説明

通信中継装置

【課題】 2.4GHz帯や5GHz帯等の既存の普及型TDDモデムをそのまま有効活用して,有線又は無線による長距離の或いは通信障害物が存在する場合の双方向通信を安定した通信品質で行うことができること。
【解決手段】 2つのサーキュレータ11,12によって,一方のTDDモデム1から他方のTDDモデム2へ向かう通信信号を第1の信号経路R1により伝送するとともに,他方のTDDモデム2から一方のTDDモデム1へ向かう通信信号を前記第2の信号経路R2により伝送する。また,第1の信号経路R1でバースト信号の有無をバースト信号検出器65により検出し,その検出結果に基づいて,信号強度調節回路67,68により,信号伝送中でない経路の信号を減衰させるとともに信号伝送中の経路の信号を増幅させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,時分割多重復信方式の2つのモデム相互間で有線若しくは無線により送受信される通信信号を中継伝送する通信中継装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年,個人向けに無線LANシステムが普及し,これに用いられる通信機器が汎用品として大幅に低コスト化されている。
現在普及している無線LANシステムに用いられる汎用化された通信機器(普及品)の代表的なものとして,パーソナルコンピュータ等の通信主体に接続され,時分割多重復信(TDD)方式の通信を行うモデム(以下,TDDモデムという)や,有線による通信信号と2.4GHz帯や5GHz帯の無線信号との間で相互に周波数変換する周波数コンバータ等がある。このような既に普及している通信機器を用いて通信システムを構成すれば,省資源化や低コスト化が図れるので好適である。
【0003】
ところで,無線通信に利用できる電波の周波数(無線周波数)は電波法の規定に基づき割り当てられているが,現在,おおよそ10GHz以下の周波数での周波数帯域の不足が顕在化している。
例えば,2.4GHz帯無線LANシステムは,ISM(Industrial,Science,and Medical)バンドの2.4〜2.5GHz(100MHz帯域)を利用する。この場合,例えば,最大54Mbpsの通信速度を有するIEEE802.11g準拠の無線LANシステムでは,電波干渉なく独立に利用できる無線チャンネルは4チャンネルに限られる。また,5GHz帯無線LANでも状況に大差はなく,電波干渉なく独立して利用できる無線チャンネルは数チャンネルに限られる。近い将来,利用者数が大幅に増加した場合,無線チャンネル数の制限から各端末で十分な通信速度が得られなくなることが懸念される。
また,通信速度の高速化のため,複数モデムを並列させて無線チャンネルを複数チャンネルに多重化することが原理上は可能である。例えば,上記IEEE802.11g準拠の無線チャンネルを2チャンネル多重化することにより,最大108Mbpsの通信速度が得られることになる。しかしこの場合,限られた無線チャンネルの周波数帯域をより多チャンネルで占有することになることから,実用的には問題が多いと考えられる。
【0004】
一方,10GHzを超える準ミリ波〜ミリ波帯には広大な周波数帯域が残されている。この準ミリ波〜ミリ波帯の無線通信周波数としては,電気通信業務向けの加入者無線アクセス(Fixed Wireless Access,FWA)として,22GHz帯,26GHz帯,38GHz帯の周波数が既に割り当てられ,また,公共業務向けに18GHz帯の割り当てが準備されており,これらを合わせると4GHz近い広帯域を利用することが可能となる。
また,準ミリ波〜ミリ波帯の無線通信では,システム構成にもよるが,その通信速度は,通常,数十〜100Mbps以上を実現可能であり,光ファイバーを用いた通信に匹敵する高速通信を無線で実現することが可能である。
従って,この準ミリ波〜ミリ波帯を無線データ通信に活用したブロードバンド無線通信システムの普及により,周波数帯域の不足の問題を解消し得る。
そこで,既に普及している無線LANシステムのモデムを有効活用し,その通信信号を準ミリ波〜ミリ波に周波数変換して無線通信を行えば,省資源化や低コスト化につながり,準ミリ波〜ミリ波帯FWAシステムの普及を促進できると考えられる。
【0005】
従来,既存の無線LANで用いられているTDDモデムを有効活用するものとして,特許文献1には,TDD方式の親局側のモデム(TDDモデム)から子局側のモデム(TDDモデム)への送信信号(2.4GHz帯,5GHz帯)を60GHz帯に周波数変換して無線伝送するミリ波帯無線通信システム(従来例1)が示されている。
図5は,特許文献1に示される従来例1に係る無線通信システムAの基本構成を模式的に表わしたものである。
図5に示すように,従来例1の無線通信システムAは,親局モデム1(TDDモデム)には,その送信信号の周波数をモデムの周波数f0(2.4GHz帯又は5GHz帯)からミリ波帯の周波数f1へ変換する周波数アップコンバータ装置81が接続され,子局モデム2(TDD方式のモデム)には,アンテナによる受信信号の周波数をミリ波帯の周波数f1からモデムの周波数f0に変換する周波数ダウンコンバータ装置82が接続されている。これにより,無線LAN用のTDDモデムを有効活用し,親局→子局の単一方向のミリ波帯での無線伝送が可能となる。
また,他の従来例として,非特許文献1には,5GHz帯無線LANの通信信号を25GHz帯に周波数変換するデュアルバンド無線LANシステムが示されている(従来例2)。
図6は,非特許文献1に示される従来例2に係る無線通信システムBの基本構成を模式的に表わしたものである。
図6に示すように,従来例2の無線通信システムBは,親局側及び子局側の各TDDモデム1,2に,その通信信号(ベースバンド信号)を,送受信の各方向についてベースバンド信号周波数f0(5GHz帯)と準ミリ波帯の周波数f1(25GHz帯)との間で双方向に変換する周波数コンバータ装置91,92が接続されている。さらに,モデム1,2と周波数コンバータ装置91,92の間に,スイッチ93,94を備え,これがTDD通信の送受信タイミングに同期して送信側と受信側の信号経路を切り替える。これにより,無線LAN用のTDDモデムの基本機能を活用し,準ミリ波帯での無線通信が可能となる。
【特許文献1】特開2003−168986号公報
【非特許文献1】2003年,電子情報通信学会「通信ソサイエティ大会予稿」,B−5−173
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,前記従来例1や前記従来例2の構成では,以下に示すように,既存のTDDモデムを有効活用して双方向の長距離通信や通信経路中に障害物が存在する等により信号減衰が大きい場合の通信を安定した通信品質を確保しつつ行うことができないという問題点があった。
例えば,前記従来例1の構成では,下り方向(親局→子局)の無線伝送しかできないという問題点があった。また,単に,TDDモデム1,2の通信信号を分岐して,上り側(子局→親局)について子局側に周波数アップコンバータ装置,親局側にダウンコンバータ装置を設けたとしても,自局の送信信号が受信側に回り込んでノイズとして干渉する問題が生じ,安定した通信品質が得られないという問題点があった。特に,通信距離が長くなるほど,或いは通信経路中の障害物等による信号減衰が大きいほど送信波(無線信号)をより増幅しなければならないが,送信波の電力レベルを増幅するほど,自局の送信信号の回り込みによるノイズが顕著になるという問題点があった。
また,前記従来例2の構成では,TDD通信の送受信タイミングの切り替え信号が必要となるが,通常の無線LAN用のTDDモデムはそのような切り替え信号を外部出力する機能を備えていないため,既存のTDDモデムをそのまま有効活用できないという問題点があった。さらに,送信波の電力レベルが大きい場合(即ち,通信距離が長い或いは障害物等による信号減衰が大きい場合),スイッチ93,94による信号切り替えの分離度が不十分であると,自局の送信信号が受信側に回り込んで周波数コンバータ装置91,92の受信側経路のアンプが飽和する,或いはスイッチ93,94を逆流してベースバンド信号のSN比を劣化させる等により,安定した通信品質が得られないという問題点があった。
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,2.4GHz帯や5GHz帯等の既存の普及型TDDモデムをそのまま有効活用して,有線又は無線による長距離の或いは通信障害物が存在する場合の双方向通信を安定した通信品質で行うことができる通信システムを構築するための通信中継装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は,時分割多重復信方式(TDD方式)の2つのモデム相互間で有線若しくは無線により送受信される通信信号を中継伝送するものであり,各々異なる2つの信号経路(以下,第1の信号経路及び第2の信号経路という)が設けられ,有線により若しくは無線アンテナを介して一方のモデムに通じる第1の接続端から入力される信号を前記第1の信号経路へ出力するとともに,前記第2の信号経路から入力される信号を前記第1の接続端へ出力するサーキュレータ(以下,第1のサーキュレータという)と,同様に他方のモデムに通じる第2の接続端から入力される信号を前記第2の信号経路へ出力するとともに,前記第1の信号経路から入力される信号を前記第2の接続端へ出力するサーキュレータ(以下,第2のサーキュレータという)と,前記第1の信号経路においてバースト信号(即ち,両モデム相互間で送受信される通信信号)の有無を検出するバースト信号検出手段と,前記第1の信号経路における前記バースト信号検出手段による信号検出位置よりも信号流れ方向下流側の所定位置及び前記第2の信号経路における所定位置の各々において流れる信号の強度の増幅及び減衰を前記バースト信号検出手段の検出結果に基づいて調節する信号強度調節手段と,を具備する通信中継装置として構成されるものである。
ここで,2つの信号経路各々を識別する「第1の」及び「第2の」は,便宜上,2つの信号経路のうち前記バースト信号検出手段が設けられる側の信号経路を「第1の」とし,他方を「第2の」としたものであり,それ以外の意味を有するものではない。
このような構成により,2つのサーキュレータの機能によって2つのモデム(TDDモデム)相互間で送受信される通信信号の伝送方向ごとに,信号経路が前記第1の信号経路と前記第2の信号経路とに分離されるので,モデムからTDD通信に同期した信号経路切り替え用の制御信号を取り出す必要がなく,既存のTDDモデムをそのまま有効活用できる。
また,各信号経路を流れる信号を前記信号強度調節手段により増幅できるので,2つのモデムの間の有線又は無線の通信経路に当該通信中継装置を配置して通信信号を中継伝送すれば,長距離通信を行う場合や無線通信経路中に障害物等が存在する場合でも通信に必要な信号強度が確保される。
【0008】
ここで,TDDモデムは,送信と受信とを時分割で切り替えるので,前記バースト信号検出手段により信号が検出されている側以外の信号経路においては,信号を増幅する必要がなく,むしろ信号増幅を行うべきでない。
一方,基本的には,サーキュレータは,3つの接続端のうち一の接続端に入力された高周波信号を予め定められた他の一の接続端にのみ伝送するものであるが,残りの一の接続端への信号伝送が完全に遮断されるわけではない。一般に,サーキュレータの信号弁別性能を示す分離度は,概ね20dB程度であり,入力信号のうち約100分の1の電力相当分が,本来の接続端(出力端)を通り過ぎて残りの接続端へ出力されてしまう。例えば,前記第1の信号経路において増幅されて前記第2のサーキュレータに入力された信号の約100分の1の電力相当分が,前記第2の信号経路に回りこんで侵入することになる。そして,その回り込み信号が前記第2の信号経路において増幅されて無視できないレベルとなると,それが前記第1のサーキュレータを経由してさらに前記第1の信号経路に回り込むことによって信号干渉が生じるおそれがある。このような現象は,長距離通信等を行うために信号の増幅ゲインを上げるほど顕著になる。
しかし,上記構成によれば,前記バースト信号検出手段によって信号伝送中の信号経路を特定でき(即ち,前記バースト信号検出手段によりバースト信号が検出されている最中は前記第1の信号経路が信号伝送中であると特定できる),前記信号強度調節手段によって信号伝送中の一方の信号経路における信号を増幅させるとともに,他方の信号経路における信号を減衰させることができる。その結果,サーキュレータの分離度の不十分さによって一方の信号経路で増幅された信号が他方の信号に回り込んだとしても,その回り込み信号を前記信号強度調節手段により減衰させることができるので,長距離通信を行う場合や無線通信経路上に障害物等が存在する場合であっても,回り込み信号による信号干渉を防止して良好な通信品質を確保できる。
【0009】
また,前記バースト信号検出手段によりバースト信号が検出された場合に,前記信号強度調節手段が,前記第2の信号経路における信号のレベルを下げる方向に調節し,それより遅れて前記第1の信号経路における信号のレベルを上げる方向に調節するものであれば,反対側の信号経路からの回り込み信号が一時的にノイズとなる(干渉する)ことをより確実に防止できる。
ここで,前記バースト信号検出手段の具体的構成としては,例えば,前記第1の信号経路からの分岐経路に設けられた信号減衰手段と,前記信号減衰手段を経由後の信号のレベルに基づいて前記バースト信号の有無を検出する検波手段とを具備する構成が考えられる。
このような構成により,前記検波手段に入力される信号(減衰後の信号)が,その元の信号(信号経路からの分岐信号)が送信バースト信号若しくは受信バースト信号である場合に前記検波手段により信号有りが検出され,それ以外の信号(例えば,他方の信号経路からの回り込み信号)である場合に前記検波手段により信号無しが検出されるよう,前記信号減衰手段の減衰レベルを設定すれば,簡易な構成によって通信に用いられるバースト信号を他のノイズ信号と区別して検出できる。
【0010】
ところで,一方のモデムからの無線信号が反射等の影響によって遅れて当該通信中継装置に到達したような場合に,その一方のモデムからの無線信号が,他方のモデムからの無線信号を受信中の無線アンテナに同時に受信されて混信し,これが前記一方のモデムに到達する(戻ってくる)ことが生じ得る。このような現象が生じると,戻ってきた信号がノイズとなって通信が非常に不安定になる。
そこで,前記第1の信号経路及び第2の信号経路のうち,その一方を流れる信号の周波数を既定の周波数幅分上げる第1の周波数変換手段と,他方を流れる信号の周波数を既定の周波数幅分下げる第2の周波数変換手段とを具備するものが考えられる。この場合,前記第1の周波数変換手段と前記第2の周波数変換手段とが各々異なる周波数幅分変換するものや同一の周波数幅分変換するものが考えられる。
これにより,一方のモデム側との無線通信と他方のモデム側との無線通信とを異なる周波数の通信信号を用いて行うことが可能となる。
例えば,前記第1の周波数変換手段と前記第2の周波数変換手段とが,各々2.4GHz帯と5GHz帯との差分だけ(同一の周波数幅分)周波数変換を行うものとすれば,2.4GHz帯の無線LAN用のTDDモデムと,5GHz帯の無線LAN用のTDDモデムとの相互間で通信が可能となる。或いは,全体として同じ周波数帯域のTDDモデムを用いる場合でも,通信方向によってその全体の通信帯域の中で予め定められた異なるチャンネルを使用して通信を行うといったことも可能となる。
このように,2つのモデム各々が異なる周波数帯域を使用して無線通信を行うよう当該通信中継装置に周波数変換機能を持たせることにより,一方のモデムからの無線信号が他方のモデムからの無線信号とともに戻ってきた場合でも,その一方のモデムから送信された無線信号は,当該通信中継装置によってその一方のモデムが使用していない周波数に変換されるので,前記一方のモデム内部のフィルタ機能によって自装置が送信した信号は除去される。その結果,自装置の送信信号が戻ってきてノイズとなることが防止される。
また,このような周波数変換機能を備えた通信中継装置を両モデム間に直列に複数(例えば2つ)配置すれば,2.4GHz帯や5GHz帯の無線LAN用の既存のTDDモデムをそのまま有効活用して,周波数帯域割当に余裕がある準ミリ波帯〜ミリ波帯等の他の周波数帯域で無線通信(無線中継)を行うといったことも可能となる。この場合,例えば前記第1の周波数変換手段を「2.4GHz帯や5GHz帯」から「準ミリ波帯〜ミリ波帯」に周波数を上げるものとし,前記第2の周波数変換手段を「準ミリ波帯〜ミリ波帯」から「2.4GHz帯や5GHz帯」に周波数を下げるものとすればよい。
また,前記第1の周波数変換手段と前記第2の周波数変換手段とが各々異なる周波数幅分の変換を行う構成とすれば,信号伝送方向ごとに異なる周波数で無線通信を行うことも可能となり,これにより,各モデムからの無線送信信号がそのまま自装置(自局)に戻ってきても,各モデムが備えるフィルタ機能によりその戻ってきた信号は除去され,ノイズとなることが防止される。
また,同一の周波数幅分変換する場合は,前記第1の周波数変換手段と前記第2の周波数変換手段とが,1つの周波数発振器の出力信号を基準信号として共用する構成とすることにより,周波数変換用の基準周波数信号を出力する周波数発振器の数を減らし,構成を簡略化,小型化,省電力化することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば,2つのサーキュレータの機能によって2つのモデム(TDDモデム)相互間で送受信される通信信号の伝送方向ごとに,信号経路が前記第1の信号経路と前記第2の信号経路とに分離されるので,モデムからTDD通信に同期した信号経路切り替え用の制御信号を取り出す必要がなく,既存のTDDモデムをそのまま有効活用できる。
また,各信号経路を流れる信号を前記信号強度調節手段により増幅できるので,2つのモデムの間の有線又は無線の通信経路に当該通信中継装置を配置して通信信号を中継伝送すれば,長距離通信等を行う場合でも通信に必要な信号強度が確保される。
さらに,前記バースト信号検出手段によって信号伝送中の信号経路(前記第1の信号経路か前記第2の信号経路か)を特定でき,前記信号強度調節手段によって信号伝送中の信号経路についてのみ信号を増幅させ,他方の信号を減衰させることができる。その結果,サーキュレータの分離度の不十分さによって一方の信号経路で増幅された信号が他方の信号に回り込んだとしても,その回り込み信号を前記信号強度調節手段により減衰させることができるので,長距離通信等を行う場合(即ち,増幅後の信号強度が大きい場合)であっても,回り込み信号による信号干渉を防止して良好な通信品質を確保できる。
また,前記第1の信号経路を流れる信号の周波数を上げるとともに,前記第2の信号経路を流れる信号の周波数を下げることにより,各モデムにおいて自局からの送信信号が当該通信中継装置に到達後に再び戻ってきてノイズとなることを防止でき,良好な通信品質を確保できる。さらに,そのような通信中継装置を通信経路中に複数配置すれば,例えば,2.4GHz帯や5GHz帯の無線LAN用の既存のTDDモデムをそのまま有効活用して,周波数帯域割当に余裕がある準ミリ波帯〜ミリ波帯等の他の周波数帯域で無線通信(無線中継)を行うこと等も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下添付図面を参照しながら,本発明の実施の形態及び実施例について説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態及び実施例は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
ここに,図1は本発明の第1実施形態に係る通信中継装置X1の概略構成図,図2は本発明の第2実施形態に係る通信中継装置X2の概略構成図,図3は本発明の実施形態に係る通信中継装置X1又はX2を構成要素とする無線通信システムZの概略構成図,図4は無線通信システムZを構成する無線通信装置Yの概略構成図,図5は従来例1に係る無線通信システムAの基本構成を表した図,図6は従来例2に係る無線通信システムBの基本構成を表した図である。
【0013】
<第1実施形態>
まず,図1の概略構成図を用いて,本発明の第1実施形態に係る通信中継装置X1について説明する。
通信中継装置X1を構成要素とする通信システムでは,親局側に,いわゆる無線LANに用いられる時分割多重復信(TDD)方式のモデムである親局TDDモデム1が,子局側に,同じくTDD方式のモデムである子局TDDモデム2が存在し,通信中継装置X1は,これらTDD方式の2つのモデム相互間で有線若しくは無線により送受信される通信信号を中継伝送するものである。
ここで,図示していないが,各TDDモデム1,2には,パーソナルコンピュータ等の情報処理装置が,直接或いはHUB等の通信機器を介して接続され,前記TDDモデム1,2が,送信信号の変調と受信信号の復調とを行う。
図1に示すように,通信中継装置X1は,並列に設けられた各々異なる第1の信号経路R1及び第2の信号経路R2を備え,2つのサーキュレータ(第1のサーキュレータ11及び第2のサーキュレータ12)によって,前記親局TDDモデム1から前記子局TDDモデム2へ向かう下り方向の通信信号を前記第1の信号経路R1により伝送するとともに,前記子局TDDモデム2から前記親局TDDモデム1へ向かう上り方向の通信信号を前記第2の信号経路R2により伝送するよう構成されている。
即ち,通信中継装置X1は,有線により若しくは無線アンテナ31,32を介して,2つのモデムのうちの一方の前記親局TDDモデム1に通じる第1の接続端P11から入力される信号を,前記第1の信号経路R1との接続端P12へ出力する(伝送する)とともに,前記第2の信号経路R2との接続端P13から入力される信号を前記第1の接続端P11へ出力する第1のサーキュレータ11を具備する。
また,同じく有線により若しくは無線アンテナ33,34を介して他方の前記子局TDDモデム2に通じる第2の接続端P21から入力される信号を,前記第2の信号経路との接続端P22へ出力する(伝送する)とともに,前記第1の信号経路R1との接続端P23から入力される信号を前記第2の接続端P21へ出力する第2のサーキュレータ12も具備する。
さらに,通信中継装置X1は,前記第1の信号経路R1においてバースト信号(TDD通信における通信信号)の有無を検出するバースト信号検出器65と,前記第1の信号経路R1における前記バースト信号検出器65による信号検出位置よりも信号流れ方向下流側(前記第1の信号経路R1においては前記第2のサーキュレータ12に近い側)の位置に設けられ,そこを流れる信号の強度の増幅及び減衰を前記バースト信号検出器65の検出結果に基づいて調節する第1の信号強度調節回路67と,他方の前記第2の信号経路R2に設けられ,そこを流れる信号の強度の増幅及び減衰を前記バースト信号検出器65の検出結果に基づいて調節する第2の信号強度調節回路68とを具備する。
図1に示す例では,前記バースト信号検出器65は,前記第1の信号経路R1上に配置される機器のうちで信号流れ方向最上流側に配置されている。
【0014】
また,前記バースト信号検出器65は,前記第1の信号経路R1からの分岐経路に設けられた信号減衰器65aと,その信号減衰器65aを経由後の信号のレベル(電圧レベル)が所定の設定レベルを超えるか否かによりバースト信号の有無を検出する高周波検波器65bと,その検出結果を表す信号を各信号強度調節回路67,68へ伝送する制御信号形成器66を具備する。
ここで,前記親局TDDモデム1から送信されて前記第1の信号経路R1における前記信号減衰器65aへの分岐部に到達するバースト信号(通信信号)のレベルが0dBm程度,前記第1の信号経路との分岐部(デバイダ)の結合度が−6dB程度,前記高周波検波器65bの最低検出感度が−60dBm程度,前記第1の信号経路R2側を流れる信号のレベルが−20〜−60dBm程度,前記第1のサーキュレータ11における前記第2の信号経路R2側(接続端P13)から前記第1の信号経路側(接続端P12)への結合度が−20dB程度であると考える。
この場合,前記信号減衰器65aの減衰レベルを−40dB程度とすると,前記高周波検波器65bは,前記信号減衰器65aを経由して入力される信号が前記親局TDDモデム1から送信された下りバースト信号である場合には,入力信号レベルが−46dBm程度となるので「下りバースト信号有り」を検出してロジックON(+5V)を出力する。一方,入力される信号が前記第2の信号経路R2側からの回り込み信号である場合には,入力信号レベルが−86〜−126dBm程度となるので「下りバースト信号無し」を検出してロジックOFF(0V)を出力する。これにより,前記親局TDDモデム1が送信中であるか受信中であるか(下り方向の通信中か上り方向の通信中か)を判別(区分)できる。
【0015】
また,前記第1の信号強度調節回路67及び前記第2の信号強度調節回路68は,各々FETスイッチ67a,68a及び可変利得アンプ212x,222xを備えている。
そして,前記バースト信号検出器65による検出信号(ON/OFF)は,前記制御信号形成器66を通じて前記FETスイッチ67a,68a各々に伝送され,前記FETスイッチ67a,68a各々は,伝送されてきた信号に基づいて前記可変利得アンプ212x,222x各々に信号レベルを上げさせる(増幅させる)か下げさせる(減衰させる)かの切り替え制御を行う。なお,ここでいう「信号を下げさせる(減衰させる)には,実質的に信号伝送を遮断させることが含まれるものとする。
【0016】
より具体的には,前記バースト信号検出器65によりバースト信号が検出された場合(即ち,下り方向通信中)には,その検出信号(検出有り信号(ON信号))が前記制御信号形成器66により1回反転(ロジック反転)された反転信号(即ち,OFF信号)と,2回反転されることにより前記検出有り信号が前記反転信号よりも所定時間遅延して出力される遅延信号とに変換される。さらに,前記反転信号は前記第2の信号経路R2側の前記FETスイッチ68aに伝送され,そのFETスイッチ68aにより前記可変利得アンプ222xのゲイン設定が信号レベルを下げる側(減衰側)に切り替えられる。一方,前記遅延信号は前記第1の信号経路R1側の前記FETスイッチ67aに伝送され,そのFETスイッチ67aにより前記可変利得アンプ212xのゲイン設定が信号レベルを上げる側(増幅側)に切り替えられる。
ここで,前記遅延信号は前記反転信号より遅れて信号が変化するので,両信号強度調節回路67,68により,バースト信号が検出された前記第1の信号経路R1(一方の信号経路)とは異なる前記第2の信号経路R2(他方の信号経路)における信号のレベルを下げる方向に調節し,それより遅れて前記第1の信号経路R1における信号のレベルを上げる方向に調節することになる。
【0017】
同様に,前記バースト信号検出器65によりバースト信号が検出されていない場合(即ち,上り方向通信通信中)には,その検出信号(検出無し信号(OFF信号))が前記制御信号形成器66により1回反転(ロジック反転)された反転信号(即ち,ON信号)と,2回反転された前記遅延信号とに変換され,前記反転信号に基づき前記第2の信号経路R2側の前記可変利得アンプ222xのゲイン設定が信号レベルを上げる側(増幅側)に,前記遅延信号に基づき前記第1の信号経路R1側の前記可変利得アンプ212xのゲイン設定が信号レベルを下げる側(減衰側)に切り替えられる。
これにより,下り方向通信中(下りバースト信号有りを検出中)は,その通信信号が前記第1の信号強度調節回路67により増幅されるので,2つのTDDモデム1,2相互間の距離が長い場合等であっても,通信信号の減衰分が補われて通信が可能となる。さらに,その通信信号が前記第2のサーキュレータ12を経由して回り込む信号は前記第2の信号強度調節回路68により減衰(或いは遮断)され,これが前記第1の信号経路R1に回り込んでノイズとなることを防止できる。
一方,上り方向通信中(下りバースト信号無しを検出中)は,その通信信号が前記第2の信号強度調節回路68により増幅されるので,2つのTDDモデム1,2相互間の距離が長い場合等であっても,通信信号の減衰分が補われて通信が可能となる。さらに,その通信信号が前記第1のサーキュレータ11を経由して回り込む信号は前記第1の信号強度調節回路67により減衰(或いは遮断)され,これが前記第2の信号経路R2に回り込んでノイズとなることを防止できる。
また,前記バースト信号検出器65による信号検出側(一方)の信号経路における信号レベル調節(増幅調節)が,反対側(他方)の信号経路における信号レベル調節(減衰調節)より遅れて行われるので,より確実に回り込み信号がノイズとなることを防止できる。
なお,前記制御信号形成器66による信号の遅延時間は,前記バースト信号検出器65による信号検出位置からその信号経路における可変利得アンプまでの信号伝送時間から,信号レベル調節に必要なその他の時間を差し引いた時間よりも短い時間とする。これにより,バースト信号が可変利得アンプにより減衰されてしまうことを防止できる。
また,通信中継装置X1は,例えば,各モデム1,2と無線アンテナとの距離が長い場合,例えば,TDDモデムが高層ビルの低層階や地下に設置され,無線アンテナがそのビルの上層階や屋上に設置されるような場合に,その間の信号減衰を補う中継装置に適用することも考えられる。
例えば,図1に破線で示す4つの無線アンテナ31〜34のうち,無線アンテナ32,33のみが接続されており,その一方の無線アンテナ33が高層ビルの上層階や屋上に配置され,前記親局TDDモデム1がそのビルの低層階や地下に配置されているような場合である。
【0018】
<第2実施形態>
次に,図2の概略構成図を用いて,本発明の第2実施形態に係る通信中継装置X2について説明する。なお,前記通信中継装置X1及びそれを含む通信システムと同じ構成要素については,同じ記号で表している。
図2に示すように,通信中継装置X2は,前記通信中継装置X1の全構成要素に加え,前記第1の信号経路R1を流れる信号の周波数を既定の周波数幅分上げるアップコンバータ21a(第1の周波数変換手段に相当)と,前記第2の信号経路R2を流れる信号の周波数を既定の周波数幅分下げるダウンコンバータ22a(第2の周波数変換手段に相当)とを具備している。
また,この通信中継装置X2における前記アップコンバータ21aと前記ダウンコンバータ22aとは,同一の周波数幅分の変換を行うものである。このため,前記アップコンバータ21aと前記ダウンコンバータ22aは,周波数混合器211,221(ミキサ)は各々個別に設けられているが,周波数混合器211,221各々に入力される基準信号(基準周波数信号)を出力する周波数発振器23は,両コンバータ21a,22aにおいて共用する構成となっている。これにより,周波数発振器の数を減らして構成を簡略化及び小型化し,省電力化している。
一方,前記アップコンバータ21aと前記ダウンコンバータ22aとで,異なる周波数幅分の変換を行う場合は,各々発振周波数が異なる周波数発振器を個別に設ければい。
なお,図2に示す構成では,便宜上,前記アップコンバータ21a及び前記ダウンコンバータ22aは一段変換としているが,二段以上重ねて(直列的に)変換する構成であってもよい。
このような通信中継装置X2を,2つのモデム1,2の間に配置して通信信号を中継伝送することにより,前記親局TDDモデム1側との無線通信と,前記子局TDDモデム2側との無線通信とを,各々異なる周波数f1,f2の通信信号を用いて行うことが可能となる。
例えば,前記アップコンバータ21aを2.4GHz帯から5GHz帯へ変換するものとし,前記ダウンコンバータ22aを5GHz帯から2.4GHz帯へ(同一の周波数幅分)周波数変換するものとすれば,前記親局TDDモデム1として2.4GHz帯の無線LAN用のTDDモデムを用い,前記子局TDDモデム2として5GHz帯の無線LAN用のTDDモデムを用いることができる。
このように,2つのモデム1,2各々が異なる周波数帯域f1,f2を使用して無線通信を行えるよう周波数変換機能を有する通信中継装置X2を配置することにより,例えば,前記子局TDDモデム2からの周波数f2の無線信号が,前記親局TDDモデム1からの周波数f1の無線信号を受信中の無線アンテナ32に同時に受信され,これが前記子局TDDモデム2に戻ってきた場合でも,その戻ってきた戻り信号の周波数は前記アップコンバータ21aによって周波数f1とは異なる周波数に変換されている。従って,そのような戻り信号は,前記子局モデム2が備えるフィルタ機能によって除去された後に処理される。その結果,前記子局TDDモデム2において,自局の送信信号が戻ってきてノイズとなることが防止される。このことは,前記親局TDDモデム1においても同様である。
【0019】
また,前記アップコンバータ21aと前記ダウンコンバータ22aとが,各々異なる周波数幅分の変換を行う構成とすれば,信号伝送方向ごとに異なる周波数で無線通信を行うことも可能となる。
これにより,例えば,前記親局TDDモデム1が,ある無線周波数帯域f1の中の一部の周波数f11のチャンネルで送信を行い,それとは異なる他の周波数f12のチャンネルで受信を行うよう設定されている場合,周波数f11の送信信号が,反射等の影響で信号受信状態に切り替わった後に自装置(自局)のアンテナ31に戻ってきても,その周波数は受信設定されている周波数f12とは異なるので,前記親局TDDモデム1が備えるフィルタ機能(チャンネル選択機能)により,その戻ってきた信号は除去されてノイズとならない。
また,このような周波数変換機能を備えた通信中継装置X2を,両モデム1,2の間に直列に複数(例えば2つ)配置すれば,2.4GHz帯や5GHz帯の無線LAN用の既存のTDDモデムをそのまま有効活用して,周波数帯域割当に余裕がある準ミリ波帯〜ミリ波帯等の他の周波数帯域で無線通信(無線中継)を行うといったことも可能となる。
この場合,前記周波数発振器23の発振周波数を,「準ミリ波帯〜ミリ波帯」の所定の周波数と「2.4GHz帯若しくは5GHz帯」の周波数との差分周波数に設定する。これにより,前記アップコンバータ21aが,「2.4GHz帯や5GHz帯」から「準ミリ波帯〜ミリ波帯」に周波数を上げるものとなり,前記ダウンコンバータ22aが,「準ミリ波帯〜ミリ波帯」から「2.4GHz帯や5GHz帯」に周波数を下げるものとなる。
なお,前記通信中継装置X2において,前記バースト信号検出器65が設けられる側の前記第1の信号経路R1に前記ダウンコンバータ22aを,そうでない側の前記第2の信号経路R2に前記アップコンバータ21aを設けた構成としても同様の作用効果を奏する。但し,前記親局TDDモデム1及び前記子局TDDモデム2各々が用いる周波数帯の高低によって,両モデム1,2の配置が逆になり得ることはいうまでもない。
【0020】
<通信中継装置X1,X2の他の適用例>
次に,図3及び図4を用いて,前記通信中継X1,X2の適用例である無線通信システムZについて説明する。
図3は,無線通信システムZの概略構成図を表す。
図3に示すように,無線通信システムZは,2つのモデム1,2各々に,「2.4GHz帯や5GHz帯」と「準ミリ波帯〜ミリ波帯」との間で相互に周波数変換を行う無線通信装置Yを接続し,その2つの無線通信装置Yの間で「準ミリ波帯〜ミリ波帯」で送受信される無線通信信号を,前記通信中継装置X1若しくはX2により中継伝送するものである。
ここで,前記通信中継装置X1を用いる場合は,2つのモデム1,2各々の側で同じ周波数帯f1で無線通信を行うことになる。
一方,前記通信中継装置X2を用いる場合は,2つのモデム1,2各々との間で,各々異なる周波数帯f1,f2で無線通信を行うことになる。さらにこの場合,モデム1,2ごとに双方向の通信において同一の周波数帯(親局側がf1,子局側がf2)で通信を行う場合と,通信方向ごとに異なる周波数帯(親局側がf11及びf12,子局側がf21及びf22)で無線通信を行う場合とが考えられる。
このように,前記通信中継装置X1,X2は,「2.4GHz帯や5GHz帯」と「準ミリ波帯〜ミリ波帯」との間で相互に周波数変換を行う無線通信装置Yを介した無線通信の中継に用いることも可能である。これにより,2.4GHz帯や5GHz帯の無線LAN用の既存のTDDモデムをそのまま有効活用して,周波数帯域割当に余裕がある準ミリ波帯〜ミリ波帯等の他の周波数帯域で長距離の,或いは通信障害物等が存在する場合の無線通信(無線中継)を,良好な通信品質を確保しつつ行うことが可能となる。
【0021】
図4は,前記無線通信装置Yの概略構成図を表す。
図4に示すように,前記無線通信装置Yは,サーキュレータ10,アップコンバータ21b,ダウンコンバータ22b,バースト信号検出器65’,制御信号形成器66’,第1の信号強度調節回路67’,第2の信号強度調節回路68’,送信アンテナ31及び受信アンテナ32を具備する。
前記サーキュレータ10は,TDDモデム1or2に接続され,該TDDモデム1or2の送信信号を入力して第1接続端p1へ出力するとともに,他の第2接続端p2からの入力信号をTDDモデム1,2へ出力するものである。
前記アップコンバータ21bは,ミキサ211及び周波数発振器231により,前記サーキュレータ10の前記第1接続端p1からの出力信号を既定の周波数幅だけ上げる周波数変換処理を施して前記送信アンテナ31へ出力するものである。
前記ダウンコンバータ22bは,ミキサ221及び周波数発振器232により,前記受信アンテナ32の受信信号の周波数を既定の周波数幅だけ下げる周波数変換処理を施して前記サーキュレータ10の第2接続端p2へ出力するものである。
これらアップコンバータ21b及びダウンコンバータ22bも,二段以上重ねて(直列的に)変換する構成であってもよい。
【0022】
前記バースト信号検出器65’は,前記サーキュレータ10から前記送信アンテナ31までの送信信号経路において,TDDモデム1or2からの送信信号であるバースト信号の有無を検出するものであり,前記制御信号形成器66’はその検出結果を前記第1及び第2の信号強度調節回路67’,68’に伝送するものであり,前記バースト信号検出器65及び前記制御信号形成器66各々と同様の構成を有するものである。
また,前記第1の信号強度調節回路67’は,前記バースト信号検出器65’によるバースト信号有無の検出結果に基づいて,前記送信信号経路において流れる信号の強度を調節する(増幅及び減衰させる)ものである。
同じく前記第2の信号強度調節回路68’も,前記バースト信号検出器65の検出結果に基づいて前記受信アンテナ32から前記サーキュレータ10までの受信信号経路において流れる信号の強度を調節する(増幅及び減衰させる)ものである。
このような構成を有する無線通信装置Yを前記親局TDDモデム1及び前記子局TDDモデム2各々に接続すれば,各モデム1,2からの「2.4GHz帯や5GHz帯」の送信信号を「準ミリ波帯〜ミリ波帯」に変換して無線送信でき,相手側から「準ミリ波帯〜ミリ波帯」で伝送されてくる受信信号を「2.4GHz帯や5GHz帯」に変換して各モデム1,2に伝送することができる。
そして,このような無線通信装置Yが接続された2つのTDDモデム1,2の間に前記通信中継装置X1又はX2を配置すれば,2つの前記無線通信装置Y相互間の距離が長距離である場合等においても通信が可能となり,しかも,回り込み信号がノイズとなることを防止して良好な通信品質を確保できる。
【0023】
また,前記無線通信装置Yが接続された2つのTDDモデム1,2の間に前記通信中継装置X2を配置すれば,前記親局TDDモデム1側の「準ミリ波帯〜ミリ波帯」の通信周波数帯f1と,前記子局TDDモデム2側の同周波数帯f2とを異なる周波数帯に設定できる。
この場合,2つのTDDモデム1,2が各々同一周波数帯f0を用いるモデムであれば,前記親局TDDモデム1に接続される前記無線通信装置Yにおける周波数変換幅と,前記子局TDDモデム2に接続される前記無線通信装置Yにおける周波数変換幅とを異なる幅に設定すればよい。
さらにその場合,前記無線通信周波数Yにおける送信側の前記周波数発振器231と受信側の前記周波数発振器232とを異なる周波数に設定することにより,通信方向ごとに異なる周波数帯(親局側がf11及びf12,子局側がf21及びf22)で無線通信を行うシステムを構成できる。
また,「準ミリ波帯〜ミリ波帯」のような非常に高い周波数の信号を中継伝送する場合,前記通信中継装置X1の前記第1の信号経路R1における前記バースト信号検出器65の前段(信号の流れ方向上流側)に,流れる信号の周波数を所定の周波数に一旦下げるダウンコンバータを設けるとともに,前記バースト信号検出器65の後段に,一旦下げた信号の周波数を元の周波数に戻す(上げる)アップコンバータを設けることが望ましい。
これにより,前記バースト信号検出器65を構成する機器を,比較的低周波数の信号に対応した機器とすることができ,装置の簡素化,小型化及び低コスト化が図れる。
また,前記通信中継装置X2についても,同様に,前記第1の信号経路R1における前記バースト信号検出器65の前段に,ダウンコンバータを設けるとともに,前記バースト信号検出器65の後段に存在する前記第1の信号強度調節回路67において,その周波数の上げ幅の分を調整するように設定すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は,無線通信装置への利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係る通信中継装置X1の概略構成図。
【図2】本発明の第2実施形態に係る通信中継装置X2の概略構成図。
【図3】本発明の実施形態に係る通信中継装置X1又はX2を構成要素とする無線通信システムZの概略構成図。
【図4】無線通信システムZを構成する無線通信装置Yの概略構成図。
【図5】従来例1に係る無線通信システムAの基本構成を表した図。
【図6】従来例2に係る無線通信システムBの基本構成を表した図。
【符号の説明】
【0026】
1…親局TDDモデム
2…子局TDDモデム
10,11,12…サーキュレータ(第1,第2)
21a,21b…アップコンバータ
22a,22b…ダウンコンバータ
23,231,232…周波数発振器
31,32,33,34…無線アンテナ
65,65’…バースト信号検出器(バースト信号検出手段)
66,66’…制御信号形成器
67,67’…第1の信号強度調節回路
68,68’…第2の信号強度調節回路
67a,68a…FETスイッチ
211,221…ミキサ
212x,222x…可変利得アンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時分割多重復信方式の2つのモデム相互間で有線若しくは無線により送受信される通信信号を中継伝送する通信中継装置であって,
各々異なる第1の信号経路及び第2の信号経路と,
有線により若しくは無線アンテナを介して前記2つのモデムのうちの一方のモデムに通じる第1の接続端から入力される信号を前記第1の信号経路へ出力するとともに,前記第2の信号経路から入力される信号を前記第1の接続端へ出力する第1のサーキュレータと,
有線により若しくは無線アンテナを介して前記2つのモデムのうちの他方のモデムに通じる第2の接続端から入力される信号を前記第2の信号経路へ出力するとともに,前記第1の信号経路から入力される信号を前記第2の接続端へ出力する第2のサーキュレータと,
前記第1の信号経路においてバースト信号の有無を検出するバースト信号検出手段と,
前記第1の信号経路における前記バースト信号検出手段による信号検出位置よりも信号流れ方向下流側の所定位置及び前記第2の信号経路における所定位置の各々において流れる信号の強度の増幅及び減衰を前記バースト信号検出手段の検出結果に基づいて調節する信号強度調節手段と,
を具備してなることを特徴とする通信中継装置。
【請求項2】
前記バースト信号検出手段によりバースト信号が検出された場合に,前記信号強度調節手段が,前記第2の信号経路における信号のレベルを下げる方向に調節し,それより遅れて前記第1の信号経路における信号のレベルを上げる方向に調節してなる請求項1に記載の通信中継装置。
【請求項3】
前記バースト信号検出手段が,
前記第1の信号経路からの分岐経路に設けられた信号減衰手段と,
前記信号減衰手段を経由後の信号のレベルに基づいて前記バースト信号の有無を検出する検波手段と,
を具備してなる請求項1又は2のいずれかに記載の通信中継装置。
【請求項4】
前記第1の信号経路若しくは前記第2の信号経路のうち,その一方を流れる信号の周波数を既定の周波数幅分上げる第1の周波数変換手段及び他方を流れる信号の周波数を既定の周波数幅分下げる第2の周波数変換手段を具備してなる請求項1〜3のいずれかに記載の通信中継装置。
【請求項5】
前記第1の周波数変換手段と前記第2の周波数変換手段とが各々異なる周波数幅分変換するものである請求項4に記載の通信中継装置。
【請求項6】
前記第1の周波数変換手段と前記第2の周波数変換手段とが,1つの周波数発振器の出力信号を基準信号として共用して同一周波数幅分変換するものである請求項4に記載の通信中継装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−166167(P2006−166167A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−356285(P2004−356285)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】