説明

通信装置、通信装置の制御方法およびプログラム

【課題】 本発明は、簡単かつ直感的な操作で他の通信装置とデータを通信できるようにすることを目的とする。
【解決手段】 本発明の通信装置は、ユーザからの入力を受け付ける入力手段と、前記入力手段を介したユーザによる入力の軌跡方向に基づいて、他の通信装置に対してデータを送信するか、前記他の通信装置からデータを受信するかを判定する判定手段と、前記判定手段による判定に応じて、前記他の通信装置とデータを通信する通信手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データを送信するか受信するかを判定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カプラと呼ばれるアンテナを数cm以内まで近づけることで通信が可能となるTransferJet(商標)が提案されている。TransferJetは通信距離が短く、装置同士をタッチすることで通信を可能とすることができるため、ユーザは直感的な操作で通信装置同士で通信させることができる。
【0003】
一方、データを通信する際には、双方の通信装置の物理的またはソフト的な送信ボタン、または、受信ボタンを押すことで、データを送信する側と、データを受信する側とが判定されていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】”TransferJetホワイトペーパー”http://www.transferjet.org/ja/tj/transferjet_whitepaper_J.pdf
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−221355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、TransferJetを用いてデータを通信する場合には、通信装置同士をタッチする動作に加え、更に双方の通信装置の物理的またはソフト的な送信ボタン、または、受信ボタンを押す必要があり、必ずしも簡単かつ直感的な操作でデータを通信できていなかった。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、簡単かつ直感的な操作で他の通信装置とデータを通信できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の通信装置は、ユーザからの入力を受け付ける入力手段と、前記入力手段を介したユーザによる入力の軌跡方向に基づいて、他の通信装置に対してデータを送信するか、前記他の通信装置からデータを受信するかを判定する判定手段と、前記判定手段による判定に応じて、前記他の通信装置とデータを通信する通信手段とを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡単かつ直感的な操作で他の通信装置とデータを通信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ネットワーク構成を示す図。
【図2】ハードウェア構成図。
【図3】ソフトウェア機能ブロック図。
【図4】カメラが実現するフローチャート。
【図5】ユーザの指の動きを示す図。
【図6】ディスプレイの領域を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に本実施形態に係る通信システムの構成を示す。101および102は、無線通信機能を備えた通信装置としてのデジタルカメラ(以下、単にカメラと称する)である。本実施形態では、無線通信としてTransferJet(商標)を用いる。TransferJetでは、カプラと呼ばれるアンテナを向かい合わせて配置することで、通信装置同士で誘導電界を利用して通信することができる。本実施形態では図1に示すように、カメラ101のアンテナ205(後述)と、カメラ102のアンテナとが向かい合わせて配置される。
【0012】
なお、通信装置は、カメラに限らず、プリンタ、ビデオカメラ、ドングル、ストレージ等の機器であってもよい。
【0013】
図2に、カメラ101のハードウェア構成を示す。なお、カメラ102もカメラ101と同様のハードウェア構成を有する。
【0014】
制御部201はCPUまたはMPUにより構成され、記憶部202に記憶されたプログラムを実行することによりカメラ101全体を制御する。記憶部202はROM、RAMにより構成され、制御部201が実行するプログラムや、通信パラメータ等の各種情報を記憶する。後述する各種動作は、記憶部202に記憶されたプログラムを制御部201が実行することにより行われる。なお、記憶部202には、ROM、RAM等のメモリの他に、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、DVDなどの記憶媒体を用いてもよい。なお、これらの記憶媒体に記憶されたコンピュータが読みだすことによっても、後述する各種動作が実行される。
【0015】
203はタッチパネル式ディスプレイ(以下、単にディスプレイと称する)であり、各種情報の表示を行う。更に、ディスプレイ203は、ユーザからの各種操作の受付を行う入力部としても動作する。204は通信部であり、カプラと呼ばれるアンテナ205を介して誘導電界により通信を行う。206はユーザの指示により撮影を行い、撮影した画像のデータ(画像データ)を記憶部202に記憶させる撮影部である。
【0016】
以下、カメラ102の不図示の制御部は251、記憶部は252、ディスプレイは253、通信部は254、アンテナは255、撮影部は256と各々符号を付して説明する。
【0017】
図3に、カメラ101の制御部201が記憶部202に記憶されているプログラムを読み出すことで実現されるソフトウェア機能ブロックを示す。なお、図3に示すソフトウェア機能ブロックの少なくとも一部をハードウェアにより実現してもよい。
【0018】
301は、ディスプレイ203を制御するディスプレイ制御部である。ディスプレイ制御部301は、ディスプレイ203へのユーザ入力を判定し、ユーザの指の軌跡情報の収集および解析を行う。ここで、軌跡情報は、ユーザの指がディスプレイ203をタッチし始めた始点の位置の情報と、ユーザの指がディスプレイ203から離れた終点の位置の情報とを含む。
【0019】
302は、通信部204の電力供給を制御する電源部である。電源部302が必要な時にだけ通信部204に電力を供給することで、省電力とすることができる。303は、通信部204を用いて、他の通信装置との接続を行う接続部である。304は、通信部204を用いて、画像データを送信する送信部である。305は、通信部204を用いて、画像データを受信する受信部である。
【0020】
また、カメラ102もカメラ101と同様のソフトウェア機能ブロックを有する。以下、カメラ102の不図示のディスプレイ制御部は351、電源部は352、接続部は353、送信部は354、受信部は355と各々符号を付して説明する。なお、上述の説明においてカメラ101のハードウェアと関連付けられて説明されている部分については、カメラ102が有する同種のハードウェアと関連付けられるものとする。
【0021】
図4に、撮影した画像のサムネイル画像がディスプレイ203に表示されている際に、カメラ101の制御部201が記憶部202に記憶されているプログラムを読み出すことで実現されるフローチャートを示す。また、カメラ102の制御部251も記憶部252に記憶されているプログラムを読み出すことで同様のフローチャートを実現する。この際、カメラ102のディスプレイ253には、画像保存用のフォルダを意味するアイコン(フォルダアイコン)が表示されている。
【0022】
本実施形態では、カメラ101が画像データの送信側となり、画像データの受信側となるカメラ102に画像データを転送する場合について説明する。なお、初期状態として、カメラ101の通信部204およびカメラ102の通信部254の電源はオフであり、カメラ101および102とは通信ができない状態である。また、カメラ101の記憶部202には、予めユーザが撮影部206を介して撮影した画像のデータが保存されているものとする。
【0023】
カメラ101において、ディスプレイ制御部301はディスプレイ203にユーザの指がタッチされたか否かを判定する(S401)。同様に、カメラ102において、ディスプレイ制御部351はディスプレイ253にユーザの指がタッチされたか否かを判定する(S401)。ユーザの指がタッチされたと判定された場合には、S402に進む。
【0024】
ここでは、図5に示すように、まずユーザは、カメラ101のディスプレイ203に表示されているサムネイル画像を指でタッチする。ここでユーザがタッチした点が、ユーザの指の軌跡の始点となる。その後、ユーザは、ディスプレイ203をなぞりながら、カメラ101のアンテナ205の方向に指を動かす。そして、カメラ101のアンテナ205、カメラ102のアンテナ255を順に介して、カメラ102のディスプレイ253に表示されているフォルダアイコンまで、指を動かす。
【0025】
上述のユーザの指の動きのうち、カメラ101のディスプレイ制御部301は、ユーザの指がディスプレイ203へのタッチを始めた始点(点A)から、ユーザの指がディスプレイ203を離れた終点(点B)までの間の軌跡情報を取得する(S402)。また、カメラ102のディスプレイ制御部351は、ユーザの指がカメラ102のディスプレイ253へのタッチを始めた始点(点C)から、離れるまで(終点D)の間の軌跡情報を取得する(S402)。
【0026】
次に、ディスプレイ制御部301は取得した軌跡情報を解析し、指の移動方向(軌跡方向)が外向きであるか、内向きであるか、どちらの方向でも無いかを判定する。ここでは、ディスプレイ制御部301は、図6(a)に示すように、所定の中心領域内に始点があり、所定の外周領域内に終点がある場合、移動方向が外向きであると判定する。なお、図から明らかなように、中心領域は外周領域の内側の領域である。また、図6(b)に示すように所定の外周領域内に始点があり、所定の中心領域内に終点がある場合、移動方向が内向きであると判定する。そして、そのどちらの条件にあはまらない場合には、どちらの方向でも無いと判定する。
【0027】
S403において、移動方向が外向きであると判定された場合にはS404に進み、内向きであると判定された場合にはS409に進み、どちらの方向でも無いと判定された場合にはS401に戻る。
【0028】
ここでは、始点Aは所定の中心領域内にあり、終点Bは所定の外周領域内にあるので、カメラ101のディスプレイ制御部301は移動方向が外向きであると判定する(S403)。そして、電源部302は通信部204に電力供給を開始する(S404)。電力供給が開始されると、接続部303は、所定期間、通信部204を用いて接続要求を送信し、カメラ102との接続を試みる(S405)。そして、送信した接続要求に対して、カメラ102から接続応答を受信したか否かを接続部303は判定する(S406)。ここで、接続部303が接続要求を送信し始めてから、所定時間経過しても接続応答を受信できなかった場合には、電源部302は通信部204の電源供給を停止し、S401に戻る。このように、通信部204を利用しない場合には電源供給を停止することで、省電力とすることができる。
【0029】
ここでは、カメラ102から接続応答を受信し、送信部304は、始点Aで示されたサムネイル画像に対応する画像データをカメラ102に対して送信する(S407)。画像データの送信が完了すると、電源部302は通信部204の電源供給を停止し(S408)、S401に戻る。このように、通信部204を利用しない場合には電源供給を停止することで、省電力とすることができる。
【0030】
一方、始点Cは所定の外周領域内にあり、終点Dは所定の中心領域内にあるので、カメラ102のディスプレイ制御部351は移動方向が内向きであると判定する(S403)。そして、電源部352は通信部254に電力供給を開始する(S409)。電力供給が開始されると、接続部353は、所定期間、通信部254を介して接続要求の受信を待受ける(S410)。そして、接続要求を受信すると、これに応答して、接続部353は接続応答を送信する(S411)。ここで、接続部353が接続要求の受信を待受け始めてから、所定時間経過しても接続要求を受信できなかった場合には、電源部352は通信部254の電源供給を停止し、S401に戻る。
【0031】
ここでは、カメラ101からの接続要求を受信し、受信部355は、画像データをカメラ101から受信する(S412)。なお、受信された画像データは記憶部252により、フォルダアイコンに対応する格納場所に記憶される。画像データの受信が完了すると、電源部352は通信部254の電源供給を停止し(S413)、S401に戻る。
【0032】
上述のように、ディスプレイ内での指の移動方向が外向きである場合にはデータの送信側として動作し、ディスプレイ内での指の移動方向が内向きである場合にはデータの受信側として動作する。また、ユーザがディスプレイ内でタッチを始めた点に表示されていたサムネイル画像に対応する画像データを送信する。これにより、ユーザは簡単かつ直感的な操作で、カメラ101からカメラ102へ所望の画像データを送信することができる。
【0033】
なお、上述の実施形態では、始点が所定の中心領域内であり、終点が所定の外周領域内である場合に、移動方向が外向きであると判定した。しかし、これに限らず、始点が所定のサムネイル画像上であり、終点が所定の外周領域内である場合に、移動方向が外向きであると判定するようにしてもよい。これにより、送信したい画像のサムネイル画像が、所定の中心領域内に無い場合であっても、画像データを送信することができる。
【0034】
また、始点が所定の外周領域内であり、終点がフォルダアイコンである場合に、移動方向が内向きであると判定するようにしてもよい。これにより、画像データの格納先を示すフォルダアイコンが、所定の中心領域内に無い場合であっても、画像データを受信することができる。
【0035】
また、図6(c)に示すように、所定の外周領域を、アンテナ205が取り付けられている側(アンテナ方向外周領域)に限定するようにしてもよい。これにより、ユーザがアンテナ205が取り付けられた筐体の面方向もしくは辺方向(アンテナ側)に指を動かした場合にデータの送信が行われる。また、ユーザがアンテナ側から指を動かした場合にデータの受信が行われる。これにより、簡単かつ直感的な操作性を保ったまま、誤操作を低減することができる。
【0036】
また、S407においてデータの送信を行う前に、ユーザに対してデータの送信を許可するか否かの問い合わせを行い、ユーザがデータの送信を許可した場合に、データの送信を行うようにしてもよい。これにより、誤ってデータを送信してしまう可能性を低減することができる。
【0037】
また、上述の実施形態ではデータを送信する側が接続要求を送信し、データを受信する側が接続応答を送信した。しかし、これに限らず、データを送信する側が接続応答を送信し、データを受信する側が接続要求を送信するようにしてもよい。
【0038】
また、上述の実施形態では画像データについて説明したが、これに限らず、動画データや文書データ、音楽データ等、様々なデータについて適用することができる。また、これらのデータの場合、サムネイル画像ではなく、データに対応するアイコンを表示しておき、ユーザによるタッチが開始された部分に表示されていたアイコンに対応するデータを通信するようにする。これにより、様々なデータについても、ユーザは簡単かつ直感的な操作で、カメラ101からカメラ102へ所望のデータを送信することができる。
【符号の説明】
【0039】
101 カメラ
102 カメラ
201 制御部
202 記憶部
203 タッチパネル式ディスプレイ
204 通信部
205 アンテナ
206 撮像部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信装置であって、
ユーザからの入力を受け付ける入力手段と、
前記入力手段を介したユーザによる入力の軌跡方向に基づいて、他の通信装置に対してデータを送信するか、前記他の通信装置からデータを受信するかを判定する判定手段と、
前記判定手段による判定に応じて、前記他の通信装置とデータを通信する通信手段と、
を有することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記軌跡方向が、前記入力手段の外周へ向かう方向である場合、前記判定手段は、前記他の通信装置に対してデータを送信すると判定し、
前記通信手段は、前記他の通信装置に対してデータを送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記他の通信装置と通信するためのアンテナを更に有し、
前記軌跡方向が、前記アンテナが取り付けられた面または辺に向かう方向である場合、前記判定手段は、前記他の通信装置に対してデータを送信すると判定し、
前記通信手段は、前記他の通信装置に対してデータを送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項4】
前記入力手段は、更に所定のデータを示すアイコンを表示し、
前記入力手段を介したユーザによる入力の始点が、前記所定のデータを示すアイコンが表示されている位置であると前記判定手段により判定された場合に、前記通信手段は、前記他の通信装置に対して前記所定のデータを送信する
ことを特徴とする請求項2または3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記軌跡方向が、前記入力手段の外周から内側へ向かう方向である場合、前記判定手段は、前記他の通信装置からデータを受信すると判定し、
前記通信手段は、前記他の通信装置からデータを受信する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項6】
前記他の通信装置と通信するためのアンテナを更に有し、
前記軌跡方向が、前記アンテナが取り付けられた面または辺から内側へ向かう方向である場合、前記判定手段は、前記他の通信装置からデータを受信すると判定し、
前記通信手段は、前記他の通信装置からデータを受信する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項7】
前記入力手段は、更に前記通信手段により受信するデータを格納する場所を示すアイコンを表示し、
前記入力手段を介したユーザによる入力の終点が、前記場所を示すアイコンが表示されている位置であると前記判定手段により判定された場合に、前記通信手段は、前記他の通信装置からデータを受信する
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項8】
前記通信手段に電力を供給する供給手段を更に有し、
前記供給手段は、前記入力手段による入力に応じて、前記通信手段に電力の供給を開始する
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項9】
ユーザからの入力を受け付ける入力部を有する通信装置の制御方法であって、
前記入力部を介したユーザによる入力の軌跡方向に基づいて、他の通信装置に対してデータを送信するか、前記他の通信装置からデータを受信するかを判定する判定工程と、
前記判定に応じて、前記他の通信装置とデータを通信する通信工程と、
を有することを特徴とする制御方法。
【請求項10】
コンピュータを請求項1乃至8に記載の通信装置として動作させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−174044(P2012−174044A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36060(P2011−36060)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】