通信モード設定装置
【課題】近距離無線通信においてポーリング時に必要な消費電力を低く抑えることができる通信モード設定装置を提供する。
【解決手段】リーダライタ10が検知モードをとるとき、ポーリングを省電力ポーリングモードとし、リーダライタ10が通信モードとなったとき、ポーリングを通常ポーリングモードに戻すようにする。省電力ポーリングモードは、リーダライタ10から無変調搬送波の電力電波Scwのみをポーリング間隔にて繰り返し送信するモードである。また、通常ポーリングモードは、一般的なポーリング動作であり、駆動電波Svを繰り返し送信するモードである。駆動電波Svには、電子キー2の電源となる電力電波と、IDコードの返信要求であるリクエスト信号とが含まれている。
【解決手段】リーダライタ10が検知モードをとるとき、ポーリングを省電力ポーリングモードとし、リーダライタ10が通信モードとなったとき、ポーリングを通常ポーリングモードに戻すようにする。省電力ポーリングモードは、リーダライタ10から無変調搬送波の電力電波Scwのみをポーリング間隔にて繰り返し送信するモードである。また、通常ポーリングモードは、一般的なポーリング動作であり、駆動電波Svを繰り返し送信するモードである。駆動電波Svには、電子キー2の電源となる電力電波と、IDコードの返信要求であるリクエスト信号とが含まれている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信マスタの動作モードを設定する通信モード設定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2者間の無線通信として、例えばNFC(Near Field Communication)が広く普及している(特許文献1等参照)。NFCには、例えばMifareやフェリカ(ともに登録商標)等がある。NFCでは、通信マスタにリーダライタが設置され、このリーダライタにタグがかざされると、双方向通信が開始される。詳しくは、リーダライタから送信された駆動電波によってタグが起動し、タグがデータをリーダライタに返信する。タグは、非常に小さなICチップからなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−266651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種のリーダライタは、所定のポーリング間隔で電波を断続的に送信して、電子キーと通信が成立するか否かを逐次確認している。このポーリング時にリーダライタから送信される電波は、タグの電源となるため、高出力又は長い時間長で送信されている。よって、一般的なリーダライタでは、ポーリングに要する消費電力が大きいという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、近距離無線通信においてポーリング時に必要な消費電力を低く抑えることができる通信モード設定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題点を解決するために、本発明では、通信マスタがポーリングにより通信端末に問い合せを送信し、当該ポーリングにて通信が確立すると、前記通信マスタと前記通信端末とが、磁界を電波とする近距離無線通信を介して通信する通信モード設定装置において、前記通信マスタへの前記通信端末の接近距離を検出する距離検出手段と、前記通信端末が前記通信マスタに接近していないとき、前記ポーリングを簡易形式の第1モードとし、前記通信端末が前記通信マスタに接近したとき、前記ポーリングを通常形式の第2モードに切り換えるモード設定手段を備えたことを要旨とする。
【0007】
この構成によれば、通信マスタが通信端末の接近を監視するときには、ポーリングを簡易形式の第1モードで実行する。よって、ポーリングに必要な電力が少なく抑えられるので、通信マスタにおいてポーリングに必要な電力を抑制することが可能となる。また、第1モードのポーリングにて通信端末の接近が検出されたときには、ポーリングが通常形式の第2モードに戻るので、通常の通信も問題なく実行することが可能となる。
【0008】
本発明では、前記第1モードは、前記通信端末に通信は成立しなくとも単なる受信行為が実行可能な磁界を送信するモードに設定されていることを要旨とする。
この構成によれば、第1モード時には、通信端末において通信の確立は課さず、単に通信端末に届けばよい電波を送信すればよい。よって、第1モード時の通信エリアを設定するとき、単に磁界が通信端末に届くか否かのみを考えれば済むので、通信シーケンスが非常に簡素なもので済む。また、通信マスタの省電力化にも一層寄与する。
【0009】
本発明では、前記通信マスタのアンテナ側のインピーダンスを決める際の一要素となる可変式のインピーダンス設定要素と、前記通信端末の接近を監視するとき、前記インピーダンスを低く設定することにより、前記通信マスタの動作モードを、通信は成立しないものの送信磁界強度は高い検知モードとし、前記第1モードで前記通信端末の接近を検出したとき、前記インピーダンスを高くすることにより、前記通信マスタの動作モードを、前記第1モードよりも送信磁界強度は低いが通信が実行できる通信モードに切り換える動作切換手段とを備え、前記第1モードは、前記検知モードに含まれるとともに、前記第2モードは、前記通信モードに含まれていることを要旨とする。
【0010】
この構成によれば、通信マスタが通信端末の接近を監視するとき、通信マスタのアンテナ側のインピーダンスを低くすることにより、通信マスタのアンテナのQ値(共振鋭さ)を高くする(検知モード)。これにより、実際の通信は成立しないが、通信マスタの送信磁界強度が強まるので、通信マスタの通信エリアを広くとることが可能となる。従って、通信マスタは、遠い位置から通信端末を捕獲することが可能となる。なお、このときは、電子キーの接近有無を検出できればよいので、実際の通信が確立しなくても何ら問題はない。
【0011】
そして、通信マスタが検知モードにて通信端末の接近を検出したときには、通信マスタのアンテナ側のインピーダンスを高くすることにより、通信マスタのQ値を低くする(通信モード)。よって、アンテナのQ値が低く抑えられれば実際の通信が可能となるので、通信マスタは接近した通信端末と問題なく通信を成立させることが可能となる。このため、通信端末の接近を広エリアにて監視可能で、かつ実際の通信も問題なく実行することが可能となる。
【0012】
本発明では、前記インピーダンス設定要素は、前記通信マスタの整合回路に設けられた可変式静電容量成分であり、前記動作切換手段は、前記可変式静電容量成分を調整することにより、前記通信マスタの動作モードを切り換えることを要旨とする。
この構成によれば、通信マスタに設けられた整合回路の静電容量成分を利用して、通信マスタのアンテナ側のインピーダンスを切り換えることが可能となる。
【0013】
本発明では、前記通信マスタが前記第2モードのとき、前記距離検出手段の検出値を基に、前記通信マスタの送信磁界強度を前記接近距離に応じた範囲に調整するエリア設定手段を備えたことを要旨とする。
【0014】
この構成によれば、通信マスタが第2モードになった後、通信端末が通信マスタに近づいた際、例えば接近距離が短くなると、通信マスタの送信磁界強度が低い値に切り換えられる。つまり、第2モード下で通信端末が通信マスタに急に近づくと、通信エリアが狭い範囲に切り換わる。このため、通信端末に過度の電圧が加わり難くなるので、通信端末の回路に破壊を生じ難くすることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、近距離無線通信においてポーリング時に必要な消費電力を低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一実施形態の通信エリア設定装置の構成図。
【図2】リーダライタの配置位置及び通信エリアの例を示す概念図。
【図3】(a),(b)はアンテナの変調波形とそのスペクトルとを示す説明図。
【図4】接近距離とアンテナ電流との相関関係を示すグラフ。
【図5】(a)〜(c)はリーダライタのエリア切り換わりの遷移を示す説明図。
【図6】各モードにおける接近距離とアンテナ電流との相関関係を示すグラフ。
【図7】各モードの通信シーケンスを示すタイムチャート。
【図8】ポーリング型のNFCの通信態様を示す説明図。
【図9】別例における通信エリア設定装置の構成図。
【図10】他の別例における通信エリア設定装置の構成図。
【図11】他の別例におけるリーダライタの回路図。
【図12】他の別例におけるリーダライタの回路図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した通信エリア設定装置の一実施形態を図1〜図8に従って説明する。
図1に示すように、車両1には、電子キー2との近距離無線通信によりID照合を実行する電子キーシステム3が設けられている。近距離無線通信は、いわゆるNFC(Near Field Communication)であって、例えばMifareやフェリカ(ともに登録商標)等が使用されている。この電子キーシステム3において、車外でID照合(車外照合)が成立すれば、ドアロック施解錠が許可又は実行され、車内でID照合(車内照合)が成立すれば、エンジン始動が許可される。なお、電子キー2が通信端末に相当する。
【0018】
この場合、車両1には、電子キー2のIDコードを照合するキー照合装置4と、車両ドアの施解錠動作を管理するドアロック装置5と、エンジンの動作を管理するエンジン始動装置6とが設けられ、これらが車内バス7を介して接続されている。このうち、キー照合装置4には、IDコードの照合動作を実行する照合ECU8が設けられている。エンジン始動装置6には、車両1の電源状態を切り換える際に操作するプッシュモーメンタリ式のエンジンスイッチ9が接続されている。
【0019】
照合ECU8には、電子キーシステム3の車両1側の通信装置としてリーダライタ10が接続されている。リーダライタ10は、通信相手である電子キー2への各種データの書き込み及び読み出しを行うものである。なお、リーダライタ10は、車外照合及び車内照合を行うために車外及び車内のそれぞれに設けられているが、本例の場合は便宜上、これらを1つのリーダライタ10として図示する。また、リーダライタ10が通信マスタに相当する。
【0020】
リーダライタ10には、電子キー2との近距離無線通信を管理するリーダライタ制御ECU11が設けられている。リーダライタ制御ECU11には、通信回路12及びフィルタ13を介して、近距離無線通信用のアンテナ14が接続されている。アンテナ14は、電波として磁界を送受信する磁界アンテナであって、例えばループアンテナが使用されている。また、アンテナ14は、例えばHF(High Frequency:13.56MHz)帯の電波を送受信する。
【0021】
アンテナ14には、複数の静電容量成分を持つ整合回路15と、信号波形のQ値(共振の鋭さ)を低く抑えるダンプ抵抗16と、インダクタンス成分を持つアンテナコイル17とが設けられている。アンテナ14は、アンテナコイル17のLと、整合回路15のCと、ダンプ抵抗16のRとの共振回路からなる。アンテナ14は、HF帯の磁界アンテナであるため、図2に示すように、平面視において略円形状の通信エリアEを形成する。
【0022】
Q値は、共振周波数をf、アンテナコイル17のインダクタンスをL、ダンプ抵抗16及びアンテナコイル17の銅損をRとすると、次式により算出される。
Q=(2πfL)/R
よって、ダンプ抵抗16の抵抗値を大きい値に設定すれば、Q値を低く抑えられることが分かる。ところで、図3(a)に示すように、Q値が高いと、送信電波の変調波形がなまって三角波のような波形をとり、電波のビットを正確に判断できない可能性に繋がる。しかし、図3(b)に示すように、Q値を低い値に抑えれば、送信帯域が広がり、結果、送信電波の変調波形が矩形波に近づくことになる。よって、正確なビット判定確保のために、アンテナ14にダンプ抵抗16を接続して、Q値を低くするようにしている。
【0023】
但し、ダンプ抵抗16の抵抗値は単純に大きくすればよいものではなく、抵抗値が必要以上に大きくなると、抵抗分でのロスが大きくなり、磁界強度が小さくなってしまう。さらに、通信回路12の出力インピーダンスとの整合条件との関係からも、好適な目標値がある。
【0024】
図1に示す通信回路12は、アンテナ14から送信する電波を変調したり、アンテナ14で受信した電波を復調したりする。
フィルタ13は、例えばバンドパスフィルタやローパスフィルタ等からなり、信号から正弦波以外の成分、つまり高調波成分をカットする。
【0025】
電子キー2は、リーダライタ10と近距離無線通信を行う、いわゆるICタグである。電子キー2は、見かけ上、キーと分かるものに限らず、例えば携帯電話やICカードも含む。電子キー2には、電子キー2の動作を管理する通信制御回路18が設けられている。通信制御回路18には、電子キー2のIDコードが登録されている。
【0026】
通信制御回路18には、近距離無線通信用のアンテナ19が接続されている。アンテナ19は、磁界アンテナの一種として例えばループアンテナが使用されている。アンテナ19は、アンテナコイル20と共振用のコンデンサ21との並列共振回路からなる。電子キー2は、電磁誘導で発生した電圧を最大化するよう動作するため、並列共振をとる。アンテナ19は、送受信アンテナであって、例えばHF帯の電波を送受信する。
【0027】
リーダライタ10は、例えば車両1が駐車状態にあるときや、ユーザが乗車したとき、アンテナ14から電子キー2の電源として駆動電波Svを断続的に送信する。電子キー2が駆動電波Svの通信エリアE内に進入して駆動電波Svを受信すると、駆動電波Svを電源として起動して、ID信号Sidをアンテナ19から送信する。ID信号Sidには、電子キー2のIDコードが含まれる。リーダライタ制御ECU11は、ID信号Sidをアンテナ14で受信すると、ID信号Sid内のIDコードを照合ECU8に転送する。照合ECU8は、リーダライタ制御ECU11からIDコードを入力すると、ID照合を行い、ID照合が成立すれば、ドアロック施解錠やエンジン始動を許可又は実行する。
【0028】
電子キーシステム3には、リーダライタ10(アンテナ14)の通信エリアEを電子キー2との距離(接近距離rと記す)に応じて設定する通信エリア設定装置22が設けられている。本例の通信エリア設定装置22は、接近距離rが小さくなると、リーダライタ10の送信磁界強度を低く設定して、リーダライタ10の通信エリアE(図2参照)を小さい範囲に切り換え、電子キー2に過度の電圧が誘起されないようにするためのものである。
【0029】
ダンプ抵抗16には、アンテナ電流Iaを検出するHiインピーダンス抵抗23が並列接続されている。ところで、図4に示すように、接近距離rとアンテナ電流Iaとの間には、接近距離rが短くなるに連れてアンテナ電流Iaが低下する相関関係がある。これは、アンテナ14の電力が電子キー2の接近によって電子キー2に伝送されるので、アンテナ14が有する磁界エネルギーの源であるアンテナ電流Iaは減少するためである。言い換えるならば、アンテナ14の磁界エネルギーが電子キー2に移動し、アンテナ14の共振回路に逆方向の誘起電流が流れるため、磁界を損失する方向にエネルギーが作用するからである。Hiインピーダンス抵抗23は、可変式ダンプ抵抗16の端子間における誘起電圧Vs(図1参照)を検出することによって、アンテナ電流Iaを検出する。なお、Hiインピーダンス抵抗23が距離算出手段を構成する。
【0030】
図1に示すように、車両1には、リーダライタ10の通信エリアEを設定するエリア設定回路24が設けられている。エリア設定回路24は、リーダライタ制御ECU11から独立した例えば1チップICからなる。また、エリア設定回路24はリーダライタ制御ECU11中に形成されてもよい。
【0031】
エリア設定回路24には、Hiインピーダンス抵抗23に流れるアンテナ電流Iaを基に、電子キー2との接近距離rを算出する接近距離算出部25が設けられている。接近距離算出部25は、Hiインピーダンス抵抗23により求まる誘起電圧Vsを基に、電子キー2との接近距離rを算出する。なお、接近距離算出部25が距離算出手段を構成する。
【0032】
エリア設定回路24には、接近距離算出部25が算出した接近距離をrを基に、リーダライタ10の動作モードを切り換えるモード切換部26が設けられている。本例のモード切換部26は、最初はリーダライタ10の動作モードを、通信はできないが電子キー2の接近は判定することができる広エリア(図5(a)に示すEa)のモード(検知モード)に設定して、電子キー2の接近有無を監視する。そして、検知モードで電子キー2の接近を検知すると、今度はリーダライタ10の動作モードを、通信が実行できる狭エリア(図5(b)に示すEb)のモード(通信モード)に設定して、実際の通信実行を試みる。なお、モード切換部26がモード設定手段及び動作切換手段を構成する。
【0033】
図1に示すように、整合回路15のコンデンサC1,C2は、T字接続されるとともに、容量値を切り換えることが可能な可変式が採用されている。これらコンデンサC1,C2には、例えばバリキャップダイオードやバラクタダイオード等の容量可変式ダイオードが使用されている。これらコンデンサC1,C2は、モード切換部26によって容量値が制御される。なお、コンデンサC1,C2がインピーダンス設定要素及び可変式静電容量成分を構成する。
【0034】
モード切換部26は、接近距離算出部25が算出した接近距離rを基に、これらコンデンサC1,C2を制御することにより、リーダライタ10の動作モードを検知モード及び通信モードのどちらかに設定する。換言すると、モード切換部26は、電子キー2の接近有無を監視するとき、コンデンサC1の値を低くし、コンデンサC2の値を高くすることにより、通信回路12から見たアンテナ側のインピーダンス(以降、RF回路インピーダンスと記す)を低くして、リーダライタ10の動作モードを検知モードにする。RF回路インピーダンスが低くなると、RF回路インピーダンスは、通信回路12の出力インピーダンス(以降、IC回路インピーダンスと記す)に近づき、アンテナ電流Iaが流れ易くなる。このため、アンテナ14の送信磁界強度が高くなり、結果、リーダライタ10の通信エリアEが広くなる。
【0035】
なお、検知モードのときは、アンテナ14のQ値が高くなるため、変調波形が三角波状になまり、実際の通信は実行できない状態になる。但し、これとは逆に、図6に示すように、電子キー2の接近による電気的特性、つまりアンテナ電流Iaの変化が大きくなるため、より敏感に電子キー2の接近有無が検知可能である。
【0036】
モード切換部26は、検知モードにて電子キー2の接近を検知すると、コンデンサC1の値を高くし、コンデンサC2の値を低くすることにより、RF回路インピーダンスを高くして、リーダライタ10の動作モードを通信モードにする。リーダライタ10が通信モードのときは、IC回路インピーダンスに比べてRF回路インピーダンスが大きくなるため、アンテナ14のQ値が低くなる。よって、信号波形が矩形波をとり、実際の信号解読が可能である。
【0037】
図7に示すように、検知モード及び通信モードには、それぞれ異なるポーリングモードが設定されている。検知モード時のポーリングモードは、短い時間長の電力電波相当のみを繰り返し送信するモード(省電力ポーリングモード)となっている。ところで、検知モードでは、電子キー2が接近したかどうかだけを確認できればよい。よって、省電力ポーリングモードでは、電子キー2に単に電波を受け取らせればよいので、非常に短い時間長の電力電波Scwのみを、ポーリング間隔Taにて繰り返し送信するように設定されている。電力電波Scwは、無変調搬送波である。
【0038】
一方、通信モード時のポーリングモードは、電力電波Vpw及びリクエスト信号Srqを含む駆動電波Svを、ポーリング間隔Tbにて繰り返し送信するモード(通常ポーリングモード)となっている。電力電波Vpwは、電子キー2の電源となる無変調搬送波である。また、リクエスト信号Srqは、電子キー2へのIDコード返信要求であり、IDコードというデータが乗っているため変調波である。なお、通常ポーリングモードが第2モードに相当する。
【0039】
本例の駆動電波Svは、Vpw+Srq+Vpwで1フレームが構成され、このフレームが間欠的に送信される。リーダライタ10の通信では、最初の電力電波Vpwで電子キー2を起動させ、続くリクエスト信号SrqでID返信を要求し、最後の電力電波Vpwにて電子キー2にIDコードを返信させている。
【0040】
リーダライタ10は、まずは最初、アンテナ14を送信アンテナとして送信動作に入り、省電力ポーリングモード時には電力電波Scwを、通常ポーリングモード時には駆動電波Svを各々送信する。リーダライタ制御ECU11は、この送信動作とともに受信回路も動作させ、電子キー2からの応答を待つ。そして、リーダライタ制御ECU11は、この送信及び受信の動作をポーリング間隔にて繰り返し実行する。リーダライタ10は、磁界結合方式により電子キー2と通信するため、送信波形の変化で以て電子キー2からの電波を受信する。
【0041】
図1に示すように、ダンプ抵抗16は、抵抗値を切り換えることが可能な可変式が使用されている。可変式ダンプ抵抗16は、共振回路の一要素になっているため、アンテナ14の送信磁界強度、つまりリーダライタ10の通信エリアEにも関係する要素となっている。よって、可変式ダンプ抵抗16の抵抗値を切り換えると、アンテナ14に流れる電流(以降、アンテナ電流Iaと記す)が変化するため、リーダライタ10の送信磁界も変化する。可変式ダンプ抵抗16が低く設定されると、通信エリアEが広くなり、可変式ダンプ抵抗16が高く設定されると、通信エリアEが狭くなる。
【0042】
エリア設定回路24には、リーダライタ10が通信モードのとき、接近距離算出部25が算出した接近距離rを基に、リーダライタ10の通信エリアEを設定するエリア設定部27が設けられている。エリア設定部27は、リーダライタ10が通信モードのとき、接近距離rを基に可変式ダンプ抵抗16及びコンデンサC1,C2の値を調整することにより、アンテナ電流Iaの値を切り換えて、リーダライタ10の送信磁界強度、つまりリーダライタ10の通信エリアEを設定する。なお、エリア設定部27がエリア設定手段に相当する。
【0043】
さて、リーダライタ10が電子キー2の接近有無を監視するとき、モード切換部26は、可変式ダンプ抵抗16を最小値としつつ、整合回路15のコンデンサC1を低くするとともに、コンデンサC2を高くすることにより、リーダライタ10の動作モードを検知モードに設定しておく。このときは、通信回路12の出力インピーダンス(IC回路インピーダンス)を低く設定していることになる。よって、RF回路インピーダンスを低くすると、インピーダンスがマッチングして電流が流れてしまうようになる。このため、RF回路インピーダンスが低くなるので、アンテナ電流Iaが回路に流れ易くなる。従って、リーダライタ10の通信エリアEは、図5(a)に示す広範囲のEaとなり、広範囲で電子キー2の接近を監視可能となる。
【0044】
また、検知モード時のポーリングは、図7に示す省電力ポーリングモードに設定されている。よって、このときは時間長の短い駆動電波相当の電力電波Scwが繰り返し送信されるのみである。従って、ポーリング動作にかかる電力が少なく済むので、リーダライタ10の省エネルギー化に効果が高くなる。また、リーダライタ10は電子キー2の接近を待つ時間の方が圧倒的に長いので、この時間帯にて電力削減できることは、省電力化に非常に効果が高いと言える。
【0045】
このとき、接近距離算出部25は、Hiインピーダンス抵抗23の誘起電圧Vsを基に、電子キー2の接近有無を監視する。リーダライタ10が検知モードのとき、電子キー2が通信エリアEaに進入すると、アンテナ電流Iaが低下して、接近距離算出部25が電子キー2の接近を認識する。接近距離算出部25は、検知モードのときに電子キー2の接近を検知すると、キー接近通知をモード切換部26に出力する。なお、図5では、通信エリアEaに電子キー2が横から進入する場合と、真向かいから進入する場合との2例を図示している。
【0046】
モード切換部26は、検知モードのときにキー接近通知を入力すると、リーダライタ10の動作モードを、検知モードから通信モードに切り換える。つまり、モード切換部26は、可変式ダンプ抵抗16を最小値のままとして、整合回路15のコンデンサC1を高くするとともに、コンデンサC2を低くすることにより、リーダライタ10の動作モードを通信モードに切り換える。このとき、RF回路インピーダンスが高くなるので、アンテナ電流Iaが回路に流れ難くなる。つまり、RF回路インピーダンスが高いと、回路内にミスマッチが生じ、電流が流れ難くなる。よって、リーダライタ10の通信エリアEは、図5(b)に示す狭範囲のEbに縮小される。
【0047】
通信モードのときは、RF回路インピーダンスが高く設定されるので、アンテナ14のQ値が低い値をとる。よって、アンテナ14の通信帯域が確保されるので、実際の通信が実行可能となる。このため、電子キー2が通信エリアEbに進入したときには、通信が成立する。なお、通信モードに切り換えられた直後は、ポーリング間隔を短くするか、多数フレームを送信するのがよい。これは、電子キー2が車両1に接近しており、通信距離を決める瞬間だからである。
【0048】
また、通信モード時のポーリングは、図7に示す通常ポーリングモードに設定されている。よって、このときは、駆動電波Svがポーリング間隔Tb(>Ta)にて繰り返し送信される。つまり、リーダライタ10は、いずれかのフレームの先頭を電子キー2に受け取らせて、電子キー2との間で通信を確立させるための動作をとる。
【0049】
リーダライタ10が通信モードのとき、エリア設定部27は、接近距離rに応じた範囲に通信エリアEを設定する。つまり、図5(c)に示すように、エリア設定部27は、接近距離rに応じた値に、可変式ダンプ抵抗16及びコンデンサC1,C2を調整することにより、アンテナ電流Iaを低く抑えて、アンテナ14の送信磁界強度(通信エリアE)を小さくする。このときは、可変式ダンプ抵抗16を高くし、コンデンサC1を更に高くし、コンデンサC2を更に低くすることにより、通信エリアEを狭くする。
【0050】
ところで、図5(c)に示すように、電子キー2が横からリーダライタ10に急に近づくと、電子キー2に対し、いきなり過大な電圧が加わることになり、これが電子キー2の回路破壊に繋がる。しかし、本例の場合は、電子キー2の接近距離rに応じてリーダライタ10の送信磁界強度が低く抑えられるので、電子キー2に過度の電圧が誘起されない。よって、電子キー2に回路破壊が生じ難くなる。
【0051】
ここで、近距離無線通信の規格には、通信において電子キー2にかかる磁界強度を一定値に抑えなければならないISO規格がある。これはつまり、誘起電圧を一定値以下に抑えることになる。本例の場合、電子キー2の接近検知においてアンテナ14から駆動電波Svを強い送信磁界強度で送信しているが、この状況下で電子キー2が駆動電波Svを受信しても、通信開始初期時はアンテナ14から電子キー2までの距離が長いので、実際に電子キー2にかかる電圧は低い値に収まる。よって、電子キー2の接近検知のために駆動電波Svを強い磁界強度で送信しても、規格に抵触することはない。
【0052】
なお、電波法で満たさなければならないリーダライタ10の送信磁界強度は非常に高い値であるので、本例において通信距離を延ばすべくリーダライタ10の送信磁界強度を高くするといっても、この電波法の範囲内に収まる値をとる。よって、本例の場合、電波法は問題なく準拠する。
【0053】
以上により、本例の場合、検知モード時のポーリングを省電力ポーリングモードで実行し、リーダライタ10が通信モードに切り換わると、ポーリングを通常ポーリングモードに切り換える。よって、検知モードのときには、ポーリングとして短い時間長の無変調搬送波のみを送信すればよいので、検知モードのポーリングの際に必要な電力を少なく抑えることが可能となる。また、リーダライタ10が電子キー2の接近を検知したときには、リーダライタ10が通信モードに切り換わって通常のポーリング動作に戻るので、通常の通信も問題なく実行することが可能となる。
【0054】
また、検知モード時には、RF回路インピーダンスを低くすることにより、アンテナ14のQ値を高くして感度を上げ、通信モード時には、RF回路インピーダンスを高くすることにより、アンテナ14のQ値を下げて通信帯域を確保している。よって、検知モードのときには、遠方から電子キー2を捕獲することが可能となる。また、このようにアンテナ14のQ値を高くすることでリーダライタ10の通信エリアEを広くとっても、通信モード時にはQ値を低い値に戻すので、実際の通信も問題なく実行することが可能である。
【0055】
本例の場合、電子キー2の接近が検知されると、直ぐに通信モードに入って電子キー2との通信成立を試みている。よって、図8に示すように、今まではポーリング間隔でしか通信が成立しなかったものが、本例の場合は電子キー2が通信エリアEbに進入した時点で通信が成立するようになる。従って、リーダライタ10の通信エリアEを見かけ上、延伸することが可能となる。
【0056】
また、リーダライタ10が通信モードのとき、アンテナ14の送信磁界強度が接近距離rに応じて低く抑えられる。よって、図5(c)に示すように、電子キー2が横から急にリーダライタ10の通信エリアEbに進入する動きをとった場合でも、アンテナ14の送信磁界強度は接近距離rに応じた値に低くなるので、電子キー2の回路に過度な電圧がかからず、電子キー2の回路に破壊を生じ難くすることが可能となる。
【0057】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)リーダライタ10が検知モードをとるとき、ポーリングを省電力ポーリングモードとし、リーダライタ10が通信モードとなったとき、ポーリングを通常ポーリングモードに戻すようにする。このため、検知モード時は少ない電力でポーリングが可能となるので、リーダライタ10においてポーリングにかかる電力を削減することができる。また、リーダライタ10は検知モードをとる時間が圧倒的に長いので、この時間帯で消費電力を少なく抑えられれば、リーダライタ10の省電力化に非常に効果が高いと言える。
【0058】
(2)検知モードのときのポーリングを省電力ポーリングモードとして省電力化が可能となれば、検知モードにおけるポーリング間隔Taを短くして、単位時間当たりの電力電波Scwの送信回数を多くすることは何ら問題ない。よって、この場合は、リーダライタ10が電子キー2を即時に検知することが可能となるので、リーダライタ10を検知モードから通信モードへ早期に切り換えることができる。また、リーダライタ10は電子キー2を遠方で捕獲可能となるので、リーダライタ10の通信距離を延伸することもできる。さらに、通信距離を延ばすことが可能となれば、電子キー2の誘起電圧も低く抑えることが可能となるので、電子キー2の回路破壊防止にも効果が高い。
【0059】
(3)省電力ポーリングモード時(即ち、検知モード時)には、NFCの通信成立は課さず、単に電子キー2に届けばよい電波を送信すればよい。よって、省電力ポーリングモード時の通信エリアを設定するとき、単に磁界が電子キー2に届くか否かのみを考えれば済むので、通信シーケンスが非常に簡素なもので済む。また、リーダライタ10の省電力化にも寄与する。
【0060】
(4)電子キー2がリーダライタ10に接近しているか否かを確認するとき、RF回路インピーダンスを低く設定する(アンテナ14のQ値を高くする)ことにより、リーダライタ10の動作モードを検知モードに設定する。このため、アンテナ14の送信磁界強度が強くなるので、電子キー2の接近を遠くから検知することができる。また、検知モードにて電子キー2の接近を検知したときには、RF回路インピーダンスを高く設定する(アンテナ14のQ値を低くする)ことにより、リーダライタ10の動作モードを通信モードに設定する。よって、最初は電子キー2を遠くから検知できるように、リーダライタ10を通信はできないが電子キー2の接近は検知できる検知モードに設定しておいても、電子キー2が接近した後は電子キー2との通信を問題なく成立させることができる。
【0061】
(5)リーダライタ10が検知モードのときには、アンテナ14のQ値が高いので、電子キー2の接近による電気的特性の変化、つまりアンテナ電流Iaの変化が大きくなる。よって、リーダライタ10は検知モードのとき感度が高いと言えるので、電子キー2を高感度にて検知することができる。
【0062】
(6)リーダライタ10が通信モードのときにも、リーダライタ10の送信磁界強度(通信エリアE)が電子キー2とリーダライタ10との接近距離rに応じた値に調整される。つまり、リーダライタ10が通信モードのとき、電子キー2がリーダライタ10に接近すると、それに応じてリーダライタ10の送信磁界強度が低い値に切り換えられる。このため、電子キー2に過度の電圧が一層加わり難くなるので、電子キー2の回路に破壊を一層生じ難くすることができる。
【0063】
(7)ダンプ抵抗16及びコンデンサC1,C2をともに可変式とし、可変式ダンプ抵抗16及びコンデンサC1,C2の両方を調整することで、リーダライタ10の送信磁界強度を切り換える。よって、より広い範囲に亘り、かつ効率よくリーダライタ10の送信磁界強度を切り換えることができる。
【0064】
(8)例えば、可変式ダンプ抵抗16のみでリーダライタ10の送信磁界強度を低くする場合、可変式ダンプ抵抗16の抵抗値を高くしたときには、RF回路インピーダンスがIC回路インピーダンスに近づくように低下するため、結果、インピーダンスがマッチングし、アンテナ14に流れる消費電流が増加する問題に繋がる。しかし、本例の場合は、リーダライタ10の送信磁界強度を低くする際、整合回路15のコンデンサC1,C2によりインピーダンスを高くしていくので、可変式ダンプ抵抗16にて低下したインピーダンスの変化分が、コンデンサC1,C2にて補填される。よって、可変式ダンプ抵抗16を高くしてリーダライタ10の送信磁界強度を低下させても、消費電流も低く抑えることができる。
【0065】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・距離検出手段は、Hiインピーダンス抵抗23に限定されない。ところで、RF回路インピーダンスは、電子キー2の接近距離に応じて値が変わる変化をとる。よって、図9に示すように、エリア設定回路24にインピーダンス検出部31を設け、インピーダンス検出部31にて検出するRF回路インピーダンスを基に接近距離rを算出してもよい。なお、この場合はインピーダンス検出部31が距離検出手段を構成する。
【0066】
・距離検出手段は、Hiインピーダンス抵抗23やインピーダンス検出部31に限定されない。ここで、リーダライタ制御ECU11からアンテナ14に供給される電流(消費電流Ib)は、電子キー2の接近距離rに応じて変化する。よって、図10に示すように、リーダライタ制御ECU11と通信回路12との間に電流検出部41を設け、電流検出部41にて検出される消費電流Ibから接近距離rを算出してもよい。なお、この場合は電流検出部41が距離検出手段を構成する。
【0067】
・図11に示すように、アンテナ14の共振回路と並列にHiインピーダンス抵抗23を接続し、このHiインピーダンス抵抗23の誘起電圧Vsによって、アンテナ電流Iaを検出してもよい。
【0068】
・図12に示すように、ダンプ抵抗16を固定値の抵抗とし、アンテナ電流Iaを調整可能なシャント抵抗51をアンテナ14の共振回路に並列接続し、シャント抵抗51の値を調整することで、アンテナ14の送信磁界強度を変更してもよい。
【0069】
・距離検出手段は、リーダライタ10に別途設けた近接センサでもよい。
・アンテナ電流Iaの検出は、ダンプ抵抗16の端子間電圧を見る方式に限定されない。例えば、共振回路に電流計を設け、電流計の値から直にアンテナ電流Iaを検出してもよい。
【0070】
・インピーダンス設定要素は、整合回路15のコンデンサC1,C2に限定されず、他の素子を採用してもよい。また、インピーダンス設定要素は、整合回路15以外の電子部品を使用してもよい。
【0071】
・通信モード時においてリーダライタ10の送信磁界強度を調整するとき、可変式ダンプ抵抗16及びコンデンサC1,C2の両方を調整することにより行うことに限定されない。例えば、これら2者のうちの一方のみを調整するものでもよい。
【0072】
・通信モード時、リーダライタ10の送信磁界強度は接近距離rに応じた可変であることに限定されず、固定としてもよい。
・省電力ポーリングモード時にリーダライタ10から送信される電波は、無変調搬送波の電力電波Scwに限定されず、電子キー2が受信できる電波であれば、どのようなものでもよい。
【0073】
・簡易形式とは、要は通常形式から所定動作を省略した形式であればよい。
・通常ポーリングモード時、駆動電波Svは1フレームで送信されることに限定されず、複数フレームで送信されるものでもよい。
【0074】
・省電力ポーリングモード時のポーリング間隔Taは、無使用期間に応じて可変としてもよい。例えば、リーダライタ10が長期間使用されないとき、ポーリング間隔Taを段階的に長くしていけば、リーダライタ10の省電力化に非常に効果が高いと言える。
【0075】
・電子キーシステム3は、ポーリング式及びトリガ式のどちらを採用してもよい。なお、ポーリング式とは、駆動電波Svを常時発信して電子キー2の有無を探査するものである。また、トリガ式とは、例えば車外ドアハンドルがタッチ操作されるなどの所定操作をトリガとして駆動電波Svの送信を開始するものである。
【0076】
・近距離無線通信は、NFCに限定されず、電波として磁界を用いるものであれば、どのような通信形式を採用してもよい。
・近距離無線通信の周波数は、HFに限らず、例えばLF(Low Frequency)やUHF(Ultra High Frequency)等の他の帯域を採用してもよい。
【0077】
・送信強度設定要素は、ダンプ抵抗16やシャント抵抗51に限らず、他の素子が使用可能である。
・通信エリアの変更とは、単に範囲の変更に限らず、アンテナ14の指向性としてもよい。
【0078】
・リーダライタ10の配置場所は、例えば車外ドアミラーとしてもよい。
・車両1には、NFCの電子キーシステム3の他に、キー操作フリーシステムやワイヤレスキーシステムが併設されていてもよい。なお、キー操作フリーシステムは、NFCよりも通信領域が広い、例えば周波数としてLFやUHFを使用したシステムである。また、ワイヤレスキーシステムは、電子キー2からの通信をトリガとして照合を行うシステムである。
【0079】
・電子キー2の接近を検知したときに、ポーリングの動作モードとリーダライタ10の通信エリアEとの両方が切り換わることに限定されず、例えば単にポーリングの動作モードが切り換わるだけでもよい。
【0080】
・通信エリア設定装置22は、車両1に使用されることに限らず、他の機器や装置に応用してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
【0081】
(イ)請求項1〜5のいずれかにおいて、前記第2モードは、電波を複数フレームで送信する動作をポーリング間隔で繰り返し実行するモードである。この構成によれば、例えばずっと通常モードの場合は、複数フレームの磁界が常時送信されることになり、無駄な電力消費が著しい。しかし、本構成は、第1モードを設けて電力の浪費を防ぐので、この通信を前提とする場合、より効果が高いと言える。
【0082】
(ロ)請求項5において、前記エリア設定手段は、前記通信マスタのアンテナの送信磁界強度を決める際の一要素となる可変式の送信強度設定要素を調整することにより、前記通信マスタの通信エリアを切り換える。
【符号の説明】
【0083】
2…通信端末としての電子キー、10…通信マスタとしてのリーダライタ、14…アンテナ、15…整合回路、23…距離算出手段を構成するHiインピーダンス抵抗、25…距離算出手段を構成する接近距離算出部、26…モード設定手段及び動作切換手段を構成するモード切換部、27…エリア設定手段としてのエリア設定部、r…接近距離、C1,C2…インピーダンス設定要素及び可変式静電容量成分を構成するコンデンサ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信マスタの動作モードを設定する通信モード設定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2者間の無線通信として、例えばNFC(Near Field Communication)が広く普及している(特許文献1等参照)。NFCには、例えばMifareやフェリカ(ともに登録商標)等がある。NFCでは、通信マスタにリーダライタが設置され、このリーダライタにタグがかざされると、双方向通信が開始される。詳しくは、リーダライタから送信された駆動電波によってタグが起動し、タグがデータをリーダライタに返信する。タグは、非常に小さなICチップからなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−266651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種のリーダライタは、所定のポーリング間隔で電波を断続的に送信して、電子キーと通信が成立するか否かを逐次確認している。このポーリング時にリーダライタから送信される電波は、タグの電源となるため、高出力又は長い時間長で送信されている。よって、一般的なリーダライタでは、ポーリングに要する消費電力が大きいという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、近距離無線通信においてポーリング時に必要な消費電力を低く抑えることができる通信モード設定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題点を解決するために、本発明では、通信マスタがポーリングにより通信端末に問い合せを送信し、当該ポーリングにて通信が確立すると、前記通信マスタと前記通信端末とが、磁界を電波とする近距離無線通信を介して通信する通信モード設定装置において、前記通信マスタへの前記通信端末の接近距離を検出する距離検出手段と、前記通信端末が前記通信マスタに接近していないとき、前記ポーリングを簡易形式の第1モードとし、前記通信端末が前記通信マスタに接近したとき、前記ポーリングを通常形式の第2モードに切り換えるモード設定手段を備えたことを要旨とする。
【0007】
この構成によれば、通信マスタが通信端末の接近を監視するときには、ポーリングを簡易形式の第1モードで実行する。よって、ポーリングに必要な電力が少なく抑えられるので、通信マスタにおいてポーリングに必要な電力を抑制することが可能となる。また、第1モードのポーリングにて通信端末の接近が検出されたときには、ポーリングが通常形式の第2モードに戻るので、通常の通信も問題なく実行することが可能となる。
【0008】
本発明では、前記第1モードは、前記通信端末に通信は成立しなくとも単なる受信行為が実行可能な磁界を送信するモードに設定されていることを要旨とする。
この構成によれば、第1モード時には、通信端末において通信の確立は課さず、単に通信端末に届けばよい電波を送信すればよい。よって、第1モード時の通信エリアを設定するとき、単に磁界が通信端末に届くか否かのみを考えれば済むので、通信シーケンスが非常に簡素なもので済む。また、通信マスタの省電力化にも一層寄与する。
【0009】
本発明では、前記通信マスタのアンテナ側のインピーダンスを決める際の一要素となる可変式のインピーダンス設定要素と、前記通信端末の接近を監視するとき、前記インピーダンスを低く設定することにより、前記通信マスタの動作モードを、通信は成立しないものの送信磁界強度は高い検知モードとし、前記第1モードで前記通信端末の接近を検出したとき、前記インピーダンスを高くすることにより、前記通信マスタの動作モードを、前記第1モードよりも送信磁界強度は低いが通信が実行できる通信モードに切り換える動作切換手段とを備え、前記第1モードは、前記検知モードに含まれるとともに、前記第2モードは、前記通信モードに含まれていることを要旨とする。
【0010】
この構成によれば、通信マスタが通信端末の接近を監視するとき、通信マスタのアンテナ側のインピーダンスを低くすることにより、通信マスタのアンテナのQ値(共振鋭さ)を高くする(検知モード)。これにより、実際の通信は成立しないが、通信マスタの送信磁界強度が強まるので、通信マスタの通信エリアを広くとることが可能となる。従って、通信マスタは、遠い位置から通信端末を捕獲することが可能となる。なお、このときは、電子キーの接近有無を検出できればよいので、実際の通信が確立しなくても何ら問題はない。
【0011】
そして、通信マスタが検知モードにて通信端末の接近を検出したときには、通信マスタのアンテナ側のインピーダンスを高くすることにより、通信マスタのQ値を低くする(通信モード)。よって、アンテナのQ値が低く抑えられれば実際の通信が可能となるので、通信マスタは接近した通信端末と問題なく通信を成立させることが可能となる。このため、通信端末の接近を広エリアにて監視可能で、かつ実際の通信も問題なく実行することが可能となる。
【0012】
本発明では、前記インピーダンス設定要素は、前記通信マスタの整合回路に設けられた可変式静電容量成分であり、前記動作切換手段は、前記可変式静電容量成分を調整することにより、前記通信マスタの動作モードを切り換えることを要旨とする。
この構成によれば、通信マスタに設けられた整合回路の静電容量成分を利用して、通信マスタのアンテナ側のインピーダンスを切り換えることが可能となる。
【0013】
本発明では、前記通信マスタが前記第2モードのとき、前記距離検出手段の検出値を基に、前記通信マスタの送信磁界強度を前記接近距離に応じた範囲に調整するエリア設定手段を備えたことを要旨とする。
【0014】
この構成によれば、通信マスタが第2モードになった後、通信端末が通信マスタに近づいた際、例えば接近距離が短くなると、通信マスタの送信磁界強度が低い値に切り換えられる。つまり、第2モード下で通信端末が通信マスタに急に近づくと、通信エリアが狭い範囲に切り換わる。このため、通信端末に過度の電圧が加わり難くなるので、通信端末の回路に破壊を生じ難くすることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、近距離無線通信においてポーリング時に必要な消費電力を低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一実施形態の通信エリア設定装置の構成図。
【図2】リーダライタの配置位置及び通信エリアの例を示す概念図。
【図3】(a),(b)はアンテナの変調波形とそのスペクトルとを示す説明図。
【図4】接近距離とアンテナ電流との相関関係を示すグラフ。
【図5】(a)〜(c)はリーダライタのエリア切り換わりの遷移を示す説明図。
【図6】各モードにおける接近距離とアンテナ電流との相関関係を示すグラフ。
【図7】各モードの通信シーケンスを示すタイムチャート。
【図8】ポーリング型のNFCの通信態様を示す説明図。
【図9】別例における通信エリア設定装置の構成図。
【図10】他の別例における通信エリア設定装置の構成図。
【図11】他の別例におけるリーダライタの回路図。
【図12】他の別例におけるリーダライタの回路図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した通信エリア設定装置の一実施形態を図1〜図8に従って説明する。
図1に示すように、車両1には、電子キー2との近距離無線通信によりID照合を実行する電子キーシステム3が設けられている。近距離無線通信は、いわゆるNFC(Near Field Communication)であって、例えばMifareやフェリカ(ともに登録商標)等が使用されている。この電子キーシステム3において、車外でID照合(車外照合)が成立すれば、ドアロック施解錠が許可又は実行され、車内でID照合(車内照合)が成立すれば、エンジン始動が許可される。なお、電子キー2が通信端末に相当する。
【0018】
この場合、車両1には、電子キー2のIDコードを照合するキー照合装置4と、車両ドアの施解錠動作を管理するドアロック装置5と、エンジンの動作を管理するエンジン始動装置6とが設けられ、これらが車内バス7を介して接続されている。このうち、キー照合装置4には、IDコードの照合動作を実行する照合ECU8が設けられている。エンジン始動装置6には、車両1の電源状態を切り換える際に操作するプッシュモーメンタリ式のエンジンスイッチ9が接続されている。
【0019】
照合ECU8には、電子キーシステム3の車両1側の通信装置としてリーダライタ10が接続されている。リーダライタ10は、通信相手である電子キー2への各種データの書き込み及び読み出しを行うものである。なお、リーダライタ10は、車外照合及び車内照合を行うために車外及び車内のそれぞれに設けられているが、本例の場合は便宜上、これらを1つのリーダライタ10として図示する。また、リーダライタ10が通信マスタに相当する。
【0020】
リーダライタ10には、電子キー2との近距離無線通信を管理するリーダライタ制御ECU11が設けられている。リーダライタ制御ECU11には、通信回路12及びフィルタ13を介して、近距離無線通信用のアンテナ14が接続されている。アンテナ14は、電波として磁界を送受信する磁界アンテナであって、例えばループアンテナが使用されている。また、アンテナ14は、例えばHF(High Frequency:13.56MHz)帯の電波を送受信する。
【0021】
アンテナ14には、複数の静電容量成分を持つ整合回路15と、信号波形のQ値(共振の鋭さ)を低く抑えるダンプ抵抗16と、インダクタンス成分を持つアンテナコイル17とが設けられている。アンテナ14は、アンテナコイル17のLと、整合回路15のCと、ダンプ抵抗16のRとの共振回路からなる。アンテナ14は、HF帯の磁界アンテナであるため、図2に示すように、平面視において略円形状の通信エリアEを形成する。
【0022】
Q値は、共振周波数をf、アンテナコイル17のインダクタンスをL、ダンプ抵抗16及びアンテナコイル17の銅損をRとすると、次式により算出される。
Q=(2πfL)/R
よって、ダンプ抵抗16の抵抗値を大きい値に設定すれば、Q値を低く抑えられることが分かる。ところで、図3(a)に示すように、Q値が高いと、送信電波の変調波形がなまって三角波のような波形をとり、電波のビットを正確に判断できない可能性に繋がる。しかし、図3(b)に示すように、Q値を低い値に抑えれば、送信帯域が広がり、結果、送信電波の変調波形が矩形波に近づくことになる。よって、正確なビット判定確保のために、アンテナ14にダンプ抵抗16を接続して、Q値を低くするようにしている。
【0023】
但し、ダンプ抵抗16の抵抗値は単純に大きくすればよいものではなく、抵抗値が必要以上に大きくなると、抵抗分でのロスが大きくなり、磁界強度が小さくなってしまう。さらに、通信回路12の出力インピーダンスとの整合条件との関係からも、好適な目標値がある。
【0024】
図1に示す通信回路12は、アンテナ14から送信する電波を変調したり、アンテナ14で受信した電波を復調したりする。
フィルタ13は、例えばバンドパスフィルタやローパスフィルタ等からなり、信号から正弦波以外の成分、つまり高調波成分をカットする。
【0025】
電子キー2は、リーダライタ10と近距離無線通信を行う、いわゆるICタグである。電子キー2は、見かけ上、キーと分かるものに限らず、例えば携帯電話やICカードも含む。電子キー2には、電子キー2の動作を管理する通信制御回路18が設けられている。通信制御回路18には、電子キー2のIDコードが登録されている。
【0026】
通信制御回路18には、近距離無線通信用のアンテナ19が接続されている。アンテナ19は、磁界アンテナの一種として例えばループアンテナが使用されている。アンテナ19は、アンテナコイル20と共振用のコンデンサ21との並列共振回路からなる。電子キー2は、電磁誘導で発生した電圧を最大化するよう動作するため、並列共振をとる。アンテナ19は、送受信アンテナであって、例えばHF帯の電波を送受信する。
【0027】
リーダライタ10は、例えば車両1が駐車状態にあるときや、ユーザが乗車したとき、アンテナ14から電子キー2の電源として駆動電波Svを断続的に送信する。電子キー2が駆動電波Svの通信エリアE内に進入して駆動電波Svを受信すると、駆動電波Svを電源として起動して、ID信号Sidをアンテナ19から送信する。ID信号Sidには、電子キー2のIDコードが含まれる。リーダライタ制御ECU11は、ID信号Sidをアンテナ14で受信すると、ID信号Sid内のIDコードを照合ECU8に転送する。照合ECU8は、リーダライタ制御ECU11からIDコードを入力すると、ID照合を行い、ID照合が成立すれば、ドアロック施解錠やエンジン始動を許可又は実行する。
【0028】
電子キーシステム3には、リーダライタ10(アンテナ14)の通信エリアEを電子キー2との距離(接近距離rと記す)に応じて設定する通信エリア設定装置22が設けられている。本例の通信エリア設定装置22は、接近距離rが小さくなると、リーダライタ10の送信磁界強度を低く設定して、リーダライタ10の通信エリアE(図2参照)を小さい範囲に切り換え、電子キー2に過度の電圧が誘起されないようにするためのものである。
【0029】
ダンプ抵抗16には、アンテナ電流Iaを検出するHiインピーダンス抵抗23が並列接続されている。ところで、図4に示すように、接近距離rとアンテナ電流Iaとの間には、接近距離rが短くなるに連れてアンテナ電流Iaが低下する相関関係がある。これは、アンテナ14の電力が電子キー2の接近によって電子キー2に伝送されるので、アンテナ14が有する磁界エネルギーの源であるアンテナ電流Iaは減少するためである。言い換えるならば、アンテナ14の磁界エネルギーが電子キー2に移動し、アンテナ14の共振回路に逆方向の誘起電流が流れるため、磁界を損失する方向にエネルギーが作用するからである。Hiインピーダンス抵抗23は、可変式ダンプ抵抗16の端子間における誘起電圧Vs(図1参照)を検出することによって、アンテナ電流Iaを検出する。なお、Hiインピーダンス抵抗23が距離算出手段を構成する。
【0030】
図1に示すように、車両1には、リーダライタ10の通信エリアEを設定するエリア設定回路24が設けられている。エリア設定回路24は、リーダライタ制御ECU11から独立した例えば1チップICからなる。また、エリア設定回路24はリーダライタ制御ECU11中に形成されてもよい。
【0031】
エリア設定回路24には、Hiインピーダンス抵抗23に流れるアンテナ電流Iaを基に、電子キー2との接近距離rを算出する接近距離算出部25が設けられている。接近距離算出部25は、Hiインピーダンス抵抗23により求まる誘起電圧Vsを基に、電子キー2との接近距離rを算出する。なお、接近距離算出部25が距離算出手段を構成する。
【0032】
エリア設定回路24には、接近距離算出部25が算出した接近距離をrを基に、リーダライタ10の動作モードを切り換えるモード切換部26が設けられている。本例のモード切換部26は、最初はリーダライタ10の動作モードを、通信はできないが電子キー2の接近は判定することができる広エリア(図5(a)に示すEa)のモード(検知モード)に設定して、電子キー2の接近有無を監視する。そして、検知モードで電子キー2の接近を検知すると、今度はリーダライタ10の動作モードを、通信が実行できる狭エリア(図5(b)に示すEb)のモード(通信モード)に設定して、実際の通信実行を試みる。なお、モード切換部26がモード設定手段及び動作切換手段を構成する。
【0033】
図1に示すように、整合回路15のコンデンサC1,C2は、T字接続されるとともに、容量値を切り換えることが可能な可変式が採用されている。これらコンデンサC1,C2には、例えばバリキャップダイオードやバラクタダイオード等の容量可変式ダイオードが使用されている。これらコンデンサC1,C2は、モード切換部26によって容量値が制御される。なお、コンデンサC1,C2がインピーダンス設定要素及び可変式静電容量成分を構成する。
【0034】
モード切換部26は、接近距離算出部25が算出した接近距離rを基に、これらコンデンサC1,C2を制御することにより、リーダライタ10の動作モードを検知モード及び通信モードのどちらかに設定する。換言すると、モード切換部26は、電子キー2の接近有無を監視するとき、コンデンサC1の値を低くし、コンデンサC2の値を高くすることにより、通信回路12から見たアンテナ側のインピーダンス(以降、RF回路インピーダンスと記す)を低くして、リーダライタ10の動作モードを検知モードにする。RF回路インピーダンスが低くなると、RF回路インピーダンスは、通信回路12の出力インピーダンス(以降、IC回路インピーダンスと記す)に近づき、アンテナ電流Iaが流れ易くなる。このため、アンテナ14の送信磁界強度が高くなり、結果、リーダライタ10の通信エリアEが広くなる。
【0035】
なお、検知モードのときは、アンテナ14のQ値が高くなるため、変調波形が三角波状になまり、実際の通信は実行できない状態になる。但し、これとは逆に、図6に示すように、電子キー2の接近による電気的特性、つまりアンテナ電流Iaの変化が大きくなるため、より敏感に電子キー2の接近有無が検知可能である。
【0036】
モード切換部26は、検知モードにて電子キー2の接近を検知すると、コンデンサC1の値を高くし、コンデンサC2の値を低くすることにより、RF回路インピーダンスを高くして、リーダライタ10の動作モードを通信モードにする。リーダライタ10が通信モードのときは、IC回路インピーダンスに比べてRF回路インピーダンスが大きくなるため、アンテナ14のQ値が低くなる。よって、信号波形が矩形波をとり、実際の信号解読が可能である。
【0037】
図7に示すように、検知モード及び通信モードには、それぞれ異なるポーリングモードが設定されている。検知モード時のポーリングモードは、短い時間長の電力電波相当のみを繰り返し送信するモード(省電力ポーリングモード)となっている。ところで、検知モードでは、電子キー2が接近したかどうかだけを確認できればよい。よって、省電力ポーリングモードでは、電子キー2に単に電波を受け取らせればよいので、非常に短い時間長の電力電波Scwのみを、ポーリング間隔Taにて繰り返し送信するように設定されている。電力電波Scwは、無変調搬送波である。
【0038】
一方、通信モード時のポーリングモードは、電力電波Vpw及びリクエスト信号Srqを含む駆動電波Svを、ポーリング間隔Tbにて繰り返し送信するモード(通常ポーリングモード)となっている。電力電波Vpwは、電子キー2の電源となる無変調搬送波である。また、リクエスト信号Srqは、電子キー2へのIDコード返信要求であり、IDコードというデータが乗っているため変調波である。なお、通常ポーリングモードが第2モードに相当する。
【0039】
本例の駆動電波Svは、Vpw+Srq+Vpwで1フレームが構成され、このフレームが間欠的に送信される。リーダライタ10の通信では、最初の電力電波Vpwで電子キー2を起動させ、続くリクエスト信号SrqでID返信を要求し、最後の電力電波Vpwにて電子キー2にIDコードを返信させている。
【0040】
リーダライタ10は、まずは最初、アンテナ14を送信アンテナとして送信動作に入り、省電力ポーリングモード時には電力電波Scwを、通常ポーリングモード時には駆動電波Svを各々送信する。リーダライタ制御ECU11は、この送信動作とともに受信回路も動作させ、電子キー2からの応答を待つ。そして、リーダライタ制御ECU11は、この送信及び受信の動作をポーリング間隔にて繰り返し実行する。リーダライタ10は、磁界結合方式により電子キー2と通信するため、送信波形の変化で以て電子キー2からの電波を受信する。
【0041】
図1に示すように、ダンプ抵抗16は、抵抗値を切り換えることが可能な可変式が使用されている。可変式ダンプ抵抗16は、共振回路の一要素になっているため、アンテナ14の送信磁界強度、つまりリーダライタ10の通信エリアEにも関係する要素となっている。よって、可変式ダンプ抵抗16の抵抗値を切り換えると、アンテナ14に流れる電流(以降、アンテナ電流Iaと記す)が変化するため、リーダライタ10の送信磁界も変化する。可変式ダンプ抵抗16が低く設定されると、通信エリアEが広くなり、可変式ダンプ抵抗16が高く設定されると、通信エリアEが狭くなる。
【0042】
エリア設定回路24には、リーダライタ10が通信モードのとき、接近距離算出部25が算出した接近距離rを基に、リーダライタ10の通信エリアEを設定するエリア設定部27が設けられている。エリア設定部27は、リーダライタ10が通信モードのとき、接近距離rを基に可変式ダンプ抵抗16及びコンデンサC1,C2の値を調整することにより、アンテナ電流Iaの値を切り換えて、リーダライタ10の送信磁界強度、つまりリーダライタ10の通信エリアEを設定する。なお、エリア設定部27がエリア設定手段に相当する。
【0043】
さて、リーダライタ10が電子キー2の接近有無を監視するとき、モード切換部26は、可変式ダンプ抵抗16を最小値としつつ、整合回路15のコンデンサC1を低くするとともに、コンデンサC2を高くすることにより、リーダライタ10の動作モードを検知モードに設定しておく。このときは、通信回路12の出力インピーダンス(IC回路インピーダンス)を低く設定していることになる。よって、RF回路インピーダンスを低くすると、インピーダンスがマッチングして電流が流れてしまうようになる。このため、RF回路インピーダンスが低くなるので、アンテナ電流Iaが回路に流れ易くなる。従って、リーダライタ10の通信エリアEは、図5(a)に示す広範囲のEaとなり、広範囲で電子キー2の接近を監視可能となる。
【0044】
また、検知モード時のポーリングは、図7に示す省電力ポーリングモードに設定されている。よって、このときは時間長の短い駆動電波相当の電力電波Scwが繰り返し送信されるのみである。従って、ポーリング動作にかかる電力が少なく済むので、リーダライタ10の省エネルギー化に効果が高くなる。また、リーダライタ10は電子キー2の接近を待つ時間の方が圧倒的に長いので、この時間帯にて電力削減できることは、省電力化に非常に効果が高いと言える。
【0045】
このとき、接近距離算出部25は、Hiインピーダンス抵抗23の誘起電圧Vsを基に、電子キー2の接近有無を監視する。リーダライタ10が検知モードのとき、電子キー2が通信エリアEaに進入すると、アンテナ電流Iaが低下して、接近距離算出部25が電子キー2の接近を認識する。接近距離算出部25は、検知モードのときに電子キー2の接近を検知すると、キー接近通知をモード切換部26に出力する。なお、図5では、通信エリアEaに電子キー2が横から進入する場合と、真向かいから進入する場合との2例を図示している。
【0046】
モード切換部26は、検知モードのときにキー接近通知を入力すると、リーダライタ10の動作モードを、検知モードから通信モードに切り換える。つまり、モード切換部26は、可変式ダンプ抵抗16を最小値のままとして、整合回路15のコンデンサC1を高くするとともに、コンデンサC2を低くすることにより、リーダライタ10の動作モードを通信モードに切り換える。このとき、RF回路インピーダンスが高くなるので、アンテナ電流Iaが回路に流れ難くなる。つまり、RF回路インピーダンスが高いと、回路内にミスマッチが生じ、電流が流れ難くなる。よって、リーダライタ10の通信エリアEは、図5(b)に示す狭範囲のEbに縮小される。
【0047】
通信モードのときは、RF回路インピーダンスが高く設定されるので、アンテナ14のQ値が低い値をとる。よって、アンテナ14の通信帯域が確保されるので、実際の通信が実行可能となる。このため、電子キー2が通信エリアEbに進入したときには、通信が成立する。なお、通信モードに切り換えられた直後は、ポーリング間隔を短くするか、多数フレームを送信するのがよい。これは、電子キー2が車両1に接近しており、通信距離を決める瞬間だからである。
【0048】
また、通信モード時のポーリングは、図7に示す通常ポーリングモードに設定されている。よって、このときは、駆動電波Svがポーリング間隔Tb(>Ta)にて繰り返し送信される。つまり、リーダライタ10は、いずれかのフレームの先頭を電子キー2に受け取らせて、電子キー2との間で通信を確立させるための動作をとる。
【0049】
リーダライタ10が通信モードのとき、エリア設定部27は、接近距離rに応じた範囲に通信エリアEを設定する。つまり、図5(c)に示すように、エリア設定部27は、接近距離rに応じた値に、可変式ダンプ抵抗16及びコンデンサC1,C2を調整することにより、アンテナ電流Iaを低く抑えて、アンテナ14の送信磁界強度(通信エリアE)を小さくする。このときは、可変式ダンプ抵抗16を高くし、コンデンサC1を更に高くし、コンデンサC2を更に低くすることにより、通信エリアEを狭くする。
【0050】
ところで、図5(c)に示すように、電子キー2が横からリーダライタ10に急に近づくと、電子キー2に対し、いきなり過大な電圧が加わることになり、これが電子キー2の回路破壊に繋がる。しかし、本例の場合は、電子キー2の接近距離rに応じてリーダライタ10の送信磁界強度が低く抑えられるので、電子キー2に過度の電圧が誘起されない。よって、電子キー2に回路破壊が生じ難くなる。
【0051】
ここで、近距離無線通信の規格には、通信において電子キー2にかかる磁界強度を一定値に抑えなければならないISO規格がある。これはつまり、誘起電圧を一定値以下に抑えることになる。本例の場合、電子キー2の接近検知においてアンテナ14から駆動電波Svを強い送信磁界強度で送信しているが、この状況下で電子キー2が駆動電波Svを受信しても、通信開始初期時はアンテナ14から電子キー2までの距離が長いので、実際に電子キー2にかかる電圧は低い値に収まる。よって、電子キー2の接近検知のために駆動電波Svを強い磁界強度で送信しても、規格に抵触することはない。
【0052】
なお、電波法で満たさなければならないリーダライタ10の送信磁界強度は非常に高い値であるので、本例において通信距離を延ばすべくリーダライタ10の送信磁界強度を高くするといっても、この電波法の範囲内に収まる値をとる。よって、本例の場合、電波法は問題なく準拠する。
【0053】
以上により、本例の場合、検知モード時のポーリングを省電力ポーリングモードで実行し、リーダライタ10が通信モードに切り換わると、ポーリングを通常ポーリングモードに切り換える。よって、検知モードのときには、ポーリングとして短い時間長の無変調搬送波のみを送信すればよいので、検知モードのポーリングの際に必要な電力を少なく抑えることが可能となる。また、リーダライタ10が電子キー2の接近を検知したときには、リーダライタ10が通信モードに切り換わって通常のポーリング動作に戻るので、通常の通信も問題なく実行することが可能となる。
【0054】
また、検知モード時には、RF回路インピーダンスを低くすることにより、アンテナ14のQ値を高くして感度を上げ、通信モード時には、RF回路インピーダンスを高くすることにより、アンテナ14のQ値を下げて通信帯域を確保している。よって、検知モードのときには、遠方から電子キー2を捕獲することが可能となる。また、このようにアンテナ14のQ値を高くすることでリーダライタ10の通信エリアEを広くとっても、通信モード時にはQ値を低い値に戻すので、実際の通信も問題なく実行することが可能である。
【0055】
本例の場合、電子キー2の接近が検知されると、直ぐに通信モードに入って電子キー2との通信成立を試みている。よって、図8に示すように、今まではポーリング間隔でしか通信が成立しなかったものが、本例の場合は電子キー2が通信エリアEbに進入した時点で通信が成立するようになる。従って、リーダライタ10の通信エリアEを見かけ上、延伸することが可能となる。
【0056】
また、リーダライタ10が通信モードのとき、アンテナ14の送信磁界強度が接近距離rに応じて低く抑えられる。よって、図5(c)に示すように、電子キー2が横から急にリーダライタ10の通信エリアEbに進入する動きをとった場合でも、アンテナ14の送信磁界強度は接近距離rに応じた値に低くなるので、電子キー2の回路に過度な電圧がかからず、電子キー2の回路に破壊を生じ難くすることが可能となる。
【0057】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)リーダライタ10が検知モードをとるとき、ポーリングを省電力ポーリングモードとし、リーダライタ10が通信モードとなったとき、ポーリングを通常ポーリングモードに戻すようにする。このため、検知モード時は少ない電力でポーリングが可能となるので、リーダライタ10においてポーリングにかかる電力を削減することができる。また、リーダライタ10は検知モードをとる時間が圧倒的に長いので、この時間帯で消費電力を少なく抑えられれば、リーダライタ10の省電力化に非常に効果が高いと言える。
【0058】
(2)検知モードのときのポーリングを省電力ポーリングモードとして省電力化が可能となれば、検知モードにおけるポーリング間隔Taを短くして、単位時間当たりの電力電波Scwの送信回数を多くすることは何ら問題ない。よって、この場合は、リーダライタ10が電子キー2を即時に検知することが可能となるので、リーダライタ10を検知モードから通信モードへ早期に切り換えることができる。また、リーダライタ10は電子キー2を遠方で捕獲可能となるので、リーダライタ10の通信距離を延伸することもできる。さらに、通信距離を延ばすことが可能となれば、電子キー2の誘起電圧も低く抑えることが可能となるので、電子キー2の回路破壊防止にも効果が高い。
【0059】
(3)省電力ポーリングモード時(即ち、検知モード時)には、NFCの通信成立は課さず、単に電子キー2に届けばよい電波を送信すればよい。よって、省電力ポーリングモード時の通信エリアを設定するとき、単に磁界が電子キー2に届くか否かのみを考えれば済むので、通信シーケンスが非常に簡素なもので済む。また、リーダライタ10の省電力化にも寄与する。
【0060】
(4)電子キー2がリーダライタ10に接近しているか否かを確認するとき、RF回路インピーダンスを低く設定する(アンテナ14のQ値を高くする)ことにより、リーダライタ10の動作モードを検知モードに設定する。このため、アンテナ14の送信磁界強度が強くなるので、電子キー2の接近を遠くから検知することができる。また、検知モードにて電子キー2の接近を検知したときには、RF回路インピーダンスを高く設定する(アンテナ14のQ値を低くする)ことにより、リーダライタ10の動作モードを通信モードに設定する。よって、最初は電子キー2を遠くから検知できるように、リーダライタ10を通信はできないが電子キー2の接近は検知できる検知モードに設定しておいても、電子キー2が接近した後は電子キー2との通信を問題なく成立させることができる。
【0061】
(5)リーダライタ10が検知モードのときには、アンテナ14のQ値が高いので、電子キー2の接近による電気的特性の変化、つまりアンテナ電流Iaの変化が大きくなる。よって、リーダライタ10は検知モードのとき感度が高いと言えるので、電子キー2を高感度にて検知することができる。
【0062】
(6)リーダライタ10が通信モードのときにも、リーダライタ10の送信磁界強度(通信エリアE)が電子キー2とリーダライタ10との接近距離rに応じた値に調整される。つまり、リーダライタ10が通信モードのとき、電子キー2がリーダライタ10に接近すると、それに応じてリーダライタ10の送信磁界強度が低い値に切り換えられる。このため、電子キー2に過度の電圧が一層加わり難くなるので、電子キー2の回路に破壊を一層生じ難くすることができる。
【0063】
(7)ダンプ抵抗16及びコンデンサC1,C2をともに可変式とし、可変式ダンプ抵抗16及びコンデンサC1,C2の両方を調整することで、リーダライタ10の送信磁界強度を切り換える。よって、より広い範囲に亘り、かつ効率よくリーダライタ10の送信磁界強度を切り換えることができる。
【0064】
(8)例えば、可変式ダンプ抵抗16のみでリーダライタ10の送信磁界強度を低くする場合、可変式ダンプ抵抗16の抵抗値を高くしたときには、RF回路インピーダンスがIC回路インピーダンスに近づくように低下するため、結果、インピーダンスがマッチングし、アンテナ14に流れる消費電流が増加する問題に繋がる。しかし、本例の場合は、リーダライタ10の送信磁界強度を低くする際、整合回路15のコンデンサC1,C2によりインピーダンスを高くしていくので、可変式ダンプ抵抗16にて低下したインピーダンスの変化分が、コンデンサC1,C2にて補填される。よって、可変式ダンプ抵抗16を高くしてリーダライタ10の送信磁界強度を低下させても、消費電流も低く抑えることができる。
【0065】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・距離検出手段は、Hiインピーダンス抵抗23に限定されない。ところで、RF回路インピーダンスは、電子キー2の接近距離に応じて値が変わる変化をとる。よって、図9に示すように、エリア設定回路24にインピーダンス検出部31を設け、インピーダンス検出部31にて検出するRF回路インピーダンスを基に接近距離rを算出してもよい。なお、この場合はインピーダンス検出部31が距離検出手段を構成する。
【0066】
・距離検出手段は、Hiインピーダンス抵抗23やインピーダンス検出部31に限定されない。ここで、リーダライタ制御ECU11からアンテナ14に供給される電流(消費電流Ib)は、電子キー2の接近距離rに応じて変化する。よって、図10に示すように、リーダライタ制御ECU11と通信回路12との間に電流検出部41を設け、電流検出部41にて検出される消費電流Ibから接近距離rを算出してもよい。なお、この場合は電流検出部41が距離検出手段を構成する。
【0067】
・図11に示すように、アンテナ14の共振回路と並列にHiインピーダンス抵抗23を接続し、このHiインピーダンス抵抗23の誘起電圧Vsによって、アンテナ電流Iaを検出してもよい。
【0068】
・図12に示すように、ダンプ抵抗16を固定値の抵抗とし、アンテナ電流Iaを調整可能なシャント抵抗51をアンテナ14の共振回路に並列接続し、シャント抵抗51の値を調整することで、アンテナ14の送信磁界強度を変更してもよい。
【0069】
・距離検出手段は、リーダライタ10に別途設けた近接センサでもよい。
・アンテナ電流Iaの検出は、ダンプ抵抗16の端子間電圧を見る方式に限定されない。例えば、共振回路に電流計を設け、電流計の値から直にアンテナ電流Iaを検出してもよい。
【0070】
・インピーダンス設定要素は、整合回路15のコンデンサC1,C2に限定されず、他の素子を採用してもよい。また、インピーダンス設定要素は、整合回路15以外の電子部品を使用してもよい。
【0071】
・通信モード時においてリーダライタ10の送信磁界強度を調整するとき、可変式ダンプ抵抗16及びコンデンサC1,C2の両方を調整することにより行うことに限定されない。例えば、これら2者のうちの一方のみを調整するものでもよい。
【0072】
・通信モード時、リーダライタ10の送信磁界強度は接近距離rに応じた可変であることに限定されず、固定としてもよい。
・省電力ポーリングモード時にリーダライタ10から送信される電波は、無変調搬送波の電力電波Scwに限定されず、電子キー2が受信できる電波であれば、どのようなものでもよい。
【0073】
・簡易形式とは、要は通常形式から所定動作を省略した形式であればよい。
・通常ポーリングモード時、駆動電波Svは1フレームで送信されることに限定されず、複数フレームで送信されるものでもよい。
【0074】
・省電力ポーリングモード時のポーリング間隔Taは、無使用期間に応じて可変としてもよい。例えば、リーダライタ10が長期間使用されないとき、ポーリング間隔Taを段階的に長くしていけば、リーダライタ10の省電力化に非常に効果が高いと言える。
【0075】
・電子キーシステム3は、ポーリング式及びトリガ式のどちらを採用してもよい。なお、ポーリング式とは、駆動電波Svを常時発信して電子キー2の有無を探査するものである。また、トリガ式とは、例えば車外ドアハンドルがタッチ操作されるなどの所定操作をトリガとして駆動電波Svの送信を開始するものである。
【0076】
・近距離無線通信は、NFCに限定されず、電波として磁界を用いるものであれば、どのような通信形式を採用してもよい。
・近距離無線通信の周波数は、HFに限らず、例えばLF(Low Frequency)やUHF(Ultra High Frequency)等の他の帯域を採用してもよい。
【0077】
・送信強度設定要素は、ダンプ抵抗16やシャント抵抗51に限らず、他の素子が使用可能である。
・通信エリアの変更とは、単に範囲の変更に限らず、アンテナ14の指向性としてもよい。
【0078】
・リーダライタ10の配置場所は、例えば車外ドアミラーとしてもよい。
・車両1には、NFCの電子キーシステム3の他に、キー操作フリーシステムやワイヤレスキーシステムが併設されていてもよい。なお、キー操作フリーシステムは、NFCよりも通信領域が広い、例えば周波数としてLFやUHFを使用したシステムである。また、ワイヤレスキーシステムは、電子キー2からの通信をトリガとして照合を行うシステムである。
【0079】
・電子キー2の接近を検知したときに、ポーリングの動作モードとリーダライタ10の通信エリアEとの両方が切り換わることに限定されず、例えば単にポーリングの動作モードが切り換わるだけでもよい。
【0080】
・通信エリア設定装置22は、車両1に使用されることに限らず、他の機器や装置に応用してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
【0081】
(イ)請求項1〜5のいずれかにおいて、前記第2モードは、電波を複数フレームで送信する動作をポーリング間隔で繰り返し実行するモードである。この構成によれば、例えばずっと通常モードの場合は、複数フレームの磁界が常時送信されることになり、無駄な電力消費が著しい。しかし、本構成は、第1モードを設けて電力の浪費を防ぐので、この通信を前提とする場合、より効果が高いと言える。
【0082】
(ロ)請求項5において、前記エリア設定手段は、前記通信マスタのアンテナの送信磁界強度を決める際の一要素となる可変式の送信強度設定要素を調整することにより、前記通信マスタの通信エリアを切り換える。
【符号の説明】
【0083】
2…通信端末としての電子キー、10…通信マスタとしてのリーダライタ、14…アンテナ、15…整合回路、23…距離算出手段を構成するHiインピーダンス抵抗、25…距離算出手段を構成する接近距離算出部、26…モード設定手段及び動作切換手段を構成するモード切換部、27…エリア設定手段としてのエリア設定部、r…接近距離、C1,C2…インピーダンス設定要素及び可変式静電容量成分を構成するコンデンサ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信マスタがポーリングにより通信端末に問い合せを断続的に送信し、当該ポーリングにて通信が確立すると、前記通信マスタと前記通信端末とが、磁界を電波とする近距離無線通信を介して通信する通信モード設定装置において、
前記通信マスタへの前記通信端末の接近距離を検出する距離検出手段と、
前記通信端末が前記通信マスタに接近していないとき、前記ポーリングを簡易形式の第1モードとし、前記通信端末が前記通信マスタに接近したとき、前記ポーリングを通常形式の第2モードに切り換えるモード設定手段を備えた
ことを特徴とする通信モード設定装置。
【請求項2】
前記第1モードは、前記通信端末に通信は成立しなくとも単なる受信行為が実行可能な磁界を送信するモードに設定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の通信モード設定装置。
【請求項3】
前記通信マスタのアンテナ側のインピーダンスを決める際の一要素となる可変式のインピーダンス設定要素と、
前記通信端末の接近を監視するとき、前記インピーダンスを低く設定することにより、前記通信マスタの動作モードを、通信は成立しないものの送信磁界強度は高い検知モードとし、前記第1モードで前記通信端末の接近を検出したとき、前記インピーダンスを高くすることにより、前記通信マスタの動作モードを、前記第1モードよりも送信磁界強度は低いが通信が実行できる通信モードに切り換える動作切換手段とを備え、
前記第1モードは、前記検知モードに含まれるとともに、前記第2モードは、前記通信モードに含まれている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の通信モード設定装置。
【請求項4】
前記インピーダンス設定要素は、前記通信マスタの整合回路に設けられた可変式静電容量成分であり、
前記動作切換手段は、前記可変式静電容量成分を調整することにより、前記通信マスタの動作モードを切り換える
ことを特徴とする請求項3に記載の通信モード設定装置。
【請求項5】
前記通信マスタが前記第2モードのとき、前記距離検出手段の検出値を基に、前記通信マスタの送信磁界強度を前記接近距離に応じた範囲に調整するエリア設定手段を備えた
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の通信モード設定装置。
【請求項1】
通信マスタがポーリングにより通信端末に問い合せを断続的に送信し、当該ポーリングにて通信が確立すると、前記通信マスタと前記通信端末とが、磁界を電波とする近距離無線通信を介して通信する通信モード設定装置において、
前記通信マスタへの前記通信端末の接近距離を検出する距離検出手段と、
前記通信端末が前記通信マスタに接近していないとき、前記ポーリングを簡易形式の第1モードとし、前記通信端末が前記通信マスタに接近したとき、前記ポーリングを通常形式の第2モードに切り換えるモード設定手段を備えた
ことを特徴とする通信モード設定装置。
【請求項2】
前記第1モードは、前記通信端末に通信は成立しなくとも単なる受信行為が実行可能な磁界を送信するモードに設定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の通信モード設定装置。
【請求項3】
前記通信マスタのアンテナ側のインピーダンスを決める際の一要素となる可変式のインピーダンス設定要素と、
前記通信端末の接近を監視するとき、前記インピーダンスを低く設定することにより、前記通信マスタの動作モードを、通信は成立しないものの送信磁界強度は高い検知モードとし、前記第1モードで前記通信端末の接近を検出したとき、前記インピーダンスを高くすることにより、前記通信マスタの動作モードを、前記第1モードよりも送信磁界強度は低いが通信が実行できる通信モードに切り換える動作切換手段とを備え、
前記第1モードは、前記検知モードに含まれるとともに、前記第2モードは、前記通信モードに含まれている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の通信モード設定装置。
【請求項4】
前記インピーダンス設定要素は、前記通信マスタの整合回路に設けられた可変式静電容量成分であり、
前記動作切換手段は、前記可変式静電容量成分を調整することにより、前記通信マスタの動作モードを切り換える
ことを特徴とする請求項3に記載の通信モード設定装置。
【請求項5】
前記通信マスタが前記第2モードのとき、前記距離検出手段の検出値を基に、前記通信マスタの送信磁界強度を前記接近距離に応じた範囲に調整するエリア設定手段を備えた
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の通信モード設定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−60609(P2012−60609A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204793(P2010−204793)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】
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