説明

通信方法、通信システム、基地局通信装置、及び端末通信装置

【課題】周波数チャネルを有効に用いて通信速度を向上させる。
【解決手段】通信装置情報記憶回路105は、端末通信装置から受信した受信信号に基づいて、それぞれの端末通信装置が有するアナログデジタル変換装置のクロック信号の周波数、周波数切り替えモードの有無を含む通信装置情報を取得し、通信方法決定回路106は、通信装置情報に基づき端末通信装置に対する送信信号の周波数チャネルを割り当て、該周波数割り当てに基づき変調方式と符号化率を決定し、データ出力回路100は、指定された通信相手宛のデータを、決定された変調方式・符号化方式に応じて変調・符号化し、通知信号挿入回路102は、送信信号の所定の場所に各通信相手に対する周波数、及び変調方式・符号化率を表す送信モードを通知する通知信号を挿入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一の周波数チャネルを用い、異なる複数の送信アンテナより独立な信号系列を空間多重し、複数の通信相手への情報伝達を実現する通信方法、通信システム、基地局通信装置、及び端末通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、2.4GHz帯または5GHz帯を用いた高速無線アクセスシステムとして、IEEE802.11g規格、IEEE802.11a規格などの普及が目覚しい。これらのシステムでは、マルチパスフェージング環境での特性を安定化させるための技術である直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式を用い、最大で54Mbpsの伝送速度を実現している。
【0003】
但し、ここでの伝送速度とは、物理レイヤ上での伝送速度であり、実際には、MAC(Medium Access Control)レイヤでの伝送効率が50〜70%程度であるため、実際のスループットの上限値は、30Mbps程度である。さらに、IEEE802.11nが2010年に標準化完了予定であり、MIMO(Multiple input multiple output)技術により、100Mbps超の高速通信の実現を目指している。
【0004】
しかし、一方で、有線LANの通信速度もFTTH(Fiber to the home)の普及から、上昇の一途をたどっており、今後、無線LANにおいても更なる伝送速度の高速化が求められることが想定される。IEEE802.11nまでのアプローチでは、TDDシステムを用いて通信し、同じ時間で通信を行う対象は単一の通信相手であった。
【0005】
図15は、従来技術による通信方式における時間と周波数チャネルに対するパケットの制御方法を示す概念図である。基地局となる通信装置は、ある周波数チャネル(ここではF)を用いて通信しており、端末通信装置であるUser1とUser2へ、それぞれ異なる時間に送信要求(Request to send:RTS)を送り、受信準備完了(Clear to send:CTS)を受信した後、信号パケットを送信し、確認応答(Acknowledgment:ACK)をそれぞれの端末通信装置から返信し、通信を完了している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】守倉正博、802.11高速無線LAN教科書
【非特許文献2】Quentin H. Spencer, et. al, Zero-Forcing Methods for Downlink Spatial Multiplexing in Multiuser MIMO Channels
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来技術では、2つのユーザに異なる時間を割り当てることで、複数の通信相手を異なる時間に振り分け、時間分割多重により、複数の通信相手への送信を可能にしている。しかしながら、このような通信方式では、基地局通信装置が端末通信装置より高い周波数のADC(Analog Digital Converter)、及びDAC(Digital Analog Converter)のクロックを持つ場合、または端末通信装置のADC、及びDACのクロック信号の周波数が多種であった場合に、例えば、図12に示すように、4つの周波数チャネルF〜Fを用いることができたとしても、同一時刻に、同一周波数帯の異なるチャネルを用いて送信できないため、周波数チャネルを有効に利用できず、基地局通信装置の持つADC、及びDACのクロック信号の周波数に比例して通信速度を向上させることができないという問題があった。
【0008】
また、基地局通信装置が高い周波数のクロックのADCや、DACを有する場合に加えて、マルチユーザMIMO技術により、同時刻・同一周波数により送信を行うための通信方法はこれまでに明らかになっていない。
【0009】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、周波数チャネルを有効に用いて通信速度を向上させることができる通信方法、通信システム、基地局通信装置、及び端末通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明は、基地局通信装置が受信信号のアナログ−デジタル変換装置(ADC)またはデジタル−アナログ変換装置(DAC)を備える複数の端末通信装置と同時に通信する通信方法において、前記端末通信装置が、それぞれが有するADCまたはDACのクロック信号の周波数情報とダウンコンバートする基準信号の瞬時切り替えモードの有無を示す情報とのうち少なくとも1つを含む通信装置情報を、前記基地局通信装置に通知する通信装置情報通知ステップと、前記基地局通信装置が、前記各端末通信装置から通知される前記各通信装置情報を抽出し、抽出した前記各通信装置情報を記憶する通信装置情報記憶ステップと、前記基地局通信装置が、前記抽出された各通信装置情報に含まれる前記各クロック信号の周波数情報と前記各周波数切り替えモードの有無を示す情報に基づき、前記各端末通信装置に対する周波数チャネルの割り当てを決定する周波数チャネル割り当て決定ステップと、前記基地局通信装置が、前記決定された各周波数チャネルの割り当てに基づいて、前記端末通信装置に対するデータ送信時の変調方式と符号化率からなる送信モードを決定する送信モード決定ステップと、前記基地局通信装置が、前記端末通信装置に対する、前記決定された変調方式、符号化率、及び周波数チャネルの割り当てに基づき送信するデータを変換し、前記各端末通信装置にデータ送信を行う送信ステップとを備えることを特徴としている。
【0011】
本発明は、上記の発明において、前記基地局通信装置が、前記各端末通信装置から受信した受信信号に基づいて、前記端末通信装置との間における各チャネル情報を推定するチャネル情報推定ステップと、前記推定されたチャネル情報と通信装置情報を、端末通信装置ごとに記憶する通信装置情報記憶ステップと、前記基地局通信装置が、前記抽出された前記各通信装置情報に基づき、前記各端末通信装置に対するデータ送信に用いる周波数チャネルの割り当てと空間多重を行うマルチユーザMIMOモードを決定する周波数割り当て・マルチユーザMIMOモード決定ステップと、前記基地局通信装置が、前記推定された各チャネル情報に基づき前記各端末通信装置のデータ送信に対する各送信ウエイト値を算出する送信ウエイト算出ステップと、前記基地局通信装置が、前記決定された前記変調方式、前記符号化率、前記周波数チャネル割り当て、前記空間多重モード及び前記送信ウエイト値に基づき送信するデータを変換し、前記各端末通信装置に対してデータ送信を行う送信ステップとを更に備えるようにしてもよい。
【0012】
本発明は、上記の発明において、前記基地局通信装置が、前記基地局通信装置が、前記各端末通信装置に対して、前記決定された各周波数チャネルの割り当てを含むチャネル送信要求信号を送信するチャネル送信要求信号送信ステップと、前記端末通信装置が、前記チャネル送信要求信号から自端末通信装置に対する周波数チャネルの割り当てを抽出する周波数チャネルの割り当て抽出ステップと、前記端末通信装置が、前記抽出された周波数チャネルの割り当てが現在データ受信している周波数チャネル外である場合、前記抽出された周波数チャネルの割り当てに基づいて周波数変換に用いる基準信号の周波数を変更することにより前記ADCまたは前記DACが変換を行う周波数チャネルを変更する周波数変更ステップと、前記端末通信装置が、変更された前記周波数チャネルでデータ受信し、前記基地局通信装置からのデータ受信が完了したことを確認した後、前記基地局通信装置に対して、確認応答信号を変更された前記周波数チャネルで送信する確認応答信号送信ステップと、前記端末通信装置が、前記確認応答信号の送信後、前記周波数チャネルを変更する前の周波数チャネルに戻し、または、前記クロック信号の周波数を変更する前の周波数に戻す周波数戻しステップとを更に備えるようにしてもよい。
【0013】
本発明は、上記の発明において、前記端末通信装置が、前記端末通信装置が、前記周波数チャネルの割り当て抽出ステップまたは前記周波数変更ステップの後、データ受信の準備が完了したことを通知する通信準備完了通知信号を、前記基地局通信装置に送信する通信準備完了通知ステップを更に備えるようにしてもよい
【0014】
本発明は、上記の発明において、前記基地局通信装置が、前記基地局通信装置が、前記端末通信装置に対して前記決定された周波数チャネルの割り当てを通知する送信要求信号に、どの周波数チャネルを用いて前記確認応答信号を送信するかを指定するパイロット信号を含めるステップを更に備えるようにしてもよい。
【0015】
本発明は、上記の発明において、前記基地局通信装置が、前記基地局通信装置が、前記決定された一つの周波数チャネルに複数の前記端末通信装置のデータを多重する場合、前記端末通信装置に対して前記決定された周波数チャネルを通知する送信要求信号に、前記確認応答信号、または、前記通信準備完了通知信号を送信する際の、前記端末通信装置に対する前記送信ウエイト算出部が算出した個別の遅延時間を指定する遅延量情報を含めるステップを更に備えるようにしてもよい。
【0016】
本発明は、上記の発明において、前記基地局通信装置の周波数チャネル割り当て決定ステップが、前記決定された一つの周波数チャネルに複数の前記端末通信装置のデータを多重する場合、周波数チャネル間に設定するガードバンドの領域が少なくなるように、同じクロック信号の周波数のADCまたはDACを有する前記端末通信装置を同じ周波数チャネルに多重するように制御するようにしてもよい。
【0017】
本発明は、上記の発明において、前記周波数チャネル割り当て決定ステップにおいて、送信を行う複数の前記端末通信装置のうちの少なくとも一つの端末通信装置が、同時同一周波数チャネルに複数の端末通信装置に向けたデータを多重する方式に関する情報を持たない場合に、当該端末通信装置が対応している周波数チャネル以外で、他の端末通信装置を同時同一周波数チャネルでデータを多重するように周波数チャネルの割り当てを行うようにしてもよい。
【0018】
また、上述した課題を解決するために、本発明は、基地局通信装置が受信信号のアナログ−デジタル変換装置(ADC)またはデジタル−アナログ変換装置(DAC)を備える複数の端末通信装置と同時に通信する通信システムにおいて、前記端末通信装置は、それぞれが有するADCまたはDACのクロック信号の周波数情報とダウンコンバートする基準信号の瞬時切り替えモードの有無を示す情報とのうち少なくとも1つを含む通信装置情報を、前記基地局通信装置に通知する通知信号送信回路を備え、前記基地局通信装置は、前記各端末通信装置から通知される前記各通信装置情報を抽出し、抽出した前記各通信装置情報を記憶する通信装置情報記憶部と、前記記憶された各通信装置情報に含まれる前記各クロック信号の周波数情報と前記各周波数切り替えモードの有無を示す情報に基づき、前記各端末通信装置に対するデータ送信時の各周波数チャネルの割り当てを決定し、前記決定された各周波数チャネルの割り当てに基づいて、前記端末通信装置に対するデータ送信時の変調方式と符号化率からなる送信モードを決定する通信方法決定回路と、前記端末通信装置に対する、前記決定された変調方式、符号化率、及び周波数チャネルの割り当てに基づき送信するデータを変換する送信信号変換回路と、前記変換された送信信号を送信する周波数に変換する無線部と、送信を行うアンテナとを備えることを特徴としている。
【0019】
また、上述した課題を解決するために、本発明は、受信信号のアナログ−デジタル変換装置(ADC)、またはデジタル−アナログ変換装置(DAC)を備える複数の端末通信装置と同時に通信する基地局通信装置において、前記各端末通信装置から送信される信号からチャネル情報を推定するチャネル情報推定回路と、前記各端末通信装置から通知される前記各通信装置情報と前記チャネル情報を記憶する通信装置情報記憶回路と、前記記憶された各通信装置情報に含まれる前記各クロック信号の周波数情報と前記各周波数切り替えモードの有無を示す情報、もしくはチャネル情報、もしくはその両方に基づき、前記各端末通信装置に対するデータ送信時の各周波数チャネルの割り当てを決定し、前記決定された各周波数チャネルの割り当てに基づいて、前記端末通信装置に対するデータ送信時の変調方式と符号化率からなる送信モードを決定する通信方法決定回路と、前記端末通信装置に対する、前記決定された変調方式、符号化率、及び周波数チャネルの割り当てに基づき送信するデータを変換する送信信号変換回路と、前記変換された送信信号を送信する周波数に変換する無線部と、送信を行うアンテナとを備えることを特徴としている。
【0020】
また、上述した課題を解決するために、本発明は、基地局通信装置と通信し、受信信号のアナログ−デジタル変換装置(ADC)またはデジタル−アナログ変換装置(DAC)を備える端末通信装置において、基地局通信装置から指定された周波数チャネルを取得する送信要求抽出回路と、指定された周波数チャネルを受信するために周波数の切り替えを行う瞬時基準信号周波数切り替え回路とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、通信相手のクロック情報や、マルチユーザMIMOモードの有無、周波数切り替えモードの有無などの端末通信装置側の通信装置情報を基地局通信装置に通知し、該通信装置情報に基づいて、通信に用いる周波数チャネルの割り当て、変調方式・符号化方式を決定することで、周波数チャネルを有効に用いて通信速度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態による基地局通信装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】本第1実施形態による端末通信装置の構成例を示すブロック図である。
【図3】本第1実施形態による制御方法を説明するための概念図である。
【図4】本第1実施形態による制御方法を説明するための概念図である。
【図5】本第1実施形態による制御方法を説明するための概念図である。
【図6】本第1実施形態による制御方法を説明するための概念図である。
【図7】本発明の第2実施形態による基地局通信装置の構成例を示すブロック図である。
【図8】本第2実施形態による制御方法を説明するための概念図である。
【図9】本第2実施形態による制御方法を説明するための概念図である。
【図10】本第2実施形態による制御方法を説明するための概念図である。
【図11】第2実施形態による周波数チャネルの割り当て方法の決定方法について説明するための概念図である。
【図12】本発明の第1実施形態の通信フローの一部である。
【図13】本発明の第2実施形態の通信フローの一部である。
【図14】本発明の第1実施形態または第2実施形態の端末通信装置と基地局通信装置との通信フローの一部である。
【図15】従来技術による通信方式における時間と周波数チャネルに対するパケットの制御方法を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0024】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態による基地局通信装置の構成例を示すブロック図である。基地局通信装置は、データ出力回路100、送信信号変換回路101、通知信号挿入回路102、無線部103−1〜103−M、アンテナ104−1〜104−M、通信装置情報記憶回路105、及び通信方法決定回路106から構成されている。
【0025】
データ出力回路100は、端末通信装置に送信するデータを生成し、また、通信方法決定回路106が出力する通信方式情報(変調方式・符号化方式)を受け取る。また、データ出力回路100は、送信するデータと通信方式情報を送信信号変換回路101に出力する。
送信信号変換回路101は、データ出力回路100が出力するデータと通信方式情報を受け取り、受け取ったデータを通信方式情報に応じてインターリーバ・変調・誤り訂正符号化を行い、直交波分割多重方式またはシングルキャリア送信方式に変換し、変換した信号を通知信号挿入回路102に出力する。
【0026】
通知信号挿入回路(通知信号挿入部)102は、送信信号変換回路101が出力する変換された信号を受け取り、受け取った信号に対して、所定の位置に各通信相手である端末通信装置に対する通信を行う周波数、及び変調方式・符号化率を表す送信モード等を通知する通知信号を挿入し、通知信号を挿入した送信信号を無線部103−1〜103−Mに出力する。
【0027】
無線部(送信部、受信部)103−1〜103−Mは、通知信号挿入回路102からの送信信号を、送信する周波数に変換し、アンテナ104−1〜104−Mにより送信する。また、無線部103−1〜103−Mは、送受信のためのADC、及びDACを備えている。さらに、無線部103−1〜103−Mは、アンテナ104−1〜104−Mが受信した信号を、ADCを用いてデジタル信号に変換し、さらにベースバンド信号に変換した後、受信信号を通信情報装置情報抽出回路105に出力する。さらに、無線部103−1〜103−Mは、通知信号挿入部102からのデジタル信号を、DACによりアナログ信号に変換してアンテナ104−1〜104−Mで送信する。すなわち、無線部103−1〜103−M、及びアンテナ104−1〜104−Mは、無線信号の送受信を行う。
【0028】
通信装置情報記憶回路(通信装置情報記憶部)105は、無線部103−1〜103−Mが出力する受信信号を受け取り、受け取った受信信号から通信装置情報を抽出し、抽出した通信装置情報を通信方法決定回路106に出力する。ここで、通信装置情報とは、通信装置が用いるADCのクロック信号の周波数や、周波数切り替え機能の有無のうち少なくとも一つを含む信号を指す。
【0029】
通信方法決定回路(周波数チャネル割り当て決定部、変調方式・符号化率決定部)106は、通信装置情報記憶回路105が出力する通信装置情報を受け取り、受け取った通信装置情報から、通信に用いる周波数チャネルの割り当て、変調方式・符号化方式を決定し、データ出力回路100と通知信号挿入回路102とに出力する。
また、請求項における通信内容決定部とは、データ出力回路100と送信信号変換回路101と通信方法決定回路106とで構成され、送信要求部とは、通知信号挿入回路102と通信方法決定回路106とで構成されている。
【0030】
図2は、本第1実施形態による端末通信装置の構成例を示すブロック図である。端末通信装置は、通知信号抽出回路201、受信信号復号回路202、無線部203−1〜203−M、アンテナ204−1〜204−M、瞬時基準信号周波数切り替え回路205、通知信号送信回路206、および送信要求抽出回路207から構成されている。
【0031】
通知信号抽出回路201は、受信信号復号回路202が出力する復号された信号を受け取り、受け取った信号の中から通知信号を抽出し、抽出した通知信号を送信要求抽出回路207に出力する。
受信信号復号回路202は、無線部203−1〜203−Mが出力する受信信号を受け取り、受け取った受信信号を復号し、復号した信号を通知信号抽出回路201に出力する。
【0032】
無線部(第2送信部、第2受信部)203−1〜203−Mは、送受信のためのADC、及びDACを備えている。ADCは、アンテナ204−1〜204−Mが受信した信号に対し、瞬時基準信号周波数切り替え回路205が決定する周波数でダウンコンバートしデジタル信号に変換して受信信号復号回路202に出力する。DACは、通知信号送信回路206からのデジタル信号(通知信号)をアナログ信号に変換してアンテナ204−1〜204−Mで送信する。すなわち、アンテナ204−1〜204−M、及び無線部203−1〜203−Mは、無線信号の送受信を行う。また、無線部203−1〜203−Mは、瞬時基準信号周波数切り替え回路205が出力する周波数切替情報を受け取り、受け取った周波数切替情報に基づきADC、及びDACの基準周波数を切り替える。
【0033】
瞬時基準信号周波数切り替え回路(周波数切替部)205は、送信要求抽出回路207が出力する通信情報を受け取り、受け取った通信情報に基づき、無線部203−1〜203−Mにおいて用いるダウンコンバートのための基準信号の周波数を変更し、変更する周波数情報を無線部203−1〜203−Mに出力する。このとき、瞬時基準信号周波数切り替え回路205または無線部203−1〜203−Mから通知信号送信回路206に周波数切り替え終了の通知を行い、この信号を基に、受信準備完了信号を通知信号送信回路206から送信するようにしてもよい。
【0034】
通知信号送信回路(通知信号送信部)206は、送信要求抽出回路207が出力する通信装置情報を受け取り、受け取った通信装置情報に自端末通信装置情報が含まれる場合には、受信準備完了通知信号を生成し、生成した受信準備完了通知信号を無線部203−1〜203−Mに出力する。また、通知信号送信回路206は、自端末通信装置の送受信のためのADC、及びDACのクロック信号の最大周波数、瞬時基準信号周波数切り替え回路205の有無、受信信号復号回路202がMIMO通信、またはマルチユーザMIMO通信に対応しているかに関する自端末通信装置の情報を生成し、基地局通信装置に無線部203−1〜203−Mを介して送信を行うようにしてもよい。また、送信要求抽出回路207は、通信装置情報から、自端末通信装置への信号に用いられる周波数チャネルを検出し、受信信号復号回路202に出力することで、受信信号復号回路202は、入力された受信信号のうちの指定された一部の周波数チャネルの信号のみ受信することもできる。
【0035】
送信要求抽出回路(送信要求抽出部)207は、通知信号抽出回路201が出力する通知信号を受け取り、受け取った通知信号から通信装置情報を抽出し、抽出した通信装置情報を通知信号送信回路206と瞬時基準信号周波数切り替え回路205とに出力する。
【0036】
次に、本第1実施形態による具体的な制御方法を図3〜図6を参照して説明する。
図3〜図6は、本第1実施形態による制御方法を説明するための概念図である。例として、1チャネル当たりF(MHz:周波数帯域幅)で4つの周波数チャネルF〜F(搬送波周波数)が存在するシステムを用いる。例えば、IEEE802.11a、IEEE802.11b、IEEE802.11gの各規格は、F=20MHzのシステムとなっている。
【0037】
図3〜図6において、各ブロックの右下に加えられているUまたはDの文字は、UplinkとDownlinkを示し、Uplinkは、通信相手となるUserが送信した信号、Downlinkは、基地局となる通信装置が送信した信号を表す。また、Pはデータ前に基地局通信装置から送信されるパイロット信号である。また、前提条件として、プライマリチャネルには、周波数チャネルFが設定されている。
【0038】
図3では、基地局通信装置は、2つの周波数チャネルをカバーするADC、及びDACを有することを仮定し(ADCとDACの動作クロック≧2F)、通信相手としては、1つの周波数チャネルをサポートする端末通信装置User1(ADCとDACの動作クロック=F)と2つの周波数チャネルをサポートする端末通信装置User2(ADCとDACの動作クロック=2F)との通信方法を示している。
【0039】
User1の周波数帯域(動作クロックの周波数)がFなので、例えば、User1が802.11a規格の端末通信装置の場合、周波数チャネルF〜Fのうちどれか1つの周波数チャネルでしか受信および復号できない。一方、User2が、802.11nかもしくはそれより新しい規格で40MHzの基準信号周波数(クロック信号の周波数)2Fを有する端末通信装置の場合、2チャネル分の周波数チャネルを受信および復号できる。
まず、端末通信装置User2の通知信号送信回路206は、自端末通信装置の動作クロック周波数2Fとセカンダリとして用いている周波数チャネルの情報(F)を含む信号を生成し、生成した信号を無線部203−1〜203−Mに出力する。ここで、通知信号送信回路206は、周波数切り替え機能の無しを伝える信号を無線部203−1〜203−Mに伝えてもよく、周波数切り替え機能の有りを伝える信号がないことが、周波数切り替え機能の無しに対応するようにしてもよい。
【0040】
次に、User2の無線部203−1〜203−Mは、受け取った動作クロック周波数情報(2F)および使用周波数チャネルの情報、または基準信号周波数帯域および使用周波数チャネルの情報と切り替え機能の無しを含む信号を、アンテナ204−1〜204−Mの少なくとも一つを介して基地局通信装置へ送信する。または、プライマリの周波数チャネルに対し、セカンダリ(第2)、ターシアリ(Tertiary;第3)、クォータナリ(Quaternary;第4)の周波数チャネルの用い方のルールを予め決めておき、セカンダリ及び第3、第4の周波数チャネルの通知を省くこともできる。第2〜第4の周波数チャネルの用い方のルールとは、例えば、プライマリが用いる周波数チャネルが5.00GHzである場合には、第2の周波数チャネル(セカンダリ)は5.02GHz、第3の周波数チャネルは4.98GHz、第4の周波数チャネルは5.04GHz、などと予め決定しておくことで基地局通信装置はプライマリ周波数チャネルと用いるクロックの周波数を知るだけで、残りの周波数チャネルの周波数を知ることができる。
【0041】
次に、基地局通信装置は、周波数チャネルFで、チャネル送信要求信号(CR;Channel request)を送信する。このチャネル送信要求信号には、これから端末通信装置User1とUser2とに通信を行うことを通知する信号、User1とは周波数チャネルFで通信を行うことを通知する信号、User2とは周波数チャネルFで通信を行うことを通知する信号が含まれている。周波数チャネルFは、プライマリチャネルであるので、基地局通信装置が周波数チャネルFで送信すれば、端末通信装置User1もUser2にも受信できる。
【0042】
端末通信装置User1の無線部203−1〜203−Mは、アンテナ204−1〜204−Mを介して受信信号を周波数チャネルFで受信し、受信した受信信号を受信信号復号回路202に出力する。次に、受信信号復号回路202は、無線部203−1〜203−Mが出力する受信信号を受け取り、受け取った受信信号を復号し、復号した受信信号を通知信号抽出部201に出力する。次に、通知信号抽出部201は、受信信号復号回路202が出力する復号された受信信号を受け取り、受け取った復号された受信信号から通知信号を抽出し、これから自端末通信装置に送信が行われることを検出する。次に、図3においてUser1へのデータとして示される信号が送信されるとUser1の無線部203−1〜203−Mは、受け取った通信装置情報に基づき周波数チャネルFを用いてデータを受信し、データ受信完了後、通知信号送信回路206から受け取った通信装置情報に基づき、周波数チャネルFを用いて確認応答ACK1を基地局通信装置に送信する。
【0043】
一方、端末通信装置User2は、2Fの帯域を有し、周波数チャネルFとFを受信できる。端末通信装置User2は、端末通信装置User1と同様に周波数チャネルFでチャネル送信要求CR1信号を受信する。そして、送信要求抽出回路207は、受け取った通知信号から自端末通信装置に対する通信装置情報であるチャネル送信要求信号CR1を抽出し、抽出した通信装置情報を受信信号復号回路202に出力する。図3においてUser2へのデータとして示される信号が送信されると、無線部203−1〜203−Mは、受け取った通信装置情報に基づき周波数チャネルFとF3を用いてデータを受信し、受信したデータを受信信号復号回路202に出力する。そして、受信信号復号回路202は、予め送信要求抽出回路207に指定されていたFの周波数チャネルのデータを復号する。データ受信完了後、誤りの有無をチェックし、誤りがないことが確認されると、受信信号復号回路202は、通知信号送信回路206に正常受信を通知し、正常受信の通知を受け取った後、通知信号送信回路206は、周波数チャネルF3を用いて確認応答ACK2を基地局通信装置に送信する。
このように端末通信装置を制御することで、同時に2つの周波数帯を用いてデータを送受信でき通信速度を増加させることができる。
【0044】
あるいは、端末通信装置User2の動作クロックがFで、周波数切り替え機能が有りの場合も、図3を用いて説明できる。ここで、端末通信装置User1は前述のものと同様に動作クロックをFとする。この場合、端末通信装置User2の通知信号送信回路206は無線部203−1〜203−Mを介してアンテナ204−1〜204−Mから、周波数切り替え機能の有りを基地局通信装置に送信する。ダウンリンクの通信を行う際には、基地局通信装置は、User1に周波数チャネルF、User2に周波数チャネルFを用いることを指定したチャネル送信要求CR1を送信する。User1の端末通信装置は、前述した受信信号の受信時と同様の動作で信号の受信を行う。
【0045】
また、端末通信装置User2は、受信信号復号回路202で復号された受信信号から、通知信号抽出回路201において通知信号を抽出し、送信要求抽出回路207において、抽出されたチャネル送信要求信号CR1から、周波数チャネルFを用いてUser2へのデータが送信されることを検出する。送信要求抽出回路207は、周波数チャネルFを用いた通信が行われることを示す通信情報を瞬時基準信号周波数切り替え回路205と通知信号送信回路206とに出力する。次に、瞬時基準信号周波数切り替え回路205は、送信要求抽出回路207が出力する通信情報を受け取り、受け取った通信情報に基づき、無線部203−1〜203−Mに対してデータを受信する周波数チャネルを時刻TにFからFに切り替える。
次に、無線部203−1〜203−Mは、周波数チャネルFでデータを受信する。データ受信終了後、受信信号復号回路202は誤りの有無をチェックし、正常受信の場合には、通知信号送信回路206に正常受信を通知し、正常受信の通知を受け取った後、通知信号送信回路206はACK信号を生成し、無線部203−1〜203−Mを介して、周波数チャネルFを用いて確認応答ACK2を基地局通信装置に送信する。さらに、確認応答ACK2送信後、端末通信装置User2の無線部203−1〜203−Mは、周波数チャネルをFからプライマリの周波数帯域Fに時刻Tで切り替えて戻す。
【0046】
また、端末通信装置User2の動作クロックが2Fであり、周波数チャネルFとFを受信していた場合、瞬時基準信号周波数切り替え回路205が出力する周波数チャネル変更情報に応じて、周波数チャネルFを用いるように基準信号の周波数を時刻Tで切り替えるようにしても良い。そして、データを受信後、端末通信装置User1は、周波数チャネルFで受信完了として確認応答ACK1を基地局通信装置に送信し、端末通信装置User2は、周波数チャネルFで確認応答ACK2を基地局通信装置に送信する。さらに、確認応答ACK2送信後、端末通信装置User2の瞬時基準信号周波数切り替え回路205は、セカンダリの周波数チャネルをFからFに時刻Tで切り替えて戻すこともできる。
【0047】
なお、端末通信装置User1とUser2チャネル送信要求CR1のみ送信する例を説明したが、周波数チャネルFでタイミングをずらしてUser1向けのチャネル送信要求CR1とUser2向けのチャネル送信要求CR2を2つ送信するようにしてもよい。さらに、端末通信装置User2が周波数チャネルFとFを同時に受信できる動作クロック2Fの場合、チャネル送信要求CR1は、周波数チャネルFを用いて送信し、チャネル送信要求CR2は、周波数チャネルFを用いて送信するようにしてもよい(図3の点線で囲んだCR2)。
【0048】
次に、図4の制御方法は、チャネル送信要求CRを受信後、受信可能となったことをチャネル受信準備完了通知CTS(Clear to send)として、各端末通信装置から基地局通信装置へ送信することで、周波数チャネルの切り替え等が終了し、受信と復調の準備が完了したことを通知する。
【0049】
端末通信装置User1の送信要求抽出部207は、チャネル送信要求CR1から抽出し、通知信号送信回路206に通知する。通知信号送信回路206は、チャネル受信準備完了通知CTS1を無線部203−1〜203−Mとアンテナ204−1〜204−Mの少なくとも一つを介して基地局通信装置へ送信する。図4に示されるUser1へのデータが送信されると、無線部203−1〜203−Mは、周波数チャネルFを用いてデータを受信し、データ受信完了後、周波数チャネルFを用いて確認応答ACK1を基地局通信装置に送信する。
【0050】
一方、端末通信装置User2は、2Fの帯域を有し、周波数チャネルFとFを受信できる。この場合、端末通信装置User2は、端末通信装置User1と同様に周波数チャネルFでチャネル送信要求CR1信号を受信する。そして、送信要求抽出回路207は、受け取った通知信号から自端末通信装置に対する通信装置情報であるチャネル送信要求信号CR1を抽出し、周波数チャネルFを用いて通信が行われるという通信情報を受信信号復号回路202に出力する。この通信情報であるチャネル送信要求信号CR1から、端末通信装置User2が周波数チャネルFを用いてデータを受信する信号が含まれているため、無線部203−1〜203−Mは、周波数チャネルFでチャネル受信準備完了通知CTS2を基地局通信装置へ送信する。図4においてUser2へのデータとして示される信号が送信されると、無線部203−1〜203−Mは周波数チャネルFとFの受信信号を受信信号復号回路202に出力する。受信信号復号回路202は予め送信要求抽出回路207から通信情報を通知されているため、周波数チャネルFの受信信号のみ復号を行う。データ受信終了後、誤りの有無をチェックし、誤りがない正常受信を確認すると、受信信号復号回路202は、通知信号送信回路206に正常受信を通知する。通知信号206は、無線部203−1〜203−Mを介し、周波数チャネルFを用いて確認応答ACK2を基地局通信装置に送信する。すなわち、周波数チャネルFとFとの2つの周波数帯を使用した場合、2Fの周波数帯が必要になるが、チャネル送信要求CR1をプライマリ周波数である周波数チャネルFで受信後、チャネル送信要求CR1に基づき、User1は、周波数チャネルFでチャネル受信準備完了通知CTS1を送信し、データを受信し、User2は、周波数チャネルFでチャネル受信準備完了通知CTS1を送信し、データを受信する。
【0051】
あるいは、端末通信装置User2の動作クロック周波数がFで、周波数切り替え機能が有りの場合も、図4を用いて説明できる。ここで、端末通信装置User1は前述のものと同様に動作クロック周波数Fとする。この場合、端末通信装置User2の通知信号送信回路206は、無線部203−1〜203−Mを介してアンテナ204−1〜204−Mから、周波数切り替え機能の有りを基地局通信装置に送信する。ダウンリンクの通信を行う際には、基地局通信装置は、User1に周波数チャネルF、User2に周波数チャネルFを用いることを指定したチャネル送信要求CR1を送信する。端末通信装置User2の通知信号抽出回路201は、受信信号復号回路202で復号された受信信号から通知信号を抽出し、抽出した通知信号を送信要求抽出回路207に出力する。そして、送信要求抽出回路207は、抽出されたチャネル送信要求信号CR1から、周波数チャネルFを用いてUser2へのデータが送信されることを検出する。
【0052】
また、送信要求抽出回路207は、周波数チャネルFを用いた通信が行われることを示す通信情報を、瞬時基準信号周波数切り替え回路205と通知信号送信回路206とに出力する。次に、瞬時基準信号周波数切り替え回路205は、送信要求抽出回路207が出力する通信情報を受け取り、受け取った通信情報に基づき、無線部203−1〜203−Mに対してデータを受信する周波数チャネルを時刻TでFからFに切り替える。切り替えが終了後、通知信号送信回路206はCTS2を生成し、次に、無線部203−1〜203−Mを介して、アンテナ204−1〜204−MからCTS2を周波数チャネルFで送信する。
次に、図4で示されるUser2へのデータが送信されると、無線部203−1〜203−Mは、周波数チャネルFでデータを受信する。データ受信終了後、受信信号復号回路202は誤りの有無をチェックし、正常受信の場合には、通知信号送信回路206に正常受信を通知する。また、正常受信の通知を受け取った後、通知信号送信回路206はACK信号を生成し、無線部203−1〜203−Mを介して、周波数チャネルFを用いて確認応答ACK2を基地局通信装置に送信する。さらに、確認応答ACK2送信後、端末通信装置User2の無線部203−1〜203−Mは、周波数チャネルをFからプライマリの周波数帯域Fに時刻Tで切り替えて戻す。
【0053】
なお、端末通信装置User1とUser2チャネル送信要求CR1のみ送信する例を説明したが、周波数チャネルFでタイミングをずらしてUser1向けのチャネル送信要求CR1とUser2向けのチャネル送信要求CR2を2つ送信するようにしてもよい。さらに、端末通信装置User2が周波数チャネルFとFを同時に受信できる動作クロック2Fの場合、チャネル送信要求CR1は、周波数チャネルFを用いて送信し、チャネル送信要求CR2は、周波数チャネルFを用いて送信するようにしてもよい(図4の点線で囲んだCR2(c41))。
【0054】
次に、図5(a)に示すように、端末通信装置User2がプライマリの周波数帯域である周波数チャネルFを用いて、チャネル受信準備完了通知CTS2を返信してから、時刻Tで周波数チャネルをチャネル送信要求CR1に基づきFからFへ切り替えてもよい。このようにすることで、チャネル送信要求CRに対して周波数の切り替えの時間が間に合わない場合に(周波数の切り替え後、安定するまでに所定の時間を要する場合に)、まず、チャネル受信準備完了通知CTSを送信してから切り替えるように制御することができる。また、図5(a)でCTS1はTより後に記載しているが、Tの前やCTS2の前に送信してもよい。
なお、端末通信装置User1とUser2チャネル送信要求CR1のみ送信する例を説明したが、周波数チャネルFでタイミングをずらしてUser1向けのチャネル送信要求CR1とUser2向けのチャネル送信要求CR2を2つ送信するようにしてもよい。さらに、端末通信装置User2が周波数チャネルFとFを同時に受信できるF=40MHzの場合、チャネル送信要求CR1は、周波数チャネルFを用いて送信し、チャネル送信要求CR2は、周波数チャネルFを用いて送信するようにしてもよい(図5(a)の点線で囲んだCR2(c51))。
【0055】
また、図5(b)に示すように、送信するデータをフラグメント構成にし、端末通信装置User2は、時刻Tで周波数切り替えを開始し、かつ時刻T〜Tの間、周波数チャネルFでデータを受信する。そして、端末通信装置User2は、後ろのブロックにおいて周波数チャネルFを用いてデータを受信することで、端末通信装置User2に周波数切り替えに十分な時間を与えることもできる。
【0056】
なお、端末通信装置User1とUser2へチャネル送信要求CR1のみ送信する例を説明したが、周波数チャネルFでタイミングをずらしてUser1向けのチャネル送信要求CR1とUser2向けのチャネル送信要求CR2を2つ送信するようにしてもよい。さらに、端末通信装置User2が周波数チャネルFとFを同時に受信できる動作クロック2Fの場合、チャネル送信要求CR1は、周波数チャネルFを用いて送信し、チャネル送信要求CR2は、周波数チャネルFを用いて送信するようにしてもよい(図5(b)の点線で囲んだCR2(c53))。この場合、端末通信装置User2は、フラグメント構成されたデータを、時刻Tから周波数チャネルFで受信するようにしてもよい(図5(b)の点線で囲んだデータ(c54))。このようにしてc54の信号の中の既知信号から、周波数ずれやクロックずれについてある程度補正を行うこともできる。また、Fの周波数チャネルを使い始めるTのタイミングは任意の数のフラグメントデータの後に設定することができる。または、c54のような他端末通信装置への信号の既知信号部分のみを復号して、既定の品質で受信されることが確認できた場合に、ACK2を、周波数チャネルFを用いて送信し、このACK2を確認したのち、Tを基地局通信装置が設定し、User2へのデータの送信を開始するようにしてもよい。
【0057】
おな、図4、図5におけるチャネル送信要求CR2は、User1とUser2には受信できない場合があるが、送信権を得て、NAV(Network allocation vector)を構築して周波数チャネルFにおけるパケットの送信禁止区間を作成する効果が期待できる。この必要がない場合には、通信相手がいない信号となるため省略することもできる。
【0058】
次に、図6では、基地局通信装置が3つ以上の周波数チャネルをカバーするADC、及びDACを有することを仮定し(ADCとDACの動作クロック≧3F)、通信相手としては、1つの周波数チャネルをサポートする端末通信装置User1(ADCとDACの動作クロック=F)と2つの周波数チャネルをサポートし、周波数切り替え回路205を有するUser2(ADCとDACの動作クロック=2F)との通信方法を示している。
【0059】
まず、User1、User2共にプライマリの周波数チャネルである周波数チャネルFの信号を検出しているものとする。基地局通信装置から周波数チャネルF〜Fを用いて、チャネル送信要求CR1〜CR3が送信される。端末通信装置User1は、図4と同様の動作を行う。
【0060】
一方、端末通信装置User2は、周波数切り替え機能を有し、2Fの帯域を用い2つの周波数チャネルを受信できる。この場合、端末通信装置User2は、端末通信装置User1と同様に周波数チャネルFでチャネル送信要求CR1信号を受信する。そして、送信要求抽出回路207は、受け取った通知信号から自端末通信装置に対する通信情報であるチャネル送信要求信号CR1を抽出し、抽出した周波数チャネルFおよびFを用いてデータの送信を行うという通信情報を瞬時基準信号周波数切り替え回路205と通知信号送信回路206とに出力する。
【0061】
次に、瞬時基準信号周波数切り替え回路205は、受け取った通信装置情報に基づいて、無線部203−1〜203−Mに対して周波数チャネルFとFとを用いてデータを受信するように周波数の指定を行い、無線部203−1〜203−Mは基準信号の周波数を変更し、周波数チャネルFとFの受信データが受信信号復号回路202に出力されるように切り替える。切り替えが終わると、無線部203−1〜203−Mは、周波数チャネルFでチャネル受信準備完了通知CTS2とCTS3を基地局装置に送信する。図6で示されるUser2へのデータが基地局通信装置から送信されると、端末通信装置User2は、周波数チャネルFとFとを用いてデータを受信する。データ受信終了後、受信信号復号回路202は、誤りがないことを確認後、正常受信情報を通知信号送信回路206に出力し、無線部203−1〜203−Mを介して、周波数チャネルFを用いて確認応答ACK2が基地局通信装置に送信される。次に、確認応答ACK2送信終了後、瞬時基準信号周波数切り替え回路205は、周波数チャネルをFとFからFを含む周波数チャネルに時刻Tで切り替えて戻す。
このように制御することで、User1のクロック信号の周波数F+User2のクロック信号の周波数2Fの広い周波数帯域3Fを有効に活用して送信を行うことができ、スループットを向上させることができる。ここで、例えばF=20MHzの場合には、3F=60MHzの帯域を用いて通信できる。
【0062】
ここで、周波数切り替え回路205による周波数変換動作の確認のみを通知する場合には、チャネル受信準備完了通知CTS3を送信しないようにしてもよい。また、基地局通信装置でチャネル情報を利用したビームフォーミングなどの信号処理を行う場合や、NAVを構築する場合には、CTS3が必要となる。また、チャネル受信準備完了通知CTS2〜CTS3を周波数的に空白のない連続信号でつなげたものとして送信を行うようにしてもよい。
【0063】
また、図3、図4の説明と同様に、端末通信装置User2が周波数チャネルF〜Fを同時に受信できる動作クロック3Fの場合、チャネル送信要求CR1は、周波数チャネルFを用いて送信し、チャネル送信要求CR2は、周波数チャネルFを用いて送信し、チャネル送信要求CR3は、周波数チャネルFを用いて送信するようにしてもよい(図6の点線で囲んだCR2(c61)、CR3(c62))。この場合、端末通信装置User2は、確認応答ACK2のみではなく周波数チャネルFで確認応答ACK3を送信するようにしてもよい(図6の点線で囲んだ確認応答ACK3(c64))。
【0064】
なお、第1実施形態において、端末通信装置に瞬時基準信号周波数切り替え回路205を有する例を説明したが、図2に示す構成において、送受信のためのADC、及びDACの最大クロック信号の周波数などの通信装置情報を基地局通信装置に通知する手段は必須であるが、基準信号周波数(クロック信号の周波数)を切り替える手段である瞬時基準信号周波数切り替え回路205は、用途に応じて必須ではない。例えば、基準信号周波数を切り替えるのではなく、周波数チャネルF〜Fのどの周波数帯域を使用して受信するか切り替えるようにしても良い。図6の場合においても、User2が3F以上の動作クロックを有する場合には、周波数切り替え機能無しに、周波数チャネルFとFを用いることができる。
【0065】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図7は、本第2実施形態による基地局通信装置の構成例を示すブロック図である。基地局通信装置は、データ出力回路300、送信信号変換回路301、通知信号挿入回路302、無線部303−1〜303−M、アンテナ304−1〜304−M、通信装置情報記憶回路305、通信方法決定回路306、チャネル情報推定回路307、及び送信ウエイト算出回路308から構成されている。
【0066】
データ出力回路300は、通信方法決定回路306が出力する通信装置情報を受け取り、指定された通信相手宛のデータを、受け取った通信方式情報に基づき変調方式・符号化方式に応じてインターリーブ・変調・符号化して送信信号変換回路301に出力する。
送信信号変換回路301は、データ出力回路300が出力するデータと、送信ウエイト算出回路308が出力する送信ウエイト情報を受け取り、入力されたデータに送信ウエイトを乗算し、変換した信号を通信信号挿入回路302に出力する。
【0067】
通知信号挿入回路302は、送信信号変換回路301が出力する変換された信号と、通信方法決定回路306が出力する通信装置情報とを受け取り、受け取った通信装置情報に基づき、変換された信号の所定の場所に各通信相手である端末通信装置に対する周波数、及び変調方式・符号化率を表す送信モードを通知する信号を挿入した送信信号を生成し、生成した送信信号を無線部303−3〜303−Mに出力する。
【0068】
無線部(送信部、受信部)303−3〜303−Mは、通知信号挿入回路302から送信信号を、送信する周波数に変換し、アンテナ304−1〜304−Mにより送信する。また、無線部303−1〜303−Mは、送受信のためのADC、及びDACを備えている。ADCは、アンテナ304−1〜304−Mが受信した信号をデジタル信号に変換して通信装置情報記憶回路305、及びチャネル情報推定回路307に出力する。DACは、通知信号挿入部302からのデジタル信号をアナログ信号に変換してアンテナ304−1〜304−Mで送信する。すなわち、無線部303−1〜303−M、及アンテナ304−1〜304−Mは、無線信号の送受信を行う。
【0069】
チャネル情報推定回路307は、無線部303−3〜303−Mが出力する受信信号を受け取り、受け取った受信信号を復号する。また、チャネル情報推定回路307は、受け取った受信信号から通信相手通信装置である端末通信装置のアンテナと基地局通信装置のアンテナ間のチャネル情報を推定し、チャネル情報および信号の復号の際に得られた端末通信装置情報を通信装置情報記憶回路305へ出力する。なお、チャネル情報の推定は、例えば基地局通信装置、端末通信装置で互いに既知である信号を送信し、受信した信号の情報から、もともとの既知信号がどのような変化を受けたかを解析することで、チャネル情報を得ることができる。または、端末通信装置が、下りリンクにおけるデータを復号する際に用いたチャネル情報を、基地局通信装置にフィードバックすることで、この情報からチャネル情報を得ることもできる。
【0070】
通信装置情報記憶回路305は、チャネル情報推定回路306が出力するチャネル情報と端末通信装置情報とを受け取り、通信相手となる端末通信装置ごとに記憶する。例えば、動作クロックや、マルチユーザMIMOモードの有無、周波数切り替え機能の有無、時間的な安定性のうち少なくとも一つを含む端末情報と、対応する端末通信相手装置の最新のチャネル情報を更新しながら記憶する。通信を行う一つまたは複数の端末通信装置が決定されると、通信装置情報記憶回路305は、対応する端末通信装置の端末情報、またはチャネル情報、またはその両方を通信方法決定回路306と送信ウエイト算出回路308に出力する。
【0071】
通信方法決定回路306は、通信装置情報記憶回路305が出力する通信装置情報を受け取り、受け取った通信装置情報、またはチャネル情報、またはその両方から、通信に用いる周波数チャネルの割り当て、端末通信装置に対応するストリーム数、変調方式・符号化方式を含む送信モードを決定する。また、通信方法決定回路306は、通信相手となる端末通信装置に対し送信するCRを生成し、通知信号挿入回路302へ出力し、決定した通信方式情報をデータ出力回路300、及び通知信号挿入回路302に出力する。なお、通信方法決定回路306は、通信相手となる端末通信装置の選択を、受け取った通信装置情報、またはチャネル情報、またはその両方から行うこともできるし、外部から通信を行う対象となる端末通信装置を指定するようにしてもよい。
【0072】
送信ウエイト算出回路308は、通信装置情報記憶回路305が出力するチャネル情報と、通信方法決定回路306が決定した通信相手、送信モードの情報を受け取り、受け取った通信方法とチャネル情報とに基づいて、送信ウエイトを演算する。また、送信ウエイト算出回路308は、通信相手が決定される前に、通信装置情報記憶回路305に記憶されている情報を基に通信相手の組み合わせによる伝送特性を評価し、通信方法決定回路306に通知しておくこともでき、通信方法決定回路306が通信相手や送信モードを決定する際に上記評価結果を用いることもできる。
【0073】
次に、本第2実施形態による具体的な制御方法を図8〜図11を参照して説明する。図8〜図11は、本第2実施形態による制御方法を説明するための概念図である。なお、図8〜図11において、前提条件として、プライマリチャネルには、周波数チャネルFが設定されている。また、端末通信装置は、図2と同じである。
【0074】
図8では、基地局通信装置が2つ以上の周波数チャネルをカバーするADC、及びDACを有することを仮定し(ADCとDACの動作クロック≧2F)、通信相手としては、1つの周波数チャネルをサポートする端末通信装置User1(ADCとDACの動作クロック=F)と2つの周波数チャネルをサポートするUser2(ADCとDACの動作クロック=2F)との通信方法が示されている。
【0075】
ここで、これら2つの通信相手は、マルチユーザを空間多重するマルチユーザMIMOモードを有することとする。マルチユーザMIMO送信とは、送信側でチャネル情報を利用することで、複数の通信相手に同一時間、同一周波数を用いて送信することを可能にする技術であり、Block diagonalization algorithm、Succesive optimization algorithm、Dirty paper codingなどが知られており、いずれも送信を行う通信装置では、精度の高いチャネル情報を必要とする。図中の3つ目のUsersと記載されている軸は、用いているマルチユーザMIMO送信により通信相手を多重していることを示している。
【0076】
まず、基地局通信装置は、周波数チャネルFで、チャネル送信要求CR1を送信し、周波数チャネルFで、チャネル送信要求CR2を送信する。このチャネル送信要求CR1には、これからUser1とUser2とに通信を行うこと、User1とは、周波数チャネルF2で、User2とは、周波数チャネルFと周波数チャネルFとで送信を行うことを通知する信号が入っている。このとき、周波数チャネルFに2つの通信相手が割り当てられていることから、マルチユーザMIMOモードであることを判断することもできるし、マルチユーザMIMO通信を行うことを通知する信号をチャネル送信要求CR1に含めることもできる。
【0077】
端末通信装置User1の無線部203−1〜203−Mは、第一実施形態と同様に、周波数チャネルFでチャネル送信要求CR1を受信する。次に、送信要求抽出回路207は、受け取った通知信号から通信装置情報を抽出し、抽出した通信装置情報を通知信号送信回路206に出力する。次に、通知信号送信回路206は、無線部203−1〜203−Mに通信装置情報を出力し、受け取った周波数チャネルFで送信を行うという通信情報に基づき、周波数チャネルFでチャネル受信準備完了通知CTS1をアンテナ204−1〜204−Mの少なくとも一つを介して基地局通信装置へ送信する。
【0078】
一方、端末通信装置User2も同様に無線部203−1〜203−Mは、周波数チャネルFでチャネル送信要求CR1を受信する。次に、送信要求抽出回路207は、受け取った通知信号から通信装置情報を抽出し、抽出した通信装置情報を通知信号送信回路206に出力する。次に、通知信号送信回路206は、無線部203−1〜203−Mに通信装置情報を出力し、受け取った周波数チャネルFとFで送信を行うという通信情報に基づき、周波数チャネルFでチャネル受信準備完了通知CTS2をアンテナ204−1〜204−Mの少なくとも一つを介して基地局通信装置へ送信する。または、CR2を受信することで、周波数チャネルFでも送信を行うという通信情報を取得することもできる。また、受信準備完了通知を、周波数チャネルFを用いて、図8のCTS3のように送信を行うこともできる。
【0079】
チャネル受信準備完了通知CTS送信時、チャネル推定用のパイロット信号CP(Channel estimation pilot)をCTSに含めて送信することもできる(パイロット信号を含めるステップ)。このパイロット信号CPにより、基地局通信装置は、チャネル情報推定から送信までの時間遅延量を減らすことができ、伝搬環境の時間的変動に対する特性劣化を軽減しマルチユーザMIMO用の信号処理の精度を向上することができる。マルチユーザMIMO用にCPを送信すること以外にも、送信側で固有ベクトル伝送などの送信指向性制御技術のために用いることもできる。ただし、マルチユーザMIMOモードを行っていない周波数チャネルFにおけるCTS2には、パイロット信号CP2を必ずしも付加する必要はなく、またはCTS2を送信しないでCTS3のみを用いて受信準備完了を通知することもできる。また、周波数チャネルFにおけるCTS1とCTS3のように重複する周波数チャネルで2つのCPを含むCTSを送信する場合には、予めCR1で端末通信装置ごとに遅延時間を通知し、その遅延時間分遅れてCTSを返すように設定することもできる(遅延量情報を含めるステップ)。
【0080】
次に、基地局通信装置の無線部303−1〜303−Mは、チャネル受信準備完了通知CTS1〜3のうち少なくとも一つを受信すると、周波数チャネルFでマルチユーザMIMOモードによる空間多重を行いUser1とUser2に送信し、周波数チャネルFではUser2に対しデータの送信を行う。
【0081】
次に、端末通信装置User1の無線部203−1〜203−Mは、周波数チャネルFでデータを受信し、データ受信終了後、周波数チャネルFで確認応答ACK1を基地局通信装置に送信する。さらに、端末通信装置User2の無線部203−1〜203−Mは、周波数チャネルFとFとでデータを受信し、データ受信終了後、周波数チャネルFで確認応答ACK2を基地局通信装置に送信する。
確認応答ACK送信の際、端末通信装置User1の確認応答ACK1を周波数チャネルFで、User2の確認応答ACK2を周波数チャネルFで送信すると、基地局通信装置において信号が衝突することがない。このため、より広い帯域を有する端末通信装置に対し、他の端末通信装置と重複しない周波数チャネルを、CRを用いて通知することができる。
または、周波数チャネル毎に確認応答ACKを返信する場合には、確認応答ACK3を送信することもできる(図8の点線で囲んだACK3(c82))。この場合には、送信タイミングをずらすように、チャネル送信要求CR1によりACK送信用遅延時間を通知し、自端末装置の遅延時間分送らせてACKを送信することもできる。このように制御することで、通信に用いることができる周波数帯域を増加させ、さらに通信相手をマルチユーザMIMOで多重して通信速度を増加することができる。
【0082】
また、基地局側で端末通信装置User1とUser2とで干渉を生じないように送信することで、User1と端末通信装置は、マルチユーザMIMOモードが行われていることを理解させずに復号させることもできる。この場合、CR1の中にUser1には読み取れない形でUser2への通信情報を入れたり、周波数チャネルFを用いてCR2にUser2へ周波数チャネルFとFを用いて送信するという送信情報を含めるたりできる。チャネル送信要求CR1、CR2は、同様の信号としてもよいし、チャネル送信要求CR1のみに信号を入れることもできる。チャネル送信要求CR2は、送信禁止区間を得るためのダミー信号であってもよい。
【0083】
次に、図9では、基地局通信装置で3つ以上の周波数チャネルをカバーするADC、及びDACを有することを仮定し(ADCとDACの動作クロック≧3F)、通信相手としては、1つの周波数チャネルをサポートする端末通信装置User1とUser3(ADCとDACの動作クロック=F)、及び2つの周波数チャネルをサポートし、周波数切り替え回路205を有するUser2(ADCとDACの動作クロック=2F)との通信方法が示されている。
【0084】
まず、端末通信装置User1〜User3は、共にプライマリの周波数チャネルである周波数チャネルFの信号を検出する。基地局通信装置から周波数チャネルFでチャネル送信要求CR1が送信され、周波数チャネルFでチャネル送信要求CR2が送信され、周波数チャネルFでチャネル送信要求CR3が送信される。
次に、端末通信装置User1とUser3との無線部203−1〜203−Mは、周波数チャネルFでチャネル送信要求CR1を受信し、チャネル受信準備完了通知CTS信号が重ならないようにタイミングをずらして周波数チャネルFでチャネル受信準備完了通知CTS1とCTS3をそれぞれ基地局通信装置へ送信する。チャネル受信準備完了通知CTS1とCTS3との送信の際、チャネル受信準備完了通知CTSの送信タイミングを、パイロット信号CRによって遅延時間の指定することで調整することができる。
【0085】
一方、端末通信装置User2の無線部203−1〜203−Mも、周波数チャネルFでチャネル送信要求CR1を受信する。次に、送信要求抽出回路207は、受信したチャネル送信要求CR1に基づきデータの受信を周波数チャネルFとFで行うことを抽出し、抽出した結果に基づき、瞬時基準信号周波数切り替え回路205は、無線部203−1〜203−Mの基準周波数FからFとFに切り替え、周波数チャネルFでチャネル受信準備完了通知CTS2を基地局通信装置へ送信する。
なお、このチャネル受信準備完了通知CTSに、マルチユーザMIMO送信を行うためのチャネル情報を推定するためのパイロット信号CPを含めて送信することもできる。
【0086】
なお、図9でのチャネル受信準備完了通知CTS2(c91)や、データ信号(c92)が周波数チャネルFとFにかかって周波数方向に長い構造をしているのは、2Fの周波数帯域を用いる周波数チャネルFとFとに低クロックのUserが多重されていないので、周波数チャネルFとFの境界にガードバンドを用いる必要がないためであり、図8の場合に比べ、2Fを用いる通信相手の通信装置は、周波数を有効に利用できる。このことから、同じクロック信号の周波数を用いる通信相手の通信装置は、同じ周波数帯域に多重した方が、周波数のガードバンドを設定しなくていい分だけ、スループットを向上させることができる。周波数チャネルFとFでは、マルチユーザMIMOモードを用いていないので、チャネル受信準備完了通知CTS2やCP2を送信しないこともできるし、NAVを周波数チャネルFに構築しておくためにUser2ではCTS2を復号しないが、送信することもできる。
【0087】
データ受信後、端末通信装置User1とUser3とは、周波数チャネルFで確認応答ACK1、ACK3を送信し、端末通信装置User2では、周波数チャネルFで確認応答ACK2を送信した後、周波数切り替え回路205により元の周波数チャネルFを含む周波数チャネルに変更する(時刻T)。ACK2は周波数チャネルF4で送信することもできるし、T後に周波数チャネルFで送信することもできる。
【0088】
なお、端末通信装置User1〜User3がプライマリ周波数チャネルFでチャネル送信要求CR1を受信する例を説明したが、端末通信装置User2は周波数チャネルFでチャネル送信要求CR2(c93)または周波数チャネルFでチャネル送信要求CR3(c94)から通信情報を取得してもよい。また、チャネル送信要求CR1〜CR3の少なくとも一つに、それぞれの端末通信装置がどの周波数チャネルを用いてデータを受信するかの通信情報が含まれている。
【0089】
次に、図10では、基地局通信装置が4つの周波数チャネルをカバーするADC、及びDACを有することを仮定し(ADCとDACの動作クロック≧4F)、通信相手としては、1つの周波数チャネルをサポートする端末通信装置User1とUser3(ADCとDACの動作クロック=F)、2つの周波数チャネルをサポートし、周波数切り替え回路205を有するUser2(ADCとDACの動作クロック=2F)、及び4つの周波数チャネルをサポートするUser4(ADCとDACの動作クロック=4F)との通信方法を示している。
【0090】
まず、端末通信装置User1〜4は、共にプライマリの周波数チャネルをFとしている。基地局通信装置から周波数チャネルF〜Fで、チャネル送信要求CR1〜CR4が送信され、各端末通信装置の各無線部203−1〜203−Mは、周波数チャネルFでチャネル送信要求CR3を受信する。チャネル送信要求CR3受信後、端末通信装置User1は、自通信装置への信号が周波数チャネルFであることを、User2は、自通信装置への信号が周波数チャネルFとFであることを、User3は、自通信装置への信号が周波数チャネルFであることを、User4は、自通信装置への信号が周波数チャネルF〜Fで、FとF、FとFの間がガードバンドであることを各送信要求抽出回路207が抽出し、周波数を切り替える必要があるUser1とUser2は抽出した通信装置情報を基準周波数切り替え回路205に出力する。そして、時刻Tにおいて、各基準周波数切り替え回路205は、受け取った通信装置情報に基づき、端末通信装置User1の無線部203−1〜203−Mを周波数チャネルFで受信するように切り替え、端末通信装置User2の無線部203−1〜203−Mを周波数チャネルF〜Fで受信するように切り替える。
【0091】
次に、端末通信装置User1の無線部203−1〜203−Mは、周波数チャネルFでチャネル受信準備完了通知CTS1を基地局通信装置に送信し、端末通信装置User2の無線部203−1〜203−Mは、周波数チャネルF〜Fでチャネル受信準備完了通知CTS2を基地局通信装置に送信し、端末通信装置User3の無線部203−1〜203−Mは、周波数チャネルFでチャネル受信準備完了通知CTS3を基地局通信装置に送信し、端末通信装置User4の送信信号変換部101は、チャネル送信要求CRに含まれる情報から、4つ周波数チャネルの間のどこにガードバンドが設定されるかを判定し、無線部203−1〜203−Mは、周波数チャネルF〜Fでチャネル受信準備完了通知CTS4、CTS5、CTS6のうち少なくとも一つを用い、基地局通信装置に送信する。これらCTS1〜6には、基地局がチャネル情報を推定するためのCP1〜6を含めることもできる。図10でガードバンドが設定されているのは、周波数チャネルFとFの間、周波数チャネルFとFの間である。このとき、チャネル受信準備完了通知CTSの送信タイミングを、チャネル送信要求CRによって遅延時間の指定などにより調整することができる。
【0092】
図10でのチャネル受信準備完了通知CTS2(c101)やCTS6(c102)、およびデータ信号c103やc104が周波数方向に長い構造をしているのは、2F(=40MHz)の周波数帯域を用いる周波数チャネルFとFとに低クロックのUserが多重されておらず、多重されているUser4がクロック4Fを有しているためである。
【0093】
図10では、周波数チャネルFとFの間、周波数チャネルFとFの間は、端末通信装置User1〜User3の通信装置のクロックの性能から、帯域外の信号が干渉信号とならないようにするために、ガードバンドが必要であるので、この区間には、データ信号は含まれない。端末通信装置User4は、周波数チャネルF〜Fと、周波数チャネルFとFとの境界のデータ信号の復号を行い、確認応答ACK4を送信する。ACK4は、周波数チャネルF〜Fいずれの周波数で送ることもできる。
データ受信完了後、端末通信装置User1は、周波数チャネルFで確認応答ACK1を基地局通信装置に送信し、確認応答ACK1送信後、瞬時基準信号周波数切り替え回路205は、周波数チャネルをFからFに戻す(時刻T)。さらに、端末通信装置User2は、周波数チャネルFで確認応答ACK2を基地局通信装置に送信し、確認応答ACK2送信後、瞬時基準信号周波数切り替え回路205は、周波数チャネルをFとFからFを含む周波数チャネルに戻す(時刻T)。さらに、端末通信装置User3は、周波数チャネルFで確認応答ACK3を基地局通信装置に送信する。
【0094】
なお、端末通信装置User1〜User4がプライマリ周波数チャネルFでチャネル送信要求CR2を受信する例を説明したが、端末通信装置User2は周波数チャネルFでチャネル送信要求CR2(c106)を受信し、端末通信装置User4は周波数チャネルFでチャネル送信要求CR4(c107)を受信するようにしてもよい。また、チャネル送信要求CR1〜CR4のうち少なくとも一つには、それぞれの端末通信装置がどの周波数チャネルを用いてデータを受信するかの通信情報が含まれている。
【0095】
また、従来技術では、マルチユーザMIMOをサポートしていない端末通信装置が1つでも存在する場合には、一番低い性能を有する端末通信装置に合わせるようにしていたが、本第2実施形態によれば、性能が低い端末通信装置が存在した場合、他の高性能な端末通信装置が性能の低い端末通信装置と異なる周波数帯域を用いることで、高いスループットを実現することができる。
【0096】
また、受信や復号に用いる周波数を変更する方法を利用して、マルチユーザMIMOをサポートしない端末通信装置と通信しながら、マルチユーザMIMO通信を行う例を示す。図9の場合で、プライマリの周波数チャネルをFとして考え、説明する。ここで、User2はマルチユーザMIMOモードを持っておらず、他の端末通信装置と同じ周波数を共有することができないものとする。このような場合、瞬時基準信号周波数切り替え回路205は、User1とUser3に周波数チャネルをFからFへ切り替え、このプライマリではない周波数チャネルにおいてマルチユーザMIMOなどの高度な信号処理を行うことで、マルチユーザMIMOのモードを持たない端末通信装置が相手でも、高いスループットを得ることができる。また、このような場合、CR2の信号はUser2では理解できない形式を用いるか、もしくは、CR1を用いて、User1とUser2に通信を行う周波数チャネルとマルチユーザMIMOモードを通知することで、User2は他の端末通信装置を意識することなく、従来の通信方式で通信するだけで、全体としてのスループットが上昇することになる。
【0097】
また、図10の場合、周波数チャネルFにおけるUser4へのデータ(c105)をなくすことで、同様の通信を説明できる。すなわち、User3が単一の周波数チャネルしか扱えず、周波数切り替え機能もマルチユーザMIMOモードも備えず、プライマリの周波数チャネルFのみでしか通信できない場合を説明する。この場合においても、基地局通信装置は、CR3の信号をUser3が認識できない形でUser1、User2、User4へ用いる周波数チャネルやマルチユーザMIMOモードについて通知し、プライマリの周波数チャネルでマルチユーザMIMOを行うことで、高いスループットを実現することができる。
【0098】
また、端末通信装置を多重する技術としてマルチユーザMIMO技術を挙げたが、符号化による多重や、インターリーバによる多重など、その他のユーザ多重技術を用いることもできる。この場合、CTS信号にCPを付加する必要は必ずしもない。
【0099】
また、利用する帯域が増大し、その中の一部のみを特定の端末通信装置に割り当てると、帯域外からの干渉を生じる場合があるため、ガードバンド近くに配置した端末通信相手への変調方式の多値数を下げたり、符号化率を下げたりすることができる。
【0100】
また、マルチユーザMIMOモードを含む場合でも、瞬時基準信号周波数切り替え回路205が要する時間分だけ十分な時間を与えるように図5(a)や(b)のように制御することができる。この場合、図5(b)で示したようにセグメント送信を行い、セグメント通信の途中から、図8〜10のようなフォーマットの通信を開始するように段階的に通信形態を変更していくこともできる。
【0101】
図12〜図14に本発明の通信フローを示す。図12は、本発明の第1実施形態の通信フローの一部である。通信が始まると、端末通信装置は、自端末通信装置の有するADCまたはDACのクロック信号の周波数情報とダウンコンバートする基準信号の瞬時切り替えモードの有無を示す情報とのうち少なくとも1つを含む通信装置情報を基地局通信装置に通知する(ステップS101)。基地局通信装置は、端末通信装置から通信装置情報を受信し、受信した通信装置情報を通信装置情報記憶回路105が書き込んで記憶させる(ステップS102)。
通信相手となる端末通信装置が決定後、通信方法決定回路106は周波数チャネルの割り当てを決定し(ステップS103)、変調方式や符号化方式などからなる送信モードを決定する(ステップS104)。決定された周波数チャネル割り当て・送信モードに基づき、基地局通信装置は、送信信号変換回路101、通知信号挿入回路102、無線部103−1〜103−M、アンテナ104−1〜104−Mを介して、端末通信装置にデータの送信を行う。(ステップS105)
【0102】
図13は、本発明の第2実施形態の通信フローの一部である。通信が始まると、端末通信装置は、自端末通信装置の有するADCまたはDACのクロック信号の周波数情報とダウンコンバートする基準信号の瞬時切り替えモードの有無、マルチユーザMIMOモードの有無を示す情報とのうち少なくとも1つを含む通信装置情報を基地局通信装置に通知する(ステップS201;通信装置情報通知ステップ)。
次に、基地局通信装置のチャネル情報推定回路307は、受信した通信装置情報を用いて端末通信装置のアンテナとの間のチャネル情報を推定し、推定したチャネル情報と受信した通信装置情報とを通信装置情報記憶回路305に出力する(ステップS202;チャネル情報推定ステップ)。
次に、通信装置情報記憶回路305は、チャネル情報推定回路307が出力するチャネル情報と通信装置情報とを受け取り、受け取ったチャネル情報と通信装置情報を書き込んで記憶させ(ステップS203;通信装置情報記憶ステップ)、記憶させたチャネル情報と通信装置情報を通信方法決定回路306と送信ウエイト算出回路308とに出力する。
【0103】
通信相手となる端末通信装置が決定後、通信方法決定回路306は、周波数チャネルの割り当ておよびマルチユーザMIMOによる空間多重の有無・組み合わせを決定する(ステップS204;周波数割り当て・マルチユーザMIMOモード決定ステップ)。
次に、送信ウエイト算出回路308は、通信装置情報記憶回路305から受け取ったチャネル情報を用いて送信ウエイトを算出し(ステップS205;送信ウエイト算出ステップ)、算出したウエイト値を送信変換回路301と通信方法決定回路306とに出力する。
次に、通信方法決定回路306は、通信装置情報記憶回路305が出力するチャネル情報と通信装置情報に基づき、変調方式や符号化方式などからなる送信モードを決定する(ステップS206)。
次に、決定された周波数チャネル割り当て・マルチユーザMIMOモード・送信モードに基づき、基地局通信装置は、送信信号変換回路301、通知信号挿入回路302、無線部303−1〜303−M、アンテナ304−1〜304−Mを介してデータの送信を行う(ステップS207;送信ステップ)。
【0104】
図14は、本発明の第1実施形態または第2実施形態の端末通信装置と基地局通信装置との通信フローの一部である。
通信が始まると、端末通信装置は、自端末通信装置の有するADCまたはDACのクロック信号の周波数情報とダウンコンバートする基準信号の瞬時切り替えモードの有無、マルチユーザMIMOモードの有無を示す情報とのうち少なくとも1つを含む通信装置情報を基地局通信装置に通知する(ステップS301;通信装置情報通知ステップ)。
基地局通信装置は、端末通信装置が出力する通信装置情報を受信し、受信した通信装置情報を通信装置情報記憶回路105(305)が、チャネル情報と通信装置情報を書き込んで記憶させ(ステップS401;通信装置情報記憶ステップ)、記憶させたチャネル情報と通信装置情報を通信方法決定回路106(306)に出力する。
通信相手となる端末通信装置が決定後、通信方法決定回路106(306)は、通信装置情報記憶回路105(305)が出力するチャネル情報と通信装置情報を用いて周波数チャネルの割り当ておよびマルチユーザMIMOによる空間多重の有無・組み合わせを決定し(ステップS402;周波数チャネル割り当て決定ステップ)、決定した情報をデータ出力回路100(300)と通知信号挿入回路102(302)に出力する。
【0105】
次に、基地局通信装置は、決定された周波数チャネルの割り当てに基づき、チャネル送信要求信号を、通知信号挿入回路102(302)、無線部103−1〜103−M(303−1〜303−M)の少なくとも一つ、アンテナ104−1〜104−M(304−1〜304−M)の少なくとも一つを介して送信する(ステップS403;チャネル送信要求信号送信ステップ)。
次に、端末通信装置は、アンテナ204−1〜204−Mの少なくとも一つ、無線部203−1〜203−Mの少なくとも一つを介して信号を受信する。次に、受信信号復号回路202は、受信した信号の復号を行い、復号した信号を通知信号抽出回路201に出力する。次に、通知信号抽出回路201は、受信信号復号回路202が出力する復号された信号を受け取り、受け取った信号から通知信号を抽出し、抽出した通知信号を送信要求抽出回路207に出力する(ステップS302;周波数チャネルの割り当て抽出ステップ)。
【0106】
次に、送信要求抽出回路207は、通知信号抽出回路201が出力する通知信号を受け取り、受け取った通知信号から自端末通信装置に対して基地局通信装置が送信を行う周波数チャネルを取得する。
取得した周波数チャネルが現在受信に使用している周波数チャネルと同じであれば、通信信号送信回路206は、受信準備完了通知CTSを無線部203−1〜203−Mの少なくとも一つおよびアンテナ204−1〜204−Mの少なくとも一つを介して送信する。また、取得した周波数チャネルが現在復号している周波数チャネルに含まれない場合、送信要求抽出回路207は、周波数チャネル情報を通知信号送信回路206と瞬時基準信号切り替え回路205とに通知する。次に、瞬時基準信号切り替え回路205は、送信要求抽出回路207が出力する周波数チャネル情報を受け取り、受け取った周波数チャネル情報に基づき、無線部203−1〜203−Mのダウンコンバートする周波数を変更する(ステップS303;周波数変更ステップ)。
次に、通知信号送信回路206は、送信要求抽出回路207が出力する周波数チャネル情報に応じて、受信準備完了通知CTSを無線部203−1〜203−Mの少なくとも一つおよびアンテナ204−1〜204−Mの少なくとも一つを介して送信する(ステップS304;通信準備完了通知ステップ)。
【0107】
次に、基地局通信装置の通信方法決定回路106(306)は、変調方式や符号化方式などからなる送信モードを決定し(ステップS404;送信モード決定ステップ)、決定した送信モード情報をデータ出力回路100(300)と通知信号挿入回路102(302)に出力する。
次に、チャネル送信要求送信後一定の時間後、もしくはCTSを受信後、指定した通信相手となる端末通信装置に、指定した周波数チャネルを用い通知信号挿入回路102(302)、無線部103−1〜103−M(303−1〜303−M)の少なくとも一つ、アンテナ104−1〜104−M(304−1〜304−M)の少なくとも一つを介してデータを送信する(ステップS405;送信ステップ)。
【0108】
次に、端末通信装置の無線部203−1〜204−Mの少なくとも一つおよびアンテナ204−1〜204−Mの少なくとも一つを介してデータを受信する(ステップS305)。
次に、受信信号復号回路202は、データをエラーなく復号できたことを確認し、エラー無く復号できた場合、通知信号送信回路206に正常受信情報を出力する。
正常受信情報を受け取り後、通知信号送信回路206は、ACKを無線部203−1〜203−Mの少なくとも一つおよびアンテナ204−1〜204−Mの少なくとも一つを介して送信する(ステップS306;確認応答信号送信ステップ)。
また、復号に使用する周波数を切り替えていた場合、基準信号周波数切り替え回路205は、無線部203−1〜203−Mのダウンコンバートを行う周波数を元の周波数に戻す(ステップS307;周波数戻しステップ)。
【0109】
図11(a)〜図11(c)は、本第2実施形態による基地局通信装置の送信信号変換部101が行う周波数チャネルの割り当て方法の決定方法について説明するための概念図である。User1〜User5の5ユーザを考え、User1とUser2とは、1つの周波数チャネル、User3とUser4とは、2つの周波数チャネル、User5は、4つの周波数チャネルを検知可能であるとする。
【0110】
図11(a)では、ガードバンドを最小化するように、同じクロック信号の周波数のUserを同じ周波数チャネルにまとめるように構成している。このように周波数チャネルを割り当てることで、占有帯域の両端に必要となるガードバンドが周波数チャネルFと周波数チャネルFとの間に必要とされないため、周波数を有効に利用できる。
【0111】
図11(b)では、通信装置の不完全性(IQインバランス)の影響による特性劣化を考慮したチャネル配置である。ガードバンドは、全てのチャネル間に必要となるため、周波数の有効利用は必ずしもできていないが、装置不完全性により特性が劣化する周波数チャネルの端、周波数チャネルFとFにおいて、マルチユーザMIMOを行う通信相手数を中心の周波数チャネルFとFより小さく設定している。このように、中心周波数チャネルの動作特性を考慮することで、マルチユーザMIMOの多重数を決定することもできる。
【0112】
図11(c)では、ガードバンド最小化と、装置不完全性との双方を考慮してチャネルを割り当てたものであり、このように制御することで、周波数を有効に利用しつつ、装置不完全性による特性劣化も最小化することができる。
【0113】
なお、上述した実施形態において、ここまでチャネル送信要求信号CRとして表現していた信号系列は、IEEE802.11a、IEEE802.11g、IEEE802.11nで採用されている送信要求RTS(Request to send)として送信することもできる。
【0114】
また、チャネル送信要求CRの中に、確認応答ACKやチャネル受信準備完了通知CTSを返す際に用いる周波数チャネルを指定する信号を加え、確認応答ACKとチャネル受信準備完了通知CTSに用いる周波数チャネルを制御することもできる。
【0115】
また、チャネル情報を推定するためのパイロット信号CPは、基地局においてUplinkのチャネル情報を送信することを前提とした既知信号であってもよいし、通信相手通信装置で推定したDownlinkのチャネル情報でもよいし、それら両方でもよい。両方を含めた信号をパイロット信号CPで送信した場合には、基地局通信装置において、UplinkとDownlink情報のキャリブレーションを行うことができる。
【0116】
また、基地局通信装置は、チャネル受信準備完了通知CTSや確認応答ACKを送信するための遅延時間を指定する際に、そのタイミングの精度を高めるため、チャネル送信要求CRで遅延時間を指定し、信号を受信した際に、基地局通信装置において、どれだけの到来時間差で各通信相手からの信号を受信したのかを記憶することで、遅延時間の設定量を最適化できる。
【0117】
図中の条件で、基地局通信装置のADC、及びDACのクロック信号の周波数を3F以上と指定した場合があるが、送信を行う際に、全周波数チャネルの中心となるDC成分には雑音が乗るため、3Fのクロック信号の周波数が必要な場合には4Fを用いることで、このような問題を回避できる。また、通信を行う全周波数帯域を、通信システムの最小単位(ここではF)の2の階乗倍を用いることで、基地局通信装置のクロック信号の周波数を有効に利用できる。
【0118】
また、図3〜図6、図8〜図10において、2F以上のクロック信号の周波数を持つADCとDACを有するUserの端末通信装置において、通常動作では、周波数Fのクロックに切り替え、周波数チャネルFのみを検知し、チャネル受信準備完了通知CTSを検出して2F以上のクロックが必要であることを検出した後、2F以上のクロック信号の周波数に変更し、2つ以上の周波数チャネルを用いるようにし、データ受信後、周波数Fのクロックに変更することで、通信装置の消費電力を低く抑えることもできる。
【0119】
また、通信装置が複数の周波数チャネルを用いる場合、IQインバランス(装置の不完全性)など装置の問題により、DC成分に近い周波数チャネルの伝送品質がよくなる。よって、マルチユーザMIMOや高次の変調方式の適用に、DC周辺の周波数チャネルを用いることもできる。
【0120】
なお、本実施形態では、送信側として基地局通信装置を例に説明したが、基地局通信装置は固定でなくても良く、移動してもよい。
【0121】
また、本発明では、周波数チャネルを周波数帯域Fの複数のチャネルで表現したが、IEEE802.11a、IEEE802.11g、IEEE802.11nでは、この周波数チャネル内を、直交波分割多重方式(OFDM)を用いて、さらに複数のサブキャリアに分割して用いている。これらサブキャリアを複数束ねて、周波数帯域F以下のサブチャネルを構築して、独立の周波数チャネルとして上述の技術を用いることも可能である。
【0122】
なお、実施形態の図1、図2および図7の各部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM(Read Only Memory)、CD−ROM等の可搬媒体、USB(Universal Serial Bus) I/F(インタフェース)を介して接続されるUSBメモリー、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリーのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【符号の説明】
【0123】
100・・・データ出力回路
101・・・送信信号変換回路
102 通知信号挿入回路
103−1〜103−M、203−1〜103−M・・・無線部
104−1〜104−M、204−1〜204−M・・・アンテナ
105・・・通信装置情報記憶回路
106・・・通信方法決定回路
201・・・通知信号抽出回路
202・・・受信信号復号回路
205・・・瞬時基準信号周波数切り替え回路
206・・・通知信号送信回路
207・・・送信要求抽出回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局通信装置が受信信号のアナログ−デジタル変換装置(ADC)またはデジタル−アナログ変換装置(DAC)を備える複数の端末通信装置と同時に通信する通信方法において、
前記端末通信装置が、それぞれが有するADCまたはDACのクロック信号の周波数情報とダウンコンバートする基準信号の瞬時切り替えモードの有無を示す情報とのうち少なくとも1つを含む通信装置情報を、前記基地局通信装置に通知する通信装置情報通知ステップと、
前記基地局通信装置が、前記各端末通信装置から通知される前記各通信装置情報を抽出し、抽出した前記各通信装置情報を記憶する通信装置情報記憶ステップと、
前記基地局通信装置が、前記抽出された各通信装置情報に含まれる前記各クロック信号の周波数情報と前記各周波数切り替えモードの有無を示す情報に基づき、前記各端末通信装置に対する周波数チャネルの割り当てを決定する周波数チャネル割り当て決定ステップと、
前記基地局通信装置が、前記決定された各周波数チャネルの割り当てに基づいて、前記端末通信装置に対するデータ送信時の変調方式と符号化率からなる送信モードを決定する送信モード決定ステップと、
前記基地局通信装置が、前記端末通信装置に対する、前記決定された変調方式、符号化率、及び周波数チャネルの割り当てに基づき送信するデータを変換し、前記各端末通信装置にデータ送信を行う送信ステップと、
を備えることを特徴とする通信方法。
【請求項2】
前記基地局通信装置が、前記各端末通信装置から受信した受信信号に基づいて、前記端末通信装置との間における各チャネル情報を推定するチャネル情報推定ステップと、
前記推定されたチャネル情報と通信装置情報を、端末通信装置ごとに記憶する通信装置情報記憶ステップと、
前記基地局通信装置が、前記抽出された前記各通信装置情報に基づき、前記各端末通信装置に対するデータ送信に用いる周波数チャネルの割り当てと空間多重を行うマルチユーザMIMOモードを決定する周波数割り当て・マルチユーザMIMOモード決定ステップと、
前記基地局通信装置が、前記推定された各チャネル情報に基づき前記各端末通信装置のデータ送信に対する各送信ウエイト値を算出する送信ウエイト算出ステップと、
前記基地局通信装置が、前記決定された前記変調方式、前記符号化率、前記周波数チャネル割り当て、前記空間多重モード及び前記送信ウエイト値に基づき送信するデータを変換し、前記各端末通信装置に対してデータ送信を行う送信ステップと、
を更に備えることを特徴とする請求項1記載の通信方法。
【請求項3】
前記基地局通信装置が、前記各端末通信装置に対して、前記決定された各周波数チャネルの割り当てを含むチャネル送信要求信号を送信するチャネル送信要求信号送信ステップと、
前記端末通信装置が、前記チャネル送信要求信号から自端末通信装置に対する周波数チャネルの割り当てを抽出する周波数チャネルの割り当て抽出ステップと、
前記端末通信装置が、前記抽出された周波数チャネルの割り当てが現在データ受信している周波数チャネル外である場合、前記抽出された周波数チャネルの割り当てに基づいて周波数変換に用いる基準信号の周波数を変更することにより前記ADCまたは前記DACが変換を行う周波数チャネルを変更する周波数変更ステップと、
前記端末通信装置が、変更された前記周波数チャネルでデータ受信し、前記基地局通信装置からのデータ受信が完了したことを確認した後、前記基地局通信装置に対して、確認応答信号を変更された前記周波数チャネルで送信する確認応答信号送信ステップと、
前記端末通信装置が、前記確認応答信号の送信後、前記周波数チャネルを変更する前の周波数チャネルに戻し、または、前記クロック信号の周波数を変更する前の周波数に戻す周波数戻しステップと、
を更に備えることを特徴とする請求項1または2に記載の通信方法。
【請求項4】
前記端末通信装置が、前記周波数チャネルの割り当て抽出ステップまたは前記周波数変更ステップの後、データ受信の準備が完了したことを通知する通信準備完了通知信号を、前記基地局通信装置に送信する通信準備完了通知ステップ、
を更に備えることを特徴とする請求項3に記載の通信方法。
【請求項5】
前記基地局通信装置が、前記端末通信装置に対して前記決定された周波数チャネルの割り当てを通知する送信要求信号に、どの周波数チャネルを用いて前記確認応答信号を送信するかを指定するパイロット信号を含めるステップ、
を更に備えることを特徴とする請求項3に記載の通信方法。
【請求項6】
前記基地局通信装置が、前記決定された一つの周波数チャネルに複数の前記端末通信装置のデータを多重する場合、前記端末通信装置に対して前記決定された周波数チャネルを通知する送信要求信号に、前記確認応答信号、または、前記通信準備完了通知信号を送信する際の、前記端末通信装置に対する前記送信ウエイト算出部が算出した個別の遅延時間を指定する遅延量情報を含めるステップ、
を更に備えること特徴とする請求項3または4に記載の通信方法。
【請求項7】
前記基地局通信装置の周波数チャネル割り当て決定ステップが、前記決定された一つの周波数チャネルに複数の前記端末通信装置のデータを多重する場合、周波数チャネル間に設定するガードバンドの領域が少なくなるように、同じクロック信号の周波数のADCまたはDACを有する前記端末通信装置を同じ周波数チャネルに多重するように制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の通信方法。
【請求項8】
前記周波数チャネル割り当て決定ステップにおいて、送信を行う複数の前記端末通信装置のうちの少なくとも一つの端末通信装置が、同時同一周波数チャネルに複数の端末通信装置に向けたデータを多重する方式に関する情報を持たない場合に、当該端末通信装置が対応している周波数チャネル以外で、他の端末通信装置を同時同一周波数チャネルでデータを多重するように周波数チャネルの割り当てを行う
ことを特徴とする請求項2に記載の通信方法。
【請求項9】
基地局通信装置が受信信号のアナログ−デジタル変換装置(ADC)またはデジタル−アナログ変換装置(DAC)を備える複数の端末通信装置と同時に通信する通信システムにおいて、
前記端末通信装置は、
それぞれが有するADCまたはDACのクロック信号の周波数情報とダウンコンバートする基準信号の瞬時切り替えモードの有無を示す情報とのうち少なくとも1つを含む通信装置情報を、前記基地局通信装置に通知する通知信号送信回路、
を備え、
前記基地局通信装置は、
前記各端末通信装置から通知される前記各通信装置情報を抽出し、抽出した前記各通信装置情報を記憶する通信装置情報記憶部と、
前記記憶された各通信装置情報に含まれる前記各クロック信号の周波数情報と前記各周波数切り替えモードの有無を示す情報に基づき、前記各端末通信装置に対するデータ送信時の各周波数チャネルの割り当てを決定し、前記決定された各周波数チャネルの割り当てに基づいて、前記端末通信装置に対するデータ送信時の変調方式と符号化率からなる送信モードを決定する通信方法決定回路と、
前記端末通信装置に対する、前記決定された変調方式、符号化率、及び周波数チャネルの割り当てに基づき送信するデータを変換する送信信号変換回路と、
前記変換された送信信号を送信する周波数に変換する無線部と、
送信を行うアンテナと、
を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項10】
受信信号のアナログ−デジタル変換装置(ADC)、またはデジタル−アナログ変換装置(DAC)を備える複数の端末通信装置と同時に通信する基地局通信装置において、
前記各端末通信装置から送信される信号からチャネル情報を推定するチャネル情報推定回路と、
前記各端末通信装置から通知される前記各通信装置情報と前記チャネル情報を記憶する通信装置情報記憶回路と、
前記記憶された各通信装置情報に含まれる前記各クロック信号の周波数情報と前記各周波数切り替えモードの有無を示す情報、もしくはチャネル情報、もしくはその両方に基づき、前記各端末通信装置に対するデータ送信時の各周波数チャネルの割り当てを決定し、
前記決定された各周波数チャネルの割り当てに基づいて、前記端末通信装置に対するデータ送信時の変調方式と符号化率からなる送信モードを決定する通信方法決定回路と、
前記端末通信装置に対する、前記決定された変調方式、符号化率、及び周波数チャネルの割り当てに基づき送信するデータを変換する送信信号変換回路と、
前記変換された送信信号を送信する周波数に変換する無線部と、
送信を行うアンテナと、
を備えることを特徴とする基地局通信装置。
【請求項11】
基地局通信装置と通信し、受信信号のアナログ−デジタル変換装置(ADC)またはデジタル−アナログ変換装置(DAC)を備える端末通信装置において、
基地局通信装置から指定された周波数チャネルを取得する送信要求抽出回路と、
指定された周波数チャネルを受信するために周波数の切り替えを行う瞬時基準信号周波数切り替え回路と、
を備えることを特徴とする端末通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−188382(P2011−188382A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53687(P2010−53687)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】