説明

通信制御装置、通信制御方法、通信制御プログラム、ノード及び通信システム

【課題】近傍ノードとの間の通信タイミングを自律分散的に求める際に、タイミング制御信号のオーバーヘッドを小さくすることができ、低遅延であり、かつ、高いデータ通信効率を得る。
【解決手段】本発明の通信制御装置は、近傍ノードからのタイミング制御信号を受信するタイミング制御信号受信手段と、近傍ノードのタイミング制御信号の受信に基づいて、自ノードのデータ発信タイミングを決定する通信タイミング計算手段と、自ノードのデータ発信を表す位相が反映されたタイミング制御信号を送信するタイミング制御信号送信手段と、各近傍ノードとの間でデータ信号を送受信するデータ通信手段と、通信タイミング計算手段により決定された自ノードの位相状態に基づいて、タイミング制御信号及びデータ信号の送信態様を制御する位相状態管理手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信制御装置、通信制御方法、通信プログラム、ノード及び通信システムに関し、例えば、センサネットワークやアドホック型無線通信ネットワークやLAN(Local Area Network)等のように、複数の機器から構成されるネットワークシステムにおいて、分散配置された多数のノードや移動体に配置されたノードが、電波干渉等による通信データの衝突を回避しながら、相互にデータ通信を行なうことができる通信制御装置、方法及びプログラムや、又はこれを実現するノードに適用し得る。
【背景技術】
【0002】
例えば、集中管理サーバを必要とせず、個々のノードが自律分散的に通信タイミングを相互調整することによって、発信衝突を回避する方法として、特許文献1〜特許文献7に記載される技術がある。
【0003】
特許文献1〜7に記載の通信制御装置及び方法は、各ノードが近傍ノードとの間で、周期的にインパルス信号(自ノードのデータの発信タイミングを示す制御信号)を送受信することによって、通信タイミングの相互調整を行なう。これにより、インパルス信号の電波到達範囲内のノード間で、1周期(インパルス信号の発信周期)の期間を相互に分割する自律的なタイムスロット割当を実現する。ここで、インパルス信号は、必ずしもインパルス状の波形を有する信号である必要はなく、一般的な制御信号と同様にパケット等で構成することが可能である。そこで、ここではインパルス信号をタイミング制御信号と呼ぶ。タイミング制御信号の発信周期を、以後、単に周期と呼ぶ。各ノードが送信するタイミング制御信号の電波到達範囲は、当該ノードが通信タイミング調整を行なう相互作用範囲に対応する。
【0004】
近傍ノード間におけるタイミング制御信号の送受信方法にはいくつかの形態がある。1番目の形態は、図2(a)に示すように、タイミング制御信号の電波到達範囲を、データ信号の電波到達範囲よりも広くし、例えば、その比を2倍程度とする。この場合、タイミング制御信号とデータ信号との送信電力比を調節することによって、電波到達範囲の比を設定する。タイミング制御信号とデータ信号との電波到達範囲の比を、このようにする理由は、隠れ端末などによる発信衝突の発生を回避するためである。
【0005】
2番目の形態は、図2(b)に示すように、タイミング制御信号とデータ信号の電波到達範囲は同一(つまり、送信電力は同一)とし、他ノードから受信したタイミング制御信号に基づいて、自身の内部に生成した当該ノードに対する仮想位相(特許文献5に記載される仮想位相)を、自身がタイミング制御信号を送信する際に付加する方法である。
【0006】
着目ノードからタイミング制御信号を受信したノード(図2(b)における実線の円内のノード)は、自身の内部に着目ノードに対する仮想位相が存在しなければ新たに生成し、すでに存在する場合はその値を調整する。生成あるいは調整された仮想位相の値は、その後、固有角振動数に相当する一定の速度で変化する。そして、自身がタイミング制御信号を送信する際に、現時刻における着目ノードに対する仮想位相の値を付加して送信する。このようにすることで、着目ノードの位相情報が1ホップ先のノード(図2(b)における実線の円内のノード)を介して間接的に2ホップ先(図2(b)において、点線の円内のノードで実線の円内に含まれないもの)のノードに伝えられる。
【0007】
上記では、着目ノードの位相情報が2ホップ先のノードに間接的に伝えられる仕組みついて説明したが、すべてのノードの位相情報が同様にして2ホップ先のノードに伝えられる。したがって、通信タイミング調整における相互作用範囲は、各ノードの2ホップ近傍範囲となる。
【0008】
【特許文献1】特開2005−94663号公報
【特許文献2】特開2006−74617号公報
【特許文献3】特開2006−74619号公報
【特許文献4】特開2006−157438号公報
【特許文献5】特開2006−157441号公報
【特許文献6】特開2006−211585号公報
【特許文献7】特開2006−211564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した特許文献1〜7に記載の通信制御装置及び方法を用いて、上記タイミング制御信号の送受信を行なう場合、一般に、周期を小さくするほど、通信遅延が小さくなる傾向がある。
【0010】
しかしながら、周期が小さくなるにしたがって、相対的に周期内におけるタイミング制御信号の送受信期間の占める割合が増加し、データ信号の通信効率が低下するという問題がある。従って、低遅延であって、かつ高い通信効率を得るためには、タイミング制御信号のオーバーヘッドを如何に小さくするかという問題が重要な課題となる。
【0011】
そのため、近傍ノードとの間の通信タイミングを自律分散的に求める際に、タイミング制御信号のオーバーヘッドを小さくすることができ、低遅延であり、かつ、高いデータ通信効率を図ることができる、通信制御装置、通信制御方法、通信制御プログラム、ノード及び通信システムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる課題を解決するために、第1の本発明の通信制御装置は、通信システムを構成する複数のノードのそれぞれに搭載される通信制御装置において、(1)1又は複数の近傍ノードが送信した、各近傍ノードのデータ発信を表す位相が反映されたタイミング制御信号を受信するタイミング制御信号受信手段と、(2)各近傍ノードのタイミング制御信号の受信タイミングに基づいて、自ノードの位相の状態を変化させ、自ノードのデータ発信タイミングを決定する通信タイミング計算手段と、(3)通信タイミング計算手段により決定された自ノードのデータ発信を表す位相が反映されたタイミング制御信号を送信するタイミング制御信号送信手段と、(4)各近傍ノードとの間でデータ信号を送受信するデータ通信手段と、(5)通信タイミング計算手段により決定された自ノードの位相状態に基づいて、タイミング制御信号及びデータ信号の送信態様を制御する位相状態管理手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
第2の本発明のノードは、第1の本発明の通信制御装置を有することを特徴とする。
【0014】
第3の本発明の通信システムは、第2の本発明のノードを複数有して構成されることを特徴とする。
【0015】
第4の本発明の通信制御方法は、通信システムを構成する複数のノードのそれぞれに搭載される通信制御方法において、(1)タイミング制御信号受信手段が、1又は複数の近傍ノードが送信した、各近傍ノードのデータ発信を表す位相が反映されたタイミング制御信号を受信するタイミング制御信号受信工程と、(2)通信タイミング計算手段が、各近傍ノードのタイミング制御信号の受信タイミングに基づいて、自ノードの位相の状態を変化させ、自ノードのデータ発信タイミングを決定する通信タイミング計算工程と、(3)タイミング制御信号送信手段が、通信タイミング計算手段により決定された自ノードのデータ発信を表す位相が反映されたタイミング制御信号を送信するタイミング制御信号送信工程と、(4)データ通信手段が、各近傍ノードとの間でデータ信号を送受信する通信データ通信工程と、(5)位相状態管理手段が、通信タイミング計算手段により決定された自ノードの位相状態に基づいて、タイミング制御信号及びデータ信号の送信態様を制御させる位相状態管理工程とを有することを特徴とする。
【0016】
第5の本発明の通信制御プログラムは、通信システムを構成する複数のノードのそれぞれに搭載される通信制御プログラムにおいて、コンピュータに、(1)1又は複数の近傍ノードが送信した、各近傍ノードのデータ発信を表す位相が反映されたタイミング制御信号を受信するタイミング制御信号受信手段、(2)各近傍ノードのタイミング制御信号の受信タイミングに基づいて、自ノードの位相の状態を変化させ、自ノードのデータ発信タイミングを決定する通信タイミング計算手段、(3)通信タイミング計算手段により決定された自ノードのデータ発信を表す位相が反映されたタイミング制御信号を送信するタイミング制御信号送信手段、(4)各近傍ノードとの間でデータ信号を送受信するデータ通信手段、(5)通信タイミング計算手段により決定された自ノードの位相状態に基づいて、タイミング制御信号及びデータ信号の送信態様を制御させる位相状態管理手段として機能させる通信制御プログラム。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、近傍ノードとの間の通信タイミングを自律分散的に求める際に、タイミング制御信号のオーバーヘッドを小さくすることができ、低遅延であり、かつ、高いデータ通信効率を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(A)第1の実施形態
以下、本発明の通信制御装置、通信制御方法、通信制御プログラム及びノードの第1の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
第1の実施形態は、例えば、センサネットワーク、アドホック型無線通信ネットワーク、LANシステム等のように、複数の機器を有して構成されるネットワークシステムを構成する各ノードに本発明を適用する場合を説明する。
【0020】
第1の実施形態は、通信タイミング制御の動作が収束状態である場合か否かによって、タイミング制御信号の送受信形態を変化させる点に特徴がある。すなわち、収束されていない状態では、例えば特許文献1〜7に記載の方法で、タイミング制御信号の送受信処理を行なうが、収束状態では、例えば特許文献1〜7に記載の方法とは異なる形態でタイミング制御信号の送受信処理を行なう。
【0021】
(A−1)第1の実施形態の構成
図1は、第1の実施形態のノードの内部構成を示す内部構成図である。図1において、第1の実施形態のノード10は、タイミング制御信号受信部11、通信タイミング計算部12、タイミング制御信号送信部13、状態管理部14、データ通信部15、を有して構成される。
【0022】
タイミング制御信号受信部11は、近傍ノード(例えば、そのノードの発信電波が届く範囲に存在する他のノード)が発信したタイミング制御信号を入力タイミング制御信号として受信するものである。また、タイミング制御信号受信部11は、受信した他ノードのタイミング制御信号を通信タイミング計算部12に与えるものである。
【0023】
通信タイミング計算部12は、タイミング制御信号受信部11から他ノードのタイミング制御信号を受け取り、他ノードのタイミング制御信号に基づいて、当該ノードでの通信タイミングを規定する位相信号を形成し、その位相信号の位相情報を、タイミング制御信号送信部13及び状態管理部14に与えるものである。
【0024】
ここで、当該ノードiの位相信号の時刻tでの位相値をθ(t)とすると、通信タイミング計算部12は、他ノードのタイミング制御信号に基づいて、後述するように、位相信号(θ(t))を非線形振動リズムで変化させる。この位相信号の変化は、近傍のノード同士が逆相(振動の位相が反転位相)又は他の位相になろうとする非線形特性を実現し、その特性を用いて衝突回避を実現させようとしたものである。すなわち、近傍のノード間における出力タイミング制御信号の発信タイミング等が衝突しないように、適当な時間関係(時間差)を形成させようとしている。
【0025】
通信タイミング計算部12の機能の意味合いを図3及び図4を用いて詳述すると以下の通りである。なお、図3及び図4に示す状態変化は、タイミング制御信号送信部13の機能も関係している。
【0026】
図3及び図4は、ある1つのノードに着目したときに、着目ノード(自ノード)と近傍ノード(他ノード)との間に形成される関係、すなわち、それぞれの非線形振動リズム間の位相関係が時間的に変化していく様子を示している。
【0027】
図3は、着目ノードiに対して近傍ノードjが1個存在する場合である。図3において、円上を回転する2つの質点の運動は、着目ノードと近傍ノードに対応する非線形振動リズムを表しており、質点の円上の角度がその時刻での位相信号の値を表している。質点の回転運動を縦軸あるいは横軸に射影した点の運動が非線形振動リズムに対応する。後述する(1.1)式に基づく動作により、2つの質点は相互に逆相になろうとし、仮に、図3(a)に示すように初期状態で2つの質点の位相が近くても、時間経過と共に、図3(b)に示す状態(過渡状態)を経て、図3(c)に示すような2つの質点の位相差がほぼπである定常状態に変化していく。
【0028】
2つの質点は、それぞれ固有角振動数パラメータωを基本的な角速度(自己の動作状態を遷移させる基本速度に相当)とする回転をしている。ここで、ノード間でタイミング制御信号の送受信に基づく相互作用が生じると、これらの質点は、それぞれ角速度を変化(緩急)させ、結果的に、適当な位相関係を維持する定常状態に到達する。この動作は、2つの質点が回転しながら相互に反発しあうことによって、安定な位相関係を形成するものと見ることができる。定常状態では、後述するように、それぞれのノードが所定の位相(例えば0)のときに出力タイミング制御信号を発信するとした場合、互いのノードにおける発信タイミングは、適当な時間関係を形成していることになる。
【0029】
また、図4は、着目ノードiに対して2個の近傍ノードj1、j2が存在する場合を表している。近傍ノードが2個存在する場合においても、上述と同様に、それぞれの質点が回転しながら相互に反発しあうことによって、安定な位相関係(時間的な関係に関する安定性)を形成する。近傍ノード数が3個以上の場合についても同様である。
【0030】
上述の安定な位相関係(定常状態)の形成は、近傍ノード数の変化に対して非常に適応的(柔軟)な性質を持つ。例えば、今、着目ノードに対して近傍ノードが1個存在し、安定な位相関係(定常状態)が形成されているときに、近傍ノードが1個追加されたとする。定常状態は一旦崩壊するが、過渡状態を経た後、近傍ノードが2個の場合における新たな定常状態を再形成する。また、近傍ノードが削除された場合や故障等により機能しなくなった場合においても、同様に適応的な動作をする。
【0031】
通信タイミング計算部12によるタイミング制御信号の詳細な演算処理としては、例えば、特許文献1〜特許文献7等に記載の演算処理を広く適用することができるが、第1の実施形態では、特許文献5に記載の仮想モードモデル計算手段を導入した形態を想定する。
【0032】
すなわち、通信タイミング計算部12は、他ノードjからタイミング制御信号を受信した際、その発信元ノードに対する仮想的な位相モデル(仮想位相モデルと呼ぶ)を自ノード内部に生成する。そして、通信タイミング計算部12は、この仮想位相モデルを用いて、擬似的に他ノードjの位相を算出(仮想位相と呼ぶ)し、自ノードiと他ノードjとの位相差を時間連続的に観測可能とするものである。
【0033】
また、通信タイミング計算部12は、データ通信部15が受信したデータ信号に付加されている情報に基づいて、タイミング制御信号の代わりに送信されたものであるか否かを確認する。そして、当該データ信号がタイミング制御信号の代わりに送信されたものであると判定すると、通信タイミング計算部12は、当該データ信号の受信タイミングに基づいて、上述した通信タイミングの演算処理を行なうものである。
【0034】
状態管理部14は、通信タイミング計算部12から演算結果としての位相情報を受け取り、通信タイミング制御の動作が収束状態であるか否かを判定し、その判定結果に応じた送信制御情報をタイミング制御信号送信部13及びデータ通信部15に与えるものである。これにより、タイミング制御信号及びデータ信号の通信タイミング通信タイミング制御の動作が収束状態であるか否かに応じた送信処理を制御することができる。
【0035】
状態管理部14は、通信タイミング計算部12の演算結果が所定時間変化せずに持続する場合、収束状態であると判定する。なお、この収束状態と判定する時間の長さは、実験的に決定することができる。つまり、状態管理部14は、自ノードの位相状態の変化率や変化速度が、所定時間変化しない状態が持続した場合、収束状態であると判断する。
【0036】
タイミング制御信号送信部13は、通信タイミング計算部12から位相情報を受け取り、この位相情報に基づいて、出力タイミング制御信号を送信するものである。
【0037】
ここで、タイミング制御信号の送信については、各周期毎に、位相信号が所定の位相α(0≦α<2π)になると、タイミング制御信号送信部13は出力タイミング制御信号を送信するものとする。この所定の位相αは、予めシステム全体で統一しておくことが好ましい。以下では、α=0にシステム全体で統一されているとして説明する。例えば、図3の例で言えば、ノードiとノードjとでは、定常状態で相互の位相信号がπだけずれているので、α=0にシステム全体で統一しても、ノードiからの出力タイミング制御信号の送信タイミングと、ノードjからの出力タイミング制御信号の送信タイミングとはπだけずれている。
【0038】
また、状態管理部14から収束状態を示す送信制御情報を受けると、タイミング制御信号送信部13は、N周期(Nは正の整数)毎に1回の割合で、タイミング制御信号を送信するものとする。つまり、非収束状態の場合には、各周期における所定の位相になるとタイミング制御信号を送信するようにし、収束状態の場合には、N周期に1回の割合でタイミング制御信号を送信するようにする。
【0039】
データ通信部15は、観測データ及び又は入力データ信号(両方の場合を含む)を出力データ信号として他ノードに送信するものである。
【0040】
ここで、データ通信部15は、この送信を、定常状態である場合に、後述するタイムスロット(システム等が割り当てた固定的な時間区間ではないが、「タイムスロット」という用語を用いる)で行ない、過渡状態である場合には送信動作を停止している。なお、出力データ信号は、出力タイミング制御信号と同一周波数帯で送信周波数とするものであってもよい。
【0041】
また、データ通信部15は、状態管理部14から収束状態を示す送信制御情報を受けると、以下のように、タイミング制御信号が送信される期間に、タイミング制御信号に代わってデータ信号を送信するようにする。このとき、タイミング制御信号の代わりに送信されたものであることを示す識別情報をデータ信号に付加するものとする。
【0042】
つまり、状態管理部14が収束状態であると判定すると、タイミング制御信号送信部13は、上記のように、タイミング制御信号の送信頻度をN周期に1回とする。そこで、データ通信部15は、タイミング制御信号の送信を行なわないようした、残りの(N−1)回の期間について、タイミング制御信号の代わりにデータ信号を送信するものとする。
【0043】
タイムスロットは、位相信号の位相θ(t)がδ≦θ(t)≦β−δである期間である。タイムスロットの開始点(そのときの位相信号の値をδとする)は、出力タイミング制御信号の送信が終了したタイミングであり、タイムスロットの終了点(そのときの位相信号の値をβ−δとする)は、位相信号の周期毎の最初の他ノードのタイミング制御信号の受信タイミングより多少のオフセット分δだけ前のタイミングとしている。δとδは、当該ノードの近傍の無線空間で、タイミング制御信号(送信元は自ノードの場合、他ノードの場合の双方を含む)と、データ信号(送信元は自ノードの場合、他ノードの場合の双方を含む)とが同時に存在しないことを補償するためのごく短い時間に対応する位相幅である。δ及びδは、例えば、ノードの設置状況下で実験的に決定する。
【0044】
例えば、非収束状態の場合、図3において、ノードiは、位相θが0からδになる前に、タイミング制御信号を送信するが、図3(c)に示すような「定常状態」になると、ノードiは、位相θが0からδになる前の期間及びδ1からβ−δまでの期間内で、データ通信部15はデータ信号を送信するようにする。
【0045】
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、第1の実施形態の各ノード間でタイミング制御信号を授受し、各ノードが自律分散的にデータ信号の通信タイミングを決定して、各ノード間でデータ通信を行なう通信制御方式の動作を、図5を参照して説明する。
【0046】
以下では、図1に示す通信制御システムを備えるノードを空間に多数分散配置させた状況において、近傍ノード間でタイミング制御信号を送受信する方法として、図2(b)の形態を用いることを想定して説明する。なお、以下で説明する動作は、すべてノードがそれぞれ別々に実行するものである。
【0047】
(A−2−1)通信タイミングの相互調整処理(Step1)
まず、図2(b)のように分散配置されたノードは、1ホップ近傍のノード間で、タイミング制御信号を送受信することにより、通信タイミングの相互調整動作を実行する。そして、通信タイミング計算部12が通信タイミングの相互調整動作を実行すると、その演算結果情報を状態管理部14に与えると共に、計算した位相情報を、タイミング制御信号送信部13及びデータ通信部15に与える。
【0048】
ノード間の通信タイミングの相互調整動作は、各ノードの通信タイミング計算部12による演算処理に基づいて、自ノードのタイミング制御信号の送信タイミングを調整することによって実行される。第1の実施形態では、通信タイミング計算部12は、特許文献5に記載の仮想ノードモデル計算手段を導入した形態を想定する。
【0049】
すなわち、自ノードが送信するタイミング制御信号には、1ホップ近傍範囲に存在するすべての他ノードに対する仮想位相を付加する。従って、各ノードは、1ホップ近傍範囲に存在する他ノードからタイミング制御信号を受信し、タイミング制御信号に付加されている仮想位相を取得することにより、間接的に2ホップ近傍範囲の他ノードに対する位相情報を得ることができる。
【0050】
通信タイミング計算部12は、タイミング制御信号の受信タイミングで取得される2ホップ近傍範囲の他ノードに対する位相情報を用いて、当該ノードに対する仮想位相モデルを生成し、以後、受信のたびにその仮想位相の値を調整する。そして、通信タイミング計算部12における演算は、2ホップ近傍範囲のすべての他ノードに対する仮想位相を用いて実行される。
【0051】
以下に、通信タイミング計算部12における演算処理の例を示す。通信タイミング計算部12の演算処理は、次の(1.1)式及び(1.2)式に示す非線形振動子が結合した系をモデル化した数式を用いて行なうことができる。
【数1】

【0052】
ここで、変数tは時間を表し、θ(t)は、時刻tにおける自ノードiの位相を表す。
【0053】
θ(t)は、mod2π(2πで割った余り)の演算を施すことにより、常に、区間0≦θ(t)<2πの値を取るものとする。d/dtは時間tに関する微分演算を表す記号であり、dθ(t)/dtは、位相θ(t)を時間tで微分した状態変数を表す。
【0054】
Δθ^ij(t)は、他ノードjに対する仮想位相θ^ij(t)と、自ノードiの位相θ(t)との位相差を示す。ただし、位相差Δθ^ij(t)は、2πを加算した値にmod2π(2πで割った余り)の演算を施すことにより、便宜的に区間0≦Δθ^ij<2πの値を取るものとする。
【0055】
ωは、固有角振動数パラメータであり、各ノード固有の振動リズムを表す。ここでは、一例として、ωの値をあらかじめ全ノードで同一の値に統一しておくものと仮定する。
【0056】
関数R(Δθ^ij(t))は、位相差Δθ^ij(t)に応じて自ノードの振動リズムを変化させる応答特性を表現する位相応答関数である。位相応答関数R(Δθ^ij(t))は、他ノードjの仮想的な位相θ^ij(t)に対して、自ノードの位相θ(t)を反発する方向に変化(斥力が働く方向に変化)させる非線形特性を有するものである。なお、位相応答関数R(Δθ^ij(t))の具体的な関数形としては、既存のものを適用することができ、例えば、特許文献1〜7に記載のものを適用することができる。
【0057】
位相応答関数R(Δθ^ij(t))を含む項のNは、時刻tにおける仮想位相モデルの総数、Kは結合定数パラメータを表す。ここで、結合定数パラメータKは、位相の時間発展に対するR(Δθ^ij(t))を含む項の寄与度を決定するパラメータであり、その値は実験的に決定する。
【0058】
関数ξ(S(t))は、自ノードiと他ノードjとの相対位相差が小さい場合にストレスを蓄積し、蓄積されたストレス値S(t)に応じてランダムな大きさで位相シフト(位相状態変化)を実行する働きをする項である。ここで、相対位相差とは次のように定義される量である。
【数2】

【0059】
すなわち、関数ξ(S(t))は、蓄積されたストレス値S(t)に対する応答特性を表現する関数である。関数ξ(S(t))の関数形としては、既存のものを適用することができ、例えば特許文献1〜特許文献7に記載のものを広く適用することができる。
【0060】
式(1.1),及び(1.2)で示した演算は、例えば、ルンゲ・クッタ法等の一般的な数値計算法を用いて、ソフトウェアとしてノード上に実装可能である。ルンゲ・クッタ法は、微分方程式を差分化(連続時間変数tを離散化)して得られる差分方程式(漸化式)を用いて状態変数の変化(時間発展)を計算する手法の1つである。また、特許文献2に開示される形態と同様に、ルンゲ・クッタ法よりも簡易な他の差分化方法により得られる差分方程式を用いて状態変数の変化を計算することも可能である。さらに、式(1.1),及び(1.2)と同様の動作をする電子回路を構成すれば、ハードウェアとしてノード上に実装することも可能である。
【0061】
(A−2−2)収束判定処理(Step2)
各ノードでは、通信タイミング計算部12が、(A−2−1)に示すようにして、タイミング制御信号の相互調整処理を行なう。
【0062】
そうすると、状態管理部14は、通信タイミング計算部12の演算結果に基づいて、収束状態(定常状態)に至っているか否かを判定し、その判定結果に基づく送信制御情報を、タイミング制御信号送信部13及びデータ通信部15に与える。
【0063】
ここで、状態管理部14による判定方法としては、例えば、上記(1.1)式の右辺の演算結果が一定期間変化しない状態が持続した場合に、収束状態であると判定する。一定期間の長さは実験的に決定する。上記(1.1)式の右辺の演算結果が一定期間変化しないということは、自ノードiの位相状態の変化率が一定期間変化しないということを意味し、位相状態の変化速度が定常的になっていることを表す。
【0064】
状態管理部14は、所定の判定処理の結果、収束状態であると判定した場合には、次のStep3の処理を行ない、非収束状態であると判定した場合には、Step1の動作を続ける。
【0065】
状態管理部14による収束判定処理は、所定時間毎に持続的に行なう。この収束判定処理を行なう所定時間は、例えば、式(1.1)及び(1.2)を差分化(連続時間変数tを離散化)する際の時間きざみ幅Δtと同一の値に設定するようにしてもよい。
【0066】
さらに、一旦、Step3の処理に進んだ場合でも、その後の収束判定処理の結果、再び非収束状態になったときには、Step1に戻り処理を繰り返す。
【0067】
(A−2−3)タイミング制御信号及びデータ信号の送信処理(Step3)
状態管理部14が、通信タイミング計算部12による演算結果に基づいて収束状態であると判定すると、状態管理部14は、その旨を示す送信制御情報を、タイミング制御信号送信部13及びデータ通信部15に与える。
【0068】
タイミング制御信号送信部13及びデータ通信部15は、収束状態を示す送信制御情報を受け取ると、以下のようにして、タイミング制御信号及びデータ信号を送信する。
【0069】
タイミング制御信号送信部13は、状態管理部14により収束状態であると判定されると、タイミング制御信号の送信をN周期に1回とし、残りの(N−1)回の期間については、データ通信部15がタイミング制御信号の代わりにデータ信号を送信するようにする。
【0070】
このNの値は実験的に決定する。ただし、タイミング制御信号の代わりに送信するデータ信号には、代用を兼ねることを示す識別情報を付加するようにする。
【0071】
ここで、データ信号は、例えば、センサデータ等のノード間における通信目的を与えているデータで構成される信号やパケット等であり、近傍ノードの位相情報のような制御情報を含まない。
【0072】
上述したように、タイミング制御信号及びデータ信号の送信制御に関する処理は、図1において状態管理部12の制御により実行される。状態管理部12では、収束判定処理により送信制御情報を生成して、送信制御情報を、タイミング制御信号送信部13及びデータ通信部15に与える。
【0073】
各ノードが1ホップ近傍範囲内の他ノードからタイミング制御信号を受信した場合、間接的に2ホップ先の他ノードの位相情報を得ることができる。それに対して、タイミング制御信号の代用を兼ねるデータ信号を受信した場合は、2ホップ先の他ノードの位相情報を得ることができない。
【0074】
しかし、この場合においても、送信元ノード(1ホップ近傍の他ノード)の位相情報は得ることができる。その受信タイミングが送信元ノードの位相を表しているからである。
【0075】
従って、タイミング制御信号の代用としてデータ通信を送信する場合に、そのデータ信号に識別情報を付加して送信することにより、タイミング制御信号及びその代用を兼ねるデータ信号を送受信する形態を用いた場合においても、自ノードiの1ホップ近傍範囲内に存在する他ノードjの位相情報は、毎周期得ることができる。一方、2ホップ先の他ノードの位相情報は、N周期に1回の割合で得ることができる。その際、各ノードは以下の動作を実行する。
【0076】
(1)1ホップ近傍範囲内の他ノードからタイミング制御信号を受信した場合、上記Step1と同様に、2ホップ近傍範囲内の他ノードに対する仮想位相の値を調整する。
【0077】
(2)1ホップ近傍範囲内の他ノードからデータ信号を受信した場合、データ信号に付加されている識別情報の有無により、タイミング制御信号の代用であるか否かを識別する。
【0078】
(3)タイミング制御信号の代用である場合は、その受信タイミングに基づいて送信元ノードに対する仮想位相の値を調整する。一方、タイミング制御信号の代用でない場合は、上記のような仮想位相の値の調整は行なわない。
【0079】
(4)上記Step1と同様に、2ホップ近傍範囲内の他ノードに対する仮想位相の値を用いて、通信タイミング計算部における演算を実行する。
【0080】
以上説明したように、収束状態では、タイミング制御信号の送信頻度をN周期に1回の割合に低減することにより、制御信号の送受信に関わるオーバーヘッドを小さくする。さらに、タイミング制御信号の代用を兼ねるデータ信号を用いることにより、1ホップ近傍範囲内における他ノードの位相情報を毎周期得られるようにする。既に収束状態に至っているため、このようにして得られる2ホップ近傍範囲内の他ノードに対する仮想位相の値を用いても、通信タイミング制御は十分な精度を維持することができる。従って、周期内におけるタイミング制御信号の送受信期間の占める割合が減少し、データ信号の通信効率が向上する。特に、周期が比較的小さいときにその効果が大きい。
【0081】
(A−3)第1の実施形態の効果
以上のように、第1の実施形態によれば、複数のノードがタイミング制御信号を送受信することによって、自律分散的に通信タイミングの相互調整を行なうデータ通信方法において、通信タイミング制御の動作が収束状態であるか否かによって、タイミング制御信号、及びデータ信号の送受信形態を変化させる機能を新たに付加することにより、周期内におけるタイミング制御信号の送受信期間の占める割合が減少し、データ信号の通信効率が向上する。特に、周期が比較的小さいときにその効果が大きい。
【0082】
(B)他の実施形態
(B−1)本発明では、ノード間において送受信するタイミング制御信号の実現形態は、特定のタイミングを伝え合うことが可能であれば、特に制約はないことに注意されたい。タイミング制御信号の最も簡単な実現形態の例として、ガウス分布や矩形等の関数形状を有する単一パルスが挙げられる。しかし、タイミング制御信号は必ずしも単一パルスである必要はなく、複数のパルスを用いて一つの意味を成すタイミング制御信号を構成する形態であっても構わない。例えば、特定のビットパターンに対応するパルス列を一つのインパルス信号として扱う形態である。こうした形態は、多くのノイズが存在する環境において単一パルスでは信号識別が困難な場合に有効である。本発明の実施形態で説明したタイミング制御信号の示す意味は、特定のタイミングを示す信号ということを概念的に表すものであり、その実現形態は種々の形態が存在する。
【0083】
(B−2)上記のタイミング制御信号(特定のタイミングを示す信号)にノード識別番号というある種のデータを付加した信号をインパルス信号として適用してもよい。特定のタイミングを示す信号にある種のデータを付加した信号も、その実現形態は、種々の形態が存在することに注意されたい。
【0084】
また、通信タイミング計算部は、種々の方式により位相信号を形成するものを適用することができる。
【0085】
(B−3)第1の実施形態では、空間に分散配置された多数のノードが、相互に無線でデータをやり取りするシステムを想定して説明した。しかし、本発明の利用形態は、無線通信を行なうシステムに限定されない。空間に分散配置された多数のノードが、相互に有線でデータをやり取りするシステムに適用することも可能である。例えば、イーサーネット(登録商標)などのように有線接続されたLANシステムに適用することも可能である。また、同様に有線接続されたセンサやアクチュエータ、あるいはサーバなど、異なる種類のノードが混在するネットワークに適用することも可能である。無論、有線接続されたノードと、無線接続されたノードが混在するネットワークに適用することも可能である。
【0086】
さらに、本発明は、インターネット上で、各ルータが相互に異なるタイミングでルーティングテーブルを交換するための通信プロトコルとして利用することができる。ここで、ルータとは、ネットワーク上を流れる情報の行き先を振り分ける(通信経路選択)機能を有する中継機器のことである。また、ルーティングテーブルとは、情報の行き先を振り分ける際に参照される通信経路選択規則である。効率的な通信を実現するためには、ネットワーク上における変更や局所的なトラフィックの変化等に応じて、逐次、ルーティングテーブルを更新する必要がある。このため、ネットワーク上に存在する多数のルータは、相互に一定の時間間隔でルーティングテーブルの交換を行っている。しかし、文献「Floyd,S.,and Jacobson,V.,“The Synchronization of Periodic Routing Messages”, IEEE/ACM Transactions on Networking, Vol.2 No.2, pp.122-136, April 1994.」に開示されるように、各ルータがそれぞれ独立にルーティングテーブルを発信しているにもかかわらず、ルータ相互の発信が次第に同期(衝突)する現象が発生することが分かっている。文献では、ルーティングテーブルの交換に用いられる通信プロトコルに対して、各ノードの処理周期にランダムな変動性を与えることによって、この問題に対処する方法を提案し、一定の効果が得られることを示している。しかし、上記文献に開示される方法は、基本的にランダム性のみに依存した方法であるため、その効果は十分ではない。
【0087】
それに対して、本発明を上記の問題に適用すると、近傍のルータ間において、ルーティングテーブルを発信するタイムスロットを自律的に相互調整することが可能である。従って、各ルータの発信は、相互に異なるタイミングとなり、上記文献に開示される方法に比べて高い効果を得ることができる。
【0088】
以上、説明したように、本発明は無線系、有線系を問わず、あらゆるネットワークに存在する発信データの衝突や同期の問題に適用可能であり、適応性と安定性を兼ね備えた効率的なデータ通信を実現する通信プロトコルとして利用することが可能である。
【0089】
(B−4)通信タイミング情報(実施形態での位相信号)の取得制御についてそのタイミング情報を通信にどのような利用するかは問われない。例えば、各ノードからのデータ信号の送信周波数が異なる場合であれば、タイムスロットを設定することなく通信を行なうようにしても良く、この場合であっても、データ通信の始期を通信タイミング情報から定めるようにすれば良い。
【0090】
(B−5)タイミング制御信号及びデータ信号の送受信態様を変化させる変形実施形態として、収束状態を持続する時間に応じて、タイミング制御信号を送信する回数を変化させるようにしてもよい。
【0091】
例えば、収束状態の持続時間がt1であるときには、N周期に1回の割合でタイミング制御信号を送信するようにし、収束状態の持続時間がt2(t2≧t1)のときには、さらにタイミング制御信号の送信機会が減るように、N+m(mは正の整数)周期に1回の割合でタイミング制御信号を送信するようにする。
【0092】
このように、収束状態の持続時間に応じて、さらにタイミング制御信号及びデータ信号の送受信態様を変化させることにより、データ信号の通信効率をさらに向上させることができる。
【0093】
(B−6)第1の実施形態で説明したノードが実現する機能は、ソフトウェアとして実現することができるものであるが、同様の動作を行なう回路構成をとることができれば、ハードウェアとしてノードが実装するものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】第1の実施形態のノードの内部構成を示す構成図である。
【図2】分散配置された複数のノードで構成されるネットワークの構成と、タイミング制御信号の通信方法を説明する説明図である。
【図3】第1の実施形態の通信システムでのノード間の同調を説明する説明図である(その1)。
【図4】第1の実施形態の通信システムでのノード間の同調を説明する説明図である(その2)。
【図5】第1の実施形態の各ノードにおける通信タイミング制御処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0095】
10…ノード、11…タイミング制御信号受信部、12…通信タイミング計算部、13…タイミング制御信号送信部、14…状態管理部、15…データ通信部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信システムを構成する複数のノードのそれぞれに搭載される通信制御装置において、
1又は複数の近傍ノードが送信した、上記各近傍ノードのデータ発信を表す位相が反映されたタイミング制御信号を受信するタイミング制御信号受信手段と、
上記各近傍ノードのタイミング制御信号の受信タイミングに基づいて、自ノードの位相の状態を変化させ、自ノードのデータ発信タイミングを決定する通信タイミング計算手段と、
上記通信タイミング計算手段により決定された自ノードのデータ発信を表す位相が反映されたタイミング制御信号を送信するタイミング制御信号送信手段と、
上記各近傍ノードとの間でデータ信号を送受信するデータ通信手段と、
上記通信タイミング計算手段により決定された上記自ノードの位相状態に基づいて、上記タイミング制御信号及び上記データ信号の送信態様を制御する位相状態管理手段と
を備えることを特徴とする通信制御装置。
【請求項2】
上記状態管理手段は、上記通信タイミング計算手段により決定された上記自ノードの位相状態が収束状態であると判定した場合に、上記タイミング制御信号の送信期間を減らし、その代わりとして上記データ信号を送信させるよう制御することを特徴とする請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項3】
上記データ通信手段は、上記状態管理手段の制御の下、上記タイミング制御信号の代わりである旨を示す情報を上記データ信号に付加して送信することを特徴とする請求項2に記載の通信制御装置。
【請求項4】
上記通信タイミング計算手段が、受信したデータ信号に付加されている上記タイミング制御信号の代わりである旨を示す情報を確認すると、当該受信したデータ信号の受信タイミングに基づいて、自ノードのデータ発信タイミングを決定することを特徴とする請求項3に記載の通信制御装置。
【請求項5】
上記通信タイミング計算手段が、上記各近傍ノードからの、上記タイミング制御信号及び上記タイミング制御信号の代わりに送信された上記データ信号に基づいて、上記各近傍ノードに対する仮想的な位相状態を算出するものであることを特徴とする請求項4に記載の通信制御装置。
【請求項6】
上記位相状態管理手段は、自ノードの位相状態の変化率又は変化速度が、所定時間変化しない状態を持続した場合に、自ノードの位相状態が収束状態であると判定することを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の通信制御装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の通信制御装置を有することを特徴とするノード。
【請求項8】
請求項7に記載のノードを複数有して構成されることを特徴とする通信システム。
【請求項9】
通信システムを構成する複数のノードのそれぞれに搭載される通信制御方法において、
タイミング制御信号受信手段が、1又は複数の近傍ノードが送信した、上記各近傍ノードのデータ発信を表す位相が反映されたタイミング制御信号を受信するタイミング制御信号受信工程と、
通信タイミング計算手段が、上記各近傍ノードのタイミング制御信号の受信タイミングに基づいて、自ノードの位相の状態を変化させ、自ノードのデータ発信タイミングを決定する通信タイミング計算工程と、
タイミング制御信号送信手段が、上記通信タイミング計算手段により決定された自ノードのデータ発信を表す位相が反映されたタイミング制御信号を送信するタイミング制御信号送信工程と、
データ通信手段が、上記各近傍ノードとの間でデータ信号を送受信する通信データ通信工程と、
位相状態管理手段が、上記通信タイミング計算手段により決定された上記自ノードの位相状態に基づいて、上記タイミング制御信号及び上記データ信号の送信態様を制御させる位相状態管理工程と
を有することを特徴とする通信制御方法。
【請求項10】
通信システムを構成する複数のノードのそれぞれに搭載される通信制御プログラムにおいて、
コンピュータに、
1又は複数の近傍ノードが送信した、上記各近傍ノードのデータ発信を表す位相が反映されたタイミング制御信号を受信するタイミング制御信号受信手段、
上記各近傍ノードのタイミング制御信号の受信タイミングに基づいて、自ノードの位相の状態を変化させ、自ノードのデータ発信タイミングを決定する通信タイミング計算手段、
上記通信タイミング計算手段により決定された自ノードのデータ発信を表す位相が反映されたタイミング制御信号を送信するタイミング制御信号送信手段、
上記各近傍ノードとの間でデータ信号を送受信するデータ通信手段、
上記通信タイミング計算手段により決定された上記自ノードの位相状態に基づいて、上記タイミング制御信号及び上記データ信号の送信態様を制御させる位相状態管理手段
として機能させる通信制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−312128(P2008−312128A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−160231(P2007−160231)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成18年度総務省戦略的情報通信研究開発推進制度「大規模ユビキタスセンサネットワークを自己組織化する相互適応通信制御方式の研究開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】