説明

通信ネットワーク試験データ生成装置及び通信ネットワーク試験データ生成方法

【課題】通信ネットワーク試験を容易にして作業効率を向上すること。
【解決手段】診断対象のIP機器に対して他のIP機器から診断用に送信されたIPパケットと、その診断対象のIP機器から応答として返信されたIPパケットとをモニタし、モニタされた複数のIPパケットから通信ネットワーク試験で対象とされるIPパケットを抽出し、抽出されたIPパケットから通信ネットワーク環境によって変化するデータ領域を抽出してマーキングし、抽出されたIPパケットとマーキングされた変更可能なデータ領域とを用いて、通信ネットワーク試験時に使用される試験データを生成して、生成された試験データを記憶手段に出力して記憶させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TCP/IPの通信ネットワークに接続されたIP機器を診断する際に用いる試験データを生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ルータ等のIP機器(ネットワーク機器)の動作が正常であるか異常であるか、設定に誤りがあるか等について診断する場合、診断対象のIP機器を通信ネットワークに接続し、他のIP機器から特定のIPパケットを送信して、診断対象のIP機器からの応答IPパケットをモニタすることにより、そのIP機器が正常であるか否かを診断することができる。
【0003】
また、SNMP(Simple Network Management Protocol)等のIP機器用監視プロトコルを用いて、IP機器が正常に動作しているかを遠隔から監視することもできる。
【0004】
更には、診断対象であるIP機器よりも遠隔にあるサーバやPC等のIP機器に対して、ICMP(Internet Control Message Protocol)等のプロトコルを用いて通信ネットワークの疎通を確認することにより、途中にあるIP機器の動作が正常であるかを間接的に確認することもできる。
【0005】
一方、IP機器を診断する別の手段として、トラヒック発生装置を用いる方法もある。例えば、複数のパケット送受信装置とトラヒック制御装置から構成されるトラヒック発生システムを、診断対象であるIP機器を間に挟んだ通信ネットワークの両側に接続し、予め定められたパケットをあるパケット送受信装置から他のパケット送受信装置に送信する。そのパケットを受信したパケット送受信装置は、受信したパケットから通信ネットワークの通信速度を確認する(特許文献1参照)。その結果、診断対象のIP機器の動作が正常であるかを確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−48096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
診断対象のIP機器がSNMP等のネットワーク監視プロトコルに対応している場合には、それらのプロトコルを用いて監視を実施すればよい。しかしながら、家庭用ルータ等の安価なIP機器の場合、SNMPに対応していないなど、ネットワーク監視プロトコルを用いた診断ができない場合がある。
【0008】
また、診断対象のIP機器が、LAN(Local Area Netwok)等の小規模な通信ネットワークに接続されている場合には、IP機器の両側にトラヒック発生装置を接続して診断を行うことができる。しかしながら、インターネット等の大規模な通信ネットワークの場合は、トラヒック発生装置を接続することが困難であり、現実的でない場合がある。
【0009】
更に、遠隔のサーバやPC等にICMP等のプロトコルを用いて通信ネットワークの疎通を確認する方法の場合、IP機器が電源断やハングアップで動作していないことは確認できる。しかしながら、IP機器がDNS(Domain Name Sysmte)リレーなど、通信ネットワークに接続するための様々な機能が正しく設定され、動作しているか否かを確認するには、DNSプロトコルの試験も必要となるなど、必要な各種プロトコルについてそれぞれ試験が必要となるため、プロトコルの送信手法が煩雑となる。
【0010】
このような問題を解決するには、各種プロトコルを含む一連のIPパケット群を試験用に生成し、そのIPパケット群をネットワーク装置に送信する方法も考えられる。例えば、ICMP、DNS、HTTPプロトコルをHTTPサーバへ順次送信することにより、ルータが正常にHTTPアクセスを処理できているかを確認することができる。
【0011】
しかしながら、PC等のIP機器を利用してこのようなプロトコルを生成して送信するには、通信ネットワーク及びPCに関する様々な知識が必要であり、作業に熟達したユーザでないと実施が困難である。また、操作に時間を要するという問題もある。
【0012】
例えば、Webブラウザを利用して特定のWebサーバにアクセスすることにより、HTTPに関する試験を実施することができる。しかしながら、当該Webサーバに前回アクセスした際のキャッシュがWebブラウザ内に残っている場合には、HTTPプロトコルが発生しない。そのため、Webブラウザのキャッシュを明示的にクリヤした後にWebサーバにアクセスする必要があるが、キャッシュクリアのための操作に時間を要し、また、そのような作業が必要であるという知識を事前に習得しておく必要がある。
【0013】
本発明は、上記を鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、通信ネットワークに接続されたIP機器の診断(通信ネットワーク試験)を容易にして作業効率を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1記載の通信ネットワーク試験データ生成装置は、診断対象のIP機器に対して他のIP機器から診断用に送信されたIPパケットと、前記診断対象のIP機器から応答として返信されたIPパケットとをモニタするモニタ手段と、モニタされた複数のIPパケットから通信ネットワーク試験で対象とされるIPパケットを抽出する抽出手段と、抽出されたIPパケットから通信ネットワーク環境によって変化するデータ領域を抽出してマーキングするマーキング手段と、抽出されたIPパケットとマーキングされた変更可能なデータ領域とを用いて、前記通信ネットワーク試験時に使用される試験データを生成する生成手段と、生成された試験データを記憶手段に出力して記憶させる出力手段と、を有することを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、診断対象のIP機器に対して他のIP機器から診断用に送信されたIPパケットと、その診断対象のIP機器から応答として返信されたIPパケットとをモニタし、モニタされた複数のIPパケットから通信ネットワーク試験で対象とされるIPパケットを抽出し、抽出されたIPパケットから通信ネットワーク環境によって変化するデータ領域を抽出してマーキングし、抽出されたIPパケットとマーキングされた変更可能なデータ領域とを用いて、通信ネットワーク試験時に使用される試験データを生成して、生成された試験データを記憶手段に出力して記憶させるため、複雑な知識を用いることなく短時間で試験データの生成が容易となり、通信ネットワーク試験に要する作業効率を向上することができる。
【0016】
また、本発明によれば、抽出されたIPパケットから通信ネットワーク環境によって変化するデータ領域を抽出してマーキングし、そのマーキングされた変更可能なデータ領域を用いて、通信ネットワーク試験時に使用される試験データを生成するため、通信ネットワーク試験時において試験データに含まれる全てのデータ領域を手動で編集する場合と比較して、マーキングされたデータ領域のみを変更可能であることから、操作ミスによるエラーを削減することができる。
【0017】
請求項2記載の通信ネットワーク試験データ生成装置は、請求項1記載の通信ネットワーク試験データ生成装置において、生成された複数の試験データをそれぞれ前記通信ネットワーク試験時の診断ルールとして選択候補表示する表示手段と、表示された複数の診断ルールから任意の診断ルールを選択する選択手段と、を更に有することを特徴とする。
【0018】
請求項3記載の通信ネットワーク試験データ生成装置は、請求項1又は2記載の通信ネットワーク試験データ生成装置において、前記抽出手段は、モニタされた複数のIPパケットにそれぞれ含まれるプロトコル情報を選択候補表示する表示手段と、表示された複数のプロトコル情報から前記通信ネットワーク試験で対象とされるプロトコル情報を選択する選択手段と、を有し、選択されたプロトコル情報を有するIPパケットを抽出することを特徴とする。
【0019】
請求項4記載の通信ネットワーク試験データ生成装置は、請求項3記載の通信ネットワーク試験データ生成装置において、前記変更可能なデータ領域は、任意に設定可能な送信元IPアドレスと送信先IPアドレスであって、前記生成手段は、送信時に前記IPパケットに含まれていたプロトコルデータと当該プロトコルの種別と前記送信元IPアドレスと前記送信先IPアドレスとを少なくとも含む送信用の試験データと、返信時に前記IPパケットに含まれていたプロトコルデータと当該プロトコルの種別と前記送信元IPアドレスと前記送信先IPアドレスとを少なくとも含む受信用の試験データと有する前記試験データを生成することを特徴とする。
【0020】
請求項5記載の通信ネットワーク試験データ生成方法は、コンピュータにより行う通信ネットワーク試験データ生成方法において、診断対象のIP機器に対して他のIP機器から診断用に送信されたIPパケットと、前記診断対象のIP機器から応答として返信されたIPパケットとをモニタするモニタステップと、モニタされた複数のIPパケットから通信ネットワーク試験で対象とされるIPパケットを抽出する抽出ステップと、抽出されたIPパケットから通信ネットワーク環境によって変化するデータ領域を抽出してマーキングするマーキングステップと、抽出されたIPパケットとマーキングされた変更可能なデータ領域とを用いて、前記通信ネットワーク試験時に使用される試験データを生成する生成ステップと、生成された試験データを記憶手段に出力して記憶させる出力ステップと、を有することを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、診断対象のIP機器に対して他のIP機器から診断用に送信されたIPパケットと、その診断対象のIP機器から応答として返信されたIPパケットとをモニタし、モニタされた複数のIPパケットから通信ネットワーク試験で対象とされるIPパケットを抽出し、抽出されたIPパケットから通信ネットワーク環境によって変化するデータ領域を抽出してマーキングし、抽出されたIPパケットとマーキングされた変更可能なデータ領域とを用いて、通信ネットワーク試験時に使用される試験データを生成して、生成された試験データを記憶手段に出力して記憶させるため、複雑な知識を用いることなく短時間で試験データの生成が容易となり、通信ネットワーク試験に要する作業効率を向上することができる。
【0022】
また、本発明によれば、抽出されたIPパケットから通信ネットワーク環境によって変化するデータ領域を抽出してマーキングし、そのマーキングされた変更可能なデータ領域を用いて、通信ネットワーク試験時に使用される試験データを生成するため、通信ネットワーク試験時において試験データに含まれる全てのデータ領域を手動で編集する場合と比較して、マーキングされたデータ領域のみを変更可能であることから、操作ミスによるエラーを削減することができる。
【0023】
請求項6記載の通信ネットワーク試験データ生成方法は、請求項5記載の通信ネットワーク試験データ生成方法において、生成された複数の試験データをそれぞれ前記通信ネットワーク試験時の診断ルールとして選択候補表示する表示ステップと、表示された複数の診断ルールから任意の診断ルールを選択する選択ステップと、を更に有することを特徴とする。
【0024】
請求項7記載の通信ネットワーク試験データ生成方法は、請求項5又は6記載の通信ネットワーク試験データ生成方法において、前記抽出ステップは、モニタされた複数のIPパケットにそれぞれ含まれるプロトコル情報を選択候補表示する表示ステップと、表示された複数のプロトコル情報から前記通信ネットワーク試験で対象とされるプロトコル情報を選択する選択ステップと、を有し、選択されたプロトコル情報を有するIPパケットを抽出することを特徴とする。
【0025】
請求項8記載の通信ネットワーク試験データ生成方法は、請求項7記載の通信ネットワーク試験データ生成方法において、前記変更可能なデータ領域は、任意に設定可能な送信元IPアドレスと送信先IPアドレスであって、前記生成ステップは、送信時に前記IPパケットに含まれていたプロトコルデータと当該プロトコルの種別と前記送信元IPアドレスと前記送信先IPアドレスとを少なくとも含む送信用の試験データと、返信時に前記IPパケットに含まれていたプロトコルデータと当該プロトコルの種別と前記送信元IPアドレスと前記送信先IPアドレスとを少なくとも含む受信用の試験データと有する前記試験データを生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、通信ネットワーク試験を容易にして作業効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】通信ネットワーク試験データ生成装置の機能ブロック構成を示す図である。
【図2】IPアドレス情報及びプロトコル情報の一例を示す図である。
【図3】診断用プロトコル一覧の一例を示す図である。
【図4】診断ルールの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施する一実施の形態について図面を用いて説明する。但し、本発明は多くの異なる様態で実施することが可能であり、本実施の形態の記載内容に限定して解釈すべきではない。
【0029】
本発明は、上記課題の解決を図るため、通信ネットワーク上で送受信されている様々な診断用のIPパケットを捕捉し、その捕捉したIPパケットを利用して試験時に用いる一連のIPパケット群を予め生成するという技術的思想を導入している。
【0030】
試験時において、捕捉したIPパケットを利用して生成したIPパケット群をPCや専用IP端末等から通信ネットワークに送信し、その結果受信したIPパケットからIP機器の診断を実施することが可能となる。
【0031】
但し、IPパケットには送信先及び送信元のIPアドレス等、通信ネットワーク環境に応じて変更が必要な各種データが含まれるため、それらのデータをネットワーク環境に応じて変更する必要があるという点にも着目している。
【0032】
最初に、通信ネットワーク試験データ生成装置の機能について説明する。
【0033】
図1は、本実施の形態に係る通信ネットワーク試験データ生成装置の機能ブロック構成を示す図である。この通信ネットワーク試験データ生成装置1は、複数のIP機器(診断対象のIP機器を含む)が通信している通信ネットワーク2に接続され、IPパケットモニタ部10と、IPパケット抽出部20と、診断ルール生成部30とで構成されている。
【0034】
IPパケットモニタ部10は、通信ネットワーク2を介して診断対象のIP機器に対して他のIP機器から診断用に送信されたIPパケットと、その診断対象のIP機器から応答として当該他のIP機器に返信されたIPパケットとをモニタする機能を有している。具体的には、IPパケット受信部101と、IPアドレス抽出部102と、プロトコル識別部103と、IPアドレス情報保存部104と、プロトコル情報保存部105とで構成されている。
【0035】
IPパケット抽出部20は、ユーザの指定に基づいて、IPパケットモニタ部10でモニタされた複数のIPパケットから、後程実施される通信ネットワーク試験で対象とされるIPパケットを抽出する機能を有している。具体的には、試験用IPパケット判定部201と、プロトコル選択部202と、プロトコル一覧表示部203とで構成されている。
【0036】
診断ルール生成部30は、IPパケット抽出部20で抽出されたIPパケットを用いて、通信ネットワーク試験時に使用される診断ルールを生成する機能を有している。具体的には、変動要因マーキング部301と、試験データ生成部302と、試験データ出力部303と、診断ルール表示部304と、診断ルール選択部305とで構成されている。
【0037】
なお、この通信ネットワーク試験データ生成装置1には、モニター等に代表される表示装置3、マウスやキーボードやタッチペン等に代表される入力装置4、フラッシュメモリやハードディスク等に代表される記憶装置5が接続されている。特に記憶装置5の配置については、通信ネットワーク試験データ生成装置1の内外を問わず、LAN等の通信ネットワーク経由でアクセス可能な記憶媒体でもよい。
【0038】
また、通信ネットワーク試験データ生成装置1を構成する上記各機能部はCPU等の処理手段により実現され、それら各機能部の処理動作はプログラムにより実行される。
【0039】
次に、通信ネットワーク試験データ生成装置の処理動作について説明する。
【0040】
最初に、IPパケット受信部101が、通信ネットワーク2を伝送している全てのIPパケットを受信する(S101)。
【0041】
次に、IPアドレス抽出部102が、受信したIPパケットに含まれるIPアドレスを取得してIPアドレス情報保存部104に保存し、そのIPパケット自体もIPアドレス情報保存部104に保存する(S102)。
【0042】
次に、プロトコル識別部103が、IPアドレス抽出部102からIPパケットを取得し、どのプロトコルのIPパケットであるかを判定して、ICMP、HTTP、DNS等の予め定められたプロトコルの場合には、そのプロトコル情報をプロトコル情報保存部105に保存し、それ以外のプロトコルの場合には破棄する(S103)。
【0043】
例えば、ARP(Address Resolution Protocol)は頻繁に発生するプロトコルであるが、IP機器の診断には関係ないため破棄する。これにより、後段のIPパケット抽出部20での選択候補となるプロトコル情報の種類を抑制できる。
【0044】
ここで、IPアドレス情報保存部104及びプロトコル情報保存部105に保存されるデータの一例を図2に示す。IPアドレス情報保存部104には、IPアドレステーブル104a及びIPパケットテーブル104bが保存されている。IPアドレステーブル104aには、受信IPパケットから取得したIPアドレスの一覧が含まれる。IPパケットテーブル104bには、元のバイト列で表現されるパケットデータに加え、送信元IPアドレス、送信先IPアドレス、プロトコル種別、プロトコル内容が含まれる。
【0045】
なお、IPアドレステーブル104aの各IPアドレスから、IPパケットテーブル104bの各IPパケットにポインタが貼られている。これにより、IPアドレステーブル104aのIPアドレスから、当該IPアドレスを有するIPパケットをIPパケットテーブル104bから検索できる。
【0046】
一方、プロトコル情報保存部105には、受信IPパケットから取得したプロトコル情報の一覧が含まれる。各プロトコル情報から、IPパケットテーブル104bの各IPパケットにポインタが貼られている。これにより、プロトコル情報保存部105のプロトコル情報から、当該プロトコル情報を有するIPパケットをIPパケットテーブル104bから検索できる。
【0047】
すなわち、IPアドレス情報保存部104に保存されたIPアドレスと、プロトコル情報保存部105に保存されたプロトコル情報とは、特定のIPアドレスからそのIPアドレスを含むIPパケット、特定のプロトコル情報からそのプロトコル情報に一致するIPパケットをそれぞれ特定することができる。
【0048】
次に、IPパケットの受信開始から一定時間が経過した場合、又はユーザが入力装置4を利用してIPパケットの捕捉完了を明示的に指示した場合に、IPパケット抽出部20が、IPパケットモニタ部10に対して、IPパケットの受信を終了する指示、IPアドレス情報及びプロトコル情報の保存を終了する指示を行う(S104)。
【0049】
次に、試験用IPパケット判定部201が、IPアドレス情報保存部104に保存されたIPアドレス情報と、プロトコル情報保存部105に保存されたプロトコル情報とを用いて、選択候補となる診断用プロトコル一覧を送信元IPアドレス別に集約して生成し、プロトコル一覧表示部203が、その診断用プロトコル一覧を表示装置3に選択候補表示する(S105)。
【0050】
次に、ユーザによって入力装置4が操作されることにより、診断ルールを生成したいプロトコル(通信ネットワーク試験で対象とされるプロトコル情報)が診断用プロトコル一覧から指定された場合に、プロトコル選択部202が、指定されたプロトコル情報を診断用プロトコル一覧の中から選択する(S106)。IPパケット抽出部20から見れば、ここで選択されたプロトコル情報を有するIPパケットを抽出することになる。
【0051】
このとき、選択するプロトコルは1つではなく、複数でも良い。例えば、DNSとHTTPを選択することにより、一般的なWebブラウザによるWebサーバアクセスの状況を試験することができる。
【0052】
ここで、表示装置3に表示される診断用プロトコル一覧の一例を図3に示す。表示装置3には、送受信IPアドレス別に、それぞれのIPアドレスでモニタされたプロトコル情報が表示される。
【0053】
例えば、IPアドレスが192.168.1.10のIP機器と192.168.1.1のIP機器との間で送受信された診断用プロトコル一覧には、DNS及びHTTPが表示される。また、192.168.1.11のIP機器と255.255.255.0のIP機器との間で送受信された診断用プロトコル一覧には、SSDP(Simple Service Discovery Protocol)が表示される。
【0054】
次に、変動要因マーキング部301が、選択されたプロトコル情報を含むIPパケット(抽出されたIPパケット)の中から、通信ネットワーク環境によって変更の必要がある箇所(変化するデータ領域)を抽出し、マーキングする(S107)。
【0055】
例えば、送信元IPアドレス及び受信先IPアドレスは変動するので、それぞれ、異なるラベルでマーキングする。このとき、同一のIPアドレスには同一のラベルを付与する。プロトコルによっては、プロトコル内にIPアドレス情報を含む場合もあるので、そのような箇所にもマーキングを行う。
【0056】
次に、試験データ生成部302が、抽出されたIPパケットとマーキングのラベルが付与された箇所(マーキングされた変更可能なデータ領域)とを用いて、通信ネットワーク試験時に使用される試験データを当該試験時に解釈可能なフォーマットで生成する(S108)。
【0057】
次に、試験データ出力部303が、生成された試験データを記憶装置5に出力して記憶させる(S109)。
【0058】
このとき、記憶装置5に記憶される試験データは1つではなく、複数でも良い。例えば、あるタイミングで選択されたDNSとHTTPを有するIPパケットを用いて生成されたWebサーバアクセス試験用の試験データや、次のタイミングで選択されたDNSのみを有するIPパケットを用いて生成されたDNS試験用の試験データ等である。
【0059】
次に、診断ルール表示部304が、記憶装置5から試験データを読み出して、試験データ生成部302によって生成された複数の試験データを、通信ネットワーク試験時の診断ルールとして表示装置3に選択候補表示する(S110)。
【0060】
最後に、ユーザによって入力装置4が操作されることにより、所望の診断ルールが指定された場合に、診断ルール選択部305が、指定された診断ルール(任意の診断ルール)を表示中の複数の診断ルールから選択する(S111)。
【0061】
ここで、診断ルール生成部30で生成される診断ルール(試験データに相当)の一例を図4に示す。
【0062】
診断ルールは、選択されたプロトコル情報の種別毎に、そのプロトコル送信時に当該プロトコルを有するIPパケットに含まれていたプロトコル内容(プロトコルデータ)と、そのIPパケットに含まれていた実際のパケットデータと、試験環境によって任意に設定可能な送信元IPアドレス及び送信先IPアドレスと、送信フラグとを有する送信診断用IPパケットと、そのプロトコル受信時に当該プロトコルを有するIPパケットに含まれていたプロトコル内容と、そのIPパケットに含まれていた実際のパケットデータと、試験環境によって任意に設定可能な送信元IPアドレス及び送信先IPアドレスと、受信フラグとを有する受信診断用IPパケットと、から構成される。それら送信診断用IPパケット及び受信診断用IPパケットには通し番号が付与される。
【0063】
以上、通信ネットワーク試験データ生成装置の機能及び処理動作について説明した。
【0064】
最後に、生成された診断ルールを用いて行う通信ネットワーク試験方法について説明する。なお、以下説明する試験方法は、診断ルール生成後に通信ネットワーク試験データ生成装置自体が実行してもよく、その診断ルールを受け取った他のIP機器が実行してもよい。
【0065】
最初に、診断ルールとして生成された試験データ内の各IPパケットの送信元IPアドレス及び送信先IPアドレスを、診断対象のIP機器のアドレスに変更する(S201)。
【0066】
具体的には、Addr1、Addr2、Addr3のそれぞれを、実際のIPアドレスで置き換える。このとき、Addr1はIPパケットを送信するIP機器のIPアドレス、Addr2はDNSサーバ、Addr3はHTTPサーバのIPアドレスを指定する。例えば、一般の家庭用ネットワークでは、ルータがDNSサーバをなっていることから、Addr2にはルータのIPアドレスを指定する。
【0067】
このとき、パケットデータの特定位置に送信元IPアドレスおよび送信先IPアドレスが所在する場合には、Addr1、Addr2、Addr3のそれぞれについて指定したIPアドレスで置き換える。
【0068】
次に、診断ルール内の送受信フラグを上から順次確認し、sendであれば、そのIPパケットを送信し、receiveであれば、当該IPパケットが受信されるか否かを確認する(S202)。
【0069】
最後に、当該IPパケットが受信できない場合、プロトコル内容にエラーが含まれている場合、生成していたIPパケットと受信したIPパケットとのプロトコル内容が不一致である場合には、そのIP機器に問題が発生している可能性があると判定する(S203)。
【0070】
以上の処理を繰り返し、最後のIPパケットまで問題が発生しなければ、そのIP機器は正常に動作していると判定する(S204)。
【0071】
なお、IP機器の設定誤りを診断する場合は、予め意図して誤設定したIP機器で診断ルールを生成しておき、その診断ルールを用いて試験することにより、IP機器における特定の設定誤りを検出することも可能である。
【0072】
以上より、本実施の形態によれば、診断対象のIP機器に対して他のIP機器から診断用に送信されたIPパケットと、その診断対象のIP機器から応答として返信されたIPパケットとをモニタし、モニタされた複数のIPパケットから通信ネットワーク試験で対象とされるIPパケットを抽出し、抽出されたIPパケットから通信ネットワーク環境によって変更の必要がある箇所を抽出してマーキングし、抽出されたIPパケットとマーキングのラベルが付与された箇所とを用いて、通信ネットワーク試験時に使用される試験データを生成して、生成された試験データを記憶装置5に出力して記憶させるので、複雑な知識を用いることなく短時間で試験データの生成が容易となり、通信ネットワーク試験に要する作業効率を向上することができる。
【0073】
また、本実施の形態によれば、抽出されたIPパケットから通信ネットワーク環境によって変更の必要がある箇所を抽出してマーキングし、そのマーキングのラベルが付与された箇所を用いて、通信ネットワーク試験時に使用される試験データを生成するため、通信ネットワーク試験時において試験データに含まれる全てのデータ領域を手動で編集する場合と比較して、マーキングされた箇所のみを変更可能であることから、操作ミスによるエラーを削減することができる。
【0074】
すなわち、IPパケットは多数のデータ列から構成されており、一般に生成・修正を加えるには、専用のソフトウェア等が必要となる等、高度な作業が要求されるが、IPアドレス等の通信ネットワーク環境によって変更の必要な情報について、後から変更可能であることを示すためにマーキングしておくことにより、診断実施時に適切なIPアドレス等を入力するなど、その変更が容易に可能となる。
【符号の説明】
【0075】
1…通信ネットワーク試験データ生成装置
10…IPパケットモニタ部
101…IPパケット受信部
102…IPアドレス抽出部
103…プロトコル識別部
104…IPアドレス情報保存部
105…プロトコル情報保存部
20…IPパケット抽出部
201…試験用IPパケット判定部
202…プロトコル選択部
203…プロトコル一覧表示部
30…診断ルール生成部
301…変動要因マーキング部
302…試験データ生成部
303…試験データ出力部
304…診断ルール表示部
305…診断ルール選択部
2…通信ネットワーク
3…表示装置
4…入力装置
5…記憶装置
S101〜S111、S201〜S204…処理ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断対象のIP機器に対して他のIP機器から診断用に送信されたIPパケットと、前記診断対象のIP機器から応答として返信されたIPパケットとをモニタするモニタ手段と、
モニタされた複数のIPパケットから通信ネットワーク試験で対象とされるIPパケットを抽出する抽出手段と、
抽出されたIPパケットから通信ネットワーク環境によって変化するデータ領域を抽出してマーキングするマーキング手段と、
抽出されたIPパケットとマーキングされた変更可能なデータ領域とを用いて、前記通信ネットワーク試験時に使用される試験データを生成する生成手段と、
生成された試験データを記憶手段に出力して記憶させる出力手段と、
を有することを特徴とする通信ネットワーク試験データ生成装置。
【請求項2】
生成された複数の試験データをそれぞれ前記通信ネットワーク試験時の診断ルールとして選択候補表示する表示手段と、
表示された複数の診断ルールから任意の診断ルールを選択する選択手段と、
を更に有することを特徴とする請求項1記載の通信ネットワーク試験データ生成装置。
【請求項3】
前記抽出手段は、
モニタされた複数のIPパケットにそれぞれ含まれるプロトコル情報を選択候補表示する表示手段と、
表示された複数のプロトコル情報から前記通信ネットワーク試験で対象とされるプロトコル情報を選択する選択手段と、を有し、
選択されたプロトコル情報を有するIPパケットを抽出することを特徴とする請求項1又は2記載の通信ネットワーク試験データ生成装置。
【請求項4】
前記変更可能なデータ領域は、任意に設定可能な送信元IPアドレスと送信先IPアドレスであって、
前記生成手段は、
送信時に前記IPパケットに含まれていたプロトコルデータと当該プロトコルの種別と前記送信元IPアドレスと前記送信先IPアドレスとを少なくとも含む送信用の試験データと、返信時に前記IPパケットに含まれていたプロトコルデータと当該プロトコルの種別と前記送信元IPアドレスと前記送信先IPアドレスとを少なくとも含む受信用の試験データと有する前記試験データを生成することを特徴とする請求項3記載の通信ネットワーク試験データ生成装置。
【請求項5】
コンピュータにより行う通信ネットワーク試験データ生成方法において、
診断対象のIP機器に対して他のIP機器から診断用に送信されたIPパケットと、前記診断対象のIP機器から応答として返信されたIPパケットとをモニタするモニタステップと、
モニタされた複数のIPパケットから通信ネットワーク試験で対象とされるIPパケットを抽出する抽出ステップと、
抽出されたIPパケットから通信ネットワーク環境によって変化するデータ領域を抽出してマーキングするマーキングステップと、
抽出されたIPパケットとマーキングされた変更可能なデータ領域とを用いて、前記通信ネットワーク試験時に使用される試験データを生成する生成ステップと、
生成された試験データを記憶手段に出力して記憶させる出力ステップと、
を有することを特徴とする通信ネットワーク試験データ生成方法。
【請求項6】
生成された複数の試験データをそれぞれ前記通信ネットワーク試験時の診断ルールとして選択候補表示する表示ステップと、
表示された複数の診断ルールから任意の診断ルールを選択する選択ステップと、
を更に有することを特徴とする請求項5記載の通信ネットワーク試験データ生成方法。
【請求項7】
前記抽出ステップは、
モニタされた複数のIPパケットにそれぞれ含まれるプロトコル情報を選択候補表示する表示ステップと、
表示された複数のプロトコル情報から前記通信ネットワーク試験で対象とされるプロトコル情報を選択する選択ステップと、を有し、
選択されたプロトコル情報を有するIPパケットを抽出することを特徴とする請求項5又は6記載の通信ネットワーク試験データ生成方法。
【請求項8】
前記変更可能なデータ領域は、任意に設定可能な送信元IPアドレスと送信先IPアドレスであって、
前記生成ステップは、
送信時に前記IPパケットに含まれていたプロトコルデータと当該プロトコルの種別と前記送信元IPアドレスと前記送信先IPアドレスとを少なくとも含む送信用の試験データと、返信時に前記IPパケットに含まれていたプロトコルデータと当該プロトコルの種別と前記送信元IPアドレスと前記送信先IPアドレスとを少なくとも含む受信用の試験データと有する前記試験データを生成することを特徴とする請求項7記載の通信ネットワーク試験データ生成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate