説明

通信制御装置

【課題】本発明は、予め個別にチャネルが割り付けられた複数の無線局の内、選択された特定の無線局と対向して無線伝送を行う無線局において、その特定の無線局宛に無線伝送されるべき情報を生成し、あるいはこの特定の無線局から無線伝送された情報を識別する通信制御装置に関し、従来例に比べて構成が大幅に変更されることなく安価に、既に開始されている通信に多様な無線局が柔軟に参加できることを目的とする。
【解決手段】予めチャネルが個別に割り付けられた複数の無線局の内、指定された特定の無線局宛に無線伝送されるべき伝送情報を生成する通信制御装置であって、前記特定の無線局に予め割り付けられた特定のチャネルを識別するチャネル識別手段と、前記特定のチャネルを介して前記特定の無線局に無線伝送されるべき伝送情報に、前記特定の無線局の識別子を付加する識別子付加手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め個別にチャネルが割り付けられた複数の無線局の内、選択された特定の無線局と対向して無線伝送を行う無線局において、その特定の無線局宛に無線伝送されるべき情報を生成し、あるいはこの特定の無線局から無線伝送された情報を識別する通信制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
広範な地域に配置された複数のサイトの間の無線通信を実現するシステムでは、例えば、これらのサイトの内、主要なサイトに設置された無線局(以下、「親局」という。)と、その他のサイトにそれぞれ設置された複数の無線局(以下、「子局」という。)との間における単信方式の無線通信がHF(High Frequency) 帯で行われる。
【0003】
図5は、地理的に隔たった複数の無線局から構成される通信系の構成例を示す図である。
図において、親局50との間における無線伝送が可能な地域であるゾーン60内には、複数の子局70-1〜70-nが位置する。なお、ゾーン60は、上記複数の子局70-1〜70-nの内、親局50の見通し距離外に位置する子局のサイトについては、上記HF帯における電離層伝搬により形成される。
【0004】
親局50は、以下の要素から構成される。
(1) 下りの伝送情報(音声の瞬時値の列等を示す。)が入力される変調部51
(2) 変調部51の出力に縦続接続された周波数変換部52、電力増幅部53および整合部54
(3) 接合部54のアンテナ端子に給電点が接続されたアンテナ55
【0005】
(4) 接合部54の出力に縦続接続された増幅部56および周波数変換部57
(5) 周波数変換部57の後段に配置され、復調信号を出力する復調部58
(4) 上記変調部51、周波数変換部52、電力増幅部53、整合部54、増幅部56、周波数変換部57および復調部58の制御端子にそれぞれ接続された入出力ポートに併せて、図示されない操作部の出力に接続された入力ポートを有するプロセッサ59
【0006】
また、子局70-1は、以下の要素から構成される。
(1) アンテナ71-1
(2) アンテナ71-1の給電点に接続された整合部72-1
(3) 整合部72-1の出力に縦続接続された増幅部73-1および周波数変換部74-1
【0007】
(4) 周波数変換部74-1の後段に配置され、かつ復調信号を出力する復調部75-1
(5) 上りの伝送情報(音声の瞬時値の列等を示す。)が入力される変調部76-1
(6) 変調部76-1の出力と整合部72-1の入力との間に縦続接続された周波数変換部77-1および電力増幅部78-1
【0008】
(7) 上記整合部72-1、増幅部73-1、周波数変換部74-1、復調部75-1、変調部76-1、周波数変換部77-1および電力増幅部78-1の制御端子に接続された入出力ポートに併せて、図示されない操作部の出力に接続された入力ポートを有するプロセッサ79-1
なお、子局70-2〜70-nの構成については、子局70-1の構成と同じであるので、ここではその説明および図示を省略する。
【0009】
また、以下では、子局70-1〜70-nに共通の事項については、添え番号「1」〜「n」の何れにも該当し得ることを意味する添え文字「c」を符号に付加することによって、記述する。
このような構成の通信系では、親局50および子局70-1〜70-nは、それぞれ地理的に大きく隔たったサイトにそれぞれ位置する。
【0010】
これらの子局70-1〜70-nは、何れも、送信端と受信端との双方または何れか一方として、上記ゾーン60を介して親局50のみと単信方式により通信を行い得る。
【0011】
親局50に備えられたプロセッサ59の主記憶の所定の領域には、図6に示すように、子局70-1〜70-nのそれぞれとの間で上記単信方式による通信に最適(あるいは好適)な無線周波数が予め登録された周波数テーブル59Tが配置される。
なお、このような周波数テーブル59Tに登録される無線周波数は、所定の頻度(周期)で以下の何れかに維持される。
【0012】
(1) ポーリング方式またはコンテンション方式に基づいて子局70-1〜70-nが個別に行う実測の下で更新され、これらの子局70-1〜70-nのそれぞれに関して、親局50との間における無線伝送の伝送品質が最大である(あるいは所定の閾値thを超える)無線周波数
(2) 上記実測を模擬する演算の下で得られる無線周波数
【0013】
親局50では、プロセッサ59は、このようにして周波数テーブル59Tが更新される度に、以下の処理を行う。
(1) 主要な通信相手として確保されるべき子局の全て(何れも子局70-1〜70-nの何れかに該当する。)に適した無線周波数の内、伝送品質が最大である(あるいは所定の閾値THを超える)特定の周波数fsを識別する。
(2) 周波数テーブル59Tに登録された個々の周波数のチャネルを介して、上記特定の周波数fsを示す伝送情報で変調された送信波を順次送信することにより、子局70-1〜70-nの全てにその特定の周波数fsを通知する。
【0014】
子局70-cでは、プロセッサ79-cは、このようにして通知された特定の周波数fsを識別し、その特定の周波数fsを周波数変換部74-cに与える。
【0015】
なお、既述の通りに、周波数テーブル59Tに対して最適(好適)な無線周波数が登録され、かつ子局70-1〜70-nに上記特定の周波数fsが通知される過程における親局50および子局70-cの各部の連係については、親局50では、下りの伝送情報の生成と上りの伝送情報の識別とがプロセッサ59によって行われ、かつ子局70-cでは、上りの伝送情報の生成と下りの伝送情報の識別とがプロセッサ79-cによって行われる点を除いて、後述する通りであるので、ここでは、その説明を省略する。
親局50および子局70-cは、以下の通りに連係することにより、両者の間に単信方式の無線伝送路を形成する。

【0016】
〔親局50が送信端となる場合〕
親局50では、プロセッサ59は、操作者が(操作部を介して)通信相手として指示する子局(70-1〜70-nの何れか1つ)70-kの識別子kすると、上記特定の周波数fsを周波数変換部52に与え、かつ変調部51、電力増幅部53および整合部54を起動する。
【0017】
変調部51は、既述の下りの伝送情報で変調されたベースバンド信号を生成する。周波数変換部52は、そのベースバンド信号を周波数変換することにより、搬送波周波数が上記特定の周波数fsに等しい送信波を生成する。電力増幅部53および整合部54は、アンテナ55を介してその送信波を所定のレベルで送信する。
なお、このような送信波が生成される過程では、上記変調部51、電力増幅部53および整合部54は、プロセッサ59の配下で作動する。
【0018】
一方、子局70-kでは、親局50からゾーン60を介してアンテナ71-kに到来し、かつ搬送波周波数がfsである到来波は、整合部72-kを介して増幅部73-kによって増幅され、さらに、周波数変換部74-kが行う周波数変換の下でベースバンド信号に変換される。復調部75-kは、このようなベースバンド信号を復調することにより、既述の下りの伝送情報(音声等を示す。)を示す復調信号を生成する。
なお、このような復調信号が生成される過程では、上記整合部72-k、増幅部73-kおよび復調部75-kは、プロセッサ79-kの配下で作動する。
【0019】
したがって、親局50から所望の子局70-kに至る区間には、その子局70-kに予め通知され、かつ最適(好適)である特定の周波数fsのチャネルを介して下りの伝送情報の無線伝送路が形成される。
【0020】
〔子局70-cが送信端となる場合〕
子局70-cでは、プロセッサ79-cは、操作者が親局に対する上り伝送情報の送信を要求すると、変調部76-c、電力増幅部78-cおよび整合部72-cを起動する。
【0021】
変調部76-cは、既述の上りの伝送情報で変調されたベースバンド信号を生成する。周波数変換部77-cは、そのベースバンド信号を周波数変換することにより、搬送波周波数が上記特定の周波数fsに等しい送信波を生成する。電力増幅部78-cおよび整合部72-cは、アンテナ71-cを介してその送信波を所定のレベルで送信する。
なお、このような送信波が生成される過程では、上記変調部76-c、電力増幅部78-cおよび整合部72-cは、プロセッサ79-cの配下で作動する。
【0022】
一方、親局50では、 親局50からゾーン60を介してアンテナ55に到来し、かつ搬送波周波数がfsである到来波は、整合部54および増幅部56によって増幅され、さらに、周波数変換部57が行う周波数変換の下でベースバンド信号に変換される。復調部58は、このようなベースバンド信号を復調することにより既述の下りの伝送情報(音声等を示す。)を示す復調信号を生成する。
なお、このような復調信号が生成される過程では、上記整合部54、増幅部56および復調部58は、プロセッサ59の配下で作動する。
【0023】
したがって、子局70-cから親局50に至る区間には、搬送波周波数が既述の特定の周波数fsに等しいチャネルを介して上りの伝送情報の無線伝送路が形成される。
なお、本発明に関連した先行技術には、以下に列記する特許文献1ないし特許文献4がある。
【0024】
(1) 「第1無線局と第2無線局との間で無線によるデータの送受信を行なう無線通信装置において、前記第1無線局と前記第2無線局は、複数の無線チャネルを切替え可能な送受信部と、前記送受信部に対し、第1の無線チャネルを介して該第1の無線チャネルとは別の第2の無線チャネルの情報を含む前記データの送受信を行い、前記第2の無線チャネルへと無線チャネルを切り替える通信制御部とを有する」ことによって、「複数のコントローラ、複数の操作端末が混在する環境にも適用でき、短時間かつ容易に通信を確立できる」点に特徴がある無線通信装置およびその通信制御方法…特許文献1
【0025】
(2) 「使用を許可された複数の運用周波数をもつ無線局間の運用周波数選択方式において、送信無線局および受信無線局それぞれに、上記運用周波数のスキャン切替を行う周波数切替手段と、誤り訂正符号付きダミーコードと送信周波数切替コードとを送信するコード送信手段とを設け、更に、受信無線局に、上記誤り訂正符号付きダミーコードを受信し、誤りがどの程度存在しているかを記録する記録手段と、上記記録手段に記録された運用周波数のうち、一番誤りの少ないものを最適運用周波数として判定する判定手段とを設ける」ことによって、「1対の送受信機により、最適運用周波数による送受信が可能となる」点に特徴がある運用周波数選択方式…特許文献2
【0026】
(3) 「入力信号を整流して振幅信号に変換する整流手段と、該整流手段からの振幅信号を個別に処理して、振幅の変化量と閾値とを各々求める特性の異なる2種類のフィルタ手段と、各フィルタ手段からの出力を比較して、振幅の変化量が閾値を超えた場合に、該入力信号中に音声が含まれている可能性があると判断して音声検知信号を出力する比較手段と、該比較手段から音声検知信号が出力された場合に、所定の時間、制御信号を出力するタイマー手段とを備える」ことによって、「環境に適応した音声検出を行って、音声処理装置の消費電力を低減することができる」点に特徴がある音声検出制御装置…特許文献3
【0027】
(4) 「送信機と、受信機と、この受信機の受信信号より計測した運用周波数のCN比の値を貯える計測CN比メモリと、必要パラメータより計算によって求めた運用周波数のCN比の値を貯える計算CN比メモリと、これら両CN比メモリに貯えられたCN比の値から総合的な運用周波数順位を演算するコンピユータと、前記運用周波数順位のテーブルを貯えるランクテーブルメモリと、このテーブルメモリの貯えた運用周波数順位から最適運用周波数を決定する判定回路と、前記送受信機の周波数設定及びCN比の計測を行う制御回路と、この制御回路の設定した周波数のCN比に応ずるデータ伝送速度を選択して局間リンクを取ると共に送受信時に変調あるいは復調を行うモデムとを備える」ことによって、「状況に合つた最適運用周波数を確実に選択できる」点に特徴がある自動周波数選択装置…特許文献4
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】特開2005−167667号公報
【特許文献2】特開平10−294685号公報
【特許文献3】特開2002−156997号公報
【特許文献4】特公平5−14452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
ところで、上述した従来例では、子局70-1〜70-nが親局50との通信に用いることができる無線周波数は、既述の特定の周波数fsのみに限定されていた。
したがって、子局70-1〜70-nの内、特定の周波数fsのチャネルを介して単信方式による通信を親局50行っている子局以外の子局は、上記特定の周波数fsが親局50との通信に用いられるべき無線周波数として相応しくなく、あるいはその特定の周波数fsによる送信や受信ができない場合には、既に行われている親局50との通信に参加することができなかった。
【0030】
一般に、このような特定の周波数fsに代わって親局50との通信に用いることが可能な無線周波数は、例えば、公知の自動回線接続機能(ALE:Automatic Link Establishment)を用いることによって設定することが可能である。
しかし、このような自動回線接続機能によって設定された無線周波数は、一般に、上記通信のために固定され、他の無線周波数と併用されることがなかった。
したがって、従来例では、既に親局50と通信している子局以外の子局によるその通信への参加は、容易には実現されなかった。
【0031】
なお、上記通信への参加は、例えば、親局50との通信に既に参加している子局が異なる無線チャネル(周波数)への中継によって実現され得る。
しかし、このような中継は、中継が行われるべき無線チャネル(周波数)の組み合わせが多様であり、しかも、子局70-cの構成が複雑化してコスト高となるために、実際には適用され難かった。
【0032】
本発明は、従来例に比べて構成が大幅に変更されることなく安価に、既に開始されている通信に多様な無線局が柔軟に参加できる通信制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
請求項1に記載の発明では、予めチャネルが個別に割り付けられた複数の無線局の内、指定された特定の無線局宛に無線伝送されるべき伝送情報を生成する通信制御装置において、チャネル識別手段は、前記特定の無線局に予め割り付けられた特定のチャネルを識別する。識別子付加手段は、前記特定のチャネルを介して前記特定の無線局に無線伝送されるべき伝送情報に、前記特定の無線局の識別子を付加する。
【0034】
すなわち、上記複数の無線局の何れも、予め割り付けられたチャネルを介して所望の伝送情報が該当する特定の無線局の識別子と共に無線伝送される。
【0035】
請求項2に記載の発明では、予めチャネルが個別に割り付けられた複数の無線局の内、特定の無線局から無線伝送された伝送情報を識別する通信制御装置において、到来波監視手段は、前記複数の無線局に予め割り付けられた個々のチャネルをスキャンし、前記個々のチャネルの何れかを介して到来する到来波を監視する。伝送情報識別手段は、前記個々のチャネルを介して到来した到来波に、その到来波の送信元に該当する無線局に付与された識別子と共に含まれる伝送情報を識別する。
【0036】
すなわち、上記複数の無線局の何れも、予め割り付けられたチャネルを介して所望の伝送情報を自局の識別子と共に無線伝送することができる。
【0037】
請求項3に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載の通信制御装置において、
前記複数の無線局と連係することにより、前記複数の無線局に予め割り付けられるチャネルを設定しあるいは更新するチャネル維持手段を備えた
【0038】
すなわち、複数の無線局には、これらの複数の無線局が本発明に係る通信制御装置を備える無線局の配下で連係することにより、チャネルが適宜割り付けられ、かつ更新される。
【0039】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の通信制御装置において、前記複数の無線局には、前記通信制御装置が備えられた無線局との間における無線伝送の伝送品質が最良でありまたは所定の閾値を上回るチャネルが予め個別に割り付けられる。
【0040】
すなわち、複数の無線局に予め個別に割り付けられるチャネルは、本発明に係る通信制御装置が備えられた無線局との間における無線伝送の伝送品質が重視されて選定される。
【0041】
請求項5に記載の発明では、請求項4に記載の通信制御装置において、前記複数の無線局と、前記通信制御装置が備えられた無線局との間における無線伝送は単信方式で行われ、前記複数の無線局の全てまたは一部には、同じチャネルが割り付けられる。
【0042】
すなわち、本発明に係る通信制御装置が備えられた無線局と、上記複数の無線局との間では、これらの複数の無線局の数が多い場合であっても、単信方式の下で共用可能な少ないチャネルを介して無線伝送が可能となる。
【発明の効果】
【0043】
本発明では、複数の無線局は、何れも、本発明に係る通信制御装置が備えられた送信端に対向する受信端であった他の無線局に代わる受信端として柔軟に機能することができる。
また、本発明では、複数の無線局は、何れも、本発明に係る通信制御装置が備えられた受信端に対向する送信端であった他の無線局に代わる送信端として柔軟に機能することが可能となる。
【0044】
さらに、本発明では、複数の無線局に予め割り付けられるチャネルは、これらの無線局に個別に適用された基準の下で定まる。
また、本発明に係る通信制御装置が備えられた無線局と既述の複数の無線局との間における無線伝送路は、実体的な特性や物理的な経路が多様にかつ広範に異なる場合であっても、伝送品質に大きな格差を伴うことなく形成される。
【0045】
さらに、有限であるチャネルや無線周波数の制約の下で、所望の数の無線局を送信端または受信端とする無線伝送が安価に実現される。
したがって、本発明が適用された無線通信系では、複数の無線局の何れも、構成が基本的に大幅に変更されるにもかかわらず、本発明に係る通信制御装置が備えられた無線局と先行して通信を行っていた他の無線局と共にあるいは代わって、その通信に安価に参加することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態を示す図である。
【図2】本実施形態において親局で行われる処理の手順を示すフローチャートである。
【図3】本実施形態の動作を説明する図である。
【図4】本実施形態における伝送情報の内容および形式を示す図である。
【図5】地理的に隔たった複数の無線局から構成される通信系の構成例を示す図である。
【図6】周波数テーブルの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示す図である。
図において、図5に示す従来例と構成および機能が同じものについては、同じ符号を付与し、ここではその説明を省略する。
【0048】
本実施形態と図5に示す従来例との構成の相違点は、図1に示すように、親局10が親局50に代えて備えられ、かつ子局70A-1〜70A-nが子局70-1〜70-nに代えて備えられた点にある。
なお、以下では、子局70A-1〜70A-nに共通の事項については、添え番号「1」〜「n」の何れにも該当し得ることを意味する添え文字「c」を付与して記述する。
【0049】
親局10の構成は、既述のプロセッサ59に代わってプロセッサ11が備えられ、そのプロセッサ11の特定の入力ポートと出力ポートとがそれぞれ復調部58の出力と変調部51の対応する入力とに接続された点で、図5に示す親局50の構成と異なる。
子局70A-cの構成は、既述のプロセッサ79-cに代えてプロセッサ79A-cが備えられた点で、図5に示す子局70-cの構成と異なる。
【0050】
図2は、本実施形態において親局で行われる処理の手順を示すフローチャートである。
図3は、本実施形態の動作を説明する図である。
以下、図1、図2、図3および図6を参照して、本実施形態の動作を説明する。
【0051】
本発明の特徴は、本実施形態では、以下の点にある。
(1) 周波数テーブル59Tが更新されても、既述の特定の周波数fsを識別して子局70A-1〜70A-n宛に通知する処理は行わない。
【0052】
(2) 周波数テーブル59Tが更新される(図3(1))と、子局70A-1〜70A-nに対応してこの周波数テーブル59Tに個別に登録されている無線周波数fk(k=1〜n)をこれらの子局70A-1〜70A-n宛にそれぞれ通知する(図2ステップS1、図3(2))。なお、このような無線周波数fkは、図4に示すように、該当する子局に予め付与されたユニークワードUWと共に、伝送情報としてパックされたフレームとして子局70A-1〜70A-n宛に通知される。
【0053】
(3) 親局10と子局70A-cとの間に単信方式の無線伝送路が形成される過程では、その親局10の各部がプロセッサ11の配下で後述する通信制御を行う。
なお、本実施形態において行われる通信制御の前提は、以下の点で図5に示す従来例と同様である。
【0054】
(1) 親局10および子局70A-1〜70A-nは地理的に大きく隔たったサイトにそれぞれ設置され、かつ上記ゾーン60は、HF帯で形成される。
(2) 子局70A-1〜70A-nは、何れも、送信端と受信端との双方または何れか一方として、上記ゾーン60を介して親局10のみと単信方式により通信を行い得る。
【0055】
(3) 親局10に備えられたプロセッサ11の主記憶の所定の領域には、図6に示すように、子局70A-1〜70A-nのそれぞれとの間における単信方式による通信に最適(あるいは好適)な無線周波数が予め登録された周波数テーブル59Tが予め配置される。
【0056】
〔親局10が送信端となる場合における通信制御〕
親局10では、プロセッサ11は、操作者が(操作部を介して)通信相手として指示する子局(70A-1〜70A-nの何れか1つ)70A-kの識別子kを識別する(図3(3))と、その識別子kに対応して周波数テーブル59Tに登録されている無線周波数fkを特定し(図2ステップS2)、その無線周波数fkを周波数変換部52に与える(図2ステップS3)と共に、変調部51、電力増幅部53および整合部54を起動する(図2ステップS4、図3(4))。
【0057】
変調部51は、図4に示すように、下りの伝送情報と共に既述のユニークワードUWがパックされてなるフレームで変調されたベースバンド信号を生成する。周波数変換部52は、そのベースバンド信号を周波数変換することにより、搬送波周波数が上記周波数fkに等しい送信波を生成する。電力増幅部53および整合部54は、アンテナ55を介してその送信波を所定のレベルで送信する(図3(5))。
【0058】
一方、子局70A-kでは、プロセッサ79-kは、既述の通りに予め割り付けられた無線周波数fkを周波数変換部74-kに与える。
親局10からゾーン60を介してアンテナ71-kに到来し、かつ無線周波数がfkである到来波は、整合部72-kおよび増幅部73-kによって増幅され、さらに、周波数変換部74-kが行う周波数変換の下でベースバンド信号に変換される。復調部75-kは、このようなベースバンド信号を復調することにより既述の下りの伝送情報(音声等を示す。)を示す復調信号を生成する。
【0059】
したがって、親局10から所望の子局70A-kに至る区間には、その子局70A-kが多様に変化しても、該当する子局70A-kに予め割り付けられた無線周波数fkのチャネルを介して単信方式の無線伝送路が形成される。
【0060】
〔子局70A-cが送信端となる場合における通信制御〕
子局70A-cでは、プロセッサ79A-cは、操作者が親局に対する上り伝送情報の送信を要求する(図3(6))と、既述の通りに自局に予め割り付けられた無線周波数fkを周波数変換部77-cに与え、かつ変調部76-c、電力増幅部78-cおよび整合部72-cを起動する。
【0061】
変調部76-cは、上りの伝送情報と共に既述のユニークワードUWがパックされてなるフレームで変調されたベースバンド信号を生成する。周波数変換部77-cは、そのベースバンド信号を周波数変換することにより、搬送波周波数が上記周波数fkに等しい送信波を生成する。電力増幅部78-cおよび整合部72-cは、アンテナ71-cを介してその送信波を所定のレベルで送信する(図3(7))。
【0062】
一方、親局10では、プロセッサ11は、子局70A-1〜70A-nの何れとも通信を行っていない状態では、周波数テーブル59Tに登録された共通の無線周波数Fi毎に、所定の周期(頻度)でサイクリックに以下の「スキャン処理」を行う(図8(8))。
(1) 該当する無線周波数Fiが割り付けられた子局の組み合わせと、この組み合わせに含まれる子局のユニークワードの列とを識別する。
【0063】
(2) 周波数変換部57に上記無線周波数Fiを指示し、その周波数変換器57が行う周波数変換(該当する子局からアンテナ55に到来し、かつ増幅部56を介して与えられる受信波に施される。)の下でベースバンド信号が所定のレベルで得られるか否かの判別を行う(図2ステップS5)。
【0064】
(3) このようなベースバンド信号が生成されていることを識別した場合には、そのベースバンド信号が復調部58によって復調されることによって得られる上りの伝送情報を取得する(図2ステップS6)。
【0065】
(4) この上りの伝送情報で示されるフレーム(以下、「上りフレーム」という。)のフィールドの内、図4に示すようにユニークワードUWが配置されるべきフィールドに、既述の子局のユニークワードの列に含まれる何れかのユニークワードuwiが含まれるか否かを判別する(図2ステップS7)。
【0066】
(5) ユニークワードuwiが「上りフレーム」に含まれる場合には、このユニークワードuwiで示される子局を識別し、その「上りフレーム」に含まれる「伝送情報」フィールドの内容を抽出し続ける(図2ステップS8)。
【0067】
(6) このようにして「伝送情報」を抽出可能な受信波(子局70A-cから到来し、かつ搬送波周波数がFiである。)が途絶える(図3(9))と、周波数テーブル59Tに登録された後続する無線周波数Fiのそれぞれにかかわる「スキャン処理」を続行する(図3(10))。
【0068】
したがって、伝送速度が低いHF帯において、一般的な移動通信システムで行われているような複雑であって高度なチャネル制御が行われることなく、子局70A-1〜70A-nの何れから親局10に至る区間にも、これらの子局70A-1〜70A-nに予め割り付けられた無線周波数fkのチャネルを介して単信方式の無線伝送路が形成される。
【0069】
このように、本実施形態によれば、親局10との通信に当初参加していなかった何れの子局も、予め個別に割り付けられた好適な無線周波数fkのチャネルを介して親局10との通信に柔軟に参加することが可能となる。
【0070】
なお、本実施形態では、図4に示すフレームの長さは如何なるものであってもよく、例えば、「伝送情報」フィールドには、子局70A-cが送信し続ける期間の全長に亘る不定長の符号の列(音声信号等を示す)が配置されてもよく、あるいはこのような音声信号の列が分割されて配置された「伝送情報」フィールドに個別にユニークワードUWが付加されてなる複数のフレームの列として上り伝送情報が親局10宛に送信されてもよい。
【0071】
また、このようなフレームに配置されるユニークワードUWは、必ずしも一定長のフィールドに配置されなくてもよく、例えば、時系列の順に直列に送信される複数のフレームの所定のフィールドに分割されて配置され、あるいは1つまたは(時系列の順に送信される)複数のフレームに重複して配置されてもよい。
【0072】
さらに、本実施形態では、以下の事項は、如何なるものであってもよい。
(1) 親局10および子局70A-1〜70A-nの地理的な位置
(2) 子局70A-1〜70A-nの台数n
(3) 親局10および子局70A-1〜70A-nの間に無線伝送路が形成されるべき周波数帯
【0073】
(4) その周波数帯において個々の無線伝送路(チャネル)が形成される周波数の配置
(5) これらの無線伝送路に適用される変復調方式
(6) これらの無線伝送路の形成を実現する多元接続方式(圧縮符号化技術および時分割多重化技術の併用により複数のチャネルを形成する方式を含む。)
【0074】
また、本実施形態では、親局10および子局70A-1〜70A-nは、何れも、予め決められた地点に設置された固定局でなくてもよく、例えば、車両や航空機に搭載された移動局であってもよい。
【0075】
さらに、本実施形態では、「スキャン処理」の過程で子局70A-cとの通信に供されるチャネル(周波数)は、「下りフレーム」に既述のユニークワードuwiが含まれるとの基準の下で識別されている。
しかし、このような識別の基準は、例えば、「下りフレーム」にユニークワードuwiが含まれることに代えて(あるいは併せて)、該当する到来波の伝送品質が所定の閾値を超えていることであってもよい。
【0076】
また、本実施形態では、上り伝送情報と下り伝送情報との双方の伝送に共通のチャネル(無線周波数)が用いられている。
しかし、これらの伝送情報は、全二重方式のチャネルを介して並行して伝送されてもよい。
【0077】
さらに、本実施形態では、既述の周波数テーブル59Tの内容は、親局10が子局70A-1〜70A-nと連係することによる伝送品質等の実測と、その実測に代わるシミュレーション演算との何れに基づいて更新されてもよく、このような更新が行われるきっかけも、例えば、季節や時間帯(子局70A-cと親局10との間における電離層等の特性の変化を含む。)の何れに基づいて与えられてもよい。
【0078】
また、本実施形態では、音声信号の瞬時値の列が上り伝送情報および下り伝送情報として伝送されている。
しかし、これらの伝送情報は、例えば、以下の何れであってもよい。
(1) ディジタル情報(何らかの符号化処理の下で生成されたものを含む。)
(2) 所定の搬送波やトーン信号等のアナログ信号に、例えば、ASK(Amplitude Shift Keying)、FSK(Frequency Shift Keying)、PSK(Phase Shift Keying)等の変調処理が施されることによって得られた符号(の列)
【0079】
さらに、本実施形態において親局10および子局70A-cにより行われる通信制御は、以下に列記すように、一般的な移動通信システムで行われるチャネル制御とは異なる。
(1) 子局70A-1〜70A-nに予め個別に割り付けられるチャネルは、上記移動通信システムにおいて子が生起した端末に重複することなく適宜割り付けられる空チャネルと異なる。
【0080】
(2) 通信路は、子局70A-1〜70A-nの何れか1つと親局10との間のみに形成される点で、「複数の端末間に(無線基地局を介して)形成され、しかも、これらの複数の端末の内の複数個が何れも送信端および受信端として機能するように、複数形成される移動通信系における通信路」とは異なる。
【0081】
(3) 「子局70A-1〜70A-nに予め個別に割り付けられるチャネル」は、一定とは限らず、例えば、季節、時間帯、個々の無線局の位置や移動、電離層を介する伝搬路の伝送特性の変動等に応じて、適宜更新され得る点で、「移動通信系におけるチャネル」とは本質的に異なる。
【0082】
(4) 周波数テーブル59Tに登録されるチャネル(周波数)は、所定の頻度(周期)で更新されるが、「子局70A-1〜70A-nに予め割り付けられ、かつ親局10との通信に供されない子局70A-1〜70A-nの何れにも先行して通知されるチャネル」であって、複数の異なる子局に重複して割り付けられ得る点で、移動通信システムの無線基地局(無線制御局)において所定のチャネル構成、周波数配置およびゾーン構成の下で端末に割り付けられる空チャネルとは異なる。
【0083】
また、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の範囲において多様な実施形態の構成が可能であり、構成要素の全てまたは一部に如何なる改良が施されてもよい。
【0084】
以下、本願に開示された発明の内、「特許請求の範囲」への記載の対象から除外した発明について、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段」の欄の記載に準じた様式で列記する。
【0085】
[請求項6] 請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の通信制御装置において、
前記伝送情報には、
前記複数の無線局と、前記通信制御装置を含む無線局との間における無線伝送の通信手順に供される制御情報が含まれる
ことを特徴とする通信制御装置。
【0086】
このような構成の通信制御装置では、請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の通信制御装置において、前記伝送情報には、前記複数の無線局と、前記通信制御装置を含む無線局との間における無線伝送の通信手順に供される制御情報が含まれる。
【0087】
すなわち、本発明に係る通信制御装置が備えられた無線局と、上記複数の無線局との間における無線伝送には、所望の通信手順の適用が可能となる。
したがって、本発明によれば、上述した無線伝送に供される無線伝送路の多様な属性や特徴に対する柔軟な適応が可能となる。
【符号の説明】
【0088】
10,50 親局
11,59,79,79A プロセッサ
51,76 変調部
52,57,74,77 周波数変換部
53,78 電力増幅部
54,72 整合部
55,71 アンテナ
56,73 増幅部
58,75 復調部
59T 周波数テーブル
60 ゾーン
70,70A 子局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予めチャネルが個別に割り付けられた複数の無線局の内、指定された特定の無線局宛に無線伝送されるべき伝送情報を生成する通信制御装置であって、
前記特定の無線局に予め割り付けられた特定のチャネルを識別するチャネル識別手段と、
前記特定のチャネルを介して前記特定の無線局に無線伝送されるべき伝送情報に、前記特定の無線局の識別子を付加する識別子付加手段と
を備えたことを特徴とする通信制御装置。
【請求項2】
予めチャネルが個別に割り付けられた複数の無線局の内、特定の無線局から無線伝送された伝送情報を識別する通信制御装置であって、
前記複数の無線局に予め割り付けられた個々のチャネルをスキャンし、前記個々のチャネルの何れかを介して到来する到来波を監視する到来波監視手段と、
前記個々のチャネルを介して到来した到来波に、前記到来波の送信元に該当する無線局に付与された識別子と共に含まれる伝送情報を識別する伝送情報識別手段と
を備えたことを特徴とする通信制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の通信制御装置において、
前記複数の無線局と連係することにより、前記複数の無線局に予め割り付けられるチャネルを設定しあるいは更新するチャネル維持手段を備えた
ことを特徴とする通信制御装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の通信制御装置において、
前記複数の無線局には、
前記通信制御装置が備えられた無線局との間における無線伝送の伝送品質が最良でありまたは所定の閾値を上回るチャネルが予め個別に割り付けられた
ことを特徴とする通信制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の通信制御装置において、
前記複数の無線局と、前記通信制御装置が備えられた無線局との間における無線伝送は単信方式で行われ、
前記複数の無線局の全てまたは一部には、
同じチャネルが割り付けられた
ことを特徴とする通信制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−105184(P2012−105184A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253808(P2010−253808)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】