説明

通信ネットワークの受信機におけるシンボル判定閾値を調整する方法及び受信機

通信ネットワークの受信機におけるシンボル判定閾値を調整する方法及び装置は、送信機が送信したシンボルをより適切に受信するように受信機を調整できるようにする。一実施形態において、誤り訂正の前に、受信したビットのアンバランスが受信機により検出され、誤り訂正の後に、受信した信号のエラー成分が多数の1を含んでいるか又は多数の0を含んでいるかを判定する。送信機が送信の前に信号をスクランブルする場合、受信機も誤り訂正の後であって0又は1の数を数える処理の前に信号をスクランブルする。送信及び受信された0又は1の数のアンバランスはフィードバックとして使用され、到来する信号を受信機が解釈又は判定する方法を正確に調整できるように、検出器が使用する閾値を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通信ネットワークの技術分野に関連し、特に通信ネットワークの受信機におけるシンボル判定閾値を調整する方法及び装置等に関連する。
【背景技術】
【0002】
データ通信ネットワークは、互いに結合されかつ次々にデータを伝送する様々なルータ及びスイッチを含む。これらの装置は本願において「ネットワーク要素」と言及される。ネットワーク要素間の1つ以上の通信リンクを利用することでネットワーク要素同士の間でプロトコルデータユニット(例えば、インターネットプロトコルパケット、イーサーネットフレーム、データセル、セグメント又はその他の論理的に関連付けられたデータのビット/バイト)を伝送することで、データはデータ通信ネットワークを介して通信される。特定のプロトコルデータユニットは、それがネットワークを介してソースから宛先へ伝送されるように、複数のネットワーク要素により処理されかつ複数の通信リンクを経て伝送される。
【0003】
通信ネットワークにおける様々なネットワーク要素は所定の一群の規則(一般的には、プロトコルと言及される)を用いて互いに通信する。様々なプロトコルが様々な通信形態に使用され、例えば、ネットワーク要素間での伝送に備えて信号がどのように形成されるべきか、プロトコルデータユニットがどのような形態であるべきか、プロトコルデータユニットがネットワーク要素によりネットワーク内でどのように処理される又はルーティングされるか、ルーティング情報のような情報がネットワーク要素の間でどのようにやり取りされるべきか等が規定される。
【0004】
物理レイヤにおいて、ディジタル通信ネットワークでは、ネットワーク要素は0又は1の何れかを表すバイナリ信号(2進信号)を送信及び受信する。これを行う方法は、信号を伝送するのに使用される物理媒体のタイプに依存して幾つか存在する。例えば図1Aに示すように、ネットワーク要素が光ファイバを通じて通信している場合、送信機10はレーザをオン及びオフにすることでバイナリ信号を送信する。図1Bに示すように、電気的な導電性の物理媒体16が使用される場合、バイナリ信号は導体における電圧を調整することで形成される。図1Cに示すようにネットワーク要素が無線プロトコルを用いて通信している場合、バイナリ信号はネットワーク要素が互いに通信するのに使用されるキャリア周波数18にエンコードされる。使用する具体的な物理媒体によらず、送信機が情報を受信機に運ぶことができるように、送信機10は受信機12が受信する一連の0及び1を送信する。
【0005】
信号がファイバ、電気ケーブル、無線キャリア等により送信される場合、伝送の途中で信号が劣化してしまうおそれがある。従って、受信機が信号を受信した場合、受信信号は誤り成分又はエラー成分を含んでいる可能性がある。同様に、受信機及び送信機は同一の周波数で動作することを要し、送信機がその信号でデータを送信した場合の同じレートで信号からデータを受信機が読み出せるようにするのが一般的である。明示的なクロック信号を用いて送信機及び受信機を同期させてもよいし、或いは受信機は受信した波形から同期情報を抽出してもよい。
【0006】
図2は光、電気又は無線物理媒体で送信機10及び受信機12の間でデータを送信するのに使用される送信機/受信機の組み合わせの具体例を示す。図2に示す例では、受信機が伝送途中に導入された誤りを訂正できるようにしかつ受信した信号からクロック信号を抽出できるように設計されている。
【0007】
具体的には、図2に示されているように、送信機10はエンコーダ20を用いて送信する信号をエンコード又は符号化する。エンコーダは、伝送途中で生じたエラーのない当初の信号(オリジナル信号)を受信機が復元できるように、情報を信号に付加する。リードソロモン(Reed-Solomon)、ターボ(Turbo)、ボーズ(Bose)、レイチャウデューリ(Ray-Chaudhri)、ホッケンガム(Hocquenghem:BCH)符号化方式等を含むこの種の様々な既知の符号化方式が存在する。他の符号化方式も存在する。リードソロモン誤り訂正方式は、例えば、送信するデータから構築された多項式をオーバーサンプリングすることで動作する。多項式はいくつかのポイントで評価され、これらの値が信号として送信される。必要以上に頻繁に多項式をサンプリングすることは多項式を過度に決定することになる(over-determined)。受信機が多くのポイントを適切に受信している限り、受信機は、悪いポイントが僅かに存在したとしても当初の多項式(オリジナル多項式)を復元できる。従って、受信機12はRS-8誤り訂正器(エラー訂正器)24を用いてエンコーダ20で使用される当初の多項式を復元し、伝送途中に生じる如何なるエラーもない多項式を生成するのに使用される当初のデータ(オリジナルデータ)を再生できる。他の誤り訂正方式は、異なる方法を用いて、当該技術分野で知られているように、伝送途中で生じる誤りのない当初のデータを受信機で復元できるようにする。
【0008】
図2に示されている送信機/受信機のペアも到来する信号からクロックタイミング情報を検出し、受信機が、物理媒体から情報を読み取る際の周波数を把握できるようにする。受信機が送信機と同じ周波数で動作していなかった場合、受信信号中に望まれないエラーを導入してしまうおそれがある。概して、受信機は位相ロックループ(PLL)又は他の同様な構造を用いて送信機10が使用する送信周波数にロックする(合わせる)。PLL及び他の同期回路自体は当該技術分野でよく知られているので、実際のクロック抽出部は、図面の他の部分を曖昧にしないように、図2では示されていない。
【0009】
受信機が入力信号からクロック周波数を抽出することを当てにしている(前提としている)システムの場合、入力信号が長い0の列又は長い1の列を含まないことが重要である。なぜならそれは受信機が送信機との同期を失ってしまうことを引き起こすおそれがあるからである。具体的に言えば、長い0の列又は長い1の列は、受信機にとって、導電性ワイヤにおける一定の電圧又は光ファイバにおける一定の明/暗信号として見えるからである。一定値は(例えば、高/低電圧又は光のオン/オフのような)状態間の如何なる遷移も含まず、その状態間の遷移を用いてPLLは送信周波数を判定する。従って、状態変化なしに続く期間は、PLL又は他の同期回路に送信機で使用する周波数についての情報を提供せず、しかも受信機が送信機との同期を失ってしまうことを引き起こす。
【0010】
従って、0の長い列又は1の長い列を送信することを避けるため、例えば、線形フィードバックシフトレジスタ(Linear Feedback Shift Register:LFSR)スクランブラ22を用いて出力信号(S)を送信機がスクランブルするのが一般的である。線形フィードバックシフトレジスタの入力ビットは、先行する状態の線形な関数である。フィボナッチ(Fibonacci)LFSR及びガロア(Galois)LFSRはLFSRの2つの一般的な実現形態である。LFSRは、レジスタにおいて一定数の場所(例えば、16個)を有し、適切に設計されている場合、レジスタの全ての可能な値を通じて出力をランダム化し、スクランブラf(S)からの出力が、全て0である長い列又は全て1である長い列を含まないようにする。図2に示されているように、受信機は、同じスクランブラ22を用いて信号のスクランブルを解除し、誤り訂正器24を用いて信号を復号する前に、スクランブラによる影響を除去する。上述したように、誤り訂正器(エラー訂正器)は伝送途中の信号に生じるおそれのあるエラーを除去する。
【0011】
送信機及び受信機の間の伝送途中に信号の劣化に寄与するいくつかのエラーの原因がある。例えば、信号は時間/距離とともに弱くなる。同様に、ノイズの外部ソースが信号に加わり、受信機で受信される信号は、送信機が出力した意図されているデータに加えて他の成分も含んでいる。受信機は、信号を検出し、物理媒体における信号が0であるか又は1であるかをクロック周波数で判定する。典型的には、受信機は閾値を用いてそのような判定を行い、受信信号が閾値を上回っていればその信号は1であると解釈され、逆に受信信号が閾値を下回っていればその信号は0であると解釈される。受信機がこの処理を適切に実行しなかった場合、受信機における閾値判定処理も同様にエラーの原因となってしまう。従って、受信機における閾値判定処理を調整し、通信ネットワークにおいて受信機が受信する信号の信頼性を向上させることが望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
開示される発明の課題は、通信ネットワークにおいて受信機が受信する信号の信頼性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
実施の形態による方法は、
通信ネットワークの受信機におけるシンボル判定閾値を調整する方法であって、
データ成分及びエラー成分を含む信号を前記受信機が受信するステップと、
前記エラー成分の1又は0の数を抽出するステップと、
前記エラー成分の1又は0のカウント数を用いて前記受信機におけるシンボル判定閾値を調整するステップと
を有する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】様々な物理伝送媒体を使用する送信機/受信機のペアを示す機能ブロック図。
【図1B】様々な物理伝送媒体を使用する送信機/受信機のペアを示す機能ブロック図。
【図1C】様々な物理伝送媒体を使用する送信機/受信機のペアを示す機能ブロック図。
【図2】従来の送信機/受信機のペアを示す機能ブロック図。
【図3】本発明の実施の形態による送信機/受信機のペアを示す機能ブロック図。
【図4】本発明の実施の形態により閾値を判定する際に受信されたビットアンバランスをフィードバックとして使用する物理インターフェースの機能ブロック図。
【図5】本発明の実施の形態による通信ネットワーク内の受信機でのシンボル判定閾値を調整する処理のフローチャート。
【図6A】本発明の実施の形態によるシンボル判定での閾値変動の効果及び例示的な波形を示す図。
【図6B】本発明の実施の形態によるシンボル判定での閾値変動の効果及び例示的な波形を示す図。
【図6C】本発明の実施の形態によるシンボル判定での閾値変動の効果及び例示的な波形を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<概要>
願書に添付された特許請求の範囲に示されている発明に関する要約及び以下の概要は、以下の詳細な説明におけるいくつかの概念を与える。概要及び要約の説明は包括的ではなくかつ特許請求の範囲に記載されている保護範囲を規定するようにも意図されていない。
【0016】
通信ネットワークの受信機におけるシンボル判定閾値を調整する方法及び装置は、送信機が送信したシンボルをより適切に受信するように受信機を調整できるようにする。一実施形態において、誤り訂正の前に、受信したビットのアンバランス又は不均衡さ(imbalance)が受信機により検出され、誤り訂正の後に、受信した信号のエラー成分が多数の1を含んでいるか又は多数の0を含んでいるかを判定する。送信機が送信の前に信号をスクランブルする場合、受信機も誤り訂正の後であって0又は1の数を数える処理の前に信号をスクランブルする。送信及び受信された0又は1の数のアンバランスはフィードバックとして使用され、到来する信号を受信機が解釈又は判定する方法を正確に調整できるように、検出器が使用する閾値を調整する。
【0017】
<詳細な説明>
本発明の実施の形態の一部は添付の特許請求の範囲に記載されている。本発明は添付図面の具体例と共に説明され、図中、同様な参照番号は同様な要素を示す。以下に説明する添付図面は本発明の様々な実施の形態を説明する目的で記述されており、本発明の範囲を限定するようには意図されていない。簡明化のため、図中、全ての要素にラベルが付されているわけではない。
【0018】
図3は本発明の実施の形態による送信機/受信機のペアの実施形態を示す。本実施の形態において、送信機は図2に示されている送信機と同じである。しかしながら受信機は従来とは異なり、本受信機は、伝送途中で生じるエラーのタイプを判定し、その情報を利用して、(例えば、0がエラーである数及び1がエラーである数のような)各タイプのエラーの数が均衡するように受信機インターフェースの閾値を調整できるようにする。受信される不適切なゼロの数と受信される不適切な1の数とを均衡させることで、不適切な閾値処理に起因するエラーは減少し、これにより物理チャネルで受信した信号をよりいっそう適切に検出できるように受信機を調整できる。
【0019】
図3において、送信機10はリードソロモン(Reed-Solomon)8エンコーダ20を含み、光ファイバ14で送信される信号Sを生成するように信号をエンコード又は符号化する。他のタイプのエンコーダが使用されてもよく、RS-8エンコーダは、送信機が使用する可能性のあるエンコーダの単なる一例として示されているにすぎない。エンコーダは、送信されるデータを受信し、通信ネットワークで送信される信号Sを生成する。受信機12における誤り訂正器24は信号Sから誤り又はエラーを除去する。同様に、図3は送信機及び受信機を相互接続する光チャネルを示しているが、他のタイプの物理チャネルが使用されてもよく、本発明は光の形態を使用することに限定されない。送信機10はスクランブラ22を含み、スクランブラは16ビットLFSRスクランブラ又は他のタイプのスクランブラとして実現されてもよい。スクランブラは誤り訂正器20からの信号Sの関数f(S)を生成する。光信号が送信機及び受信機の間でデータを送信するのに使用される形態の場合、信号f(S)は電気-光(E-O)物理インターフェース26に送られ、電気信号はレーザを変調するのに使用され、対応する光信号が生成されファイバ14に出力できるようにする。他のタイプの物理インターフェースが他の物理媒体と共に使用されてもよい。
【0020】
受信機12は対応する光-電気(O-E)物理インターフェース28を有し、その一例が図4に示されている。図4については後に詳細に説明する。O-E物理インターフェース26は電気信号を生成し、その電気信号は送信機が送信した光信号f(S)とエラー成分eとを含んでいる。エラー成分eは伝送媒体で導入されたアーチファクトに加えて、物理インターフェース26及び物理インターフェース28により導入されたアーチファクトも含む。以下に詳細に説明するように、本発明の実施の形態によれば、エラー成分におけるエラーのタイプのアンバランス(例えば、正しくない0及び正しくない1)が検出され、光-電気物理インターフェース28の閾値を調整するのに使用され、信号f(S)+eに含まれているエラーの量に対するO-Eインターフェースからの寄与を減らす。
【0021】
図3に示されているように、受信機12は図2に示されている従来の受信機と同じいくつかの要素を含んでいる。具体的には、光信号が電気信号に変換された後に、信号はオリジナル信号を復元するためにスクランブルされる。信号はエラー成分を含んでいるので、スクランブラは信号のエラー成分のスクランブルを解除し(unscramble)、信号S+f(e)を形成する。その後、信号はエラー訂正器24に進み、エラー成分を除去し、オリジナル信号Sを復元する。図示の実施の形態において、RS-8エラー訂正器が送信機で使用されているエンコーダのタイプなので、RS-8エラー訂正器が図示されている。ただし、本発明は特定のタイプのエンコーダ/エラー訂正器を使用する例に限定されず、如何なるタイプの訂正方法が使用されてよい。
【0022】
図3に示されているように、受信機は、光-電気物理インターフェース28から出力された0又は1の数を計数し(カウントし又は数え)、特定のタイプのシンボルがどの程度多く信号f(S)+eに含まれているかを判定する。32ビットのレジスタ又は他のサイズのレジスタを使用して、信号中の0又は1の数を数えてもよいし、或いは他の構造を用いて0又は1の数を数えてもよい。
【0023】
カウントされたどの程度多くの1又は0がエラー成分eに寄与しているかを判定するために、受信機は、スクランブルされた信号f(S)を再構成し(作り直し)、再構成されたスクランブルされた信号f(S)の中の0又は1の数を数える(カウントする)。受信機のデコーダから出力された信号は、送信機のエンコーダから出力された信号と同じであることに留意を要する。従って、受信機のスクランブラ22から出力されるスクランブルされた信号は、送信機10のスクランブラ22から出力されたスクランブルされた信号と同じになる。従って、再構成されたスクランブルされた信号33はエラー成分の構成を決定するのに使用されてよい。例えば、図3に示されているように、受信機は、再構成されたスクランブルされた信号33における0又は1の数をカウントし、そのカウント値を、受信した信号f(S)+eに対してカウントされた0又は1の数から減算する。これは、エラー信号が0より1を多く含んでいる又は1より0を多く含んでいることを示す。
【0024】
この点に関し、受信機が受信信号f(S)+eに含まれている1の数をカウントする場合、受信機は再構成された信号f(S)に含まれている1の数を同様にカウントする。逆に、受信機が受信信号f(S)+eに含まれている0の数をカウントする場合、受信機は再構成された信号f(S)に含まれている0の数を同様にカウントする。
【0025】
信号f(S)+eにおける1の数とオリジナルのスクランブルされた信号f(S)における1の数とを比較することで、受信機12は、エラー信号が0の数に関するアンバランス(不均衡さ)を含んでいるか又は1の数に関するアンバランス(不均衡さ)を含んでいるかを判定できる。ノイズに基づくエラーが0のエラーと1のエラーとの間に均等に分散していることが期待される場合、0のエラー又は1のエラーの数に関して検出されるアンバランスは、O-E物理インターフェースにおける不適切な閾値処理に起因していると判断される。具体的には、光-電気インターフェースがファイバ14からの入力信号を解釈するのに使用されている閾値が不適切に設定されていることに起因して、アンバランスが生じていると判断される。
【0026】
例えば、回線インターフェースにおいて、「誤った1」のエラー(false one error)が「誤った0」のエラー(false zero error)よりも多かった場合、これは、O-Eインターフェースが受信信号を0ではなく1として不適切に解釈していることを示す。受信信号が1であるか0であるかを判定する場合に、O-Eインターフェースは受信信号を閾値と比較するので、「誤った1」が過剰であること(より多いこと)は、この閾値が小さすぎること及び閾値を僅かに上昇させるべきであることを示す。同様に、「誤った0」が「誤った1」より多い場合、O-Eインターフェースは、到来する信号をゼロ値として不適切に検出している。これは、O-Eインターフェースに使用する閾値が高すぎること及び閾値を僅かに下げるべきことを示す。
【0027】
受信機は0及び1の双方をカウントしてもよいし、それらの値の内の一方のみをカウントしてもよい。シンボルの一方のみがカウントされる場合、閾値を動かす方法は、カウント値がどのように組み合わせられるか及びカウント結果の符号に依存することになる。例えば、システムが1をカウントする場合、信号f(S)+eにおける1の数が信号f(S)から減算され、その場合の負数は、エラー信号中に1の数が多いことを示す。或いは、システムが1をカウントしかつ信号f(S)における1の数が信号f(S)+eにおける1の数から減算される場合に、エラー信号中に1の数が多いことが正数として示されてもよい。従って、シンボルがカウントされる特定の方法及び2つの数を組み合わせる方法は、閾値がどのように調整されるべきかを決定する。
【0028】
図4は本発明を更に説明するための光-電気物理インターフェース28を示す。図4に示されているように、O-Eインターフェースは入力40で光信号を受信し、出力42で電気信号を出力する。O-Eインターフェースはバイナリであり、出力42における信号が高い電圧値(1)又は低い電圧値(0)の何れかを有するようにする。動作の際、光ファイバ14からの光(光信号40)はフォトディテクタ44に入力され、フォトディテクタ44は電流46を生成する。様々なタイプのフォトディテクタが開発されているが、この形態におけるフォトディテクタは電流46を出力し、その電流46はフォトディテクタに入力された光の量に比例する。
【0029】
電流46は、電流を電圧50に変換するトランスインピーダンス増幅器48に入力される。電圧50は制限増幅器52に入力され、制限増幅器52は、入力電圧50が閾値54より多い奇異か又は閾値54より小さいかに依存して出力42に高電圧又は低電圧(0又は1)の何れかを出力する。他のO-Eインターフェースが使用されてもよく、このインターフェースは、通信ネットワークから到来する信号を解釈するための閾値を使用するインターフェースの具体例として単に例示されているにすぎない。他のインターフェースが具体的な実施の形態に依存して使用されてもよい。
【0030】
実施の形態によれば、0のエラーの数に関するアンバランス(又は1のエラーの数に関するアンバランス)34が閾値54を調整するために使用される。上述したように、「1」のエラーが多すぎる場合、それは、O-E物理インターフェースが、信号40を0として解釈すべき場合に信号40を不適切に1として解釈していることを示す。従ってO-E物理インターフェースにより使用される閾値54は低すぎるので、それは増加されるべきである。同様に、「0」のエラーが多すぎる場合、それは、O-E物理インターフェースが、信号40を1として解釈すべき場合に信号40を不適切に0として解釈していることを示す。これは、閾値が高すぎるのでそれを減少させるべきことを示す。
【0031】
図6A-6Cは図4に示す光-電気物理インターフェース28のような物理インターフェースが受信する例示的な波形を示す。図6A-6Cは同じ波形の例を示すが、物理インターフェースが閾値に基づいて波形を別様に判定する例を示す。図6Aの場合、閾値は適切であり、閾値レベルはエラー信号に寄与していない。図6Bの場合、閾値が高すぎる。図示されているように、閾値が高すぎる場合、インターフェースが1を出力すべき場合でも、不適切に0を時折出力してしまう場合がある。この例の場合、誤って0となっている箇所が2つ囲まれており、高い閾値に起因して0のエラーが生じている。同様に図6Cの場合、閾値が過剰に低く設定されている。閾値が低すぎる場合、インターフェースは1を多く出力する傾向があり、その結果0を出力すべき場合であっても1を不適切に出力してしまうことが時折ある。この例の場合、誤って1となっている3つの箇所が囲まれており、低い閾値に起因して1のエラーが生じている。
【0032】
本発明の実施の形態によれば、オリジナル信号f(S)を再構成することで、受信機はオリジナル信号f(S)と受信信号f(S)+eとを比較し、0のアンバランス又は1のアンバランスが生じているかを判定できる。従ってこれはO-E物理インターフェースの閾値を調整するのに使用できる。
【0033】
図5は本発明の実施の形態により使用される動作例を示す。図5に示されているように、入力信号f(S)+eが受信された場合(100)、入力信号中の1又は0の数がカウントされる(102)。入力信号f(S)+eは、信号を送信する際に送信機が使用したのと同じスクランブラでスクランブルされ(104)、信号S+f(e)が生成される。デスクランブルされた信号は、任意のエラーを除去しかつ送信機が送信したオリジナル信号Sを再構成するように処理される(106)。
【0034】
オリジナル信号Sはその後にf(S)を生成するためにスクランブルされる(108)。受信機はそのスクランブルされた信号f(S)における1又は0の数をカウントする(110)。スクランブルされた信号f(S)における1の数と入力信号f(S)+eにおける1の数とが比較される(112)。或いは等価的にスクランブルされた信号f(S)における0の数と入力信号f(S)+eにおける0の数とが比較されてもよい。これら2つの信号中の1(又は0)の数に関する何らかのアンバランス34は、O-E物理インターフェース28により使用される判定閾値54を調整するのに使用され(114)、受信した光信号から電気信号をよりいっそう正確に生成するように、O-E物理インターフェースを調整できるようにする。
【0035】
閾値判定インターフェースの具体例としてO-E物理インターフェースが使用されているが、本願で説明される方法は、閾値を利用して受信信号に関連するバイナリ判定を行う他のインターフェースに使用されてもよい。例えば、無線通信の場合、アンテナで受信された信号が0であるか又は1であるかを判定するように、信号が閾値により判定されてもよい。従って本発明は光物理レイヤが使用されている実施の形態に限定されず、むしろ本発明の実施の形態は電気信号及び無線信号をも受信する際に上記の方法を使用してもよい。
【0036】
上記の機能は一群のプログラム命令として実現されてもよく、その一群のプログラム命令はコンピュータで読み取り可能なメモリに格納されかつコンピュータプラットフォームの1つ以上のプロセッサにより実行される。しかしながら、本願で説明される全ての論理装置は個別素子又は集積回路を用いて実現可能であり、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラム可能な論理装置(例えば、フィールドゲートアレー(FPGA)又はマイクロプロセッサ)、状態マシン又はそれらの任意の組み合わせを含むその他の任意の装置と共に使用されるプログラム可能な論理等を用いて実現可能であることが、当業者にとって明らかであろう。プログラム可能な論理装置は、リードオンリメモリチップ、コンピュータメモリ、ディスク又はその他のストレージ媒体のような有形媒体に一時的又永続的に含まれてもよい。そのような実施の形態の全ては本発明の範囲内に該当する。
【0037】
明細書及び図面に記載されている実施の形態についての様々な変形例及び修正例は、本発明の精神及び範囲に含まれることが、理解されるべきである。上記の説明に含まれており添付図面に含まれている全ての事項は例示的であると解釈され、限定的に解釈されてはならない。本発明は添付の特許請求の範囲及び均等物によってのみ規定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ネットワークの受信機におけるシンボル判定閾値を調整する方法であって、
データ成分及びエラー成分を含む信号を前記受信機が受信するステップと、
前記エラー成分の1又は0の数を抽出するステップと、
前記エラー成分の1又は0のカウント数を用いて前記受信機におけるシンボル判定閾値を調整するステップと
を有する方法。
【請求項2】
前記エラー成分の1又は0の数を抽出する前記ステップが、
受信した信号について1又は0の数をカウントするステップと、
前記信号から前記エラー成分を除去するように前記受信した信号を修正し、前記データ成分を抽出するステップと、
前記データ成分の1又は0の数をカウントするステップと、
前記データ成分の1又は0の数と前記受信した信号の1又は0の数とを比較し、前記エラー成分の1又は0の数を抽出するステップと
を有する請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記受信した信号がスクランブルされる請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記信号から前記エラー成分を除去するように前記受信した信号を修正し、前記データ成分を抽出する前記ステップを実行する前に、前記信号のスクランブルを解除するステップを更に有する請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記データ成分の1又は0の数をカウントする前記ステップを実行する前に、前記データ成分をスクランブルするステップを更に有する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記データ成分の1又は0の数と前記受信した信号の1又は0の数とを比較し、前記エラー成分の1又は0の数を抽出する前記ステップにおいて、前記データ成分の1又は0の数を前記受信した信号の1又は0の数から減算する、請求項2記載の方法。
【請求項7】
前記データ成分の1又は0の数と前記受信した信号の1又は0の数とを比較し、前記エラー成分の1又は0の数を抽出する前記ステップにおいて、前記受信した信号の1又は0の数を前記データ成分の1又は0の数から減算する、請求項2記載の方法。
【請求項8】
前記エラー成分の1又は0の数を抽出する前記ステップにおいて前記エラー成分の1の数を抽出し、前記エラー成分についてカウントされた1の数が正であった場合、前記エラー成分の1又は0のカウント数を用いて前記受信機におけるシンボル判定閾値を調整する前記ステップにおいて、前記受信機におけるシンボル判定閾値を増加させる、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記エラー成分の1又は0の数を抽出する前記ステップにおいて前記エラー成分の1の数を抽出し、前記エラー成分についてカウントされた1の数が負であった場合、前記エラー成分の1又は0のカウント数を用いて前記受信機におけるシンボル判定閾値を調整する前記ステップにおいて、前記受信機におけるシンボル判定閾値を減少させる、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記エラー成分の1又は0の数を抽出する前記ステップにおいて前記エラー成分の0の数を抽出し、前記エラー成分についてカウントされた0の数が正であった場合、前記エラー成分の1又は0のカウント数を用いて前記受信機におけるシンボル判定閾値を調整する前記ステップにおいて、前記受信機におけるシンボル判定閾値を減少させる、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記エラー成分の1又は0の数を抽出する前記ステップにおいて前記エラー成分の0の数を抽出し、前記エラー成分についてカウントされた0の数が負であった場合、前記エラー成分の1又は0のカウント数を用いて前記受信機におけるシンボル判定閾値を調整する前記ステップにおいて、前記受信機におけるシンボル判定閾値を増加させる、請求項1記載の方法。
【請求項12】
通信ネットワークの受信機におけるシンボル判定閾値を調整する方法であって、
データ成分及びエラー成分を含むスクランブルされた信号を前記受信機が受信するステップと、
受信した信号の1又は0の数をカウントするステップと、
前記信号のスクランブルを解除するステップと、
前記信号について誤り訂正処理を行い、前記エラー成分を除去して前記データ成分を抽出するステップと、
前記データ成分をスクランブルするステップと、
スクランブルされたデータ成分の1又は0の数をカウントするステップと、
前記受信した信号の1又は0の数と前記スクランブルされたデータ成分の1又は0の数とを比較するステップと、
前記受信した信号の1又は0の数と前記スクランブルされたデータ成分の1又は0の数との前記比較の結果を利用して、前記受信機におけるシンボル判定閾値を調整するステップと
を有する方法。
【請求項13】
前記データ成分をスクランブルする前記ステップにおいて、前記受信機に送信する前にスクランブルされた信号を生成するために送信機で使用されたスクランブラと同じスクランブラを使用する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
受信した信号の1又は0の数をカウントする前記ステップが、前記受信した信号の0の数をカウントすることで実行される場合、スクランブルされたデータ成分の1又は0の数をカウントする前記ステップが、前記スクランブルされたデータ成分の0の数をカウントすることで実行される、請求項12記載の方法。
【請求項15】
受信した信号の1又は0の数をカウントする前記ステップが、前記受信した信号の1の数をカウントすることで実行される場合、スクランブルされたデータ成分の1又は0の数をカウントする前記ステップが、前記スクランブルされたデータ成分の1の数をカウントすることで実行される、請求項12記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つの閾値を利用して受信信号についてシンボル判定を行う物理インターフェースと、
前記受信信号のスクランブルを解除するデスクランブラと、
前記受信信号から誤り成分を除去し、データ成分を抽出する誤り訂正器と、
データ成分をスクランブルするスクランブラと、
前記受信信号の1又は0の数とスクランブルされたデータ成分の1又は0の数とを比較する比較器と
を有する受信機。
【請求項17】
前記少なくとも1つの閾値が調整可能であり、前記物理インターフェースが前記比較器による比較結果を用いて前記少なくとも1つの閾値を調整する、請求項16記載の受信機。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【公表番号】特表2013−517712(P2013−517712A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549217(P2012−549217)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際出願番号】PCT/CA2011/000061
【国際公開番号】WO2011/088555
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(390023157)ノーテル・ネットワークス・リミテッド (153)
【出願人】(506231308)エルジー−エリクソン カンパニー, リミテッド (2)
【Fターム(参考)】