通信トラヒック制御装置および通信トラヒック制御方法
【課題】より迅速で的確な通信トラヒック制御を実行する。
【解決手段】通信トラヒック制御装置600は、移動機100が在圏するセクタを制御する基地局200を制御する無線ネットワーク制御装置300と通信可能な状態で接続され、少なくとも移動機100の位置情報を含んだ測位情報を取得する測位情報取得部601と、取得された測位情報に基づいて、移動機ユーザの動態情報を抽出する動態情報抽出部602と、抽出された移動機ユーザの動態情報に基づいて、通信トラヒック制御を行う制御部603と、を備える。
【解決手段】通信トラヒック制御装置600は、移動機100が在圏するセクタを制御する基地局200を制御する無線ネットワーク制御装置300と通信可能な状態で接続され、少なくとも移動機100の位置情報を含んだ測位情報を取得する測位情報取得部601と、取得された測位情報に基づいて、移動機ユーザの動態情報を抽出する動態情報抽出部602と、抽出された移動機ユーザの動態情報に基づいて、通信トラヒック制御を行う制御部603と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動機が在圏するセクタを制御する基地局を制御する無線ネットワーク制御装置と通信可能な状態で接続された通信トラヒック制御装置、および、当該通信トラヒック制御装置により実行される通信トラヒック制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、通信トラヒック制御の技術が存在する。従来の通信トラヒック制御では、例えば、ある単体ノードでの通信トラヒック量、又は、通信トラヒックの処理で使用されるCPU若しくはメモリの使用率を求め、得られた値(通信トラヒック量等)を基準にして、それらの値が所定の閾値を超えた場合に、当該単体ノードにおいて、外部からの信号の受信を拒否するなどの制御が行われる。上記の通信トラヒック量等を求める技術は、例えば特許文献1に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−12086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の通信トラヒック制御では、上記のように通信トラヒック量等を求め、得られた値を基準にしていたため、通信トラヒック制御を必要とする事態(例えば輻輳状態)が発生してから通信トラヒック制御を行っていた。そのため、通信トラヒック制御を必要とする事態(例えば輻輳状態)の未然防止(対応の迅速性)という観点では、改善の余地が十分にあった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために成されたものであり、より迅速で的確な通信トラヒック制御を実行することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る通信トラヒック制御装置は、移動機が在圏するセクタを制御する基地局を制御する無線ネットワーク制御装置と通信可能な状態で接続された通信トラヒック制御装置であって、少なくとも前記移動機の位置情報を含んだ測位情報を取得する測位情報取得部と、前記測位情報取得部により取得された測位情報に基づいて、移動機ユーザの動態情報を抽出する動態情報抽出部と、前記動態情報抽出部により抽出された移動機ユーザの動態情報に基づいて、通信トラヒック制御を行う制御部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記通信トラヒック制御装置では、測位情報取得部が、少なくとも移動機の位置情報を含んだ測位情報を取得し、動態情報抽出部が、取得された測位情報に基づいて、移動機ユーザの動態情報を抽出する。そして、制御部が、抽出された移動機ユーザの動態情報に基づいて通信トラヒック制御を行う。このように通信トラヒック量を基準とせず、通信トラヒック量発生の原因となる移動機ユーザの動態情報に基づいて、通信トラヒック制御を行うため、より迅速で的確な通信トラヒック制御を実行することができる。
【0008】
また、本発明に係る通信トラヒック制御装置は、各移動機ユーザの属性情報を保持した属性情報保持部、をさらに備え、前記動態情報抽出部は、前記属性情報保持部により保持された各移動機ユーザの属性情報および前記取得された測位情報に基づいて、属性別の動態情報を抽出し、前記制御部は、抽出された前記属性別の動態情報に基づいて、通信トラヒック制御を行う構成とすることが望ましい。この場合、属性別の動態情報に基づいて通信トラヒック制御を行うことができ、各移動機ユーザの属性に応じたよりきめ細かい通信トラヒック制御を実行することができる。
【0009】
なお、制御部による通信トラヒック制御としては、輻輳状態を未然に防止するための通信トラヒック規制制御、又は、消費電力を最小化するための縮退運転制御を挙げることができる。
【0010】
ところで、本発明は、通信トラヒック制御方法に係る発明として捉えることができ、以下のように記述することができる。本発明に係る通信トラヒック制御方法は、移動機が在圏するセクタを制御する基地局を制御する無線ネットワーク制御装置と通信可能な状態で接続された通信トラヒック制御装置、により実行される通信トラヒック制御方法であって、少なくとも前記移動機の位置情報を含んだ測位情報を取得する測位情報取得ステップと、前記測位情報取得ステップにより取得された測位情報に基づいて、移動機ユーザの動態情報を抽出する動態情報抽出ステップと、前記動態情報抽出ステップにより抽出された移動機ユーザの動態情報に基づいて、通信トラヒック制御を行う通信トラヒック制御ステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、通信トラヒック量を基準とせず、通信トラヒック量発生の原因となる移動機ユーザの動態情報に基づいて、通信トラヒック制御を行うため、より迅速で的確な通信トラヒック制御を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1、第2実施形態の通信システムのシステム構成を示す図である。
【図2】第1実施形態の通信システムの機能構成を示す図である。
【図3】図2に示すBTSとセクタとの関係を示す図である。
【図4】ユーザID−PRACH PD GAI対応情報の例を示す図ある。
【図5】算出位置情報の算出方法を説明するための図である。
【図6】セクタボロノイ図を説明するための図である。
【図7】エリア単位と移動情報の関係を説明するための図である。
【図8】算出位置情報の算出方法を説明するための図である。
【図9】算出位置情報の算出方法を説明するための図である。
【図10】図2に示す属性情報保持部が保持する属性情報の例を示す図である。
【図11】属性情報とエリア単位の関係を説明するための図である。
【図12】第1実施形態における処理の流れを示す図である。
【図13】第1実施形態の通信トラヒック制御処理の第1の例を示す図である。
【図14】第1実施形態の通信トラヒック制御処理の第2の例を示す図である。
【図15】第1実施形態の通信トラヒック制御処理の第3の例を示す図である。
【図16】第1実施形態の通信トラヒック制御処理の第4の例を示す図である。
【図17】第2実施形態の通信システムの機能構成を示す図である。
【図18】ユーザID−PRACH PD GAI対応情報の例を示す図ある。
【図19】移動情報の算出方法を説明するための図である。
【図20】移動情報の算出方法を説明するための図である。
【図21】図2に示す位置抽出部が出力する移動情報の例を示す図である。
【図22】エリア単位と移動情報の関係を説明するための図である。
【図23】図2に示す属性情報保持部が保持する属性情報の例を示す図である。
【図24】属性情報とエリア単位の関係を説明するための図である。
【図25】図17に示す集計部が移動情報を集計することによって人口流量情報を算出する方法を説明するための図である。
【図26】人口流量情報の表示例を示す図である。
【図27】第2実施形態における処理の流れを示す図である。
【図28】第2実施形態の通信トラヒック制御処理の第1の例を示す図である。
【図29】第2実施形態の通信トラヒック制御処理の第2の例を示す図である。
【図30】第2実施形態の通信トラヒック制御処理の第3の例を示す図である。
【図31】第2実施形態の通信トラヒック制御処理の第4の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付図面を参照しながら、本発明に係る実施形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0014】
[第1実施形態]
以下、移動機ユーザの動態情報として人口分布情報を抽出し、抽出した人口分布情報に基づいて通信トラヒック制御を行う第1実施形態について説明する。
【0015】
[通信システムの構成]
図1は、本実施形態の通信システム10のシステム構成を示す図である。図1に示すように、この通信システム10は、移動機100、BTS(基地局)200、RNC(無線ネットワーク制御装置)300、交換機400、及び管理センタ500を含んで構成されている。また、この管理センタ500は、社会センサユニット501、ペタマイニングユニット502、モバイルデモグラフィーユニット503、及び可視化ソリューションユニット504から構成されている。
【0016】
交換機400は、BTS200、RNC300を介して、移動機100の位置情報を収集する。RNC300は、移動機100との間で通信接続が行われる際に、RRCコネクション要求信号における遅延値を用いて移動機100の位置を測定することができる。交換機400は、このように測定された移動機100の位置情報を、移動機100が通信接続を実行する際に受け取ることができる。交換機400は受け取った位置情報を記憶しておき、所定のタイミング、または管理センタ500からの要求に応じて収集した位置情報を管理センタ500に出力する。ここで、一般的に、RNC300は、約千個からなるものであり、日本全国に配置されている。一方で、交換機400は、300個程度日本国内に配置されている。
【0017】
管理センタ500は、上述したとおり、社会センサユニット501、ペタマイニングユニット502、モバイルデモグラフィーユニット503、及び可視化ソリューションユニット504を含んで構成されており、各ユニットでは、移動機100の位置情報を用いた統計処理を行う。
【0018】
社会センサユニット501は、各交換機400から移動機100の位置情報等を含んだデータを収集するサーバ装置である。この社会センサユニット501は、交換機400から定期的に出力されたデータを受信し、及び社会センサユニット501において予め定められたタイミングに従って交換機400からデータを取得するように構成されている。
【0019】
ペタマイニングユニット502は、社会センサユニット501から受信したデータを所定のデータ形式に変換するサーバ装置である。例えば、ペタマイニングユニット502は、ユーザIDをキーに、或いはエリアごとにソーティング処理を行う。
【0020】
モバイルデモグラフィーユニット503は、ペタマイニングユニット502において処理されたデータに対する集計処理、すなわち各項目のカウンティング処理を行うサーバ装置である。例えば、モバイルデモグラフィーユニット503は、あるエリアに在圏するユーザ数のカウント、或いは在圏分布の集計等をすることができる。
【0021】
可視化ソリューションユニット504は、モバイルデモグラフィーユニット503において集計処理されたデータを可視可能に処理するサーバ装置である。例えば、可視化ソリューションユニット504は、集計されたデータを地図上にマッピング処理することができる。この可視化ソリューションユニット504にて処理されたデータは、企業、官公庁または個人等に提供され、店舗開発、道路交通調査、災害対策、環境対策などに利用される。なお、このように統計処理された情報は、当然にプライバシーを侵害しないように個人等は特定されないように加工されている。
【0022】
なお、社会センサユニット501、ペタマイニングユニット502、モバイルデモグラフィーユニット503、及び可視化ソリューションユニット504はいずれも、前述したようにサーバ装置により構成され、図示は省略するが、通常の情報処理装置の基本構成(即ち、CPU、RAM、ROM、キーボードやマウス等の入力デバイス、外部との通信を行う通信デバイス、情報を記憶する記憶デバイス、及び、ディスプレイやプリンタ等の出力デバイス)を備えることは言うまでもない。
【0023】
図2に通信システム10の機能構成を示す。図2に示すように通信システム10は、複数のBTS(基地局)200それぞれが制御するセクタに在圏する複数の移動機100と、BTS200を制御するRNC300と、交換機400と、通信トラヒック制御装置600と、加入者プロファイル情報記憶部700と、を含んで構成される。通信トラヒック制御装置600は、前述した図1に示したモバイルデモグラフィーユニット503及び可視化ソリューションユニット504に相当する。図1の社会センサユニット501及びペタマイニングユニット502に対応する機能に関しては、図2ではこれらの表記を省略している。
【0024】
RNC300は、後述する測位部301及びRNC通信制御部302を含んで構成されている。また、交換機400は、交換機通信制御部401、変換部402、及び記憶部403を含んで構成されている。
【0025】
通信トラヒック制御装置600は、後述する測位情報取得部601、動態情報抽出部602、制御部603、及び属性情報保持部604を含んで構成されている。
【0026】
まず、RNC300について説明する。測位部301は、後述するRNC通信制御部302がBTS200を介して移動機100と通信接続を行う際に、RRCコネクション要求信号を用いた処理で発生した遅延値に基づいて、移動機100が在圏する一のBTS200におけるセクタ内の位置(座標)を測定する部分である。このRNC300は、所謂PRACH PD測位計算を行うことによりセクタ内の位置を測定することができる。ここでセクタとは、BTS200における通信エリアを複数に等分した場合の一つの領域を指すものである。なお、通信環境に応じて上記PRACH PD測位を行うことなく、移動機100が在圏するセクタの中心座標を、移動機100が位置する座標として計測してもよい。また、移動機100の位置情報は、RNC300によって特定される場合に限らず、例えば、移動機100がGPS機能等の位置情報を取得可能な機能を有する場合には、GPS機能等によって取得した位置情報を、移動機100内に備えられたGPS機能等用の位置情報通信部によって通信トラヒック制御装置600あてに直接送信することもできる。
【0027】
図3は、BTS200とセクタとの関係を示す図である。円形で示されている領域の中心にBTS200が位置するものであり、それを中心に複数に等分されたものがセクタである。例えば図3では、BTS200の通信エリアは最大6セクタからなるものであり、RNC300は、移動機100がそのセクタのいずれにいるかを、BTS200経由で把握することができる。本実施形態では、さらにRRCコネクション要求の処理を行った際に得られる信号の遅延に基づいてセクタ内のどの位置に移動機100が位置するか、そのGAI(Geographical Area ID)を算出することができる。なお、セクタごとにセクタ識別子が割り当てられており、そのセクタ識別子とセクタ内の位置に基づいて移動機100の位置を特定することができる。上記環境に応じてPRACH PD測位を行わない場合には、上記計測した移動機100が在圏するセクタの中心座標を、GAIとして算出してもよい。
【0028】
RNC通信制御部302は、BTS200を介して移動機100と通信接続を行う部分であり、例えば、移動機100からの発信処理に基づいた通信接続処理及び位置登録要求に基づいた通信接続処理を行う。本実施形態では、さらにRNC通信制御部302は、通信接続処理に用いられるInitial UE Messageに、移動機100の位置情報を付加して、交換機400に送信することができる。なお、このInitial UE Messageは、発信または位置登録要求を示す指示情報、移動機100を一意に特定するテンポラリID等のID、及び位置情報を含んでいる。なお、テンポラリIDとは、移動機100がネットワークに接続した際に、交換機400により払い出されたID情報である。
【0029】
つぎに、交換機400について説明する。交換機通信制御部401は、RNC300から送信されるInitial UE Messageを受信し、このInitial UE Messageを用いて通信接続処理を行う部分である。
【0030】
変換部402は、交換機通信制御部401により受信されたInitial UE Messageに含まれているテンポラリID等のIDを電話番号に変換する部分である。変換部402は、変換処理に際して、加入者プロファイル情報を記憶する加入者プロファイル情報記憶部700から、テンポラリID等のIDに対応付けられている電話番号を抽出し、当該抽出した電話番号に変換する。なお、この加入者プロファイル情報記憶部700は、例えばHLR(Home Location Register)に備えられているものであり、ここではテンポラリID等のIDと電話番号とを対応付けて管理及び記憶している。
【0031】
記憶部403は、変換部402で変換された電話番号とInitial UE Messageに含まれている移動機100の位置情報と当該位置情報が測位された時刻とを対応付けて記憶する部分である。この記憶部403に記憶されている位置情報は、交換機通信制御部401による通信処理に従って、後述する所定のタイミングまたは管理センタ500からの要求に応じて収集される。
【0032】
交換機通信制御部401は、記憶部403が記憶している電話番号(移動機100を一意に識別可能とする識別子としての識別情報)、位置情報、及び該位置情報が測位された時刻としての時刻情報を通信トラヒック制御装置600へ送信する。
【0033】
次に、通信トラヒック制御装置600について説明する。測位情報取得部601は、交換機400により送信された測位情報、ここでは、一例として、移動機100の識別情報(例えば移動機100の電話番号)と、RNC300による測位で得られた移動機100の位置情報と、RNC300による測位の時刻を表す測位時刻情報と、を含む測位情報を取得する部分である。
【0034】
動態情報抽出部602は、測位情報取得部601により取得された測位情報に基づいて、移動機ユーザの動態情報を抽出する。第1実施形態では、動態情報抽出部602は、移動機ユーザの動態情報として人口分布情報を抽出する。第1実施形態の動態情報抽出部602は、後述する位置算出部602A、対応付け部602B、属性判断部602C、取得契機判断部602D、及び集計部602Eを含んで構成される。
【0035】
位置算出部602Aは、測位情報取得部601から電話番号、位置情報、及び時刻情報を入力し、所望の時刻において移動機100が存在する位置を表す位置情報(以下「算出位置情報」という)を算出する部分である。
【0036】
ここで、図4〜7及び図9を参照して、位置算出部602Aが、算出位置情報を算出する方法について説明する。
【0037】
図4には位置算出部602Aが利用する情報の例を示す。この図に示すように、位置算出部602Aが利用する情報は、時刻情報、位置情報、及び位置情報取得契機が、ユーザIDと関連付けられた情報である(以後、この情報のことを「ユーザID−PRACH PD GAI対応情報」と称することがある)。
【0038】
「ユーザID」について、位置算出部602Aは、ユーザIDが電話番号と関連付けられて保持されている保持手段(図示せず)を参照することで、測位情報取得部601から入力した電話番号と関連付けられたユーザIDを取得する。
【0039】
「時刻情報」とは、測位部301が位置情報を測位した時刻に関する情報である。「位置情報」とは、上述した方法により所謂PRACH PD測位計算を行うことにより測位された移動機100の位置に関する情報、或いは、移動機100が在圏するセクタの中心座標に関する情報である。位置情報は経度及び緯度で表現してもよい。或いは、基準点を設定して、当該基準点からの相対的な位置で表示してもよい。
【0040】
「位置情報取得契機」とは、移動機100の位置情報が測位された契機の種別に関する情報である。移動機100の位置が測位される契機は(1)所定周期(例えば約一時間周期)の所定タイミングが到来したとき、(2)発着信時、及び(3)位置登録エリアを越えて移動したとき、の少なくとも一つとすることが好適である。但し、測位される契機はこれらに限定されるわけではなく、所望の契機を設定可能である。
【0041】
今、時刻11時における人口分布を求めたいとする。この場合、位置算出部602Aは、図4に示す情報の中からユーザID毎に「時刻情報」が11時の直前(すなわち11時以前であって最も11時に近い時刻)である情報を選別する。選別される情報の例を図5に示す。例えば、ユーザIDが“123”であるユーザが所有する移動機100の場合測位は10時30分、及び11時30分に行われている。この場合、所望の時刻(今回の例では11時)の直前である10時30分に測位された情報が選別される。位置算出部602Aは、その他の各ユーザについても同様に所望の時刻直前に測位された情報を選別する。
【0042】
位置算出部602Aは、上記方法によって選別された、所望の時刻(11時)直前に測位された情報を算出位置情報として算出することができる。
【0043】
図2に戻り、対応付け部602Bは、位置算出部602Aが算出した算出位置情報の表現形式を、一定の範囲の広がりをもつ所望のエリア単位に対応付けて表現する表現形式へと変換する部分である。所望のエリア単位とは、メッシュ状でもよい。或いは、市町村等の行政区画をエリア単位としてもよい。或いは、図6に模式的に示すポロノイ図を用いてもよい。
【0044】
図6において、中抜き円で示した位置がセクタの中心経度緯度を表す。この図に示すように、ポロノイ図とは、互いに隣接するセクタのセクタ中心経度緯度との2等分線で分割した図を言う。更に、セクタ単位の勢力図(サービスエリア図)が存在するなど、セクタと位置の対応情報があればそれを利用してもよい。
【0045】
図7は、対応付け部602Bが、算出位置情報の表現形式を、一定の範囲の広がりをもつ所望のエリア単位に対応付けて表現する表現形式へと変換する方法を説明するための図である。ここでは所望のエリア単位の例として正方形のグリッドを利用する。図7において、各グリッドを一意に識別可能とするエリア単位識別子を各グリッドの左上に丸括弧内に記入する。移動機100の位置が特定の一点として算出されれば(本明細書においては(X1,Y1)等と表記している)対応する一つのエリア単位が特定される。今回の例では、例えば、ユーザIDが“123”であるユーザの算出位置情報は、(X1,Y1)と表現され、対応するエリア単位は、エリア単位識別子が(3)であると表現される。
【0046】
次に、位置算出部602Aが算出位置情報を算出する別の方法について図4、及び図7〜9を用いて説明する。
【0047】
上記方法では、ユーザIDが“234”であるユーザの場合、算出位置情報は、10時30分に測位された情報(すなわち所望の時刻である11時の直前に測位された情報)に基づいて(X7,Y7)であると算出されている。
【0048】
別の方法では、ユーザIDが“234”であるユーザは10時30分の次に11時30分においても測位されているため、この二つの情報(すなわち、所望の時刻の直前及び直後に測位された情報)を用いて11時における位置を算出する。
【0049】
この場合、所望の時刻である11時の直前と直後の時刻の間は同じ速度で直進したとみなして、直前及び直後の時刻情報及び位置情報を按分することによって所望の時刻に存在したであろう位置を算出位置情報として算出する。
【0050】
例えば、ユーザIDが“234”であるユーザの場合、所望の時刻(11時)における算出位置情報を(X9,Y9)とすると、位置算出部602Aは、「X9=(X7+X8)/2」、「Y9=(Y7+Y8)/2」、の式によって算出位置情報を算出する。
【0051】
これを対応付け部602Bがエリア単位に対応付けて表現する表現形式へと変換すると、図8のようになる。11時30分における位置情報である(X8,Y8)、10時30分における位置情報である(X7,Y7)、及び位置算出部602Aが算出する算出位置情報(X9,Y9)の関係は、図8に示すように一直線上に並び、且つ対応する時刻情報と、位置情報を按分(今回の例では(X9,Y9)は、(X7,Y7)と(X8,Y8)の中間)した位置となる。
【0052】
この場合、対応付け部602Bは、ユーザIDが“234”であるユーザについて所望の時刻である11時の位置はエリア単位識別子(4)(なお、上記直前に測位された位置情報のみを用いた場合エリア単位識別子は(1)であると判断されていた。図5及び図7参照)で表示されるエリア単位であると判断する。
【0053】
以上説明したとおり、当該方法によってより現実に即した正確な算出位置情報を算出することが可能となる。
【0054】
次に、位置算出部602Aが算出位置情報を算出する更に別の方法について説明する。上記別の方法では、所望の時刻の直前及び直後に測位された情報を用いたが、更に別の方法では直前に測位された複数の情報を用いる。
【0055】
図4を用いて、ユーザIDが“789”であるユーザを例として説明する。ユーザIDが“789”であるユーザについては、9時(X4,Y4)及び10時(X5,Y5)に測位が行われている。この2回に測位された位置情報から、その後も同じ速度で直進したと仮定して所望の時刻(11時)における算出位置情報を算出する。
【0056】
ユーザIDが“789”であるユーザの場合、所望の時刻(11時)における算出位置情報を(X10,Y10)とすると、位置算出部602Aは、「X10=(X5−X4)+X5」、「Y10=(Y5−Y4)+Y5」、の式によって算出位置情報を算出する。
【0057】
これを対応付け部602Bがエリア単位に対応付けて表現する表現形式へと変換すると、図9のようになる。図9に示すように、ユーザIDが“789”であるユーザの9時における計測位置である(X4,Y4)、及び10時における計測位置である(X5,Y5)が図9に示す位置であった場合、上記方法によって位置算出部602Aが算出した(X10,Y10)は、図9にBで示すように(X4,Y4)から(X5,Y5)へと引いた直線をそのまま(X4,Y4)〜(X5,Y5)間の距離分延ばした位置となる。
【0058】
この場合、対応付け部602Bは、ユーザIDが“789”であるユーザについて所望の時刻である11時の位置はエリア単位識別子(3)(なお、上記直前に測位された位置情報のみを用いた場合エリア単位識別子は(2)であると判断されていた。図5及び図7参照)で表示されるエリア単位であると判断する。
【0059】
以上説明したとおり、この方法によってより現実に即した正確な算出位置情報を算出することが可能となる。
【0060】
位置算出部602Aが算出位置情報を算出する方法は、上記の例に限定されるわけではない。その他に、例えば、同じ時間帯の前日の行動を考慮してもよい。また、上記方法では同じ速度で直線的に移動すると仮定して按分によって算出したが、道路などの路線を考慮してもよい。
【0061】
図2に戻って、属性情報保持部604は、移動機100のユーザの属性情報をユーザIDと関連付けて保持している部分である。図10に属性情報保持部604が保持する属性情報の例を示す。図10に示すように、属性情報には例えば性別、年齢、住所を含めてもよい。
【0062】
属性判断部602Cは、属性情報保持部604が保持する属性情報に基づいて後述する人口分布情報(それは、算出位置情報を統合することによって得られる)を出力するために用いるべきか否かを判断する部分である。
【0063】
具体的には、属性判断部602Cは、属性情報保持部604が保持する属性情報を参照することで所望の属性が一定の要件を満たしているか否かを判断する。一定の要件を満たしていると判断した場合には、属性判断部602Cは、対応する算出位置情報を後述する人口分布情報を出力するために用いると判断する。一定の要件を満たしていないと判断した場合には、属性判断部602Cは、対応する算出位置情報を後述する人口分布情報を出力するために用いないと判断する。
【0064】
図11には、図10の属性情報において所望の属性「性別」が“男性”である(即ち、属性に係る一定の要件を満たしている)算出位置情報を用いた場合の例を示す。なお、所望の属性、及び一定の要件については自由に設定することができる。
【0065】
例えば、属性を「年齢」とし、一定の要件を“10歳以上30歳未満”としてもよい。或いは、例えば属性を「住所」とし、一定の要件を“千代田区”としてもよい。
【0066】
取得契機判断部602Dは、位置情報を後述する人口分布情報を出力するために用いるべきか否かを、位置情報取得契機に基づいて判断する部分である。
【0067】
具体的には、取得契機判断部602Dは、図4に示す位置情報取得契機を参照し、それが所望の契機であるか否かを判断する。所望の契機であると判断した場合には取得契機判断部602Dは、対応する算出位置情報を後述する人口分布情報を出力するために用いると判断する。所望の契機でないと判断した場合には取得契機判断部602Dは、対応する算出位置情報を後述する人口分布情報を出力するために用いないと判断する。
【0068】
所望の契機とは、自由に設定可能である。複数の所望の契機を設定し、それらの契機の何れかの契機に該当する場合に、取得契機判断部602Dは、対応する算出位置情報を後述する人口分布情報を出力するために用いると判断してもよい。
【0069】
通信トラヒック制御装置600が取得契機判断部602Dを備えることによって、位置情報取得契機に応じた人口分布情報を得ることが可能となる。例えば、エリアを跨ぐことを位置情報取得契機とする位置情報には分布の偏りがあることが分かっている場合には、エリアを跨ぐ契機以外の契機のみを所望の契機として設定することで、偏りがあることが分かっている位置情報を排除することが可能となる。
【0070】
集計部602Eは、属性判断部602Cによって人口分布情報を出力するために用いると判断され、且つ、取得契機判断部602Dによって人口分布情報を出力するために用いると判断された算出位置情報を統合することによって人口分布情報を算出し、算出した人口分布情報を制御部603へ出力する部分である。
【0071】
具体的には、集計部602Eは、属性判断部602Cによって人口分布情報を出力するために用いると判断され、且つ、取得契機判断部602Dによって人口分布情報を出力するために用いると判断された算出位置情報の数を、対応付け部602Bによって対応付けられたエリア単位毎に集計(統合)することによってエリア単位毎の人口分布情報を算出する。なお、ここでの「人口分布情報」は、「移動機ユーザに関する人口分布情報」である。
【0072】
なお、本実施形態において、集計部602Eは、属性判断部602Cによって人口分布情報を出力するために用いると判断され、且つ、取得契機判断部602Dによって人口分布情報を出力すると判断された算出位置情報を統合しているが、それに限定しない。例えば、属性判断部602Cによる判断を省略してもよい。また、取得契機判断部602Dによる判断を省略してもよい。更に、属性判断部602C及び取得契機判断部602Dの両方による判断を省略してもよい。
【0073】
本実施形態では、位置算出部602Aによって算出位置情報が算出された後に、属性判断部602C及び取得契機判断部602Dが上記判断をしているが、順番は逆でもよい。
【0074】
制御部603は、集計部602Eから出力された人口分布情報に基づいて、通信トラヒック制御を行う部分である。通信トラヒック制御処理については、例えば、輻輳状態を未然に防止するための通信トラヒック規制制御と、消費電力を最小化するための縮退運転制御とを、図13〜図16に基づき、後に説明する。
【0075】
[通信システムにて実行される処理の流れについて]
つぎに、このように構成された通信システム10の処理について図12を参照して説明する。
【0076】
移動機100から発信要求または位置登録要求が出力されると、RNC300では、それら要求に従って、移動機100の位置測位が行われる(ステップS101)。すなわち、RRCコネクション要求がRNC300(RNC通信制御部302)にて受信されると、RNC通信制御部302により、その要求に対してRRCコネクションセットアップが移動機100に送信される。そして、移動機100からRRCコネクションセットアップの完了信号が、RNC通信制御部302により受信される(ステップS101)。ここで得られた信号の遅延値に基づいて、移動機100のセクタ内におけるおおよその位置情報が測位部301により計算され、位置測位が行われる(ステップS102:測位ステップ)。
【0077】
そして、RNC300では、RNC通信制御部302により、移動機100の位置情報と、そのテンポラリIDとが抽出される(ステップS103)。RNC通信制御部302により、抽出された位置情報とテンポラリIDとは、Initial UE Messageに付加され、交換機400に送信される(ステップS104:送信ステップ)。
【0078】
交換機400では、交換機通信制御部401により、Initial UE Messageが受信され、そして当該Initial UE Messageに含まれているテンポラリIDは、変換部402により移動機100の電話番号に変換される(ステップS105)。そして、記憶部403に、変換された電話番号、測位がなされた時刻としての時刻情報、及び位置情報が、測位情報として対応付けて記憶される(ステップS106)。
【0079】
記憶部403に記憶された測位情報(電話番号、時刻情報及び位置情報)は、通信トラヒック制御装置600へ向けて定期的に送信され、または通信トラヒック制御装置600からの要求に応じて通信トラヒック制御装置600へ向けて送信され(ステップS107)、通信トラヒック制御装置600の測位情報取得部601により取得される(ステップS107A)。
【0080】
具体的には、測位情報取得部601は、(1)所定周期(例えば約一時間周期)の所定タイミングが到来したとき、(2)発着信時、及び(3)位置登録エリアを越えて移動したときの少なくとも一つを契機として時刻情報及び位置情報を取得する。
【0081】
動態情報抽出部602の位置算出部602Aは、ユーザID−PRACH PD GAI対応情報に基づいて、ユーザ毎に、所望の時刻における移動機100が存在したであろう位置に関する情報である算出位置情報を算出する(ステップS108:位置算出ステップ)。
【0082】
対応付け部602Bは、ステップS108において算出した算出位置情報の表現形式を、一定の範囲の広がりをもつエリア単位に対応付けて表現する表現形式へと変換する(ステップS109)。
【0083】
属性判断部602Cは、算出位置情報を、人口分布情報を出力するために用いるべきか否かについて属性情報に基づいて判断し、用いると判断された算出位置情報のみを選別する(ステップS110)。
【0084】
取得契機判断部602Dは、算出位置情報を、人口分布情報を出力するために用いるべきか否かについて位置情報取得契機に基づいて判断し、用いると判断された算出位置情報のみを選別する(ステップS111)。
【0085】
集計部602Eは、算出位置情報を集計(統合)することによって人口分布情報を抽出し(ステップS112)、制御部603へ出力する。本実施形態では、集計部602Eは、属性による分類がなされていない全般的な人口分布情報、および、所定の属性別(例えば年齢層別(10代、20代、30代・・))の人口分布情報を抽出し、制御部603へ出力するものとする。
【0086】
そして、制御部603は、集計部602Eから出力された人口分布情報に基づいて、例えば、以下のような通信トラヒック制御を行う(ステップS113)。ここでの通信トラヒック制御としては、(1)属性による分類がなされていない全般的な人口分布情報に基づくアクセス規制制御、(2)属性による分類がなされていない全般的な人口分布情報に基づく縮退運転制御、(3)所定の属性別の人口分布情報に基づくアクセス規制制御、(4)所定の属性別の人口分布情報に基づく縮退運転制御、の計4つを取り上げる。なお、(1)、(3)については「基地局単位」でのアクセス規制制御を以下に例示するが、「交換機単位」でアクセス規制制御を行ってもよい。(2)、(4)については「基地局単位」での縮退運転制御を以下に例示するが、「交換機単位」で縮退運転制御を行ってもよい。また、ここでの「縮退運転」とは、例えば仮想化技術を利用してネットワーク全体のリソース量を必要分のみに縮退して運転すること、無線チャネルのうち不要な無線チャネルを一時的に停波すること、一部の基地局の出力を上げてエリアを広げることで周辺基地局の運転そのものを停止することなどを示している。但し、これらに限定するものではない。
【0087】
まず、(1)属性による分類がなされていない全般的な人口分布情報に基づくアクセス規制制御の例を図13により説明する。図13に示すように、制御部603は、集計部602Eから出力された人口分布情報のうち、属性による分類がなされていない全般的な人口分布情報を参照し(ステップS201)、ある対象エリアの人口が第1の閾値X以上であるか否かを判断する(ステップS202)。ここで、対象エリアの人口が第1の閾値X未満であれば、対象エリアにおける通信トラヒック量が、通信トラヒック制御を要するレベルにまで増加する可能性は低いと予想されるため、アクセス規制制御は行わずに、処理を終了する。
【0088】
一方、対象エリアの人口が第1の閾値X以上であれば、第1の閾値Xより大きい第2の閾値Yを用いて、対象エリアの人口が第2の閾値Y以上であるか否かを判断する(ステップS203)。ここで、対象エリアの人口が第2の閾値Y以上であれば、対象エリアにおける通信トラヒック量がかなり増加する可能性が高いと予想されるため、規制レベルの高いアクセス規制制御(yy%のアクセス規制)を行う(ステップS204)。一方、対象エリアの人口が第2の閾値Y未満(即ち、第1の閾値X以上で第2の閾値Y未満)であれば、対象エリアにおける通信トラヒック量がある程度増加し、多少のアクセス規制制御を要する事態となる可能性が高いと予想されるため、規制レベルの低いアクセス規制制御(yy%よりも低いxx%のアクセス規制)を行う(ステップS205)。
【0089】
以上のようにして全般的な人口分布情報に基づくアクセス規制制御が行われる。なお、図13の処理は、予め定められた単位時間おきに繰り返される。また、図13の処理は、通信トラヒック制御の実施時の処理であり、通信トラヒック制御の解除についても同様のロジックで実行される。
【0090】
次に、(2)属性による分類がなされていない全般的な人口分布情報に基づく縮退運転制御の例を図14により説明する。図14に示すように、制御部603は、集計部602Eから出力された人口分布情報のうち、属性による分類がなされていない全般的な人口分布情報を参照し(ステップS201)、ある対象エリアの人口が第1の閾値X以上であるか否かを判断する(ステップS202)。ここで、対象エリアの人口が第1の閾値X未満であれば、縮退運転制御は行わずに処理を終了する。
【0091】
一方、対象エリアの人口が第1の閾値X以上であれば、第1の閾値Xより大きい第2の閾値Yを用いて、対象エリアの人口が第2の閾値Y以上であるか否かを判断する(ステップS203)。ここで、対象エリアの人口が第2の閾値Y以上であれば、対象エリアにおける通信トラヒック量が突発的に増加する可能性があると予想されるため、縮退させる率を最小限にして縮退運転制御(縮退させる率がbb%の縮退運転制御)を行う(ステップS206)。一方、対象エリアの人口が第2の閾値Y未満(即ち、第1の閾値X以上で第2の閾値Y未満)であれば、対象エリアにおける通信トラヒック量はある程度増加するものの、突発的に増加する可能性は低いと予想されるため、縮退させる率を最大限にして縮退運転制御(縮退させる率がaa%(bb%よりも高い率)の縮退運転制御)を行う(ステップS207)。
【0092】
以上のようにして全般的な人口分布情報に基づく縮退運転制御が行われる。なお、図14の処理は、予め定められた単位時間おきに繰り返される。また、図14の処理は、通信トラヒック制御の実施時の処理であり、通信トラヒック制御の解除についても同様のロジックで実行される。
【0093】
次に、(3)所定の属性別の人口分布情報に基づくアクセス規制制御の例を図15により説明する。図15に示すように、制御部603は、集計部602Eから出力された人口分布情報のうち、所定の属性別(ここでは一例として年齢層別(10代、20代、30代・・))の人口分布情報を参照し、ある対象エリアの40才未満の人口Aおよび同対象エリアの40才以上の人口Bを求める(ステップS211)。そして、制御部603は、40才未満の人口Aが所定の閾値X以上であるか否かを判断し(ステップS212)、40才以上の人口Bが所定の閾値X以上であるか否かを判断する(ステップS213、S214)。
【0094】
一般に、40才未満の人は、40才以上の人と比較して、移動機で電子メール等を利用することが多いため、40才未満の1人当たりの通信トラヒック量は、40才以上の1人当たりの通信トラヒック量よりも多い。そこで、40才未満の人口Aおよび40才以上の人口Bのうち、40才以上の人口Bのみが閾値X以上の場合は、40才未満の人口Aが閾値X未満なので、通信トラヒック量はある程度増加するものの、大きな増加はないと予測されるため、規制レベルの最も低いアクセス規制制御(xx%のアクセス規制)を行う(ステップS217)。一方、40才未満の人口Aのみが閾値X以上の場合は、40才以上の人口Bのみが閾値X以上の場合よりも通信トラヒック量は多くなると予測されるため、規制レベルがxx%のアクセス規制よりも高いアクセス規制制御(yy%のアクセス規制)を行う(ステップS216)。
【0095】
また、40才未満の人口Aおよび40才以上の人口Bの両方が閾値X以上の場合は、通信トラヒック量がかなり増加すると予測されるため、規制レベルが最も高いアクセス規制制御(zz%のアクセス規制)を行う(ステップS215)。一方、40才未満の人口Aおよび40才以上の人口Bの両方が閾値X未満の場合(ステップS212で否定判断、ステップS214で否定判断の場合)は、対象エリアにおける通信トラヒック量が、通信トラヒック制御を要するレベルにまで増加する可能性は低いと予想されるため、アクセス規制制御は行わずに、処理を終了する。
【0096】
以上のようにして属性別の人口分布情報に基づくアクセス規制制御が行われる。なお、図15の処理は、予め定められた単位時間おきに繰り返される。また、図15の処理は、通信トラヒック制御の実施時の処理であり、通信トラヒック制御の解除についても同様のロジックで実行される。
【0097】
次に、(4)所定の属性別の人口分布情報に基づく縮退運転制御の例を図16により説明する。図16に示すように、制御部603は、集計部602Eから出力された人口分布情報のうち、所定の属性別(ここでは一例として年齢層別(10代、20代、30代・・))の人口分布情報を参照し、ある対象エリアの40才未満の人口Aおよび同対象エリアの40才以上の人口Bを求める(ステップS211)。そして、制御部603は、40才未満の人口Aが所定の閾値X以上であるか否かを判断し(ステップS212)、40才以上の人口Bが所定の閾値X以上であるか否かを判断する(ステップS213、S214)。
【0098】
一般に、40才未満の人は、40才以上の人と比較して、移動機で電子メール等を利用することが多いため、40才未満の1人当たりの通信トラヒック量は、40才以上の1人当たりの通信トラヒック量よりも多い。そこで、40才未満の人口Aおよび40才以上の人口Bのうち、40才以上の人口Bのみが閾値X以上の場合は、一方の40才未満の人口Aが閾値X未満なので、通信トラヒック量はある程度増加するものの、突発的に増加する可能性は低いと予想される。そのため、縮退させる率を最大限にして縮退運転制御(縮退させる率が後述のcc%、bb%よりも高いaa%の縮退運転制御)を行う(ステップS220)。一方、40才未満の人口Aのみが閾値X以上の場合は、40才以上の人口Bのみが閾値X以上の場合よりも、通信トラヒック量が突発的に増加する可能性は高くなると予測されるため、縮退させる率が後述のcc%より高く上記aa%より低いbb%の縮退運転制御を行う(ステップS219)。
【0099】
また、40才未満の人口Aおよび40才以上の人口Bの両方が閾値X以上の場合は、通信トラヒック量が突発的に増加する可能性は最も高いと予測されるため、縮退させる率を最小限にして縮退運転制御(縮退させる率が上記aa%、bb%より低いcc%の縮退運転制御)を行う(ステップS218)。一方、40才未満の人口Aおよび40才以上の人口Bの両方が閾値X未満の場合(ステップS212で否定判断、ステップS214で否定判断の場合)は、縮退運転制御は行わずに処理を終了する。
【0100】
以上のようにして属性別の人口分布情報に基づく縮退運転制御が行われる。なお、図16の処理は、予め定められた単位時間おきに繰り返される。また、図16の処理は、通信トラヒック制御の実施時の処理であり、通信トラヒック制御の解除についても同様のロジックで実行される。
【0101】
以上説明した第1実施形態によれば、従来のように通信トラヒック量を基準とせず、通信トラヒック量発生の原因となる移動機ユーザの動態情報(ここでは人口分布情報)に基づいて通信トラヒック制御を行うため、より迅速で的確な通信トラヒック制御を実行することができる。そのため、例えば、通信トラヒック規制制御によって輻輳状態を未然に防止でき、縮退運転制御によって、消費電力を最小化することができる。また、属性別の動態情報(ここでは属性別の人口分布情報)に基づいて通信トラヒック制御を行うことができ、各移動機ユーザの属性に応じたよりきめ細かい通信トラヒック制御を実行することができる。
【0102】
[第2実施形態]
以下、移動機ユーザの動態情報として人口流量情報を抽出し、抽出した人口流量情報に基づいて通信トラヒック制御を行う第2実施形態について説明する。
【0103】
第2実施形態の通信システムのシステム構成は、第1実施形態と同様の図1に示す構成であるので、説明を省略する。一方、第2実施形態の通信システムの機能構成は図17に示す。第2実施形態では、通信トラヒック制御装置600の機能構成のみが第1実施形態の構成(図2)とは異なるため、図17を用いて第2実施形態の通信トラヒック制御装置600の機能構成を説明する。
【0104】
通信トラヒック制御装置600は、測位情報取得部601、動態情報抽出部602、制御部603、及び属性情報保持部604を含んで構成されている。このうち測位情報取得部601は、交換機400により送信された測位情報、ここでは、一例として、移動機100の識別情報(例えば移動機100の電話番号)と、RNC300による測位で得られた移動機100の位置情報と、RNC300による測位の時刻を表す測位時刻情報と、を含む測位情報を取得する部分である。
【0105】
動態情報抽出部602は、測位情報取得部601により取得された測位情報に基づいて、移動機ユーザの動態情報を抽出する。第2実施形態では、動態情報抽出部602は、移動機ユーザの動態情報として人口流量情報を抽出する。第2実施形態の動態情報抽出部602は、後述する位置抽出部602F、対応付け部602G、属性判断部602H、及び集計部602Iを含んで構成される。
【0106】
位置抽出部602Fは、測位情報取得部601から電話番号、位置情報、及び時刻情報を入力し、所望の時刻における移動機100の移動状況を示す情報である移動情報を出力する部分である。
【0107】
ここで、所望の時刻における移動機の100の移動状況とは、例えば、設定した時刻における直前に測位された位置から、直後に測位された位置への移動を指す。以下説明のための例では、所望の時刻における移動機の100の移動状況として、設定した時刻における直前に測位された位置から、直後に測位された位置への移動を用いて説明しているが、これに限ることを意図しない。例えば、所望の時刻の直前に測位された複数の位置情報(移動モデル)を用いて、所望の時刻における移動状況(今の移動モデル)を推定してもよい。例えばこの場合、直前の2個の測定位置を結ぶ直線をそのまま延長して、時間按分によって所望の時刻における移動状況を推定してもよい。2個以上の測定位置を用いても勿論よい。
【0108】
ここで、図18〜図21を参照して、所望の時刻の直近における移動機100の位置の抽出方法について説明する。
【0109】
図18には位置抽出部602Fが利用する情報の例を示す。この図に示すように、位置抽出部602Fが利用する情報は、時刻情報、位置情報、及び位置情報取得契機が、ユーザIDと関連付けられた情報である(以後、この情報のことを「ユーザID−PRACH PD GAI対応情報」と称することがある)。
【0110】
「ユーザID」について、通信トラヒック制御装置600は、ユーザIDが電話番号と関連付けられて保持されている保持手段(図示せず)を参照することで、測位情報取得部601から入力した電話番号と関連付けられたユーザIDを取得する。
【0111】
「時刻情報」には、位置情報を測位した時刻が保持されている。また、「位置情報」には、上述した方法により所謂PRACH PD測位計算を行うことにより測位された移動機100の位置情報、或いは、移動機100が在圏するセクタの中心座標に関する情報が保持されている。位置情報は経度及び緯度で表現してもよい。或いは、基準点を設定して、当該基準点からの相対的な位置で表示してもよい。
【0112】
「位置情報取得契機」には、移動機100の位置情報が測位された契機の種別が保持される。移動機100の位置が測位される契機は(1)周期的(例えば約一時間周期)、(2)発着信時、及び(3)位置登録エリアを越えて移動した場合、の少なくとも一つとすることが好適である。但し、測位される契機はこれらに限定されるわけではなく、所望の契機を設定可能である。
【0113】
今、時刻11時における人口の流量を求めたいとする。この場合、位置抽出部602Fは、図18に示す情報の中からユーザID毎に「時刻」が11時の直前及び直後の情報を選別する。選別される情報の例を図19及び図20に示す。図19には、所望の時刻の直前の情報を、及び図20には所望の時刻の直後の情報を示す。例えば、ユーザIDが“123”であるユーザが所有する移動機100の場合測位は10時30分、11時30分、及び11時45分に行われている。この場合、所望の時刻(今回の例では11時)の前後である10時30分に測位された情報、及び11時30分に測位された情報が選別される。
【0114】
図21に、位置抽出部602Fが出力する移動情報の例を示す。図21に示すように、位置抽出部602Fは、例えば、ユーザIDが“123”であるユーザについては、移動情報として位置(X1、Y1)(すなわち直前に測位された位置)、位置(X2、Y2)(すなわち直後に測位された位置)、及び、ユーザIDを出力する。
【0115】
さて、図17に戻り、対応付け部602Gは、位置抽出部602Fが抽出した移動情報を、一定の範囲の広がりを持つ所望のエリア単位に対応付けて一のエリア単位から他のエリア単位への移動として表現する表現形式へと変換する部分である。所望のエリア単位とは、メッシュ状でもよい。或いは、市町村等の行政区画をエリア単位としてもよい。或いは、図6に模式的に示すポロノイ図を用いてもよい。図6において、中抜き円で示した位置がセクタの中心経度緯度を表す。この図に示すように、ポロノイ図とは、互いに隣接するセクタのセクタ中心経度緯度との2等分線で分割した図を言う。更に、セクタ単位の勢力図(サービスエリア図)が存在するなど、セクタと位置の対応情報があればそれを利用してもよい。
【0116】
図22は、移動情報を所望のエリア単位に対応付けて一のエリア単位から他のエリア単位への移動として表現する表現形式へと変換する方法を説明するための図である。ここでは所望のエリア単位を正方形のグリッドとする。図22において、各グリッドを一意に識別可能とするエリア単位識別子を各グリッドの左上に丸括弧内に記入する。移動機100の位置が特定されれば(本明細書においては(X1、Y1)等と表記している)対応する一つのエリア単位が特定される。今回の例では、例えばユーザIDが“123”であるユーザの例(移動情報は、(X1、Y1)→(X2、Y2))では、エリア単位識別子が(3)であるエリア単位からエリア単位識別子が(5)であるエリア単位へと移動している。
【0117】
この方法によって、対応付け部602Gは、位置抽出部602Fが抽出した移動情報を、一定の範囲の広がりをもつエリア単位に対応付けて一のエリア単位(エリア単位識別子が(3))から他のエリア単位(エリア単位識別子が(5))への移動として表現する表現形式へと変換できる。
【0118】
属性情報保持部604は、移動機100のユーザの属性情報をユーザIDと関連付けて保持している部分である。図23に属性情報保持部604が保持する属性情報の例を示す。図23に示すように、属性情報には例えば性別、年齢、住所を含めてもよい。
【0119】
属性判断部602Hは、属性情報保持部604が保持する属性情報に基づいて移動情報を、後述する人口流量情報(即ち、移動情報を集計することによって得られる情報)を出力するために用いるべきか否かを判断する部分である。
【0120】
具体的には、属性判断部602Hは、属性情報保持部604が保持する属性情報を参照することで所望の属性が一定の要件を満たしているか否かを判断する。一定の要件を満たしていると判断した場合には、属性判断部602Hは、対応する移動情報を後述する人口流量情報を出力するために用いると判断する。一定の要件を満たしていないと判断した場合には、属性判断部602Hは、対応する移動情報を後述する人口流量情報を出力するために用いないと判断する。
【0121】
図24には、図23の属性情報において所望の属性「性別」が“男性”である(即ち、属性に係る一定の要件を満たしている)移動情報を用いた場合の例を示す。なお、所望の属性、及び一定の要件については自由に設定することができる。
【0122】
その他に、例えば、属性を「年齢」とし、一定の要件を“10歳以上30歳未満”としてもよい。或いは、例えば属性を「住所」とし、一定の要件を“中央区”としてもよい。
【0123】
集計部602Iは、属性判断部602Hによって出力するために用いると判断された移動情報を集計(統合)することによって人口流量情報を算出し、算出した人口流量情報を制御部603へ出力する部分である。
【0124】
図25は、移動情報を集計(統合)することによって人口流量情報を算出する方法を説明するための図である。但し、図25においては表中に記入されているべき数字を省略している。図25における一番左の列が所望の時刻の直前に測位された位置情報に対応するエリア単位の識別子が記入されている。図25における一番上の行が所望の時刻の直後に測位された位置情報に対応するエリア単位の識別子が記入されている。
【0125】
図21及び図22に示す例を用いて説明する。ユーザIDが“123”であるユーザはエリア単位識別子(3)から(5)へ移動しているため、図25のAで示した欄の数字に1が加えられる。同様に、ユーザIDが“456”であるユーザはエリア単位識別子(7)から(8)へ移動しているため、図25のBで示した欄の数字に1が加えられる。ユーザIDが“789”であるユーザはエリア単位識別子(8)から(2)へ移動しているため、図25のCで示した欄の数字に1が加えられる。
【0126】
集計部602Iは、上記方法により、移動情報を統合し、人口流量情報(すなわち複数の移動機100についての移動情報をエリア単位毎に集計した情報)を算出することができる。例えば、図26には、上記方法によって算出した人口流量情報の表示例を示す。この図において6角形で囲まれた領域が一つのエリア単位を示す。当該表示例では、矢印の始点に位置するエリア単位から矢印の先端に位置するエリア単位に矢印の近くに記載された数字の割合で人が移動したことを示す。なお、ここでの「人口流量情報」は、「移動機ユーザに関する人口流量情報」である。
【0127】
なお、集計部602Iは、図19及び図20に記載されている「位置情報取得契機」を参照することにより、特定の信号種別(特定信号種別)によって位置情報が取得された情報のみを集計してもよい。その場合、例えば「位置情報取得契機」が“周期位置登録”である情報のみを集計してもよい。例えば、「位置情報取得契機」が“発信”である情報には偏りが存在することが分かっているような場合には、そのような特定信号種別によって生じる偏りを排除することが可能となる。
【0128】
制御部603は、集計部602Iから出力された人口流量情報に基づいて、通信トラヒック制御を行う部分である。通信トラヒック制御処理については、例えば、輻輳状態を未然に防止するための通信トラヒック規制制御と、消費電力を最小化するための縮退運転制御とを、図28〜図31に基づき、後に説明する。
【0129】
[通信システムにて実行される処理の流れについて]
つぎに、このように構成された通信システム10の処理について図27を参照して説明する。
【0130】
移動機100から発信要求または位置登録要求が出力されると、RNC300では、それら要求に従って、移動機100の位置測位が行われる(ステップS101)。すなわち、RRCコネクション要求がRNC300(RNC通信制御部302)にて受信されると、RNC通信制御部302により、その要求に対してRRCコネクションセットアップが移動機100に送信される。そして、移動機100からRRCコネクションセットアップの完了信号が、RNC通信制御部302により受信される(ステップS101)。ここで得られた信号の遅延値に基づいて、移動機100のセクタ内におけるおおよその位置情報が測位部301により計算され、位置測位が行われる(ステップS102:測位ステップ)。
【0131】
そして、RNC300では、RNC通信制御部302により、移動機100の位置情報と、そのテンポラリIDとが抽出される(ステップS103)。RNC通信制御部302により、抽出された位置情報とテンポラリIDとは、Initial UE Messageに付加され、交換機400に送信される(ステップS104:送信ステップ)。
【0132】
交換機400では、交換機通信制御部401により、Initial UE Messageが受信され、そして当該Initial UE Messageに含まれているテンポラリIDは、変換部402により移動機100の電話番号に変換される(ステップS105)。そして、記憶部403に、変換された電話番号、測位がなされた時刻としての時刻情報、及び位置情報が、測位情報として対応付けて記憶される(ステップS106)。
【0133】
記憶部403に記憶された測位情報(電話番号、時刻情報及び位置情報)は、通信トラヒック制御装置600へ向けて定期的に送信され、または通信トラヒック制御装置600からの要求に応じて通信トラヒック制御装置600へ向けて送信され(ステップS107)、通信トラヒック制御装置600の測位情報取得部601により取得される(ステップS107A)。
【0134】
具体的には、測位情報取得部601は、(1)一定周期(例えば約一時間周期)、(2)発着信時、及び(3)位置登録エリアを越えて移動したときの少なくとも一つを契機として位置情報を取得する。
【0135】
動態情報抽出部602の位置抽出部602Fは、ユーザID−PRACH PD GAI対応情報に基づいて、ユーザ毎に、所望の時刻の直前及び直後における移動機100の移動状況を示す情報である移動情報を抽出する(ステップS121:位置抽出ステップ)。
【0136】
対応付け部602Gは、ステップS121で抽出した移動情報を所望のエリア単位に対応付けて一のエリア単位から他のエリア単位への移動として表現する表現形式へと変換する(ステップS122)。
【0137】
属性判断部602Hは、属性情報に基づいて移動情報を、人口流量情報を出力するために用いるべきか否かを判断し、用いるべき移動情報のみを選別する(ステップS123)。
【0138】
集計部602Iは、移動情報を集計(統合)することによって人口流量情報を抽出し(ステップS124)、制御部603へ出力する。本実施形態では、集計部602Iは、属性による分類がなされていない全般的な人口流量情報、および、所定の属性別(例えば年齢層別(10代、20代、30代・・))の人口流量情報を抽出し、制御部603へ出力するものとする。なお、ここでの「人口流量情報」については、あるエリアに流入する数だけでなく、同エリアから流出する数も考慮して抽出される。即ち、人口流量については、単一の方向でなく、「流入」と「流出」の双方向の数が考慮される。
【0139】
そして、制御部603は、集計部602Iから出力された人口流量情報に基づいて、例えば、以下のような通信トラヒック制御を行う(ステップS125)。ここでの通信トラヒック制御としては、(1)属性による分類がなされていない全般的な人口流量情報に基づくアクセス規制制御、(2)属性による分類がなされていない全般的な人口流量情報に基づく縮退運転制御、(3)所定の属性別の人口流量情報に基づくアクセス規制制御、(4)所定の属性別の人口流量情報に基づく縮退運転制御、の計4つを取り上げる。なお、(1)、(3)については「基地局単位」でのアクセス規制制御を以下に例示するが、「交換機単位」でアクセス規制制御を行ってもよい。(2)、(4)については「基地局単位」での縮退運転制御を以下に例示するが、「交換機単位」で縮退運転制御を行ってもよい。また、ここでの「縮退運転」とは、例えば仮想化技術を利用してネットワーク全体のリソース量を必要分のみに縮退して運転すること、無線チャネルのうち不要な無線チャネルを一時的に停波すること、一部の基地局の出力を上げてエリアを広げることで周辺基地局の運転そのものを停止することなどを示している。但し、これらに限定するものではない。
【0140】
まず、(1)属性による分類がなされていない全般的な人口流量情報に基づくアクセス規制制御の例を図28により説明する。図28に示すように、制御部603は、集計部602Iから出力された人口流量情報のうち、属性による分類がなされていない全般的な人口流量情報を参照し(ステップS231)、ある対象エリアへ入る人口流量が第1の閾値X以上であるか否かを判断する(ステップS232)。ここで、対象エリアへ入る人口流量が第1の閾値X未満であれば、対象エリアにおける通信トラヒック量が、通信トラヒック制御を要するレベルにまで増加する可能性は低いと予想されるため、アクセス規制制御は行わずに、処理を終了する。
【0141】
一方、対象エリアへ入る人口流量が第1の閾値X以上であれば、第1の閾値Xより大きい第2の閾値Yを用いて、対象エリアへ入る人口流量が第2の閾値Y以上であるか否かを判断する(ステップS233)。ここで、対象エリアへ入る人口流量が第2の閾値Y以上であれば、対象エリアにおける通信トラヒック量がかなり増加する可能性が高いと予想されるため、規制レベルの高いアクセス規制制御(yy%のアクセス規制)を行う(ステップS234)。一方、対象エリアへ入る人口流量が第2の閾値Y未満(即ち、第1の閾値X以上で第2の閾値Y未満)であれば、対象エリアにおける通信トラヒック量がある程度増加し、多少のアクセス規制制御を要する事態となる可能性が高いと予想されるため、規制レベルの低いアクセス規制制御(yy%よりも低いxx%のアクセス規制)を行う(ステップS235)。
【0142】
以上のようにして全般的な人口流量情報に基づくアクセス規制制御が行われる。なお、図28の処理は、予め定められた単位時間おきに繰り返される。また、図28の処理は、通信トラヒック制御の実施時の処理であり、通信トラヒック制御の解除についても同様のロジックで実行される。
【0143】
次に、(2)属性による分類がなされていない全般的な人口流量情報に基づく縮退運転制御の例を図29により説明する。図29に示すように、制御部603は、集計部602Iから出力された人口流量情報のうち、属性による分類がなされていない全般的な人口流量情報を参照し(ステップS231)、ある対象エリアへ入る人口流量が第1の閾値X以上であるか否かを判断する(ステップS232)。ここで、対象エリアへ入る人口流量が第1の閾値X未満であれば、対象エリアにおける通信トラヒック量が、通信トラヒック制御を要するレベルにまで増加する可能性は低いと予想されるため、縮退運転制御は行わずに、処理を終了する。
【0144】
一方、対象エリアへ入る人口流量が第1の閾値X以上であれば、第1の閾値Xより大きい第2の閾値Yを用いて、対象エリアへ入る人口流量が第2の閾値Y以上であるか否かを判断する(ステップS233)。ここで、対象エリアへ入る人口流量が第2の閾値Y以上であれば、対象エリアにおける通信トラヒック量が突発的に増加する可能性があると予想されるため、縮退させる率を最小限にして縮退運転制御(縮退させる率がbb%の縮退運転制御)を行う(ステップS236)。一方、対象エリアへ入る人口流量が第2の閾値Y未満(即ち、第1の閾値X以上で第2の閾値Y未満)であれば、対象エリアにおける通信トラヒック量はある程度増加するものの、突発的に増加する可能性は低いと予想されるため、縮退させる率を最大限にして縮退運転制御(縮退させる率がaa%(bb%よりも高い率)の縮退運転制御)を行う(ステップS237)。
【0145】
以上のようにして全般的な人口流量情報に基づく縮退運転制御が行われる。なお、図29の処理は、予め定められた単位時間おきに繰り返される。また、図29の処理は、通信トラヒック制御の実施時の処理であり、通信トラヒック制御の解除についても同様のロジックで実行される。
【0146】
次に、(3)所定の属性別の人口流量情報に基づくアクセス規制制御の例を図30により説明する。図30に示すように、制御部603は、集計部602Iから出力された人口流量情報のうち、所定の属性別(ここでは一例として年齢層別(10代、20代、30代・・))の人口流量情報を参照し、ある対象エリアへ入る40才未満の人口流量Aおよび同対象エリアへ入る40才以上の人口流量Bを求める(ステップS241)。そして、制御部603は、40才未満の人口流量Aが所定の閾値X以上であるか否かを判断し(ステップS242)、40才以上の人口流量Bが所定の閾値X以上であるか否かを判断する(ステップS243、S244)。
【0147】
一般に、40才未満の人は、40才以上の人と比較して、移動機で電子メール等を利用することが多いため、40才未満の1人当たりの通信トラヒック量は、40才以上の1人当たりの通信トラヒック量よりも多い。そこで、40才未満の人口流量Aおよび40才以上の人口流量Bのうち、40才以上の人口流量Bのみが閾値X以上の場合は、一方の40才未満の人口流量Aが閾値X未満なので、通信トラヒック量はある程度増加するものの、大きな増加はないと予測される。そのため、規制レベルの最も低いアクセス規制制御(xx%のアクセス規制)を行う(ステップS247)。一方、40才未満の人口流量Aのみが閾値X以上の場合は、40才以上の人口流量Bのみが閾値X以上の場合よりも通信トラヒック量は多くなると予測されるため、規制レベルがxx%のアクセス規制よりも高いアクセス規制制御(yy%のアクセス規制)を行う(ステップS246)。
【0148】
また、40才未満の人口流量Aおよび40才以上の人口流量Bの両方が閾値X以上の場合は、通信トラヒック量がかなり増加すると予測されるため、規制レベルが最も高いアクセス規制制御(zz%のアクセス規制)を行う(ステップS245)。一方、40才未満の人口流量Aおよび40才以上の人口流量Bの両方が閾値X未満の場合(ステップS242で否定判断、ステップS244で否定判断の場合)は、対象エリアにおける通信トラヒック量が、通信トラヒック制御を要するレベルにまで増加する可能性は低いと予想されるため、アクセス規制制御は行わずに、処理を終了する。
【0149】
以上のようにして属性別の人口流量情報に基づくアクセス規制制御が行われる。なお、図30の処理は、予め定められた単位時間おきに繰り返される。また、図30の処理は、通信トラヒック制御の実施時の処理であり、通信トラヒック制御の解除についても同様のロジックで実行される。
【0150】
次に、(4)所定の属性別の人口流量情報に基づく縮退運転制御の例を図31により説明する。図31に示すように、制御部603は、集計部602Iから出力された人口流量情報のうち、所定の属性別(ここでは一例として年齢層別(10代、20代、30代・・))の人口流量情報を参照し、ある対象エリアへ入る40才未満の人口流量Aおよび同対象エリアへ入る40才以上の人口流量Bを求める(ステップS241)。そして、制御部603は、40才未満の人口流量Aが所定の閾値X以上であるか否かを判断し(ステップS242)、40才以上の人口流量Bが所定の閾値X以上であるか否かを判断する(ステップS243、S244)。
【0151】
一般に、40才未満の人は、40才以上の人と比較して、移動機で電子メール等を利用することが多いため、40才未満の1人当たりの通信トラヒック量は、40才以上の1人当たりの通信トラヒック量よりも多い。そこで、40才未満の人口流量Aおよび40才以上の人口流量Bのうち、40才以上の人口流量Bのみが閾値X以上の場合は、一方の40才未満の人口流量Aが閾値X未満なので、通信トラヒック量はある程度増加するものの、突発的に増加する可能性は低いと予想される。そのため、縮退させる率を最大限にして縮退運転制御(縮退させる率が後述のcc%、bb%よりも高いaa%の縮退運転制御)を行う(ステップS250)。一方、40才未満の人口流量Aのみが閾値X以上の場合は、40才以上の人口流量Bのみが閾値X以上の場合よりも、通信トラヒック量が突発的に増加する可能性は高くなると予測されるため、縮退させる率が後述のcc%より高く上記aa%より低いbb%の縮退運転制御を行う(ステップS249)。
【0152】
また、40才未満の人口流量Aおよび40才以上の人口流量Bの両方が閾値X以上の場合は、通信トラヒック量が突発的に増加する可能性は最も高いと予測されるため、縮退させる率を最小限にして縮退運転制御(縮退させる率が上記aa%、bb%より低いcc%の縮退運転制御)を行う(ステップS248)。一方、40才未満の人口Aおよび40才以上の人口Bの両方が閾値X未満の場合(ステップS242で否定判断、ステップS244で否定判断の場合)は、縮退運転制御は行わずに処理を終了する。
【0153】
以上のようにして属性別の人口流量情報に基づく縮退運転制御が行われる。なお、図31の処理は、予め定められた単位時間おきに繰り返される。また、図31の処理は、通信トラヒック制御の実施時の処理であり、通信トラヒック制御の解除についても同様のロジックで実行される。
【0154】
以上説明した第2実施形態によれば、従来のように通信トラヒック量を基準とせず、通信トラヒック量発生の原因となる移動機ユーザの動態情報(ここでは人口流量情報)に基づいて通信トラヒック制御を行うため、より迅速で的確な通信トラヒック制御を実行することができる。そのため、例えば、通信トラヒック規制制御によって輻輳状態を未然に防止でき、縮退運転制御によって、消費電力を最小化することができる。また、属性別の動態情報(ここでは属性別の人口流量情報)に基づいて通信トラヒック制御を行うことができ、各移動機ユーザの属性に応じたよりきめ細かい通信トラヒック制御を実行することができる。
【0155】
なお、上記第1、第2実施形態では、動態情報として、人口分布情報、人口流量情報の例を説明したが、動態情報はこれらに限定されるものではなく、人口分布情報および人口流量情報の各々に関する差分情報(時系列的な変化量情報)であってもよいし、人口分布情報および人口流量情報の各々に関する周辺情報であってもよい。
【0156】
また、通信トラヒック制御として、アクセス規制制御および縮退運転制御を取り上げたが、通信トラヒック制御はこれらに限定されるものではなく、さまざまな通信トラヒック制御を含む。また、第1、第2実施形態で述べたアクセス規制制御および縮退運転制御の手法は、あくまでも一例であって、さまざまな手法を採用することができる。また、属性別に個別に通信トラヒック制御を行ってもよい。例えば、若年層と高齢層とでそれぞれ独立した基準によって、アクセス規制等の通信トラヒック制御を行ってもよい。
【符号の説明】
【0157】
10…通信システム、100…移動機、200…BTS、300…RNC、301…測位部、302…RNC通信制御部、400…交換機、401…交換機通信制御部、402…変換部、403…記憶部、500…管理センタ、501…社会センサユニット、502…ペタマイニングユニット、503…モバイルデモグラフィーユニット、504…可視化ソリューションユニット、600…通信トラヒック制御装置、601…測位情報取得部、602…動態情報抽出部、602A…位置算出部、602B…対応付け部、602C…属性判断部、602D…取得契機判断部、602E…集計部、602F…位置抽出部、602G…対応付け部、602H…属性判断部、602I…集計部、603…制御部、604…属性情報保持部、700…加入者プロファイル情報記憶部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動機が在圏するセクタを制御する基地局を制御する無線ネットワーク制御装置と通信可能な状態で接続された通信トラヒック制御装置、および、当該通信トラヒック制御装置により実行される通信トラヒック制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、通信トラヒック制御の技術が存在する。従来の通信トラヒック制御では、例えば、ある単体ノードでの通信トラヒック量、又は、通信トラヒックの処理で使用されるCPU若しくはメモリの使用率を求め、得られた値(通信トラヒック量等)を基準にして、それらの値が所定の閾値を超えた場合に、当該単体ノードにおいて、外部からの信号の受信を拒否するなどの制御が行われる。上記の通信トラヒック量等を求める技術は、例えば特許文献1に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−12086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の通信トラヒック制御では、上記のように通信トラヒック量等を求め、得られた値を基準にしていたため、通信トラヒック制御を必要とする事態(例えば輻輳状態)が発生してから通信トラヒック制御を行っていた。そのため、通信トラヒック制御を必要とする事態(例えば輻輳状態)の未然防止(対応の迅速性)という観点では、改善の余地が十分にあった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために成されたものであり、より迅速で的確な通信トラヒック制御を実行することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る通信トラヒック制御装置は、移動機が在圏するセクタを制御する基地局を制御する無線ネットワーク制御装置と通信可能な状態で接続された通信トラヒック制御装置であって、少なくとも前記移動機の位置情報を含んだ測位情報を取得する測位情報取得部と、前記測位情報取得部により取得された測位情報に基づいて、移動機ユーザの動態情報を抽出する動態情報抽出部と、前記動態情報抽出部により抽出された移動機ユーザの動態情報に基づいて、通信トラヒック制御を行う制御部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記通信トラヒック制御装置では、測位情報取得部が、少なくとも移動機の位置情報を含んだ測位情報を取得し、動態情報抽出部が、取得された測位情報に基づいて、移動機ユーザの動態情報を抽出する。そして、制御部が、抽出された移動機ユーザの動態情報に基づいて通信トラヒック制御を行う。このように通信トラヒック量を基準とせず、通信トラヒック量発生の原因となる移動機ユーザの動態情報に基づいて、通信トラヒック制御を行うため、より迅速で的確な通信トラヒック制御を実行することができる。
【0008】
また、本発明に係る通信トラヒック制御装置は、各移動機ユーザの属性情報を保持した属性情報保持部、をさらに備え、前記動態情報抽出部は、前記属性情報保持部により保持された各移動機ユーザの属性情報および前記取得された測位情報に基づいて、属性別の動態情報を抽出し、前記制御部は、抽出された前記属性別の動態情報に基づいて、通信トラヒック制御を行う構成とすることが望ましい。この場合、属性別の動態情報に基づいて通信トラヒック制御を行うことができ、各移動機ユーザの属性に応じたよりきめ細かい通信トラヒック制御を実行することができる。
【0009】
なお、制御部による通信トラヒック制御としては、輻輳状態を未然に防止するための通信トラヒック規制制御、又は、消費電力を最小化するための縮退運転制御を挙げることができる。
【0010】
ところで、本発明は、通信トラヒック制御方法に係る発明として捉えることができ、以下のように記述することができる。本発明に係る通信トラヒック制御方法は、移動機が在圏するセクタを制御する基地局を制御する無線ネットワーク制御装置と通信可能な状態で接続された通信トラヒック制御装置、により実行される通信トラヒック制御方法であって、少なくとも前記移動機の位置情報を含んだ測位情報を取得する測位情報取得ステップと、前記測位情報取得ステップにより取得された測位情報に基づいて、移動機ユーザの動態情報を抽出する動態情報抽出ステップと、前記動態情報抽出ステップにより抽出された移動機ユーザの動態情報に基づいて、通信トラヒック制御を行う通信トラヒック制御ステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、通信トラヒック量を基準とせず、通信トラヒック量発生の原因となる移動機ユーザの動態情報に基づいて、通信トラヒック制御を行うため、より迅速で的確な通信トラヒック制御を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1、第2実施形態の通信システムのシステム構成を示す図である。
【図2】第1実施形態の通信システムの機能構成を示す図である。
【図3】図2に示すBTSとセクタとの関係を示す図である。
【図4】ユーザID−PRACH PD GAI対応情報の例を示す図ある。
【図5】算出位置情報の算出方法を説明するための図である。
【図6】セクタボロノイ図を説明するための図である。
【図7】エリア単位と移動情報の関係を説明するための図である。
【図8】算出位置情報の算出方法を説明するための図である。
【図9】算出位置情報の算出方法を説明するための図である。
【図10】図2に示す属性情報保持部が保持する属性情報の例を示す図である。
【図11】属性情報とエリア単位の関係を説明するための図である。
【図12】第1実施形態における処理の流れを示す図である。
【図13】第1実施形態の通信トラヒック制御処理の第1の例を示す図である。
【図14】第1実施形態の通信トラヒック制御処理の第2の例を示す図である。
【図15】第1実施形態の通信トラヒック制御処理の第3の例を示す図である。
【図16】第1実施形態の通信トラヒック制御処理の第4の例を示す図である。
【図17】第2実施形態の通信システムの機能構成を示す図である。
【図18】ユーザID−PRACH PD GAI対応情報の例を示す図ある。
【図19】移動情報の算出方法を説明するための図である。
【図20】移動情報の算出方法を説明するための図である。
【図21】図2に示す位置抽出部が出力する移動情報の例を示す図である。
【図22】エリア単位と移動情報の関係を説明するための図である。
【図23】図2に示す属性情報保持部が保持する属性情報の例を示す図である。
【図24】属性情報とエリア単位の関係を説明するための図である。
【図25】図17に示す集計部が移動情報を集計することによって人口流量情報を算出する方法を説明するための図である。
【図26】人口流量情報の表示例を示す図である。
【図27】第2実施形態における処理の流れを示す図である。
【図28】第2実施形態の通信トラヒック制御処理の第1の例を示す図である。
【図29】第2実施形態の通信トラヒック制御処理の第2の例を示す図である。
【図30】第2実施形態の通信トラヒック制御処理の第3の例を示す図である。
【図31】第2実施形態の通信トラヒック制御処理の第4の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付図面を参照しながら、本発明に係る実施形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0014】
[第1実施形態]
以下、移動機ユーザの動態情報として人口分布情報を抽出し、抽出した人口分布情報に基づいて通信トラヒック制御を行う第1実施形態について説明する。
【0015】
[通信システムの構成]
図1は、本実施形態の通信システム10のシステム構成を示す図である。図1に示すように、この通信システム10は、移動機100、BTS(基地局)200、RNC(無線ネットワーク制御装置)300、交換機400、及び管理センタ500を含んで構成されている。また、この管理センタ500は、社会センサユニット501、ペタマイニングユニット502、モバイルデモグラフィーユニット503、及び可視化ソリューションユニット504から構成されている。
【0016】
交換機400は、BTS200、RNC300を介して、移動機100の位置情報を収集する。RNC300は、移動機100との間で通信接続が行われる際に、RRCコネクション要求信号における遅延値を用いて移動機100の位置を測定することができる。交換機400は、このように測定された移動機100の位置情報を、移動機100が通信接続を実行する際に受け取ることができる。交換機400は受け取った位置情報を記憶しておき、所定のタイミング、または管理センタ500からの要求に応じて収集した位置情報を管理センタ500に出力する。ここで、一般的に、RNC300は、約千個からなるものであり、日本全国に配置されている。一方で、交換機400は、300個程度日本国内に配置されている。
【0017】
管理センタ500は、上述したとおり、社会センサユニット501、ペタマイニングユニット502、モバイルデモグラフィーユニット503、及び可視化ソリューションユニット504を含んで構成されており、各ユニットでは、移動機100の位置情報を用いた統計処理を行う。
【0018】
社会センサユニット501は、各交換機400から移動機100の位置情報等を含んだデータを収集するサーバ装置である。この社会センサユニット501は、交換機400から定期的に出力されたデータを受信し、及び社会センサユニット501において予め定められたタイミングに従って交換機400からデータを取得するように構成されている。
【0019】
ペタマイニングユニット502は、社会センサユニット501から受信したデータを所定のデータ形式に変換するサーバ装置である。例えば、ペタマイニングユニット502は、ユーザIDをキーに、或いはエリアごとにソーティング処理を行う。
【0020】
モバイルデモグラフィーユニット503は、ペタマイニングユニット502において処理されたデータに対する集計処理、すなわち各項目のカウンティング処理を行うサーバ装置である。例えば、モバイルデモグラフィーユニット503は、あるエリアに在圏するユーザ数のカウント、或いは在圏分布の集計等をすることができる。
【0021】
可視化ソリューションユニット504は、モバイルデモグラフィーユニット503において集計処理されたデータを可視可能に処理するサーバ装置である。例えば、可視化ソリューションユニット504は、集計されたデータを地図上にマッピング処理することができる。この可視化ソリューションユニット504にて処理されたデータは、企業、官公庁または個人等に提供され、店舗開発、道路交通調査、災害対策、環境対策などに利用される。なお、このように統計処理された情報は、当然にプライバシーを侵害しないように個人等は特定されないように加工されている。
【0022】
なお、社会センサユニット501、ペタマイニングユニット502、モバイルデモグラフィーユニット503、及び可視化ソリューションユニット504はいずれも、前述したようにサーバ装置により構成され、図示は省略するが、通常の情報処理装置の基本構成(即ち、CPU、RAM、ROM、キーボードやマウス等の入力デバイス、外部との通信を行う通信デバイス、情報を記憶する記憶デバイス、及び、ディスプレイやプリンタ等の出力デバイス)を備えることは言うまでもない。
【0023】
図2に通信システム10の機能構成を示す。図2に示すように通信システム10は、複数のBTS(基地局)200それぞれが制御するセクタに在圏する複数の移動機100と、BTS200を制御するRNC300と、交換機400と、通信トラヒック制御装置600と、加入者プロファイル情報記憶部700と、を含んで構成される。通信トラヒック制御装置600は、前述した図1に示したモバイルデモグラフィーユニット503及び可視化ソリューションユニット504に相当する。図1の社会センサユニット501及びペタマイニングユニット502に対応する機能に関しては、図2ではこれらの表記を省略している。
【0024】
RNC300は、後述する測位部301及びRNC通信制御部302を含んで構成されている。また、交換機400は、交換機通信制御部401、変換部402、及び記憶部403を含んで構成されている。
【0025】
通信トラヒック制御装置600は、後述する測位情報取得部601、動態情報抽出部602、制御部603、及び属性情報保持部604を含んで構成されている。
【0026】
まず、RNC300について説明する。測位部301は、後述するRNC通信制御部302がBTS200を介して移動機100と通信接続を行う際に、RRCコネクション要求信号を用いた処理で発生した遅延値に基づいて、移動機100が在圏する一のBTS200におけるセクタ内の位置(座標)を測定する部分である。このRNC300は、所謂PRACH PD測位計算を行うことによりセクタ内の位置を測定することができる。ここでセクタとは、BTS200における通信エリアを複数に等分した場合の一つの領域を指すものである。なお、通信環境に応じて上記PRACH PD測位を行うことなく、移動機100が在圏するセクタの中心座標を、移動機100が位置する座標として計測してもよい。また、移動機100の位置情報は、RNC300によって特定される場合に限らず、例えば、移動機100がGPS機能等の位置情報を取得可能な機能を有する場合には、GPS機能等によって取得した位置情報を、移動機100内に備えられたGPS機能等用の位置情報通信部によって通信トラヒック制御装置600あてに直接送信することもできる。
【0027】
図3は、BTS200とセクタとの関係を示す図である。円形で示されている領域の中心にBTS200が位置するものであり、それを中心に複数に等分されたものがセクタである。例えば図3では、BTS200の通信エリアは最大6セクタからなるものであり、RNC300は、移動機100がそのセクタのいずれにいるかを、BTS200経由で把握することができる。本実施形態では、さらにRRCコネクション要求の処理を行った際に得られる信号の遅延に基づいてセクタ内のどの位置に移動機100が位置するか、そのGAI(Geographical Area ID)を算出することができる。なお、セクタごとにセクタ識別子が割り当てられており、そのセクタ識別子とセクタ内の位置に基づいて移動機100の位置を特定することができる。上記環境に応じてPRACH PD測位を行わない場合には、上記計測した移動機100が在圏するセクタの中心座標を、GAIとして算出してもよい。
【0028】
RNC通信制御部302は、BTS200を介して移動機100と通信接続を行う部分であり、例えば、移動機100からの発信処理に基づいた通信接続処理及び位置登録要求に基づいた通信接続処理を行う。本実施形態では、さらにRNC通信制御部302は、通信接続処理に用いられるInitial UE Messageに、移動機100の位置情報を付加して、交換機400に送信することができる。なお、このInitial UE Messageは、発信または位置登録要求を示す指示情報、移動機100を一意に特定するテンポラリID等のID、及び位置情報を含んでいる。なお、テンポラリIDとは、移動機100がネットワークに接続した際に、交換機400により払い出されたID情報である。
【0029】
つぎに、交換機400について説明する。交換機通信制御部401は、RNC300から送信されるInitial UE Messageを受信し、このInitial UE Messageを用いて通信接続処理を行う部分である。
【0030】
変換部402は、交換機通信制御部401により受信されたInitial UE Messageに含まれているテンポラリID等のIDを電話番号に変換する部分である。変換部402は、変換処理に際して、加入者プロファイル情報を記憶する加入者プロファイル情報記憶部700から、テンポラリID等のIDに対応付けられている電話番号を抽出し、当該抽出した電話番号に変換する。なお、この加入者プロファイル情報記憶部700は、例えばHLR(Home Location Register)に備えられているものであり、ここではテンポラリID等のIDと電話番号とを対応付けて管理及び記憶している。
【0031】
記憶部403は、変換部402で変換された電話番号とInitial UE Messageに含まれている移動機100の位置情報と当該位置情報が測位された時刻とを対応付けて記憶する部分である。この記憶部403に記憶されている位置情報は、交換機通信制御部401による通信処理に従って、後述する所定のタイミングまたは管理センタ500からの要求に応じて収集される。
【0032】
交換機通信制御部401は、記憶部403が記憶している電話番号(移動機100を一意に識別可能とする識別子としての識別情報)、位置情報、及び該位置情報が測位された時刻としての時刻情報を通信トラヒック制御装置600へ送信する。
【0033】
次に、通信トラヒック制御装置600について説明する。測位情報取得部601は、交換機400により送信された測位情報、ここでは、一例として、移動機100の識別情報(例えば移動機100の電話番号)と、RNC300による測位で得られた移動機100の位置情報と、RNC300による測位の時刻を表す測位時刻情報と、を含む測位情報を取得する部分である。
【0034】
動態情報抽出部602は、測位情報取得部601により取得された測位情報に基づいて、移動機ユーザの動態情報を抽出する。第1実施形態では、動態情報抽出部602は、移動機ユーザの動態情報として人口分布情報を抽出する。第1実施形態の動態情報抽出部602は、後述する位置算出部602A、対応付け部602B、属性判断部602C、取得契機判断部602D、及び集計部602Eを含んで構成される。
【0035】
位置算出部602Aは、測位情報取得部601から電話番号、位置情報、及び時刻情報を入力し、所望の時刻において移動機100が存在する位置を表す位置情報(以下「算出位置情報」という)を算出する部分である。
【0036】
ここで、図4〜7及び図9を参照して、位置算出部602Aが、算出位置情報を算出する方法について説明する。
【0037】
図4には位置算出部602Aが利用する情報の例を示す。この図に示すように、位置算出部602Aが利用する情報は、時刻情報、位置情報、及び位置情報取得契機が、ユーザIDと関連付けられた情報である(以後、この情報のことを「ユーザID−PRACH PD GAI対応情報」と称することがある)。
【0038】
「ユーザID」について、位置算出部602Aは、ユーザIDが電話番号と関連付けられて保持されている保持手段(図示せず)を参照することで、測位情報取得部601から入力した電話番号と関連付けられたユーザIDを取得する。
【0039】
「時刻情報」とは、測位部301が位置情報を測位した時刻に関する情報である。「位置情報」とは、上述した方法により所謂PRACH PD測位計算を行うことにより測位された移動機100の位置に関する情報、或いは、移動機100が在圏するセクタの中心座標に関する情報である。位置情報は経度及び緯度で表現してもよい。或いは、基準点を設定して、当該基準点からの相対的な位置で表示してもよい。
【0040】
「位置情報取得契機」とは、移動機100の位置情報が測位された契機の種別に関する情報である。移動機100の位置が測位される契機は(1)所定周期(例えば約一時間周期)の所定タイミングが到来したとき、(2)発着信時、及び(3)位置登録エリアを越えて移動したとき、の少なくとも一つとすることが好適である。但し、測位される契機はこれらに限定されるわけではなく、所望の契機を設定可能である。
【0041】
今、時刻11時における人口分布を求めたいとする。この場合、位置算出部602Aは、図4に示す情報の中からユーザID毎に「時刻情報」が11時の直前(すなわち11時以前であって最も11時に近い時刻)である情報を選別する。選別される情報の例を図5に示す。例えば、ユーザIDが“123”であるユーザが所有する移動機100の場合測位は10時30分、及び11時30分に行われている。この場合、所望の時刻(今回の例では11時)の直前である10時30分に測位された情報が選別される。位置算出部602Aは、その他の各ユーザについても同様に所望の時刻直前に測位された情報を選別する。
【0042】
位置算出部602Aは、上記方法によって選別された、所望の時刻(11時)直前に測位された情報を算出位置情報として算出することができる。
【0043】
図2に戻り、対応付け部602Bは、位置算出部602Aが算出した算出位置情報の表現形式を、一定の範囲の広がりをもつ所望のエリア単位に対応付けて表現する表現形式へと変換する部分である。所望のエリア単位とは、メッシュ状でもよい。或いは、市町村等の行政区画をエリア単位としてもよい。或いは、図6に模式的に示すポロノイ図を用いてもよい。
【0044】
図6において、中抜き円で示した位置がセクタの中心経度緯度を表す。この図に示すように、ポロノイ図とは、互いに隣接するセクタのセクタ中心経度緯度との2等分線で分割した図を言う。更に、セクタ単位の勢力図(サービスエリア図)が存在するなど、セクタと位置の対応情報があればそれを利用してもよい。
【0045】
図7は、対応付け部602Bが、算出位置情報の表現形式を、一定の範囲の広がりをもつ所望のエリア単位に対応付けて表現する表現形式へと変換する方法を説明するための図である。ここでは所望のエリア単位の例として正方形のグリッドを利用する。図7において、各グリッドを一意に識別可能とするエリア単位識別子を各グリッドの左上に丸括弧内に記入する。移動機100の位置が特定の一点として算出されれば(本明細書においては(X1,Y1)等と表記している)対応する一つのエリア単位が特定される。今回の例では、例えば、ユーザIDが“123”であるユーザの算出位置情報は、(X1,Y1)と表現され、対応するエリア単位は、エリア単位識別子が(3)であると表現される。
【0046】
次に、位置算出部602Aが算出位置情報を算出する別の方法について図4、及び図7〜9を用いて説明する。
【0047】
上記方法では、ユーザIDが“234”であるユーザの場合、算出位置情報は、10時30分に測位された情報(すなわち所望の時刻である11時の直前に測位された情報)に基づいて(X7,Y7)であると算出されている。
【0048】
別の方法では、ユーザIDが“234”であるユーザは10時30分の次に11時30分においても測位されているため、この二つの情報(すなわち、所望の時刻の直前及び直後に測位された情報)を用いて11時における位置を算出する。
【0049】
この場合、所望の時刻である11時の直前と直後の時刻の間は同じ速度で直進したとみなして、直前及び直後の時刻情報及び位置情報を按分することによって所望の時刻に存在したであろう位置を算出位置情報として算出する。
【0050】
例えば、ユーザIDが“234”であるユーザの場合、所望の時刻(11時)における算出位置情報を(X9,Y9)とすると、位置算出部602Aは、「X9=(X7+X8)/2」、「Y9=(Y7+Y8)/2」、の式によって算出位置情報を算出する。
【0051】
これを対応付け部602Bがエリア単位に対応付けて表現する表現形式へと変換すると、図8のようになる。11時30分における位置情報である(X8,Y8)、10時30分における位置情報である(X7,Y7)、及び位置算出部602Aが算出する算出位置情報(X9,Y9)の関係は、図8に示すように一直線上に並び、且つ対応する時刻情報と、位置情報を按分(今回の例では(X9,Y9)は、(X7,Y7)と(X8,Y8)の中間)した位置となる。
【0052】
この場合、対応付け部602Bは、ユーザIDが“234”であるユーザについて所望の時刻である11時の位置はエリア単位識別子(4)(なお、上記直前に測位された位置情報のみを用いた場合エリア単位識別子は(1)であると判断されていた。図5及び図7参照)で表示されるエリア単位であると判断する。
【0053】
以上説明したとおり、当該方法によってより現実に即した正確な算出位置情報を算出することが可能となる。
【0054】
次に、位置算出部602Aが算出位置情報を算出する更に別の方法について説明する。上記別の方法では、所望の時刻の直前及び直後に測位された情報を用いたが、更に別の方法では直前に測位された複数の情報を用いる。
【0055】
図4を用いて、ユーザIDが“789”であるユーザを例として説明する。ユーザIDが“789”であるユーザについては、9時(X4,Y4)及び10時(X5,Y5)に測位が行われている。この2回に測位された位置情報から、その後も同じ速度で直進したと仮定して所望の時刻(11時)における算出位置情報を算出する。
【0056】
ユーザIDが“789”であるユーザの場合、所望の時刻(11時)における算出位置情報を(X10,Y10)とすると、位置算出部602Aは、「X10=(X5−X4)+X5」、「Y10=(Y5−Y4)+Y5」、の式によって算出位置情報を算出する。
【0057】
これを対応付け部602Bがエリア単位に対応付けて表現する表現形式へと変換すると、図9のようになる。図9に示すように、ユーザIDが“789”であるユーザの9時における計測位置である(X4,Y4)、及び10時における計測位置である(X5,Y5)が図9に示す位置であった場合、上記方法によって位置算出部602Aが算出した(X10,Y10)は、図9にBで示すように(X4,Y4)から(X5,Y5)へと引いた直線をそのまま(X4,Y4)〜(X5,Y5)間の距離分延ばした位置となる。
【0058】
この場合、対応付け部602Bは、ユーザIDが“789”であるユーザについて所望の時刻である11時の位置はエリア単位識別子(3)(なお、上記直前に測位された位置情報のみを用いた場合エリア単位識別子は(2)であると判断されていた。図5及び図7参照)で表示されるエリア単位であると判断する。
【0059】
以上説明したとおり、この方法によってより現実に即した正確な算出位置情報を算出することが可能となる。
【0060】
位置算出部602Aが算出位置情報を算出する方法は、上記の例に限定されるわけではない。その他に、例えば、同じ時間帯の前日の行動を考慮してもよい。また、上記方法では同じ速度で直線的に移動すると仮定して按分によって算出したが、道路などの路線を考慮してもよい。
【0061】
図2に戻って、属性情報保持部604は、移動機100のユーザの属性情報をユーザIDと関連付けて保持している部分である。図10に属性情報保持部604が保持する属性情報の例を示す。図10に示すように、属性情報には例えば性別、年齢、住所を含めてもよい。
【0062】
属性判断部602Cは、属性情報保持部604が保持する属性情報に基づいて後述する人口分布情報(それは、算出位置情報を統合することによって得られる)を出力するために用いるべきか否かを判断する部分である。
【0063】
具体的には、属性判断部602Cは、属性情報保持部604が保持する属性情報を参照することで所望の属性が一定の要件を満たしているか否かを判断する。一定の要件を満たしていると判断した場合には、属性判断部602Cは、対応する算出位置情報を後述する人口分布情報を出力するために用いると判断する。一定の要件を満たしていないと判断した場合には、属性判断部602Cは、対応する算出位置情報を後述する人口分布情報を出力するために用いないと判断する。
【0064】
図11には、図10の属性情報において所望の属性「性別」が“男性”である(即ち、属性に係る一定の要件を満たしている)算出位置情報を用いた場合の例を示す。なお、所望の属性、及び一定の要件については自由に設定することができる。
【0065】
例えば、属性を「年齢」とし、一定の要件を“10歳以上30歳未満”としてもよい。或いは、例えば属性を「住所」とし、一定の要件を“千代田区”としてもよい。
【0066】
取得契機判断部602Dは、位置情報を後述する人口分布情報を出力するために用いるべきか否かを、位置情報取得契機に基づいて判断する部分である。
【0067】
具体的には、取得契機判断部602Dは、図4に示す位置情報取得契機を参照し、それが所望の契機であるか否かを判断する。所望の契機であると判断した場合には取得契機判断部602Dは、対応する算出位置情報を後述する人口分布情報を出力するために用いると判断する。所望の契機でないと判断した場合には取得契機判断部602Dは、対応する算出位置情報を後述する人口分布情報を出力するために用いないと判断する。
【0068】
所望の契機とは、自由に設定可能である。複数の所望の契機を設定し、それらの契機の何れかの契機に該当する場合に、取得契機判断部602Dは、対応する算出位置情報を後述する人口分布情報を出力するために用いると判断してもよい。
【0069】
通信トラヒック制御装置600が取得契機判断部602Dを備えることによって、位置情報取得契機に応じた人口分布情報を得ることが可能となる。例えば、エリアを跨ぐことを位置情報取得契機とする位置情報には分布の偏りがあることが分かっている場合には、エリアを跨ぐ契機以外の契機のみを所望の契機として設定することで、偏りがあることが分かっている位置情報を排除することが可能となる。
【0070】
集計部602Eは、属性判断部602Cによって人口分布情報を出力するために用いると判断され、且つ、取得契機判断部602Dによって人口分布情報を出力するために用いると判断された算出位置情報を統合することによって人口分布情報を算出し、算出した人口分布情報を制御部603へ出力する部分である。
【0071】
具体的には、集計部602Eは、属性判断部602Cによって人口分布情報を出力するために用いると判断され、且つ、取得契機判断部602Dによって人口分布情報を出力するために用いると判断された算出位置情報の数を、対応付け部602Bによって対応付けられたエリア単位毎に集計(統合)することによってエリア単位毎の人口分布情報を算出する。なお、ここでの「人口分布情報」は、「移動機ユーザに関する人口分布情報」である。
【0072】
なお、本実施形態において、集計部602Eは、属性判断部602Cによって人口分布情報を出力するために用いると判断され、且つ、取得契機判断部602Dによって人口分布情報を出力すると判断された算出位置情報を統合しているが、それに限定しない。例えば、属性判断部602Cによる判断を省略してもよい。また、取得契機判断部602Dによる判断を省略してもよい。更に、属性判断部602C及び取得契機判断部602Dの両方による判断を省略してもよい。
【0073】
本実施形態では、位置算出部602Aによって算出位置情報が算出された後に、属性判断部602C及び取得契機判断部602Dが上記判断をしているが、順番は逆でもよい。
【0074】
制御部603は、集計部602Eから出力された人口分布情報に基づいて、通信トラヒック制御を行う部分である。通信トラヒック制御処理については、例えば、輻輳状態を未然に防止するための通信トラヒック規制制御と、消費電力を最小化するための縮退運転制御とを、図13〜図16に基づき、後に説明する。
【0075】
[通信システムにて実行される処理の流れについて]
つぎに、このように構成された通信システム10の処理について図12を参照して説明する。
【0076】
移動機100から発信要求または位置登録要求が出力されると、RNC300では、それら要求に従って、移動機100の位置測位が行われる(ステップS101)。すなわち、RRCコネクション要求がRNC300(RNC通信制御部302)にて受信されると、RNC通信制御部302により、その要求に対してRRCコネクションセットアップが移動機100に送信される。そして、移動機100からRRCコネクションセットアップの完了信号が、RNC通信制御部302により受信される(ステップS101)。ここで得られた信号の遅延値に基づいて、移動機100のセクタ内におけるおおよその位置情報が測位部301により計算され、位置測位が行われる(ステップS102:測位ステップ)。
【0077】
そして、RNC300では、RNC通信制御部302により、移動機100の位置情報と、そのテンポラリIDとが抽出される(ステップS103)。RNC通信制御部302により、抽出された位置情報とテンポラリIDとは、Initial UE Messageに付加され、交換機400に送信される(ステップS104:送信ステップ)。
【0078】
交換機400では、交換機通信制御部401により、Initial UE Messageが受信され、そして当該Initial UE Messageに含まれているテンポラリIDは、変換部402により移動機100の電話番号に変換される(ステップS105)。そして、記憶部403に、変換された電話番号、測位がなされた時刻としての時刻情報、及び位置情報が、測位情報として対応付けて記憶される(ステップS106)。
【0079】
記憶部403に記憶された測位情報(電話番号、時刻情報及び位置情報)は、通信トラヒック制御装置600へ向けて定期的に送信され、または通信トラヒック制御装置600からの要求に応じて通信トラヒック制御装置600へ向けて送信され(ステップS107)、通信トラヒック制御装置600の測位情報取得部601により取得される(ステップS107A)。
【0080】
具体的には、測位情報取得部601は、(1)所定周期(例えば約一時間周期)の所定タイミングが到来したとき、(2)発着信時、及び(3)位置登録エリアを越えて移動したときの少なくとも一つを契機として時刻情報及び位置情報を取得する。
【0081】
動態情報抽出部602の位置算出部602Aは、ユーザID−PRACH PD GAI対応情報に基づいて、ユーザ毎に、所望の時刻における移動機100が存在したであろう位置に関する情報である算出位置情報を算出する(ステップS108:位置算出ステップ)。
【0082】
対応付け部602Bは、ステップS108において算出した算出位置情報の表現形式を、一定の範囲の広がりをもつエリア単位に対応付けて表現する表現形式へと変換する(ステップS109)。
【0083】
属性判断部602Cは、算出位置情報を、人口分布情報を出力するために用いるべきか否かについて属性情報に基づいて判断し、用いると判断された算出位置情報のみを選別する(ステップS110)。
【0084】
取得契機判断部602Dは、算出位置情報を、人口分布情報を出力するために用いるべきか否かについて位置情報取得契機に基づいて判断し、用いると判断された算出位置情報のみを選別する(ステップS111)。
【0085】
集計部602Eは、算出位置情報を集計(統合)することによって人口分布情報を抽出し(ステップS112)、制御部603へ出力する。本実施形態では、集計部602Eは、属性による分類がなされていない全般的な人口分布情報、および、所定の属性別(例えば年齢層別(10代、20代、30代・・))の人口分布情報を抽出し、制御部603へ出力するものとする。
【0086】
そして、制御部603は、集計部602Eから出力された人口分布情報に基づいて、例えば、以下のような通信トラヒック制御を行う(ステップS113)。ここでの通信トラヒック制御としては、(1)属性による分類がなされていない全般的な人口分布情報に基づくアクセス規制制御、(2)属性による分類がなされていない全般的な人口分布情報に基づく縮退運転制御、(3)所定の属性別の人口分布情報に基づくアクセス規制制御、(4)所定の属性別の人口分布情報に基づく縮退運転制御、の計4つを取り上げる。なお、(1)、(3)については「基地局単位」でのアクセス規制制御を以下に例示するが、「交換機単位」でアクセス規制制御を行ってもよい。(2)、(4)については「基地局単位」での縮退運転制御を以下に例示するが、「交換機単位」で縮退運転制御を行ってもよい。また、ここでの「縮退運転」とは、例えば仮想化技術を利用してネットワーク全体のリソース量を必要分のみに縮退して運転すること、無線チャネルのうち不要な無線チャネルを一時的に停波すること、一部の基地局の出力を上げてエリアを広げることで周辺基地局の運転そのものを停止することなどを示している。但し、これらに限定するものではない。
【0087】
まず、(1)属性による分類がなされていない全般的な人口分布情報に基づくアクセス規制制御の例を図13により説明する。図13に示すように、制御部603は、集計部602Eから出力された人口分布情報のうち、属性による分類がなされていない全般的な人口分布情報を参照し(ステップS201)、ある対象エリアの人口が第1の閾値X以上であるか否かを判断する(ステップS202)。ここで、対象エリアの人口が第1の閾値X未満であれば、対象エリアにおける通信トラヒック量が、通信トラヒック制御を要するレベルにまで増加する可能性は低いと予想されるため、アクセス規制制御は行わずに、処理を終了する。
【0088】
一方、対象エリアの人口が第1の閾値X以上であれば、第1の閾値Xより大きい第2の閾値Yを用いて、対象エリアの人口が第2の閾値Y以上であるか否かを判断する(ステップS203)。ここで、対象エリアの人口が第2の閾値Y以上であれば、対象エリアにおける通信トラヒック量がかなり増加する可能性が高いと予想されるため、規制レベルの高いアクセス規制制御(yy%のアクセス規制)を行う(ステップS204)。一方、対象エリアの人口が第2の閾値Y未満(即ち、第1の閾値X以上で第2の閾値Y未満)であれば、対象エリアにおける通信トラヒック量がある程度増加し、多少のアクセス規制制御を要する事態となる可能性が高いと予想されるため、規制レベルの低いアクセス規制制御(yy%よりも低いxx%のアクセス規制)を行う(ステップS205)。
【0089】
以上のようにして全般的な人口分布情報に基づくアクセス規制制御が行われる。なお、図13の処理は、予め定められた単位時間おきに繰り返される。また、図13の処理は、通信トラヒック制御の実施時の処理であり、通信トラヒック制御の解除についても同様のロジックで実行される。
【0090】
次に、(2)属性による分類がなされていない全般的な人口分布情報に基づく縮退運転制御の例を図14により説明する。図14に示すように、制御部603は、集計部602Eから出力された人口分布情報のうち、属性による分類がなされていない全般的な人口分布情報を参照し(ステップS201)、ある対象エリアの人口が第1の閾値X以上であるか否かを判断する(ステップS202)。ここで、対象エリアの人口が第1の閾値X未満であれば、縮退運転制御は行わずに処理を終了する。
【0091】
一方、対象エリアの人口が第1の閾値X以上であれば、第1の閾値Xより大きい第2の閾値Yを用いて、対象エリアの人口が第2の閾値Y以上であるか否かを判断する(ステップS203)。ここで、対象エリアの人口が第2の閾値Y以上であれば、対象エリアにおける通信トラヒック量が突発的に増加する可能性があると予想されるため、縮退させる率を最小限にして縮退運転制御(縮退させる率がbb%の縮退運転制御)を行う(ステップS206)。一方、対象エリアの人口が第2の閾値Y未満(即ち、第1の閾値X以上で第2の閾値Y未満)であれば、対象エリアにおける通信トラヒック量はある程度増加するものの、突発的に増加する可能性は低いと予想されるため、縮退させる率を最大限にして縮退運転制御(縮退させる率がaa%(bb%よりも高い率)の縮退運転制御)を行う(ステップS207)。
【0092】
以上のようにして全般的な人口分布情報に基づく縮退運転制御が行われる。なお、図14の処理は、予め定められた単位時間おきに繰り返される。また、図14の処理は、通信トラヒック制御の実施時の処理であり、通信トラヒック制御の解除についても同様のロジックで実行される。
【0093】
次に、(3)所定の属性別の人口分布情報に基づくアクセス規制制御の例を図15により説明する。図15に示すように、制御部603は、集計部602Eから出力された人口分布情報のうち、所定の属性別(ここでは一例として年齢層別(10代、20代、30代・・))の人口分布情報を参照し、ある対象エリアの40才未満の人口Aおよび同対象エリアの40才以上の人口Bを求める(ステップS211)。そして、制御部603は、40才未満の人口Aが所定の閾値X以上であるか否かを判断し(ステップS212)、40才以上の人口Bが所定の閾値X以上であるか否かを判断する(ステップS213、S214)。
【0094】
一般に、40才未満の人は、40才以上の人と比較して、移動機で電子メール等を利用することが多いため、40才未満の1人当たりの通信トラヒック量は、40才以上の1人当たりの通信トラヒック量よりも多い。そこで、40才未満の人口Aおよび40才以上の人口Bのうち、40才以上の人口Bのみが閾値X以上の場合は、40才未満の人口Aが閾値X未満なので、通信トラヒック量はある程度増加するものの、大きな増加はないと予測されるため、規制レベルの最も低いアクセス規制制御(xx%のアクセス規制)を行う(ステップS217)。一方、40才未満の人口Aのみが閾値X以上の場合は、40才以上の人口Bのみが閾値X以上の場合よりも通信トラヒック量は多くなると予測されるため、規制レベルがxx%のアクセス規制よりも高いアクセス規制制御(yy%のアクセス規制)を行う(ステップS216)。
【0095】
また、40才未満の人口Aおよび40才以上の人口Bの両方が閾値X以上の場合は、通信トラヒック量がかなり増加すると予測されるため、規制レベルが最も高いアクセス規制制御(zz%のアクセス規制)を行う(ステップS215)。一方、40才未満の人口Aおよび40才以上の人口Bの両方が閾値X未満の場合(ステップS212で否定判断、ステップS214で否定判断の場合)は、対象エリアにおける通信トラヒック量が、通信トラヒック制御を要するレベルにまで増加する可能性は低いと予想されるため、アクセス規制制御は行わずに、処理を終了する。
【0096】
以上のようにして属性別の人口分布情報に基づくアクセス規制制御が行われる。なお、図15の処理は、予め定められた単位時間おきに繰り返される。また、図15の処理は、通信トラヒック制御の実施時の処理であり、通信トラヒック制御の解除についても同様のロジックで実行される。
【0097】
次に、(4)所定の属性別の人口分布情報に基づく縮退運転制御の例を図16により説明する。図16に示すように、制御部603は、集計部602Eから出力された人口分布情報のうち、所定の属性別(ここでは一例として年齢層別(10代、20代、30代・・))の人口分布情報を参照し、ある対象エリアの40才未満の人口Aおよび同対象エリアの40才以上の人口Bを求める(ステップS211)。そして、制御部603は、40才未満の人口Aが所定の閾値X以上であるか否かを判断し(ステップS212)、40才以上の人口Bが所定の閾値X以上であるか否かを判断する(ステップS213、S214)。
【0098】
一般に、40才未満の人は、40才以上の人と比較して、移動機で電子メール等を利用することが多いため、40才未満の1人当たりの通信トラヒック量は、40才以上の1人当たりの通信トラヒック量よりも多い。そこで、40才未満の人口Aおよび40才以上の人口Bのうち、40才以上の人口Bのみが閾値X以上の場合は、一方の40才未満の人口Aが閾値X未満なので、通信トラヒック量はある程度増加するものの、突発的に増加する可能性は低いと予想される。そのため、縮退させる率を最大限にして縮退運転制御(縮退させる率が後述のcc%、bb%よりも高いaa%の縮退運転制御)を行う(ステップS220)。一方、40才未満の人口Aのみが閾値X以上の場合は、40才以上の人口Bのみが閾値X以上の場合よりも、通信トラヒック量が突発的に増加する可能性は高くなると予測されるため、縮退させる率が後述のcc%より高く上記aa%より低いbb%の縮退運転制御を行う(ステップS219)。
【0099】
また、40才未満の人口Aおよび40才以上の人口Bの両方が閾値X以上の場合は、通信トラヒック量が突発的に増加する可能性は最も高いと予測されるため、縮退させる率を最小限にして縮退運転制御(縮退させる率が上記aa%、bb%より低いcc%の縮退運転制御)を行う(ステップS218)。一方、40才未満の人口Aおよび40才以上の人口Bの両方が閾値X未満の場合(ステップS212で否定判断、ステップS214で否定判断の場合)は、縮退運転制御は行わずに処理を終了する。
【0100】
以上のようにして属性別の人口分布情報に基づく縮退運転制御が行われる。なお、図16の処理は、予め定められた単位時間おきに繰り返される。また、図16の処理は、通信トラヒック制御の実施時の処理であり、通信トラヒック制御の解除についても同様のロジックで実行される。
【0101】
以上説明した第1実施形態によれば、従来のように通信トラヒック量を基準とせず、通信トラヒック量発生の原因となる移動機ユーザの動態情報(ここでは人口分布情報)に基づいて通信トラヒック制御を行うため、より迅速で的確な通信トラヒック制御を実行することができる。そのため、例えば、通信トラヒック規制制御によって輻輳状態を未然に防止でき、縮退運転制御によって、消費電力を最小化することができる。また、属性別の動態情報(ここでは属性別の人口分布情報)に基づいて通信トラヒック制御を行うことができ、各移動機ユーザの属性に応じたよりきめ細かい通信トラヒック制御を実行することができる。
【0102】
[第2実施形態]
以下、移動機ユーザの動態情報として人口流量情報を抽出し、抽出した人口流量情報に基づいて通信トラヒック制御を行う第2実施形態について説明する。
【0103】
第2実施形態の通信システムのシステム構成は、第1実施形態と同様の図1に示す構成であるので、説明を省略する。一方、第2実施形態の通信システムの機能構成は図17に示す。第2実施形態では、通信トラヒック制御装置600の機能構成のみが第1実施形態の構成(図2)とは異なるため、図17を用いて第2実施形態の通信トラヒック制御装置600の機能構成を説明する。
【0104】
通信トラヒック制御装置600は、測位情報取得部601、動態情報抽出部602、制御部603、及び属性情報保持部604を含んで構成されている。このうち測位情報取得部601は、交換機400により送信された測位情報、ここでは、一例として、移動機100の識別情報(例えば移動機100の電話番号)と、RNC300による測位で得られた移動機100の位置情報と、RNC300による測位の時刻を表す測位時刻情報と、を含む測位情報を取得する部分である。
【0105】
動態情報抽出部602は、測位情報取得部601により取得された測位情報に基づいて、移動機ユーザの動態情報を抽出する。第2実施形態では、動態情報抽出部602は、移動機ユーザの動態情報として人口流量情報を抽出する。第2実施形態の動態情報抽出部602は、後述する位置抽出部602F、対応付け部602G、属性判断部602H、及び集計部602Iを含んで構成される。
【0106】
位置抽出部602Fは、測位情報取得部601から電話番号、位置情報、及び時刻情報を入力し、所望の時刻における移動機100の移動状況を示す情報である移動情報を出力する部分である。
【0107】
ここで、所望の時刻における移動機の100の移動状況とは、例えば、設定した時刻における直前に測位された位置から、直後に測位された位置への移動を指す。以下説明のための例では、所望の時刻における移動機の100の移動状況として、設定した時刻における直前に測位された位置から、直後に測位された位置への移動を用いて説明しているが、これに限ることを意図しない。例えば、所望の時刻の直前に測位された複数の位置情報(移動モデル)を用いて、所望の時刻における移動状況(今の移動モデル)を推定してもよい。例えばこの場合、直前の2個の測定位置を結ぶ直線をそのまま延長して、時間按分によって所望の時刻における移動状況を推定してもよい。2個以上の測定位置を用いても勿論よい。
【0108】
ここで、図18〜図21を参照して、所望の時刻の直近における移動機100の位置の抽出方法について説明する。
【0109】
図18には位置抽出部602Fが利用する情報の例を示す。この図に示すように、位置抽出部602Fが利用する情報は、時刻情報、位置情報、及び位置情報取得契機が、ユーザIDと関連付けられた情報である(以後、この情報のことを「ユーザID−PRACH PD GAI対応情報」と称することがある)。
【0110】
「ユーザID」について、通信トラヒック制御装置600は、ユーザIDが電話番号と関連付けられて保持されている保持手段(図示せず)を参照することで、測位情報取得部601から入力した電話番号と関連付けられたユーザIDを取得する。
【0111】
「時刻情報」には、位置情報を測位した時刻が保持されている。また、「位置情報」には、上述した方法により所謂PRACH PD測位計算を行うことにより測位された移動機100の位置情報、或いは、移動機100が在圏するセクタの中心座標に関する情報が保持されている。位置情報は経度及び緯度で表現してもよい。或いは、基準点を設定して、当該基準点からの相対的な位置で表示してもよい。
【0112】
「位置情報取得契機」には、移動機100の位置情報が測位された契機の種別が保持される。移動機100の位置が測位される契機は(1)周期的(例えば約一時間周期)、(2)発着信時、及び(3)位置登録エリアを越えて移動した場合、の少なくとも一つとすることが好適である。但し、測位される契機はこれらに限定されるわけではなく、所望の契機を設定可能である。
【0113】
今、時刻11時における人口の流量を求めたいとする。この場合、位置抽出部602Fは、図18に示す情報の中からユーザID毎に「時刻」が11時の直前及び直後の情報を選別する。選別される情報の例を図19及び図20に示す。図19には、所望の時刻の直前の情報を、及び図20には所望の時刻の直後の情報を示す。例えば、ユーザIDが“123”であるユーザが所有する移動機100の場合測位は10時30分、11時30分、及び11時45分に行われている。この場合、所望の時刻(今回の例では11時)の前後である10時30分に測位された情報、及び11時30分に測位された情報が選別される。
【0114】
図21に、位置抽出部602Fが出力する移動情報の例を示す。図21に示すように、位置抽出部602Fは、例えば、ユーザIDが“123”であるユーザについては、移動情報として位置(X1、Y1)(すなわち直前に測位された位置)、位置(X2、Y2)(すなわち直後に測位された位置)、及び、ユーザIDを出力する。
【0115】
さて、図17に戻り、対応付け部602Gは、位置抽出部602Fが抽出した移動情報を、一定の範囲の広がりを持つ所望のエリア単位に対応付けて一のエリア単位から他のエリア単位への移動として表現する表現形式へと変換する部分である。所望のエリア単位とは、メッシュ状でもよい。或いは、市町村等の行政区画をエリア単位としてもよい。或いは、図6に模式的に示すポロノイ図を用いてもよい。図6において、中抜き円で示した位置がセクタの中心経度緯度を表す。この図に示すように、ポロノイ図とは、互いに隣接するセクタのセクタ中心経度緯度との2等分線で分割した図を言う。更に、セクタ単位の勢力図(サービスエリア図)が存在するなど、セクタと位置の対応情報があればそれを利用してもよい。
【0116】
図22は、移動情報を所望のエリア単位に対応付けて一のエリア単位から他のエリア単位への移動として表現する表現形式へと変換する方法を説明するための図である。ここでは所望のエリア単位を正方形のグリッドとする。図22において、各グリッドを一意に識別可能とするエリア単位識別子を各グリッドの左上に丸括弧内に記入する。移動機100の位置が特定されれば(本明細書においては(X1、Y1)等と表記している)対応する一つのエリア単位が特定される。今回の例では、例えばユーザIDが“123”であるユーザの例(移動情報は、(X1、Y1)→(X2、Y2))では、エリア単位識別子が(3)であるエリア単位からエリア単位識別子が(5)であるエリア単位へと移動している。
【0117】
この方法によって、対応付け部602Gは、位置抽出部602Fが抽出した移動情報を、一定の範囲の広がりをもつエリア単位に対応付けて一のエリア単位(エリア単位識別子が(3))から他のエリア単位(エリア単位識別子が(5))への移動として表現する表現形式へと変換できる。
【0118】
属性情報保持部604は、移動機100のユーザの属性情報をユーザIDと関連付けて保持している部分である。図23に属性情報保持部604が保持する属性情報の例を示す。図23に示すように、属性情報には例えば性別、年齢、住所を含めてもよい。
【0119】
属性判断部602Hは、属性情報保持部604が保持する属性情報に基づいて移動情報を、後述する人口流量情報(即ち、移動情報を集計することによって得られる情報)を出力するために用いるべきか否かを判断する部分である。
【0120】
具体的には、属性判断部602Hは、属性情報保持部604が保持する属性情報を参照することで所望の属性が一定の要件を満たしているか否かを判断する。一定の要件を満たしていると判断した場合には、属性判断部602Hは、対応する移動情報を後述する人口流量情報を出力するために用いると判断する。一定の要件を満たしていないと判断した場合には、属性判断部602Hは、対応する移動情報を後述する人口流量情報を出力するために用いないと判断する。
【0121】
図24には、図23の属性情報において所望の属性「性別」が“男性”である(即ち、属性に係る一定の要件を満たしている)移動情報を用いた場合の例を示す。なお、所望の属性、及び一定の要件については自由に設定することができる。
【0122】
その他に、例えば、属性を「年齢」とし、一定の要件を“10歳以上30歳未満”としてもよい。或いは、例えば属性を「住所」とし、一定の要件を“中央区”としてもよい。
【0123】
集計部602Iは、属性判断部602Hによって出力するために用いると判断された移動情報を集計(統合)することによって人口流量情報を算出し、算出した人口流量情報を制御部603へ出力する部分である。
【0124】
図25は、移動情報を集計(統合)することによって人口流量情報を算出する方法を説明するための図である。但し、図25においては表中に記入されているべき数字を省略している。図25における一番左の列が所望の時刻の直前に測位された位置情報に対応するエリア単位の識別子が記入されている。図25における一番上の行が所望の時刻の直後に測位された位置情報に対応するエリア単位の識別子が記入されている。
【0125】
図21及び図22に示す例を用いて説明する。ユーザIDが“123”であるユーザはエリア単位識別子(3)から(5)へ移動しているため、図25のAで示した欄の数字に1が加えられる。同様に、ユーザIDが“456”であるユーザはエリア単位識別子(7)から(8)へ移動しているため、図25のBで示した欄の数字に1が加えられる。ユーザIDが“789”であるユーザはエリア単位識別子(8)から(2)へ移動しているため、図25のCで示した欄の数字に1が加えられる。
【0126】
集計部602Iは、上記方法により、移動情報を統合し、人口流量情報(すなわち複数の移動機100についての移動情報をエリア単位毎に集計した情報)を算出することができる。例えば、図26には、上記方法によって算出した人口流量情報の表示例を示す。この図において6角形で囲まれた領域が一つのエリア単位を示す。当該表示例では、矢印の始点に位置するエリア単位から矢印の先端に位置するエリア単位に矢印の近くに記載された数字の割合で人が移動したことを示す。なお、ここでの「人口流量情報」は、「移動機ユーザに関する人口流量情報」である。
【0127】
なお、集計部602Iは、図19及び図20に記載されている「位置情報取得契機」を参照することにより、特定の信号種別(特定信号種別)によって位置情報が取得された情報のみを集計してもよい。その場合、例えば「位置情報取得契機」が“周期位置登録”である情報のみを集計してもよい。例えば、「位置情報取得契機」が“発信”である情報には偏りが存在することが分かっているような場合には、そのような特定信号種別によって生じる偏りを排除することが可能となる。
【0128】
制御部603は、集計部602Iから出力された人口流量情報に基づいて、通信トラヒック制御を行う部分である。通信トラヒック制御処理については、例えば、輻輳状態を未然に防止するための通信トラヒック規制制御と、消費電力を最小化するための縮退運転制御とを、図28〜図31に基づき、後に説明する。
【0129】
[通信システムにて実行される処理の流れについて]
つぎに、このように構成された通信システム10の処理について図27を参照して説明する。
【0130】
移動機100から発信要求または位置登録要求が出力されると、RNC300では、それら要求に従って、移動機100の位置測位が行われる(ステップS101)。すなわち、RRCコネクション要求がRNC300(RNC通信制御部302)にて受信されると、RNC通信制御部302により、その要求に対してRRCコネクションセットアップが移動機100に送信される。そして、移動機100からRRCコネクションセットアップの完了信号が、RNC通信制御部302により受信される(ステップS101)。ここで得られた信号の遅延値に基づいて、移動機100のセクタ内におけるおおよその位置情報が測位部301により計算され、位置測位が行われる(ステップS102:測位ステップ)。
【0131】
そして、RNC300では、RNC通信制御部302により、移動機100の位置情報と、そのテンポラリIDとが抽出される(ステップS103)。RNC通信制御部302により、抽出された位置情報とテンポラリIDとは、Initial UE Messageに付加され、交換機400に送信される(ステップS104:送信ステップ)。
【0132】
交換機400では、交換機通信制御部401により、Initial UE Messageが受信され、そして当該Initial UE Messageに含まれているテンポラリIDは、変換部402により移動機100の電話番号に変換される(ステップS105)。そして、記憶部403に、変換された電話番号、測位がなされた時刻としての時刻情報、及び位置情報が、測位情報として対応付けて記憶される(ステップS106)。
【0133】
記憶部403に記憶された測位情報(電話番号、時刻情報及び位置情報)は、通信トラヒック制御装置600へ向けて定期的に送信され、または通信トラヒック制御装置600からの要求に応じて通信トラヒック制御装置600へ向けて送信され(ステップS107)、通信トラヒック制御装置600の測位情報取得部601により取得される(ステップS107A)。
【0134】
具体的には、測位情報取得部601は、(1)一定周期(例えば約一時間周期)、(2)発着信時、及び(3)位置登録エリアを越えて移動したときの少なくとも一つを契機として位置情報を取得する。
【0135】
動態情報抽出部602の位置抽出部602Fは、ユーザID−PRACH PD GAI対応情報に基づいて、ユーザ毎に、所望の時刻の直前及び直後における移動機100の移動状況を示す情報である移動情報を抽出する(ステップS121:位置抽出ステップ)。
【0136】
対応付け部602Gは、ステップS121で抽出した移動情報を所望のエリア単位に対応付けて一のエリア単位から他のエリア単位への移動として表現する表現形式へと変換する(ステップS122)。
【0137】
属性判断部602Hは、属性情報に基づいて移動情報を、人口流量情報を出力するために用いるべきか否かを判断し、用いるべき移動情報のみを選別する(ステップS123)。
【0138】
集計部602Iは、移動情報を集計(統合)することによって人口流量情報を抽出し(ステップS124)、制御部603へ出力する。本実施形態では、集計部602Iは、属性による分類がなされていない全般的な人口流量情報、および、所定の属性別(例えば年齢層別(10代、20代、30代・・))の人口流量情報を抽出し、制御部603へ出力するものとする。なお、ここでの「人口流量情報」については、あるエリアに流入する数だけでなく、同エリアから流出する数も考慮して抽出される。即ち、人口流量については、単一の方向でなく、「流入」と「流出」の双方向の数が考慮される。
【0139】
そして、制御部603は、集計部602Iから出力された人口流量情報に基づいて、例えば、以下のような通信トラヒック制御を行う(ステップS125)。ここでの通信トラヒック制御としては、(1)属性による分類がなされていない全般的な人口流量情報に基づくアクセス規制制御、(2)属性による分類がなされていない全般的な人口流量情報に基づく縮退運転制御、(3)所定の属性別の人口流量情報に基づくアクセス規制制御、(4)所定の属性別の人口流量情報に基づく縮退運転制御、の計4つを取り上げる。なお、(1)、(3)については「基地局単位」でのアクセス規制制御を以下に例示するが、「交換機単位」でアクセス規制制御を行ってもよい。(2)、(4)については「基地局単位」での縮退運転制御を以下に例示するが、「交換機単位」で縮退運転制御を行ってもよい。また、ここでの「縮退運転」とは、例えば仮想化技術を利用してネットワーク全体のリソース量を必要分のみに縮退して運転すること、無線チャネルのうち不要な無線チャネルを一時的に停波すること、一部の基地局の出力を上げてエリアを広げることで周辺基地局の運転そのものを停止することなどを示している。但し、これらに限定するものではない。
【0140】
まず、(1)属性による分類がなされていない全般的な人口流量情報に基づくアクセス規制制御の例を図28により説明する。図28に示すように、制御部603は、集計部602Iから出力された人口流量情報のうち、属性による分類がなされていない全般的な人口流量情報を参照し(ステップS231)、ある対象エリアへ入る人口流量が第1の閾値X以上であるか否かを判断する(ステップS232)。ここで、対象エリアへ入る人口流量が第1の閾値X未満であれば、対象エリアにおける通信トラヒック量が、通信トラヒック制御を要するレベルにまで増加する可能性は低いと予想されるため、アクセス規制制御は行わずに、処理を終了する。
【0141】
一方、対象エリアへ入る人口流量が第1の閾値X以上であれば、第1の閾値Xより大きい第2の閾値Yを用いて、対象エリアへ入る人口流量が第2の閾値Y以上であるか否かを判断する(ステップS233)。ここで、対象エリアへ入る人口流量が第2の閾値Y以上であれば、対象エリアにおける通信トラヒック量がかなり増加する可能性が高いと予想されるため、規制レベルの高いアクセス規制制御(yy%のアクセス規制)を行う(ステップS234)。一方、対象エリアへ入る人口流量が第2の閾値Y未満(即ち、第1の閾値X以上で第2の閾値Y未満)であれば、対象エリアにおける通信トラヒック量がある程度増加し、多少のアクセス規制制御を要する事態となる可能性が高いと予想されるため、規制レベルの低いアクセス規制制御(yy%よりも低いxx%のアクセス規制)を行う(ステップS235)。
【0142】
以上のようにして全般的な人口流量情報に基づくアクセス規制制御が行われる。なお、図28の処理は、予め定められた単位時間おきに繰り返される。また、図28の処理は、通信トラヒック制御の実施時の処理であり、通信トラヒック制御の解除についても同様のロジックで実行される。
【0143】
次に、(2)属性による分類がなされていない全般的な人口流量情報に基づく縮退運転制御の例を図29により説明する。図29に示すように、制御部603は、集計部602Iから出力された人口流量情報のうち、属性による分類がなされていない全般的な人口流量情報を参照し(ステップS231)、ある対象エリアへ入る人口流量が第1の閾値X以上であるか否かを判断する(ステップS232)。ここで、対象エリアへ入る人口流量が第1の閾値X未満であれば、対象エリアにおける通信トラヒック量が、通信トラヒック制御を要するレベルにまで増加する可能性は低いと予想されるため、縮退運転制御は行わずに、処理を終了する。
【0144】
一方、対象エリアへ入る人口流量が第1の閾値X以上であれば、第1の閾値Xより大きい第2の閾値Yを用いて、対象エリアへ入る人口流量が第2の閾値Y以上であるか否かを判断する(ステップS233)。ここで、対象エリアへ入る人口流量が第2の閾値Y以上であれば、対象エリアにおける通信トラヒック量が突発的に増加する可能性があると予想されるため、縮退させる率を最小限にして縮退運転制御(縮退させる率がbb%の縮退運転制御)を行う(ステップS236)。一方、対象エリアへ入る人口流量が第2の閾値Y未満(即ち、第1の閾値X以上で第2の閾値Y未満)であれば、対象エリアにおける通信トラヒック量はある程度増加するものの、突発的に増加する可能性は低いと予想されるため、縮退させる率を最大限にして縮退運転制御(縮退させる率がaa%(bb%よりも高い率)の縮退運転制御)を行う(ステップS237)。
【0145】
以上のようにして全般的な人口流量情報に基づく縮退運転制御が行われる。なお、図29の処理は、予め定められた単位時間おきに繰り返される。また、図29の処理は、通信トラヒック制御の実施時の処理であり、通信トラヒック制御の解除についても同様のロジックで実行される。
【0146】
次に、(3)所定の属性別の人口流量情報に基づくアクセス規制制御の例を図30により説明する。図30に示すように、制御部603は、集計部602Iから出力された人口流量情報のうち、所定の属性別(ここでは一例として年齢層別(10代、20代、30代・・))の人口流量情報を参照し、ある対象エリアへ入る40才未満の人口流量Aおよび同対象エリアへ入る40才以上の人口流量Bを求める(ステップS241)。そして、制御部603は、40才未満の人口流量Aが所定の閾値X以上であるか否かを判断し(ステップS242)、40才以上の人口流量Bが所定の閾値X以上であるか否かを判断する(ステップS243、S244)。
【0147】
一般に、40才未満の人は、40才以上の人と比較して、移動機で電子メール等を利用することが多いため、40才未満の1人当たりの通信トラヒック量は、40才以上の1人当たりの通信トラヒック量よりも多い。そこで、40才未満の人口流量Aおよび40才以上の人口流量Bのうち、40才以上の人口流量Bのみが閾値X以上の場合は、一方の40才未満の人口流量Aが閾値X未満なので、通信トラヒック量はある程度増加するものの、大きな増加はないと予測される。そのため、規制レベルの最も低いアクセス規制制御(xx%のアクセス規制)を行う(ステップS247)。一方、40才未満の人口流量Aのみが閾値X以上の場合は、40才以上の人口流量Bのみが閾値X以上の場合よりも通信トラヒック量は多くなると予測されるため、規制レベルがxx%のアクセス規制よりも高いアクセス規制制御(yy%のアクセス規制)を行う(ステップS246)。
【0148】
また、40才未満の人口流量Aおよび40才以上の人口流量Bの両方が閾値X以上の場合は、通信トラヒック量がかなり増加すると予測されるため、規制レベルが最も高いアクセス規制制御(zz%のアクセス規制)を行う(ステップS245)。一方、40才未満の人口流量Aおよび40才以上の人口流量Bの両方が閾値X未満の場合(ステップS242で否定判断、ステップS244で否定判断の場合)は、対象エリアにおける通信トラヒック量が、通信トラヒック制御を要するレベルにまで増加する可能性は低いと予想されるため、アクセス規制制御は行わずに、処理を終了する。
【0149】
以上のようにして属性別の人口流量情報に基づくアクセス規制制御が行われる。なお、図30の処理は、予め定められた単位時間おきに繰り返される。また、図30の処理は、通信トラヒック制御の実施時の処理であり、通信トラヒック制御の解除についても同様のロジックで実行される。
【0150】
次に、(4)所定の属性別の人口流量情報に基づく縮退運転制御の例を図31により説明する。図31に示すように、制御部603は、集計部602Iから出力された人口流量情報のうち、所定の属性別(ここでは一例として年齢層別(10代、20代、30代・・))の人口流量情報を参照し、ある対象エリアへ入る40才未満の人口流量Aおよび同対象エリアへ入る40才以上の人口流量Bを求める(ステップS241)。そして、制御部603は、40才未満の人口流量Aが所定の閾値X以上であるか否かを判断し(ステップS242)、40才以上の人口流量Bが所定の閾値X以上であるか否かを判断する(ステップS243、S244)。
【0151】
一般に、40才未満の人は、40才以上の人と比較して、移動機で電子メール等を利用することが多いため、40才未満の1人当たりの通信トラヒック量は、40才以上の1人当たりの通信トラヒック量よりも多い。そこで、40才未満の人口流量Aおよび40才以上の人口流量Bのうち、40才以上の人口流量Bのみが閾値X以上の場合は、一方の40才未満の人口流量Aが閾値X未満なので、通信トラヒック量はある程度増加するものの、突発的に増加する可能性は低いと予想される。そのため、縮退させる率を最大限にして縮退運転制御(縮退させる率が後述のcc%、bb%よりも高いaa%の縮退運転制御)を行う(ステップS250)。一方、40才未満の人口流量Aのみが閾値X以上の場合は、40才以上の人口流量Bのみが閾値X以上の場合よりも、通信トラヒック量が突発的に増加する可能性は高くなると予測されるため、縮退させる率が後述のcc%より高く上記aa%より低いbb%の縮退運転制御を行う(ステップS249)。
【0152】
また、40才未満の人口流量Aおよび40才以上の人口流量Bの両方が閾値X以上の場合は、通信トラヒック量が突発的に増加する可能性は最も高いと予測されるため、縮退させる率を最小限にして縮退運転制御(縮退させる率が上記aa%、bb%より低いcc%の縮退運転制御)を行う(ステップS248)。一方、40才未満の人口Aおよび40才以上の人口Bの両方が閾値X未満の場合(ステップS242で否定判断、ステップS244で否定判断の場合)は、縮退運転制御は行わずに処理を終了する。
【0153】
以上のようにして属性別の人口流量情報に基づく縮退運転制御が行われる。なお、図31の処理は、予め定められた単位時間おきに繰り返される。また、図31の処理は、通信トラヒック制御の実施時の処理であり、通信トラヒック制御の解除についても同様のロジックで実行される。
【0154】
以上説明した第2実施形態によれば、従来のように通信トラヒック量を基準とせず、通信トラヒック量発生の原因となる移動機ユーザの動態情報(ここでは人口流量情報)に基づいて通信トラヒック制御を行うため、より迅速で的確な通信トラヒック制御を実行することができる。そのため、例えば、通信トラヒック規制制御によって輻輳状態を未然に防止でき、縮退運転制御によって、消費電力を最小化することができる。また、属性別の動態情報(ここでは属性別の人口流量情報)に基づいて通信トラヒック制御を行うことができ、各移動機ユーザの属性に応じたよりきめ細かい通信トラヒック制御を実行することができる。
【0155】
なお、上記第1、第2実施形態では、動態情報として、人口分布情報、人口流量情報の例を説明したが、動態情報はこれらに限定されるものではなく、人口分布情報および人口流量情報の各々に関する差分情報(時系列的な変化量情報)であってもよいし、人口分布情報および人口流量情報の各々に関する周辺情報であってもよい。
【0156】
また、通信トラヒック制御として、アクセス規制制御および縮退運転制御を取り上げたが、通信トラヒック制御はこれらに限定されるものではなく、さまざまな通信トラヒック制御を含む。また、第1、第2実施形態で述べたアクセス規制制御および縮退運転制御の手法は、あくまでも一例であって、さまざまな手法を採用することができる。また、属性別に個別に通信トラヒック制御を行ってもよい。例えば、若年層と高齢層とでそれぞれ独立した基準によって、アクセス規制等の通信トラヒック制御を行ってもよい。
【符号の説明】
【0157】
10…通信システム、100…移動機、200…BTS、300…RNC、301…測位部、302…RNC通信制御部、400…交換機、401…交換機通信制御部、402…変換部、403…記憶部、500…管理センタ、501…社会センサユニット、502…ペタマイニングユニット、503…モバイルデモグラフィーユニット、504…可視化ソリューションユニット、600…通信トラヒック制御装置、601…測位情報取得部、602…動態情報抽出部、602A…位置算出部、602B…対応付け部、602C…属性判断部、602D…取得契機判断部、602E…集計部、602F…位置抽出部、602G…対応付け部、602H…属性判断部、602I…集計部、603…制御部、604…属性情報保持部、700…加入者プロファイル情報記憶部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動機が在圏するセクタを制御する基地局を制御する無線ネットワーク制御装置と通信可能な状態で接続された通信トラヒック制御装置であって、
少なくとも前記移動機の位置情報を含んだ測位情報を取得する測位情報取得部と、
前記測位情報取得部により取得された測位情報に基づいて、移動機ユーザの動態情報を抽出する動態情報抽出部と、
前記動態情報抽出部により抽出された移動機ユーザの動態情報に基づいて、通信トラヒック制御を行う制御部と、
を備える通信トラヒック制御装置。
【請求項2】
前記通信トラヒック制御装置は、
各移動機ユーザの属性情報を保持した属性情報保持部、をさらに備え、
前記動態情報抽出部は、前記属性情報保持部により保持された各移動機ユーザの属性情報および前記取得された測位情報に基づいて、属性別の動態情報を抽出し、
前記制御部は、抽出された前記属性別の動態情報に基づいて、通信トラヒック制御を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信トラヒック制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、通信トラヒック制御として、通信トラヒック規制制御、又は、縮退運転制御を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の通信トラヒック制御装置。
【請求項4】
移動機が在圏するセクタを制御する基地局を制御する無線ネットワーク制御装置と通信可能な状態で接続された通信トラヒック制御装置、により実行される通信トラヒック制御方法であって、
少なくとも前記移動機の位置情報を含んだ測位情報を取得する測位情報取得ステップと、
前記測位情報取得ステップにより取得された測位情報に基づいて、移動機ユーザの動態情報を抽出する動態情報抽出ステップと、
前記動態情報抽出ステップにより抽出された移動機ユーザの動態情報に基づいて、通信トラヒック制御を行う通信トラヒック制御ステップと、
を備える通信トラヒック制御方法。
【請求項1】
移動機が在圏するセクタを制御する基地局を制御する無線ネットワーク制御装置と通信可能な状態で接続された通信トラヒック制御装置であって、
少なくとも前記移動機の位置情報を含んだ測位情報を取得する測位情報取得部と、
前記測位情報取得部により取得された測位情報に基づいて、移動機ユーザの動態情報を抽出する動態情報抽出部と、
前記動態情報抽出部により抽出された移動機ユーザの動態情報に基づいて、通信トラヒック制御を行う制御部と、
を備える通信トラヒック制御装置。
【請求項2】
前記通信トラヒック制御装置は、
各移動機ユーザの属性情報を保持した属性情報保持部、をさらに備え、
前記動態情報抽出部は、前記属性情報保持部により保持された各移動機ユーザの属性情報および前記取得された測位情報に基づいて、属性別の動態情報を抽出し、
前記制御部は、抽出された前記属性別の動態情報に基づいて、通信トラヒック制御を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信トラヒック制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、通信トラヒック制御として、通信トラヒック規制制御、又は、縮退運転制御を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の通信トラヒック制御装置。
【請求項4】
移動機が在圏するセクタを制御する基地局を制御する無線ネットワーク制御装置と通信可能な状態で接続された通信トラヒック制御装置、により実行される通信トラヒック制御方法であって、
少なくとも前記移動機の位置情報を含んだ測位情報を取得する測位情報取得ステップと、
前記測位情報取得ステップにより取得された測位情報に基づいて、移動機ユーザの動態情報を抽出する動態情報抽出ステップと、
前記動態情報抽出ステップにより抽出された移動機ユーザの動態情報に基づいて、通信トラヒック制御を行う通信トラヒック制御ステップと、
を備える通信トラヒック制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2011−55432(P2011−55432A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204889(P2009−204889)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】
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