荷を軽減するものである。
【0024】
送信局20は、例えば通信装置からなり、計測データを取得する状態量取得手段22と、取得したデータを記憶する送信用記憶手段23と、受信局30へデータを送信する送信手段24と、データを再送する再送信手段25からなり、ノード21として、CPUやMPU及びROMやRAMなどのメモリを有する制御手段26と、LAN5や上位コンピュータ40とのネットワーク通信を行う通信インタフェース27によって構成されている。なお、通信インタフェース27は、ここでは主に受信局20へマルチキャスト送信を行うものである。
【0025】
状態量取得手段22は、該送信局20に接続された計測機器10から、測定データを取得するものである。この状態量取得手段22は、計測機器10から送信されるプロセスの時系列に基づいた状態量を、予め設定された所定の制御周期毎に、測定データとして取得するものである。
【0026】
送信用記憶手段23には、上述の状態量取得手段22によって取得した測定データを、例えば、数秒毎あるいは数分毎の送信周期で区切り、その複数の測定データに時系列のシーケンス番号として1つのデータ番号が付与されたものを、1つのバッファとして記憶されているものである。該送信用記憶手段23を構成するバッファ数は、所定時間内に記憶可能なN個が設定値となる。
【0027】
送信手段24は、送信用記憶手段23に記憶された測定データを、受信局30へ向けて通信インタフェース27を介して送信するものである。測定データを送信する場合には、データ番号に対応するバッファが形成されたかの判定を行い、データ番号に対応するバッファが形成された時に受信局30へ向けて送信を行うものである。
【0028】
再送信手段25は、受信局30から再送信要求があった場合に、再送信要求された測定データを送信用記憶手段23から取り出して通信インタフェース27を介して送信するものである。この送信用記憶手段23に記憶されたバッファ数は、上述したように所定時間内のN個であり、再送信要求がこの所定時間を経過した後に送られた場合には、該当するデータ番号のバッファは削除され存在しない。
【0029】
受信局30は、好適には、パーソナルコンピュータからなるデータサーバであり、送信局20からの測定データを受信する受信手段32と、受信した測定データが記憶される受信用記憶手段33と、受信できなかった測定データがあった場合に、送信局20へ再送を要求する再送信要求手段34からなり、上述の送信局30と同様の制御手段35と通信インタフェース36によって構成されている。
【0030】
受信手段32は、通信インタフェース36を介して送信局20から送信されたパケットをデータ番号毎の測定データとして取得するものである。そして受信したデータ番号毎の測定データを、受信用記憶手段33に記憶させる。
【0031】
受信用記憶手段33には、受信した測定データが、付与されたデータ番号毎に記憶されている。この受信用記憶手段33は、予め決められた所定数のデータ番号のバッファ数の分だけが記憶されるように構成されており、例えば、5つのデータ番号しか記憶出来ないときは、古いデータから順次削除しながら新たなデータが記憶できる、所謂リングバッファ方式によって構成されている。
【0032】
再送信要求手段34は、受信用記憶手段33に記憶されたデータ番号に基づいて、そのデータ番号に、欠落した番号があるかを検知して、欠落がある場合にのみ送信局20へ対して、該当するデータ番号の全測定データを再送するように要求するものである。
【0033】
なお、図1において送信局20には1つの計測機器10が記載されているが、1つの送信局20に対し複数の計測機器10が接続されていてもよく、LAN5に送信局20や受信局30がそれぞれ複数接続されていてもよいものである。
【0034】
また、上述した通信システム1において、マルチキャストのノードアドレス定義は予めなされているとする。また、後述するように図2では、データ番号に対応したバッファの構造例として、データ番号:と個々の測定データ{PV1、PV2、・・・、}が複数バッファメモリ内に連なるものを示す。このバッファメモリのサイズは固定であっても可変であっても良い。また、そのミニマム構成は、送信局20にPVが唯一の場合で、データ番号:PVの1:1となる。さらに、上記通信システム1は送信局が取得するデータを測定データとして説明したが、制御ログやタイムスタンプデータなど、データの種類は特に限定しないものとする。
【0035】
上述の通信システム1は、送信局20が複数のバッファからなるデータ番号に対応した全バッファを設定し、受信局30が受信して自己のバッファを設定するように構成されている。また、送信局と受信局のバッファの大きさは必ずしも同一であることは要しない。
つぎに、送信局20、受信局30におけるデータを送受信する様子について説明する。
【0036】
図2は、2つの受信局33A、33Bが、LAN5によって通信可能に接続された送信局20との間におけるそれぞれのバッファ構造を説明する説明図である。上述した計測データは、送信局20の送信用記憶手段23に、複数のバッファから構成されるN個のデータ番号と、データ番号に対応したバッファ61、62・・・(ここでは5個とする)を設定し、そのバッファメモリ51(計測データ)(6−1から6−4まで)が、予め設定されたパケットの大きさに併せて付与されたデータ番号50と該データ番号に対応したバッファ61、62・・毎に記憶されている。すなわち、データ番号4に対応したバッファ61に注目すると、1つのパケットがデータ番号と4つの測定データとすると、データ番号「4」には「4−1」から「4−4」までのバッファメモリ内容が1つのデータ番号に対応したバッファ61として設定される。
【0037】
そして、このデータ番号50は、複数のバッファ毎に1つ付与されるとともに蓄積され、データ番号群60が形成されている。そして、所定時間が経過したデータ番号に対応したバッファ61、62・・は、削除されてそこに新たなデータ番号50を付与した測定データを記憶させるリングバッファの形態をとる。図2の例では、データ番号「1」は既に削除されデータ番号「6」が記憶され、データ番号「2」も同様に削除されてデータ番号「7」が記憶されている。
【0038】
受信局30の受信用記憶手段33には、受信した測定データ、すなわち、送信局20によって設定されたパケットであるデータ番号50に対応したバッファ61、62、・・が、データ番号50の昇順あるいは降順など、所定の規則に基づいて蓄積記憶されている。第一の受信局30の受信用記憶手段33Aには、送信局20から送信されたデータ番号に対応したバッファ61、62、・・が全て記憶されている。
【0039】
しかしながら、第二の受信局30の受信用記憶手段33Bには、データ番号「1」から「3」は記憶され、データ番号「4」が欠落しているが、つぎのデータ番号「5」は受信後記憶されている。すなわち、データ番号「4」の再送信要求を行う必要がある。
【0040】
図3は、本発明の通信システムによって送信局と受信局の間で行われるデータ通信の様子を示すフローチャートである。ここでは、図2に示した送信局20と受信局30のデータ構成との関連を含めて説明する。
【0041】
送信局20は、計測機器10から送られてくる測定データを、状態量取得手段22によって取得する(ステップS1)。取得した測定データは、例えば、図2のD1で示すように、順次バッファに記憶される(ステップS2)。1つのパケットは、データ番号50と4つのバッファメモリ51で構成される。1つのデータ番号に対応したバッファ62が形成されると、新たなデータ番号50(例えばデータ番号「6」の次にデータ番号「7」を作成する)のバッファが構成される。
【0042】
つぎに、送信手段24によって、例えば4つのバッファメモリ51にそれぞれ測定データが記憶されたか否かの判定を行う(ステップS3)。データ番号に対応したバッファ62が形成されていない場合には、ステップS1〜2の処理を繰りかえす。データ番号に対応したバッファ62が形成された場合には、図2のD2に示すように送信手段24から制御手段26を介して通信インタフェース27へ受け渡し、マルチキャスト通信によって、複数の受信局30(第一の受信局、第二の受信局)へ該データ番号に対応したバッファ62をパケットとして送信する(ステップS4)。そして送信局20は、次の測定データが送られて来るまで待機状態となり、ステップS1の処理に戻る。
【0043】
ステップS4において送信局20から送信されたパケットは、複数の受信局20の通信インタフェース36によって受信され、制御手段35を介して受信手段32へ受け渡される(ステップS5)。受信手段32は、図2のD3、D4に示すように、受信したパケットを受信用記憶手段33に記憶させる(ステップS6)。
【0044】
そして、受信用記憶手段33に記憶されたデータ番号70が、予め決められた順序で記憶されているか否かの判定を行う(ステップS7)。つまり、データ番号70が連番である場合には、図2に示す第二の受信局30に設けられた受信用記憶手段33Bのデータ番号70の「4」が欠落していることが判定される。データ番号70に欠落がなければステップS5の待機処理を行う。
【0045】
欠落があると判定された場合には、再送信要求手段34によって、データ番号70「4」のパケットが未受信であるという再送信要求データを、制御手段35を介して通信インタフェース36により送信局20へ送信する(ステップS8)。そして送信局20は待機状態となりステップS1の処理に戻る。
【0046】
送信局20は、データ番号70「4」のパケットが未受信であるというデータを受信すると(ステップS9)、再送信手段25によって送信用記憶手段23から該当するデータ番号50のデータ番号「4」に対応したバッファ61を取り出す(図2ではD5で示す)。そして、パケットとして制御手段26を介して通信インタフェース27へ受け渡し、第二の受信局20へ送信する(ステップS10)。
【0047】
再送分のパケットを通信インタフェース36と制御手段35を介して第二の受信局20の受信手段32が(ステップS11)受信する。再送分のパケットのデータ番号を記憶するエリアがあるか否かの判定を行い(ステップS12)、再送分以外のデータ番号の全バッファが既に受信用記憶手段33の所定数に達していた場合には記憶させず、ステップS5の処理に戻る。受信用記憶手段33の所定数に達していない場合には、図2のD6で示すように、受信手段32によって受信用記憶手段33Bの欠落したデータ番号「4」として記憶させる(ステップS13)。そして次のパケットを受信するまで待機状態となりステップS5の処理に戻る。
【0048】
このように、送信局20では、複数のバッファメモリ51から構成されるデータ番号に対応したバッファ61、62・・を設け、1つのバッファメモリ51には計測データが記憶される。データ番号は、新しいバッファに書くたびにインクリメントされる。但し上限値を有することはもちろんであり、上限値を超えると0リセットされる。送信局20は、予め決められた数のバッファメモリ51が一杯になるたびに、データ番号とそのバッファをパケットとして構成し、複数の受信局30へマルチキャスト通信によって送信する。この時コネクション型の通信形式はとらず、従来のようにACKは求めない。
【0049】
つまり、これにより複数の受信局30にマルチキャスト通信により送信できるようにする。受信局30は、送信局20から送られてきたパケットをデータ番号順に記憶し、時系列データを再現する。また、データ番号の欠落を見つけた場合には、送信局へデータ番号を指定し、欠落が予め決められた数のデータ番号に対応した全バッファ数の間であれば、該当するデータ番号の測定データの再送信要求をすることで受信の欠落を防ぐことができる。
【0050】
さらにネットワーク接続された上位コンピュータに、全ての測定データを送信局単位に記憶させることで、一日単位、週単位、月単位での制御状態を視認可能にデータ加工することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る通信システムのブロック構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るデータ構造を示す説明図である。
【図3】本発明の実施形態における通信システムの特徴的機能を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0052】
1 通信システム
5 LAN
7 ネットワーク
10 計測機器
20 送信局
21 ノード(送信局側)
22 状態量取得手段(送信局側)
23 送信用記憶手段(送信局側)
24 送信手段(送信局側)
25 再送信手段(送信局側)
26 制御手段(送信局側)
27 通信インタフェース(送信局側)
30 受信局
31 ノード(受信局側)
32 受信手段(受信局側)
33 受信用記憶手段(受信局側)
33A 受信用記憶手段
33B 受信用記憶手段
34 再送信要求手段(受信局側)
35 制御手段(受信局側)
36 通信インタフェース(受信局側)
40 上位コンピュータ
50 データ番号
51 バッファメモリ(計測データ)
60 データ番号群(送信側)
61、62 データ番号とバッファ
70 データ番号群(受信局側)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一または二以上の送信局と複数の受信局とが、所定のネットワークで通信可能に接続され、前記送信局と前記受信局は、それぞれ前記送信局と前記受信局を制御する制御手段と通信インタフェースからなるノードを有し、前記送信局のノードから前記受信局のノードへマルチキャスト通信を行う通信システムであって、
前記送信局は、所定の制御周期毎に測定された測定データを取得する状態量取得手段と、
前記状態量取得手段によって取得された測定データは、データ番号が付与された所定数のバッファに順次記憶される送信用記憶手段と、
前記送信用記憶手段に記憶された所定数の測定データに付されたデータ番号毎のバッファを読み出し、前記制御手段及び通信インタフェースを介して前記ネットワークへ向けてマルチキャスト通信を行う送信手段と、
前記受信局から再送信要求が行われたデータ番号に対するバッファを前記送信用記憶手段から読み出して、読み出すことが可能な場合に前記ノード及び前記ネットワークを介して再送信要求を行った前記受信局へ向けて送信し、再送信要求が行われたデータ番号に対するバッファを前記送信用記憶手段から読み出せなかった場合には、再送信要求を無視する再送信手段とからなり、
前記受信局は、前記ネットワーク及び前記ノードを介してデータ番号に対するバッファを受信する受信手段と、
前記受信手段によって受信されたデータ番号に対するバッファが、該データ番号順に順次記憶される受信用記憶手段と、
前記受信用記憶手段に記憶されたデータ番号に欠落があるか否かを検知し、欠落があると判定した場合にのみ、前記制御手段と通信インタフェースを介して前記送信局へ対し、データ番号を含む再送信要求を送信する再送信要求手段とからなることを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記送信用記憶手段は、前記データ番号の数が予め設定した所定数に達すると、最古のデータ番号を最新のデータ番号に書き換えて前記測定データが前記バッファメモリに上書きされて、順次記憶されるリングバッファであることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記送信局は、前記再送要求にある欠落したデータ番号にかかるバッファが前記送信用記憶手段のリングバッファに存在する場合に前記再送信要求手段を実行し、
そのバッファが前記リングバッファに存在しない場合には再送要求を無視することを特徴とする請求項2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記データ番号は、該データ番号に対する全測定データ毎にインクリメントされ、該データ番号の数値は上限値を持ち上限値を超えると0リセットされるものとし、前記上限値は前記リングバッファに記憶されるバッファの数よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−246855(P2009−246855A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−93601(P2008−93601)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】