通信装置、通信品質数値化方法およびプログラム
【課題】より正確な通信品質を示す数値を得る。
【解決手段】データレート算出部111が、通信装置間のデータレートを算出し、送信待ちデータ有無判定部112が、他の通信装置からの送信待ちのデータがあるかどうかを判定し、誤り率算出部113が、通信装置で受信したデータの誤り率を算出し、通信品質数値化部114が、データレート算出部111の算出結果と、送信待ちデータ有無判定部112の判定結果と、誤り率算出部113の算出結果とに基づいて、通信装置間の通信品質を数値化し、出力部115が、数値化した通信品質を出力する。
【解決手段】データレート算出部111が、通信装置間のデータレートを算出し、送信待ちデータ有無判定部112が、他の通信装置からの送信待ちのデータがあるかどうかを判定し、誤り率算出部113が、通信装置で受信したデータの誤り率を算出し、通信品質数値化部114が、データレート算出部111の算出結果と、送信待ちデータ有無判定部112の判定結果と、誤り率算出部113の算出結果とに基づいて、通信装置間の通信品質を数値化し、出力部115が、数値化した通信品質を出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信品質を出力する通信装置、通信品質数値化方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、無線通信端末(無線通信装置)の通信品質をアンテナバーピクトとしてディスプレイ等に出力(表示)したり、通信品質が低下したときに警告音を鳴動したり、より良い通信品質を求めて通信システムを切替えたりすることがおこなわれている。
【0003】
表示されたアンテナバーピクトが、最高レベルを示すものであるならば、無線通信端末が、接続が途切れることなく最高速度で通信できることを、無線通信端末の利用者は期待する。
【0004】
一般的な通信品質判定方法は、RSSI(Received Signal Strength Indicator:電界強度)、データレート、CIR(Carrier to Interference Ratio:信号と干渉との比)、信号占有率、送受信電力レベルのいずれか、あるいは組み合わせで通信品質を求める方法が知られている。
【0005】
例えば、送信電力レベルに基づいて、通信品質を判定する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
また、受信電界強度とデータレート(通信速度)とに基づいて、通信品質を判定する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
また、自局宛の信号と他局宛の信号との比率に基づいて、通信品質を判定する技術が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0008】
また、CIRに基づいて、通信品質を判定する技術が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0009】
また、CIRを送信可能電力で補正することにより、通信品質を判定する技術が開示されている(例えば、特許文献5参照。)。
【0010】
また、CIRおよび近未来のデータレート予測に基づいて、通信品質を判定する技術が開示されている(例えば、特許文献6参照。)。
【0011】
また、所定時間のデータレート平均に基づいて、通信品質を判定する技術が開示されている(例えば、特許文献7参照。)。
【0012】
また、データ通信を開始する前に、RSSIの変動に基づいて、通信品質を予測する技術が開示されている(例えば、特許文献8参照。)。
【0013】
また、データレートを送信可能電力、あるいはデータレートを受信可能電力で補正することにより、通信品質を判定する技術が開示されている(例えば、特許文献9,10参照。)。
【0014】
また、伝送レートと通信状態を表示することにより、通信品質を感覚的にわかりやすく表示する技術が開示されている(例えば、特許文献11参照。)。
【0015】
また、複数の通信装置で同時に通信しているときの通信品質を表示する技術が開示されている(例えば、特許文献12参照。)。
【0016】
また、通話品質アラームを鳴動する条件として、電界強度を利用する技術が開示されている(例えば、特許文献13参照。)。
【0017】
また、複数の通信装置の通信品質を同時に表示する技術が開示されている(例えば、特許文献14参照。)。
【0018】
また、実際のデータレートを高く補正する技術が開示されている(例えば、特許文献15参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2008−177936号公報
【特許文献2】特開2009−246862号公報
【特許文献3】特開2008−177634号公報
【特許文献4】特開2008−245300号公報
【特許文献5】特許第4220263号公報
【特許文献6】特許第4080910号公報
【特許文献7】特開2002−300644号公報
【特許文献8】特開2002−171570号公報
【特許文献9】特許第4280513号公報
【特許文献10】特許第4564042号公報
【特許文献11】特開2006−295383号公報
【特許文献12】特開2010−098366号公報
【特許文献13】特開2005−086586号公報
【特許文献14】特開2002−044729号公報
【特許文献15】特開2005−184662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、上述した技術には、以下のような課題がある。
【0021】
第1の課題は、データレートの高低は、必ずしも通信品質を表現するとは限らないため、正確な通信品質を認識することができないことである。
【0022】
つまり、データレートが高ければ、通信品質が良いのはその通りであるが、データレートが低いからといって、必ずしも通信品質が悪いとはいえない。なぜならば、伝送すべきデータ量が少ないときはデータレートを低くしたり、QoS(Quality of Service:一定の通信速度を保証する技術)によってデータレートに制限を加えられていたり、通信開始直後はスロースタートしていたりするからである。もちろん、通信品質が悪いことが原因でデータレートが低いこともある。
【0023】
ここで、スロースタートとは、通信開始直後に輻輳が発生することを予防するために、遅い(低い)データレートで通信を開始し、徐々にデータレートを上げていく技術のことであり、一般的に良く知られている技術である。
【0024】
第2の課題は、異なる通信方式に対応した装置を搭載する無線通信端末にあっては、異なる通信方式の間で、RSSI、CIR、信号占有率、送受信電力レベルの比較では正しく通信品質の比較が出来ないということである。例えば、本質的にデータレートが低い方式と高い方式とで、RSSIの大小を比較しても意味が無い。
【0025】
無線区間のデータレートは、1x EVDO(1x Evolution Data Only)マルチキャリア方式の日本国内におけるサービスでは、2011年時点で、下り最大9.2Mbpsである。また、IEEE802.11g方式では、54Mbpsである。また、Mobile WiMAXでは、下り40Mbpsである。これらの方式では、最大速度が保障されるわけではなく、信号対雑音比によって、データレートを変えることがおこなわれている。
【0026】
電界強度(RSSI)に関しては、1x EVDO方式においてRSSIは、−106dBm以上が必要とされるが、安定した通信には−90dBm以上が望ましい。IEEE802.11g方式では、RSSIは−94dBm以上が必要とされる。また、Mobile WiMAXでは、RSSIは−92dBmから−40dBmが必要とされる。無線通信端末はAGC(Auto Gain Controller)を搭載するため、RSSIが直接データレートに影響するわけではないが、RSSIが方式によって異なる、ある値を下回ると、急激に信号対雑音比が劣化することによりデータレートは低下し、通信が切れやすくなってしまう。
【0027】
また、無線通信端末において、無線通信品質をアンテナバーピクトとして段階的に表示することがおこなわれている。
【0028】
無線通信端末の利用者が期待する無線通信品質の表示とは、データを高速に伝送できる状態かどうかの表示である。しかしながら、電界強度は直接にはデータレートに影響しないため、電界強度を基本としたアンテナピクト表示は、無線通信品質を正しく表示しているとはいえない。
【0029】
また、電界強度がある値を下回ると、急激に信号対雑音比が劣化するため、電界強度を信号対雑音比で補正したアンテナピクト表示も、アンテナバー本数と無線通信品質とを比例的に表示することは大変難しい。
【0030】
さらには、下り基準信号対雑音比を使用する方法もあるが、下りデータチャネルでデータレートを上げると、相対的に下り基準信号対雑音比が低下する。そのため、実際に通信を開始したとたんに、アンテナバー本数が急激に減るといったことも生じてしまう。
【0031】
そこで、自局宛信号対雑音比、あるいはデータレートそのものを無線通信品質として表示することもおこなわれている。
【0032】
データレートが高いときは、無線通信品質が高いといって良いが、データレートが低いときは、様々な原因が考えられるため、必ずしも無線通信品質が悪いとはいえない。なぜならば、通信開始直後は通信トラフィックの輻輳を予防するためのスロースタートが適用されることがあるし、通信アプリケーションが待機中で伝送すべきデータがないこともある。そうしたときは、データレートが低いが、実際にデータ送受信が開始されればデータレートが上がることが見込まれるからである。
【0033】
また、近年は、1つの無線通信端末に複数の通信装置を搭載することが多くなっている。
【0034】
携帯電話では、例えば1x EVDO方式に加えて無線LANを搭載したり、WiMAXを搭載したりするものが市販されている。こうした無線通信端末で最も無線通信品質が高く、すなわちデータレートが高い方式を選択しようとしたとき、先に述べたように通信方式によってデータレートは異なるため、単純に電界強度や信号対雑音比を比較しただけではそれぞれの通信方式の無線通信品質を比較することができない。
【0035】
また、通信方式によって符号化処理が異なるため、物理レイヤのデータレートがユーザデータのデータレートをそのまま反映するわけではなく、物理レイヤのデータレートでもって単純には無線通信品質を表現できない。
【0036】
こうしたことから、無線通信品質をより実態に近く、また特定の無線通信方式に依存しないよう、判定するために数値化する方法が望まれている。
【0037】
本発明の目的は、上述した課題を解決する通信装置、通信品質数値化方法およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0038】
本発明の通信装置は、
通信を行う通信装置であって、
当該通信装置と、当該通信装置と通信を行う他の通信装置との間のデータレートを算出するデータレート算出部と、
前記他の通信装置から当該通信装置への送信待ちのデータがあるかどうかを判定する送信待ちデータ有無判定部と、
当該通信装置で受信したデータの誤り率を算出する誤り率算出部と、
前記データレート算出部の算出結果と、前記送信待ちデータ有無判定部の判定結果と、前記誤り率算出部の算出結果とに基づいて、当該通信装置と前記他の通信装置との間の通信品質を数値化する通信品質数値化部と、
前記通信品質数値化部が数値化した通信品質を出力する出力部とを有する。
【0039】
また、本発明の通信品質数値化方法は、
第1の通信装置と第2の通信装置との間の通信品質を数値化する通信品質数値化方法であって、
前記第1の通信装置と前記第2の通信装置との間のデータレートを算出する処理と、
前記第2の通信装置から前記第1の通信装置への送信待ちのデータがあるかどうかを判定する処理と、
前記第1の通信装置で受信したデータの誤り率を算出する処理と、
前記算出されたデータレートと、前記送信待ちデータの有無と、前記算出された誤り率とに基づいて、第1の通信装置と第2の通信装置との間の通信品質を数値化する処理と、
前記数値化された通信品質を出力する処理とを行う。
【0040】
また、本発明のプログラムは、
通信を行う通信装置に実行させるためのプログラムであって、
当該通信装置と、当該通信装置と通信を行う他の通信装置との間のデータレートを算出する手順と、
前記他の通信装置から当該通信装置への送信待ちのデータがあるかどうかを判定する手順と、
当該通信装置で受信したデータの誤り率を算出する手順と、
前記算出されたデータレートと、前記送信待ちデータの有無と、前記算出された誤り率とに基づいて、当該通信装置と前記他の通信装置との間の通信品質を数値化する手順と、
前記数値化された通信品質を出力する手順とを実行させる。
【発明の効果】
【0041】
以上説明したように、本発明においては、より正確な通信品質を示す数値を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の通信装置の実施の一形態を示す図である。
【図2】図1に示したCPUの内部構成の一例を示す図である。
【図3】本形態における通信品質数値化方法の第1の例を説明するためのフローチャートである。
【図4】本形態における通信品質数値化方法の第2の例を説明するためのフローチャートである。
【図5】本形態における通信品質数値化方法の第3の例を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の通信装置の他の実施の形態を示す図である。
【図7】データレートの無線通信品質値への補正を概念的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0044】
図1は、本発明の通信装置の実施の一形態を示す図である。
【0045】
本形態における通信装置100は図1に示すように、CPU110と、通信部120と、表示部130と、入力部140と、記憶部150と、マイク160と、スピーカー170とが設けられている。
【0046】
通信部120は、通信装置100と通信を行う他の通信装置とのインタフェース機能を持つ。また、通信部120は、無線通信以外の有線通信を行うものであっても良い。通信部120は、無線通信を行う場合、通信装置100に取り付けられたアンテナと接続される。このとき、アンテナは、MIMO(Multiple Input Multiple Output)システムやダイバーシティで用いられるように、複数取り付けられているものであっても良い。
【0047】
表示部130は、CPU110で処理された情報を表示するディスプレイである。また、表示部130は、後述する通信品質の値を数値または図を用いて表示する。
【0048】
入力部140は、通信装置100の外部からの操作で情報を通信装置100に入力する。例えば、入力部140は、ボタンキーやタッチパネルであっても良い。
【0049】
記憶部150は、CPU110が処理する情報やプログラムを記憶する。また、記憶部150は、通信装置100に固定的に搭載されているものであっても良いし、取り外し可能な媒体であっても良い。
【0050】
マイク160は、通信装置100の外部から音声を入力する。
【0051】
スピーカー170は、CPU110が処理した信号を、音声信号へ変換して、通信装置100の外部へ放音する。また、スピーカー170は、後述する通信品質の値に応じて、所定の音(アラーム音)を出力する。
【0052】
CPU110は、通信装置100内部の各構成要素を制御する。
【0053】
図2は、図1に示したCPU110の内部構成の一例を示す図である。
【0054】
図1に示したCPU110には図2に示すように、データレート算出部111と、送信待ちデータ有無判定部112と、誤り率算出部113と、通信品質数値化部114と、出力部115とが設けられている。なお、図2には、図1に示したCPU110が具備する構成要素のうち、本発明に関わる要素のみを示した。また、これらの構成要素がソフトウェアで実現される場合、当該ソフトウェアは記憶部150にあらかじめ(通信装置100の製造時等に)格納されているものであっても良いし、所定のサーバ等の通信装置から通信ネットワークを介してダウンロードされるものであっても良い。
【0055】
データレート算出部111は、通信装置100と、通信装置100と通信を行う他の通信装置との間の通信におけるデータレート(通信速度)を算出する。このデータレートの算出方法は、通信部120から出力されてきたデータサイズと計測時間とに基づいて、算出するものであっても良い。また、CPU110を動かすOS(Operating System)があらかじめ計算した統計値に基づいて算出するものであっても良い。ここで、SINR(Signal to Interference and Noise power Ratio)等の物理的パラメータをデータレートに換算するものであっても良いが、入力されたデータサイズを用いる方が、実力を直接表現できるため好ましい。また、データレート算出部111は、算出したデータレートを通信品質数値化部114へ出力する。
【0056】
送信待ちデータ有無判定部112は、他の通信装置から通信装置100への送信待ちのデータがあるかどうかを判定する。
【0057】
通常、データをいつどれだけ送信するかを決定するのは送信側(他の通信装置)であるため、通信装置100が他の通信装置にて送信待ちデータがあるかどうかを知ることは困難である。例えば、通信アプリケーションの状態を調べて、他の通信装置にて送信待ちデータがあるかどうかを判断することも原理的には可能である。しかしながら、近年の通信装置では、不特定多数の通信アプリケーションを動かすことが可能であるため、現実的ではない。
【0058】
そこで、本発明ではソケットが存在するかどうかに応じて、他の通信装置にて送信待ちデータがあるかどうかを判断する。ここで、ソケットとは、TCP(Transmission Control Protocol)ソケット、UDP(User Datagram Protocol)ソケット、ICMP(Internet Control Message Protocol)ソケット、および他のプロトコルのソケットのことをいう。ソケットについては、一般的に広く知られているのでここでは説明を省略するが、ソケットはOSによって管理され、ソフトウェアは通信すべきデータがあると、ソケットを生成し、通信を終了すると、そのソケットを破棄するのが一般的である。また、送信すべきデータが無いままソケットを放置すると、サーバがタイムアウトしてソケットを破棄することがよくおこなわれている。したがって、ソケットが存在するならば、送信待ちデータがあることが期待でき、つまり、ソケットの存在有無により、送信待ちデータ有無を判定することが出来る。
【0059】
また、送信待ちデータ有無判定部112は、送信待ちのデータがあるかどうかの判定結果を通信品質数値化部114へ出力する。
【0060】
誤り率算出部113は、通信部120で受信したデータの誤り率を算出する。この誤り率の算出方法は、既知の方法を用いるもので良い。例えば、CPU110を動かすOSがあらかじめ計算した統計値を用いるものであっても良いし、受信パケットの欠損数や再受信数に基づいて算出するものであっても良い。また、上りの通信については送信パケットの再送数から誤り率を計算することが出来る。
【0061】
また、誤り率算出部113は、算出した誤り率を通信品質数値化部114へ出力する。
【0062】
なお、通信部120で受信したデータの誤り率を通信部120が算出するものであっても良い。この場合、通信部120は、受信したデータの誤り率を算出し、算出した誤り率を、誤り率算出部113を介して通信品質数値化部114へ出力する。
【0063】
通信品質数値化部114は、データレート算出部111から出力されてきた算出結果と、送信待ちデータ有無判定部112から出力されてきた判定結果と、誤り率算出部113から出力されてきた算出結果とに基づいて、通信装置100と他の通信装置との間の通信品質を数値化する。
【0064】
具体的には、通信品質数値化部114は、データレート算出部111から出力されてきたデータレートを、既知の方法を用いて通信品質値へ換算する。これは、単純にデータレートをそのまま無線通信品質値としても良いし、または、段階を示す値に換算して通信品質値としても良い。
【0065】
また、通信品質数値化部114は、送信待ちデータ有無判定部112から出力されてきた判定結果が、送信待ちのデータがないという判定結果である場合、数値化した通信品質である通信品質値を、現在の値よりも高い値に補正する。
【0066】
また、通信品質数値化部114は、誤り率算出部113から出力されてきた誤り率があらかじめ設定された誤り率閾値よりも低い場合、数値化した通信品質である通信品質値を、現在の値よりも高い値に補正する。ここで、誤り率が高いか低いかの判定方法は、上述したように、例えば、誤り率と1%といった固定値とを比較するのが簡便であるが、誤り率を入力とした確率関数を用いて判定するものであっても良い。
【0067】
さらに、具体的には、通信品質数値化部114は、データレート算出部111から出力されてきたデータレートがあらかじめ設定されたデータレート閾値よりも低く、且つ送信待ちデータ有無判定部112から出力されてきた判定結果が送信待ちのデータがないと判定したものである場合、数値化した通信品質である通信品質値を、現在の値よりも高い値に補正する。または、通信品質数値化部114は、データレート算出部111から出力されてきたデータレートがあらかじめ設定されたデータレート閾値よりも低く、且つ送信待ちデータ有無判定部112の判定結果が送信待ちのデータがあると判定したものであり、且つ誤り率算出部113が算出した誤り率があらかじめ設定された誤り率閾値よりも低い場合、数値化した通信品質である通信品質値を、現在の値よりも高い値に補正する。ここで、データレートが高いか低いかの判定方法は、上述したようにデータレートと固定値とを比較するのが簡便であるが、データレートを入力とした確率関数であっても良く、確率関数を用いた手法の例としてファジー関数が知られている。
【0068】
出力部115は、通信品質数値化部114が数値化した通信品質(通信品質値)を出力する。このとき、出力先は、表示部130やスピーカー170である。
【0069】
以下に、本形態における通信品質数値化方法について説明する。
【0070】
図3は、本形態における通信品質数値化方法の第1の例を説明するためのフローチャートである。
【0071】
まず、通信部120が受信したデータについて、データレート算出部111が、既知の方法を用いてデータレートを算出する(ステップS1)。
【0072】
続いて、通信品質数値化部114が、データレート算出部111が算出したデータレートが高いかどうかを判定する(ステップS2)。これは、データレートが高ければ通信品質も高いといえるが、データレートが低いときは、本来の通信品質に対してデータレートが低く抑えられているかどうかを考慮するためである。また、このデータレートが高いかどうかの判定には、上述した方法を用いる。
【0073】
データレート算出部111が算出したデータレートが高いと判定した場合、通信品質数値化部114は、上述したように、既知の方法を用いてデータレートを通信品質値へ換算する(ステップS3)。
【0074】
一方、データレート算出部111が算出したデータレートが低いと判定した場合、通信品質数値化部114は、送信待ちデータ有無判定部112から出力されてきた判定結果が、送信待ちデータがあると判定したものであるかどうかを判定する(ステップS4)。
【0075】
送信待ちデータ有無判定部112から出力されてきた判定結果が、送信待ちデータがあると判定したものである場合、誤り率算出部113は、通信部120で受信したデータの誤り率を算出する(ステップS5)。誤り率算出部113は、算出した誤り率を通信品質数値化部114へ出力する。
【0076】
すると、通信品質数値化部114は、誤り率算出部113から出力されてきた誤り率が高いかどうかを判定する(ステップS6)。この誤り率が高いかどうかの判定には、上述した方法を用いる。
【0077】
通信品質数値化部114は、誤り率が高いと判定した場合、ステップS3の処理を行う。また、このとき、誤り率が高いことを考慮して、通信品質値を低く補正するものであっても良い。
【0078】
一方、通信品質数値化部114は、誤り率が低いと判定した場合、既知の方法を用いてデータレートを通信品質値へ換算し、この値(現在の値)を高く補正する(ステップS7)。補正の方法は、例えば、通信品質値が段階的表現であれば、段階を高くするといった方法でも良いし、通信品質値が連続的表現であれば、1以上の比率を乗じるといった方法であっても良いし、あるいは、固定値を加算するといった方法であっても良いし、あるいはその両方であっても良い。
【0079】
また、ステップS4にて、送信待ちデータ有無判定部112から出力されてきた判定結果が、送信待ちデータがないと判定したものである場合、ステップS7の処理が行われる。このとき、ステップS6の処理の後に行われる補正と同様の補正を行うものであっても良いし、送信データ待ちがあることを考慮して、補正の度合いを大きくあるいは小さく変えて行うものであっても良い。
【0080】
そして、通信品質数値化部114が数値化した通信品質値を、出力部115が出力する。
【0081】
図4は、本形態における通信品質数値化方法の第2の例を説明するためのフローチャートである。
【0082】
まず、通信部120が受信したデータについて、データレート算出部111が、既知の方法を用いてデータレートを算出する(ステップS11)。
【0083】
続いて、通信品質数値化部114は、既知の方法を用いてデータレートを通信品質値へ換算する(ステップS12)。
【0084】
すると、通信品質数値化部114が、データレート算出部111が算出したデータレートが高いかどうかを判定する(ステップS13)。このデータレートが高いかどうかの判定には、上述した方法を用いる。
【0085】
データレート算出部111が算出したデータレートが高いと判定した場合、通信品質値は、そのままとなる。
【0086】
一方、データレート算出部111が算出したデータレートが低いと判定した場合、通信品質数値化部114は、送信待ちデータ有無判定部112から出力されてきた判定結果が、送信待ちデータがあると判定したものであるかどうかを判定する(ステップS14)。
【0087】
送信待ちデータ有無判定部112から出力されてきた判定結果が、送信待ちデータがあると判定したものである場合、誤り率算出部113は、通信部120で受信したデータの誤り率を算出する(ステップS15)。誤り率算出部113は、算出した誤り率を通信品質数値化部114へ出力する。
【0088】
すると、通信品質数値化部114は、誤り率算出部113から出力されてきた誤り率が高いかどうかを判定する(ステップS16)。この誤り率が高いかどうかの判定には、上述した方法を用いる。
【0089】
通信品質数値化部114は、誤り率が高いと判定した場合、通信品質値は、そのままとなる。また、このとき、誤り率が高いことを考慮して、通信品質値を低く補正するものであっても良い。
【0090】
一方、通信品質数値化部114は、誤り率が低いと判定した場合、通信品質値を高い値に補正する(ステップS17)。補正の方法は、例えば、通信品質値が段階的表現であれば、段階を高くするといった方法でも良いし、通信品質値が連続的表現であれば、1以上の比率を乗じるといった方法であっても良いし、あるいは、固定値を加算するといった方法であっても良いし、あるいはその両方であっても良い。
【0091】
また、ステップS14にて、送信待ちデータ有無判定部112から出力されてきた判定結果が、送信待ちデータがないと判定したものである場合、ステップS17の処理が行われる。このとき、ステップS16の処理の後に行われる補正と同様の補正を行うものであっても良いし、送信データ待ちがあることを考慮して、補正の度合いを大きくあるいは小さく変えて行うものであっても良い。
【0092】
そして、通信品質数値化部114が数値化した通信品質値を、出力部115が出力する。
【0093】
このように、まず、データレートに基づいて、通信品質値を算出しておけば、その後の補正では、すでに算出されている通知品質値自体を補正するだけで済む。
【0094】
図5は、本形態における通信品質数値化方法の第3の例を説明するためのフローチャートである。
【0095】
まず、通信部120が受信したデータについて、データレート算出部111が、既知の方法を用いてデータレートを算出する(ステップS21)。
【0096】
続いて、通信品質数値化部114は、送信待ちデータ有無判定部112から出力されてきた判定結果が、送信待ちデータがあると判定したものであるかどうかを判定する(ステップS22)。
【0097】
送信待ちデータ有無判定部112から出力されてきた判定結果が、送信待ちデータがあると判定したものである場合、誤り率算出部113は、通信部120で受信したデータの誤り率を算出する(ステップS23)。誤り率算出部113は、算出した誤り率を通信品質数値化部114へ出力する。
【0098】
すると、通信品質数値化部114は、誤り率算出部113から出力されてきた誤り率が高いかどうかを判定する(ステップS24)。この誤り率が高いかどうかの判定には、上述した方法を用いる。
【0099】
通信品質数値化部114は、誤り率が高いと判定した場合、上述したように、既知の方法を用いてデータレートを通信品質値へ換算する(ステップS25)。
【0100】
一方、通信品質数値化部114は、誤り率が低いと判定した場合、既知の方法を用いてデータレートを通信品質値へ換算し、この値(現在の値)を高く補正する(ステップS26)。補正の方法は、例えば、通信品質値が段階的表現であれば、段階を高くするといった方法でも良いし、通信品質値が連続的表現であれば、1以上の比率を乗じるといった方法であっても良いし、あるいは、固定値を加算するといった方法であっても良いし、あるいはその両方であっても良い。
【0101】
また、ステップS22にて、送信待ちデータ有無判定部112から出力されてきた判定結果が、送信待ちデータがないと判定したものである場合、ステップS26の処理が行われる。このとき、ステップS24の処理の後に行われる補正と同様の補正を行うものであっても良いし、送信データ待ちがあることを考慮して、補正の度合いを大きくあるいは小さく変えて行うものであっても良い。
【0102】
そして、通信品質数値化部114が数値化した通信品質値を、出力部115が出力する。
【0103】
このように、データレートが高いか低いかに関わらず、送信データ待ちしていないときと誤り率が低いときにデータレートを高く補正する。第1および第2の例と異なり、データレートが高いときは、より高く補正されることがある。
【0104】
また、本発明により求めた無線通信品質値を直接使用するのではなく、既知の方法でさらに加工して使用することが出来る。例えば、数回繰り返して平均を求めたり、あるいはヒステリシスをもたせたりして、使用することができる。
【0105】
図6は、本発明の通信装置の他の実施の形態を示す図である。
【0106】
本形態における通信装置101は図6に示すように、図1に示した通信装置100の構成に加えて、通信部121が設けられている。
【0107】
通信部121は、通信装置101と通信を行う他の通信装置とのインタフェース機能を持つ。また、通信部121は、無線通信以外の有線通信を行うものであっても良い。通信部121は、無線通信を行う場合、通信装置101に取り付けられたアンテナと接続される。
【0108】
また、図6においては、通信部120と通信部121とが、1つのアンテナを共用しているが、通信部120と通信部121とが互いに独立したアンテナと接続されていても良い。
【0109】
所定のアルゴリズムを用いて、CPU110は、通信部120と通信部121とを使い分けることができ、通信部120と通信部121とは、同時あるいは排他的に動作することが出来る。このとき、通信部120と通信部121とは、それぞれの受信データの誤り率をCPU110へ出力することも出来るし、CPU110の処理によって通信部120と通信部121とにおける受信データ誤り率をそれぞれ算出することも出来る。
【0110】
また、CPU110は、通信部120と通信部121とを区別できるため、通信部120と通信部121とのそれぞれに対して、図3〜5に示したフローチャートを用いて説明した処理を適用して、通信装置101における通信品質値を求めることが出来る。
【0111】
なお、送信待ちデータの有無の判定にソケットを用いる場合、ソケットに割当てられるIPアドレスを用いれば、それぞれのソケットが、通信部120と通信部121とのどちらを使用しているかを区別することができるため、通信部120,121ごとに送信待ちデータの有無を判定することが出来る。
【0112】
また、さらに多くの通信部を搭載するときも同様である。
【0113】
このように、本形態においては、無線通信方式固有の値ではなく、通信部から出力されるデータレートを基本として、無線通信方式と無関係な送信待ちデータの有無と誤り率とに基づいて通信品質値を求めているため、複数の通信部を比較してどの通信部が最も通信品質が高いかを判断できたり、あるいは使用中の通信部から他の通信部へ切替えるかを判断できたりするという効果が得られる。
【0114】
以上説明したように、本発明においては、以下に記載するような効果を奏する。
【0115】
第1の効果は、通信品質値を高く補正しているため、スロースタートや基地局のスケジューラが原因でデータレートが低くても、本来の通信品質は高いということが表現できることである。
【0116】
第2の効果は、データ待ちしているときに通信品質値を高く補正しているため、伝送すべきデータが無いためにデータレートが低くても、本来の通信品質は高いということが表現できることである。
【0117】
図7は、データレートの無線通信品質値への補正を概念的に示した図である。図7において、横軸に時刻、縦軸にデータレートおよび無線通信品質値を示す。また、データレートを実線で示し、無線通信品質値を破線で示す。また、部分的に、データレートと無線通信品質値とは、重なって示されている。また、データレートがd1よりも低いとき、無線通信品質値を高く補正して、データレートがd1よりも高いときは、無線通信品質値を補正しない例である。
【0118】
図7に示すように、時刻t0は通信装置が待受け状態である。待受け状態であるから、データレートは0であるが、本発明により無線通信品質値は破線部分まで高く補正される。
【0119】
時刻t1で、データ通信を開始する。スロースタートのため、徐々にデータレートが高くなり、時刻t2に最高速度に達するが、それに応じて無線通信品質値も高く補正される。
【0120】
データレートがd1よりも高くなると、無線通信品質値の補正をしなくなる。
【0121】
時刻t3にて電波環境が悪化すると、データレートも低くなる。
【0122】
データレートが、d1より低くなっても送信待ちデータが有り、また誤り率が高いため、無線通信品質値は補正されず低いままであり、電波環境が悪いことが原因で無線通信品質が悪いことを表現している。
【0123】
時刻t4から電波環境が回復し、時刻t5で通信を終了し、待ち受けに戻る。
【0124】
これ以降は、データレートが0であるがデータ待ちが無いため、無線通信品質値は高く補正される。
【0125】
図7に示すように、従来の無線通信品質数値化方法では、時刻t0からの待ち受け状態および時刻t5からの待ち受け状態では無線通信品質が最低であると判断され、また、時刻t1直後のスロースタートでは、無線通信品質が充分ではないと判断されてしまっていたが、本発明により無線通信品質が充分高いと判断できるようになる。
【0126】
このようにして、データレートが低いときでも、その原因によって無線通信品質値を補正しているため、無線通信品質を過小でなく、適正に求めることが出来る。また、特定の無線通信方式に依存しない属性を用いて無線通信品質値を求めているため、通信装置が異なる通信部を複数搭載しているときに、それぞれの通信部間で無線通信品質の大小を比較することが出来る。
【0127】
また、通信品質指標値が実態をより正しく表現できる効果が得られるため、従来から知られたピクト表示や通信システム切替え動作へ組み合わせたときの誤動作を抑制することが可能となる。
【0128】
上述した通信装置100に設けられた各構成要素が行う処理は、目的に応じてそれぞれ作製された論理回路で行うようにしても良い。また、処理内容を手順として記述したコンピュータプログラム(以下、プログラムと称する)を通信装置100にて読取可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムを通信装置100に読み込ませ、実行するものであっても良い。通信装置100にて読取可能な記録媒体とは、フロッピー(登録商標)ディスク、光磁気ディスク、DVD、CDなどの移設可能な記録媒体の他、通信装置100に内蔵された記憶部150、ROM、RAM等のメモリやHDD等を指す。この記録媒体に記録されたプログラムは、通信装置100に設けられたCPU110にて読み込まれ、CPU110の制御によって、上述したものと同様の処理が行われる。ここで、CPUは、プログラムが記録された記録媒体から読み込まれたプログラムを実行するコンピュータとして動作するものである。
【符号の説明】
【0129】
100,101 通信装置
110 CPU
111 データレート算出部
112 送信待ちデータ有無判定部
113 誤り率算出部
114 通信品質数値化部
115 出力部
120,121 通信部
130 表示部
140 入力部
150 記憶部
160 マイク
170 スピーカー
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信品質を出力する通信装置、通信品質数値化方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、無線通信端末(無線通信装置)の通信品質をアンテナバーピクトとしてディスプレイ等に出力(表示)したり、通信品質が低下したときに警告音を鳴動したり、より良い通信品質を求めて通信システムを切替えたりすることがおこなわれている。
【0003】
表示されたアンテナバーピクトが、最高レベルを示すものであるならば、無線通信端末が、接続が途切れることなく最高速度で通信できることを、無線通信端末の利用者は期待する。
【0004】
一般的な通信品質判定方法は、RSSI(Received Signal Strength Indicator:電界強度)、データレート、CIR(Carrier to Interference Ratio:信号と干渉との比)、信号占有率、送受信電力レベルのいずれか、あるいは組み合わせで通信品質を求める方法が知られている。
【0005】
例えば、送信電力レベルに基づいて、通信品質を判定する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
また、受信電界強度とデータレート(通信速度)とに基づいて、通信品質を判定する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
また、自局宛の信号と他局宛の信号との比率に基づいて、通信品質を判定する技術が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0008】
また、CIRに基づいて、通信品質を判定する技術が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0009】
また、CIRを送信可能電力で補正することにより、通信品質を判定する技術が開示されている(例えば、特許文献5参照。)。
【0010】
また、CIRおよび近未来のデータレート予測に基づいて、通信品質を判定する技術が開示されている(例えば、特許文献6参照。)。
【0011】
また、所定時間のデータレート平均に基づいて、通信品質を判定する技術が開示されている(例えば、特許文献7参照。)。
【0012】
また、データ通信を開始する前に、RSSIの変動に基づいて、通信品質を予測する技術が開示されている(例えば、特許文献8参照。)。
【0013】
また、データレートを送信可能電力、あるいはデータレートを受信可能電力で補正することにより、通信品質を判定する技術が開示されている(例えば、特許文献9,10参照。)。
【0014】
また、伝送レートと通信状態を表示することにより、通信品質を感覚的にわかりやすく表示する技術が開示されている(例えば、特許文献11参照。)。
【0015】
また、複数の通信装置で同時に通信しているときの通信品質を表示する技術が開示されている(例えば、特許文献12参照。)。
【0016】
また、通話品質アラームを鳴動する条件として、電界強度を利用する技術が開示されている(例えば、特許文献13参照。)。
【0017】
また、複数の通信装置の通信品質を同時に表示する技術が開示されている(例えば、特許文献14参照。)。
【0018】
また、実際のデータレートを高く補正する技術が開示されている(例えば、特許文献15参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2008−177936号公報
【特許文献2】特開2009−246862号公報
【特許文献3】特開2008−177634号公報
【特許文献4】特開2008−245300号公報
【特許文献5】特許第4220263号公報
【特許文献6】特許第4080910号公報
【特許文献7】特開2002−300644号公報
【特許文献8】特開2002−171570号公報
【特許文献9】特許第4280513号公報
【特許文献10】特許第4564042号公報
【特許文献11】特開2006−295383号公報
【特許文献12】特開2010−098366号公報
【特許文献13】特開2005−086586号公報
【特許文献14】特開2002−044729号公報
【特許文献15】特開2005−184662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、上述した技術には、以下のような課題がある。
【0021】
第1の課題は、データレートの高低は、必ずしも通信品質を表現するとは限らないため、正確な通信品質を認識することができないことである。
【0022】
つまり、データレートが高ければ、通信品質が良いのはその通りであるが、データレートが低いからといって、必ずしも通信品質が悪いとはいえない。なぜならば、伝送すべきデータ量が少ないときはデータレートを低くしたり、QoS(Quality of Service:一定の通信速度を保証する技術)によってデータレートに制限を加えられていたり、通信開始直後はスロースタートしていたりするからである。もちろん、通信品質が悪いことが原因でデータレートが低いこともある。
【0023】
ここで、スロースタートとは、通信開始直後に輻輳が発生することを予防するために、遅い(低い)データレートで通信を開始し、徐々にデータレートを上げていく技術のことであり、一般的に良く知られている技術である。
【0024】
第2の課題は、異なる通信方式に対応した装置を搭載する無線通信端末にあっては、異なる通信方式の間で、RSSI、CIR、信号占有率、送受信電力レベルの比較では正しく通信品質の比較が出来ないということである。例えば、本質的にデータレートが低い方式と高い方式とで、RSSIの大小を比較しても意味が無い。
【0025】
無線区間のデータレートは、1x EVDO(1x Evolution Data Only)マルチキャリア方式の日本国内におけるサービスでは、2011年時点で、下り最大9.2Mbpsである。また、IEEE802.11g方式では、54Mbpsである。また、Mobile WiMAXでは、下り40Mbpsである。これらの方式では、最大速度が保障されるわけではなく、信号対雑音比によって、データレートを変えることがおこなわれている。
【0026】
電界強度(RSSI)に関しては、1x EVDO方式においてRSSIは、−106dBm以上が必要とされるが、安定した通信には−90dBm以上が望ましい。IEEE802.11g方式では、RSSIは−94dBm以上が必要とされる。また、Mobile WiMAXでは、RSSIは−92dBmから−40dBmが必要とされる。無線通信端末はAGC(Auto Gain Controller)を搭載するため、RSSIが直接データレートに影響するわけではないが、RSSIが方式によって異なる、ある値を下回ると、急激に信号対雑音比が劣化することによりデータレートは低下し、通信が切れやすくなってしまう。
【0027】
また、無線通信端末において、無線通信品質をアンテナバーピクトとして段階的に表示することがおこなわれている。
【0028】
無線通信端末の利用者が期待する無線通信品質の表示とは、データを高速に伝送できる状態かどうかの表示である。しかしながら、電界強度は直接にはデータレートに影響しないため、電界強度を基本としたアンテナピクト表示は、無線通信品質を正しく表示しているとはいえない。
【0029】
また、電界強度がある値を下回ると、急激に信号対雑音比が劣化するため、電界強度を信号対雑音比で補正したアンテナピクト表示も、アンテナバー本数と無線通信品質とを比例的に表示することは大変難しい。
【0030】
さらには、下り基準信号対雑音比を使用する方法もあるが、下りデータチャネルでデータレートを上げると、相対的に下り基準信号対雑音比が低下する。そのため、実際に通信を開始したとたんに、アンテナバー本数が急激に減るといったことも生じてしまう。
【0031】
そこで、自局宛信号対雑音比、あるいはデータレートそのものを無線通信品質として表示することもおこなわれている。
【0032】
データレートが高いときは、無線通信品質が高いといって良いが、データレートが低いときは、様々な原因が考えられるため、必ずしも無線通信品質が悪いとはいえない。なぜならば、通信開始直後は通信トラフィックの輻輳を予防するためのスロースタートが適用されることがあるし、通信アプリケーションが待機中で伝送すべきデータがないこともある。そうしたときは、データレートが低いが、実際にデータ送受信が開始されればデータレートが上がることが見込まれるからである。
【0033】
また、近年は、1つの無線通信端末に複数の通信装置を搭載することが多くなっている。
【0034】
携帯電話では、例えば1x EVDO方式に加えて無線LANを搭載したり、WiMAXを搭載したりするものが市販されている。こうした無線通信端末で最も無線通信品質が高く、すなわちデータレートが高い方式を選択しようとしたとき、先に述べたように通信方式によってデータレートは異なるため、単純に電界強度や信号対雑音比を比較しただけではそれぞれの通信方式の無線通信品質を比較することができない。
【0035】
また、通信方式によって符号化処理が異なるため、物理レイヤのデータレートがユーザデータのデータレートをそのまま反映するわけではなく、物理レイヤのデータレートでもって単純には無線通信品質を表現できない。
【0036】
こうしたことから、無線通信品質をより実態に近く、また特定の無線通信方式に依存しないよう、判定するために数値化する方法が望まれている。
【0037】
本発明の目的は、上述した課題を解決する通信装置、通信品質数値化方法およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0038】
本発明の通信装置は、
通信を行う通信装置であって、
当該通信装置と、当該通信装置と通信を行う他の通信装置との間のデータレートを算出するデータレート算出部と、
前記他の通信装置から当該通信装置への送信待ちのデータがあるかどうかを判定する送信待ちデータ有無判定部と、
当該通信装置で受信したデータの誤り率を算出する誤り率算出部と、
前記データレート算出部の算出結果と、前記送信待ちデータ有無判定部の判定結果と、前記誤り率算出部の算出結果とに基づいて、当該通信装置と前記他の通信装置との間の通信品質を数値化する通信品質数値化部と、
前記通信品質数値化部が数値化した通信品質を出力する出力部とを有する。
【0039】
また、本発明の通信品質数値化方法は、
第1の通信装置と第2の通信装置との間の通信品質を数値化する通信品質数値化方法であって、
前記第1の通信装置と前記第2の通信装置との間のデータレートを算出する処理と、
前記第2の通信装置から前記第1の通信装置への送信待ちのデータがあるかどうかを判定する処理と、
前記第1の通信装置で受信したデータの誤り率を算出する処理と、
前記算出されたデータレートと、前記送信待ちデータの有無と、前記算出された誤り率とに基づいて、第1の通信装置と第2の通信装置との間の通信品質を数値化する処理と、
前記数値化された通信品質を出力する処理とを行う。
【0040】
また、本発明のプログラムは、
通信を行う通信装置に実行させるためのプログラムであって、
当該通信装置と、当該通信装置と通信を行う他の通信装置との間のデータレートを算出する手順と、
前記他の通信装置から当該通信装置への送信待ちのデータがあるかどうかを判定する手順と、
当該通信装置で受信したデータの誤り率を算出する手順と、
前記算出されたデータレートと、前記送信待ちデータの有無と、前記算出された誤り率とに基づいて、当該通信装置と前記他の通信装置との間の通信品質を数値化する手順と、
前記数値化された通信品質を出力する手順とを実行させる。
【発明の効果】
【0041】
以上説明したように、本発明においては、より正確な通信品質を示す数値を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の通信装置の実施の一形態を示す図である。
【図2】図1に示したCPUの内部構成の一例を示す図である。
【図3】本形態における通信品質数値化方法の第1の例を説明するためのフローチャートである。
【図4】本形態における通信品質数値化方法の第2の例を説明するためのフローチャートである。
【図5】本形態における通信品質数値化方法の第3の例を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の通信装置の他の実施の形態を示す図である。
【図7】データレートの無線通信品質値への補正を概念的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0044】
図1は、本発明の通信装置の実施の一形態を示す図である。
【0045】
本形態における通信装置100は図1に示すように、CPU110と、通信部120と、表示部130と、入力部140と、記憶部150と、マイク160と、スピーカー170とが設けられている。
【0046】
通信部120は、通信装置100と通信を行う他の通信装置とのインタフェース機能を持つ。また、通信部120は、無線通信以外の有線通信を行うものであっても良い。通信部120は、無線通信を行う場合、通信装置100に取り付けられたアンテナと接続される。このとき、アンテナは、MIMO(Multiple Input Multiple Output)システムやダイバーシティで用いられるように、複数取り付けられているものであっても良い。
【0047】
表示部130は、CPU110で処理された情報を表示するディスプレイである。また、表示部130は、後述する通信品質の値を数値または図を用いて表示する。
【0048】
入力部140は、通信装置100の外部からの操作で情報を通信装置100に入力する。例えば、入力部140は、ボタンキーやタッチパネルであっても良い。
【0049】
記憶部150は、CPU110が処理する情報やプログラムを記憶する。また、記憶部150は、通信装置100に固定的に搭載されているものであっても良いし、取り外し可能な媒体であっても良い。
【0050】
マイク160は、通信装置100の外部から音声を入力する。
【0051】
スピーカー170は、CPU110が処理した信号を、音声信号へ変換して、通信装置100の外部へ放音する。また、スピーカー170は、後述する通信品質の値に応じて、所定の音(アラーム音)を出力する。
【0052】
CPU110は、通信装置100内部の各構成要素を制御する。
【0053】
図2は、図1に示したCPU110の内部構成の一例を示す図である。
【0054】
図1に示したCPU110には図2に示すように、データレート算出部111と、送信待ちデータ有無判定部112と、誤り率算出部113と、通信品質数値化部114と、出力部115とが設けられている。なお、図2には、図1に示したCPU110が具備する構成要素のうち、本発明に関わる要素のみを示した。また、これらの構成要素がソフトウェアで実現される場合、当該ソフトウェアは記憶部150にあらかじめ(通信装置100の製造時等に)格納されているものであっても良いし、所定のサーバ等の通信装置から通信ネットワークを介してダウンロードされるものであっても良い。
【0055】
データレート算出部111は、通信装置100と、通信装置100と通信を行う他の通信装置との間の通信におけるデータレート(通信速度)を算出する。このデータレートの算出方法は、通信部120から出力されてきたデータサイズと計測時間とに基づいて、算出するものであっても良い。また、CPU110を動かすOS(Operating System)があらかじめ計算した統計値に基づいて算出するものであっても良い。ここで、SINR(Signal to Interference and Noise power Ratio)等の物理的パラメータをデータレートに換算するものであっても良いが、入力されたデータサイズを用いる方が、実力を直接表現できるため好ましい。また、データレート算出部111は、算出したデータレートを通信品質数値化部114へ出力する。
【0056】
送信待ちデータ有無判定部112は、他の通信装置から通信装置100への送信待ちのデータがあるかどうかを判定する。
【0057】
通常、データをいつどれだけ送信するかを決定するのは送信側(他の通信装置)であるため、通信装置100が他の通信装置にて送信待ちデータがあるかどうかを知ることは困難である。例えば、通信アプリケーションの状態を調べて、他の通信装置にて送信待ちデータがあるかどうかを判断することも原理的には可能である。しかしながら、近年の通信装置では、不特定多数の通信アプリケーションを動かすことが可能であるため、現実的ではない。
【0058】
そこで、本発明ではソケットが存在するかどうかに応じて、他の通信装置にて送信待ちデータがあるかどうかを判断する。ここで、ソケットとは、TCP(Transmission Control Protocol)ソケット、UDP(User Datagram Protocol)ソケット、ICMP(Internet Control Message Protocol)ソケット、および他のプロトコルのソケットのことをいう。ソケットについては、一般的に広く知られているのでここでは説明を省略するが、ソケットはOSによって管理され、ソフトウェアは通信すべきデータがあると、ソケットを生成し、通信を終了すると、そのソケットを破棄するのが一般的である。また、送信すべきデータが無いままソケットを放置すると、サーバがタイムアウトしてソケットを破棄することがよくおこなわれている。したがって、ソケットが存在するならば、送信待ちデータがあることが期待でき、つまり、ソケットの存在有無により、送信待ちデータ有無を判定することが出来る。
【0059】
また、送信待ちデータ有無判定部112は、送信待ちのデータがあるかどうかの判定結果を通信品質数値化部114へ出力する。
【0060】
誤り率算出部113は、通信部120で受信したデータの誤り率を算出する。この誤り率の算出方法は、既知の方法を用いるもので良い。例えば、CPU110を動かすOSがあらかじめ計算した統計値を用いるものであっても良いし、受信パケットの欠損数や再受信数に基づいて算出するものであっても良い。また、上りの通信については送信パケットの再送数から誤り率を計算することが出来る。
【0061】
また、誤り率算出部113は、算出した誤り率を通信品質数値化部114へ出力する。
【0062】
なお、通信部120で受信したデータの誤り率を通信部120が算出するものであっても良い。この場合、通信部120は、受信したデータの誤り率を算出し、算出した誤り率を、誤り率算出部113を介して通信品質数値化部114へ出力する。
【0063】
通信品質数値化部114は、データレート算出部111から出力されてきた算出結果と、送信待ちデータ有無判定部112から出力されてきた判定結果と、誤り率算出部113から出力されてきた算出結果とに基づいて、通信装置100と他の通信装置との間の通信品質を数値化する。
【0064】
具体的には、通信品質数値化部114は、データレート算出部111から出力されてきたデータレートを、既知の方法を用いて通信品質値へ換算する。これは、単純にデータレートをそのまま無線通信品質値としても良いし、または、段階を示す値に換算して通信品質値としても良い。
【0065】
また、通信品質数値化部114は、送信待ちデータ有無判定部112から出力されてきた判定結果が、送信待ちのデータがないという判定結果である場合、数値化した通信品質である通信品質値を、現在の値よりも高い値に補正する。
【0066】
また、通信品質数値化部114は、誤り率算出部113から出力されてきた誤り率があらかじめ設定された誤り率閾値よりも低い場合、数値化した通信品質である通信品質値を、現在の値よりも高い値に補正する。ここで、誤り率が高いか低いかの判定方法は、上述したように、例えば、誤り率と1%といった固定値とを比較するのが簡便であるが、誤り率を入力とした確率関数を用いて判定するものであっても良い。
【0067】
さらに、具体的には、通信品質数値化部114は、データレート算出部111から出力されてきたデータレートがあらかじめ設定されたデータレート閾値よりも低く、且つ送信待ちデータ有無判定部112から出力されてきた判定結果が送信待ちのデータがないと判定したものである場合、数値化した通信品質である通信品質値を、現在の値よりも高い値に補正する。または、通信品質数値化部114は、データレート算出部111から出力されてきたデータレートがあらかじめ設定されたデータレート閾値よりも低く、且つ送信待ちデータ有無判定部112の判定結果が送信待ちのデータがあると判定したものであり、且つ誤り率算出部113が算出した誤り率があらかじめ設定された誤り率閾値よりも低い場合、数値化した通信品質である通信品質値を、現在の値よりも高い値に補正する。ここで、データレートが高いか低いかの判定方法は、上述したようにデータレートと固定値とを比較するのが簡便であるが、データレートを入力とした確率関数であっても良く、確率関数を用いた手法の例としてファジー関数が知られている。
【0068】
出力部115は、通信品質数値化部114が数値化した通信品質(通信品質値)を出力する。このとき、出力先は、表示部130やスピーカー170である。
【0069】
以下に、本形態における通信品質数値化方法について説明する。
【0070】
図3は、本形態における通信品質数値化方法の第1の例を説明するためのフローチャートである。
【0071】
まず、通信部120が受信したデータについて、データレート算出部111が、既知の方法を用いてデータレートを算出する(ステップS1)。
【0072】
続いて、通信品質数値化部114が、データレート算出部111が算出したデータレートが高いかどうかを判定する(ステップS2)。これは、データレートが高ければ通信品質も高いといえるが、データレートが低いときは、本来の通信品質に対してデータレートが低く抑えられているかどうかを考慮するためである。また、このデータレートが高いかどうかの判定には、上述した方法を用いる。
【0073】
データレート算出部111が算出したデータレートが高いと判定した場合、通信品質数値化部114は、上述したように、既知の方法を用いてデータレートを通信品質値へ換算する(ステップS3)。
【0074】
一方、データレート算出部111が算出したデータレートが低いと判定した場合、通信品質数値化部114は、送信待ちデータ有無判定部112から出力されてきた判定結果が、送信待ちデータがあると判定したものであるかどうかを判定する(ステップS4)。
【0075】
送信待ちデータ有無判定部112から出力されてきた判定結果が、送信待ちデータがあると判定したものである場合、誤り率算出部113は、通信部120で受信したデータの誤り率を算出する(ステップS5)。誤り率算出部113は、算出した誤り率を通信品質数値化部114へ出力する。
【0076】
すると、通信品質数値化部114は、誤り率算出部113から出力されてきた誤り率が高いかどうかを判定する(ステップS6)。この誤り率が高いかどうかの判定には、上述した方法を用いる。
【0077】
通信品質数値化部114は、誤り率が高いと判定した場合、ステップS3の処理を行う。また、このとき、誤り率が高いことを考慮して、通信品質値を低く補正するものであっても良い。
【0078】
一方、通信品質数値化部114は、誤り率が低いと判定した場合、既知の方法を用いてデータレートを通信品質値へ換算し、この値(現在の値)を高く補正する(ステップS7)。補正の方法は、例えば、通信品質値が段階的表現であれば、段階を高くするといった方法でも良いし、通信品質値が連続的表現であれば、1以上の比率を乗じるといった方法であっても良いし、あるいは、固定値を加算するといった方法であっても良いし、あるいはその両方であっても良い。
【0079】
また、ステップS4にて、送信待ちデータ有無判定部112から出力されてきた判定結果が、送信待ちデータがないと判定したものである場合、ステップS7の処理が行われる。このとき、ステップS6の処理の後に行われる補正と同様の補正を行うものであっても良いし、送信データ待ちがあることを考慮して、補正の度合いを大きくあるいは小さく変えて行うものであっても良い。
【0080】
そして、通信品質数値化部114が数値化した通信品質値を、出力部115が出力する。
【0081】
図4は、本形態における通信品質数値化方法の第2の例を説明するためのフローチャートである。
【0082】
まず、通信部120が受信したデータについて、データレート算出部111が、既知の方法を用いてデータレートを算出する(ステップS11)。
【0083】
続いて、通信品質数値化部114は、既知の方法を用いてデータレートを通信品質値へ換算する(ステップS12)。
【0084】
すると、通信品質数値化部114が、データレート算出部111が算出したデータレートが高いかどうかを判定する(ステップS13)。このデータレートが高いかどうかの判定には、上述した方法を用いる。
【0085】
データレート算出部111が算出したデータレートが高いと判定した場合、通信品質値は、そのままとなる。
【0086】
一方、データレート算出部111が算出したデータレートが低いと判定した場合、通信品質数値化部114は、送信待ちデータ有無判定部112から出力されてきた判定結果が、送信待ちデータがあると判定したものであるかどうかを判定する(ステップS14)。
【0087】
送信待ちデータ有無判定部112から出力されてきた判定結果が、送信待ちデータがあると判定したものである場合、誤り率算出部113は、通信部120で受信したデータの誤り率を算出する(ステップS15)。誤り率算出部113は、算出した誤り率を通信品質数値化部114へ出力する。
【0088】
すると、通信品質数値化部114は、誤り率算出部113から出力されてきた誤り率が高いかどうかを判定する(ステップS16)。この誤り率が高いかどうかの判定には、上述した方法を用いる。
【0089】
通信品質数値化部114は、誤り率が高いと判定した場合、通信品質値は、そのままとなる。また、このとき、誤り率が高いことを考慮して、通信品質値を低く補正するものであっても良い。
【0090】
一方、通信品質数値化部114は、誤り率が低いと判定した場合、通信品質値を高い値に補正する(ステップS17)。補正の方法は、例えば、通信品質値が段階的表現であれば、段階を高くするといった方法でも良いし、通信品質値が連続的表現であれば、1以上の比率を乗じるといった方法であっても良いし、あるいは、固定値を加算するといった方法であっても良いし、あるいはその両方であっても良い。
【0091】
また、ステップS14にて、送信待ちデータ有無判定部112から出力されてきた判定結果が、送信待ちデータがないと判定したものである場合、ステップS17の処理が行われる。このとき、ステップS16の処理の後に行われる補正と同様の補正を行うものであっても良いし、送信データ待ちがあることを考慮して、補正の度合いを大きくあるいは小さく変えて行うものであっても良い。
【0092】
そして、通信品質数値化部114が数値化した通信品質値を、出力部115が出力する。
【0093】
このように、まず、データレートに基づいて、通信品質値を算出しておけば、その後の補正では、すでに算出されている通知品質値自体を補正するだけで済む。
【0094】
図5は、本形態における通信品質数値化方法の第3の例を説明するためのフローチャートである。
【0095】
まず、通信部120が受信したデータについて、データレート算出部111が、既知の方法を用いてデータレートを算出する(ステップS21)。
【0096】
続いて、通信品質数値化部114は、送信待ちデータ有無判定部112から出力されてきた判定結果が、送信待ちデータがあると判定したものであるかどうかを判定する(ステップS22)。
【0097】
送信待ちデータ有無判定部112から出力されてきた判定結果が、送信待ちデータがあると判定したものである場合、誤り率算出部113は、通信部120で受信したデータの誤り率を算出する(ステップS23)。誤り率算出部113は、算出した誤り率を通信品質数値化部114へ出力する。
【0098】
すると、通信品質数値化部114は、誤り率算出部113から出力されてきた誤り率が高いかどうかを判定する(ステップS24)。この誤り率が高いかどうかの判定には、上述した方法を用いる。
【0099】
通信品質数値化部114は、誤り率が高いと判定した場合、上述したように、既知の方法を用いてデータレートを通信品質値へ換算する(ステップS25)。
【0100】
一方、通信品質数値化部114は、誤り率が低いと判定した場合、既知の方法を用いてデータレートを通信品質値へ換算し、この値(現在の値)を高く補正する(ステップS26)。補正の方法は、例えば、通信品質値が段階的表現であれば、段階を高くするといった方法でも良いし、通信品質値が連続的表現であれば、1以上の比率を乗じるといった方法であっても良いし、あるいは、固定値を加算するといった方法であっても良いし、あるいはその両方であっても良い。
【0101】
また、ステップS22にて、送信待ちデータ有無判定部112から出力されてきた判定結果が、送信待ちデータがないと判定したものである場合、ステップS26の処理が行われる。このとき、ステップS24の処理の後に行われる補正と同様の補正を行うものであっても良いし、送信データ待ちがあることを考慮して、補正の度合いを大きくあるいは小さく変えて行うものであっても良い。
【0102】
そして、通信品質数値化部114が数値化した通信品質値を、出力部115が出力する。
【0103】
このように、データレートが高いか低いかに関わらず、送信データ待ちしていないときと誤り率が低いときにデータレートを高く補正する。第1および第2の例と異なり、データレートが高いときは、より高く補正されることがある。
【0104】
また、本発明により求めた無線通信品質値を直接使用するのではなく、既知の方法でさらに加工して使用することが出来る。例えば、数回繰り返して平均を求めたり、あるいはヒステリシスをもたせたりして、使用することができる。
【0105】
図6は、本発明の通信装置の他の実施の形態を示す図である。
【0106】
本形態における通信装置101は図6に示すように、図1に示した通信装置100の構成に加えて、通信部121が設けられている。
【0107】
通信部121は、通信装置101と通信を行う他の通信装置とのインタフェース機能を持つ。また、通信部121は、無線通信以外の有線通信を行うものであっても良い。通信部121は、無線通信を行う場合、通信装置101に取り付けられたアンテナと接続される。
【0108】
また、図6においては、通信部120と通信部121とが、1つのアンテナを共用しているが、通信部120と通信部121とが互いに独立したアンテナと接続されていても良い。
【0109】
所定のアルゴリズムを用いて、CPU110は、通信部120と通信部121とを使い分けることができ、通信部120と通信部121とは、同時あるいは排他的に動作することが出来る。このとき、通信部120と通信部121とは、それぞれの受信データの誤り率をCPU110へ出力することも出来るし、CPU110の処理によって通信部120と通信部121とにおける受信データ誤り率をそれぞれ算出することも出来る。
【0110】
また、CPU110は、通信部120と通信部121とを区別できるため、通信部120と通信部121とのそれぞれに対して、図3〜5に示したフローチャートを用いて説明した処理を適用して、通信装置101における通信品質値を求めることが出来る。
【0111】
なお、送信待ちデータの有無の判定にソケットを用いる場合、ソケットに割当てられるIPアドレスを用いれば、それぞれのソケットが、通信部120と通信部121とのどちらを使用しているかを区別することができるため、通信部120,121ごとに送信待ちデータの有無を判定することが出来る。
【0112】
また、さらに多くの通信部を搭載するときも同様である。
【0113】
このように、本形態においては、無線通信方式固有の値ではなく、通信部から出力されるデータレートを基本として、無線通信方式と無関係な送信待ちデータの有無と誤り率とに基づいて通信品質値を求めているため、複数の通信部を比較してどの通信部が最も通信品質が高いかを判断できたり、あるいは使用中の通信部から他の通信部へ切替えるかを判断できたりするという効果が得られる。
【0114】
以上説明したように、本発明においては、以下に記載するような効果を奏する。
【0115】
第1の効果は、通信品質値を高く補正しているため、スロースタートや基地局のスケジューラが原因でデータレートが低くても、本来の通信品質は高いということが表現できることである。
【0116】
第2の効果は、データ待ちしているときに通信品質値を高く補正しているため、伝送すべきデータが無いためにデータレートが低くても、本来の通信品質は高いということが表現できることである。
【0117】
図7は、データレートの無線通信品質値への補正を概念的に示した図である。図7において、横軸に時刻、縦軸にデータレートおよび無線通信品質値を示す。また、データレートを実線で示し、無線通信品質値を破線で示す。また、部分的に、データレートと無線通信品質値とは、重なって示されている。また、データレートがd1よりも低いとき、無線通信品質値を高く補正して、データレートがd1よりも高いときは、無線通信品質値を補正しない例である。
【0118】
図7に示すように、時刻t0は通信装置が待受け状態である。待受け状態であるから、データレートは0であるが、本発明により無線通信品質値は破線部分まで高く補正される。
【0119】
時刻t1で、データ通信を開始する。スロースタートのため、徐々にデータレートが高くなり、時刻t2に最高速度に達するが、それに応じて無線通信品質値も高く補正される。
【0120】
データレートがd1よりも高くなると、無線通信品質値の補正をしなくなる。
【0121】
時刻t3にて電波環境が悪化すると、データレートも低くなる。
【0122】
データレートが、d1より低くなっても送信待ちデータが有り、また誤り率が高いため、無線通信品質値は補正されず低いままであり、電波環境が悪いことが原因で無線通信品質が悪いことを表現している。
【0123】
時刻t4から電波環境が回復し、時刻t5で通信を終了し、待ち受けに戻る。
【0124】
これ以降は、データレートが0であるがデータ待ちが無いため、無線通信品質値は高く補正される。
【0125】
図7に示すように、従来の無線通信品質数値化方法では、時刻t0からの待ち受け状態および時刻t5からの待ち受け状態では無線通信品質が最低であると判断され、また、時刻t1直後のスロースタートでは、無線通信品質が充分ではないと判断されてしまっていたが、本発明により無線通信品質が充分高いと判断できるようになる。
【0126】
このようにして、データレートが低いときでも、その原因によって無線通信品質値を補正しているため、無線通信品質を過小でなく、適正に求めることが出来る。また、特定の無線通信方式に依存しない属性を用いて無線通信品質値を求めているため、通信装置が異なる通信部を複数搭載しているときに、それぞれの通信部間で無線通信品質の大小を比較することが出来る。
【0127】
また、通信品質指標値が実態をより正しく表現できる効果が得られるため、従来から知られたピクト表示や通信システム切替え動作へ組み合わせたときの誤動作を抑制することが可能となる。
【0128】
上述した通信装置100に設けられた各構成要素が行う処理は、目的に応じてそれぞれ作製された論理回路で行うようにしても良い。また、処理内容を手順として記述したコンピュータプログラム(以下、プログラムと称する)を通信装置100にて読取可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムを通信装置100に読み込ませ、実行するものであっても良い。通信装置100にて読取可能な記録媒体とは、フロッピー(登録商標)ディスク、光磁気ディスク、DVD、CDなどの移設可能な記録媒体の他、通信装置100に内蔵された記憶部150、ROM、RAM等のメモリやHDD等を指す。この記録媒体に記録されたプログラムは、通信装置100に設けられたCPU110にて読み込まれ、CPU110の制御によって、上述したものと同様の処理が行われる。ここで、CPUは、プログラムが記録された記録媒体から読み込まれたプログラムを実行するコンピュータとして動作するものである。
【符号の説明】
【0129】
100,101 通信装置
110 CPU
111 データレート算出部
112 送信待ちデータ有無判定部
113 誤り率算出部
114 通信品質数値化部
115 出力部
120,121 通信部
130 表示部
140 入力部
150 記憶部
160 マイク
170 スピーカー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信を行う通信装置であって、
当該通信装置と、当該通信装置と通信を行う他の通信装置との間のデータレートを算出するデータレート算出部と、
前記他の通信装置から当該通信装置への送信待ちのデータがあるかどうかを判定する送信待ちデータ有無判定部と、
当該通信装置で受信したデータの誤り率を算出する誤り率算出部と、
前記データレート算出部の算出結果と、前記送信待ちデータ有無判定部の判定結果と、前記誤り率算出部の算出結果とに基づいて、当該通信装置と前記他の通信装置との間の通信品質を数値化する通信品質数値化部と、
前記通信品質数値化部が数値化した通信品質を出力する出力部とを有する通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の通信装置において、
前記通信品質数値化部は、前記データレート算出部が算出したデータレートに基づいて、前記通信品質を数値化し、前記送信待ちデータ有無判定部の判定結果が送信待ちのデータがないと判定したものである場合、該数値化した通信品質を、現在の値よりも高い値に補正することを特徴とする通信装置。
【請求項3】
請求項1に記載の通信装置において、
前記通信品質数値化部は、前記データレート算出部が算出したデータレートに基づいて、前記通信品質を数値化し、前記誤り率算出部が算出した誤り率があらかじめ設定された誤り率閾値よりも低い場合、該数値化した通信品質を、現在の値よりも高い値に補正することを特徴とする通信装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の通信装置において、
前記通信品質数値化部は、前記データレート算出部が算出したデータレートに基づいて、前記通信品質を数値化し、該データレートがあらかじめ設定されたデータレート閾値よりも低く、且つ前記送信待ちデータ有無判定部の判定結果が送信待ちのデータがないと判定したものである場合、または、該データレートが前記データレート閾値よりも低く、且つ前記送信待ちデータ有無判定部の判定結果が送信待ちのデータがあると判定したものであり、且つ前記誤り率算出部が算出した誤り率があらかじめ設定された誤り率閾値よりも低い場合、該数値化した通信品質を、現在の値よりも高い値に補正することを特徴とする通信装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の通信装置において、
前記送信待ちデータ有無判定部は、ソケットを用いて、前記送信待ちのデータがあるかどうかを判定することを特徴とする通信装置。
【請求項6】
第1の通信装置と第2の通信装置との間の通信品質を数値化する通信品質数値化方法であって、
前記第1の通信装置と前記第2の通信装置との間のデータレートを算出する処理と、
前記第2の通信装置から前記第1の通信装置への送信待ちのデータがあるかどうかを判定する処理と、
前記第1の通信装置で受信したデータの誤り率を算出する処理と、
前記算出されたデータレートと、前記送信待ちデータの有無と、前記算出された誤り率とに基づいて、第1の通信装置と第2の通信装置との間の通信品質を数値化する処理と、
前記数値化された通信品質を出力する処理とを行う通信品質数値化方法。
【請求項7】
通信を行う通信装置に、
当該通信装置と、当該通信装置と通信を行う他の通信装置との間のデータレートを算出する手順と、
前記他の通信装置から当該通信装置への送信待ちのデータがあるかどうかを判定する手順と、
当該通信装置で受信したデータの誤り率を算出する手順と、
前記算出されたデータレートと、前記送信待ちデータの有無と、前記算出された誤り率とに基づいて、当該通信装置と前記他の通信装置との間の通信品質を数値化する手順と、
前記数値化された通信品質を出力する手順とを実行させるためのプログラム。
【請求項1】
通信を行う通信装置であって、
当該通信装置と、当該通信装置と通信を行う他の通信装置との間のデータレートを算出するデータレート算出部と、
前記他の通信装置から当該通信装置への送信待ちのデータがあるかどうかを判定する送信待ちデータ有無判定部と、
当該通信装置で受信したデータの誤り率を算出する誤り率算出部と、
前記データレート算出部の算出結果と、前記送信待ちデータ有無判定部の判定結果と、前記誤り率算出部の算出結果とに基づいて、当該通信装置と前記他の通信装置との間の通信品質を数値化する通信品質数値化部と、
前記通信品質数値化部が数値化した通信品質を出力する出力部とを有する通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の通信装置において、
前記通信品質数値化部は、前記データレート算出部が算出したデータレートに基づいて、前記通信品質を数値化し、前記送信待ちデータ有無判定部の判定結果が送信待ちのデータがないと判定したものである場合、該数値化した通信品質を、現在の値よりも高い値に補正することを特徴とする通信装置。
【請求項3】
請求項1に記載の通信装置において、
前記通信品質数値化部は、前記データレート算出部が算出したデータレートに基づいて、前記通信品質を数値化し、前記誤り率算出部が算出した誤り率があらかじめ設定された誤り率閾値よりも低い場合、該数値化した通信品質を、現在の値よりも高い値に補正することを特徴とする通信装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の通信装置において、
前記通信品質数値化部は、前記データレート算出部が算出したデータレートに基づいて、前記通信品質を数値化し、該データレートがあらかじめ設定されたデータレート閾値よりも低く、且つ前記送信待ちデータ有無判定部の判定結果が送信待ちのデータがないと判定したものである場合、または、該データレートが前記データレート閾値よりも低く、且つ前記送信待ちデータ有無判定部の判定結果が送信待ちのデータがあると判定したものであり、且つ前記誤り率算出部が算出した誤り率があらかじめ設定された誤り率閾値よりも低い場合、該数値化した通信品質を、現在の値よりも高い値に補正することを特徴とする通信装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の通信装置において、
前記送信待ちデータ有無判定部は、ソケットを用いて、前記送信待ちのデータがあるかどうかを判定することを特徴とする通信装置。
【請求項6】
第1の通信装置と第2の通信装置との間の通信品質を数値化する通信品質数値化方法であって、
前記第1の通信装置と前記第2の通信装置との間のデータレートを算出する処理と、
前記第2の通信装置から前記第1の通信装置への送信待ちのデータがあるかどうかを判定する処理と、
前記第1の通信装置で受信したデータの誤り率を算出する処理と、
前記算出されたデータレートと、前記送信待ちデータの有無と、前記算出された誤り率とに基づいて、第1の通信装置と第2の通信装置との間の通信品質を数値化する処理と、
前記数値化された通信品質を出力する処理とを行う通信品質数値化方法。
【請求項7】
通信を行う通信装置に、
当該通信装置と、当該通信装置と通信を行う他の通信装置との間のデータレートを算出する手順と、
前記他の通信装置から当該通信装置への送信待ちのデータがあるかどうかを判定する手順と、
当該通信装置で受信したデータの誤り率を算出する手順と、
前記算出されたデータレートと、前記送信待ちデータの有無と、前記算出された誤り率とに基づいて、当該通信装置と前記他の通信装置との間の通信品質を数値化する手順と、
前記数値化された通信品質を出力する手順とを実行させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2013−46341(P2013−46341A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184602(P2011−184602)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]