説明

通信端末

【課題】アンテナ特性の劣化を防止でき、かつコストアップになるのを防止できる通信端末を提供することを目的とする。
【解決手段】第1アンテナ部材として使用されるヒンジ54は、金属製のスイベルヒンジ58よりも下筐体20の端部側に配置されている。ヒンジ54のアンテナ特性を一定以上確保できる位置に、支持部材55の長手方向端部である横片部56の右端部56Aが配置されているとともに、支持部材55が当該支持部材55の長手方向に対して直交する方向に延び、かつ、ヒンジ筐体50の内面に当接する腕部57を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第1筐体(下筐体)と第2筐体(上筐体)とが、直交する2軸の回動軸を有するヒンジ部により開閉可能かつ回動可能に接続された通信端末が知られている。このような通信端末のヒンジ部は、第1筐体と第2筐体とを開閉させる第1回動軸(ヒンジ)と、第1筐体と第2筐体とを互いに相対的に回動させる第2回動軸(スイベルヒンジ)とを有している。第2回動軸は、強度を上げるため、金属によって形成されたものがある。
【0003】
一方、第2回動軸は、第1筐体および第2筐体の幅方向における中心部に設けられ、アンテナは、第1筐体の側端部に設けられているのが普通である。この場合、第2回動軸とアンテナとの間隔を広くすることは困難であり、第2回同軸とアンテナとが比較的接近するため、第2回動軸が金属製で導電性を有する場合は、アンテナ特性が劣化するという問題が発生する。
【0004】
このような問題を解決するため、インピーダンス調整手段を備えた通信端末が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−328316号公報(請求項1、段落0023、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の通信端末は、インピーダンス調整手段が必要になるので、コストアップになるという問題があった。
【0007】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、回動軸を有する電子機器において、より簡易な構成でアンテナ特性の劣化を防止することのできる通信端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に係る通信端末は、ヒンジ筐体を介して連結された第1筐体および第2筐体と、前記ヒンジ筐体および前記第2筐体を連結するために前記第2筐体の長手方向に沿って配置された回動軸と、前記回動軸を支持するために前記ヒンジ筐体の内部において前記ヒンジ筐体の幅方向に沿う支持部材と、前記回動軸よりも、前記ヒンジ筐体の幅方向における端部側に配置されたアンテナ部材とを備え、前記支持部材の前記端部へ向けて延びる部分の長さは、当該端部への方向において、前記アンテナ部材の少なくとも一部と重ならない長さに構成されており、前記支持部材の前記アンテナ部材が配置された端部側において、前記支持部材が、前記端部への方向と異なる方向に延び、かつ、前記ヒンジ筐体の内面に当接する腕部を有するものである。
【0009】
また、本発明の第2の態様に係る通信端末は、アンテナ部材がヒンジ筐体に収容されているとともに、腕部に取り付けられた接点部材を介して電気的に接続されているものである。
【0010】
更に、本発明の第3の態様に係る通信端末は、腕部が回動軸に接近した位置に設けられているものである。
【0011】
また、本発明の第4の態様に係る通信端末は、腕部が、端部への方向に対して直交する方向に延びるものである。
【0012】
本発明の第5の態様に係る通信端末は、支持部材の端部へ向けて延びる部分の長さは、アンテナ部材の特性が支持部材によって劣化させられたとしても、そのアンテナ部材に求められる一定の特性を確保できるような長さに定められるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の態様に係る通信端末によれば、支持部材の、端部側へ向けて延びる部分は、端部側への方向において、アンテナ部材の少なくとも一部と重ならないよう構成されているため、アンテナ部材のアンテナ特性を一定以上確保できる。また、ヒンジ筐体の内面に当接する腕部が支持部材に設けられているため、支持部材の長手方向端部がヒンジ筐体の幅方向端部まで到達していなくても、支持部材の長手方向端部がヒンジ筐体の幅方向端部まで到達している場合と同様な第2回動軸の支持強度が得られるという効果を有する。
【0014】
また、本発明の第2の態様に係る通信端末によれば、腕部を接点部材として利用してヒンジ筐体内にアンテナを設けるので、ヒンジ筐体内における支持部材からの干渉が少ない空間にアンテナ部材を構成できる。これにより、ヒンジ筐体をアンテナの収納場所として利用できるので、各筐体内のスペースを他の用途に有効活用できる。
【0015】
さらに、本発明の第3の態様に係る通信端末によれば、腕部が回動軸に接近して設けられているので、アンテナ部材のエレメントを長く取れる。
【0016】
また、本発明の第4の態様に係る通信端末によれば、腕部が、端部側への方向に対して直交する方向に延びるので、端部側に配置されたアンテナの特性が腕部によって劣化してしまうことを防止することができる。
【0017】
また、本発明の第5の態様に係る通信端末によれば、アンテナ部材の特性を一定以上確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る実施形態の通信端末を開いた状態において、第1筐体および第2筐体の内面を示す斜視図
【図2】本発明に係る実施形態の通信端末を開いて回動させた状態において、第1筐体および第2筐体の内面を示す斜視図
【図3】本発明に係る実施形態のヒンジ筐体を示す分解斜視図
【図4】ヒンジ筐体の上カバーを外した状態を示す上面図
【図5】ヒンジ筐体の支持部材における腕部がヒンジ筐体の内面に当接している状態を示す斜視図
【図6】ヒンジ筐体の第2回同軸近傍の要部を示す斜視図
【図7】本発明に係る実施形態の第1筐体および第2筐体を開いた状態において、第1筐体および第2筐体の外面を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態の通信端末について、図面を用いて説明する。
図1および図2に示すように、本発明に係る実施形態の通信端末10は、一方の面に多数のキー22から構成される操作部21を有する第1筐体である下筐体20と、一方の面に表示部41を有する第2筐体である上筐体40と、下筐体20および上筐体40を開閉可能に連結するヒンジ筐体50とを有する。
【0020】
以下の説明において、下筐体20と上筐体40とを閉じたときに重なる面、すなわち、操作部21および表示部41をともに内面(内面側)といい、外側になる面を外面(外面側)という。また、下筐体20及び上筐体40におけるヒンジ筐体50が設けられている端縁の延びる方向を、幅方向という。なお、下筐体20および上筐体40は、一般的な構成を適用できるので、その詳細な説明は省略する。
【0021】
ヒンジ筐体50は、図3に示すように、下筐体20の端縁に沿って設けられた横長容器状の下カバー51と、下カバー51に取り付けられる上カバー52とを有している。下カバー51の下部側には、軸受部53が突出して設けられている。この軸受部53には、第1回動軸であるヒンジ54が挿入されている。ヒンジ54は、金属部材によって形成され、導電性を有している。ヒンジ54には、下筐体20が取り付けられている。このヒンジ54によって、下筐体20とヒンジ筐体50とが、下筐体20および上筐体40間における幅方向に延びる中心軸線Xを中心として、相対的に回動自在に連結されている。ヒンジ54は、第1アンテナ部材として使用される。
【0022】
ヒンジ筐体50内には、変形T字状の支持部材55が設けられている。この支持部材55は、図4にも示すように、下筐体20の幅方向に延びる比較的長尺な金属製の横片部56と、横片部56の端部側、本実施形態では図3中の右端部側に設けられた金属製の腕部57とを有している。腕部57は、横片部56に対して略直交している。また、腕部57は、図5に示すように、ヒンジ筐体50の内面50Aに当接されている。
【0023】
図4に示すように、支持部材55の横片部56は、ヒンジ筐体50の幅方向に対して直交する方向に延びる中心軸線Yの一方側、本実施形態では図4中の左側に偏って配置されている。すなわち、横片部56は、中心軸線Yより左側の部分が長く、右側の部分が短く形成されている。なお、中心軸線Yは、図1に示すように、上記中心軸線Xに対して直交し、かつ下筐体20および上筐体40の中心部を通っている。
【0024】
図3に示すように、横片部56の右端部56Aは、ヒンジ54の右端部54Aに対して、中心軸線Yと平行な同一面上で重ならない位置に配置されている。
【0025】
図4に示すように、支持部材55における横片部56には、中心軸線Y上に位置させて、導電性を有する金属製の第2回動軸であるスイベルヒンジ58が設けられている。このスイベルヒンジ58は、横片部56を貫通し、下筐体20および上筐体40の長手方向(幅方向に対して直交する方向)に沿って延びている。スイベルヒンジ58の上部側は直線状に形成され、ここに上筐体40の幅方向の中心部が回動自在に取り付けられている。スイベルヒンジ58の下部側は、横片部56に沿って折曲形成されている。
【0026】
上筐体40とヒンジ筐体50とは、スイベルヒンジ58によって、中心軸線Yを中心として、相対的に回動自在に連結されている。支持部材55の腕部57は、可能な限りスイベルヒンジ58に接近した位置に配置されている。
【0027】
図3に示すように、支持部材55の腕部57には、接点部材59が嵌合されている。この接点部材59上には、図6に示すように、長方形状の第2アンテナ部材60が電気的に接続された状態で載置されている。第2アンテナ部材60は、スイベルヒンジ58よりも、下筐体20の右側端部寄りに配置されている。
【0028】
なお、スイベルヒンジ58は、図3に示すように、管状に形成され、その中にケーブル61が挿通されている。このケーブル61の一端は、支持部材55に接続され、他端は、上筐体40内に設けられた基板に接続されている。
【0029】
図7に示すように、下筐体20と上筐体40とは、ヒンジ筐体50内のスイベルヒンジ58の中心軸線Yを回転中心として、相対的に回動可能である。なお、図7は、下筐体20および上筐体40を開いて回動させた状態において、下筐体20及び上筐体40の外面(裏面)を示している。また、図7は、ヒンジ筐体50の上カバー52を外した状態を示している。
【0030】
以上、説明した本発明に係る実施形態の通信端末10によれば、支持部材55の長手方向端部(片側)である横片部56の右端部56Aは、第1アンテナ部材として用いられる第1回動軸であるヒンジ54の右端部54Aに対して、中心軸線Yと平行な同一の平面上で重ならない位置に配置されているため、ヒンジ54のアンテナ特性を一定以上確保できる。
なお、確保すべきアンテナ特性は、通信端末10が求める特性に応じて変化する。したがって、支持部材55の横片部56の長さは、その特性に応じて定められる。
【0031】
また、ヒンジ筐体50の内面50Aに当接する腕部57が、支持部材55に設けられている。このため、支持部材55の長手方向端部である横片部56の右端部56Aが、ヒンジ筐体50の幅方向端部まで到達していなくても、横片部56の右端部56Aが、ヒンジ筐体50の幅方向端部まで到達している場合と同様なスイベルヒンジ(第2回動軸)58の支持強度が得られる。
【0032】
さらに、インピーダンス調整手段のような部品が不要なので、コストアップになるのを抑制できる。ただし、横片部56を限界まで短くしたとしても所望のアンテナ特性が得られない場合などに、補助的にインピーダンス調整手段を用いることを排除するものではない。
【0033】
また、ヒンジ筐体50に収容されている第2アンテナ部材60が、支持部材55の腕部57に取り付けられた接点部材59を介して電気的に接続されているので、ヒンジ筐体50内における支持部材55からの干渉が少ない空間にアンテナ部材を構成できる。これにより、ヒンジ筐体50を第2アンテナ部材60の収納場所として利用できるので、各筐体内のスペースを他の用途に有効活用できる。
また、腕部57が、スイベルヒンジ58に接近した位置に配置されているため、第2アンテナ部材60のエレメントを長く取れる。
【0034】
なお、本発明の通信端末は、前述した実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形,改良等が可能である。
例えば、前述した実施形態では、支持部材55を、横片部56と腕部57によって変形T字状に形成した場合について説明したが、本発明の支持部材はこれに限らず、横片部56に略直交する部分を有する形状、例えばΠ字状などの適宜な形状にできる。また、Π字状の形状にする場合には、スイベルヒンジ58を挟んでΠ字状の形状にするとしても良い。この場合、前述した実施形態においてヒンジ54や第2アンテナ部材60が配置されていた側と反対側にも支持部材55からの干渉を受けにくい空間ができるので、ヒンジ筐体50に、更にアンテナを追加することができる。
【0035】
また、前述した実施形態では、ヒンジ54をアンテナとして用いる例を開示したが、これに限られるものではない。例えば、ヒンジ54とは異なるアンテナが、ヒンジ54に相当する位置に配置されているとしても良い。この場合、ヒンジ54自体がないとしてもよい。折り畳み不可能であるが、第2回動軸に沿った回転はできる場合などが考えられる。
また、前述した実施形態では、上筐体40側にヒンジ筐体50が備えられた構成を例として説明したが、これに限られるものではない。例えば、下筐体20側にヒンジ筐体50が備えられた構成であってもよい。
【0036】
また、前述した実施形態では、横片部56の右端部56Aは、ヒンジ54もしくは第2アンテナ部材60の右端部に対して中心軸線Yと平行な同一面上で重ならない位置に配置されるものとした。すなわち、横片部56は、ヒンジ54もしくは第2アンテナ部材60の、ヒンジ筐体50における端部側への方向において、ヒンジ54や第2アンテナ部材60の少なくとも一部と重ならないような長さとして構成されていた。しかし、横片部56の構成は、これに限られるものではない。ヒンジ54や第2アンテナ部材60のアンテナ特性の劣化をより抑える必要がある場合には、ヒンジ54全体や第2アンテナ部材60のエレメント全体を避けるような長さに構成しても良い。
【0037】
また、前述した実施形態では、腕部57は支持部材55の端部へ向かう方向に対して直交する方向に配置されていたが、これに限られるものではない。例えば、腕部57が斜めに伸びているとしてもよい。ただし、腕部57が、アンテナとしてのヒンジ54と干渉してしまうことを防ぐためには、前述した実施形態のようにヒンジ54に対して直交する方向に腕部57が伸びていることが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、携帯電話等の各種の通信機器に適用できる。
【符号の説明】
【0039】
10 通信端末
20 下筐体(第1筐体)
21 操作部
22 キー
40 上筐体(第2筐体)
41 表示部
50 ヒンジ筐体
50A 内面
51 下カバー
52 上カバー
53 軸受部
54 ヒンジ(第1回動軸)(第1アンテナ部材)
54A 右端部
55 支持部材
56 横片部
56A 右端部
57 腕部
58 スイベルヒンジ(第2回動軸)
59 接点部材
60 第2アンテナ部材
61 ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒンジ筐体を介して連結された第1筐体および第2筐体と、
前記ヒンジ筐体および前記第2筐体を連結するために前記第2筐体の長手方向に沿って配置された回動軸と、
前記回動軸を支持するために前記ヒンジ筐体の内部において前記ヒンジ筐体の幅方向に沿う支持部材と、
前記回動軸よりも、前記ヒンジ筐体の幅方向における端部側に配置されたアンテナ部材とを備え、
前記支持部材の前記端部へ向けて延びる部分の長さは、当該端部側への方向において、前記アンテナ部材の少なくとも一部と重ならない長さに構成されており、
前記支持部材の前記アンテナ部材が配置された端部側において、前記支持部材が、前記端部への方向と異なる方向に延び、かつ、前記ヒンジ筐体の内面に当接する腕部を有する通信端末。
【請求項2】
請求項1に記載の通信端末であって、
前記アンテナ部材が前記ヒンジ筐体に収容されているとともに、
前記腕部に取り付けられた接点部材を介して電気的に接続されている通信端末。
【請求項3】
請求項2に記載の通信端末であって、
前記腕部が前記回動軸に接近した位置に設けられている通信端末。
【請求項4】
請求項1に記載の通信端末であって、
前記腕部が、前記支持部材の端部への方向に対して直交する方向に延びる通信端末。
【請求項5】
請求項1に記載の通信端末であって、
前記支持部材の前記端部へ向けて延びる部分の長さは、前記アンテナ部材の特性が前記支持部材によって劣化させられたとしても、当該アンテナ部材に求められる一定の特性を確保できるような長さに定められる通信端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−19282(P2012−19282A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154080(P2010−154080)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】