説明

通信制御IC用コネクタ

【課題】圧接処理によってデイジーチェーン型の通信方式に対応可能な通信制御IC用コネクタを得る。
【解決手段】ハウジング部1の圧接領域1Bにおいて、通信用圧接リード21とIC用電源線L1とが圧接点P1における圧接処理により電気的に接続され、通信用圧接リード23とIC用アース線L3とが圧接点P3における圧接処理により電気的に接続される。さらに、通信制御IC10の通信方式がデイジーチェーン型の場合、通信制御IC10における第1及び第2の通信制御用端子として用いられる通信用圧接リード22a及び22bがそれぞれ圧接点P2a及びP2bにおける圧接処理により通信制御信号線L2に電気的に接続される。コネクタ部2には共通信号線L1〜L3上における圧接点P1,P2a,P2b及びP3が上部から切断及び目視可能な開口部3が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車等に用いられる通信制御ICを収納可能な通信制御IC用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車では電子制御機器の増加により通信制御IC等の通信制御ユニットへの回路集中・肥大化が進んでいる。自動車の特徴として、車両各部にアクチュエータ、スイッチ、センサ等の電装品が満遍なく分散配置されているため、これら電装品間をデータ通信により分散して制御する傾向が強まっている。
【0003】
上述したデータ通信を実現するための通信制御ICを内蔵したコネクタとして、例えば、特許文献1で開示され通信制御IC内蔵コネクタがある。この通信制御IC内蔵コネクタは、通信制御ICのリード部と複数の通信制御IC間で共用される外部通信線との接続を圧接により行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4346592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で代表される従来の通信制御IC内蔵コネクタは、一種類の通信方式(バス型)のみ対応する方式であり、他の種類の通信方式(デイジーチェーン型)による接続を考慮していないため、複数の通信方式(通信トポロジー)を用いる通信制御ICに対応することができないという問題点があった。
【0006】
この発明は上記問題点を解決するためになされたもので、圧接処理によってデイジーチェーン型の通信方式に対応可能な通信制御IC用コネクタを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る請求項1記載の通信制御IC用コネクタは、所定の通信制御ICを収納可能なIC収納部と、前記所定の通信制御ICが第1及び第2の通信用圧接リードを用いた第1の通信方式を採用している場合、前記IC収納部で収納された状態の前記所定の通信制御ICの前記第1及び第2の通信用圧接リードと所定の外部通信制御信号線とを、第1及び第2の圧接用接続部材を用いて前記所定の外部通信制御信号線上における第1及び第2の圧接点で圧接可能な圧接領域とを備え、前記圧接領域は前記第1及び第2の圧接点間における前記所定の外部通信制御信号線上の切断箇所を切断認可能な開口部を有する。
【0008】
請求項2記載の本願発明の通信制御IC用コネクタは、請求項1記載の通信制御IC用コネクタであって、前記圧接領域は、前記所定の通信制御ICが単一の通信用圧接リードを用いた第2の通信方式を採用している場合、前記IC収納部で収納された状態の前記所定の通信制御ICの前記単一の通信用圧接リードと前記所定の外部通信制御信号線とを、一の圧接用接続部材を用いて一の圧接点で圧接可能である。
【0009】
請求項3記載の本願発明の通信制御IC用コネクタは、請求項1あるいは請求項2記載の通信制御IC用コネクタであって、前記通信制御ICは複数の外部入出力用リードをさらに有し、前記複数の外部入力リード部の接続関係の切換が可能であり、前記複数の外部の外部入出力用リードと外部の入出力信号用端子との電気的に接続可能なコネクタ部をさらに備える。
【0010】
請求項4記載の本願発明の通信制御IC用コネクタは、請求項1ないし請求項3のうち、いずれか1項に記載の通信制御IC用コネクタであって、前記IC収納部及び前記圧接領域を含むハウジング部と、前記ハウジング部に連結して接続され、所定のワイヤーハーネスに固定可能な固定用補助材とをさらに備える。
【発明の効果】
【0011】
この発明における請求項1記載の通信制御IC用コネクタの圧接領域は第1及び第2の圧接点間における所定の外部通信制御信号線上の切断箇所を切断可能な開口部を有するため、所定の通信制御ICの第1及び第2の通信用圧接リードと所定の外部通信制御信号線との圧接後に、開口部から所定の外部通信制御信号線上の上記切断箇所を切断することにより、複数の所定の通信制御IC間におけるデイジーチェーン型接続に代表される第1の通信方式を実現することができる。
【0012】
その結果、第1の通信方式を用いた複数の所定の通信制御用IC間の通信を、個々の通信制御用ICに関し圧接領域において第1及び第2の通信用圧接リードと所定の外部通信制御信号線とを圧接した後、上記切断箇所を切断するという圧接処理による比較的簡単な接続方法により実現することができる効果を奏する。
【0013】
さらに、請求項2記載の本願発明である通信制御IC用コネクタは、所定の通信制御ICが単一の通信用圧接リードを用いた第2の通信方式である場合は、IC収納部で収納された状態の所定の通信制御ICの単一の通信用圧接リードと所定の外部通信制御信号線とを、一の圧接用接続部材を用いて一の圧接点で圧接することにより、実現することができる。
【0014】
すなわち、請求項2記載の本願発明の通信制御IC用コネクタは、所定の通信制御用ICが第1及び第2の通信方式のいずれを採用している場合でも用いることができるため、汎用性が高いという効果を奏する。
【0015】
さらに、請求項3記載の本願発明は、さらにコネクタ部を有することにより外部の入出力信号端子との電気的に接続をも兼ね、いわゆるジャンクションコネクタとしての機能も発揮することができる。
【0016】
請求項4記載の本願発明である通信制御IC用コネクタは、固定補助部材を用いて所定のワイヤーハーネス上に固定することができるため、その配置自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施の形態である通信制御IC用コネクタの構造を模式的に示す説明図である。
【図2】本実施の形態通信制御IC用コネクタの通信制御ICとの信号接続関係を模式的に示す説明図である。
【図3】通信制御ICがデイジーチェーン型通信制御ICの場合の共通信号線との接続関係を模式的に示す説明図である。
【図4】各々がデイジーチェーン型の通信方式を採用した複数の通信制御IC間の共通信号線との接続関係を模式的に示す説明図である。
【図5】通信制御ICがバス型通信制御ICの場合の共通信号線との接続関係を模式的に示す説明図である。
【図6】各々がバス型の通信方式を採用した複数の通信制御IC間の共通信号線との接続関係を模式的に示す説明図である。
【図7】通信制御ICの通信用圧接リードと共通信号線との圧接による電気的に接続内容の詳細(上面)を示すデイジーチェーン型の通信方式の説明図である。
【図8】通信制御ICの通信用圧接リードと共通信号線との圧接による電気的に接続内容の詳細(側部断面)を示す説明図である。
【図9】通信制御ICの通信用圧接リードと共通信号線との圧接による電気的に接続内容の詳細(下面)を示す説明図である。
【図10】通信制御ICの通信用圧接リードと共通信号線との圧接による電気的に接続内容の詳細(上面)を示すバス型の通信方式の説明図である。
【図11】ワイヤーハーネスへの通信制御IC内蔵コネクタの第1の固定例における固定状態を示す説明図である。
【図12】第1の固定例に用いられる拘束ベルトを模式的に示す説明図である。
【図13】第2の固定例に用いられるベロ部を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(構造)
図1はこの発明の実施の形態である通信制御IC用コネクタの構造を模式的に示す説明図である。図2は本実施の形態通信制御IC用コネクタの通信制御IC10との信号接続関係を模式的に示す説明図である。
【0019】
これら図に示すように、本実施の形態の通信制御IC用コネクタ5は、ハウジング部1並びにコネクタ部2a及び2bから構成される。コネクタ部2a及び2b内には所定の端子を収容すべくそれぞれの突出面に複数の開口部52が設けられている。
【0020】
ハウジング部1は内部に通信制御IC10を収納可能なIC収納部1Aと、通信制御IC10の通信用圧接リード21〜23(21,22a,22b及び23)と複数の通信制御IC間で通信用に共通利用される共通信号線L1〜L3とを圧接により電気的に接続するための圧接領域1Bとを有している。
【0021】
共通信号線L1〜L3において、L1はIC用電源線であり、L2は通信制御信号線(所定の外部通信制御信号線)であり、L3はIC用アース線である。そして、電源端子として用いられる通信用圧接リード21とIC用電源線L1とが圧接点P1における圧接処理により電気的に接続され、アース端子として用いられる通信用圧接リード23とIC用アース線L3とが圧接点P3における圧接処理により電気的に接続される。
【0022】
さらに、通信制御IC10の通信方式がデイジーチェーン型(第1の通信方式)の場合、通信制御IC10における第1及び第2の通信制御用端子として用いられる通信用圧接リード22a及び22bがそれぞれ圧接点P2a及びP2bにおける圧接処理により通信制御信号線L2に電気的に接続される。そして、圧接領域1Bの上面の一部において、圧接点P2a,圧接点P2b間における通信制御信号線L2が上部から切断及び目視可能な開口部3が設けられている。
【0023】
一方、通信制御IC10の通信方式がバス型(第2の通信方式)の場合、通信制御IC10における単一通信制御用端子として用いられる通信用圧接リード(図1及び図2では便宜上、「22a」で示す)が一の圧接点(図1及び図2では便宜上、「P2a」で示す)における圧接処理により通信制御信号線L2に電気的に接続される。この場合、通信用圧接リード22b及び圧接点P2bは存在しない。
【0024】
図2に示すように、IC収納部1A内に収納された通信制御IC10から伸びる、あるいはコネクタ部2a及び2bそれぞれ内で接続される機器用圧着リード群28a及び28b(外部入出力用リード)はコネクタ部2a及び2b内において圧着により所定箇所に固定される。一方、通信制御IC10内での信号切換処理によって、機器用圧着リード群28a内における信号接続関係、機器用圧着リード群28b内における信号接続関係、及び機器用圧着リード群28a及び28b間における信号接続関係を適宜切り替えることができる。
【0025】
コネクタ部2a及び2bは、それぞれ外部の図示しない電装品側のコネクタ(機器側コネクタ)が対応する開口部52に差し込まれることにより、機器用圧着リード群28a及び28bと対応する電装品における信号線との電気的に接続を図ることができる。なお、電装品として、例えば、電子ユニット、アクチュエータ、スイッチ、センサ等が考えられる。
【0026】
(通信方式による接続内容)
(デイジーチェーン型通信制御IC31の場合)
図3は通信制御IC10がデイジーチェーン型通信制御IC31の場合の共通信号線L1〜L3との接続関係を模式的に示す説明図である。同図に示すように、デイジーチェーン型通信制御IC31と共通信号線L1〜L3との間において、通信用圧接リード21,IC用電源線L1間、通信用圧接リード22a,通信制御信号線L2間、通信用圧接リード22b,通信制御信号線L2間、及び通信用圧接リード23,IC用アース線L3間が圧接点P1,P2a,P2b及びP3における圧接処理により電気的に接続される。
【0027】
そして、圧接点P2a,圧接点P2b間における通信制御信号線L2の切断箇所9がニッパー等の切断手段を用いて接続される。
【0028】
他のデイジーチェーン型通信制御IC31(通信制御IC10)においても、図3に示すように、共通信号線L1〜L3に接続することにより、複数の通信制御IC10間におけるデイジーチェーン型の通信方式を実現することができる。ただし、隣接する通信制御IC31,31間において共用される通信制御信号線L2に対し、一方の通信用圧接リード22aと他方の通信用圧接リード22bとが電気的に接続されるようにする必要がある。
【0029】
図4は各々がデイジーチェーン型の通信方式を採用した複数の通信制御IC11〜IC13間の共通信号線L1〜L3との接続関係を模式的に示す説明図である。
【0030】
同図に示すように、通信制御IC11〜IC13間において、通信用圧接リード21をIC用電源線L1に共通に接続し、通信用圧接リード23をIC用アース線L3に共通に接続している。
【0031】
そして、通信制御IC11〜IC13のうち互いに隣接する通信制御IC間の切断箇所9で切断されることなく共用される通信制御信号線L2に対し、一方の通信用圧接リード22aと他方の通信用圧接リード22bとが電気的に接続されるようにしている。なお、専用リード群SL1〜SL3はそれぞれ図2で示した機器用圧着リード群28a及び28bに相当する。
【0032】
(バス型通信制御IC32の場合)
図5は通信制御IC10がバス型通信制御IC32の場合の共通信号線L1〜L3との接続関係を模式的に示す説明図である。同図に示すように、バス型通信制御IC32と共通信号線L1〜L3との間において、通信用圧接リード21,IC用電源線L1間、通信用圧接リード22,通信制御信号線L2間、及び通信用圧接リード23,IC用アース線L3間が圧接点P1,P2及びP3における圧接処理より電気的に接続される。
【0033】
他のバス型通信制御IC32(通信制御IC10)においても、図5に示すように、共通信号線L1〜L3に接続することにより、複数の通信制御IC10間におけるバス型接続を実現することができる。
【0034】
このように、通信制御IC10の通信方式がバス型(第2の通信方式)の場合、通信制御IC10における単一の通信制御用端子として用いられる単一の通信用圧接リード22のみが通信制御信号線L2に電気的に接続される。すなわち、通信制御IC10がバス型の場合、2本目の通信用圧接リード(図3における通信用圧接リード22bに相当)が存在しない。
【0035】
図6は各々がバス型の通信方式を採用した複数の通信制御IC61〜IC63間の共通信号線L1〜L3との接続関係を模式的に示す説明図である。
【0036】
同図に示すように、通信制御IC61〜IC63間において、通信用圧接リード21をIC用電源線L1に共通に接続し、通信用圧接リード23をIC用アース線L3に共通に接続し、通信用圧接リード22を通信制御信号線L2に共通接続している。なお、専用リード群SL11〜SL13はそれぞれ図2で示した機器用圧着リード群28a及び28bに相当する。
【0037】
(通信用圧接リードの圧接内容)
図7〜図9は通信制御IC10がデイジーチェーン型通信制御IC31の場合の通信用圧接リード21〜23(21,22a,22b及び23)と共通信号線L1〜L3との圧接による電気的に接続内容の詳細を示す説明図である。図7は圧接領域1Bの上面から視た平面図、図8は圧接領域1BのA−A断面(側部断面)図、図9は圧接領域1Bの下面から視た平面図である。
【0038】
図7に示すように、通信用圧接リード21〜23は通信制御IC10から直接のびる端子として設けられている。なお、通信用圧接リード21〜23は、図7で示した構成以外でも通信制御IC10の通信用に用いる端子に電気的に接続されている中間的リードであっても良い。
【0039】
これらの図に示すように、通信用圧接リード21,IC用電源線L1間に交差接続子41が介挿され、通信用圧接リード23,IC用アース線L3間に交差接続子43が介挿される。そして、通信用圧接リード22a,通信制御信号線L2間に交差接続子42aが介挿され、通信用圧接リード22b,通信制御信号線L2間に交差接続子42bが介挿される。
【0040】
圧接用接続部材である交差接続子41〜43(41,42a、P42b及び43)は、一端側に通信用圧接リード21〜23(21,22a,22b及び23)を圧接接続する圧接端子(溝44を含む)を有し、他端側に共通信号線L1〜L3(L1,L2,L2及びL3)を圧接接続する圧接端子(溝45を含む)を有するものである。両端の圧接端子は溝44,45の方向が直角になるように形成されている。
【0041】
そして、図7及び図8に示すように、交差接続子41〜43の一端側の溝44に通信用圧接リード21〜23を挿入した状態で圧接接続する。同様に、図8及び図9に示すように、交差接続子41〜43の他端側の溝45に共通信号線L1〜L3を挿入した状態で圧接接続する。
【0042】
その結果、図7〜図9に示すように、通信用圧接リード21,IC用電源線L1間は交差接続子41を介して電気的に接続され、通信用圧接リード23,IC用アース線L3間は交差接続子43を介して電気的に接続される。そして、通信用圧接リード22a,通信制御信号線L2間は交差接続子42aを介して電気的に接続され、通信用圧接リード22b,通信制御信号線L2間は交差接続子42bを介して電気的に接続される。そして、交差接続子41〜43部分が共通信号線L1〜L3上における圧接点P1〜P3となる。
【0043】
その後、開口部3により目視可能な圧接点P2a,P2b間における通信制御信号線L2上の切断箇所9内で切断することより、通信制御IC10の通信用圧接リード21〜23と共通信号線L1〜L3との間におけるデイジーチェーン型の通信方式による接続が完了する。この際、開口部3の存在により、通信制御信号線L2上における交差接続子42a及び42b(圧接点P2a及びP2b)間上の領域は完全に露出しているため、目視にて切断箇所9の位置を確認しながらニッパー等の切断手段を用いて正確に切断箇所9を切断することができる。
【0044】
図10は通信制御IC10がバス型通信制御IC32の場合の通信用圧接リード21〜23(21,22及び23)と共通信号線L1〜L3との圧接による電気的に接続内容の詳細を示す、圧接領域1Bの上面から視た平面図である。なお、図8は圧接領域1BのB−B断面(側部断面)に相当する。ただし、図8において、通信用圧接リード22a及び交差接続子42aが図10の通信用圧接リード22、交差接続子42及びに対応し、通信用圧接リード22b及び交差接続子42bに相当する構成が存在しない。
【0045】
図10に示すように、通信用圧接リード21〜23は通信制御IC10から直接のびる端子として設けられている。なお、通信用圧接リード21〜23は、図10で示した構成以外でも通信制御IC10の通信用に用いる端子に電気的に接続されている中間的リードであっても良い。
【0046】
図10に示すように、通信用圧接リード21,IC用電源線L1間に交差接続子41が介挿され、通信用圧接リード23,IC用アース線L3間に交差接続子43が介挿される。そして、通信用圧接リード22,通信制御信号線L2間に交差接続子42が介挿される。これら交差接続子41〜43によって、通信制御IC10がデイジーチェーン型通信制御IC31の場合と同様に圧接接続される。
【0047】
このようにして、通信制御IC10の通信用圧接リード21〜23と共通信号線L1〜L3との間におけるバス型の通信方式による接続が完了する。
【0048】
(効果)
このように、本実施の形態の通信制御IC用コネクタ5の圧接領域1Bは、圧接点P2a及びP2b(第1及び第2の圧接点)間における通信制御信号線L2(所定の外部通信信号線)上の切断箇所9を切断可能な開口部3を有している。
【0049】
このため、通信制御IC10の通信用圧接リード22a及び22b(第1及び第2の通信制御用リード部)と通信制御信号線L2との交差接続子42a及び42bを用いた圧接処理後に、開口部3から圧接点P2a及びP2b間における通信制御信号線L2の切断箇所9を切断することにより、複数の通信制御IC間におけるデイジーチェーン型接続を行うことができる。
【0050】
その結果、デイジーチェーン型接続により実現可能な第1の通信方式を用いた複数の通信制御用IC間の通信を、個々の通信制御用IC(通信制御IC10相当)に関し開口部3において通信用圧接リード22a及び22と通信制御信号線L2とを圧接するという比較的簡単な圧接処理による接続により実現することができる効果を奏する。
【0051】
さらに、本実施の形態の通信制御IC用コネクタは、通信制御IC10が単一の通信制御用リードである通信用圧接リード22を有するバス型の通信方式(第2の通信方式)による接続も可能である。すなわち、上述したように、IC収納部1Aで収納された状態の通信制御IC10の通信用圧接リード22(図10参照)と通信制御信号線L2とを、単一の圧接用接続部材(図10では交差接続子42)を用いて一の圧接点(図10では圧接点P2)で圧接することにより、バス型の接続を実現することができる。
【0052】
このように、本実施の形態の通信制御IC用コネクタは、通信制御IC10がデイジーチェーン型及びバス型のいずれを採用している場合でも対応可能できるため、汎用性が高いという効果を奏する。
【0053】
さらに、本実施の形態の通信制御IC用コネクタは、コネクタ部2a及び2bを有することにより電装品等の外部機器の入出力信号端子との電気的に接続をも兼ね、いわゆるジャンクションコネクタ(ジョイントコネクタ)としての機能も発揮することができる。
【0054】
(ワイヤーハーネス50への固定)
本実施の形態の通信制御IC用コネクタ5は、上述したように通信制御IC10を内部にIC収納部1Aに収納しているのみの比較的簡易な構成であるため、小型・軽量化することができ、以下に示すようにワイヤーハーネスへの固定も比較的容易に行える。
【0055】
図11及び図12は本実施の形態の通信制御IC用コネクタ5の複数の電線群を被覆してなるワイヤーハーネス50への第1の固定例を示す説明図である。図11はワイヤーハーネス50への通信制御IC用コネクタ5の固定状態を示し、図12は解放状態の拘束ベルト7を模式的に示している。図11に示すように、ワイヤーハーネス50の複数の電線群の一部がコネクタ部2a及び2bに接続され、他の一部が圧接領域1Bに接続される。
【0056】
図12に示すように、ハウジング部1のベルト装着部1C(図11では図示省略)から延在して形成される拘束ベルト7を、図11に示すように、ワイヤーハーネス50の外周部に沿って巻き込み、所定のベルト留め部(図示せず)で留めることにより、通信制御IC用コネクタ5をワイヤーハーネス50上に固定することができる。
【0057】
図13は通信制御IC用コネクタ5の第2の固定例を示すための説明図である。同図に示すように、圧接領域1Bの底部から、コネクタ部2a及び2bの形成方向に平行に所定の平面領域を有するベロ部8a及び8bを設けている。
【0058】
このようなベロ部8a及び8bを有する通信制御IC用コネクタ5をワイヤーハーネス50上に仮配置し、ワイヤーハーネス50の外周部に沿ってこれらベロ部8a及び8bをテープ巻きすることにより、ワイヤーハーネス50に通信制御IC用コネクタ5を固定することができる。
【0059】
このように、通信制御IC用コネクタ5は、比較的簡易な固定用補助材(拘束ベルト7,ベロ部8a及び8b)を追加的に有することにより、上記の第1及び第2の固定例で示すように、通信制御IC用コネクタ5をワイヤーハーネス50上に固定することができる。このため、通信制御IC用コネクタ5の配置自由度を高めることができる効果を奏する。
【0060】
以下、この点を詳述する。例えば、所定の電子ユニット内の予め定められた箇所にユニット接続コネクタとして通信制御IC用コネクタ5を内蔵する場合、通信制御IC用コネクタ5が配置される場所は必然的に電子ユニットの位置に制限されてしまう。
【0061】
これに対して、本実施の形態の通信制御IC用コネクタ5は、単独で存在しており、電子ユニット内に内蔵される場合のような制限はないため、ワイヤーハーネス50が通る場所であればどのような場所でも配置することができ、配置自由度を高めることができる。
【0062】
(その他)
圧接領域1Bにおいて通信用圧接リード21〜23の接続対象となる共通信号線L1〜L3として、ディスクリート線の他、FFC(Flexible Flat Cable)、FPC(Flexible Print Circuit)、及びFC(Flat Cable)等への適用が可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 ハウジング部
1A IC収納部
1B 圧接領域
2a,2b コネクタ部
3 開口部
5 通信制御IC内蔵コネクタ
21,22a,22b,23 通信用圧接リード
41,42a,42b,43 交差接続子
L1 IC用電源線
L2 通信制御信号線
L3 IC用アース線
P1,P2a,P2b,P3 圧接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の通信制御ICを収納可能なIC収納部と、
前記所定の通信制御ICが第1及び第2の通信用圧接リードを用いた第1の通信方式を採用している場合、前記IC収納部で収納された状態の前記所定の通信制御ICの前記第1及び第2の通信用圧接リードと所定の外部通信制御信号線とを、第1及び第2の圧接用接続部材を用いて前記所定の外部通信制御信号線上における第1及び第2の圧接点で圧接可能な圧接領域とを備え、
前記圧接領域は前記第1及び第2の圧接点間における前記所定の外部通信制御信号線上の切断箇所を切断可能な開口部を有することを特徴とする、
通信制御IC用コネクタ。
【請求項2】
請求項1記載の通信制御IC用コネクタであって、
前記圧接領域は、
前記所定の通信制御ICが単一の通信用圧接リードを用いた第2の通信方式を採用している場合、前記IC収納部で収納された状態の前記所定の通信制御ICの前記単一の通信用圧接リードと前記所定の外部通信制御信号線とを、一の圧接用接続部材を用いて一の圧接点で圧接可能である、
通信制御IC用コネクタ。
【請求項3】
請求項1あるいは請求項2記載の通信制御IC用コネクタであって、
前記通信制御ICは複数の外部入出力用リードをさらに有し、前記複数の外部入力リード部の接続関係の切換が可能であり、
前記複数の外部の外部入出力用リードと外部の入出力信号用端子との電気的に接続可能なコネクタ部をさらに備える、
通信制御IC用コネクタ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうち、いずれか1項に記載の通信制御IC用コネクタであって、
前記IC収納部及び前記圧接領域を含むハウジング部と、
前記ハウジング部に連結して接続され、所定のワイヤーハーネスに固定可能な固定用補助材とをさらに備える、
通信制御IC用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−249023(P2011−249023A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117990(P2010−117990)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】